• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1308853
審判番号 不服2015-2213  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-05 
確定日 2015-12-09 
事件の表示 特願2010-270340「発光装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月16日出願公開、特開2011-119739〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年12月3日(パリ条約による優先権主張2009年12月3日、韓国、2010年3月8日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成22年12月 3日 特許出願
平成26年 5月 7日 拒絶理由通知(平成26年 5月13日発送)
平成26年 8月 5日 意見書・手続補正書
平成26年10月 1日 拒絶査定(平成26年10月 7日送達)
平成27年 2月 5日 本件審判請求・手続補正書

第2 平成27年 2月 5日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年 2月 5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概略
(1) 本件補正は、補正前の特許請求の範囲において、

「【請求項1】
胴体と、
前記胴体の上に設けられ、紫外線発光ダイオードを含む発光素子と、
前記胴体の上において前記発光素子と電気的に連結される導電部材と、
前記発光素子を囲む樹脂物と、
前記樹脂物の上に設けられ、前記樹脂物より小さな屈折率を有し、前記発光素子に向かって反射する光を減らすように機能する無機酸化物層と、を含み、
導電部材は、前記発光素子がダイボンディングされる第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材及び第2導電部材は、前記胴体の外部に露出されることを特徴とする、発光装置。
・・・
【請求項6】
前記樹脂物の表面には不規則な凹部が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
・・・」
とあったものを、

「【請求項1】
胴体と、
前記胴体の上に設けられ、紫外線発光ダイオードを含む発光素子と、
前記胴体の上において前記発光素子と電気的に連結される導電部材と、
前記発光素子を囲む樹脂物と、
前記樹脂物の上に設けられ、前記樹脂物より小さな屈折率を有し、前記発光素子に向かって反射する光を減らすように機能する無機酸化物層と、を含み、
導電部材は、前記発光素子がダイボンディングされる第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材及び第2導電部材は、前記胴体の外部に露出され、
前記樹脂物の表面には不規則な凹部が形成され、
前記無機酸化物層はコロイドシリカ粒子からなり、
前記コロイドシリカ粒子は前記樹脂物の表面に形成されることを特徴とする、発光装置。
・・・」
とする補正を含むものである。

(2) 本件補正についての検討
本件補正は、
a 補正前の請求項1を削除するとともに、請求項6を独立形式に書き改めて新たな請求項1とする補正事項、及び、
b 新たな請求項1に「前記無機酸化物層はコロイドシリカ粒子からなり、前記コロイドシリカ粒子は前記樹脂物の表面に形成される」との発明特定事項を追加する補正事項、
からなる。

ア 上記補正事項aについて
(ア) 上記補正事項aは、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものである。

イ 上記補正事項bについて
(ア) 上記補正事項bは、補正前の「無機酸化物層」について、「前記無機酸化物層はコロイドシリカ粒子からなり、前記コロイドシリカ粒子は前記樹脂物の表面に形成される」との発明特定事項を付加する補正であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 上記補正事項bは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0123】、【0125】に記載されており、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項の要件を満たす。

ウ そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 引用文献1の記載事項、及び引用発明1
(1) 本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2007/080803号(平成19年7月19日公開。以下「引用文献1」という。)には、図とともに、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。

ア 「請求の範囲
[1] 半導体発光素子と、前記半導体発光素子の少なくとも一部を覆って形成された蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一部を覆って形成された外層とを含む半導体発光装置であって、
前記蛍光体層は、バインダーと前記バインダーに分散された蛍光体とを含み、
前記外層は、多孔質材を含むことを特徴とする半導体発光装置。」

イ 「発明を実施するための最良の形態
[0014] 本発明の半導体発光装置は、半導体発光素子と、この半導体発光素子の少なくとも一部を覆って形成された蛍光体層と、この蛍光体層の少なくとも一部を覆って形成された外層とを含む。半導体発光素子は、例えば、最大ピーク波長が490nm以下の光を放出するLEDが使用できる。特に、GaN系の化合物半導体からなるLEDチップは、発光色が青色光(又は青色光よりも短波長の光)であり、かつ発光強度が大きいため好ましい。
[0015] 上記蛍光体層は、バインダーと、このバインダーに分散された蛍光体とを含む。バインダーとしては、例えば、可視光を透過させるバインダー材を含むものが使用できる。上記バインダー材としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂等の有機高分子からなる樹脂材料や、シリコーン樹脂等の無機高分子からなる樹脂材料等を用いることができる。また、低融点ガラスや低温で形成可能なゾルゲルガラス等の無機材料等を用いてもよい。上記蛍光体としては、半導体発光素子から放出された光の一部を吸収し、蛍光を発する蛍光体が使用できる。例えば、半導体発光素子として青色光を放出するLEDを使用する場合、上記蛍光体としては、黄色光を発する黄色蛍光体や、緑色光を発する緑色蛍光体や、赤色光を発する赤色蛍光体等が使用できる。また、例えば、半導体発光素子として紫外光を放出するLEDを使用する場合、上記列挙した蛍光体や、青色光を発する青色蛍光体等が使用できる。上記蛍光体を使用することにより、半導体発光素子から放出された光と蛍光体から発せられた光とが混ざりあって、例えば白色光として取り出すことができる。」

