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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47L
管理番号 1309270
審判番号 無効2014-800091  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-05-30 
確定日 2016-01-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第5108972号発明「サイクロン集塵装置,電気掃除機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許第5108972号(以下「本件特許」という。)は、平成19年8月30日に出願された特願2007-224569号の一部を平成23年7月25日に新たな特許出願とした特願2011-161491号について、さらにその一部を平成23年11月14日に新たな特許出願とした特願2011-248346号に係り、平成24年10月12日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
2 本件特許に対し、請求人 若林秀機は、平成26年5月30日に本件特許無効審判を請求した。
3 被請求人 シャープ株式会社は、平成26年8月22日に答弁書を提出した。
4 請求人は、平成27年1月5日に口頭審理陳述要領書を提出した。
5 被請求人は、平成27年1月5日に口頭審理陳述要領書を提出した。
6 平成27年1月16日に口頭審理を行った。

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」及び「本件特許2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
吸い込まれた空気を旋回させることにより該空気から塵埃を遠心分離するサイクロン集塵装置を備える電気掃除機において、
前記サイクロン集塵装置は、遠心分離された塵埃を収容する集塵容器と、
前記集塵容器内に配置され、前記集塵容器で塵埃が分離された後の空気を排出するための排気口を有する内筒と、
前記内筒の上方に配置され、前記内筒から排気された空気を濾過する上方濾過部材と、
前記上方濾過部材の上部を覆う上部筐体とを備え、
前記集塵容器で塵埃が分離された後の空気は、前記内筒及び、前記上方濾過部材を上方に通過し、前記上部筐体を通って排気され、
前記内筒は、前記上方濾過部材と反対側の端部が開放され、該開放された端部は、前記集塵容器の底面まで延設されており、
前記集塵容器で遠心分離された塵埃及び、前記上方濾過部材から落下した塵埃は、前記集塵容器の底部に収容されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記サイクロン集塵装置は、
掃除機本体から一体として着脱可能に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の電気掃除機。」

第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第5108972号の請求項1に記載された発明(本件発明1)、請求項2に記載された発明(本件発明2)についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、下記の証拠方法を提出し、以下の無効理由を主張する。

1 無効理由
1-1 無効理由1
本件発明1は、
(1)甲第1号証、甲第2号証(甲第2号証の1、甲第2号証の2)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、あるいは、
(2)甲第1号証に記載された発明、周知技術である甲第2号証(甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第2号証の3、甲第2号証の4、甲第2号証の5)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、よってその特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。
1-2 無効理由2
本件発明2は、
(1)甲第1号証、
(2)甲第2号証、
(3)甲第2号証の1、
(4)甲第2号証の2、
(5)甲第2号証の3、
(6)甲第2号証の4、
(7)甲第2号証の5
に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、よってその特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

2 本件発明1の「上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容されること」についての具体的主張内容
(1)「甲1号証記載の『内側フィルタ部7』は、・・・捕集効率を向上させるという課題がある(【0023】)。・・・これに対し、甲第2号証等、例えば甲第2号証の2の段落【0008】には、・・・甲第1号証と同様の課題『ダストボックス内の外側・内側と2回遠心分離を行うことにより、ダストボックス内の細塵捕集効率を向上させてきた。』との記載があり、更に段落【0036】には、・・・細塵の捕集効率を向上させる点・・・捕集効率を低下させずに・・・との記載がある。よって、甲第1号証と、甲第2号証の2(甲第2号証、甲第2号証の1も同様)とに課題の共通性があり、通常の創作能力を有する当業者が、捕集効率を低下させずに細塵の巻き上げを防ぐことを目的として、甲第1号証に、甲第2号証の2(甲第2号証、甲第2号証の1)に記載の『内側フィルタフィクスチャ12』を適用しようとする動機づけが存在する。」(口頭審理陳述要領書第4頁下から8行?第5頁11行)
(2)「甲第2号証の2(甲第2号証、甲第2号証の1)には、・・・ダストフィルタ30の下面、第2サイクロン空間40、開口部38及び内側集塵部39が連通していることがわかる。当業者であれば、電気掃除機の吸引を停止すれば、ダストフィルタ30でろ過された塵埃の一部が落下して、やがて内側集塵部39に至る作用効果を奏することが理解できる。この作用効果を把握すれば、『ダストフィルタ30のメンテナンス性向上』(【0032】)が求められるサイクロン掃除機においては、甲第1号証記載の円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させるために、甲第2号証の2(甲第2号証、甲第2号証の1)に記載された『内側フィルタフィクスチャ12』を適用しようとする動機づけが存在する。」(口頭審理陳述要領書第5頁14?24行)

3 証拠方法
審判請求書に添付して甲第1号証、甲第1号証の1、甲第2号証、甲第2号証の1?5が提出された。

甲第1号証 特開2003-339593号公報
甲第1号証の1 特開2003-180579号公報
甲第2号証 特開2004-290212号公報
甲第2号証の1 特開2004-229826号公報
甲第2号証の2 特開2004-229827号公報
甲第2号証の3 特開2005-13416号公報
甲第2号証の4 特開2003-265377号公報
甲第2号証の5 特開2005-58787号公報

第4 被請求人の主張
1 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、請求人が主張する無効理由は理由がないものであると主張する。

2 本件発明1の「空気が上方濾過部材を上方に通過する」ことについての具体的主張内容
「甲1発明では、『円筒状フィルタ29』は、円筒状の周面にフィルタが設けられているものであり、必然的に排気は半径方向の側方になる。排気を上方に通過させたのではフィルタとしての機能を奏しなくなる。よって、上方に通過させることは甲1発明においては阻害要因となる。すなわち、上方に通過させる甲2発明を甲1発明に適用することには阻害要因が存在する。」(口頭審理陳述要領書第18頁下から2行?第19頁5行)

第5 甲各号証の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証、甲第1号証の1、甲第2号証、甲第2号証の1?5には、以下の事項が記載されている。

