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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
管理番号 1309194
審判番号 不服2013-19453  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-05 
確定日 2015-12-28 
事件の表示 特願2009-541278「脂肪族アルコール及び/又はその反応性誘導体のカルボニル化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月19日国際公開、WO2008/073096、平成22年 4月30日国内公表、特表2010-513270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2006年12月15日を国際出願日とする出願であって、平成24年6月14日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年5月31日付けで拒絶査定がされ、同年10月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成27年2月13日付けで拒絶理由が通知され、同年5月15日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1?27に係る特許を受けようとする発明(以下「本願発明1」?「本願発明27」という。)は、平成25年10月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも1種の8員環チャネルを有するゼオライトを含む触媒の存在下で、実質的に無水条件下で、ジメチルエーテルを一酸化炭素でカルボニル化することによる酢酸メチルの選択的な製造方法であって、
8員環チャネルを、8員以上の環によって規定されるチャネルと相互接続させ、且つ8員環が、少なくとも2.5オングストローム×少なくとも3.6オングストロームの領域寸法及び少なくとも1個のブレンステッド酸部位を有し、そしてゼオライトが、少なくとも5のシリカ:X_(2)O_(3)(但し、Xがアルミニウム、ホウ素、鉄、ガリウム及びこれらの混合物から選択される。)のモル比を有し、且つゼオライトが、モルデン沸石又はフェリエ沸石ではないことを特徴とする酢酸メチルの選択的な製造方法。
【請求項2】
ジメチルエーテルが、100℃?250℃の温度条件下でカルボニル化される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジメチルエーテルが、150℃?180℃の温度条件下でカルボニル化される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、触媒の固定床を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、触媒の流動床を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の連続法。
【請求項7】
請求項1に記載のバッチ法。
【請求項8】
一酸化炭素含有供給材料が、更に水素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
一酸化炭素含有供給材料が、合成ガスを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
更に酢酸メチルを加水分解して、酢酸を製造する請求項1に記載の方法。 【請求項11】
加水分解が、エステル製造反応と別個の反応器において行われる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加水分解が、エステル製造反応と同一の反応器において行われる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ゼオライト触媒が、フレームワークタイプOFF、CHA、ITE、GME、ETR、EON及びMFSのゼオライトからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
触媒が、オフレット沸石、グメリン沸石、ZSM-57及びECR-18からなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ゼオライトがオフレット沸石である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
触媒が、8員環によってのみ規定されるチャネルからなる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
8員環によって規定されるチャネルを、8員以上の環によって規定される少なくとも1種のチャネルと相互接続させる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
8員を超える環によって規定される少なくとも1種のチャネルが、10員環又は12員環によって規定される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
8員を超える環によって規定される少なくとも1種のチャネルが、12員環によって規定される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
シリカ:X_(2)O_(3)比が100以下である請求項1に記載の方法。
【請求項21】
シリカ:X_(2)O_(3)比が7?40の範囲である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
シリカ:X_(2)O_(3)比が10?30の範囲である請求項21に記載の方法。 【請求項23】
Xが、アルミニウム、ガリウム及びこれらの混合物から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項24】
Xがアルミニウムである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
Xがアルミニウムであり、そしてシリカ:Al_(2)O_(3)比が100以下である請求項1に記載の方法。
【請求項26】
シリカ:Al_(2)O_(3)比が7?40の範囲である請求項25に記載の方法。 【請求項27】
シリカ:Al_(2)O_(3)比が10?30の範囲である請求項26に記載の方法。」

第3 審判合議体が通知した拒絶の理由
平成27年2月13日付けで審判合議体が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という)は理由1及び理由2からなる。

その理由1の概要は、この出願の請求項1?27に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。その刊行物1は、国際公開第2006/121778号、刊行物2は、米国特許第5856588号公報、刊行物3は、窪田 好浩,辰己 敬「ゼオライト開発の現状」J.Vac.Soc.Jpn(真空)Vol.49,No.4,2006,207?208頁(2006.4.20発行)である。

その理由2の概要は、この出願は、請求項1?27に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないので、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないというものであり、本願発明の課題がジメチルエーテルのカルボニル化によって酢酸メチルを高い選択性と収率で得ることであるところ、明細書に具体的に明らかにされていないゼオライト触媒や反応条件の場合以外では上記課題を解決できると認識できないとの指摘をしたものである。