ウ 「[0033] (第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る半導体発光装置について説明する。図1Aは、本発明の第1実施形態に係る半導体発光装置の断面図であり、図1Bは、図1Aに示す半導体発光装置に含まれる外層の構成材料の模式図である。
[0034] 図1Aに示すように、半導体発光装置1は、半導体発光素子10と、半導体発光素子10を覆って形成された蛍光体層11と、蛍光体層11を覆って形成された外層12とを含む。半導体発光素子10は、第1リードフレーム13aの端部にカップ状に設けられた凹部の底面上に、Agペースト等からなる固着用ペースト材14によって固着されている。
[0035] 半導体発光素子10の光取り出し面10aには、第1電極15a及び第2電極15bが形成されている。第1電極15aは、第1ワイヤ16aを介して第1リードフレーム13aと電気的に接続されている。また、第2電極15bは、第2ワイヤ16bを介して第1リードフレーム13aと対をなす第2リードフレーム13bと電気的に接続されている。
[0036] 蛍光体層11は、バインダー17と、バインダー17に分散された蛍光体18とを含む。この蛍光体層11は、砲弾状に成型された外層12によって封止されている。
[0037] 外層12は、図1Bに示す多孔質材19からなる。これにより、外層12の屈折率の低減が容易となる。よって、半導体発光装置1の外部(例えば空気層)と蛍光体層11との間に、屈折率が蛍光体層11のバインダー17より低い外層12を配置することができる。そのため、半導体発光装置1の光取り出し効率を向上させることができる。
[0038] また、多孔質材19は、無機材料からなる粒子19aが網目状に連続的につながった連通構造の凝集多孔体からなる。これにより、温度変化に対する孔内部の空気の膨張や収縮を抑制することができる。よって、外層12の耐熱性や機械強度を向上させることができる。また、多孔質材19では、粒子19aが外層12を透過する光の波長の4分の1以下の平均粒径を有し、かつ多孔質材19の孔径Dの平均値が外層12を透過する光の波長の4分の1以下であることが好ましい。外層12中の光の散乱がレイリー散乱のみとなるため、外層12の透光性の劣化を防止できるからである。例えば、粒子19aの平均粒径が1nm以上30nm以下の範囲であり、かつ孔径Dの平均値が1nm以上30nm以下の範囲であればよい。
・・・
[0041] 図2に、多孔質材19の空孔率と屈折率との関係を示す。図2では、粒子19aを構成する材料として、酸化シリコン(屈折率1.45)、フッ化カルシウム(屈折率1.43)及びフッ化マグネシウム(屈折率1.38)を用いた場合について示している。
[0042]
ここで、バインダー17(図1A参照)としてエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料を用いると、バインダー17の屈折率は、約1.4?1.6の範囲となる。よって、多孔質材19の屈折率が1.4より低くなるように調整すれば、半導体発光装置1の光取り出し効率を向上させることができる。例えば粒子19aを構成する材料として酸化シリコンを用いる場合は、図2に示すように、多孔質材19の空孔率が0.1より大きくなるように調整すればよい。なお、多孔質材19の屈折率の下限は、外層12の外部の屈折率(例えば空気の場合は1.0)より高くなる限りにおいて特に制限されないが、屈折率を低くするために多孔質材19の空孔率を高くすると、多孔質材19の機械的な強度が低くなる等の弊害が生じるおそれがある。よって、多孔質材19の空孔率が0.95以下となる範囲で多孔質材19の屈折率を調整するのが好ましい。
・・・
[0045] 次に、多孔質材19(外層12)の好適な形成方法について説明する。多孔質材19は、例えば、多孔質材19の原料が溶液中に分散したゾル溶液を調製し、このゾル溶液を湿潤ゲル化し、これを乾燥して乾燥ゲルとすることによって形成することができる。以下に、構成材料として酸化シリコンを用いた場合の多孔質材19の形成方法を説明する。
[0046] まず、原料と触媒とを溶媒に分散させてゾル溶液を得る。上記原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン等のアルコキシシラン化合物やこれらのオリゴマー化合物、あるいはケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウム等の水ガラス化合物等を用いることができる。上記触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、酢酸等の酸触媒や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基触媒、あるいは水等を用いることができる。上記溶媒としては、原料が溶解してシリカが形成されれば良く、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサン等の有機溶媒や、水等を単独又は混合して用いることができる。このとき、原料の濃度を調整することにより、得られる多孔質材19の空孔率を制御することができる。また、適宜、上記溶媒に粘度調整剤を添加してもよい。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油等を用いることができる。
・・・
[0050] なお、ゾル溶液を湿潤ゲル化する際は、例えば蛍光体層11上にゾル溶液を塗布した後、上述したように放置(又は加熱)して湿潤ゲル化すればよい。」

