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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1309197
審判番号 不服2014-8356  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-07 
確定日 2015-12-28 
事件の表示 特願2009-290550「天然油ベースポリオールを含むポリマーポリオール、該ポリマーポリオールを含むポリウレタンフォーム、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日出願公開、特開2010-150547〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,平成21年12月22日(パリ条約による優先権主張 平成20年12月23日,アメリカ合衆国(US))を出願日とする特許出願(外国語書面出願)であって,平成25年5月24日付けで拒絶理由が通知され,同年8月23日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書が補正され,同年12月20日付けで拒絶査定がされ,これに対して,平成26年5月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?32に係る発明は,平成25年8月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?32に記載された事項により特定されるとおりのものであって,上記発明のうち,請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「ポリマーポリオールの製造方法であって,
(A)(1)(a)少なくとも1つのヒドロキシル基を本来含有する1以上の天然油,
(b)天然油の1以上のヒドロキシル化誘導体,
(c)1以上の天然油と1以上のアルキレンオキシドとのアルコキシル化生成物を含む1以上のポリオール,
(d)1以上の天然油の1以上のヒドロキシル化誘導体と1以上のアルキレンオキシドとのアルコキシル化生成物を含む1以上のポリオール,および
(e)これらの混合物
からなる群から選択されるベースポリオール,
(2)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー,および
(3)予備形成安定剤
を,
(4)フリーラジカル重合開始剤,および必要に応じて,
(5)連鎖移動剤
の存在下でフリーラジカル重合する工程
を含んでなる,前記方法。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2008-518055号公報(以下「引用文献2」という。)に記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない,あるいは,同引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。

第4 本願発明についての判断
1 引用文献2に記載された発明
(1) 引用文献2には,次の記載がある。(下線は審決で付記。以下同じ。)
「【請求項1】
ポリオール連続相と分散ポリマー粒子とを有し,ポリオール連続相が脂肪酸または脂肪酸エステル由来の少なくとも1つのヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールを含むポリマーポリオール。
【請求項2】
ヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールがヒドロキシル,一級アミンおよび二級アミン基の全数当たり平均で少なくとも1.3個の,ヒドロキシメチル基含有脂肪酸あるいはエステル由来の繰り返し単位を開始剤化合物中に含有し,ヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールが少なくとも400以上15000までの当量を有するように,12?26個の炭素原子を有するヒドロキシメチル基含有脂肪酸またはこのようなヒドロキシメチル基含有脂肪酸のエステルと平均で少なくとも1個のヒドロキシル,一級アミンおよび/または二級アミン基を有するポリオールあるいはポリアミン開始剤化合物とを反応させることにより,ヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールを製造する,請求項1に記載のポリマーポリオール。…
【請求項6】
分散粒子が少なくとも1つのエチレン型不飽和モノマーのポリマーの粒子である,請求項1から5のいずれかに記載のポリマーポリオール。