1 甲第1号証
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サイクロン式のダストボックスを備えた電気掃除機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電気掃除機として、使い捨ての集塵用紙パックを用いずに、掃除機本体の吸引経路に着脱自在に装着され、内部で渦巻状の空気の流れ(いわゆる、サイクロン)を発生させるダストボックス内に筒状のフィルタを備えて、このフィルタによりろ過された塵埃をダストボックス内に蓄積できるようにしたサイクロン式の集塵装置を用いたものが知られている。この集塵装置は、使い捨ての紙パックに比べて、フィルタのメンテナンスにより半永久的に使用できるので、経済的である。」
(1b)「【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0009】1は掃除機本体で、該掃除機本体1の前部にサイクロン式のダストボックス2が上方から挿入されることにより着脱自在に設けられ、掃除機本体1の後部には電動送風機3が内蔵されている。前記掃除機本体1は、床面を移動できるように、前輪1a及び一対の後輪1b、1cを備えている。
【0010】また、掃除機本体1の前端面に形成された連結口4には、図示しない一連の吸込ホース、吸込管及び吸込具が連結されるようになっている。
【0011】ダストボックス2は、略円筒状の透明な合成樹脂などで形成された透明または半透明のダストボックス本体5の内側に、それぞれ略円筒状の外側フィルタ部6及び内側フィルタ部7をダストボックス本体5と同心状に配置している。」
(1c)「【0012】前記外側フィルタ部6は、外側筒状部材8と、該外側筒状部材8の上部側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9とから構成されている。
【0013】前記外側筒状部材8の外周側面には、ダストボックス本体5の内壁に向かって延びる鍔部10が突設されており、該鍔部10とダストボックス本体5内壁との間に隙間34が形成されている。
【0014】したがって、ダストボックス本体5の内壁と外側フィルタ部6との間の空間は前記鍔部10により上下にほぼ区画され、ダストボックス本体5の内壁、外側フィルタ9及び鍔部10とによって囲まれた第1サイクロン空間25、及び第1サイクロン空間25と隙間34を介して連通する塵埃を補集する空間部26が形成されている。」
(1d)「【0020】前記内側フィルタ部7は、内側筒状部材11と、該内側筒状部材11の下部側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット11aの周囲を被覆する内側フィルタ12と、内側筒状部材11の上部に延設された複数のスリットを有する円筒状ホルダ11bとから構成されている。
【0021】前記内側筒状部材11の外周側面には、前記外側筒状部材8の内壁に向かって延びる鍔部13が突設されており、該鍔部13と外側筒状部材8の内壁との間に隙間35が形成されている。
【0022】従って、外側筒状部材8内壁と内側フィルタ部7との間は前記鍔部13により上下にほぼ区画され、外側筒状部材8の内壁、内側フィルタ12及び鍔部13によって囲まれた第2サイクロン空間27、及び第2サイクロン空間27と隙間35を介して連通する塵埃を補集する空間部28が形成されている。」
(1e)「【0024】前記外側フィルタ部6及び内側フィルタ部7は、図8に示されるごとく、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂下状態に固着されている。」
(1f)「【0026】一方、内側筒状部材11の上部に延設された円筒状ホルダ11bは、円筒状フィルタ29を保持した状態で前記上蓋部14内部に収納されており、該円筒状ホルダ11bと外側筒状部材8の中蓋部8bとの間は、円筒状ホルダ11bの外周面下端に設けられたシールリング11cによって気密に封止されている。」
(1g)「【0029】前記ダストボックス本体5の外周の掃除機本体1後面側には、縦方向に取手19が形成されているとともに、ダストボックス本体5の底部には、前記取手19下部に設けられたヒンジ20により開閉自在に構成された底蓋21が取り付けられている。
【0030】前記底蓋21は、吸気管15下方に設けられたレバー22の上部を押圧することにより、レバー22の下端に形成されたクランプ23が底蓋21側の係止部24より外れて、ダストボックス本体5の下端開口を開放するようになっており、ダストボックス本体5内部の空間部26及び空間部28に堆積した塵埃は、底蓋21を開けると落下し、ダストボックス2内部を容易に清掃することができる。」
(1h)「【0032】次に、本実施の形態の電気掃除機における塵埃及び空気の流れについて説明する。
【0033】掃除機本体1の外部から吸引された塵埃を含む空気は、連結口4及び吸気管15を通してダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回する。
【0034】具体的には、第1サイクロン空間25内部において空気が旋回しながら外側フィルタ9へ流れ、塵埃は隙間34を通って下方に引かれ、ダストボックス本体5底部の空間部26に堆積する。
【0035】同様に、外側フィルタ9内部に流れた空気もさらに旋回する。具体的には、第2サイクロン空間27内部において空気が旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、旋回に伴って鍔部13下方の空間部28は負圧になるため、内側フィルタ12を通過できない大きさの塵埃は、隙間35を通って下方に引かれ、ダストボックス本体5底部の空間部28に堆積する。
【0036】尚、底蓋21には、外側筒状部材8の下端と底蓋21との間の隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられているので、底蓋21に沿って空間部26から空間部28へ空気が漏れることがない。」
(1i)「【0037】ダストボックス本体5で塵埃がろ過された空気は、内側筒状部材11内を旋回しながら上方へ流れ、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらにろ過された後、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外へ出てから、図6に示す連絡通路31を介して電動送風機3に取り込まれ、電動送風機3から排気フィルタ32を通してろ過され、掃除機本体1の側面に形成されたメッシュ状の排気口33及び後輪1bまたは1cのメッシュを介して外部へ排気される。」
(1j)【図8】及び上記(1d)、(1h)の記載から、内側フィルタ部7の内側筒状部材11の下端は、鍔部13により閉鎖されたものであることが見てとれる。

上記(1a)?(1j)の記載事項を総合すると、甲第1号証には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「サイクロン式のダストボックス2を備えた電気掃除機であって、
サイクロン式のダストボックス2は、掃除機本体1の前部に上方から挿入されることにより着脱自在に設けられ、略円筒状のダストボックス本体5の内側に、それぞれ略円筒状の外側フィルタ部6及び内側フィルタ部7をダストボックス本体5と同心状に配置したものであり、
前記外側フィルタ部6は、外側筒状部材8、該外側筒状部材8の上部側面に形成した複数本のスリット8a及び当該スリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9とから構成され、前記外側筒状部材8の外周側面に突設した鍔部10とダストボックス本体5内壁との間の隙間34により、ダストボックス本体5の内壁、外側フィルタ9及び鍔部10とによって囲まれた第1サイクロン空間25、及び第1サイクロン空間25と隙間34を介して連通する塵埃を補集するダストボックス本体5底部の空間部26を形成しており、
前記内側フィルタ部7は、内側筒状部材11、該内側筒状部材11の下部側面に形成された複数本のスリット11a、当該スリット11aの周囲を被覆する内側フィルタ12及び内側筒状部材11の上部に延設された円筒状ホルダ11bとから構成され、前記内側筒状部材11の下端を閉鎖し内側筒状部材11の外周側面に突設された鍔部13と外側筒状部材8の内壁との間の隙間35により、外側筒状部材8の内壁、内側フィルタ12及び鍔部13によって囲まれた第2サイクロン空間27、及び第2サイクロン空間27と隙間35を介して連通する塵埃を補集するダストボックス本体5底部の空間部28を形成しており、
前記外側フィルタ部6及び内側フィルタ部7は、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂下状態に固着され、内側筒状部材11の上部に延設された円筒状ホルダ11bは、円筒状フィルタ29を保持した状態で前記上蓋部14内部に収納されており、
掃除機本体1の外部から吸引された塵埃を含む空気はダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回し、第1サイクロン空間25内部において空気が旋回しながら外側フィルタ9へ流れ、塵埃は隙間34を通ってダストボックス本体5底部の空間部26に堆積し、
外側フィルタ9内部に流れた空気はさらに旋回し、第2サイクロン空間27内部において空気が旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、内側フィルタ12を通過できない大きさの塵埃は、隙間35を通ってダストボックス本体5底部の空間部28に堆積し、
ダストボックス本体5で塵埃がろ過された空気は、内側筒状部材11内を旋回しながら上方へ流れ、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらにろ過された後、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外へ出てから、連絡通路31を介して掃除機本体1の電動送風機3に取り込まれ、
ダストボックス本体5の底部の底蓋21は、外側筒状部材8の下端との間の隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられるとともに、開閉自在に構成されてダストボックス本体5の下端開口を開放するようになっており、ダストボックス本体5内部の空間部26及び空間部28に堆積した塵埃は、底蓋21を開けると落下し、ダストボックス2内部を容易に清掃することができる、電気掃除機。」