エ 「[0052] (第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体発光装置について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る半導体発光装置の断面図である。
[0053] 図3に示すように、半導体発光装置2では、半導体発光素子10が基板20上に実装されている。基板20には第1配線21a及び第2配線21bが設けられており、この第1及び第2配線21a,21bは、それぞれ第1及び第2ワイヤ16a,16bを介して第1及び及び第2電極15a,15bと電気的に接続されている。
[0054] また、蛍光体層11のバインダー17は、バインダー材17aと、バインダー材17aを透過する光の波長の4分の1以下の実効粒径を有する無機粒子17bとを含むコンポジット材からなる。そして、無機粒子17bは、バインダー材17aよりも屈折率が大きい。この構成によれば、無機粒子17bを含むことによって、バインダー17と半導体発光素子10の光取り出し面10aを構成する材料との屈折率差が小さくなる。よって、光取り出し効率をより向上させることができる。更に、無機粒子17bを含むことによって、バインダー17の耐熱性や耐光性が向上するためバインダー17の劣化を防止できる。また、無機粒子17bの実効粒径がバインダー材17aを透過する光の波長の4分の1以下であるため、バインダー17中の光の散乱はレイリー散乱のみとなる。よって、バインダー17の透光性の劣化を防止できる。また、無機粒子17bの大きさが光の波長よりも充分に小さいため、バインダー17を屈折率のばらつきがない均一な媒体とみなすことができる。その他の構成要素は、上述した第1実施形態に係る半導体発光装置1と同様である。従って、半導体発光装置2によっても半導体発光装置1と同様の効果を発揮させることができる。」

オ 本発明の第2実施形態に係る半導体発光装置の断面図である図3は、次のものである。


(2) 引用発明1
ア 上記(1)エの[0054]の記載によれば、第2実施形態に係る半導体発光装置は、その他の構成要素は、第1実施形態に係る半導体発光装置1と同様であるから、上記(1)ウの第1実施形態に係る半導体発光装置に関する記載を参酌して、第2実施形態に係る半導体発光装置について認定する。

イ 上記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「半導体発光素子と、前記半導体発光素子の少なくとも一部を覆って形成された蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一部を覆って形成された外層とを含む半導体発光装置であって、
前記蛍光体層は、バインダーと前記バインダーに分散された蛍光体とを含み、
前記外層は、多孔質材を含み、
半導体発光素子として紫外光を放出するLEDを使用することができ、
半導体発光素子10の光取り出し面10aには、第1電極15a及び第2電極15bが形成され、
半導体発光素子10が基板20上に実装され、
基板20には第1配線21a及び第2配線21bが設けられており、この第1及び第2配線21a,21bは、それぞれ第1及び第2ワイヤ16a,16bを介して第1及び及び第2電極15a,15bと電気的に接続されており、
バインダー17としてエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料を用い、
半導体発光装置1の外部(例えば空気層)と蛍光体層11との間に、屈折率が蛍光体層11のバインダー17より低い外層12を配置することによって、半導体発光装置1の光取り出し効率を向上させることができ、
多孔質材19は、無機材料からなる粒子19aが網目状に連続的につながった連通構造の凝集多孔体からなり、
粒子19aを構成する材料として酸化シリコンを用い、
多孔質材19は、多孔質材19の原料が溶液中に分散したゾル溶液を調製し、このゾル溶液を湿潤ゲル化し、これを乾燥して乾燥ゲルとすることによって形成することができ、
原料と触媒とを溶媒に分散させてゾル溶液を得る際に、原料が溶解してシリカが形成され、
ゾル溶液を湿潤ゲル化する際は、蛍光体層11上にゾル溶液を塗布した後、放置(又は加熱)して湿潤ゲル化すればよい、
半導体発光装置。」

3 引用文献2の記載事項
(1) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-124168号公報(平成20年5月29日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図とともに、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。

ア 「【請求項1】
少なくともUV光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の外側に配置され前記UV光を可視光に変換する蛍光体を含有する蛍光体層と、
前記蛍光体層の外側に配されるUV光反射層とを有し、
前記蛍光体層の屈折率が前記UV光反射層の屈折率より大きいか若しくは等しい半導体発光装置。」