【請求項7】
分散ポリマー粒子がビニル芳香族ポリマー,エチレン型不飽和ニトリルまたはこれらの2つ以上の混合物のポリマーである,請求項6に記載のポリマーポリオール。
【請求項8】
分散ポリマー粒子がスチレンのポリマーまたはスチレンとアクリロニトリルとのコポリマーである,請求項7に記載のポリマーポリオール。
【請求項9】
分散粒子が少なくとも1つの安定剤にグラフトされている,請求項1から8のいずれかに記載のポリマーポリオール。…
【請求項14】
ヒドロキシメチル基含有ポリエステルポリオールが1分子当たり平均で3?4個のヒドロキシル基とヒドロキシル基当たり500?1000の当量とを有する,請求項1から13のいずれかに記載のポリマーポリオール。…
【請求項17】
安定剤が重合性ビニル不飽和を有するポリエーテルの残基である,請求項9あるいは10に記載のポリマーポリオール。
【請求項18】
安定剤がポリエーテルポリオールとビニルメトキシシランまたはエチレン型不飽和イソシアネートとの付加物である,請求項17に記載のポリマーポリオール。
【請求項19】
エチレン型不飽和モノマーの液滴の撹拌された分散物を少なくとも1つのヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールと少なくとも1つの安定剤とを含有する連続ポリオール相中に形成し,分散されたエチレン型不飽和モノマー液滴を重合させて,生成ポリマーの粒子の分散物を連続ポリオール相中に形成することを含んでなる,請求項1に記載のポリマーポリオールを製造する方法。…
【請求項30】
請求項1から19のいずれかに記載のポリマーポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより製造されるポリウレタンポリマー。…」(【特許請求の範囲】)
「本発明は,ヒドロキシル含有材料中のポリマー粒子の分散物に関する。このタイプの分散物は,通常,ポリマーポリオールまたはコポリマーポリオールとして知られている。」(【0002】)
「【背景技術】
ポリウレタンフォームはポリイソシアネートとポリオールとの反応により製造される。ジオールまたはポリオールとジカルボン酸とのエステル縮合反応からのポリエステルポリオールを用いて,可撓性フォームを製造するポリウレタンの最初の大規模商用生産が立ち上がった。コストが低く,広範囲のポリオールを製造する能力があるために,ポリエステルポリオールは,ポリエーテルポリオールにより地位を奪われた。ポリエーテルは,活性水素の出発化合物,例えば低分子量ポリオールおよびポリアミンを含有する開始剤化合物の存在下で石油原料から誘導されるエポキシド(オキシラン)を重合させることにより製造される。硬質ポリウレタンフォームはひまし油またはひまし油副生物により製造されてきた。」(【0003】)
「【発明が解決しようとする課題】
在来の石油ベースのポリオールの全部あるいは一部を再生可能な原料をベースとする代替ポリオールにより置き換えることが一般に望ましい。在来のポリオールの価格は,確定埋蔵量の先細り,世界的な需要の増加および地政学的環境の不確実さによって益々変動し易くなっている原油価格設定と共に変動する傾向がある。更には,多くの国は国内の石油埋蔵を持たないが,大きな農業を有し,代替ポリオールが技術的および経済的な立場の両方から充分に機能するならば,代替ポリオール製造用の植物油原料を製造できる。したがって,在来のポリオール材料の少なくとも一部を再生可能な材料,例えば植物油または動物油脂ベースのものから誘導される材料により置き換えたポリマーポリオール製品を製造することが望ましい。」(【0006】)
「驚くべきことには,安定な,低粘度のポリマーポリオールがヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールを含有するポリオール連続相中で製造可能である。ポリマーポリオールは,広範囲のポリウレタン用途,例えば可撓性スラブ材(slabstock)フォーム,高レジリエンス(resiliency)可撓性スラブ材フォーム,成形フォーム,ならびに種々のエラストマーおよび微小気泡(microcellular)のエラストマー用途において有用である。
本発明は,また,ヒドロキシメチル基含有脂肪酸またはこれらのアルキルあるいは不活性置換のアルキルエステル,12?26個の炭素原子を有するヒドロキシメチル基含有脂肪酸を含有する連続相中のポリマー粒子の分散物でもある。高固形分のポリマーポリオール組成物が良好な粘度および良好な濾過性で容易に製造されることが判明した。この分散物を直接に使用して,ポリウレタンを製造することができる。しかしながら,多くの場合,このヒドロキシメチル基含有脂肪酸あるいはエステルは,複数のヒドロキシル基または1個のみのヒドロキシル基を有する高比率の分子を含有する。このような場合,本発明の分散物は,好ましくは,高い官能性(すなわち,より多数のイソシアネート反応性基/分子)を有する別な材料とブレンドされて,ポリウレタンの製造に好適なポリオール混合物を生成する。
