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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1308856
審判番号 不服2015-5396  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-23 
確定日 2015-12-10 
事件の表示 特願2010-249994「部品実装装置における部品分別廃棄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月31日出願公開、特開2012-104565〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年11月8日の出願であって、平成26年4月24日付けで拒絶理由が通知され、平成26年7月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年12月15日付け(平成26年12月24日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。

第2.平成27年3月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年3月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成27年3月23日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年7月2日付けの手続補正により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。
A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
廃棄される部品を収容するために所定位置に配置され、それぞれ読み書き可能なIDを持つ複数の廃棄ボックスと、
部品供給装置より部品をピックアップして回路基板に実装するとともに、回路基板への実装が不可と認識された部品を前記廃棄ボックスに分別廃棄することが可能な部品装着装置と、
を備えたことを特徴とする部品実装装置における部品分別廃棄装置。」

B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
廃棄される部品を収容するために所定位置に配置され、それぞれに部品と対応する読み書き可能なIDを有する複数の廃棄ボックスと、
部品供給装置より部品をピックアップして回路基板に実装するとともに、前記IDに基づいて回路基板への実装が不可と認識された部品を前記廃棄ボックスに分別廃棄することが可能な部品装着装置と、
を備えたことを特徴とする部品実装装置における部品分別廃棄装置。」
(アンダーラインは補正箇所を示すもので、請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、請求項1に関して、「それぞれ読み書き可能なIDを持つ複数の廃棄ボックス」を「それぞれに部品と対応する読み書き可能なIDを有する複数の廃棄ボックス」と補正(以下、「補正事項1」という。)し、また、「回路基板への実装が不可と認識された部品を前記廃棄ボックスに分別廃棄する」を「前記IDに基づいて回路基板への実装が不可と認識された部品を前記廃棄ボックスに分別廃棄する」と補正(以下、「補正事項2」という。)するものである。
まず、補正事項1について検討すると、「複数の廃棄ボックス」がそれぞれ有する「読み書き可能なID」が「部品と対応する」ことを限定するものである。
次に、補正事項2について検討すると「前記廃棄ボックスに分別廃棄する」ことについて「前記IDに基づいて」と限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項1及び補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3-1.引用刊行物とその記載事項
(1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2004-214447号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「廃棄電子回路部品収容装置」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア.「【0049】
図11にさらに別の実施形態を示す。この部品収容装置400は、幅が一定で長手形状の容器状を成す収容容器402と、収容容器402の内部に複数並べられて取外し可能に配列される複数の小容器404とを備えている。小容器404は、底壁およびその底壁から上方に突出して四方を囲む側壁から成る容器状を成している。上記小容器404の各々の内部空間が収容室406とされ、それら小容器404毎に一種類ずつの回路部品56が収容される。したがって、小容器404ごと取り出せば、他種類の回路部品56と混ざることがなく、再利用のための回収作業が容易となる。小容器404は、収容容器402より深いものとされており、収容容器402の上端から突出した小容器404の上端部を把持すれば容易に小容器404を取り出し得る。なお、複数の小容器404は、収容容器402の長手方向に平行な方向の寸法が複数種類に異なるものであり、収容される回路部品56の大きさまたは数に応じて収容室406の大きさを種々に変更できる。
【0050】
収容容器402の長手方向に延びかつ互いに対向する両側面410,412には、位置決め係合部としての位置決め突条414が複数個形成されている。本実施形態では、それら位置決め突条414は、収容容器402の長手方向に一定間隔で設けられている。互いに隣接する位置決め突条414の間に形成された空間に小容器404を嵌入させれば、小容器404が収容容器402内で位置決めされる。小容器404が互いに隣接する位置決め突条414の間隔より大きいものである場合には、小容器404の両側面410,412に対向する両側面416,418に、位置決め係合部たる位置決め溝420が形成され、この位置決め溝420と位置決め突条414とが係合されることにより、小容器404の両側面416,418と位置決め突条414との干渉が回避される。なお、小容器404の大きさ(収容容器402に収容された状態で長手方向の寸法)によっては、位置決め突条414との干渉を避けるために両側面416,418に位置決め溝420が複数形成される場合もある。
【0051】
あるいは、図12に示すように、収容容器402の両側面410,412に位置決め溝450を設け、小容器404の両側面416,418に位置決め溝450と係合する位置決め突条452を設けてもよい。本実施形態では、位置決め溝450は横断面形状が概してV字形を成している。また、本実施形態の位置決め溝450は、収容容器402の長手方向に一定間隔で設けられている。小容器404の大きさによっては、両側面416,418に位置決め突条452が複数設けられる場合もある。位置決め溝450および位置決め突条452がそれぞれ位置決め係合部を構成している。」