第4 当審の判断
当審は、当審拒絶理由のとおり、本願発明1は、上記刊行物1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。また、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 理由1について
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物1:国際公開第2006/121778号
訳文で示す。
(1a)「請求の範囲
1.下記の式:
R_(1)-COO-R_(2)
を有する低級脂肪族カルボン酸の低級アルキルエステルを含む生成物を生成する方法であって、下記の式を有する低級アルキルエーテルと反応させる工程を含む方法:
R_(1)-O-R_(2)
式中、R_(1)およびR_(2)は、R_(1)基およびR_(2)基の炭素原子の総数が2?12であるか、またはR_(1)およびR_(2)が実質的に無水の条件下、モルデナイトおよび/またはフェリエライトを含む触媒の存在下で、一酸化炭素含有フィード(feed)と共にC_(2)?C_(6)アルキレン基を形成することを条件として、独立してC_(1)?C_(6)アルキル基である。
2.エステルが酢酸メチルであり、エーテルがジメチルエーテルである、請求項1記載の方法。
3.触媒がH-モルデナイトである、請求項1記載の方法。
4.温度が約100℃?約250℃である、請求項1記載の方法。
5.温度が約150℃?約180℃である、請求項1記載の方法。
6.触媒が触媒の固定床を含む、請求項1記載の方法。
7.触媒が触媒の流動床を含む、請求項1記載の方法。
8.請求項1記載の連続方法。
9.請求項1記載のバッチ方法。
10.一酸化炭素含有フィードが水素を更に含む、請求項1記載の方法。
11.一酸化炭素含有フィードが合成ガスを含む、請求項10記載の方法。 12.エステルを加水分解して対応するカルボン酸を生成する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
13.酢酸メチルを加水分解して酢酸を生成する工程を更に含む、請求項2記載の方法。
14.加水分解がエステル生成反応とは別のリアクタで行われる、請求項12または13記載の方法。
15.加水分解がエステル生成反応と同じリアクタで行われる、請求項12または13記載の方法。
16.R_(1)およびR_(2)がC_(1)?C_(6)アルキル基である、請求項1記載の方法。
17.R_(1)およびR_(2)が直鎖C_(1)?C_(6)アルキル基である、請求項1記載の方法。
18.R_(1)およびR_(2)が各々1?3個の炭素を有する直鎖アルキル基である、請求項1記載の方法。
19.アルキル基が全部で2?8個の炭素原子を含む、請求項16記載の方法。
20.アルキル基が直鎖アルキル基である、請求項19記載の方法。
21.アルキル基が全部で2?6個の炭素原子を含む、請求項16記載の方法。
22.R_(1)およびR_(2)が一緒になってC_(2)?C_(6)アルキレン基を形成する、請求項1記載の方法。
23.R_(1)およびR_(2)が一緒になって直鎖C_(2)?C_(6)アルキレン基を形成する、請求項1記載の方法。
24.R_(1)およびR_(2)が一緒になってC_(2)?C_(4)アルキレン基を形成する、請求項1記載の方法。
25.触媒が一つまたは複数の更なる骨格金属を含む、請求項1記載の方法。
26.骨格金属がガリウム、ホウ素、および鉄から選択される、請求項25記載の方法。
27.骨格金属がガリウムである、請求項25記載の方法。
28.触媒がモルデナイトを含み、骨格金属がガリウムおよび/またはホウ素から選択される、請求項25記載の方法。
29.触媒がフェリエライトを含み、骨格金属がガリウム、ホウ素、および/または鉄から選択される、請求項25記載の方法。」
(請求の範囲、14?16頁)

(1b)「アルキルエーテルのカルボニル化のための方法
発明の背景
[0001]本発明は、ジメチルエーテルから酢酸メチルを生成するための改良された方法に関し、より一般的にはアルキルエーテルのカルボニル化により脂肪族カルボン酸のアルキルエステルの生成に関する。別の局面において、本発明は、まず低級アルキルエーテルからアルキルエステルを生成させ、続いてエステルの酸への加水分解による、低級脂肪族カルボン酸の生成に関する。この一つの例は、ジメチルエーテルをカルボニル化して酢酸メチルを生成し、続いてエステルを加水分解して酢酸を生成することによる、酢酸の生成である。・・・
発明の簡単な概要
[0010]簡潔に言うと、本発明は、実質的に無水の条件下、モルデナイトおよび/またはフェリエライトを含む触媒の存在下で低級アルキルエーテルを一酸化炭素と反応させる工程を含む、低級脂肪族カルボン酸の低級アルキルエステルを含む生成物を生成する方法を含む。
[0011]具体的には、本明細書において本発明は、実質的に無水の条件下、モルデナイトおよび/またはフェリエライトを含む触媒の存在下におけるジメチルエーテルの一酸化炭素との反応により酢酸メチルを生成する方法を含む。」(1頁3行?3頁9行)

