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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1309108
審判番号 不服2014-15005  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-31 
確定日 2015-12-21 
事件の表示 特願2010-151957「光透過性部材」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月19日出願公開,特開2012-14051〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
平成22年 7月 2日:特許出願
平成26年 1月16日:拒絶理由通知(同年同月20日発送)
平成26年 3月12日:意見書
平成26年 3月12日:手続補正
平成26年 4月30日:拒絶査定(同年5月2日送達)
平成26年 7月31日:審判請求
平成27年 8月11日:拒絶理由通知(同年同月12日発送)
平成27年10月 9日:意見書
平成27年10月 9日:手続補正(以下「本件補正」という。)

2 当合議体の拒絶の理由
平成27年8月11日付けの拒絶理由通知による当合議体の拒絶の理由のうち,理由1は,以下のとおりである。

「1 本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号(委任省令要件・実施可能要件)並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
…(省略)…
[理由1]記載不備について
(1)明細書及び図面の記載に以下の点で不備がある。
ア 図1?図3では,「平坦部」と指し示された箇所に凹凸があるように表現される一方,「平坦部」と指し示されていない箇所が平坦なように見受けられる。よって,図1?図3をどのように把握すればよいのかが理解しがたいとともに,「平坦部」の意義も不明確になっているので,委任省令要件違反となる。

イ 【0030】によれば,高さの最小値Hmin(谷の最深部)を高さゼロとしているとのことであるが,図3では,「H」の位置が谷の最深部に対応するように表現されていない。よって,【0030】の記載が不明となるので,委任省令要件違反となる。

ウ 【0052】の【表1】には以下の不備があるので,製造条件が示されていないことになり,実施可能要件違反となる。
(ア)「WA」の意義が不明である。

(イ)「研磨材」として記載された番号(「1000」,「2000」など)の意義が不明である。

(ウ)実施例・比較例のNoが異なり,ヒストグラム形状が異なるにもかかわらず,製造条件が同じものがある(実施例1と4,実施例12と比較例1など)。よって,製造条件の開示が十分でない。

(エ)「加工速度」欄について,ノズルが「10×2」のものは,加工速度の数値が記載される一方,ノズルが「F2-4」のものは,「cvg」の値が記載されている。しかしながら,ノズルの種類が異なることにより,なぜ,「加工速度」の特定の仕方が異なることになるのかが不明瞭である。
(カバレッジ(coverage)の通常の意味を辞書等で明らかにし,意見書において説明されたい。)

エ 【0061】によれば,図29?図32には,実施例及び比較例のヒストグラムが記載されているとのことであるが,これらの図では,いずれも,面高さ0から一定程度の面高さの値まで確率密度が0となっている。例えば,実施例1(図29)では少なくとも面高さ3μmまでが,実施例10(図32)では少なくとも面高さ4μmまでが,確率密度0である。
他方,面高さ0は谷の最深部に対応する(【0030】)のであり,実施例及び比較例はブラスト加工により製造している(【0050】等)ことからすると,面高さ0から一定程度の面高さの値までであっても,ある程度の確率密度が存在するものと解される。
そうすると,図29?図32の各実施例及び各比較例において,面高さ0から一定程度の面高さの値までの確率密度が0になっていることは不自然であり,よって,これらの測定結果は信憑性に乏しいことになる。
その結果,これらの測定結果により特定された種々の条件についても信憑性に欠けることになり,本願の請求項に係る発明が,課題が解決できるように実施できるのかが不明であって,実施可能要件違反となる。

オ 【0068】には,「反射率が全角度において7%以下であり(図37参照)」と記載されているところ,この記載の意味が不明である。
すなわち,「全角度に」おける「反射率」との文言と,図37の「30度傾斜光 反射率」との表題とからすると,「反射率が全角度において7%以下であ」るとは,30度傾斜光(「30度」は入射角の大きさを意味すると解するのが自然である。)を入射させたときの反射光の反射角が,実施例のものでは,乱反射が生じることにより,0?90度の範囲たり得るところ,そのすべての角度範囲において,反射率が7%以下ということを意味していると思われる。しかしながら,図37の横軸は波長となっており,「角度」とは無関係であるため,上記の理解と図37とが対応しない。このように,【0068】に「(図37参照)」と記載された結果,上記記載の意味が不明となっているので,委任省令要件違反となる。
(【0068】の上記記載により,出願人がそもそも何を表現したかったのかを意見書において明らかにした上で,その表現したかった内容が的確に表現されるように,新規事項追加とならない範囲で補正をすることを検討されたい。)