イ 「【0013】
(実施の形態1)
図1に本発明の半導体発光装置10の構成を示す。本発明の半導体発光装置10は、カップ9と、半導体発光素子20、蛍光体層40、UV光反射層60を含む。
【0014】
<半導体発光素子>
半導体発光素子20は、UV光領域の波長を含む光を発光する半導体発光素子である。例えば、UV光領域の波長を含む青色を発光する半導体発光素子は、GaN系の半導体発光素子がある。より具体的には、GaNの基板上にGaNのn型層、InGaNの活性層及びGaNのp型層をこの順で積層し、n型層およびp型層に電極を配したものである。
・・・
【0017】
<電極>
半導体発光素子には、電極が施され、半導体発光装置10の外部から電流が供給される。電極は、ワイヤーボンディングや、バンプといった従来から知られている手段を用いることができる。本発明では特に限定しない。また、図でも省略した。
【0018】
<カップ>
カップ9はハウジングとも呼ばれる。初めからカップ状のものでもよいし、側面部8を底部7に接着するなどして作製してもよい。また、側面部の高さの浅いカップに半導体発光素子を配し、砲弾型に樹脂等で封止してもよい。さらに、側面は高さがゼロであってもよい。この場合は、底部7に半導体発光素子が樹脂などで封止されているだけの外形となる。
・・・
【0020】
<蛍光体層>
蛍光体層40は、半導体発光素子20からの発光波長を可視光に変換する蛍光体を樹脂やガラスといった媒体に分散させた層である。例えば、半導体発光装置10自体の発光色を白色にする場合は、半導体発光素子20からの青色の光を受けて、黄色に波長を変換し放出する材料を含んでいればよい。このような材料としては、希土類ドープ窒化物系、または、希土類ドープ酸化物系の蛍光体が好ましい。
・・・
【0024】
<UV光反射層>
UV光反射層60は、UV光を反射する層であり、蛍光体層40の外側に配置される。なお、本明細書において、「外側」は、半導体発光素子20から遠くなる方向をいう。例えば図1においては、図面の上方向が「外側」にあたる。半導体発光素子20が発したUV光はこの層で反射され、カップ内に戻される。この層の存在によって、半導体発光装置10からのUV光の放出はゼロ若しくは極めて小さくなる。
【0025】
UV光反射層としては、ガラスや樹脂に微小粒径の酸化チタン(TiO_(2))や酸化亜鉛(ZnO)といったUV光反射材を媒体に分散させた層を用いる。これらの粒径は、数十nm以下の粒径であるのが望ましい。
【0026】
また、UV光反射層には、数十ナノメートル程度の大きさの気泡を含ませてもよいし、UV光反射層をDBR多層膜で構成してもよい。
【0027】
<媒体>
蛍光体層40とUV光反射層60には、樹脂もしくはガラスなどの媒体を用いることができる。樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びフッ素樹脂を主成分とする樹脂が好適である。特に非シリコーン樹脂としては、シロキサン系の樹脂やポリオレフィン、シリコーン・エポキシハイブリッド樹脂などが好適である。ガラスとしては、ゾルゲル法で作製できるガラスがよい。作製時に比較的低温での硬化処理が可能であり、蛍光体等の粒子を分散するのも容易だからである。
【0028】
このガラスをより具体的に説明すると、有機金属化合物の一種である金属アルコキシドを出発物質とし、その溶液を加水分解、縮重合させゾルを形成した後、空気中の水分などによって更に反応を進めてゲル化させ、得られる固体の金属酸化物である。
【0029】
例えば、珪素の金属アルコキシドであるテトラエトキシシラン(Si(OC_(2)H_(5))_(4))でシリカガラスを作る場合、テトラエトキシシランをアルコール等の溶媒に溶解し、酸や塩基などの触媒と少量の水を加えて十分に混合することにより下記の反応式に従い液状のポリシロキサン・ゾルが形成される。
【0030】
加水分解反応:Si(OC_(2)H_(5))_(4)+4H_(2)O→Si(OH)_(4)+4C_(2)H_(5)OH
脱水縮合反応:nSi(OH)_(4)→[SiO_(2)]_(n)+2nH_(2)O
このようなシリカガラスは耐湿性、耐候性を備えており、半導体発光装置としては好適な材料である。なお、媒体にUV光反射材若しくは蛍光体を分散させた状態のものを充填材と呼ぶ。
【0031】
<屈折率>
蛍光体層40とUV光反射層60の可視光領域での屈折率は、各層に分散させる粒子の濃度で調整することができ、これらの屈折率の関係を所定の関係にすることによって、半導体発光装置10の光取出し効率が向上する。すなわち、半導体発光素子の屈折率をn_(20)とし、蛍光体層40の屈折率をn_(40)とし、UV光反射層60の屈折率をn_(60)とすると、n_(20)>n_(40)>n_(60)とする。なお、不等号はそれぞれ等しい場合を含むものとする。
【0032】
このように各層の屈折率を調整することで、半導体発光素子と蛍光体層、蛍光体層とUV光反射層の界面での全反射による光取出し効率の低下を防ぐ事ができ、高効率の半導体発光装置を得ることができる。なお、これらの屈折率は可視光の領域での屈折率である。屈折率を調整するための具体的な材料は、数十ナノメートル以下の粒径を有する酸化チタン(TiO_(2))や酸化亜鉛(ZnO)があげられる。これらの材料は、UV光から比較すると長波長である可視光に対しては透明で、含有濃度に応じた屈折率を与える一方、UV光領域の光に対しては拡散し反射するように働く。つまり、UV光反射層を構成する材料でもある。
【0033】
<全反射防止処理>
光取出し効果を向上させるために、蛍光体層40とUV光反射層60の間に全反射防止処理を行なっても良い。全反射防止処理とは、蛍光体層40とUV光反射層60との界面に使用する光の波長程度の大きさの凹凸を施す処理である。このような処理を施された界面では、鏡面状態で生じる全反射が起こりにくく、入射側から出射側へより多くの光を通過させることができる。微小な凹凸は、例えばナノインプリント技術を用いて形成することができる。
【0034】
具体的には次のようにして作製する。まず、カップの中に半導体発光素子を配置し、電極の接続処置を行なった後、蛍光体を媒体に分散した充填材を流し込み、蛍光体層40とする。蛍光体層40が硬化した後に、微小な凹凸を施した金型を蛍光体層40の表面に押し付け、微小凹凸を形成する。その後、UV光反射層60となる充填材を流し込む。UV光反射層60の硬化後、表面を研磨したり、UV光反射層60に、レンズなどの外付け部品を接着してもよい。
【0035】
なお、微小な凹凸を形成するのはこの方法に限定されず、蛍光体層40を形成した後に、ウエットエッチングといった化学処理を行なったり、イオンミリングといったドライエッチングの手法を用いることもできる。すなわち、微小凹凸は制御された均一の大きさである必要はなく、分布を有する平均的な大きさを有する凹凸の集合であってよい。
【0036】
本実施の形態の半導体発光装置10は、外側にUV光反射層60を有しているので、放出するUV光を非常に少なくすることができ、また、UV光反射層60の屈折率を蛍光体層40の屈折率より小さくするので、可視光の光取出し効果は高くできる。」