イ.「【0055】
本発明は、装着ヘッドがXY移動装置に保持され、XY座標面上の任意の位置へ移動させられて電子回路部品を装着するXY移動型電子回路部品装着機に適用することも可能である。その一実施形態を図15に示す。本実施形態における電子回路部品装着機は、回路基板26をX軸方向(図1においては左右方向)に搬送する基板搬送装置600,基板保持装置602,装着装置604および部品供給装置606,608等を備えている。装着装置604の装着ヘッド610がヘッド移動装置たるXY移動装置612により、基板保持装置602に保持された回路基板26の表面に平行な平面内の互いに直交するX軸方向およびY軸方向の成分を有する方向に直線移動させられて部品供給装置606,608から回路部品56を取り出し、基板保持装置602に保持された回路基板26に装着する。XY移動装置612は、Y軸スライド614,Y軸モータ616,送りねじ617,ナットを含むY軸スライド駆動装置,X軸スライド620,X軸モータ622,送りねじ,ナットを含むX軸スライド駆動装置,Y軸,X軸スライド614,620の各移動を案内する案内装置(例えばガイドレールおよびガイドブロック)等を備えている。
【0056】
部品供給装置606は、複数の部品フィーダ630の各部品供給部が一直線に沿って並ぶ状態でフィーダ支持台632に保持されたフィーダ型部品供給装置である。フィーダ支持台632は位置を固定して設けられている。部品供給装置608は複数のトレイを備えるトレイ型部品供給装置である。
【0057】
装着ヘッド610を保持するX軸スライド620には、部品供給装置606,608と基板搬送装置600との間の位置に部品撮像装置636が移動不能に設けられている。部品撮像装置636は、例えば、特開2001-223500公報に記載の部品撮像装置と同様に構成され、回路部品56の投影像あるいは正面像を撮像する。部品撮像装置636により得られた画像に基づいて、回路部品56の装着ヘッド610の中心軸線に対するX軸方向およびY軸方向の位置誤差を含む相対位置誤差が検出される。本電子回路部品装着機も、前記制御装置200と同様、コンピュータを主体とする制御装置638によって制御される。
【0058】
本実施形態における部品収容装置640は、概して幅が一定で長手形状を成す収容容器642を備え、長手方向に沿って複数の収容室644を備えている。部品収容装置640は、それの長手方向が部品フィーダ630の並ぶ方向に平行となる状態でかつ部品供給装置606に近接して配設されている。本実施形態では、部品収容装置640は基板搬送装置600と部品供給装置606との間の位置に、部品供給装置606に近接して設けられている。複数の収容室644の各々には、廃棄される回路部品56が種類毎に分別して収容されるようになっており、複数の部品フィーダ630の各々に対応する状態で設けられている。各収容室644は、対応する部品フィーダ630の各々の幅方向の寸法(部品フィーダ630の長手方向と直角な方向の寸法)に対応する幅(あるいは収容容器642の長手方向に平行な方向の寸法である長さ)となるように設定されるのである。部品収容装置640は、収容容器642と、複数の仕切板等の仕切部材あるいは小容器を含むものとされる。上記仕切部材あるいは小容器は、前記各実施形態で説明したものと同様な構成とすることができ、ここでは図示および説明を省略する。
【0059】
本電子回路部品装着機において、部品撮像装置636による撮像の結果、装着ヘッド610に回路部品56が立ち上がった姿勢であるいは傾いた姿勢で保持されていたり、回路部品56の装着ヘッド610に対する相対位置誤差が設定値以上であったり、リードの曲がりが装着に適さないほど大きかったりすることが検出されれば、その回路部品56は回路基板26に装着されず、装着ヘッド610が、保持された回路部品56の種類に対応する部品収容装置640の収容室644の上方に移動させられて、その回路部品56が廃棄される。本実施形態のように部品収容装置640を部品供給装置606に近接して、各収容室644が複数の部品フィーダ630の各々に対応する状態で設けるとともに、回路部品630の保持位置誤差の検出を部品供給装置606に近い位置において行い得るようにすることにより、廃棄されるべき回路部品56を保持した装着ヘッド610の移動距離を極力小さくすることができる。」

