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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1309107
審判番号 不服2014-12901  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-03 
確定日 2015-12-22 
事件の表示 特願2012-226416「ウエハーレベル光学部品を用いた自動焦点/ズームモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 20267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2007年(平成19年)4月24日、米国)を国際出願日とする特願2010-506259号の一部を平成24年10月11日に新たな特許出願としたものであって、平成25年9月10日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月3日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
平成26年7月3日付けの手続補正は新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の請求項1を補正するものでもないから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものと認められる。
「基板と、
前記基板に取り付けられるとともに、光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置と、
前記画像取込装置の前記上面に強固に固定された第1レンズユニットと、
第2レンズユニットと、
前記基板に取り付けられるとともに、前記第1レンズユニットの上方に前記第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータを含み、
前記第1レンズユニットが前記画像取込装置の前記上面の外周を超えて延びない
カメラモジュール。」

3 引用例
(1)引用例1
ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された特開2005-148109号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(ア)「【特許請求の範囲】」、
「被写体光を光電変換する撮像素子と、該撮像素子の撮像領域に被写体光を導く撮像光学系と、該撮像光学系の少なくとも一部を光軸方向に移動させるためのアクチュエータと、少なくとも前記撮像素子と前記撮像光学系を内包する外枠部材と、を有し、
前記アクチュエータは、コイルと磁石で構成され、
前記外枠部材の側周面に、前記アクチュエータの少なくとも一部が周回して配置されていることを特徴とする撮像装置。」(【請求項1】)

(イ)「【背景技術】」、
「これらの撮像装置に使用される撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の固体撮像素子が使用されている。」(段落【0003】)