(1c)「[0024]エーテルが対称エーテル、例えばジメチルエーテルである場合、主生成物は脂肪酸の対応するアルキルエステル(この場合は酢酸メチル)である。エーテルが非対称である場合、2つのC-O結合が反応中に開裂することによって、生成物は2つの可能なカルボン酸エステルの一方または両方を含みうる。例えば、フィードがメチルエチルエーテル(R_(1)=メチル; R_(2)=エチル)である場合、生成物は酢酸エチルおよび/またはプロピオン酸メチルを含みうる。
[0025]本方法の第二の成分は、一酸化炭素を含むフィードである。フィードは、実質的に純粋な一酸化炭素(CO)、例えば工業ガスの供給者から典型的に提供される一酸化炭素を含んでいてもよく、またはフィードはアルキルエーテルの所望のエステルへの変換を干渉しない、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、メタン、および/もしくは二酸化炭素などの不純物を含んでいてもよい。例えば、フィードは、深冷分離および/または膜の使用を経て合成ガスから水素を除去することにより典型的には商業的に作成されるCOを含んでいてもよい。
[0026]一酸化炭素フィードは、相当量の水素を含みうる。例えば、フィードは合成ガスとして一般的に知られているもの、すなわち多様な有機または無機の化合物を合成するのに用いられる、特にアンモニアの合成に用いられる多数のガス混合物のいずれかでありうる。合成ガスは典型的には、蒸気(水蒸気改質反応として知られるプロセスにおける)と、または蒸気および酸素(部分酸化プロセス)と、炭素に富む物質を反応させることにより結果として生じる。これらのガスには主として、一酸化炭素および水素が含まれ、少量の二酸化炭素および窒素が含まれていてもよい。合成ガスを使用できることにより、メタノールから酢酸を生成する過程において別の利点、すなわち比較的安価な一酸化炭素フィードを用いるという選択肢が提供される。メタノールから酢酸へのプロセスにおいて、フィードに水素が含まれることにより、望ましくない水素化副産物が生成される;したがってフィードは高純度の一酸化炭素であるべきである。
[0027]触媒は、モルデナイトもしくはフェリエライト、またはその2つの混合物もしくは組み合わせ、いずれかのそれ自体(すなわち、一般的にはH-モルデナイトおよびH-フェリエライトと称される酸性型として)、または任意でイオン交換されたもしくは銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、白金、パラジウム、またはコバルトなどの一つもしくは複数の金属を負荷されたもので構成される。モルデナイト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にガリウムおよび/または鉄を含んでいてもよい。フェリエライト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にホウ素、ガリウム、および/または鉄を含んでいてもよい。触媒の両タイプの骨格修飾元素(framework modifier element)は、何らかの定常的な手段で骨格に組み込まれうる。骨格修飾元素がモルデナイトまたはフェリエライト触媒のいずれかとして用いられる場合、触媒は骨格修飾元素のシリカ対酸化物の比率を適切に有し、それらは約10:1?約100:1である。」(4頁25行?5頁30行)

(1d)「[0029]反応は、実質的に水の非存在下で行われるべきであるため、操作を開始する前に、例えば400?500℃に予熱することにより、触媒を乾燥させるべきである。
[0030]一般的に、本方法は約250℃かそれ未満の温度、すなわち、約100℃?約250℃、好ましくは約150℃?約180℃の温度で行われる。本方法の一つの特徴は、驚くべき事に、触媒をベースとしたモルデナイトゼオライトを用いた、水の実質的非存在下におけるジメチルエーテル(DME)の酢酸メチルへのカルボニル化が、メタノールカルボニル化に関する先行技術において記載されている温度より有意に低い温度で極めて高い選択性で行うことができることである。さらに、これらの条件下でモルデナイトは、メタノールのカルボニル化に本質的に不活性である。水の存在により、ジメチルエーテルの酢酸メチルへのカルボニル化が強く阻害されるため、反応温度は、上記の範囲内に保たれ、存在すると炭化水素および水を形成しうるいかなるメタノールの脱水をも最小限に抑えられる。」(6頁13?25行)