ウ.記載事項ア.の段落【0049】における「図11にさらに別の実施形態を示す。この部品収容装置400は、幅が一定で長手形状の容器状を成す収容容器402と、収容容器402の内部に複数並べられて取外し可能に配列される複数の小容器404とを備えている。」との記載、記載事項イ.の段落【0058】における「本実施形態における部品収容装置640は、概して幅が一定で長手形状を成す収容容器642を備え、長手方向に沿って複数の収容室644を備えている。」との記載、記載事項イ.の段落【0058】における「本実施形態では、部品収容装置640は基板搬送装置600と部品供給装置606との間の位置に、部品供給装置606に近接して設けられている。複数の収容室644の各々には、廃棄される回路部品56が種類毎に分別して収容されるようになっており、複数の部品フィーダ630の各々に対応する状態で設けられている。」との記載及び記載事項イ.の段落【0058】における「部品収容装置640は、収容容器642と、複数の仕切板等の仕切部材あるいは小容器を含むものとされる。上記仕切部材あるいは小容器は、前記各実施形態で説明したものと同様な構成とすることができ、ここでは図示および説明を省略する。」との記載並びに図11及び図15によれば、部品収容装置640を構成する複数の小容器404が、分別して廃棄される回路部品56を収容するために部品供給位置606に近接して設けられることが分かる。

エ.記載事項イ.の段落【0055】における「装着装置604の装着ヘッド610がヘッド移動装置たるXY移動装置612により、基板保持装置602に保持された回路基板26の表面に平行な平面内の互いに直交するX軸方向およびY軸方向の成分を有する方向に直線移動させられて部品供給装置606,608から回路部品56を取り出し、基板保持装置602に保持された回路基板26に装着する。」との記載及び記載事項イ.の段落【0059】における「本電子回路部品装着機において、部品撮像装置636による撮像の結果、装着ヘッド610に回路部品56が立ち上がった姿勢であるいは傾いた姿勢で保持されていたり、回路部品56の装着ヘッド610に対する相対位置誤差が設定値以上であったり、リードの曲がりが装着に適さないほど大きかったりすることが検出されれば、その回路部品56は回路基板26に装着されず、装着ヘッド610が、保持された回路部品56の種類に対応する部品収容装置640の収容室644の上方に移動させられて、その回路部品56が廃棄される。」との記載並びに図11及び図15によれば、装着装置604は、部品供給装置606より回路部品56を取り出して回路基板26に装着することが分かり、また、装着装置604は、部品撮像装置636による撮像の結果、装着ヘッド610に立ち上がった姿勢であるいは傾いた姿勢で保持されていたり、装着ヘッド610に対する相対位置誤差が設定値以上であったり、リードの曲がりが装着に適さないほど大きかったりする回路部品56を回路基板26に装着しないで部品収容装置640に廃棄することが分かる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本件補正発明に則って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「廃棄される回路部品56を収容するために部品供給位置606に近接して設けられる複数の小容器404と、
部品供給装置606より回路部品56を取り出して回路基板26に装着するとともに、部品撮像装置636による撮像の結果、装着ヘッド610に立ち上がった姿勢であるいは傾いた姿勢で保持されていたり、装着ヘッド610に対する相対位置誤差が設定値以上であったり、リードの曲がりが装着に適さないほど大きかったりしていて回路基板26に装着されない回路部品56を前記小容器404に分別廃棄することが可能な装着装置604と、
を備えた電子回路部品装着機における部品収容装置640。」

