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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10K 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G10K |
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管理番号 | 1308832 |
審判番号 | 不服2014-15838 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-08 |
確定日 | 2015-12-09 |
事件の表示 | 特願2011-506356「複合吸音シート」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日国際公開、WO2009/131855、平成23年 7月 7日国内公表、特表2011-519433〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年4月10日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成20年4月22日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成24年4月6日付けで手続補正がなされ、 同年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成25年6月3日付けで手続補正がされたが、平成26年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年8月8日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。 第2 平成26年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年8月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成26年8月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、 本件補正の前(平成25年6月3日付けの手続補正)に、 「【請求項1】 第1のパターンをなして存在する貫通微細孔を備える微細穿孔フィルムと、 第2のパターンをなすホールを備える穿孔金属箔と、を備える複合吸音シートであって、 前記穿孔金属箔は前記微細穿孔フィルム上に配設され、その結果、 前記微細穿孔フィルムの前記貫通微細孔の前記第1のパターンと前記穿孔金属箔の前記第2のパターンは非整列パターンを有し、かつ、 (a)前記微細穿孔フィルムの前記貫通微細孔の直径の範囲は10マイクロメートル?200マイクロメートル未満である、又は、 (b)前記微細穿孔フィルムの厚さは10マイクロメートル?250マイクロメートルである、又は、 (c)前記穿孔金属箔の厚さは10マイクロメートル?250マイクロメートルである、又は、 (d)前記複合吸音シートの全体的な厚さは50マイクロメートル?1600マイクロメートルである、又は、 (e)エンボス深さが30マイクロメートル?1000マイクロメートルの範囲であるように前記穿孔金属箔はエンボス加工される、又は、 (f)上記(a)?(e)のいずれかの組み合わせが満たされる、複合吸音シート。 【請求項2】 音響反射表面と、 前記複合吸音シートと前記音響反射表面との間に裏空隙を有して、前記音響反射表面の付近に配設された、請求項1に記載の前記複合吸音シートとを備える吸音体。」 とあったところを、 「【請求項1】 第1のパターンをなして存在する貫通微細孔を備える微細穿孔フィルムと、 第2のパターンをなすホールを備える穿孔金属箔と、を備える複合吸音シートであって、 前記穿孔金属箔は前記微細穿孔フィルム上に配設され、その結果、 前記微細穿孔フィルムの前記貫通微細孔の前記第1のパターンと前記穿孔金属箔の前記第2のパターンは非整列パターンを有すると共に、前記微細穿孔フィルムの前記貫通微細孔の直径の範囲は10マイクロメートル?200マイクロメートルであり、かつ、 (a)前記微細穿孔フィルムの厚さは10マイクロメートル?250マイクロメートルである、又は、 (b)前記穿孔金属箔の厚さは10マイクロメートル?250マイクロメートルである、又は、 (c)前記複合吸音シートの全体的な厚さは50マイクロメートル?1600マイクロメートルである、又は、 (d)エンボス深さが30マイクロメートル?1000マイクロメートルの範囲であるように前記穿孔金属箔はエンボス加工される、又は、 (e)上記(a)?(d)のいずれかの組み合わせが満たされる、複合吸音シート。 【請求項2】 音響反射表面と、 複合吸音シートと、を備える吸音体であって、 前記複合吸音シートの少なくとも一部分が前記音響反射表面から十分に離れるように前記複合吸音シートが前記音響反射表面に取り付けられるような形状に前記複合吸音シートは形成され、その結果、前記複合吸音シートと前記音響反射表面との間に裏空隙が存在し、 前記複合吸音シートは、 第1のパターンをなして存在する貫通微細孔を備える微細穿孔フィルムと、 第2のパターンをなすホールを備える穿孔金属箔と、を備え、 前記穿孔金属箔は前記微細穿孔フィルム上に配設され、その結果、 前記微細穿孔フィルムの前記貫通微細孔の前記第1のパターンと前記穿孔金属箔の前記第2のパターンは非整列パターンを有し、かつ、 (a)前記微細穿孔フィルムの前記貫通微細孔の直径の範囲は10マイクロメートル?200マイクロメートルである、又は、 (b)前記微細穿孔フィルムの厚さは10マイクロメートル?250マイクロメートルである、又は、 (c)前記穿孔金属箔の厚さは10マイクロメートル?250マイクロメートルである、又は、 (d)前記複合吸音シートの全体的な厚さは50マイクロメートル?1600マイクロメートルである、又は、 (e)エンボス深さが30マイクロメートル?1000マイクロメートルの範囲であるように前記穿孔金属箔はエンボス加工される、又は、 (f)上記(a)?