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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1309110
審判番号 不服2014-20639  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-10 
確定日 2015-12-21 
事件の表示 特願2012- 66131「リアクトル、及びコンバータ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月26日出願公開、特開2012-142601〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成18年10月31日に出願した特願2006-296397号の一部を平成24年3月22日に特願2012-66131号として新たな特許出願をしたものであって、平成25年6月28日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日付けで手続補正がなされ、平成26年1月14日付けで拒絶理由が通知され、同年3月12日付けで手続補正がなされたが、同年7月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月10日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成26年3月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
コア部と、コア部の一部の外側に配されるコイルとを備え、コイルの励磁によりコア部を通る閉磁路が形成されるリアクトルであって、
前記コア部は、前記コイルに通電する電流が0のときの比透磁率が5?15の材料で実質的に構成され、
前記コア部が構成材料として、軟磁性粉末を含み、その軟磁性粉末が、Fe、Co、Ni、Fe基合金から選択される少なくとも一種であるリアクトル。」

3.引用例

原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-4957号公報(以下「引用例1」という。)には、「コイル部品及びコイル部品製造方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0001】
本発明は、コイル部品及びその製造方法に関し、特に、電気自動車やハイブリッドカーに搭載される蓄電バッテリーのエネルギー制御においてリアクトルとして用いられるコイル部品及びその製造方法に関する。」

イ.「【0012】
本発明は、上記を鑑み、高い耐電圧性能と高い耐不要パルス電流性能とを有し且つ可聴周波数領域にかかるような周波数で駆動されても可聴ノイズ・うなりを抑制することのできるコイル部品及びその製造方法を提供することを目的とする。」

ウ.「【0017】
コイル内包絶縁包囲物60は、第1の樹脂からなる絶縁体50にて、コイル30を包囲して得られるような構造を備えている。但し、コイル30の端部12,22は絶縁体50により包囲されてはいない。
【0018】
本実施の形態によるコイル30は、図1及び図2に示されるように、平角導線を縦巻にして得られるコイル部10,20を連結してなるメガネ状の構造を備えるものである。詳しくは、コイル部10は端部12,14を備えており、同様に、コイル部20は端部22,24を備えている。コイル部10の端部14はコイル部20の端部24と接続される。これにより、コイル部10の端部12からコイル部20の端部22に対して電流を流すと、コイル部10とコイル部20とに反対方向に向かう磁束流が生じることになる。この反対方向に向かう磁束流は互いに結合され、一つの磁路のループを形成する。換言すると、コイル部10,20は、磁気的に直列接続されるようにして、端部14,24を接続されている。本実施の形態においては、図示されたように、2つの個別部品たるコイル部10,20を物理的に接続する構成を採用しているが、平角導線を縦巻してコイル部10を形成した後、そのまま連続してコイル20を形成するように平角導線を更に縦巻することとして、一本の平角導線により連続したコイル30を構成することとしても良い。」

エ.「【0030】
図7を参照すると、まず、第1の混成物スペーサ72がケース70の底面上に適宜配置され、その上に、コイル内包絶縁包囲物60が載せられる。これにより、コイル内包絶縁包囲物60の垂直方向における位置決めがなされる。次いで、第2及び第3の混成物スペーサ74,76をコイル内包絶縁包囲物60の水平方向周囲に配置することにより、コイル内包絶縁包囲物60の水平方向における位置決めも行う。なお、第1、第2及び第3の混成物スペーサ72,74,76の大きさは、コイル内包絶縁包囲物60をケース70内においてどのような位置に配置したいかによって適宜変更することができる。本実施の形態においては、図8乃至図10に示されるように、コイル内包絶縁包囲物60がコイル30の端部12,22を除いてケース70内において混成物からなる磁芯80の中に完全に埋設されるように、第1、第2及び第3の混成物スペーサ72,74,76の大きさが決定されている。」

オ.「【0034】
混成物を構成する磁性体粉末84は軟磁性粉末、詳しくは、Fe系の軟磁性金属粉末である。更に具体的には、軟磁性金属粉末はFe-Si系粉末、Fe-Si-Al系粉末、Fe-Ni系粉末、及びFe系アモルファス粉末からなる群から選択された粉末である。ここで、Fe-Si系粉末における平均Si含有量は好ましくは0.0重量%以上11.0重量%以下である。また、Fe-Si-Al系粉末における平均Si含有量は好ましくは0.0重量%以上11.0重量%以下であり、平均Al含有量は好ましくは0.0重量%以上7.0重量%以下である。また、Fe-Ni系粉末における平均Ni含有量は好ましくは30.0重量%以上85.0重量%以下である。」

・上記ア及びイによれば、引用例1は、高い耐電圧性能と高い耐不要パルス電流性能とを有し且つ可聴周波数領域にかかるような周波数で駆動されても可聴ノイズ・うなりを抑制することのできるリアクトルを提供することを目的としている。

