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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1308784 |
審判番号 | 不服2015-12895 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-06 |
確定日 | 2015-12-17 |
事件の表示 | 特願2011- 91653「発光装置及び発光装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-227234〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成23年4月18日の出願であって、平成26年4月23日付けで拒絶理由が通知され、同年7月29日に特許請求の範囲の補正がなされ、同年12月4日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月3日に特許請求の範囲の補正がなされたが、同年4月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、本願の請求項に係る発明は、平成27年2月3日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。 「第1主面と第2主面とを有するサファイア基板の前記第1主面に積層された半導体層を備える発光素子と、前記サファイア基板の前記第2主面が接合されて前記発光素子が載置されるパッケージと、蛍光体が含有され、かつ前記発光素子を封止する封止部材と、を含む発光装置であって、 前記サファイア基板は、前記第2主面の外縁が前記第1主面の外縁よりも内側に位置しており、 前記サファイア基板の側面に形成された曲面と前記パッケージとからなる凹部を有しており、 前記封止部材は、前記凹部内で高濃度の前記蛍光体を配置していることを特徴とする発光装置。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開2003-124151号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,サファイア基板のダイシング方法にかかり,特に,表面に窒化ガリウム系化合物半導体が積層されたサファイア基板のダイシング方法に関する。」 イ 「【0017】このようなサファイア基板12は,図1(b)に示すように,サファイア結晶からなる基板12aの表面上に,例えば,MOCVD法,MBE法等の気相成長法を利用して,例えば数十μmの厚さで積層された窒化ガリウム系化合物半導体層12bを有する。かかる窒化ガリウム系化合物半導体層12bは,例えば,エピタキシャル成長された,n型GaN:Si層,InGaN活性層(または発光層),A1GaNクラッド層,p型GaN:Mgキャップ層などからなる。さらに,この窒化ガリウム系化合物半導体層12bの表面には,例えばエッチングするなどして各種の電極(図示せず)が形成されている。なお,窒化ガリウム系化合物半導体層12bは,かかる例に限定されず,上記以外の多様な積層構造を有してもよい。」 ウ 「【0036】かかる切削により,図5(a)に示すように,サファイア基板12の表面には第1の溝40が形成される。この第1の溝40は,窒化ガリウム系化合物半導体層12bを完全に切断し,溝の底部がサファイア結晶からなる基板12aに達している。なお,図5(a)に示す第1の溝40の底部は,断面が略半円状であるが,かかる例に限定されず,第1ブレード22aの刃先形状等に応じて,略方形状,くさび形状など任意の形状であってもよい。」 エ 「【0045】このような第2のブレード22bによる切削により,サファイア基板12の裏面には,図5(b)に示すように,第1の溝40に対応する位置に第2の溝42が形成される。この第2の溝42は,底部が第1の溝40の底部にまで達しているので,第1の溝40と連結して,サファイア基板12を切断することができる。なお,第2の溝42の底部は,曲面状に限定されず,第1の溝40の底部と同様に,任意の形状を有してもよい。」 オ 「【0051】このようにして分割された半導体チップ16は,図5(c)に示すように,窒化ガリウム系化合物半導体が形成された面(即ち,表面)が大きく,裏面が小さい形状を有する。かかる半導体チップ16の表面の幅は,例えば300μmであり,例えば約200μmである裏面の幅に対して例えば1.5倍程度も大きい。また,半導体チップ16の表面は,一片が例えば約300μmの例えば略正方形状を有し,その面積(300μm×300μm)は,裏面の面積(200μm×200μm)よりも,例えば約2倍以上広い。」 上記ウ?オによれば、引用例の図5(c)に示される半導体チップ16は、サファイア基板12の表面に窒化ガリウム系化合物半導体層12bを有するものであると認められる。 