カ 請求項1には,最頻値の確率密度の上限として30%が特定されているが,このような上限とする技術的意義が明細書及び図面の記載からは不明である。

(2)請求項の記載には以下の点で不備がある。
ア 請求項1について
(ア)「高さ」の意義が,上記(1)イ及びエを踏まえると,明確でない。
(後記[理由2]では,とりあえず,高さの最小値Hmin(谷の最深部)が高さゼロであると解することにする。)

(イ)「所定サイズ毎の微小な区画」が明確でない。
「所定サイズ」を小さくすれば,最頻値の確率密度や分散の値は収束するものと解されるが,「微小」と記載されているにとどまり,所定サイズの取り方によっては,ある具体的態様が,請求項1の範囲に含まれたり含まれなかったりすることが生じ得るので問題となる。
(請求項2の特定事項を請求項1に追加する方向で検討されたい。)

(ウ)「前記ヒストグラムにおける最頻値の確率密度が10?30%」との特定があるが,「最頻値」を計測するための前提となる高さの区分の単位(【0037】では0.1μm毎とされている。)が明確でない。
すなわち,一の具体的態様であっても,高さの区分の単位を変更すると,最頻値の確率密度が変化してしまうと解され(例えば,図29の実施例3で,高さの区分の単位を0.5μmとすると,確率密度のピークは30%を超えると解される。),よって,高さの区分の単位の取り方によって,ある具体的態様が,請求項1の範囲に含まれたり含まれなかったりすることが生じ得るので問題となる。

(エ)「前記反射面の反射率が全角度において7%以下である」の意義が,上記(1)オを踏まえると,明確でない。

(オ)上記(1)エを踏まえると,請求項に係る発明が,課題を解決できていることになるのかが不明であり,サポート要件違反となる。

イ 請求項2?6についても,上記アの各指摘事項が,関連する限りにおいて成り立つ。」

3 特許請求の範囲
本件出願の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。
「 【請求項1】
光学的に透明な材質によって形成された光透過性部材の反射面に微細な凹凸が形成されており,
前記反射面を撮影した1000倍画像における0.2913μm四方の1ピクセルの範囲を1区画として分割して,各区画における高さを測定して得た測定値に基づくヒストグラムを形成したとき,前記ヒストグラムにおける最頻値の確率密度が10?30%であり,かつ,前記高さに基づいて算出した前記ヒストグラムにおける分散(σ^(2))が0.4(μm^(2))未満となるよう前記反射面の凹凸が形成されていることを特徴とする光透過性部材。
【請求項2】
前記反射面の表面粗さがRaで0.5μm以下である請求項1記載の光透過性部材。
【請求項3】
前記反射面の表面粗さがRzで3μm以下である請求項1又は2記載の光透過性部材。
【請求項4】
前記光透過性部材が透明板であり,前記反射面を前記透明板の片面に形成したことを特徴とする請求項1?3いずれか1項記載の光透過性部材。
【請求項5】
平行透過率が20%以上,ヘイズ値20?70%であると共に,前記反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下である請求項1?4いずれか1項記載の光透過性部材。」

第2 当合議体の判断
1 理由1(1)ウについて
(1) 段落【0052】の表1(本件補正後のもの,以下,同じ。)には,「研磨材(WA)」の表頭が記載され,また,セルには,「1000」等の数字が記載されている。加えて,表1には,「加工程度(cvg)」の表頭が記載され,そのセルには,「100%cvg」等と記載されている。
この点に関し,請求人は,「WA」が「ホワイトアランダム」の略称であることは当業者において周知であり,また,「1000」等が粒度範囲を表すことも,当業者において周知であると主張する。加えて,請求人は,「cvg」はショットピーニングの加工程度を示すもので,被加工材への加工全面積AとAに含まれる圧痕面積の総和Bより,カバレージC=B/A×100(%)と定義するものであると主張する。
確かに,ホワイトアランダムは周知であり,「WA」と略称されることもある。また,研磨材の粒度範囲を「1000」等の値で表すことも周知である。加えて,「カバレージ」が「cvg」と略称されることも多い。
しかしながら,周知性に関する請求人の立証は不十分であるから,表1に記載の用語等が,請求人主張の意味であることが,明確であるとまではいえない。すなわち,第1号証は請求人の特許公報であり,また,本件出願時点における公知文献ではない(職権により公開公報に置き換えて善解しても公知でない。)。さらに,第2号証も請求人のホームページであり,また,職権により調査・閲覧したところ,その著作権表示は2015年である。加えて,「ショットピーニング」と「ブラスト加工」は,表面処理手法としては類似するものの,処理目的,ショット材等においては全く異なる。
請求人の主張のように,請求人は表1に記載の用語等を請求人が主張する意味で使用したかもしれないけれども,請求人の主張及び証拠等を考慮しても,当業者において,表1に記載の用語等が,請求人主張の意味であることが明確であるとまではいえない。