2 甲第1号証の1
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気掃除機に関する。さらに詳しくは、サイクロン式のダストボックスを備えたキャニスタタイプの電気掃除機に関する。」
(2b)「【0027】ダストボックス2は、図4?6および図8に示されるように、略円筒状の透明樹脂などで形成された透明または半透明のダストボックス本体5の内側にそれぞれ略円筒状の外側フィルタ部6および内側フィルタ部7がダストボックス本5と同心状に配置されている。」
(2c)「【0028】図6に示されるように、外側フィルタ部6は、外側筒状部材8と、該外側筒状部材8側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット8a周囲を被覆する外側フィルタ9とからなる。
【0029】また、外側筒状部材8の外周側面には、ダストボックス本体5の内壁に向かって延びる鍔部10が突設されている。ダストボックス本体5の内壁と鍔部10とのあいだには、隙間34が形成されている。したがって、ダストボックス本体5の内壁と外側フィルタ部6とのあいだには、ダストボックス本体5の内壁、外側フィルタ9および鍔部10によって囲まれた第1サイクロン空間25、および第1サイクロン空間25と隙間34を介して連通する塵埃を捕集する空間部26が形成されている。
【0030】鍔部10の先端部分10aは、下方に曲げられているため、塵埃が第1サイクロン空間25から隙間34を介して空間部26へ移動するときに、塵埃が先端部分10aに引っかかることが少なくなるので、好ましい。」
(2d)「【0031】同様に、内側フィルタ部7は、内側筒状部材11と、該内側筒状部材11側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット11a周囲を被覆する内側フィルタ12とからなる。
【0032】また、内側筒状部材11の外周側面には、外側筒状部材8の内壁に向かって延びる鍔部13が突設されている。外側筒状部材8の内壁と鍔部13とのあいだには、隙間35が形成されている。したがって、外側筒状部材8の内壁と内側フィルタ部7とのあいだには、外側筒状部材8の内壁、内側フィルタ12および鍔部13によって囲まれた第2サイクロン空間27、および第2サイクロン空間27と隙間35を介して連通する塵埃を捕集する空間部28が形成されている。
【0033】前記鍔部10と同様に、鍔部13の先端部分13aも、下方に曲げられているため、塵埃が第2サイクロン空間27から隙間35を介して空間部28へ移動するときに、塵埃が先端部分13aに引っかかることが少なくなるので、好ましい。」
(2e)「【0034】外側フィルタ部6および内側フィルタ部7は、図6に示されるように、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂れ下がった状態で固着されている。
【0035】具体的には、外側筒状部材8の上部に延設された中蓋部8bがシールリング8cを挟んだ状態で上蓋部14の内壁に嵌合している。中蓋部8bとダストボックス本体5とのあいだは中蓋部8bの段部に設けられたシールリング8dによって気密的に封止されている。一方、内側筒状部材11の上部に延設された複数のスリットを有する円筒状ホルダ11bは、円筒状フィルタ29を保持した状態で上蓋部14内部に収納されている。円筒状ホルダ11bと中蓋部8bとのあいだは円筒状ホルダ11bの外周面下端に設けられたシールリング11cによって気密的に封止されている。」
(2f)「【0040】つぎに本実施の形態の電気掃除機における塵埃および空気のそれぞれの流れについて説明する。
【0041】掃除機本体1の外部から吸入された塵埃を含む空気は、図6?7に示されるように、連結口4および吸気管15を通してダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回する。具体的には、ダストボックス本体5の内壁、外側フィルタ9および鍔部10によって囲まれた第1サイクロン空間25内部において、空気が旋回しながら外側フィルタ9内部へ流れ、大きな塵埃(粗塵)は、ダストボックス本体5の内壁と鍔部10とのあいだの隙間34を通ってダストボックス本体5底部の空間部26に堆積する。
【0042】同様に、外側フィルタ9内部へ流れた空気もさらに旋回する。具体的には、外側筒状部材8、内側フィルタ12および鍔部13によって囲まれた第2サイクロン空間27内部において、空気は旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、塵埃は、外側筒状部材8と鍔部13とのあいだの隙間35を通ってダストボックス本体5底部の空間部28に堆積する。
【0043】なお、底蓋21には、外側筒状部材8の下端縁と底蓋21とのあいだの隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられているので、底蓋21に沿って空間部26から空間部28へ空気が洩れることがない。」
(2g)「【0044】ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気は、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらに濾過されたのち、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外に出てから、図7に示す連絡通路31を介して電動送風機3に取り込まれ、電動送風機3から排気フィルタ32を通して濾過され、掃除機本体1の側面に形成されたメッシュ状の排気口24および後輪1bまたは1cのメッシュを介して外部へ排出される。」