(ウ)「(第1の実施の形態)」(段落【0035】)、
「図2は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置100の斜視図である。この撮像装置100が図1に示す撮像装置Sに相当する。」(段落【0035】)、
「図2に示すように撮像装置100の外表面は、撮像素子の実装されたプリント基板11と、携帯端末の他の基板に接続のためのコネクト基板17、このプリント基板11とコネクト基板17を接続するフレキシブルプリント基板FPC、外枠部材12、この外枠部材12の上面に組み込まれ、被写体光が入射するための開口部7を有する蓋部材14で構成されている。」(段落【0036】)、
「図3は、本発明の撮像装置100を図2に示すF-F線で切断した断面図である。同図は、撮像光学系の光軸Oを境に、右側は撮像光学系の焦点を過焦点距離に合わせた状態を示し、左側は撮像光学系の焦点を被写体側に所定量移動させ近距離に焦点を合わせた状態を示している。」(段落【0037】)、
「同図において、外枠部材12の内部は、第1レンズ1、撮像光学系の開口F値を決める開口絞り4、第2レンズ2、不要光遮断のための固定絞り5、第3レンズ3、で構成された撮像光学系50と、赤外光を遮断するための赤外カットフィルタ7、プリント基板11上に実装された撮像素子8、弾性部材である圧縮コイルバネ9、蓋部材14で構成されている。また外部では、外枠部材12とプリント基板11、外枠部材12と蓋部材14は、例えば紫外線硬化型の接着剤Bによりその周囲が封止されている。」(段落【0038】)、
「図示のように第1レンズ1、第2レンズ2は、光学有効面以外のフランジ部で相互に当接され、接着剤等で互いに固着することでユニット化されており、他の部材を介さず構成することで、相互のレンズ間隔を誤差無く組み立てることができるようになっている。」(段落【0039】)、
「第3レンズ3には、撮像素子8に当接する当接部3dが形成されている。この当接部3dにより第3レンズ3は、撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決めることができるようになっている。更に、撮像素子8側に赤外カットフィルタ7が接着剤Bにより接着固定されている。この第3レンズ3は、ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定されている。これにより光軸と直交する方向の位置決めがなされる。」(段落【0040】)、
「更に、第3レンズ3の被写体側にはリング状の凸部3tが形成されており、この凸部3tと嵌合するように第2レンズ2にリング状の溝部2mが形成されている。この嵌合部により、第3レンズ3に対して、一体化された第1レンズ1及び第2レンズ2は光軸方向への移動が可能となっている。なお、この嵌合部は少なくとも2箇所のボスとこれに嵌合する穴部で形成することでもよい。」(段落【0041】)、
「第2レンズ2には弾性部材である圧縮コイルバネ9が掛けられ、第1レンズ1及び第2レンズ2を撮像素子8の方向に付勢している。更に、図示のように本発明に係るアクチュエータであるリング状の磁石21が接着固定されている。」(段落【0042】)、
「また、外枠部材12の内周面には、本発明に係るアクチュエータである筒状に形成されたコイル22が周回して固定されており、コイル22は図示しないプリント基板11又はフレキシブルプリント基板FPCの接続端子と接続され電気的に断続できるようになっている。」(段落【0043】)、
「以上のように構成された撮像装置100の動作について説明する。」(段落【0044】)、
「図3に示す撮像装置100は、コイル22に通電しない時は、光軸Oの右側に示すように圧縮コイルバネ9の付勢力により第1レンズ1及び第2レンズ2は撮像素子8方向に付勢され、第2レンズ2と第3レンズ3は図中Aで示した面で当接する。」(段落【0045】)、
「この時、撮像光学系50は、無限遠を被写界深度内に含む過焦点位置に焦点の合った状態となる。」(段落【0046】)、
「一方、磁石21とコイル22の間で斥力が発生する方向、即ち反発する方向に磁界が発生するようにコイル22に通電すると、この斥力により磁石21と共に接着固定された第1レンズ1、第2レンズ2は、圧縮コイルバネ9の付勢力に抗して、第3レンズ3の凸部3tと第2レンズ2の溝部2mに沿って光軸方向の被写体側へ移動する。この時、図示光軸Oの左側に示すように、第1レンズ1のフランジ部と蓋部材14に形成された突起部14tが当接した位置まで移動する。この時、撮像光学系は近距離に焦点の合った状態となる。」(段落【0047】)、
「即ち、図3に示す撮像装置は、外枠部材12の内周面に周回して配置されているコイル22に通電を行わない時は、圧縮コイルバネ9の付勢力で第1レンズ及び第2レンズ2を第3レンズ3に当接させることにより撮像素子8側に位置させて過焦点距離に焦点の合った状態とし、磁石21とコイル22の間で斥力の生じる方向に磁界が発生するようコイル22に通電することで付勢力に抗して第1レンズ及び第2レンズ2を蓋部材14に当接するまで移動させ近距離側に焦点の合った状態とするものである。」(段落【0048】)、
「このように、外枠部材の内周面に、アクチュエータの一部であるコイルを周回して配置することにより、撮像光学系の周囲に体積効率よく配置でき、撮像装置を小型に保ったまま、簡単な構成及び簡単な駆動方法により低コストで姿勢差のない正確な位置決めのできる近接撮影可能な撮像装置を得ることが可能となる。」(段落【0049】)、
「また、弾性部材により付勢され停止する位置と、アクチュエータにより移動した位置との停止位置とすることにより、弾性部材により付勢され停止する位置では、通電が不要であり省電化できる。」(段落【0050】)

(エ)図2は次のとおりである。


(オ)図3は次のとおりである。


イ 上記アの各事項によれば、引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「被写体光を光電変換する撮像素子と、該撮像素子の撮像領域に被写体光を導く撮像光学系と、該撮像光学系の少なくとも一部を光軸方向に移動させるためのアクチュエータと、少なくとも前記撮像素子と前記撮像光学系を内包する外枠部材と、を有し、
前記アクチュエータは、コイルと磁石で構成され、
前記外枠部材の側周面に、前記アクチュエータの少なくとも一部が周回して配置されている
撮像装置であって、
前記撮像素子としては、固体撮像素子が使用されており、
前記撮像素子はプリント基板11上に実装され、
前記撮像光学系は、第1レンズ1、撮像光学系の開口F値を決める開口絞り4、第2レンズ2、不要光遮断のための固定絞り5、第3レンズ3、で構成されており、
外枠部材12とプリント基板11、外枠部材12と蓋部材14は、例えば紫外線硬化型の接着剤Bによりその周囲が封止されており、
第1レンズ1、第2レンズ2は、光学有効面以外のフランジ部で相互に当接され、接着剤等で互いに固着することでユニット化されており、
第2レンズ2には弾性部材である圧縮コイルバネ9が掛けられ、第1レンズ1及び第2レンズ2を撮像素子8の方向に付勢し、
第2レンズ2には、アクチュエータであるリング状の磁石21が接着固定されており、
第3レンズ3には、撮像素子8に当接する当接部3dが形成されており、この当接部3dにより第3レンズ3は、撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決めることができるようになっているとともに、この第3レンズ3は、ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定されており、これにより光軸と直交する方向の位置決めがなされ、
第3レンズ3の被写体側にはリング状の凸部3tが形成されており、この凸部3tと嵌合するように第2レンズ2にリング状の溝部2mが形成され、この嵌合部により、第3レンズ3に対して、一体化された第1レンズ1及び第2レンズ2は光軸方向への移動が可能となっており、
外枠部材12の内周面には、アクチュエータである筒状に形成されたコイル22が周回して固定されており、
外枠部材12の内周面に周回して配置されているコイル22に通電を行わない時は、圧縮コイルバネ9の付勢力で第1レンズ及び第2レンズ2を第3レンズ3に当接させることにより撮像素子8側に位置させて過焦点距離に焦点の合った状態とし、磁石21とコイル22の間で斥力の生じる方向に磁界が発生するようコイル22に通電することで付勢力に抗して第1レンズ及び第2レンズ2を蓋部材14に当接するまで移動させ近距離側に焦点の合った状態とする
撮像装置。」

