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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J
管理番号 1308959
審判番号 不服2015-10366  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-03 
確定日 2015-12-10 
事件の表示 特願2013- 52167「ロボットシステムおよびワークの搬送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日出願公開、特開2014-176926〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月14日の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 8月26日付け:拒絶理由の通知
平成26年10月29日 :意見書及び手続補正書の提出
平成27年 2月20日付け:拒絶査定
平成27年 6月 3日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出

第2 平成27年6月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年6月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の特許請求の範囲の記載
平成27年6月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、特許請求の範囲の請求項1についての以下の補正を含んでいる。(下線部は、補正箇所である。)
「ワーク配置部に配置されたワークを電磁または気体による吸引力により保持するための複数の保持部分が設けられるロボットハンドと、
前記ワークの形状または大きさに対応して前記複数の保持部分の作動状態および非作動状態を切り替えた状態で、前記ワークを保持するように制御するロボット制御部とを備え、
前記ロボットハンドは、平面視において、前記ロボットハンドの幾何学的中心から、所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の位置においてロボットアームに接続されており、前記ロボットアームは、前記所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の接続部分において、前記ロボットハンドに対して垂直方向に延びる回動軸回りに前記ロボットハンドを回動させるように構成されている、ロボットシステム。」
上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「ロボットアーム」を、「前記ロボットアームは、前記所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の接続部分において、前記ロボットハンドに対して垂直方向に延びる回動軸回りに前記ロボットハンドを回動させるように構成されている」と限定するものであるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例およびその記載事項
(1)本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-214989号公報(以下「引用例1」という)には、「産業用ロボツトのハンド装置」について、図面とともに、次の記載がある。

(ア)
「特許請求の範囲
基板面に複数の吸着素子を配設し、これらの吸着素子の個々に付与したアドレスとワークの形状とを対応させ、このワークの形状に応じて上記吸着素子を選択作動させることを特徴とする産業用ロボットのハンド装置。」(1ページ左欄4?9行)

(イ)
「第4図は従来の吸着ハンドを有する産業用ロボットの一例を示す正面図である。図において、(1)は旋回駆動部、(2)は旋回駆動部(1)により駆動されるコラム、(3)はこのコラム(2)に支持されて周面を摺動しながら上下に移動するブーム、(4)はこのブーム(3)に支持されて左右に移動するアーム、(5)はこのアームの先端部に設けられた回動駆動部、(6)は回動駆動部(5)により駆動される回動軸、(7)はこの回動軸(6)の先端部に設けられた吸着ハンド、(7a)はこの吸着ハンド(7)に設けられた複数のパッドである。(8)はワーク、(9)はこのワーク(8)が載置されるワーク台である。」(1ページ左欄17行?右欄8行)

(ウ)
「〔問題点を解決するための手段〕
この発明に係る産業用ロボットの搬送装置は、吸着ハンドに設けられた多数の吸着素子の個々にアドレスを付与し、これらの吸着素子の内でワーク面に接するものだけを事前にプログラミングして、吸着および吸着解除の動作を行なわせるものである。
〔作 用〕
ワーク面に接する吸着素子のみが吸着動作を行うので、例えば空気式の場合に余分な外気の吸引がないために、パツド内の負圧が低減することはない。また、電磁式の場合には、ワーク面に接しない電磁石には電力の供給を行なわないので、無用な電力消費がない。」(2ページ右上欄14行?左下欄7行)