3 甲第2号証
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、サイクロン式の集塵装置及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。」
(3b)「【0023】
一方、図5?図19等に示すように、集塵装置2は、図8に示す如く横断面形状が略Dカット形状に形成されたダストボックス10の内側に、第1サイクロン筒体となる略円筒状の外側フィルタフィクスチャ(フィルタ枠体)11と、第2サイクロン筒体となる内側フィルタフィクスチャ12が配置されており、ダストボックス10は内部に溜まった塵埃や塵埃の旋回が外から見えるように透明又は半透明の合成樹脂などで形成されている。
【0024】
上記外側フィルタフィクスチャ11は、図9に示すように、その上部外周面に形成された開口部13を覆うように斜線で示したメッシュ(フィルタ)14をインサート成形している部品である。」
(3c)「【0035】
また、上記外側フィルタフィクスチャ11は、ダストボックス10の上端開口を開閉する上蓋24の下面を成す中蓋25に垂れ下がった状態に着脱可能に取り付けられるようになっている。上蓋24の下面を成す中蓋25の中央部には、下方に延びる短めの排気筒26が形成されており、この中蓋25が当該中蓋25の外周に装着されたパッキン27を挟んだ状態で上蓋24の内壁に嵌合している。また、中蓋25とダストボックス10の上端間も、上記中蓋25の外周に装着されたパッキン27によって密閉されるようになっている。すなわち、本実施形態では、図15等に示すように、ダストボックス10と中蓋25と上蓋24間を1つのパッキン27で密閉するように構成されている。従来技術で述べた本願出願人が提案したものでは、ダストボックスと中蓋と上蓋間が2?3個の複数のシール部材で密閉されるようになっていた。シール部材を複数使用する場合、部品点数が増える為、組立工数が増え、また、コストアップや部品検査作業の負担増といった問題が発生し、生産面・コスト面で大きなマイナスとなる。このように、従来、ダストボック10内の気密性保持の為に複数使用していたシール部材を本実施形態では1個で対応できるようになり、従来負担となっていた組立及び部品検査作業の時間削減や、部品や組立費の低減などで大きな効果が得られる。なお、上蓋24の上面には取手部28が設けられている。
【0036】
また、上蓋24と中蓋25との間には、排気筒26の上部開口(排気口)29を覆うようにして細塵を濾過するダストフィルタ30が、中蓋25の外周上端にパッキン31を介して配置されるフィルタ枠体32に装着されて取り付けられている。上記ダストフィルタ30は、図16?図18に示すように構成されて装着される。ここで、このダストフィルタ30が目の粗い仕様だと、細塵の中でも小さな塵埃は通ってしまい、逆に目の細かい仕様だと、細塵の中で大きな塵埃も小さな塵埃も一緒に蓄積され、ダストフィルタ30の目詰まりが早くなる。そこで、本実施形態では、ダストフィルタ30を2層構造に形成すると共に、2層構造の吸入側に排出側より目の粗いフィルタを配置したものである。具体的には、図16(b)に示すように、空気の吸入側(風の流れの上流側)に目の粗いウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFH-50)30aを使用し、排出側(風の流れの下流側)に目の細かいウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFS)30bを使用した2層構造とした。なお、本実施形態では、厚みの比率を、目の粗いウレタンフィルタ30aを2、目の細かいウレタンフィルタ30bを1としたが、掃除機の性能及びダストボックス10の形状や大きさ等により任意に選択できる。また、集塵性能を考慮して、3層構造以上の構成も任意に選択できるものとする。以上のように構成することにより、空気の浄化が1層に比べて長期にわたって安定的に行われ、また、ダストフィルタ30の取換え寿命が大幅に伸び、使用時の負担が低減されるなどの大きな効果が得られる。
【0037】
また、上記のように、ダストボックス10内で分離できなかった細塵の中で大きなものを第1層で捕り、小さなものを第2層で捕るようにした場合、目詰まりは第2層の表面で起こる。ここで、2種類のウレタンフィルタ30a、30bの張り合わせをフィルタ全面で接着して行っている場合、第2層の表面で起こった目詰まりは、水洗いによって目詰まりのない状態に復帰させなければならないので、メンテナンス性に課題が残る。そこで、本実施形態では、図17に網掛け図示したように、ダストフィルタ30の2層の張り合わせ部30cを一部分30dを除いた外周側のみの接着とした。このように構成することにより、ダストフィルタ30が目詰まりした時、2層目表面に溜まった細塵を、接着していない部分30dから落とすことが可能になる。これにより、水洗いすることなくダストフィルタ30を目詰まりのない状態に復帰させることが可能となり、ダストフィルタ30のメンテナンス性向上という効果が得られる。」
(3d)「【0041】
内側フィルタフィクスチャ12に上記のような大径の遠心分離部35と共に小径の遠心分離部36を形成することにより、小径の遠心分離部36で旋回流の流速が大きくなるので、細塵の捕集効率を向上することができる。また、小径の遠心分離部36の下面側は塞がれており、その側面側に図7,図13に示すような開口部38を形成して、この開口部38から遠心力により塵埃を外側フィルタフィクスチャ11の下部内壁で囲まれた内側集塵部39にはじき飛ばすようにしている。はじき飛ばされた塵埃は底蓋43側に落下して捕集されるので、捕集された後は巻き上がらない。この開口部38の幅寸法は、巻き上げを確実に防ぐため遠心分離部内径の1/2以下にするのが望ましい。
・・・
【0045】
次に、本実施形態の電気掃除機における塵埃及び空気のそれぞれの流れについて説明する。
【0046】
掃除機本体1の外部から吸引される塵埃を含む空気は、図3に示されるように、連結口4から吸気管15を通してダストボックス10内に入り、ダストボックス10の内壁に沿って旋回する。具体的には、第1サイクロン空間22内部において、空気が旋回しながら外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部へ流れ、分離された塵埃は隙間21を通って下方に落ち、ダストボックス10底部の外側集塵部23に堆積する。
【0047】
同様に、外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部に流れた空気もさらに旋回する。具体的には、第2サイクロン空間40内部において、空気が旋回しながら遠心分離によって細塵を分離し、分離された細塵は内側フィルタフィクスチャ12の内壁に沿って下方に落下し、内側集塵部39に堆積する。」
(3e)「【0050】
上記のようにして、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、排気筒26から吸引されて上蓋24内部のダストフィルタ30により更に濾過されたのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出る。そして、掃除機本体1内の連絡通路7を介して電動送風機3に取り込まれる。図4に示したように、電動送風機3から排出される排気は、矢印で示す如く上ケース1bの排気スリット1cからケースカバー1dの排気孔1eに至る経路で上方向に風向きが規制され、排気孔1eを通過した後も上方向に向かって広がってゆくので、床面の埃の舞い上がりを確実に防ぐことができる。」
(3f)【図6】、【図7】、【図16】並びに上記(3c)、(3e)の記載から、ダストフィルタ30は平板状であり、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、ダストフィルタ30を上方に通過したのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出ることが見てとれる。