(2)引用例2
ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された特開2005-295050号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに以下の記載がある。

(ア)「【特許請求の範囲】」、
「少なくとも、電極が形成された基板と、当該基板に実装された撮像素子と、当該撮像素子上に当該撮像素子の受光領域を覆うように実装された筐体と、で構成される事を特徴とするカメラモジュール。」(【請求項1】)

(イ)「【発明が解決しようとする課題】」、
「基板上に筐体を実装する際には、筐体に保持されたレンズの光軸と固体撮像素子面とを垂直にする必要がある。しかしながら、筐体が実装される基板は、通常フレキシブル基板やセラミック基板等であり歪みや撓みが生じやすいため、筐体を基板上に実装する際、筐体が基板に対して傾き、それに伴ってレンズの光軸と固体撮像素子面との間に傾きが生じてしまうことがあった。レンズの光軸と固体撮像素子面との間に傾きが生じたものは、当然ながら良好な画像を得ることはできない。」(段落【0005】)

(ウ)「【発明の効果】」
「本発明では、レンズを保持した筐体を固体撮像素子上に直接実装しているため、従来のように基板の歪みや撓みによりレンズの光軸と固体撮像素子面との間で角度的なずれがなくなり良好な画像が得られる。また、固体撮像素子やワイヤーを樹脂にて保護するようにしているため、固体撮像素子を覆っていた筐体部分のスペースが不要となり、筐体の外形サイズを小さくすることができる。」(段落【0016】)

(エ)「【発明を実施するための最良の形態】」
「基板に固体撮像素子を実装し、固体撮像素子の受光エリア外の部分にレンズ付きの筐体を搭載する。固体撮像素子の電極と基板の電極とはワイヤーにより接続し、ワイヤー全体と固体撮像素子の外部に露出した部分には樹脂を塗布して保護する。」(段落【0017】)