驚くべきことには,このヒドロキシルメチル基含有脂肪酸あるいはエステルは,ポリウレタンフォームの形成段階時に,あるいはその後でこの混合物中の他のポリオール材料により提供される遊離ヒドロキシル基と反応して,これらとエステル基を形成することができる。単官能性アルコールの存在は,通常,ポリマーの分子量と架橋密度とを限定する非反応性鎖端を生成すると予期されるが,脂肪酸またはエステルと他のポリオール材料からの遊離のヒドロキシル基との反応性によって,これらの単官能性材料が反応して,ポリウレタンポリマーにおいて分子量と架橋密度とを生成することができる代替的な機構が提供される。
本発明のポリマーポリオールは,連続ポリオール相中のポリマー粒子の系内形成(in situ formuation)により好都合に製造される。この粒子は,例えば1つ以上のビニルモノマーのポリマーであるか,あるいはポリウレアあるいはポリウレア-ウレタン粒子であり得る。この連続ポリオール相は少なくとも1つのヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールを含む。
下記に更に詳述するように,ビニル粒子の分散物を製造するためには,1つ以上のエチレン型不飽和モノマーおよび少なくとも1つの安定剤が連続ポリオール相中に分散される。一般に,この重合は,撹拌されたモノマー混合物を連続相中で形成し,このモノマーを重合して分散ポリマー粒子を形成するのに充分な条件にこの混合物を曝すことにより行われる。…
好適なエチレン型不飽和モノマーは,重合時に,連続相が著しく劣化しない温度(150℃以下,特に130℃以下の温度など)で重合可能であり,連続相中で低溶解性を有するものである。好適なモノマーの例は,脂肪族共役ジエン,例えばブタジエン;モノビニリデン芳香族,例えばスチレン,α-メチルスチレン,ビニルナフタレンおよび他の不活性置換のスチレン;α,β-エチレン型不飽和カルボン酸およびエステル,例えばアクリル酸,メタクリル酸,メチルアクリレート,メチルメタクリレート,2-ヒドロキシエチルアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレート;α,β-エチレン型不飽和ニトリル,例えばアクリロニトリル;アクリルアミド;ビニルエステル,例えばビニルアセテート;ビニルエーテル;ビニルケトン;ビニルおよびビニリデンハライドなどを含む。これらのうちで,モノビニル芳香族およびα,β-不飽和ニトリルが好ましい。スチレンとアクリロニトリルが好ましいモノマーである。スチレンとアクリロニトリルとの混合物,特にスチレンがモノマー混合物の重量の約25?95%,特に約50?75%を占める混合物が特に好ましい。」(【0008】?【0013】)
「ポリマーポリオールの製造において安定剤材料を使用することが一般に好ましい。安定なポリマーポリオール製品の形成に安定剤を使用することはよく知られている。
安定剤の一つの類は,連続相のポリオールと相溶性であり(すなわち,連続ポリオール相とそのときの相対的比率で単相の混合物を形成する),重合性エチレン型不飽和結合を含有するマクロマーを含む。このタイプのマクロマーの例は,例えば米国特許第5,494,947号,第4,390,645号および第3,931,450号で述べられている。これらの特許で述べられているマクロマーは,通常,プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドのポリマーであるポリエーテル部分を含む。このポリマーは,ヒドロキシル反応性基とエチレン型不飽和結合を有する二官能性キャップ剤によりキャップされる。このようなキャップ剤の例は,イソシアネート,カルボン酸,カルボン酸ハライド,カルボン酸無水物およびエチレン型不飽和結合を有するエポキシならびにヒドロキシル反応性シラン,例えばビニルトリメトキシシランを含む。このマクロマーは,約2000?50000の,好ましくは約8000?約15000の数平均分子量を有し得る。このマクロマーは,平均で約1?約7個以上のヒドロキシル基/分子を含有し得る。特に興味深いマクロマーは約8000?15000の数平均分子量および平均で1.0個未満のヒドロキシル基/分子を有する。特に興味深い他のマクロマーは約8000?15000の数平均分子量および平均で3?7個のヒドロキシル基/分子を有する。