(e)のいずれかの組み合わせが満たされる、吸音体。」 とするものである。 2.補正の目的について 本件補正は、補正前の請求項1における「前記微細穿孔フィルムの前記貫通微細孔の直径の範囲は10マイクロメートル?200マイクロメートル未満である」との記載について「未満」を削除する補正事項を含むものであり、本件補正により貫通微細孔の直径の範囲が実質的に拡大されているから、本件補正は請求項の限定的減縮を目的としたものとは認められない。 また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件の予備的判断 本件補正は、上記「2.補正の目的について」において検討したとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが、仮に、本件補正が補正前の請求項1の構成(a)を必須構成要件としたことによる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて以下予備的に検討する。 (1)本願補正発明の技術的意義 本願明細書の段落【0003】【0015】を参酌すると、本願補正発明の技術的意義は、微細穿孔フィルムと穿孔金属箔とを互いに孔の位置をずらして積層することにより、広範な周波数において音を吸収することが可能であり、(裏空隙を含めても)薄型であり、かつ電磁シールド特性及び向上した熱伝導性を有する吸音体を提供することと認められる。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-264374号公報(以下、「引用例1」という。)には、「薄膜を用いた吸音構造」に関し、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、薄膜を用いた吸音構造の技術に関する。」 イ.「【0025】 〔第一実施形態〕 図1(a)に斜視図で示すように、第一実施形態の吸音構造は、第一の薄膜11と、第二の薄膜12と、を互いに隣接するように積層してある。この薄膜11,12としては、例えば、アルミ箔などの金属製の薄膜や塩化ビニルなどの樹脂製の薄膜などが使用できるが、これらに限定されない。」 ウ.「【0033】 〔第三実施形態〕 図4は第三実施形態の吸音構造を示すものであり、二枚の薄膜31,32が互いに隣接しながら積層されている点は、前記実施形態と同様である。 【0034】 ただし、二枚の薄膜31,32には何れも、その厚み方向に貫通するように、微細な貫通孔cが形成されている。 なお、第一の薄膜31の貫通孔cは、両薄膜31,32の積層方向で見たときに、第二の薄膜32の貫通孔cに重ならない位置に形成されている。即ち、それぞれの薄膜(31又は32)の貫通孔cは、反対側の薄膜(32又は31)の貫通孔cと、重複しない位置に形成されている。 【0035】 この第三実施形態の構成では、前述の第一・第二実施形態と同様の効果、即ち、薄膜31,32が振動して擦れ合うことによる広帯域での優れた消音効果を奏するほか、音波が前記貫通孔cを通過する際に更に音波が減衰することになるので、一層優れた消音効果を発揮できる。 また、本実施形態ではこの貫通孔cを微細孔としているので、前記減衰効果が一層優れており、消音効果の向上が顕著である。 【0036】 更にはこの第三実施形態の構成では、それぞれの薄膜31,32の貫通孔cが、他の薄膜の貫通孔cと重複しない位置に形成されているので、音波は図5に示すように、入射側から第一の薄膜31の貫通孔cを通過し、二枚の薄膜31,32の間を通って、第二の薄膜32の貫通孔cを介して抜けることになる。 即ち、音波は図5のように二枚の薄膜31,32の内面に沿って伝播する形となるので、貫通孔cを通過する際の減衰作用と薄膜31,32の表面を音波が伝播する際の粘性減衰作用とが相まって、更に一層の消音効果が発揮されることになる。 【0037】 なお、この貫通孔cは、前記第一実施形態、前記第二実施形態、あるいは後述の第四実施形態の薄膜においても形成することが可能であり、これによって、消音効果を一層向上させることができる。」 ・上記ア、ウ及び図4によれば、薄膜31及び薄膜32に複数の貫通孔を形成するとともに、薄膜32の上に薄膜31を積層した吸音構造について記載されている。 ・上記ウ及び図4によれば、薄膜31の貫通孔と薄膜32の貫通孔とを、積層方向で重複しない位置に形成することが記載されている。 ・上記イ及びウによれば、薄膜31、薄膜32としては、金属製の薄膜、樹脂製の薄膜が使用できることが記載されている。 したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「複数の貫通孔を備えた薄膜32と、複数の貫通孔を備えた薄膜31とを備える吸音構造であって、薄膜31は薄膜32上に積層されており、積層方向で見たときに、薄膜31の貫通孔と薄膜32の貫通孔は重ならない位置に形成され、薄膜31,薄膜32として金属製の薄膜、樹脂製の薄膜が用いられる、吸音構造。」 (3)対比・判断 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 a.本願補正発明の微細穿孔フィルム、穿孔金属箔は薄膜であり、それぞれ引用発明における薄膜32、薄膜31に相当する。ただし、本願補正発明の薄膜は「フィルム、金属箔」からなっているのに対し、引用発明には薄膜31,薄膜32として金属製の薄膜や樹脂製の薄膜が用いられる旨の特定があるものの、引用発明には本願補正発明のような特定はされていない。 b.引用発明において、薄膜31は薄膜32上に積層されているから、薄膜31は薄膜32上に配設されているといえる。 c.