(2) 仮に,周知性等について措くとしても,表1に加え,本件出願の発明の詳細な説明及び各図を参照すると,「WA」,「1000」,「cvg」等の意味を,請求人が主張するように解釈することは,困難である。あるいは,本件補正により表1において重複する製造条件のものが削除され,表1の外見において整合性が図られたとしても,本件出願の発明の詳細な説明及び各図を参照すると,依然として,表1の製造条件の開示は十分であるとはいえない。その理由は,以下のとおりである。
ア 表1の実施例10と実施例11は,表1に開示された範囲では製造条件が同一である。また,実施例10に対応する図12からは,「WA#1000(60%)」との記載が見て取れ,これは,表1において「研磨材(WA)」が「1000」であるとの記載と整合する。しかしながら,実施例11に対応する図13からは,「WA#1000(60%)+WAA#3000」との記載が見て取れ,表1からは不明な製造工程の存在がうかがえる。そして,図29(A)からは,実施例10及び実施例11のヒストグラムが,それぞれ,異なることが見て取れる。
そうしてみると,実施例10と実施例11は,「WAA#3000」の製造条件の有無で異なると思われるところ,「WAA」の意義が不明であり,また,表1とも整合しない。加えて,実施例1?実施例9に対応する図4?図11からは,「Nano A」?「Nano G」,「AR#1200」?「AR#3000」との記載が見て取れ,「Nano」及び「AR」の意義が不明であり,また,表1とも整合しない。さらに,表1によると,実施例1,実施例2及び実施例5の研磨材は同一と思われるが,図4,図5及び図7からは,それぞれ,「Nano A」,「Nano B」及び「Nano G」との記載が見て取れ,異なっている。また,アランダムの英語表記は「alundum」であるから,「AR」は「アランダム」の略称とは考え難い。

イ さらに,段落【0027】,【0030】及び【0031】には,それぞれ,「そこで,本発明の発明者は反射面の表凹凸形状が一例として図1に断面形状を模式的に示すように,山頂に平坦部が形成されている場合,又は,図2に示すように,山間(谷)に平坦部が形成されている場合,更にはこれらが混在したものである場合等,一定の割合で平坦部を備えるものであれば,この平坦部においては透過像(透過光)の乱反射が抑制できる結果,透過像にある程度の輪郭の鮮明さを維持することが可能であり,これにより,光透過性部材に防眩性を付与しつつ,透過像の鮮明さを維持するという,相反する特性を同時に付与できるのではないかと予測した。」,「光透過性部材の反射面に,図1に示したような平坦部が形成されていると仮定すると,この反射面を細かい区画に分割して,各区画における高さ〔凹凸面における表面の高さの最小値Hmin(谷の最深部)をゼロとし,これを基準とした高さ〕を測定すると,平坦部に位置する区画の高さは,略同一の高さとして測定される筈である。」及び「この測定データに基づいてヒストグラムを作成した場合,平坦部が反射面中に所定の割合で形成されていれば,平坦部の高さに対応する高さが最頻値として出現することとなり,この最頻値の確率密度を,反射面全体に対する平坦部の面積比に対応したものと捉えることができる。」と記載されている。
しかしながら,実施例6?実施例9の加工1の加工程度(cvg)は100%であり,また,加工1の後,研磨材の粒度範囲がより粗い加工2が施されているから,ガラス表面の加工全面積に圧痕が存在し,平坦部は消失しているはずである。
それにもかかわらず,実施例6?実施例9は,良好な結果が得られている。

ウ 加えて,表1の実施例10は,加工程度が60%cvgである。したがって,ガラス表面の加工全面積の60%に圧痕(凹部)が存在し,残り40%は図1の山頂の平坦部のようになるから,そのヒストグラムは,ピークが約40%で,かつ,ピークよりも面高さが高い所の確率密度は0%になるはずである。
しかしながら,図29(A)からは,ピークが30%を下回り,かつ,ピークよりも面高さが0.5μm以上高い所まで確率密度が0%でない様子が見て取れるから,表1と整合的に理解することができない。また,「平坦部が反射面中に所定の割合で形成されていれば,平坦部の高さに対応する高さが最頻値として出現する」(段落【0031】)という知見とも整合しない。