4 甲第2号証の1
(4a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、サイクロン式の集塵装置及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。」
(4b)「【0029】
一方、図5?図16等に示すように、集塵装置2は、図8に示す如く横断面形状が略Dカット形状に形成されたダストボックス10の内側に、第1サイクロン筒体となる略円筒状の外側フィルタフィクスチャ(フィルタ枠体)11と、第2サイクロン筒体となる内側フィルタフィクスチャ12が配置されており、ダストボックス10は内部に溜まった塵埃や塵埃の旋回が外から見えるように透明又は半透明の合成樹脂などで形成されている。また、外側フィルタフィクスチャ11は、図9に示すように、その上部外周面に形成された開口部13がメッシュ状のフィルタ14で覆われている。」
(4c)「【0036】
また、上記外側フィルタフィクスチャ11は、ダストボックス10の上端開口を開閉する上蓋24の下面を成す中蓋25に垂れ下がった状態に着脱可能に取り付けられるようになっている。上蓋24の下面を成す中蓋25の中央部には、下方に延びる短めの排気筒26が形成されており、この中蓋25が当該中蓋25の外周に装着されたパッキン27を挟んだ状態で上蓋24の内壁に嵌合している。また、中蓋25とダストボックス10の上端間も、上記中蓋25の外周に装着されたパッキン27によって密閉されるようになっている。すなわち、本実施形態では、図12等に示すように、ダストボックス10と中蓋25と上蓋24間を1つのパッキン27で密閉するように構成されている。従来技術で述べた本願出願人が特願2001-384387号で提案したものでは、ダストボックスと中蓋と上蓋間が2?3個の複数のシール部材で密閉されるようになっていた。シール部材を複数使用する場合、部品点数が増える為、組立工数が増え、また、コストアップや部品検査作業の負担増といった問題が発生し、生産面・コスト面で大きなマイナスとなる。このように、従来、ダストボック10内の気密性保持の為に複数使用していたシール部材を本実施形態では1個で対応できるようになり、従来負担となっていた組立及び部品検査作業の時間削減や、部品や組立費の低減などで大きな効果が得られる。なお、上蓋24の上面には取手部28が設けられている。
【0037】
また、上蓋24と中蓋25との間には、排気筒26の上部開口(排気口)29を覆うようにして細塵を濾過するダストフィルタ30が、中蓋25の外周上端にパッキン31を介して配置されるフィルタ枠体32に装着されて取り付けられている。上記ダストフィルタ30は、図13?図15に示すように構成されて装着される。ここで、このダストフィルタ30が目の粗い仕様だと、細塵の中でも小さな塵埃は通ってしまい、逆に目の細かい仕様だと、細塵の中で大きな塵埃も小さな塵埃も一緒に蓄積され、ダストフィルタ30の目詰まりが早くなる。そこで、本実施形態では、ダストフィルタ30を2層構造に形成すると共に、2層構造の吸入側に排出側より目の粗いフィルタを配置したものである。具体的には、図13(b)に示すように、空気の吸入側(風の流れの上流側)に目の粗いウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFH-50)30aを使用し、排出側(風の流れの下流側)に目の細かいウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFS)30bを使用した2層構造とした。なお、本実施形態では、厚みの比率を、目の粗いウレタンフィルタ30aを2、目の細かいウレタンフィルタ30bを1としたが、掃除機の性能及びダストボックス10の形状や大きさ等により任意に選択できる。また、集塵性能を考慮して、3層構造以上の構成も任意に選択できるものとする。以上のように構成することにより、空気の浄化が1層に比べて長期にわたって安定的に行われ、また、ダストフィルタ30の取換え寿命が大幅に伸び、使用時の負担が低減されるなどの大きな効果が得られる。
【0038】
また、上記のように、ダストボックス10内で分離できなかった細塵の中で大きなものを第1層で捕り、小さなものを第2層で捕るようにした場合、目詰まりは第2層の表面で起こる。ここで、2種類のウレタンフィルタ30a、30bの張り合わせをフィルタ全面で接着して行っている場合、第2層の表面で起こった目詰まりは、水洗いによって目詰まりのない状態に復帰させなければならないので、メンテナンス性に課題が残る。そこで、本実施形態では、図14に網掛け図示したように、ダストフィルタ30の2層の張り合わせ部30cを一部分30dを除いた外周側のみの接着とした。このように構成することにより、ダストフィルタ30が目詰まりした時、2層目表面に溜まった細塵を、接着していない部分30dから落とすことが可能になる。これにより、水洗いすることなくダストフィルタ30を目詰まりのない状態に復帰させることが可能となり、ダストフィルタ30のメンテナンス性向上という効果が得られる。」
(4d)「【0042】
内側フィルタフィクスチャ12に上記のような大径の遠心分離部35と共に小径の遠心分離部36を形成することにより、小径の遠心分離部36で旋回流の流速が大きくなるので、細塵の捕集効率を向上することができる。また、小径の遠心分離部36の下面側は塞がれており、その側面側に図7,図10に示すような開口部38を形成して、この開口部38から遠心力により塵埃を外側フィルタフィクスチャ11の下部内壁で囲まれた内側集塵部39にはじき飛ばすようにしている。はじき飛ばされた塵埃は底蓋43側に落下して捕集されるので、捕集された後は巻き上がらない。この開口部38の幅寸法は、巻き上げを確実に防ぐため遠心分離部内径の1/2以下にするのが望ましい。
・・・
【0046】
次に、本実施形態の電気掃除機における塵埃及び空気のそれぞれの流れについて説明する。
【0047】
掃除機本体1の外部から吸引される塵埃を含む空気は、図3に示されるように、連結口4から吸気管15を通してダストボックス10内に入り、ダストボックス10の内壁に沿って旋回する。具体的には、第1サイクロン空間22内部において、空気が旋回しながら外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部へ流れ、分離された塵埃は隙間21を通って下方に落ち、ダストボックス10底部の外側集塵部23に堆積する。
【0048】
同様に、外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部に流れた空気もさらに旋回する。具体的には、第2サイクロン空間40内部において、空気が旋回しながら遠心分離によって細塵を分離し、分離された細塵は内側フィルタフィクスチャ12の内壁に沿って下方に落下し、内側集塵部39に堆積する。」
(4e)「【0050】
上記のようにして、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、排気筒26から吸引されて上蓋24内部のダストフィルタ30により更に濾過されたのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出る。そして、掃除機本体1内の連絡通路7を介して電動送風機3に取り込まれる。図4に示したように、電動送風機3から排出される排気は、矢印で示す如く上ケース1bの排気スリット1cからケースカバー1dの排気孔1eに至る経路で上方向に風向きが規制され、排気孔1eを通過した後も上方向に向かって広がってゆくので、床面の埃の舞い上がりを確実に防ぐことができる。」
(4f)【図6】、【図7】、【図13】並びに上記(4c)、(4e)の記載から、ダストフィルタ30は平板状であり、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、ダストフィルタ30を上方に通過したのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出ることが見てとれる。