(1e)「[0032]本方法は実質的に無水の条件下、すなわち実質的に水の非存在下で行われる。水は、ジメチルエーテルの酢酸メチルへのカルボニル化を阻害することが知られている。このことは、ジメチルエーテルが共フィード(co-feed)であり、水も反応に供給される先行技術のプロセスと比較される。したがって、所望の反応が最善の状態で進行可能となるよう、水は実現可能な限り低く保たれる。これを達成するために、エーテルおよび一酸化炭素反応物ならびに触媒は、本方法へ導入する前に、好ましくは乾燥させる。
[0033]本方法は連続方法またはバッチ方法のいずれかとして行うことができるが、連続方法が典型的には好ましい。本質的には、本方法は、反応物が液相または気相のいずれかとして導入され生成物が気体として回収される気相操作である。必要に応じて、反応生成物はその後冷却および濃縮されてもよい。触媒は、固定床または流動床のいずれかとして便宜的に使用してもよい。本方法の操作において、未反応染色物質を回収しリアクタへリサイクルしてもよい。酢酸メチル生成物を回収してそれ自体を売ってもよく、または必要に応じて他の化学的プロセス装置へ転送してもよい。望ましい場合には、酢酸メチルの変換および任意で他の成分の他の有用な生成物への変換のために、全反応生成物を化学的プロセス装置へ送ってもよい。
[0034]本発明の一つの好ましい態様において、酢酸メチルを反応生成物から回収し、水と接触させて、加水分解反応により酢酸を形成させる。または、全生成物を加水分解工程に通し、その後酢酸を分離してもよい。加水分解工程は、酸触媒の存在下で行うことができ、当技術分野で周知のように、反応蒸留という形を取ってもよい。
[0035]分離後、加水分解リアクタ中に生成されたアルコールを脱水リアクタへ送ってエーテルを生成することができ、それらは水から分離でき、カルボニル化リアクタへの新鮮なフィードとしてカルボニル化装置へとリサイクルできる。
[0036]別の態様において、有意な量のエステルがカルボニル化によって生成されたら、エステル生成物のアルコールおよびカルボン酸への加水分解が、触媒床における一つまたは複数の点で水を注入することによって行われる。このような水の注入は本質的に、ジメチルエーテルの酢酸メチルへの変換を阻止し、別個の加水分解リアクタの要件を排除する。したがってモルデナイトまたはフェリエライト触媒はまた、エステル生成物を加水分解しカルボン酸を生じさせるための酸触媒としても機能する。リアクタがバックミキシングを伴う流動床リアクタである場合、再度主要プロセスに用いる前にリアクタおよび触媒を完全に乾燥させなければならない。一方、リアクタが、主要な反応域の下流における水の段階的な導入を伴う管型リアクタである場合、そのような乾燥は必要ではない。
[0037]モルデナイト触媒を用いると、使用する空間速度および反応物圧力に応じて、変換は最大で100%、好ましくは約10%?約100%となりうる。酢酸メチルに対する選択性は10時間超にわたり165℃にて99%を上回る値で、一定であることが示されている。190℃での酢酸メチルに対する選択性は、当初96%であるが、稼働中の時間と共に減少する。先行技術により、モルデナイトが典型的には250℃より実質的に高い温度でメタノールの酢酸への変換に用いられなければならないことが示されている通り、そのような結果はモルデナイトの使用および実質的に無水の環境の維持では予期されていない。そのような温度はまた、触媒細孔および/または活性部位をブロックしうる炭化水素の形成によってメタノールカルボニル化の不活性化へと至る場合がある。さらに、実施例でわかるように、同様の条件下における他のゼオライトを用いた実験では、モルデナイトおよびフェリエライトのように望ましい変換および/または選択性が示されない。」
(6頁28行?8頁10行)

(1f)「一般的手順
1)触媒調製
[0040]触媒はアンモニウムまたは酸性型として商業的に入手し、773 Kにて3時間、乾燥気流中で前処理した。



2)ジメチルエーテルカルボニル化反応
[0041]ジメチルエーテルカルボニル化反応は、0.15?0.5 gの触媒を用いて固定床ステンレススチールマイクロリアクタにて行った。触媒は乾燥気流中773Kで2時間活性化させ、反応温度(150?240℃)まで冷まし、乾燥ヘリウム流を勢いよく流し、反応物を導入する前に10バールに加圧した。反応混合物は、20 kPaジメチルエーテル、930 kPa一酸化炭素、および50 kPaアルゴンから成り、後者は内部標準とした(1バール=101 kPa)。全ての前処理流および反応物流は、リアクタの直前に配置されたカルシウムハイブリッド床(0.5 g, Aldrich)を通過させることにより乾燥させた。ヒートトレース配管(200?250℃)を用いて反応物および生成物をそれぞれメチルシロキサンおよびPorapak(登録商標)Qカラムを含む炎イオン化検出器および熱伝導度検出器を備えたオンラインガスクロマトグラフ(Agilent 6890)に移した。

3)合成ガスを用いたジメチルエーテルカルボニル化反応
[0042]水素添加実験を上記のようにフローリアクタ内で行った。反応物の混合物は10 kPAジメチルエーテル、465 kPA一酸化炭素、25 kPaアルゴン、および500 kPaヘリウムまたは水素から成っていた。非反応希釈物であるヘリウムは、触媒システムが定常状態に達した後、水素で置き換えた。
[0043]実験は、上記のジメチルエーテルのカルボニル化の手順を用いて、7つの触媒にわたり148?335℃の温度範囲内で行ったが、大抵の実験は150?240℃および9.3バールの一酸化炭素で行った。触媒にはモルデナイト(H-MOR; Si/Al=10およびSi/Al=45)、ゼオライトMFI(H-ZSM5; Si/Al=12)、Yフォージャサイト(H-Y; Si/Al=3)、フェリエライト(H-FER; Si/Al=34)、および非晶質シリカアルミナ(Si/Al=6)が含まれていた。実験条件は、全圧10バール、総流量=100cm3(STP)/分、2% DME/5% Ar/93% COフィード(周囲温度にて0.5 g CaH2プレリアクタ乾燥床を通過させた)で144?335℃の間で段階的に温度を上昇させながら行った。

[0044]これらの実験は、モルデナイトおよびフェリエライトがジメチルエーテルのカルボニル化のための他のゼオライト候補よりはるかに優れていることを実証している。酢酸メチルの生成率を図1に示す。反応条件下で、H-MORについての約165℃における率(Alで正規化した)はH-ZSM5についての率よりほぼ50倍高く、H-Yについてのよりも150倍超高かった。150?190℃の温度において、3つのゼオライトのいずれも不活性化は観察されなかった。比較的高い温度(≧488K)にて、明らかに、大きな非反応性残留物の有意な形成の結果として、酢酸メチルの率が稼働中の時間と共に低下した。これにより、十分に大規模(extensive)であれば、再度比較的低温(165?185℃)で試験した際に触媒がその初期のカルボニル化率に戻るのを防ぐことができる。」
(8頁19行?9頁32行)