ウ 実施の形態1の半導体発光装置の構成を示す図1は、次のものである。


(2) 引用文献2に記載された技術事項
ア 上記(1)イの【0018】の記載に照らして、上記(1)ウの図1を見ると、カップ9の底部7に半導体発光素子20が配置されていることが見てとれる。

イ 以上より、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。
「少なくともUV光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の外側に配置され前記UV光を可視光に変換する蛍光体を含有する蛍光体層と、
前記蛍光体層の外側に配されるUV光反射層とを有し、
前記蛍光体層の屈折率が前記UV光反射層の屈折率より大きいか若しくは等しい半導体発光装置であって、
半導体発光装置10は、カップ9と、半導体発光素子20、蛍光体層40、UV光反射層60を含み、
半導体発光素子20は、GaNの基板上にGaNのn型層、InGaNの活性層及びGaNのp型層をこの順で積層し、n型層およびp型層に電極を配したものであり、
電極は、ワイヤーボンディングや、バンプといった従来から知られている手段を用いることができ、
カップ9の底部7に半導体発光素子20が配置され、
蛍光体層40は、半導体発光素子20からの発光波長を可視光に変換する蛍光体を樹脂やガラスといった媒体に分散させた層であり、
UV光反射層としては、ガラスや樹脂に微小粒径の酸化チタン(TiO_(2))や酸化亜鉛(ZnO)といったUV光反射材を媒体に分散させた層を用い、
UV光反射層60には、樹脂もしくはガラスなどの媒体を用いることができ、
ガラスとしては、ゾルゲル法で作製できるガラスがよく、
このガラスは、有機金属化合物の一種である金属アルコキシドを出発物質とし、その溶液を加水分解、縮重合させゾルを形成した後、空気中の水分などによって更に反応を進めてゲル化させ、得られる固体の金属酸化物であり、
UV光反射層60の屈折率を蛍光体層40の屈折率より小さくするので、可視光の光取出し効果は高くでき、
各層の屈折率を調整することで、半導体発光素子と蛍光体層、蛍光体層とUV光反射層の界面での全反射による光取出し効率の低下を防ぐ事ができ、
光取出し効果を向上させるために、蛍光体層40とUV光反射層60の間に全反射防止処理を行なっても良く、全反射防止処理とは、蛍光体層40とUV光反射層60との界面に使用する光の波長程度の大きさの凹凸を施す処理であり、このような処理を施された界面では、鏡面状態で生じる全反射が起こりにくく、入射側から出射側へより多くの光を通過させることができ、
微小な凹凸を形成するのは、蛍光体層40を形成した後に、ウエットエッチングといった化学処理を行なったり、イオンミリングといったドライエッチングの手法を用いることもでき、微小凹凸は制御された均一の大きさである必要はなく、分布を有する平均的な大きさを有する凹凸の集合であってよく、
その後、UV光反射層60となる充填材を流し込む、
半導体発光装置。」

4 対比
(1) 本願補正発明と引用発明1を対比する。

ア 引用発明1の「基板20」は、本願補正発明の「胴体」に相当する。

イ 引用発明1の「基板20上に実装され」、「紫外光を放出するLEDを使用することができ」る「半導体発光素子10」は、本願補正発明の「前記胴体の上に設けられ、紫外線発光ダイオードを含む発光素子」に相当する。