5 甲第2号証の2
(5a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、サイクロン式の集塵装置及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。」
(5b)「【0023】
一方、図5?図20等に示すように、集塵装置2は、図8に示す如く横断面形状が略Dカット形状に形成されたダストボックス10の内側に、第1サイクロン筒体となる略円筒状の外側フィルタフィクスチャ(フィルタ枠体)11と、第2サイクロン筒体となる内側フィルタフィクスチャ12が配置されており、ダストボックス10は内部に溜まった塵埃や塵埃の旋回が外から見えるように透明又は半透明の合成樹脂などで形成されている。また、外側フィルタフィクスチャ11は、図9に示すように、その上部外周面に形成された開口部13がメッシュ状のフィルタ14で覆われている。」
(5c)「【0030】
また、上記外側フィルタフィクスチャ11は、ダストボックス10の上端開口を開閉する上蓋24の下面を成す中蓋25に垂れ下がった状態に着脱可能に取り付けられるようになっている。上蓋24の下面を成す中蓋25の中央部には、下方に延びる短めの排気筒26が形成されており、この中蓋25が当該中蓋25の外周に装着されたパッキン27を挟んだ状態で上蓋24の内壁に嵌合している。
また、中蓋25とダストボックス10の上端間も、上記中蓋25の外周に装着されたパッキン27によって密閉されるようになっている。すなわち、本実施形態では、図12等に示すように、ダストボックス10と中蓋25と上蓋24間を1つのパッキン27で密閉するように構成されている。従来技術で述べた本願出願人が提案したものでは、ダストボックスと中蓋と上蓋間が2?3個の複数のシール部材で密閉されるようになっていた。シール部材を複数使用する場合、部品点数が増える為、組立工数が増え、また、コストアップや部品検査作業の負担増といった問題が発生し、生産面・コスト面で大きなマイナスとなる。このように、従来、ダストボック10内の気密性保持の為に複数使用していたシール部材を本実施形態では1個で対応できるようになり、従来負担となっていた組立及び部品検査作業の時間削減や、部品や組立費の低減などで大きな効果が得られる。なお、上蓋24の上面には取手部28が設けられている。
【0031】
また、上蓋24と中蓋25との間には、排気筒26の上部開口(排気口)29を覆うようにして細塵を濾過するダストフィルタ30が、中蓋25の外周上端にパッキン31を介して配置されるフィルタ枠体32に装着されて取り付けられている。上記ダストフィルタ30は、図13?図15に示すように構成されて装着される。ここで、このダストフィルタ30が目の粗い仕様だと、細塵の中でも小さな塵埃は通ってしまい、逆に目の細かい仕様だと、細塵の中で大きな塵埃も小さな塵埃も一緒に蓄積され、ダストフィルタ30の目詰まりが早くなる。そこで、本実施形態では、ダストフィルタ30を2層構造に形成すると共に、2層構造の吸入側に排出側より目の粗いフィルタを配置したものである。具体的には、図13(b)に示すように、空気の吸入側(風の流れの上流側)に目の粗いウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFH-50)30aを使用し、排出側(風の流れの下流側)に目の細かいウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFS)30bを使用した2層構造とした。なお、本実施形態では、厚みの比率を、目の粗いウレタンフィルタ30aを2、目の細かいウレタンフィルタ30bを1としたが、掃除機の性能及びダストボックス10の形状や大きさ等により任意に選択できる。また、集塵性能を考慮して、3層構造以上の構成も任意に選択できるものとする。以上のように構成することにより、空気の浄化が1層に比べて長期にわたって安定的に行われ、また、ダストフィルタ30の取換え寿命が大幅に伸び、使用時の負担が低減されるなどの大きな効果が得られる。
【0032】
また、上記のように、ダストボックス10内で分離できなかった細塵の中で大きなものを第1層で捕り、小さなものを第2層で捕るようにした場合、目詰まりは第2層の表面で起こる。ここで、2種類のウレタンフィルタ30a、30bの張り合わせをフィルタ全面で接着して行っている場合、第2層の表面で起こった目詰まりは、水洗いによって目詰まりのない状態に復帰させなければならないので、メンテナンス性に課題が残る。そこで、本実施形態では、図14に網掛け図示したように、ダストフィルタ30の2層の張り合わせ部30cを一部分30dを除いた外周側のみの接着とした。このように構成することにより、ダストフィルタ30が目詰まりした時、2層目表面に溜まった細塵を、接着していない部分30dから落とすことが可能になる。これにより、水洗いすることなくダストフィルタ30を目詰まりのない状態に復帰させることが可能となり、ダストフィルタ30のメンテナンス性向上という効果が得られる。」
(5d)「【0036】
内側フィルタフィクスチャ12に上記のような大径の遠心分離部35と共に小径の遠心分離部36を形成することにより、小径の遠心分離部36で旋回流の流速が大きくなるので、細塵の捕集効率を向上することができる。また、小径の遠心分離部36の下面側は塞がれており、その側壁側に図7,図10に示すような開口部38を形成して、この開口部38から遠心力により塵埃を外側フィルタフィクスチャ11の下部内壁で囲まれた内側集塵部39にはじき飛ばすようにしている。はじき飛ばされた塵埃は底蓋43側に落下して内側集塵部39内に捕集されるので、捕集された後は巻き上がらない。従来技術で述べたように、ダストボックス底面に対向して開口部を形成する方式では、ダストボックス底面との距離を8mm以下にしないと、一度捕集した細塵の巻き上げを完全には防ぐことができず、捕集効率を犠牲にしなければならなかったが、本実施形態のように側壁側に開口部38を形成するという別方式とすることで、捕集効率を低下させずに細塵の巻き上げを防ぐことが可能となった。また、開口部38の幅寸法は、巻き上げを確実に防ぐため、その遠心分離部内径の1/2以下にするのが望ましい。
・・・
【0041】
次に、本実施形態の電気掃除機における塵埃及び空気のそれぞれの流れについて説明する。
【0042】
掃除機本体1の外部から吸引される塵埃を含む空気は、図3に示されるように、連結口4から吸気管15を通してダストボックス10内に入り、ダストボックス10の内壁に沿って旋回する。具体的には、第1サイクロン空間22内部において、空気が旋回しながら外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部へ流れ、分離された塵埃は隙間21を通って下方に落ち、ダストボックス10底部の外側集塵部23に堆積する。
【0043】
同様に、外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部に流れた空気もさらに旋回する。具体的には、第2サイクロン空間40内部において、空気が旋回しながら遠心分離によって細塵を分離し、分離された細塵は内側フィルタフィクスチャ12の内壁に沿って下方に落下し、内側集塵部39に堆積する。」
(5e)「【0046】
上記のようにして、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、排気筒26から吸引されて上蓋24内部のダストフィルタ30により更に濾過されたのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出る。そして、掃除機本体1内の連絡通路7を介して電動送風機3に取り込まれる。図4に示したように、電動送風機3から排出される排気は、矢印で示す如く上ケース1bの排気スリット1cからケースカバー1dの排気孔1eに至る経路で上方向に風向きが規制され、排気孔1eを通過した後も上方向に向かって広がってゆくので、床面の埃の舞い上がりを確実に防ぐことができる。」
(5f)【図6】、【図7】、【図13】並びに上記(5c)、(5e)の記載から、ダストフィルタ30は平板状であり、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、ダストフィルタ30を上方に通過したのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出ることが見てとれる。