(1g)「骨格金属の取り込み
[0052](GaAl/Si)NH4-モルデナイト(SiO2/Ga2O3 約39.2およびSiO_(2)/Al_(2)O_(3) 約19.4)がアンモニウム型から変換され、以下の条件下でDMEカルボニル化について試験した。試料は773K(0.0167K s-1)において乾燥気流(3.33 cm3s-1)中で3時間処理し、NH4+型からH+型へと変換した。DMEカルボニル化率は、3ゾーン抵抗加熱炉内に保持された充填床ステンレススチールリアクタ(8.1mm ID、9.5mm OD)において測定した。触媒試料(0.5g、185?250mm粒径)は、He流(約3.33 cm3s-1g-1、UHP Praxair)中で反応温度まで冷却する前に、773K(0.0167K s-1)にて3時間、乾燥気流(約1.67cm3s-1g-1、ゼログレード、Praxair)中で処理し、続いて2% DME/5% Ar/93% CO(99.5% DME、Praxair; UHP Ar/CO、Praxair)を供給した。
・・・
Al-Si比
一連の操作を様々なAl:Si比を有する触媒を用いて実施した。表2はH-MOR試料、ならびに対応する率[モル/g-Al原子/h]および空時収率[g MeOAc/kg ゼオライト/h]のリストを含む。典型的には0.5gの試料を、全圧10 Atm(20kPa DME、50kPa Ar、930kPa CO)および流出量1.67 cm3/sで438Kにて用いた。これらはモルkg-1h-1の点から見るとかなり良い率を示した。結果は、触媒の質量(および推定上の容積)あたりの生産性がSi:Al比を変えることにより増加しうることを示している。
表2:H-MOR中のAl含量の関数としてのDMEカルボニル化率および空時収率
H-MOR



(11頁8行?12頁14行)

イ 刊行物2:米国特許第5856588号公報
訳文で示す。
(2a)「ゼオライトの分子形状,構造と触媒選択性の関係についての一般的参照文献としては「形状選択的触媒の産業的応用」N.Y.Chenら,Catal.Rev.-Sci.Eng.,28 185(1986)がある。
形状選択触媒として関心のあるゼオライトは、空孔とチャンネルの体系により3つの主要な群に分けることができる。第1の群は、例えばLindeA,エリオナイト,チャバザイト、ゼオライトアルファ,ZK-4,ZK-21,ZK-22やその他いくつかのあまり一般的でない天然ゼオライトのように、酸素八員環体系を含んでいる。
第2のゼオライトの群は、例えばZSM-5,ZSM-11,ZSM-22,ZSM-23,ZSM-48,不規則に縮んだ酸素十員環をもったロウモンタイトのように、酸素十員環体系を含んでいる。中型空孔ゼオライトの残りの部分は通常の合成である。それらは、五員環型ゼオライトとして知られ、シリコン原子が優勢である。
第3のゼオライトの群は2つの空孔体系を有しており、酸素12員環と酸素8員環の空間の相互接続したチャンネルもっている。例えば、モルデナイト、オフレタイト、クリノプチロライト、フェリエライト等である。」(4欄36?57行)

(2b)「


」(6欄中段)
対応部分の抄訳
「 表A
商業的利用可能なゼオライト
組成 吸着能
ゼオライト 空孔サイズ

*は鉱物ゼオライトを示す。すなわちカチオンは変化しやすいが通常はNa,K,Ca,Mgである。
**非常に大きなSi:Al」

ウ 刊行物3:窪田 好浩,辰己 敬「ゼオライト開発の現状」J.Vac.Soc.Jpn(真空)Vol.49,No.4,2006,207?208頁(2006.4.20発行)
(3a)「


」(207頁表1)

(3b)「6.ゼオライト細孔タイプの分類と有機SDA

ここで細孔タイプとSDA構造の相関を考察してみる。シリケート系の大孔径のものだけに限って、ゼオライトの細孔構造を模式化して分類したのが図3である。・・・Type-IIIはトンネル型の12員環一次元細孔同士が8員環の細い横穴でつながっている「二次元(または三次元)細孔」・・・である。・・・Type-IIIに属するものとしては、新しくはないがモルデナイトmordenite(MOR)、グメリナイトgmelinite(GME)のような天然物起源のものがある。・・・


」(4頁右欄7?34行,図3)