(オ)「【実施例1】」、
「図1は、本発明の一実施例を示す概略断面図である。尚、従来と同部材には同符号を付してある。基板1上には固体撮像素子2が接着剤(不図示)により固定されており、導電性のワイヤー3により基板1上に形成された電極1aとの電気的な導通がなされている。ワイヤー3や固体撮像素子2の外周部は、そのままではショートや破損の恐れがあるため、例えばエポキシ系の樹脂10等を塗布して外部から保護する必要がある。樹脂10は、少なくともワイヤー3と固体撮像素子2の外周部を覆う分だけ塗布されていればよく、従来のような筐体4を用いて覆うのに比べて外形サイズが大きくなることはない。つまり、樹脂10を塗布するスペースの方が筐体4で覆うスペースより小さくて済む。また、基板1としてはセラミック材質のものや、ガラスエポキシ又はフレキシブル基板等が挙げられるが、用途に応じて適宜選択が可能である。」(段落【0018】)、
「固体撮像素子2上には、受光エリア2aを覆うようにレンズ11aが組み込まれた筐体11が実装されている。一般に固体撮像素子2の受光エリア2a外周は、絶縁膜(不図示)で覆われたシリコン部分であり、軽量な部品であれば乗せることのできるスペースが存在する。筐体11は、プラスチック等からなる軽量な部品であり、この受光エリア2a外周のスペースに接着剤(不図示)により固定されている。但し、製造する際には接着剤が固体撮像素子2の受光エリア2aにはみ出さないように注意する必要がある。」(段落【0019】)、
「一般的に固体撮像素子は、シリコン(Si)から形成されており、その表面は平坦であり、尚且つフレキシブル基板やセラミック基板等と比べて応力に対する歪みや撓みが少ない。そのため、筐体を固体撮像素子上に直接実装すれば、必然的にレンズの光軸と固体撮像素子面との角度的な位置決めが正確になされる。」(段落【0020】)、
「また、ワイヤー3に塗布する樹脂10に遮光性のものを用い、筐体11と固体撮像素子2との接合面端部もいっしょに覆うことにより、筐体11と固体撮像素子2との隙間から筐体11内部にゴミや光が侵入するのを防止することができると共に、筐体11の固体撮像素子2に対する接着強度を高めることができる。筐体11と固体撮像素子2との接着面端部に塗布する樹脂は、ワイヤー3に塗布する樹脂10とは別にして別途塗布するようにしてもよいが、作業性を考えるとワイヤー3に塗布する樹脂10で一度に覆ってしまうのがよい。尚、光の侵入を防止するという意味では、筐体11を固体撮像素子2上に接着する接着剤にも遮光性のものを用いるのが望ましい。」(段落【0021】)

(カ)図1は次のとおりである。


イ 上記アの各事項によれば、引用例2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「基板上に筐体を実装する際には、筐体に保持されたレンズの光軸と固体撮像素子面とを垂直にする必要があるが、筐体が実装される基板は、通常フレキシブル基板やセラミック基板等であり歪みや撓みが生じやすいため、筐体を基板上に実装する際、筐体が基板に対して傾き、それに伴ってレンズの光軸と固体撮像素子面との間に傾きが生じてしまうことがあったため、その課題を解決するために、レンズを保持した筐体を固体撮像素子上で、受光エリア外周のスペースに接着剤より固定することにより、従来のように基板の歪みや撓みによりレンズの光軸と固体撮像素子面との間で角度的なずれがなくなり良好な画像が得られる。」

4 対比
(1)本願発明と引用発明1とを以下に対比する。
ア 引用発明1の「プリント基板11」は、本願発明の「基板」に相当する。

イ 引用発明1の「固体撮像素子が使用されて」いる「撮像素子8」が、本願発明の「光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置」に相当することは明らかである。

ウ 引用発明1の「撮像素子8」は「プリント基板11上に実装され」ているから、引用発明1は、本願発明の「前記基板に取り付けられるとともに、光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置」との特定事項を備えている。

エ 引用発明1の「第3レンズ3」は、本願発明1の「第1レンズユニット」に相当する。

オ 引用発明1の「光学有効面以外のフランジ部で相互に当接され、接着剤等で互いに固着することでユニット化されて」いる「第1レンズ1、第2レンズ2」は、本願発明の「第2レンズユニット」に相当する。

カ 引用発明1の「第2レンズ2」に「接着固定され」た「リング状の磁石21」と「外枠部材12の内周面に」「周回して固定され」た「筒状に形成されたコイル22」とを含む「アクチュエータ」は、「外枠部材12の内周面に周回して配置されているコイル22に通電を行わない時は、圧縮コイルバネ9の付勢力で第1レンズ及び第2レンズ2を第3レンズ3に当接させることにより撮像素子8側に位置させて過焦点距離に焦点の合った状態とし、磁石21とコイル22の間で斥力の生じる方向に磁界が発生するようコイル22に通電することで付勢力に抗して第1レンズ及び第2レンズ2を蓋部材14に当接するまで移動させ近距離側に焦点の合った状態とする」ものであるから、本願発明の「第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータ」に相当する。

キ 引用発明1では、「第3レンズ3の被写体側にはリング状の凸部3tが形成されており、この凸部3tと嵌合するように第2レンズ2にリング状の溝部2mが形成され、この嵌合部により、第3レンズ3に対して、一体化された第1レンズ1及び第2レンズ2は光軸方向への移動が可能となって」いる。
したがって、引用発明1の「第1レンズ1、第2レンズ2」(本願発明の「第2レンズユニット」に相当。)は、「第3レンズ3」(本願発明の「第1レンズユニット」に相当。)の上方にあるといえる。