(2)刊行物2に記載された技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-88570号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「電子回路部品装着機」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
カ.「【0249】
情報記録部は、電子回路組立システムの構成要素であれば、いずれに設けてもよい。例えば、装着ヘッドによって部品供給装置から取り出されたが、回路基板に取り付けられなかった部品を収容する部品収容装置を電子回路組立システムに設ける場合、部品収容装置も構成要素であり、二次元コードあるいは電子タグ等の情報記録部を設ければ、それに記録された情報を種々の態様で利用することができる。
【0250】
装着ヘッドにより取り出された部品が、その位置,姿勢等が装着に適さないものであることや、部品保持具による部品の保持位置誤差が設定値以上であったり、リードの曲がりが大きいものであって装着に適さないものであることが検出装置等により検出され、廃棄部品とされる場合、回路基板に装着されず、部品収容装置に収容される。そのため、部品収容装置として、例えば、未だ公開されていないが、本出願人に係る特願2003-354号の明細書に記載されているように、容器状をなす収容容器の内部空間が複数の仕切部材により仕切られて複数の収容室が設けられたものや、保持体が複数の小容器を保持させられて複数の収容室が設けられたものが提案されている。これら複数の収容室には、例えば、廃棄される部品が種類毎に分別して収容される。収容室は固定して設けてもよく、仕切部材の位置を変更したり、容量の異なる複数種類の小容器の組合わせを変更したりすることにより、部品収容装置が有する収容室の容量(容積),数を異ならせ、装着される部品の種類,数等に応じた収容室を有する部品収容装置とすることもできる。
【0251】
収容室の構成を変更ないし設定する場合、例えば、ホストコンピュータの指示に基づいて作業者が仕切部材や小容器を収容容器や保持体に配置する。この場合、収容容器および保持体に情報記録部として、例えば、電子タグを設け、部品収容装置を個別に識別することができる個別識別情報を記録する。作業者は仕切部材や収容容器の配置時に個別識別情報を情報取得装置により取得してホストコンピュータに記憶させ、ホストコンピュータでは、個別識別情報と、仕切部材や小容器の配置により得られることが予定された収容室の容量,配置等とを対応付けて部品収容装置情報メモリに記憶させる。
【0252】
部品収容装置を電子回路部品装着機に取り付けて使用する場合、ホストコンピュータは、プリント配線板の種類に応じて使用する部品収容装置を設定し、個別識別情報により指示して作業者に電子回路部品装着機に取り付けさせる。取付け後、部品収容装置の収容室を確認する。例えば、仕切部材にマークを設け、マーク取得装置としての撮像装置に撮像させて仕切部材の配置を取得し、設計上、取得されている収容容器の形状,寸法等と併せて収容室の実際の容量,配置,数等を得る。マークの位置は、例えば、仕切部材を取り付けるために、収容容器に予め設定されたピッチで形成された仕切部材取付部の位置および電子回路部品装着機における部品収容装置の位置から得られる。取得された収容室の容量等を、部品収容装置の個別識別情報から得られる予定された収容室の容量,配置と比較し、設定された収容室が設けられているか否かを確認する。設定された収容室が得られていないのであれば、例えば、報知し、作業者に収容室を変更させたり、部品収容装置そのものを交換させたりする。小容器の配置により収容室が設けられる場合も同様である。小容器の場合、小容器にそれの種類(形状,寸法によって識別される)を表す情報記録部を設け、その情報記録部に記録された情報の取得により、保持体に保持されている小容器の種類,数等を取得し、収容室の容量,配置等を得るようにすることも可能である。
【0253】