ウ 引用発明1の「基板20に・・・設けられ」、「それぞれ第1及び第2ワイヤ16a,16bを介して第1及び及び第2電極15a,15bと電気的に接続されて」いる「第1配線21a及び第2配線21b」と、
本願補正発明の「前記胴体の上において前記発光素子と電気的に連結される導電部材」とを対比する。
引用発明1の「第1電極15a及び第2電極15b」は、「半導体発光素子10の光取り出し面10aに」形成されている電極であるから、引用発明1の「第1配線21a及び第2配線21b」は、「半導体発光素子10」と電気的に接続されており、両者は相当関係にある。

エ 引用発明1の「前記半導体発光素子の少なくとも一部を覆って形成され」、「エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料を用い」た「バインダーと前記バインダーに分散された蛍光体とを含」む「蛍光体層」は、本願補正発明の「前記発光素子を囲む樹脂物」に相当する。

オ 引用発明1の「前記蛍光体層の少なくとも一部を覆って形成され」、「酸化シリコン」からなる「粒子19aが網目状に連続的につながった連通構造の凝集多孔体からな」る「多孔質材19」を含む「外層」と、
本願補正発明の「前記樹脂物の上に設けられ、前記樹脂物より小さな屈折率を有し、前記発光素子に向かって反射する光を減らすように機能する無機酸化物層」とを対比すると、
両者は「前記樹脂物の上に設けられ」た「無機酸化物層」である点で一致する。

カ 引用発明1の「第1配線21a及び第2配線21b」は、「第1配線21a」と「第2ワイヤ・・・16bを介して・・・第2電極・・・15bと電気的に接続され」る「第2配線21b」とを含むことと、
本願補正発明の「導電部材は、前記発光素子がダイボンディングされる第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含」むこととを対比する。
引用発明1の「第1配線21a」及び「第2配線21b」は、本願補正発明の「第1導電部材」及び「第2導電部材」にそれぞれ相当する。
してみれば、両者は「導電部材は、第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含」む点で一致する。

キ 引用発明1の「前記外層は、多孔質材を含み」、「多孔質材19は、無機材料からなる粒子19aが網目状に連続的につながった連通構造の凝集多孔体からなり、粒子19aを構成する材料として酸化シリコンを用い、多孔質材19は、多孔質材19の原料が溶液中に分散したゾル溶液を調製し、このゾル溶液を湿潤ゲル化し、これを乾燥して乾燥ゲルとすることによって形成することができ、原料と触媒とを溶媒に分散させてゾル溶液を得る際に、原料が溶解してシリカが形成され、ゾル溶液を湿潤ゲル化する際は、蛍光体層11上にゾル溶液を塗布した後、放置(又は加熱)して湿潤ゲル化す」ることと、
本願補正発明の「前記無機酸化物層はコロイドシリカ粒子からなり、前記コロイドシリカ粒子は前記樹脂物の表面に形成される」こととを対比する。
一般に、「ゾル」とは「固体を分散質とし、液体を分散媒とするコロイド」であるから、引用発明1の「ゾル溶液」においては「シリカ」が固体として分散しているといえる。
それゆえ、当該引用発明1の「ゾル溶液」に分散していた「シリカ」により構成される「粒子19a」は、本願補正発明の「コロイドシリカ粒子」に相当する。
また、引用発明1の「粒子19a」を、「蛍光体層11上にゾル溶液を塗布した後、放置(又は加熱)して湿潤ゲル化」して形成することは、本願補正発明の「前記コロイドシリカ粒子は前記樹脂物の表面に形成される」ことに相当する。
してみれば、両者は相当関係にある。

ク 引用発明1の「半導体発光装置」は、本願補正発明の「発光装置」に相当する。

(2) 以上より、本願補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

一致点:
「胴体と、
前記胴体の上に設けられ、紫外線発光ダイオードを含む発光素子と、
前記胴体の上において前記発光素子と電気的に連結される導電部材と、
前記発光素子を囲む樹脂物と、
前記樹脂物の上に設けられた無機酸化物層と、を含み、
導電部材は、第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含み、
前記無機酸化物層はコロイドシリカ粒子からなり、
前記コロイドシリカ粒子は前記樹脂物の表面に形成される、発光装置。」

相違点1:
本願補正発明の「無機酸化物層」は、「前記樹脂物より小さな屈折率を有し、前記発光素子に向かって反射する光を減らすように機能する」ものであるのに対し、
引用発明1の「外層12」は、そのようなものであるのか否か明らかでない点。

相違点2:
本願補正発明では、「第1導電部材」に「前記発光素子がダイボンディングされ」、「前記第1導電部材及び第2導電部材は、前記胴体の外部に露出され」るのに対し、
引用発明1の「第1配線21a」、「第2配線21b」は、そのような特定がされていない点。