6 甲第2号証の3
(6a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、掃除機本体に着脱自在に取付けて使用される集塵カップ、及びこのカップを備えた電気掃除機に関する。」
(6b)「【0016】
この集塵カップ4は、図2?図4に示すようにカップ本体21、空気導入部31が形成された蓋32、及び例えば一対の鉄分別体41等を備えている。
【0017】
透明合成樹脂製のカップ本体21は、図2に示すように上端が開口された有底円筒状をなしていて、その上端開口縁から一体に形成されたカップハンドル22を有している。カップ本体21の上端開口は、この本体21を上下逆様にすることにより内部の塵を排出する開口として使用される。
【0018】
蓋32は、空気導入部31が一体に形成されて、カップ本体21の上端開口に着脱自在に嵌入して取付けられる合成樹脂製のフレーム33に、第1フィルタ34と第2フィルタ35とを取付けて形成されている。このため、蓋32は通気性を有している。図1中符号33aはカップ本体21から蓋32を取外す際に使用されるつまみ部を示しており、このつまみ部33aはフレーム33に一体に形成されている。
【0019】
空気導入部31はフレーム33の周部に寄せて設けられている。この空気導入部31の上部は蓋32の上方に向けて開放された空気入口31aをなしている。空気導入部31の下部は、蓋32がカップ本体21の上端開口を塞ぐように取付けられた状態で、カップ本体21の上部内周面に沿うように配置される空気出口31bをなしている。これにより、カップ本体21内に含塵空気を導入する空気導入部31は、流通する含塵空気をカップ本体21の内周面に沿って旋回させるように空気出口31bから流出させる。」
(6c)「【0020】
金網などから有底筒状に形成された第1フィルタ34は、フレーム33の略中央部に下向きに突出して取付けられている。この第1フィルタ34よりもメッシュが細かい第2フィルタ35は、平板状であって、フレーム33の上面部に装着されている。なお、図1中符号33bは第2フィルタ35を上側から保持する格子状のフィルタ押えを示している。」
(6d)「【0025】
前記構成の集塵カップ4は、既述のように閉じ位置のケース蓋8と載置部10との間に挟まれて掃除機本体2に取付けられる。これにより、図1に示すように集塵カップ4の空気入口31aがケース蓋8の吸塵口17の下流側に接続され、かつ、集塵カップ4の出口をなした上端開口を塞いで取付けられた第2フィルタ35が、吸気路15の入口15aに接続される。吸気路15の出口15bは電動送風機3の吸気口3aに連通される。
【0026】
このため、吸塵口17に気流ガイドなどを接続して電動送風機3を動作させることにより、空気導入部31を通ってカップ本体21内に導入された含塵空気が、カップ本体21の内周面に沿って旋回しつつ下向きに流動した後に、カップ本体21の略中央部で反転上昇して蓋32を通って吸気路15に流入し、この吸気路15から電動送風機3に吸込まれる。
【0027】
こうした気流の流れによって集塵カップ4内ではサイクロン式の集塵が行なわれる。この集塵では、空気中の重い塵が、遠心力によってカップ本体21の内周面に押し付けられて、空気から分離される。反転上昇する気流中に含まれる軽い塵は、第1、第2のフィルタ34、35によって捕捉される。この集塵において、集塵カップ4内に吸込まれた空気中に鉄粉や鉄の小片等の鉄塵が混入されている場合、この鉄塵も遠心力によってカップ本体21の周壁部内面に押し付けられる。」
(6e)【図1】及び上記(6c)、(6d)の記載から、第1フィルタ34は空気が旋回するカップ本体21内に位置し、第1フィルタ34を通過した空気は、平板状の第2フィルタ35を上方に通過したのち、吸気路15に流入することが見てとれる。

7 甲第2号証の4
(7a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸込風から塵埃を分離する集塵装置およびこれを備えた電気掃除機に関する。」
(7b)「【0013】図1ないし図3において、11は掃除機本体で、この掃除機本体11は、重力により塵埃を分離するいわゆるサイクロン方式であり、床面を走行可能である。また、この掃除機本体11は、中空なケース体12と、このケース体12の上部前側に後部が回動可能に連結して回動によりこのケース体12の前側上部を開閉可能に覆う蓋体13とを備えた本体ケース14を有している。さらに、ケース体12の内部には、図1に示すように、駆動手段としての電動部である電動送風機15が収容、すなわち搭載されている。また、このケース体12の前後方向の略中心域には、電動送風機15の排気側に連通した本体排気口16がこのケース体12の前方に向けて開口されている。」
(7c)「【0017】一方、本体ケース14のケース体12のカップ保持部18と蓋体13との間である電動送風機15の吸込側には、この電動送風機15による吸込風とともに吸い込んだ塵埃を内部で旋回させて、この塵埃を自重による遠心分離により落下させて集塵する集塵装置としてのダストカップ31が着脱可能に取り付けられている。
【0018】また、このダストカップ31は、図1および図3に示すように、電動送風機15にて吸い込まれた吸込風が取り込まれ、この吸込風とともに吸い込まれた塵埃を集塵し、一端である上端に開口部32が形成された有底円筒状の集塵部としてのカップ部33を備えている。このカップ部33の開口部32には、ケース体12と蓋体13との間にダストカップ31を取り付けた際に、この蓋体13の本体吸込口21の基端側に気密に連通する吸気口34を備えた塵埃分離部としての風向制御部である略円筒状のサイクロン部35が取り付けられている。このサイクロン部35の下端は、カップ部33とこのサイクロン部35との間でありこれらカップ部33とこのサイクロン部35とを区画する分離壁36が形成されている。
【0019】さらに、このサイクロン部35の外周部には、吸気口34から吸い込んだ吸込風を旋回させる旋回風構成部としてのサイクロン構成部37が形成されている。このサイクロン構成部37には、このサイクロン構成部37にて旋回させた旋回風をカップ部33の内部へと導く図示しない旋回風流出口が開口されている。この旋回風流出口は、サイクロン部35の外側域に位置しており、カップ部33内と吸気口34とを連通させる。」
(7d)「【0021】そして、この連通口38の上方には、排気口41が開口されている。この排気口41は、連通口38を通過したカップ部33からの吸込風が排気される。さらに、この排気口41には、捕捉手段としての集塵フィルタである略有底円筒状のネットフィルタ42が取り付けられている。このネットフィルタ42は、外周面の上端部にこの外周全域に沿ってこのネットフィルタ42の径方向に突出したフランジ部42aが設けられており、このフランジ部42aが排気口41の上側に係合することにより、排気口41から取り外し可能に取り付けられている。
【0022】また、このネットフィルタ42は、サイクロン部35からカップ部33に亘って下方に向けてこのカップ部33の高さ方向の略中心域まで突出し、カップ部33から連通口38を介して排気口41へと排気される吸込風から微細な細塵を捕捉する。また、このネットフィルタ42は、上側から下側へ向かって径小となるように形成されている。さらに、このネットフィルタ42の下側は、外径がシールパッキン39の内径よりも大きく形成されており、このシールパッキン39の内周に上側から下側へと挿通されている。このため、シールパッキン39の内周の先端がこのネットフィルタ42の外周面に当接して下方へと押しやられており、このシールパッキン39にてこのネットフィルタ42の外周面と分離壁36の中心部に設けられた連通口38との隙間が気密に閉塞されている。」
(7e)「【0023】またさらに、排気口41の上方であるダストカップ31の上端には、この排気口41を通過する吸込風に漂う塵埃、すなわちネットフィルタ42では捕捉できなかったさらに微細な細塵を捕捉する細塵捕捉手段としての補助フィルタ43が取り外し可能に取り付けられている。
【0024】そして、サイクロン構成部37の排気口41は、蓋体13の下端面に設けられた細長凹状の連通凹部44を介して、ケース体12の前側に開口した通気口45により、このケース体12内の電動送風機15の吸込側に気密に連通される。さらに、ダストカップ31のカップ部33の外側面には、一端である上端が上端外周面に連続して設けられ他端である下端が自由端である取手部としてのハンドル部46が一体的に設けられている。」
(7f)「【0032】さらに、この吸気口34へと吸い込まれた吸込風は、この吸気口34からサイクロン部35のサイクロン構成部37へと吸い込まれて、このサイクロン構成部37の内部で渦巻き状に回転して旋回風となった後、このサイクロン構成部37の旋回風流出口を通過して、カップ部33の内部へと吸い込まれる。
【0033】このとき、ネットフィルタ42がカップ部33の略中心部に突出していることにより、このネットフィルタ42の外周面とカップ部33の内周面との間に風路が形成され、このカップ部33に吸い込まれた吸込風がこの風路に沿って移動し、このカップ部33内に渦巻き状の旋回風がより強く発生する。
【0034】そして、このカップ部33内での吸込風の旋回により、この吸込風とともに吸い込まれた塵埃が自重による遠心分離にてカップ部33内に落下して、このカップ部33内に集塵される。
【0035】さらに、このカップ部33内で旋回した吸込風は、このカップ部33の底部中央域からサイクロン構成部37の連通口38に挿通されたネットフィルタ42を通過する。このとき、カップ部33内での遠心分離では分離できなかった微細な塵埃がネットフィルタ42にて捕捉されるとともに、カップ部33内に集塵された塵埃が連通口38を介してこのカップ部33の外部へと排出されることを防止する。」
(7g)「【0038】この後、このネットフィルタ42を通過した吸込風は、排気口41を介してダストカップ31の上端に取り付けられた補助フィルタ43を通過する。このとき、ネットフィルタ42で捕捉できなかったさらに微細な細塵がこの補助フィルタ43に捕捉される。
【0039】そして、この補助フィルタ43を通過した吸込風は、蓋体13の連通凹部44およびケース体12の通気口45を介して電動送風機15の吸込側へと吸い込まれて、この電動送風機15を通過して排気風となり、本体排気口16から外部へと排気される。」
(7h)【図1】及び上記(7e)、(7f)、(7g)の記載から、補助フィルタ43は平板状であり、ネットフィルタ42を通過した空気は補助フィルタ43を上方に通過して蓋体13の連通凹部44に吸い込まれることが見てとれる。