このように設定された部品収容装置が電子回路部品装着機に取り付けられれば、装着されなかった部品の廃棄時には、複数の収容室の各々について設定された収容部品の種類および収容室の配置に従って装着ヘッドが部品を捨てるべき収容室へ移動させられ、収容させる。この際、複数種類の収容室の各々について収容される部品の数がカウントされ、収容室の位置および収容部品と対応付けて装着制御コンピュータに記憶される。
【0254】
一連の回路基板への部品装着の終了後、部品収容装置は電子回路部品装着機から外されて収容された部品が処理される。収容された廃棄部品のうち、再利用が可能な部品は再利用されるようにされ、不可能な部品は捨てられるのである。部品収容装置が外される際、装着制御コンピュータからホストコンピュータへ、部品収容装置の個別識別情報と、収容室の配置,収容された部品の数,種類等の部品収容関連情報とが対応付けてホストコンピュータへ送られる。廃棄部品の処理作業は、作業者によって行われるのが普通であるが、その際、例えば、処理が行われる部品収容装置の個別識別情報およびそれに対応付けて記憶された情報が表示装置により表示されて作業者に報知され、作業者は作業を容易に行うことができる。収容室の配置や部品収容状況がわかるからである。情報記録部が情報書込みが可能な電子タグによって構成される場合、例えば、部品収容装置が電子回路部品装着機から取り外される際に、部品収容関連情報を電子タグに記憶させてもよく、それにより、例えば、作業者が電子タグに記録された情報を読み取って作業に利用することができる。
【0255】
情報記録部が二次元コードであったり、読取り専用の電子タグである場合、変化情報である収容部品数等を記録することはできないが、部品収容装置の個別識別情報の記録により、部品収容装置の構成の確認や、収容部品の処理時における情報表示に利用することができる。例えば、収容部品の処理時に作業者が個別識別情報を入力し、それに基づいてホストコンピュータは部品収容関連情報を表示装置に表示させるのである。
【0256】
部品収容装置の構成が不変のものであり、収容室の数,容量および配置等が固定である場合には、情報記録部に部品収容装置の個別識別情報および収容室の容量,数,配置等の不変情報である部品収容関連情報を記録しておき、例えば、部品収容装置を電子回路部品装着機に取り付けたとき、情報記録部に記録された情報を取得して、装着機に適した種類の部品収容装置であるかの確認や部品の収容に利用したりすることができる。あるいは情報記録部には個別識別情報のみを記憶させ、コンピュータに個別識別情報と部品収容関連情報とを対応付けて記憶させ、情報記録部の情報の取得により得られる個別識別情報から、部品収容関連情報を得て、部品の収容に利用するようにしてもよい。これは、部品収容装置が収容室を複数有する場合でも、一つのみ有する場合でも同様である。情報記録部が情報の書き込み可能な電子タグであれば、部品収容装置の取外し時に、装着作業中に取得された部品の収容に関する情報を書き込むようにしてもよい。
一旦、部品の収容に使用され、収容部品が処理されていない部品収容装置は、収容室に収容された部品の種類によっても識別されることとなるが、可能であれば、異なる電子回路部品装着機において使用してもよく、同じ電子回路部品装着機であっても異なる時期に使用してもよい。この場合、個別識別情報および部品収容情報から、収容室の配置,収容される部品の種類,各収容室に現に収容されている部品の数等が得られ、収容部品の数を加算して数えることができ、正確に把握し、処理することができる。個別識別情報を設けることにより、部品収容装置を個々に識別し、部品収容履歴が集計して作成されると考えることもできる。
【0257】
部品収容装置が仕切部材が取り付けられる収容容器部を複数備え、それら収容容器部が、寸法および形状の少なくとも一方が異なる複数種類の収容容器部である場合、それら収容容器部の種類,数,配置によって部品収容装置の種類を識別することができる。したがって、この収容容器部の種類等によって識別される部品収容装置の種類を情報記録部に記録させ、その読取りに基づいて、部品収容装置をその種類によって識別するようにしてもよい。」