(エ)
「〔実施例〕
第1図および第2図はこの発明の一実施例による産業用ロボツトのハンド装置を示す図であり、第1図は吸着ハンドを示す正面図および側面図、第2図はこの吸着ハンドの制御系を示すブロツク図である。第1図において、(7)は吸着ハンド、(7a)はこの吸着ハンド(7)に設けられた複数のパッドであり、例えば図示のように縦系列のA?D、横系列の1?2で総数16個のパツド(6)が吸着ハンド(7)の本体に例えば等間隔に固定され、それぞれがチューブ(7b)に接続され、図示のない吸盤駆動装置に連結されている。次に第2図において、(11)はワークの種別情報、(12)はI/Oポート、(13)はCPU、(14)はI/Oポート(12)の指令により作動するロボット制御装置(15)はこのロボツト制御装置の出力によって駆動するロボット駆動装置、(16)はI/Oポート(12)の指令により作動する吸盤制御装置、(17)はこの吸盤制御装置の出力によつて駆動する吸盤駆動装置で、第1図におけるパツド(7a)をI/Oポート(12)の指令に応じてそれぞれを単独に駆動できるようになつている。
上記のように構成されたこの発明による産業用ロボツトのハンド装置では、パッド(7a)が接する第4図におけるワーク(8)の大きさあるいは形状に応じて、あらかじめ選定されたワークの種別情報(11)により、例えば第3図における(ア)図の場合は、1点鎖線で囲まれた形状のワーク(8)の情報をI/Oポート(12)に入力し、この入力信号に応じてCPU(13)による演算結果をI/Oポート(12)に伝送し、吸盤制御装置(16)へ指令を与える。この指令にもとづいて、吸盤駆動装置(17)に連結しているチューブ(7b)群の内黒点で示したB2、B3.C2、C3のパツド(7a)に接続したもののみに負圧を加え、あるいはこの負圧を解除を行うようになつている。この場合の吸盤駆動装置(17)の作動は、I/Oボート(12)を介したロボット制御装置(14)の第1図におけるアーム(4)に対する操作指令に同期してパット(7a)とワーク(8)とが接した位置、あるいはワーク(8)の搬送位置等で行なわれるようになつている。
以下、上記と同様にして(イ)図の場合はA1?A4、B1?B4、C1?C4、D?4の16個のパツド(7a)を、(ウ)図の場合はA2、A3、B2、B3、C2、C3、D2、D3の8個のパツド(7a)を、(エ)図の場合はB2、B3、C1、C2、C3、C4の6個のパッド(7a)がそれぞれ作動することになる。
なお、上記実施例は空気式の吸着ハンドについて説明したが、電磁石群を吸着素子として装着した吸着ハンドの場合でもよく、上記実施例と同様の効果を奏する。」(2ページ左下欄8行?3ページ左上欄16行)

(オ)
「〔発明の効果〕
この発明による産業用ロボツトのハンド装置は、吸着ハンドの本体に装着した吸着素子群のうちで、ワーク面に接するもののみを作動させるように構成したので、1種類のハンドで形状、大きさの異なつた種々のワークの操作ができる効果がある。」(3ページ左上欄17行?右上欄2行)

(カ)上記記載事項(エ)及び第2図の記載から、引用例1には、ロボットハンド装置やハンド装置が取り付けられた産業用ロボット、そしてそれらを制御するためのCPU(13)や、ロボット制御装置(14)等が記載されているから、引用例1にはロボットシステムと呼ぶことができる。

(キ)
上記摘記事項(エ)には、「吸着ハンドの制御系を示すブロック図」について、CPU(13)と吸盤制御装置(16)は、ワーク(8)の大きさあるいは形状に応じた情報の入力を受け、その入力信号に応じたCPU(13)による演算結果を、I/Oポート(12)に伝送し、吸盤制御装置(16)へ指令を与え、当該指令に基づいて、特定のパッド(7a)を作動させる旨の記載、及び吸盤駆動装置(17)の作動は、I/Oポート(12)を介してロボット制御装置(14)のアーム(4)に対する操作指令に同期してパッド(7a)とワーク(8)とが接した位置、あるいはワーク(8)の搬送位置で行われる旨の記載が記載されている。そうすると、引用例1に記載された、CPU、吸盤制御装置及びロボット制御装置から構成される制御系は、ワークの形状または大きさに対応して複数のパッドの作動状態及び非作動状態を切り替えた状態で、ワークを保持するように制御するものであるといえる。