(2) 刊行物1に記載された発明
摘記(1a)及び摘記(1b)には、実質的に無水の条件下、モルデナイトおよび/またはフェリエライトを含む触媒の存在下におけるジメチルエーテルの一酸化炭素との反応により酢酸メチルを生成する方法が記載され、摘記(1c)には、触媒は、モルデナイトもしくはフェリエライトまたはその2つの混合物もしくは組み合わせで、一般的にはH-モルデナイトおよびH-フェリエライトと称される酸性型として構成され、モルデナイト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にガリウムおよび/または鉄を含んでいてもよいし、フェリエライト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にホウ素、ガリウム、および/または鉄を含んでいてもよく、両触媒のシリカと酸化物の比は約10:1?約100:1と記載され、摘記(1e)には、モルデナイト触媒を用いると、酢酸メチルに対する選択性は10時間超にわたり165℃にて99%を上回る値で、一定であることが示されているのであるから、以下の発明が記載されているといえる。

「実質的に無水の条件下、モルデナイトおよび/またはフェリエライトを含む触媒の存在下において、ジメチルエーテルの一酸化炭素との反応により酢酸メチルを選択的に生成する方法において、モルデナイトおよび/またはフェリエライトは、H-モルデナイトおよびH-フェリエライトと称される酸性型として構成され、モルデナイト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にガリウムおよび/または鉄を含んでいてもよく、フェリエライト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にホウ素、ガリウム、および/または鉄を含んでいてもよく、シリカと酸化物の比は約10:1?約100:1である方法」(以下「引用発明」という。)

(3)対比・判断
ア 対比
引用発明のモルデナイトおよび/またはフェリエライトは、「H-モルデナイトおよびH-フェリエライトと称される酸性型として構成」されているのであるから、本願発明1の「ゼオライトが」「少なくとも1個のブレンステッド酸部位を有し」に該当し、引用発明の「モルデナイト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にガリウムおよび/または鉄を含んでいてもよく、フェリエライト触媒は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ゼオライト骨格中にさらなる元素、特にホウ素、ガリウム、および/または鉄を含んでいてもよく、シリカと酸化物の比は約10:1?約100:1である」とは、摘記(1c)の記載からみて、酸化物としては、アルミニウム原子から形成されたアルミナに加えてその他のガリウムや鉄等の金属酸化物を含めたものであることから、本願発明1の「ゼオライトが、少なくとも5のシリカ:X_(2)O_(3)(但し、Xがアルミニウム、ホウ素、鉄、ガリウム及びこれらの混合物から選択される。)のモル比を有し」に該当することになる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「ゼオライトを含む触媒の存在下で、実質的に無水条件下で、ジメチルエーテルを一酸化炭素でカルボニル化することによる酢酸メチルの選択的な製造方法であって、少なくとも1個のブレンステッド酸部位を有し、そしてゼオライトが、少なくとも5のシリカ:X_(2)O_(3)(但し、Xがアルミニウム、ホウ素、鉄、ガリウム及びこれらの混合物から選択される。)のモル比を有する酢酸メチルの選択的な製造方法。」という点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:用いるゼオライト触媒に関し、本願発明においては、「8員環チャネルを、8員以上の環によって規定されるチャネルと相互接続させ、且つ8員環が、少なくとも2.5オングストローム×少なくとも3.6オングストロームの領域寸法を有し、且つ、モルデン沸石又はフェリエ沸石ではない」と特定されているのに対して、
引用発明においては、「モルデナイトおよび/またはフェリエライトを含む」とされている点

イ 相違点についての検討
引用発明においては、摘記(1f)において、モルデナイト、フェリエライトを用いることで、ZSM5やYフォージャサイトよりも、ジメチルエーテルのカルボニル化のためのゼオライト触媒として酢酸メチルの生成率に優れていることが記載され、摘記(1g)では、モルデナイトを用いた実施例において、高い収率を得ていることが示されている。
ゼオライト触媒が形状選択性触媒としての機能を有するものであり、適切な細孔径とチャンネル構造によって反応制御を行うことを考慮すると、以下に述べるとおり、刊行物2,3において、同じ構造のゼオライトとして大別されているものを検討することには動機付けがあり、引用発明のゼオライトとして適用することにより、本願発明の構成が容易に導かれるものといえる。
すなわち、摘記(2a)に、「形状選択触媒として関心のあるゼオライトは、空孔とチャンネルの体系により3つの主要な群に分けることができる。・・・第3のゼオライトの群は2つの空孔体系を有しており、酸素12員環と酸素8員環の空間の相互接続したチャンネルをもっている。例えば、モルデナイト、オフレタイト、クリノプチロライト、フェリエライト等である。」と記載されるように、空孔とチャンネルの体系で分けた3つの主要な群の一つとして、酸素12員環と酸素8員環の空間の相互接続したチャンネルもっているモルデナイト(細孔サイズ0.6nm×0.7nmすなわち6Å×7Å)、オフレタイト(細孔サイズ0.58nmすなわち5.8Å)、クリノプチロライト(細孔サイズ0.4nm×0.5nmすなわち4Å×5Å)、フェリエライト(細孔サイズ0.55nm×0.48nmすなわち5.5Å×4.8Å)等が示されていること(細孔サイズについては、摘記(2b)表Aに記載)、摘記(3a)摘記(3b)においても、12員環一次元細孔同士が8員環の細い横穴でつながっている「二次元(または三次元)細孔」であるType-IIIに属するものとしては、モルデナイトmordenite(MOR)(主な細孔径0.70nm×0.65nmすなわち7Å×6.5Å)、グメリナイトgmelinite(GME)(主な細孔径0.70nm=7Å)が表の中でグループとして記載されていることから、引用発明において、ジメチルエーテルのカルボニル化のためのゼオライト触媒として優れた触媒として用いられているモルデナイト、フェリエライトと同じ酸素12員環と酸素8員環の空間の相互接続したチャンネルもっており、細孔径としても、同程度である群に含まれ、シリカ-アルミナ比においても同程度であるクリノプチロライト(細孔サイズについては、摘記(2b)表Aに記載)やグメリナイト(グメリン沸石)(グメリナイトの構造式は、例えば、高橋 浩,生産研究,19巻・6号(1967.6)163?167頁中の164頁表2記号Sに記載され、当業者には周知である。)等の、モルデナイト、フェリエライト以外のゼオライト触媒を検討することは、当業者にとって容易に想起できる技術的事項である。