引用発明において、薄膜31、薄膜32に形成された複数の貫通孔は、互いに重複しないような位置に形成されているので、所定のパターンで配置されているといえ、それぞれ本願補正発明における「第2のパターン」「第1のパターン」に相当する。また、薄膜31の貫通孔と薄膜32の貫通孔とを積層方向で重複しない位置に形成することは、本願補正発明における「非整列パターン」で貫通孔を配置することに相当する。 d.引用発明における「吸音構造」は、複数の薄膜を用いているから、本願補正発明における「複合吸音シート」に相当する。 e.本願補正発明は、貫通微細孔の直径、微細穿孔フィルムの厚さを特定しているが、引用発明にはその旨の特定はない。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「第1のパターンをなして存在する貫通孔を備える第1の薄膜と、 第2のパターンをなす貫通孔を備える第2の薄膜と、を備える複合吸音シートであって、 前記第2の薄膜は前記第1の薄膜上に配設され、その結果、 前記第1の薄膜の前記貫通孔の前記第1のパターンと前記第2の薄膜の前記第2のパターンは非整列パターンを有する、複合吸音シート。」 (相違点1) 本願補正発明は、第1の薄膜として微細穿孔フィルムを採用し、第2の薄膜として穿孔金属箔を採用しているのに対し、引用発明ではこのような特定を行っていない点。 (相違点2) 本願補正発明は、直径10?200マイクロメートルの貫通微細孔を微細穿孔フィルムに形成しているのに対し、引用発明においては薄膜に形成する貫通孔の径の大きさを特定していない点。 (相違点3) 本願補正発明は、微細穿孔フィルムの厚さを10マイクロメートル?250マイクロメートルとしているのに対し、引用発明は薄膜の厚さを特定していない点。 上記相違点1について検討する。 引用発明において、第1の薄膜、第2の薄膜として金属製の薄膜、樹脂製の薄膜を使用できることが特定されており、第1の薄膜と第2の薄膜との一方が樹脂製の薄膜であり、他方が金属製の薄膜であるものも引用発明に含まれると解され、第1の薄膜として樹脂製の薄膜を採用し、第2の薄膜として金属製の薄膜を採用することにより相違点1の構成とすることは当業者が容易に想到し得る程度のことである。 上記相違点2及び3について検討する。 薄膜の貫通孔の径や膜厚を調整して吸音性能を向上させることは特開2005-338795号公報(段落【0034】【0043】-【0046】を参照。以下、「周知例1」という。)、特開2005-231467号公報(段落【0009】【0014】【0028】【0029】を参照。以下、「周知例2」という。)に記載されているとおり周知である。そして、周知例1には、多孔質吸音構造体について、薄膜の貫通穴の直径を3mm以下、具体例としては0.2mmに設定し、薄膜の厚さを0.1mmに設定することが記載されており、周知例2には、多孔樹脂シートについて、開孔の径を0.01?2.5mm、具体的には0.2mmに設定し、多孔樹脂シートの厚さを110μmに設定することが記載されているように、貫通微細孔の直径が10マイクロメートル?200マイクロメートル、微細穿孔フィルムの厚さが10マイクロメートル?250マイクロメートルの数値範囲を採用することは吸音用の微細穿孔フィルムにおいて一般的に行われていることである。 なお、貫通微細孔の直径を10?200マイクロメートルに限定する技術的根拠は、本願明細書には記載されておらず、当該数値範囲の上限及び下限について臨界的意義は認められない。微細穿孔フィルムの厚さの数値限定についても、特に、臨界的意義は認められない。 よって、引用発明において、吸音用の樹脂製薄膜における周知例と同程度の厚さ及び貫通孔径を採用することにより相違点2及び3の構成とすることは当業者が容易になし得る。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1.本願発明の認定 平成26年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成25年6月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1.」に本件補正の前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、前記「第2 3.(2)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、本願補正発明の必須構成要件「貫通微細孔の直径の範囲は10マイクロメートル?200マイクロメートル」が、「貫通微細孔の直径の範囲は10マイクロメートル?200マイクロメートル未満」となり、選択肢(a)となったものである。 そして、本願発明における「選択肢を除いた発明特定事項」と「選択肢(b)」とを含む本件補正発明が、上記「第2 3.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-07-09 |
結審通知日 | 2015-07-14 |
審決日 | 2015-07-28 |
出願番号 | 特願2011-506356(P2011-506356) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G10K)
P 1 8・ 572- Z (G10K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 正宏 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
ゆずりは 広行 関谷 隆一 |
発明の名称 | 複合吸音シート |
代理人 | 池田 成人 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 酒巻 順一郎 |
代理人 | 鈴木 英彦 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 池田 正人 |