他の好適な類の安定剤は,追加されたエチレン型重合性不飽和結合を含有しない,約5000?約50000の,特に約8000?約15000の分子量を有するポリエーテルを含む。このタイプの安定剤は米国特許第4,831,076号に詳述されている。これらの安定剤は,低分子量ポリエーテルポリオールとカップリング剤,例えばポリイソシアネート,2個以上のヒドロキシル反応性基(例えばアルコキシ基(alkoxyl group))を有するあるシラン,ポリエポキシド,ポリカルボン酸または対応する酸ハライドおよび無水物などとを反応させることにより好都合に製造される。
追加されたエチレン型不飽和結合を有するマクロマーは,約10重量%までのグラフト化されたビニルポリマーを更に含有し得る。このグラフト化ビニルポリマーは,これらの場合,直径で約1ミクロン以下の,特に約0.5ミクロン以下の極めて小さい分散粒子を形成する傾向がある。これらは,このマクロマーをイソプロパノールまたは他の希釈剤と混合し,ビニルモノマーを導入し,この混合物を重合条件に曝すことにより好都合に製造される。別法としては,この材料は,ポリマーポリオール製造における第1の段階として製造可能である。」(【0026】?【0029】)
「このポリマーポリオールは,モノマー,安定剤および連続相を撹拌しながら合体して,混合物を形成し,この混合物を重合条件にかけることにより好適に製造される。反応の開始時にすべての成分を反応容器に添加することが可能であるが,通常,反応容器にモノマーと安定剤とを連続的に,あるいは反応時の段階において添加することが好ましい。これは良好な温度制御をもたらし,良好な製品安定性をしばしば生じる。この連続的あるいは段階的な添加は,粒子核形成の促進のために,反応容器に少量の連続ポリオール相および安定剤を場合によってはシード分散物と共に添加し,反応温度まで加熱し,次にモノマーを約5分?5時間,好ましくは約15分?2時間の間で連続的あるいは完結的に添加することにより好適に行われる。マクロマー・タイプの安定剤を使用する場合には,少量のモノマーを重合し,その後で主なモノマーの供給を開始し得る。この安定剤は,分散粒子の表面積の成長速度にほぼ比例する速度で好ましくは添加される。
この重合は,好ましくはフリーラジカル開始剤の存在下で行われる。このフリーラジカル開始剤の量は,発熱を制御しながら商業的に妥当な反応速度をもたらすように選択される。フリーラジカル開始剤の通常の量は,モノマー基準で約0.1?約5,好ましくは約0.2?約2そして更に好ましくは約0.25?約1重量%である。このフリーラジカル開始剤は反応の開始時にすべて添加されるか,あるいは連続的に,あるいは反応時の段階(特に,モノマーを添加する場合)において添加され得る。好適なフリーラジカル開始剤の例は,ペルオキシエステル,ペルオキシド,ペルサルフェート,ペルボレート,ペルカーボネート,アゾ化合物などを含む。好適なフリーラジカル開始剤の具体例は,過酸化水素,t-ブチルペルオクトエート,ジ(t-ブチル)ペルオキシド,ラウロイルペルオキシド,クメンヒドロペルオキシド,t-ブチルヒドロペルオキシド,2,2’-アゾビス[2,4-ジメチル]ペンタンニトリル,2-(t-ブチルアゾ)-2-メチルブタンニトリル,2-(t-ブチルアゾ)-2-4,ジメチルペンタンニトリル,アゾビス(イソブチロニトリル),アゾビス(メチルブチロニトリル)(AMBN),tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキサノエートおよびこれらの2つ以上の混合物を含む。
これらの材料を使用することはある場合にはポリマーポリオール製品の安定性と濾過性を改善するので,重合を連鎖移動剤の存在下で行うことも好ましい。好適なこのような連鎖移動剤は例えば米国特許第4,689,354号に述べられ,メルカプタン,例えば三級ドデシルメルカプタン,α-トルエンチオール,1-テトラデカンチオール,2-オクタンチオール,1-ヘプタンチオール,1-オクタンチオール,2-ナフタレンチオール,1-ナフタレンチオール,1-ヘキサンチオール,エタンチオールおよび1-ドデカンチオールを含む。他の好適な連鎖移動剤はベンジルスルフィド,ヨードホルム,ヨウ素などを含む。連鎖移動剤の好適な量は,モノマーの重量基準で約0.1?約5,特に約0.25?約2.5そして好ましくは約0.5?約1%である。」(【0031】?【0033】)
「本発明による第2のタイプの分散物は,連続相がヒドロキシメチル基含有脂肪酸またはこれらのエステルを含み,脂肪酸が12?26個の炭素原子を有するということを除いて,類似の方法で一般に製造される。このエステル基は非置換の,あるいは不活性置換のアルキル基,特にメチルまたはエチルである。これらは,少なくとも1つの構成成分の脂肪酸鎖中に1つ以上の炭素-炭素二重結合を含有する植物あるいは動物油脂から多段階工程で製造可能である。好適な油脂は,例えば,にわとり油脂,カノーラ油,シトラス種油,ココアバター,コーン油,綿実油,ラード,アマニ油,オート麦油,オリーブ油,パーム油,ピーナッツ油,菜種油,米ぬか油,ベニバナ油,ごま油,大豆油,ひまわり油または牛脂を含む。