ク 上記カ及びキによれば、引用発明1は、本願発明の「第1レンズユニットの上方に」「第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータ」との特定事項を備えているといえる。

ケ 引用発明1の「アクチュエータである筒状に形成されたコイル22」は、「外枠部材12の内周面に」「周回して固定されており」、「外枠部材12」と「プリント基板11」(本願発明の「基板」に相当。)「は、例えば紫外線硬化型の接着剤Bによりその周囲が封止されて」いるから、引用発明1は、本願発明の「基板に取り付けられる」「レンズアクチュエータ」との特定事項を備えているといえる。

コ 引用発明1の「撮像装置」は、本願発明の「カメラモジュール」に相当する。

(2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明1とは、
「基板と、
前記基板に取り付けられるとともに、光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置と、
第1レンズユニットと、
第2レンズユニットと、
前記基板に取り付けられるとともに、前記第1レンズユニットの上方に前記第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータを含む、
カメラモジュール。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、第1レンズユニットが、画像取込装置の上面に強固に固定されるとともに、画像取込装置の上面の外周を超えて延びないのに対し、引用発明1はそうなっていない点。

5 相違点の判断
(1)ア 引用発明1では、「第3レンズ3」には、「撮像素子8に当接する当接部3dが形成されており、この当接部3dにより第3レンズ3は、撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決めることができるようになっているとともに、」「ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定されており、これにより光軸と直交する方向の位置決めがなされ」ており、また、「前記撮像素子としては、固体撮像素子が使用されて」いる。
すなわち、引用発明1では、第3レンズ3のボス3cをプリント基板11に接着固定することにより、光軸と直交する方向の位置決め(第3レンズの光軸を固体撮像素子である撮像素子8の面と直交させるように位置決めすることを意味するものと解される。)がなされていることになる。

イ 他方、引用例2には、「基板上に筐体を実装する際には、筐体に保持されたレンズの光軸と固体撮像素子面とを垂直にする必要があるが、筐体が実装される基板は、通常フレキシブル基板やセラミック基板等であり歪みや撓みが生じやすいため、筐体を基板上に実装する際、筐体が基板に対して傾き、それに伴ってレンズの光軸と固体撮像素子面との間に傾きが生じてしまうことがあったため、その課題を解決するために、レンズを保持した筐体を固体撮像素子上で、受光エリア外周のスペースに接着剤より固定することにより、従来のように基板の歪みや撓みによりレンズの光軸と固体撮像素子面との間で角度的なずれがなくなり良好な画像が得られる。」との技術的事項(上記3(2)イ)が記載されている。

ウ 引用発明1と引用例2は、いずれも本願発明と同様にカメラモジュールの技術分野に属するものであるところ、これらにともに接した当業者であれば、引用発明1では、第3レンズ3のボス3cがプリント基板11に接着固定されているので、第3レンズ3がプリント基板11に対して傾き、それに伴って第3レンズ3の光軸と固体撮像素子である撮像素子8の面との間に傾きが生じてしまうとの課題があることを認識できるものと認められる。

エ そうすると、引用発明1において、上記ウの課題を解決するために、第3レンズ3(本願発明の「第1レンズユニット」に相当。)のボス3cをプリント基板11に接着固定するとの構成に代えて、引用例2に記載された上記技術的事項を採用し、上記[相違点]に係る構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

オ あるいは、引用発明1では、第3レンズ3と固体撮像素子である撮像素子8の面との相互配置関係を固定しているものであるといえるところ、その相互配置関係の固定の手法を、引用例2に記載された上記技術的事項における「固体撮像素子上で、受光エリア外周のスペースに接着剤より固定する」との手法に置換して、上記[相違点]に係る構成となすことは、当業者が適宜なし得たことであるともいえる。

(2)本願発明の作用効果は、引用発明1及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が予測し得たことである。

(3)したがって、本願発明は、引用発明1及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-17 
結審通知日 2015-07-21 
審決日 2015-08-11 
出願番号 特願2012-226416(P2012-226416)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻本 寛司  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 山村 浩
鉄 豊郎
発明の名称 ウエハーレベル光学部品を用いた自動焦点/ズームモジュール  
代理人 清原 義博  

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