相違点3:
本願補正発明では、「前記樹脂物の表面には不規則な凹部が形成され」ているのに対し、
引用発明1は、そのような構成を備えない点。

5 判断
以下、相違点について検討する。

(1) 相違点1について検討する。
引用発明1は、「前記蛍光体層は、バインダーと前記バインダーに分散された蛍光体とを含み」、「屈折率が蛍光体層11のバインダー17より低い外層12を配置することによって、半導体発光装置1の光取り出し効率を向上させることができ」るものであるから、引用発明1の「外層12」の「屈折率」は、「バインダー17」を含む「蛍光体層11」の「屈折率」より低く、発光素子に向かって反射する光を減らして、「光取り出し効率を向上させ」ていることは、明らかである。
よって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

(2) 相違点2について検討する。
発光素子がダイボンディングされる第1導電部材と、発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含み、前記第1導電部材及び第2導電部材が胴体の外部に露出される発光装置は、本願優先日時点で周知の技術(必要ならば、原査定の拒絶の理由で引用された特表2009-537992号公報(特に【0013】?【0014】、図2)、原査定の拒絶の理由で引用された特開2007-324220号公報(特に【0013】、図2)参照。)である。
してみれば、引用発明1の「半導体発光装置」を、そのようなものとして構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項となすことに、何ら困難性はない。

(3) 相違点3について検討する。
引用発明1は、「半導体発光素子と、前記半導体発光素子の少なくとも一部を覆って形成された蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一部を覆って形成された外層とを含」み、「半導体発光装置1の外部(例えば空気層)と蛍光体層11との間に、屈折率が蛍光体層11のバインダー17より低い外層12を配置することによって、半導体発光装置1の光取り出し効率を向上させることができ」る「半導体発光装置」である。
しかるところ、上記3(2)イによれば、引用文献2には、「半導体発光素子と、前記半導体発光素子の外側に配置され・・・る蛍光体層と、前記蛍光体層の外側に配されるUV光反射層とを有し」、「UV光反射層60の屈折率を蛍光体層40の屈折率より小さく」して、「光取出し効果」を「高く」した「半導体発光装置」において、さらに「光取出し効果を向上させるために」、「蛍光体層40を形成した後に」、「制御された均一の大きさである必要はなく、分布を有する平均的な大きさを有する凹凸の集合」を形成し、「その後、UV光反射層60となる充填材を流し込む」ことによって、「蛍光体層40とUV光反射層60との界面に使用する光の波長程度の大きさの凹凸を施」し、「鏡面状態で生じる全反射が起こりにくく、入射側から出射側へより多くの光を通過させる」ことが記載されている。
してみれば、引用発明1において、さらに光取出し効果を向上させるために、「蛍光体層11」に、引用文献2に記載された「分布を有する・・・凹凸の集合」を形成して、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項となすことに、格別の困難性はない。

6 小括
以上によれば、本願補正発明は、当業者が引用発明1、引用文献2の記載事項及び上記周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年2月5日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年8月5日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
胴体と、
前記胴体の上に設けられ、紫外線発光ダイオードを含む発光素子と、
前記胴体の上において前記発光素子と電気的に連結される導電部材と、
前記発光素子を囲む樹脂物と、
前記樹脂物の上に設けられ、前記樹脂物より小さな屈折率を有し、前記発光素子に向かって反射する光を減らすように機能する無機酸化物層と、を含み、
導電部材は、前記発光素子がダイボンディングされる第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含み、
前記第1導電部材及び第2導電部材は、前記胴体の外部に露出されることを特徴とする、発光装置。」

2 引用文献2の記載事項、及び引用発明2
(1) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2の記載事項は、上記第2の[理由]3(1)に記載したとおりである。

(2) 引用発明2
ア 上記第2の[理由]3(1)イの【0018】の記載に照らして、上記第2の[理由]3(1)ウの図1を見ると、カップ9の底部7に半導体発光素子20が配置されていることが見てとれる。