エ さらに加えて,表1の実施例7と比較例13は,表1によると,実施例7が加工2を施すのに対し,実施例13が加工2を施さない点で相違している。
ここで,比較例13に関して,図28(A)からは,確率密度のピークが10%を下回り,約2μmの広がりを持つヒストグラムが見て取れる。また,加工2(実施例1の加工)に関して,図26(A)からは,確率密度のピークが10%を上回るものの,1μm以上の広がりを持つヒストグラムが見て取れる。
ここで,比較例13の構造に対し実施例1の加工を施した場合のヒストグラムは,比較例13のヒストグラム特性を持つ表面に対して実施例1のヒストグラムの加工を施したものとなるから,ヒストグラムのピークは,比較例13のピークより低くなり,ヒストグラムの広がりは比較例13より広くなり,ヒストグラムの位置は,面高さが高い方へシフトするはずである。
しかしながら,実施例7のヒストグラムのピークは,比較例13のピークより高くなり,広がりは同様で,ヒストグラムの位置も同様である。加えて,比較例13より微細なヒストグラム構造(ヒストグラムの凹凸)が現れている。
表1の実施例6についても同様である。実施例6の粒度範囲は比較例13よりも大きいから,実施例6の加工1を施した段階では,比較例13よりも低く,広いヒストグラムが観測されるはずである。ところが,加工1の後に加工2を施すと,図27(A)のようなヒストグラムとなっている。
したがって,表1と図26?図28との,整合的な理解が困難である。

オ 以上のとおりであるから,仮に周知性について措くとしても,「WA」,「1000」,「cvg」等を,請求人が主張するように解釈することは困難である。
また,表1の製造条件の開示は,不十分である。

(3) 小括
本件出願は,発明の詳細な説明の記載が,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから,特許法36条4項1号(委任省令要件及び実施可能要件)に規定する要件を満たしていない。

2 理由1(1)オについて
(1) 段落【0068】には,「前述したテストピースのうち,本発明の構造を備えたテストピース(実施例1?3,5?12)では…(省略)…反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下であり(図34参照)」と記載されている。ここで,「反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下であり」との記載は,30度傾斜光を入射させたときの反射光が,本発明の構造を備えたテストピースでは,散乱により全角度に拡散反射するところ,その全ての角度範囲において,反射率が7%以下であることを意味していると思われる。
しかしながら,図34を参照すると,表の横軸は波長であり,角度ではないから,図34を参照しても,「反射面に対する30度傾斜光の反射率が全波長において7%以下」であることが確認できるとしても,「反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下」であることは,確認できない。
また,段落【0046】を参照すると,「反射率(30度傾斜光)の測定機器は,日立分光光度計(「U4100」株式会社日立ハイテクノロジーズ)を使用した。」と記載されている。ここで,分光光度計は,光を回折格子等により分光し,波長毎の光強度を測定する機器であるから,例えば,国際公開第2007/148807号(当合議体の拒絶の理由の引用文献1)の13頁16行?14頁1行に開示されるような,角度毎の光強度を測定する機器とは異なる。なお,職権により調査したところ,U4100に付属する検知器は標準積分球である。標準積分球は,全光束の平均を測定するための機器であり,角度毎の光強度を測定することに適さない。

(2) 請求人は,意見書において,「理由1(1)オの,本願明細書[0068]欄の「反射率が全角度において7%以下であり」との記載の意味が不明であるとの認定に対して,本願明細書[0068]欄の記載について,「前記反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下であり」(下線部は,追加箇所。)と補正した。」と主張する。
しかしながら,上述のとおりであるから,「反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下」であることについて,請求人の釈明は不十分である。

(3) 本件出願は,発明の詳細な説明の記載が,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから,特許法36条4項1号(委任省令要件及び実施可能要件)に規定する要件を満たしていない。