キ.記載事項カ.の段落【0250】における「保持体が複数の小容器を保持させられて複数の収容室が設けられたものが提案されている。これら複数の収容室には、例えば、廃棄される部品が種類毎に分別して収容される。」との記載、段落【0251】における「情報記録部として、例えば、電子タグを設け」との記載及び【0252】における「小容器の場合、小容器にそれの種類(形状,寸法によって識別される)を表す情報記録部を設け」との記載によれば、廃棄される部品を分別して収容する複数の小容器のそれぞれに、情報記録部としての電子タグを設けることが分かる。

ク.記載事項カ.の段落【0254】の「情報記録部が情報書込みが可能な電子タグによって構成される場合、例えば、部品収容装置が電子回路部品装着機から取り外される際に、部品収容関連情報を電子タグに記憶させてもよく、それにより、例えば、作業者が電子タグに記録された情報を読み取って作業に利用することができる。」との記載及び段落【0255】の「情報記録部が二次元コードであったり、読取り専用の電子タグである場合、変化情報である収容部品数等を記録することはできないが、部品収容装置の個別識別情報の記録により、部品収容装置の構成の確認や、収容部品の処理時における情報表示に利用することができる。」との記載によれば情報記録部である電子タグには、情報の読取り専用のものと、情報の読取りに加えて情報の書込みが可能であるものとがあることが分かる。

ケ.記載事項カ.の段落【0254】の「情報記録部が情報書込みが可能な電子タグによって構成される場合、例えば、部品収容装置が電子回路部品装着機から取り外される際に、部品収容関連情報を電子タグに記憶させてもよく」との記載、段落【0256】の「情報記録部が情報の書き込み可能な電子タグであれば、部品収容装置の取外し時に、装着作業中に取得された部品の収容に関する情報を書き込むようにしてもよい。」との記載及び段落【0256】の「この場合、個別識別情報および部品収容情報から、収容室の配置,収容される部品の種類,各収容室に現に収容されている部品の数等が得られ、収容部品の数を加算して数えることができ、正確に把握し、処理することができる。」との記載によれば、電子タグには、収容される部品の種類,各収容室に現に収容されている部品の数等の部品収容関連情報が記憶されることから、電子タグは、部品と対応していることが分かる。

上記記載事項及び認定事項を総合を総合すると、刊行物2には、次の技術事項(以下、「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されている。

「廃棄される部品を収容するために、それぞれに部品と対応する電子タグを有する複数の小容器を設けること。」

3-2.本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「廃棄される回路部品56」は、その技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「廃棄される部品」に相当し、以下同様に、「部品供給位置に近接して設けられ」は「所定位置に配置され」に、「小容器404」は「廃棄ボックス」に、「部品供給装置606」は「部品供給装置」に、「回路部品56」は「部品」に、「取り出して」は「ピックアップして」に、「回路基板26」は「回路基板」に、「装着する」は「実装する」に、「装着装置604」は「部品装着装置」に、「電子回路部品装着機における部品収容装置640」は「部品実装装置における部品分別廃棄装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「部品撮像装置636による撮像の結果、装着ヘッド610に立ち上がった姿勢であるいは傾いた姿勢で保持されていたり、装着ヘッド610に対する相対位置誤差が設定値以上であったり、リードの曲がりが装着に適さないほど大きかったりしていて回路基板26に装着されない回路部品56」は、装着ヘッド610に保持された「回路部品56」が、「部品撮像装置636」により「回路基板26」への装着がなされないものとされたものであるから、本件補正発明における「回路基板への実装が不可と認識された部品」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、
「廃棄される部品を収容するために所定位置に配置される複数の廃棄ボックスと、
部品供給装置より部品をピックアップして回路基板に実装するとともに、回路基板への実装が不可と認識された部品を前記廃棄ボックスに分別廃棄することが可能な部品装着装置と、
を備えた部品実装装置における部品分別廃棄装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本件補正発明においては、複数の「廃棄ボックス」のそれぞれに「部品と対応する読み書き可能なIDを有」し、「前記IDに基づいて」分別廃棄するのに対し、引用発明においては、複数の小容器のそれぞれが「部品と対応する読み書き可能なIDを有」さず、「前記IDに基づいて」分別廃棄しない点(以下、「相違点」という。)。