(ク)
上記記載事項(ア)?(オ)及び上記認定事項(カ)?(キ)並びに当業者の技術常識によれば、上記引用例1には、
「ワーク台に載置されたワークを電磁または気体による吸引力により保持するための複数のパッドが設けられる吸着ハンドと、
前記ワークの形状または大きさに対応して前記複数のパッドの作動状態および非作動状態を切り替えた状態で、前記ワークを保持するように制御する制御系とを備えるロボットシステム」(以下「引用例1発明」という)が記載されていると認められる。

3 対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、その機能及び作用からみて、引用例1発明の「ワーク台」、「パッド」、「吸着ハンド」、「制御系」は、それぞれ、本願補正発明の「ワーク配置部」、「保持部分」、「ロボットハンド」、「ロボット制御部」に相当する。
そうすると、両者は、
「ワーク配置部に配置されたワークを電磁または気体による吸引力により保持するための複数の保持部分が設けられるロボットハンドと、
前記ワークの形状または大きさに対応して前記複数の保持部分の作動状態および非作動状態を切り替えた状態で、前記ワークを保持するように制御するロボット制御部とを備えるロボットシステム」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点] 本願補正発明は、前記ロボットハンドは、平面視において、前記ロボットハンドの幾何学的中心から、所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の位置においてロボットアームに接続されており、前記ロボットアームは、前記所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の接続部分において、前記ロボットハンドに対して垂直方向に延びる回動軸回りに前記ロボットハンドを回動させるように構成されているのに対し、引用例1発明はそのようなものでない点。

4 判断
[相違点]について
吸盤タイプの産業用ロボットハンドにおいて、ロボットハンドが、平面視において、前記ロボットハンドの幾何学的中心から、所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の位置においてロボットアームに接続されており、前記ロボットアームは、前記所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の接続部分において、前記ロボットハンドに対して垂直方向に延びる回動軸回りに前記ロボットハンドを回動させるように構成されていることは、従来周知の技術である(必要であれば、一例として、特開2006-7409号公報の【0015】【0023】、図2、3及び特開昭59-152089号公報の第2頁右上欄第5行-左下欄第17行、第1図を参照)。
引用例1において、様々な種類のワークに対応することを課題としている。ここで、より広い範囲に配置してあるワークまでも把持できるように吸着ハンドを構成することによって対応できるワークの形状や大きさが拡がることは当業者にとって自明であることを踏まえると、上記課題を解決しようとして引用例1発明の吸着ハンドに、より広範囲に配置したワークを把持可能とする上記従来周知の技術を適用して本願補正発明とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果も、引用例1発明及び従来周知の技術から予測しうる範囲内のものであって、格別なものであるとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成26年10月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されたものであると認められ、その特許請求の範囲の請求項1は以下のとおり記載されている。
「ワーク配置部に配置されたワークを電磁または気体による吸引力により保持するための複数の保持部分が設けられるロボットハンドと、
前記ワークの形状または大きさに対応して前記複数の保持部分の作動状態および非作動状態を切り替えた状態で、前記ワークを保持するように制御するロボット制御部とを備え、
前記ロボットハンドは、平面視において、前記ロボットハンドの幾何学的中心から、所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の位置においてロボットアームに接続されている、ロボットシステム。」(以下「本願発明」という)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例1の記載事項及び引用例1発明は、前記第2の2に示したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の「ロボットアーム」について、「前記ロボットアームは、前記所定の距離オフセットした前記ロボットハンドの根元側の接続部分において、前記ロボットハンドに対して垂直方向に延びる回動軸回りに前記ロボットハンドを回動させるように構成されている」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4に示したとおり、引用例1発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-29 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-10-19 
出願番号 特願2013-52167(P2013-52167)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 陽牧 初  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 渡邊 真
三澤 哲也
発明の名称 ロボットシステムおよびワークの搬送方法  
代理人 宮園 博一  
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