ウ 発明の効果について
引用発明においては、摘記(1f)において、モルデナイト、フェリエライトを用いることで、ZSM5やYフォージャサイトよりも、ジメチルエーテルのカルボニル化のためのゼオライト触媒として優れていることが記載され、摘記(1g)では、モルデナイトを用いた実施例において、Si:Al比を変えることにより生産性を増加できることが記載され、Si/Alが6.5?10(シリカ/Al_(2)O_(3)であれば13?20)において高い空時収率を得ていることが示されている。
また、刊行物2にも記載されるように、Si/Al比が5?20の場合に多くの場合ブレンステッド酸サイトがサイト濃度や個々のサイトの強度に依存した全酸性度として最大になることが技術常識であること(6,7欄参照)も考慮すると、摘記(2a)摘記(2b)摘記(3a)摘記(3b)に記載されるような、ゼオライト触媒として、同程度の細孔径を有し、同じチャンネル構造の群に属するものを、一定のシリカ:アルミナ比(少なくとも5以上)以上に調製して使用することで、10員環のみを有するゼオライト触媒や12員環のみを有するゼオライト触媒に比較して空時収率が向上したからといって、当業者の予測を超える顕著な効果とはいえない。

エ なお、請求人は、平成27年5月15日付け意見書において、刊行物1のカルボニル化方法を使用するために、代わりのゼオライト触媒を探している当業者にとって、刊行物2のエーテル化のような他の技術分野から参考にすることはないし、刊行物3のような、SDA(有機のstructure-directing agent)を使用する大孔径のゼオライトの合成について強調されるゼオライトの構造や機能について多くの異なった特徴が説明された一般的な文献の教示を参考にすることはない旨主張している。
しかしながら、刊行物2の摘記箇所は、形状選択触媒の応用というタイトルの記事を分子形状、ゼオライト構造、特定触媒に対する選択性の関係を一般化するための参考文献として挙げた部分の記載であるから、当業者であれば形状選択触媒としてのゼオライトの空孔とチャンネルの体系により3つの主要な群に分けたものの記載と理解でき、刊行物3についても、大孔径のゼオライトの合成に用いる試薬に関する記載があることは、ゼオライト自体の製造方法を伴った文献であることを示しているといえ、その文献で示されているゼオライト構造のタイプの分類に基づいて、同一グループ内のゼオライトを検討の対象とすることは、当業者が容易になし得る技術的事項であるといえる。
したがって、請求人の当業者が刊行物2,3の記載を参考にすることはないという主張は採用することはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 理由2について
(1)本願発明の課題について
本願発明の課題は、【0002】?【0007】の記載及び発明の詳細な説明の記載全体を参酌すると、ジメチルエーテルのカルボニル化によって酢酸メチルを高い選択性と収率で得ることであるといえる。

(2)特許請求の範囲の記載
第2で記載のとおりであり、請求項1には、
「少なくとも1種の8員環チャネルを有するゼオライトを含む触媒の存在下で、実質的に無水条件下で、ジメチルエーテルを一酸化炭素でカルボニル化することによる酢酸メチルの選択的な製造方法であって、
8員環チャネルを、8員以上の環によって規定されるチャネルと相互接続させ、且つ8員環が、少なくとも2.5オングストローム×少なくとも3.6オングストロームの領域寸法及び少なくとも1個のブレンステッド酸部位を有し、そしてゼオライトが、少なくとも5のシリカ:X_(2)O_(3)(但し、Xがアルミニウム、ホウ素、鉄、ガリウム及びこれらの混合物から選択される。)のモル比を有し、且つゼオライトが、モルデン沸石又はフェリエ沸石ではないことを特徴とする酢酸メチルの選択的な製造方法。」
請求項13には、
「ゼオライト触媒が、フレームワークタイプOFF、CHA、ITE、GME、ETR、EON及びMFSのゼオライトからなる群から選択される請求項1に記載の方法。」
請求項14には、
「触媒が、オフレット沸石、グメリン沸石、ZSM-57及びECR-18からなる群から選択される請求項13に記載の方法。」
と特定するとおり、無水条件下で、ジメチルエーテルを一酸化炭素でカルボニル化することによる酢酸メチルの選択的な製造方法に用いるゼオライトとして、チャンネル構造と領域寸法、シリカ:アルミナ等の比を限定したものが記載されている。