また、当該半導体チップ16は、サファイア基板12の側面に曲面が形成され、窒化ガリウム系化合物半導体が形成された面(即ち,表面)が大きく、裏面が小さい形状を有するものと認められる。 また、上記イによれば、窒化ガリウム系化合物半導体層12bは、InGaN活性層(または発光層)などからなっていると認められる。 したがって、引用例には、 「側面に曲面が形成され、表面が大きく、裏面が小さい形状を有するサファイア基板の表面にInGaN発光層などからなる窒化ガリウム系化合物半導体層を有する半導体チップ。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「表面」、「裏面」、「サファイア基板」及び「窒化ガリウム系化合物半導体層」は、それぞれ、本願発明の「第1主面」、「第2主面」、「サファイア基板」及び「半導体層」に相当する。 (2)また、引用発明の「半導体チップ」は、当該「半導体チップ」が有する「窒化ガリウム系化合物半導体層」が「InGaN発光層などからなる」から、「発光素子」といえる。 (3)したがって、引用発明の「半導体チップ」と本願発明の「発光素子」は、「第1主面と第2主面とを有するサファイア基板の前記第1主面に積層された半導体層を備える発光素子」の点で一致する。 (4)引用発明の「サファイア基板」は、「側面に曲面が形成され、表面が大きく、裏面が小さい形状を有する」から、本願発明の「サファイア基板」と同様に「前記第2主面の外縁が前記第1主面の外縁よりも内側に位置しており」、「側面に形成された曲面を有」するものといえる。 (5)したがって、本願発明の「発光素子」と引用発明の「半導体チップ」は、 「第1主面と第2主面とを有するサファイア基板の前記第1主面に積層された半導体層を備える発光素子であって、 前記サファイア基板は、前記第2主面の外縁が前記第1主面の外縁よりも内側に位置しており、 前記サファイア基板の側面に形成された曲面を有している発光素子。」の点で一致する。 (6)一方、本願発明と引用発明は、 本願発明は、「発光素子と、前記サファイア基板の前記第2主面が接合されて前記発光素子が載置されるパッケージと、蛍光体が含有され、かつ前記発光素子を封止する封止部材と、を含む発光装置であって、 前記サファイア基板の側面に形成された曲面と前記パッケージとからなる凹部を有しており、 前記封止部材は、前記凹部内で高濃度の前記蛍光体を配置している発光装置。」であるのに対し、引用発明は、半導体チップ(発光素子)に係る発明であり、このような発光装置でない点(以下「相違点」という。)で相違する。 4.判断 上記相違点について検討する。 発光素子の裏面を接合してパッケージに載置し、該発光素子を蛍光体を含有する封止部材により封止することは、例えば、原査定で引用した特開2008-60167号公報(図9A及びこれに関連する【0069】?【0070】の記載並びに【0070】で言及する図5A及びこれに関連する【0064】の記載参照。)、特開2009-111140号公報(図1?3及びこれに関連する【0019】及び【0022】?【0023】の記載参照。)及び特開2007-42687号公報(図1?3及びこれに関連する【0025】?【0028】の記載参照。)にみられるように周知である。 したがって、引用発明において、上記周知技術に基づき、半導体チップの裏面を接合してパッケージに載置し、蛍光体を含有する封止部材により封止して発光装置とすることは、当業者が普通に採用することである。 他方、引用発明の半導体チップのサファイア基板は、「側面に曲面が形成され、表面が大きく、裏面が小さい形状を有する」ものであるから、引用発明において、上記周知技術に基づき、半導体チップの裏面を接合してパッケージに載置し、蛍光体を含有する封止部材により封止して発光装置としたときに、当該発光装置がサファイア基板の側面に形成された曲面とパッケージとからなる凹部を有するものとなり、当該凹部内で高濃度の蛍光体が配置されることになるものと認められる。 したがって、本願発明は、上記周知技術にしたがい、引用発明の半導体チップの裏面を接合してパッケージに載置し、蛍光体を含有する封止部材により封止して発光装置とすることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する |
審理終結日 | 2015-10-19 |
結審通知日 | 2015-10-20 |
審決日 | 2015-11-04 |
出願番号 | 特願2011-91653(P2011-91653) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小濱 健太、下村 一石 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
山口 裕之 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 発光装置及び発光装置の製造方法 |
代理人 | 新樹グローバル・アイピー特許業務法人 |