・上記ウ(段落【0018】)によれば、コイル30に電流を流すことにより一つの磁路のループが形成されることが記載されている。また、上記ウ(段落【0017】)、エ、図8及び10によれば、コイル30は端部を除いて磁芯80の中に埋設されており、磁芯80はギャップを有していないから、コイル30に電流を流すことにより形成される磁路のループは磁芯80に閉磁路として形成されることとなる。よって、コイル30に電流を流すことにより磁芯80を通る閉磁路が形成されることが記載されている。

・図19によれば、磁芯80の直流電流重畳特性が示されており、磁界Hが0のときの点線に着目すると、磁芯80は、コイルに通電する電流が0のときの比透磁率が20以上(約25)の材料で実質的に構成されることが記載されている。

・上記オによれば、磁芯80がFe-Si系、Fe-Si-Al系、Fe-Ni系の軟磁性粉末を構成材料として含むことが記載されている。

したがって、引用例1には、高い耐電圧性能と高い耐不要パルス電流性能とを有し且つ可聴周波数領域にかかるような周波数で駆動されても可聴ノイズ・うなりを抑制することのできるリアクトルを提供することを目的とした、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「磁芯80と、端部を除いて前記磁芯80の中に埋設されたコイル30とを備え、コイル30に電流を流すことにより磁芯80を通る閉磁路が形成されるリアクトルであって、
前記磁芯80は、前記コイル30に通電する電流が0のときの比透磁率が20以上(約25)の材料で実質的に構成され、
前記磁芯80が構成材料として、軟磁性粉末を含み、Fe-Si系、Fe-Si-Al系、Fe-Ni系の軟磁性粉末から選択されるリアクトル。」

4.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「磁芯80」は、本願発明の「コア部」に相当する。

b.引用発明の「コイル30」は、本願発明の「コア部に配されるコイル」に相当する。ただし、本願発明は「コア部の一部の外側に配されるコイル」を有するのに対し、引用発明のコイルは磁芯の中に埋設されてなるものである点で相違している。

c.引用発明の「コイル30に電流を流すことにより磁芯80を通る閉磁路が形成される」は、本願発明の「コイルの励磁によりコア部を通る閉磁路が形成される」に相当する。

d.本願発明は、前記コア部は、前記コイルに通電する電流が0のときの比透磁率が「5?15」の材料で実質的に構成されるのに対し、引用発明は20以上(約25)の材料である点で相違している。

e.引用発明の「Fe-Si系、Fe-Si-Al系、Fe-Ni系」は、本願発明の「Fe基合金」に相当する。よって、引用発明の「前記磁芯80が構成材料として、軟磁性粉末を含み、Fe-Si系、Fe-Si-Al系、Fe-Ni系の軟磁性粉末から選択される」は、本願発明の「前記コア部が構成材料として、軟磁性粉末を含み、その軟磁性粉末が、Fe基合金から選択される」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「コア部と、コア部に配されるコイルとを備え、コイルの励磁によりコア部を通る閉磁路が形成されるリアクトルであって、
前記コア部が構成材料として、軟磁性粉末を含み、その軟磁性粉末が、Fe基合金から選択されるリアクトル。」

(相違点1)
コイルについて、本願発明では「コアの一部の外側に配される」のに対し、引用発明では磁芯の中に埋設されている点。

(相違点2)
コア部について、コイルに通電する電流が0のときの比透磁率が、本願発明では「5?15」の材料で実質的に構成されるのに対し、引用発明では、20以上(約25)の材料で実質的に構成されている点。

そこで、相違点1について検討する。
リアクトルにおいて、コアの一部の外側にコイルを配する構成は、例えば特開昭54-95365号公報(以下「引用例2」という。)の図6に記載されているように周知のものである。よって、引用発明のコイルの配置について、引用例2に記載された周知の構成を適用し、相違点1の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

次に、相違点2について検討する。
本願発明において、コイルに通電する電流が0のときの比透磁率(以下「比透磁率」と記載する。)を5?15に限定する根拠は、段落0055の表1によるものと認められるが、当該表1は、単に、樹脂と鉄粉の比率を変えるとコアの比透磁率が変化するという技術事項を記載しただけのものと認められる。
また、本願明細書には、比透磁率に関して、比透磁率が30の場合に要求されるインダクタンスの仕様範囲を満足し、比透磁率が100の場合に要求されるインダクタンスの仕様範囲を満足しない旨の記載があること(段落0057、0058、図5)、比透磁率を5?50にする旨の記載があること(段落0014、0035)を勘案すると、比透磁率を30とした場合と5?15とした場合とで、本願発明の効果に違いは無く、比透磁率を5?15、特に上限値を「15」と定めたことに格別の臨界的意義は見出せない。
よって、引用発明は、本願明細書に記載された比透磁率「5?50」の範囲である20以上(約25)とすることが記載されているから、本願発明と効果において格別の相違は認められず、そして、引用発明の比透磁率20以上(約25)は一例にすぎず、コアを構成する材料の比透磁率を添加する樹脂量によって適宜調整して比透磁率が「5?15」の範囲を満たすものとすることも当業者が容易になし得る事項である。

5.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-26 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-10 
出願番号 特願2012-66131(P2012-66131)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 安希子  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
ゆずりは 広行
発明の名称 リアクトル、及びコンバータ  
代理人 山野 宏  

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