好都合には,この植物あるいは動物油脂は,最初に低級アルカノール,特にメタノールまたはエタノールとのエステル交換反応にかけられて,構成成分の脂肪酸のアルキルエステルを生成する。生成するアルキルエステルは,所望ならば対応する脂肪酸に加水分解され得る。このアルキルエステル(または脂肪酸)は,一酸化炭素および水素との反応により好都合にはヒドロホルミル化される。これにより,脂肪酸鎖に炭素-炭素不飽和結合の部位で-CHO基を導入する。好適なヒドロホルミル化法は,例えば米国特許第4,731,486号および第4,633,021号ならびにWO04/096744に述べられている。一部の脂肪酸基は多数個の炭素-炭素二重結合部位を含有する。このような場合には,ヒドロホルミル化反応は,すべての二重結合部位で-CHO基を導入し得ないことがある。以降の水素化段階は,残存する炭素-炭素結合を水素化して,本質的にすべての炭素-炭素不飽和結合を除去する一方で,-CHO基をヒドロキシメチル(-CH_(2)OH)基に変換する。」(【0039】?【0040】)
「【実施例】

(実施例1?8)
以下の一般的な手順を使用して,ポリマーポリオール実施例1?8を製造する。丸底フラスコに頭上撹拌機(overhead stirrer),温度制御装置,滴加漏斗および還流凝縮器を備える。このフラスコにヒドロキシルメチル含有ポリエステルポリオールと安定剤(使用する場合には)とを添加し,ヘッドスペースを窒素により充填する。撹拌しながら,この混合物を125℃まで加熱する。容器の内容物を125℃に維持しながら,モノマー(70/30重量比のスチレン/アクリロニトリル)とフリーラジカル開始剤(AMBN)とを含有するストリームを2.5時間かけて反応容器に供給する。この名目の固形含量はすべての場合20%である。次に,この反応混合物を125℃で更に1時間撹拌しながら加熱する。残存モノマー含量を求め,生成したポリマーポリオールをストリッピングして,残存モノマーと他の揮発分とを除去する。
以下のヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールを実施例1?8で使用する。
ヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールA(HMPP A)はヒドロキシメチル化された大豆油と分子量600の三官能性ポリ(エチレンオキシド)との反応生成物である。この材料は約2400の数平均分子量を有する。
HMPP Bはヒドロキシメチル化された大豆油と分子量600の三官能性ポリ(プロピレン)オキシドとの反応生成物である。この材料は約2000の数平均分子量を有する。
HMPP Cはヒドロキシメチル化された大豆油と,87重量%のプロピレンオキシドおよび143重量%のエチレンオキシドの分子量600の三官能性ランダムコポリマーとの反応生成物である。この材料は約2000の数平均分子量を有する。
以下の安定剤を実施例1?8で使用する。
安定剤Aは誘導されたエチレン型不飽和結合と遊離ヒドロキシル基とを有する,8000?15000の数平均分子量のポリエーテルポリオールである。
安定剤Bはビニルトリメトキシシランと数平均分子量3,500のポリエーテルポリオールとの1:3モル比の反応生成物である。
安定剤Cは安定剤BとHMPP Cとの等重量部の反応生成物である。
安定剤Dは安定剤BとHMPP Bとの等重量部の反応生成物である。
原材料と生成する分散物の性質とを下記の表1に示す。
【表1】

」(【0066】?【0075】)

(2)ア 上記(1)の摘記,特に【実施例】に関する記載から,引用文献2には,次の発明が記載されていると認められる。(審決注:審決の便宜上,以下,「実施例5」についての記載から発明を認定する。)
「ヒドロキシメチル化された大豆油と分子量600の三官能性ポリエチレンオキシドとの反応生成物であるヒドロキシルメチル含有ポリエステルポリオールAと,ビニルトリメトキシシランと数平均分子量3,500のポリエーテルポリオールとの1:3モル比の反応生成物である安定剤B(4重量%)とを攪拌して混合すること,
この混合物を反応容器内で125℃まで加熱すること,
当該反応容器に70/30重量比のスチレン/アクリロニトリルのモノマーとアゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)のフリーラジカル開始剤とを含有するストリームを2.5時間かけて供給すること,
この反応混合物を125℃で更に1時間撹拌しながら加熱すること,