イ 以上より、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「少なくともUV光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の外側に配置され前記UV光を可視光に変換する蛍光体を含有する蛍光体層と、
前記蛍光体層の外側に配されるUV光反射層とを有し、
前記蛍光体層の屈折率が前記UV光反射層の屈折率より大きいか若しくは等しい半導体発光装置であって、
半導体発光装置10は、カップ9と、半導体発光素子20、蛍光体層40、UV光反射層60を含み、
半導体発光素子20は、GaNの基板上にGaNのn型層、InGaNの活性層及びGaNのp型層をこの順で積層し、n型層およびp型層に電極を配したものであり、
電極は、ワイヤーボンディングや、バンプといった従来から知られている手段を用いることができ、
カップ9の底部7に半導体発光素子20が配置され、
蛍光体層40は、半導体発光素子20からの発光波長を可視光に変換する蛍光体を樹脂やガラスといった媒体に分散させた層であり、
UV光反射層としては、ガラスや樹脂に微小粒径の酸化チタン(TiO_(2))や酸化亜鉛(ZnO)といったUV光反射材を媒体に分散させた層を用い、
UV光反射層60には、樹脂もしくはガラスなどの媒体を用いることができ、
ガラスとしては、ゾルゲル法で作製できるガラスがよく、
このガラスは、有機金属化合物の一種である金属アルコキシドを出発物質とし、その溶液を加水分解、縮重合させゾルを形成した後、空気中の水分などによって更に反応を進めてゲル化させ、得られる固体の金属酸化物であり、
UV光反射層60の屈折率を蛍光体層40の屈折率より小さくするので、可視光の光取出し効果は高くでき、
各層の屈折率を調整することで、半導体発光素子と蛍光体層、蛍光体層とUV光反射層の界面での全反射による光取出し効率の低下を防ぐ事ができ、
光取出し効果を向上させるために、蛍光体層40とUV光反射層60の間に全反射防止処理を行なっても良く、全反射防止処理とは、蛍光体層40とUV光反射層60との界面に使用する光の波長程度の大きさの凹凸を施す処理であり、このような処理を施された界面では、鏡面状態で生じる全反射が起こりにくく、入射側から出射側へより多くの光を通過させることができ、
微小な凹凸を形成するのは、蛍光体層40を形成した後に、ウエットエッチングといった化学処理を行なったり、イオンミリングといったドライエッチングの手法を用いることもでき、微小凹凸は制御された均一の大きさである必要はなく、分布を有する平均的な大きさを有する凹凸の集合であってよく、
その後、UV光反射層60となる充填材を流し込む、
半導体発光装置。」

3 対比
(1) 本願発明と引用発明2を対比する。

ア 引用発明2の「カップ9」は、本願発明の「胴体」に相当する。

イ 引用発明2の「カップ9の底部7に」配置され、「GaNの基板上にGaNのn型層、InGaNの活性層及びGaNのp型層をこの順で積層し、n型層およびp型層に電極を配した」「UV光を発光する半導体発光素子」は、本願発明の「前記胴体の上に設けられ、紫外線発光ダイオードを含む発光素子」に相当する。

ウ 引用発明2の「前記半導体発光素子の外側に配置され」、「半導体発光素子20からの発光波長を可視光に変換する蛍光体を樹脂・・・に分散させた層であ」る「蛍光体層」は、本願発明の「前記発光素子を囲む樹脂物」に相当する。

エ 引用発明2の「前記蛍光体層の外側に配され」、「ゾルゲル法で」「得られる固体の金属酸化物」である「ガラス・・・に微小粒径の酸化チタン(TiO_(2))や酸化亜鉛(ZnO)といったUV光反射材を媒体に分散させた層を用い」た「UV光反射層」は、「UV光反射層60の屈折率を蛍光体層40の屈折率より小さく」して、「蛍光体層とUV光反射層の界面での全反射による光取出し効率の低下を防ぐ」ものであるから、本願発明の「前記樹脂物の上に設けられ、前記樹脂物より小さな屈折率を有し、前記発光素子に向かって反射する光を減らすように機能する無機酸化物層」に相当する。

オ 引用発明2の「半導体発光装置」は、本願発明の「発光装置」に相当する。

(2) 以上より、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。

一致点:
「胴体と、
前記胴体の上に設けられ、紫外線発光ダイオードを含む発光素子と、
前記発光素子を囲む樹脂物と、
前記樹脂物の上に設けられ、前記樹脂物より小さな屈折率を有し、前記発光素子に向かって反射する光を減らすように機能する無機酸化物層と、を含む、発光装置。」

相違点4:
本願発明は、「前記胴体の上において前記発光素子と電気的に連結される導電部材」を含み、「導電部材は、前記発光素子がダイボンディングされる第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含み、前記第1導電部材及び第2導電部材は、前記胴体の外部に露出される」のに対し、
引用発明2は、そのような導電部材を含むものであるのか否か明らかでない点。

4 判断
相違点4について検討する。
胴体の上において発光素子と電気的に連結される導電部材を含み、前記導電部材は、前記発光素子がダイボンディングされる第1導電部材と前記発光素子とワイヤを介して連結される第2導電部材とを含み、前記第1導電部材及び第2導電部材が、前記胴体の外部に露出される発光装置は、本願優先日時点で周知の技術(必要ならば、原査定の拒絶の理由で引用された前記特表2009-537992号公報(特に【0013】?【0014】、図2)、原査定の拒絶の理由で引用された前記特開2007-324220号公報(特に【0013】、図2)参照。)である。
してみれば、引用発明2の「半導体発光装置」を、そのようなものとして構成し、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項となすことに、何ら困難性はない。

5 小括
以上によれば、本願発明は、当業者が引用発明2及び上記周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-13 
結審通知日 2015-07-14 
審決日 2015-07-30 
出願番号 特願2010-270340(P2010-270340)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 近藤 幸浩
山口 裕之
発明の名称 発光装置及びその製造方法  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 重森 一輝  
代理人 市川 英彦  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