3-3.当審の判断
相違点について検討する。
本件補正発明の「ID」とは、本件明細書の段落【0033】の「各廃棄ボックス95には、図4および図5に示すように、回収した電子部品Pの種類を識別できるようにバーコードや2次元コード、あるいはRFIDからなる識別コード(ID)97がそれぞれ付与されている。」との記載並びに図4及び図5によれば、バーコードや2次元コード、あるいはRFIDに記憶された識別コードと解される。
一方、刊行物2に記載された技術事項における「電子タグ」は、部品と対応するものであるから、部品を識別するため情報が記憶されていることは明らかである。
また、刊行物2に記載された技術事項における「電子タグ」は、前記3-1.(2)ク.で認定したとおり、情報の読取りに加えて情報の書込みも可能である。
したがって、刊行物2に記載された技術事項における「部品と対応する電子タグ」は、本件補正発明における「部品と対応する読み書き可能なID」に相当する。
また、刊行物2に記載された技術事項における「小容器」は、その技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「廃棄ボックス」に相当する。
そうすると、刊行物2に記載された技術事項は、本件補正発明の用語を用いて表現すると、「廃棄される部品を収容するために、それぞれに部品と対応する読み書き可能なIDを有する複数の廃棄ボックスを設けること。」ということができる。
ここで、刊行物2の記載事項カ.の段落【0253】における「このように設定された部品収容装置が電子回路部品装着機に取り付けられれば、装着されなかった部品の廃棄時には、複数の収容室の各々について設定された収容部品の種類および収容室の配置に従って装着ヘッドが部品を捨てるべき収容室へ移動させられ、収容させる。」との記載によれば、刊行物2は、部品を部品装着機の装着ヘッドにより部品を収容装置へ分別廃棄するものであるから、引用発明及び刊行物2記載の技術事項は、いずれも電子回路部品装着機における部品収容装置への部品の分別廃棄という共通の技術分野に属するものである。
さらに、刊行物2には、刊行物1の出願番号が記載されていること(前記3-1.(2)カ.段落【0250】参照。)を考慮すれば、刊行物1及び刊行物2に接した当業者であれば、引用発明に刊行物2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。
してみると、引用発明における「小容器」に刊行物2に記載された技術事項における「電子タグ」を適用して、「電子タグ」に基づいて「分別廃棄」するようにして、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは容易に想到し得たことである。

また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成27年3月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成26年7月2日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりである。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開2004-214447号公報)及び刊行物2(特開2009-88570号公報)の記載事項並びに引用発明及び刊行物2に記載された技術事項は、前記第2.[理由]3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.[理由]2.で検討した本件補正発明の補正事項1及び補正事項2を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本件補正発明が、前記第2.[理由]3-2.及び3-3.に記載したとおり、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-29 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-10-23 
出願番号 特願2010-249994(P2010-249994)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 なお秋山 誠  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 中川 隆司
小関 峰夫
発明の名称 部品実装装置における部品分別廃棄装置  
代理人 山本 喜一  
代理人 小林 脩  
代理人 木村 群司  

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