を含んでなるポリマーポリオールの製造方法。」(以下「引用発明a」という。)
イ また,上記(1)の摘記のうち,特に【特許請求の範囲】,【0031】及び【0032】の記載から,引用文献2には,次の発明が記載されていると認めることができる。
「ポリオール連続相と分散ポリマー粒子とを有し,ポリオール連続相が脂肪酸又は脂肪酸エステル由来の1分子当たり平均で3?4個のヒドロキシル基とヒドロキシル基当たり500?1000の当量とを有するヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールを含むポリマーポリオールを製造する方法であって,
エチレン型不飽和モノマーの液滴の撹拌された分散物を少なくとも1つのヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールと少なくとも1つの安定剤とを含有する連続ポリオール相中に形成し,分散されたエチレン型不飽和モノマー液滴をフリーラジカル開始剤の存在下で重合させて,ポリマー粒子の分散物をポリオール連続相中に形成することを含む方法。」(以下「引用発明b」という。)

2 本願発明と引用発明aとの対比について
(1) 対比
ア 本願発明と引用発明aとを対比する。
イ 引用発明aの「ヒドロキシメチル化された大豆油」は,大豆油をヒドロキシメチル化したものであり,ヒドロキシル基(OH基)を有するものであるから,そのような「ヒドロキシメチル化された大豆油」と分子量600の三官能性ポリエチレンオキシドとの反応生成物である「ヒドロキシルメチル含有ポリエステルポリオールA」もまたヒドロキシル基を有するものであるといえる。
そして,本願発明の「(b)天然油の1以上のヒドロキシル化誘導体」について,本願の明細書には,「本発明では,ヒドロキシル化とは,分子中に存在するヒドロキシル(すなわちOH)基の数を導入および/または増加させることを意味する。このような天然油のヒドロキシル化誘導体は,空気酸化,オゾン分解,過酸化物の使用によって,ヒドロホルミル化,酵素法,エポキシドの触媒開環などによって調製される。…」(【0024】),「ヒドロキシル化すべき適当な天然油としては…少なくとも1つのヒドロキシル基を本来含有しない天然油が挙げられる。…少なくとも1つのヒドロキシル基を本来含有しない適当な天然油としては,大豆油…が挙げられる…」(【0025】)との記載があることを踏まえると,引用発明aの「ヒドロキシルメチル含有ポリエステルポリオールA」は,本願発明の「天然油の1以上のヒドロキシル化誘導体」に相当するといえる。
ウ また,本願発明の「予備形成安定剤」について,本願の明細書の【0017】の記載から,当該「予備形成安定剤」とは,反応性不飽和基を含有するマクロマー(前駆安定剤)とモノマーとを反応させて得られる反応生成物(コポリマー,中間体)と一応理解できるが,他方で,同【0037】は,本願発明の「予備形成安定剤」に使用できる好例として特許文献を挙げているところ,これら特許文献のうち,米国特許第6455603号の4欄47行?5欄28行に記載される予備形成安定剤(preformed stabilizers)は,引用発明aの「安定剤B」に相当するようなマクロマーである。
さすれば,本願発明の「予備形成安定剤」とは,上述したようなマクロマーとモノマーとの反応生成物(コポリマー,中間体)のみならず,マクロマーそのものを含むと解される。
そうすると,引用発明aの「ビニルトリメトキシシランと数平均分子量3,500のポリエーテルポリオールとの1:3モル比の反応生成物である安定剤B」は,マクロマーであって,本願発明の「予備形成安定剤」に相当するといえる。
エ また,引用発明aの「70/30重量比のスチレン/アクリロニトリルのモノマー」は本願発明の「エチレン性不飽和モノマー」に,「アゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)のフリーラジカル開始剤」は「フリーラジカル重合開始剤」にそれぞれ相当するといえる。
オ さらに,引用発明aは,「ヒドロキシルメチル含有ポリエステルポリオールA」,「70/30重量比のスチレン/アクリロニトリルのモノマー」及び「安定剤B」を,フリーラジカル開始剤(フリーラジカル重合開始剤)である「アゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)」の存在下でフリーラジカル重合する工程を含むことは明らかである。

(2) 一致点及び相違点
そうすると,本願発明と引用発明aとは,次の点で一致するといえる。
「ポリマーポリオールの製造方法であって,天然油の1以上のヒドロキシル化誘導体であるベースポリオール,エチレン性不飽和モノマー及び予備形成安定剤を,フリーラジカル重合開始剤の存在下でフリーラジカル重合する工程を含んでなる方法。」