3 理由1(2)アの(ウ)?(オ)及びイについて
(1) 図26?図29のヒストグラムに関して,段落【0059】には,「この高さを,0.1μm毎の数値群にまとめてX軸を取り,各数値群に属する標本数を全標本数である786,432で割って得た確率密度をY軸としたヒストグラムを作成し,このヒストグラムより最頻値の確率密度を求めた。」と記載されている。したがって,図26?図29のヒストグラムの横軸(面高さ(μm))の区分の単位は,0.1μmである。
ここで,仮に,図26?図29のヒストグラムの横軸の区分の単位を2倍,すなわち,0.2μm毎の数値群にまとめてX軸を取ったならば,各数値群に属する標本数は,隣接する0.1μm毎の数値群の和となる。したがって,例えば,図26(A)の実施例2や実施例3のヒストグラムの20?30%のピークは,約2倍の40?60%となるから,10?30%の範囲に入らなくなり,逆に,図26(B)の比較例2や比較例3のヒストグラムの10%弱のピークは,約2倍の20%程度となるから,10?30%の範囲に入り,図26(C)の比較例4のヒストグラムのピークも,10?30%の範囲に入り,また,図28(A)の比較例13のヒストグラムのピークも,10?30%の範囲に入ることとなる。
すなわち,ヒストグラムは,その原理上,区分の単位の取り方によって,最頻値の確率密度が10?30%の範囲に入ったり,入らなかったりする。

そこで,請求項1を参照する。
請求項1には,「前記反射面を撮影した1000倍画像における0.2913μm四方の1ピクセルの範囲を1区画として分割して,各区画における高さを測定して得た測定値に基づくヒストグラムを形成したとき,前記ヒストグラムにおける最頻値の確率密度が10?30%であり」と記載されている。
しかしながら,請求項1には,ヒストグラムの横軸の区分の単位が記載されていない。区分の単位が記載されていない以上,ヒストグラムにおける最頻値の確率密度について,どのようなものが10?30%の範囲に入り,どのようなものが10?30%の範囲に入らないか,当業者は,請求項1の記載から理解できない。
したがって,請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。

また,発明の詳細な説明の記載からみて,比較例2?比較例4及び比較例13は,発明の詳細な説明に記載された,発明が解決しようとする課題(段落【0011】?【0013】)を解決できない態様である。
しかしながら,比較例2及び比較例3の分散は0.2であり,比較例4の分散は0.14弱であり,また,比較例13の分散は0.19程度(図30)である。そして,区分の単位を0.2μm毎とすれば,ヒストグラムにおける最頻値の確率密度は,10?30%の範囲に入るから,請求項1に係る発明の要旨に入る。
したがって,請求項1に係る発明は,発明が解決しようとする課題を解決できるとは限らない。

請求人は,意見書において,「本願請求項1には,構成として明確に「最頻値の確率密度が10?30%」と記載されており,つまり,本願発明においては,高さの区分の単位の取り方は,「最頻値の確率密度が10?30%」となるように取るものであり,そもそも,最頻値の確率密度が10?30%に入らないような高さの区分の単位の取り方は,本願発明の範囲外のものである。」と主張する。
請求人の主張は本末転倒であり,また,請求項1に係る発明は,発明が解決しようとする課題を解決できるとは限らないことの証左でもある。

(2) 請求項5には,「前記反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下である」と記載されている。
しかしながら,反射率が何%になるかは,反射面を見込む角度を規定するアパーチャーの開口率に依存する。すなわち,反射面を見込む角度が1°のアパーチャーで反射率が7%未満(例:6%)であるとしても,反射面を見込む角度が2°のアパーチャーの場合は,反射率が7%以上(例:12%)となり得る。
また,請求項5はもちろん,発明の詳細な説明においても,反射率の角度分布の測定条件は開示されておらず,反射率の角度分布とは異なる,反射光の波長分布の測定結果しか開示されていない。
したがって,どのようなものが7%以下となり,どのようなものが7%を超えるか,当業者は,請求項5の記載から理解できないから,請求項5に係る発明は発明が解決しようとする課題を解決できるとは限らない。また,発明の詳細な説明を参照すると,「全角度」は「全波長」の意味とも解され,したがって,「前記反射面に対する30度傾斜光の反射率が全角度において7%以下である」の意義が,明確であるとはいえない。

(3) 小括
この出願は,特許請求の範囲の請求項1及び5の記載が,特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない。

第3 まとめ
以上のとおりであるから,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-29 
結審通知日 2015-10-30 
審決日 2015-11-10 
出願番号 特願2010-151957(P2010-151957)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02B)
P 1 8・ 536- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 貴之  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鉄 豊郎
樋口 信宏
発明の名称 光透過性部材  
代理人 小倉 正明  
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