(3)発明の詳細な説明の記載
ア 一般的な記載
【0020】?【0027】には、本願発明のゼオライトについて、チャンネル構造、フレームワークタイプ毎の構造、供給源、ブレンステッド酸(H^(+))部位、ゼオライトの化学組成等について記載されている。

イ 実施例の記載
また、表1に、9種のゼオライトのシリカアルミナ比とチャンネル構造が示されたものに関し、ジメチルエーテルのカルボニル化反応の結果が示され、180℃と250℃の反応温度の場合の酢酸メチルの空時収率(STY)が示されている。

(4)判断
請求項1には、酢酸メチルの選択的な製造方法として、用いるゼオライト触媒に関して、モルデン沸石とフェリエ沸石を除く特定がなされ、8員環チャンネルと8員環以上のチャンネルとの相互接続が少なくとも存在している点が特定されているだけで、領域寸法やシリカ:アルミナ比としては、多数のものが含まれる範囲が特定されている。
一方、実施例において酢酸メチルが一定の効率で形成されたことが具体的に記載されているのは、NH_(4)-オフレット沸石、NH_(4)-菱沸石、NH_(4)-ECR-18のみで、NH_(4)-菱沸石、NH_(4)-ECR-18に関しては、250℃で使用した場合、有効な空時収率が得られないという結果が示されている。
本願発明の課題は、上記(2)に記載したとおり、ジメチルエーテルのカルボニル化によって酢酸メチルを高い選択性と収率で得ることであるといえ、ゼオライト触媒を用いた反応は、反応物質に対して形状選択性や固体酸性を利用して通常反応特異的に働くのであるから、実施例または共通して選択したゼオライト触媒と反応物質との反応機構の理論的説明なしに、明細書に具体的に明らかにされていないゼオライト触媒や反応条件の場合についてまでも、酢酸メチルを高い選択性と収率で得る方法を提供できるとは認められない。
さらに、フレームワークタイプを特定した請求項13に関しても、【0024】の表と【0037】の【表1】の間で、同じフレームワークでも、チャンネル構造や構造中に存在するイオン、具体的触媒名が異なっている記載をしている部分もあり、当業者であっても、出願時の技術常識を参酌しても請求項1記載の特定事項のみで特定されたフレームワークタイプ全体に対して前記課題が解決できるとは認識できない。
さらに、請求項14で特定されているグメリン沸石やZSM-57に関しては、発明の詳細な説明においては、【0022】【0024】に対応するフレームワークタイプに属しているとの記載やチャンネル構造の記載があるだけで、ジメチルエーテルのカルボニル化反応を行っておらず、前記課題が解決できるかどうかは技術常識を参酌しても不明であるから、当業者であってもそれらのゼオライトの場合まで含めて前記課題が解決できるとは認識できない。

なお、請求人は、平成27年5月15日付け意見書において、本願発明は、カルボニル化率の向上に関する発明でなく、ジメチルエーテルカルボニル化触媒として機能するために必要なゼオライトの物理的特性に関する発明あり、上記意見書に添付した参考文献から、特定の構造を有するオフレット沸石、菱沸石、ECR-18以外のゼオライトについても有効な触媒となり得ると推測できる旨主張している。
本願発明は、ジメチルエーテルを一酸化炭素でカルボニル化することによる酢酸メチルの選択的な製造方法と特定されているのであるから、酢酸メチルが一定の選択性と収率をもって得られないと本願発明の前記課題が解決できたとはいえないし、本願出願日以降に公知になった文献に、ジメチルエーテルのカルボニル化速度とMORとFERの8員環のH^(+)の数の間に直接的関係が示された旨の記載があるからといって、出願時の技術常識を示しているとはいえないことはもちろんのこと、本願明細書において、酢酸メチルの選択的な製造を実際に確認しているNH_(4)-オフレット沸石、NH_(4)-菱沸石、NH_(4)-ECR-18以外の場合の請求項1に該当するゼオライトを用いて、前記本願発明の課題が解決できることを当業者が認識できることにはならない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

(5)まとめ
したがって、少なくとも請求項1,13,14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で当業者が前記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも前記課題が解決できると認識できる出願時の技術常識が存在するともいえない。
してみると、少なくとも請求項1,13,14の特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載されたものということはできないから、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1乃至3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、この出願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしておらず、その余について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-24 
結審通知日 2015-07-29 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2009-541278(P2009-541278)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C07C)
P 1 8・ 121- WZ (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神野 将志福井 悟  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 瀬良 聡機
木村 敏康
発明の名称 脂肪族アルコール及び/又はその反応性誘導体のカルボニル化方法  
代理人 田辺 稜  
代理人 西口 克  
代理人 西口 克  
代理人 浜田 治雄  
代理人 浜田 治雄  
代理人 田辺 稜  

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