他方,上記両発明の間に相違点は認められない。

(3) 小括
以上のとおり,本願発明は,引用発明aと実質的に同一であるので,引用文献2に記載された発明であるといえる。

3 本願発明と引用発明bとの対比について
(1) 対比
本願発明と引用発明bとを対比する。
上記2(1)での検討を併せ踏まえると,引用発明bの「ヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオール」は,本願発明の「天然油の1以上のヒドロキシル化誘導体」に相当するといえる。
また,引用発明bの「エチレン型不飽和モノマー」は本願発明の「エチレン性不飽和モノマー」に,「フリーラジカル開始剤」は「フリーラジカル重合開始剤」にそれぞれ相当するといえる。

(2) 一致点及び相違点
そうすると,本願発明と引用発明bとは,次の点で一致し(一致点),次の点(相違点1)で相違すると認められる。
・ 一致点
「ポリマーポリオールの製造方法であって,天然油の1以上のヒドロキシル化誘導体であるベースポリオール及びエチレン性不飽和モノマーを,フリーラジカル重合開始剤の存在下でフリーラジカル重合する工程を含んでなる方法。」である点
・ 相違点1
フリーラジカル重合開始剤の存在下でのフリーラジカル重合について,本願発明は,「ベースポリオール」,「少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー」及び「予備形成安定剤」をフリーラジカル重合開始剤の存在下でフリーラジカル重合すると特定するのに対し,引用発明bは「エチレン型不飽和モノマーの液滴の撹拌された分散物を少なくとも1つのヒドロキシメチル含有ポリエステルポリオールと少なくとも1つの安定剤とを含有する連続ポリオール相中に形成し,分散されたエチレン型不飽和モノマー液滴をフリーラジカル開始剤の存在下で重合」すると特定する点,すなわち,引用発明bの「安定剤」が,本願発明の「予備形成安定剤」に相当する(上記2(1)ウ参照)といえるか明らかでない点

(3) 相違点1についての判断
引用文献2(特に【0026】?【0029】参照。)には,引用発明bの「安定剤」についての記載があるところ,上記2(1)ウでの検討を踏まえると,引用発明bの「安定剤」は,本願発明の「予備形成安定剤」に他ならないといえる。仮に,本願発明の「予備形成安定剤」がマクロマーを含まないといえるとしても,引用文献2の【0029】には,引用発明bの「安定剤」について,「追加されたエチレン型不飽和結合を有するマクロマーは,約10重量%までのグラフト化されたビニルポリマーを更に含有し得る。」との記載があり,この場合の当該「安定剤」はまさに,マクロマーとモノマーとの反応生成物(中間体)を含むものとなる。
そうすると,相違点1は,単なる表現上の差異にすぎない。
また仮に,相違点1が実質的に相違するものであるとしても,引用発明bの「安定剤」として,引用文献2の【0026】?【0029】の記載に基づき,本願発明の「予備形成安定剤」に相当する構成のものとすることは,当業者であれば想到容易である。

(4) 小括
以上のとおり,本願発明は,引用発明bと実質的に同一であるので引用文献2に記載された発明であるといえるか,引用発明bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第5 むすび
したがって,本願の請求項13に係る発明は,引用文献2に記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないか,あるいは,引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
原査定の理由は妥当である。
そうすると,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-30 
結審通知日 2015-07-31 
審決日 2015-08-18 
出願番号 特願2009-290550(P2009-290550)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08F)
P 1 8・ 113- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 須藤 康洋
大島 祥吾
発明の名称 天然油ベースポリオールを含むポリマーポリオール、該ポリマーポリオールを含むポリウレタンフォーム、およびその製造方法  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 反町 洋  
代理人 鈴木 啓靖  

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