8 甲第2号証の5
(8a)「【0001】
本発明は、吸気を旋回流にすることにより遠心分離により塵埃を含む空気中から塵埃を分離するサイクロン方式の集塵部を備えた電気掃除機に関する。」
(8b)「【0023】
(参考例)
図2は、本発明に関する参考例に係る集塵ケース11及びその構成を示すもので、本体ケース60の前方側に着脱可能に装着されている。集塵ケース11は、吸気された塵埃を含む空気を誘導流路14に通して形成した旋回流による遠心力によって空気中から塵埃を分離する塵埃分離室15と、この塵埃分離室15から流入した塵埃を収容する塵埃収容室16と、この塵埃収容室16の空気を略中央部上方から吸気して前記塵埃分離室15の空気と共に吸気流路26に流入させる吸気筒25と、この吸気筒25の同心円上を軸心方向に移動可能に配設され、吸気筒25の側周面の軸方向に形成された開口部に設けられたフィルタ21に接するように内周面にブラシ毛(除塵体)22が取り付けられた外筒17と、この外筒17の下端と一体に形成されて塵埃分離室15と塵埃収容室16との間を区画して外筒17の軸心方向への移動により塵埃収容室16内に進退移動する圧縮板18とを備えて構成されている。
【0024】
本体ケース60に形成された吸気口20には前記ホース継ぎ手5が連結され、本体ケース60内に配設された電動送風機61が駆動されると、前記吸込具3から吸入された塵埃を含む空気は前記吸気口20から塵埃分離室15内に流入する。図3は塵埃分離室15の水平方向断面を示すもので、誘導流路14によって流入した空気は略円筒形の塵埃分離室15の接線方向に導かれると共に、流路断面積が狭められることによって流速が増し、高速の旋回流となって塵埃分離室15の内周面に沿って下向き傾斜の流路を流れ、空気中の塵埃が遠心分離によって分離され、一部の空気と共に流入口27から塵埃収容室16内に流入する。塵埃分離室15内の旋回流の中心部分の空気は塵埃がほとんど無い状態になっているが、第2フィルタ24を通って細かい塵埃が濾過され、吸気流路26から電動送風機61に吸引される。」
(8c)「【0025】
略円筒形に形成された塵埃収容室16内に内周壁面に沿うように流入した塵埃のうち、質量の大きい砂ゴミ等の塵埃は塵埃収容室16の底面周囲に集まり、質量の小さい綿ゴミ等の塵埃は旋回する空気の流れと共に旋回し、電気掃除機1の運転が停止されたときに塵埃収容室16の底に堆積する。塵埃収容室16の略中央上方には吸気筒25に向かう吸引力が働いているので、塵埃収容室16内の空気は旋回する流れが弱まった底部側から中央に引き寄せられて上昇し、吸気筒25の底面に設けられた第1フィルタ19で微細な塵埃が濾過され、塵埃分離室15内からフィルタ21を通って吸気筒25内に入った空気と共に吸気筒25内から第2フィルタ24を通って吸気流路26から電動送風機61に吸引される。」
(8d)「【0026】
前記吸気筒25は、図3及び図4に示すように、側周面に円筒形の軸心方向にフィルタ21を設けた複数の開口部が形成されている。吸気筒25はフィルタ21を設けた開口部から塵埃分離室15の空気を吸引するので、遠心分離されなかった微細な塵埃がフィルタ21に付着するが、それを除去する作業がし難い位置にある。また、塵埃収容室16に堆積する塵埃のなかで繊維質のものは、ふんわりとして嵩高い状態で堆積し、塵埃収容室16の塵埃収容容積を占拠するので吸塵量を低下させることになる。塵埃収容室16の容積を拡大させると吸塵量を増加させることができるが、徒に掃除機本体7を大型化させ、小型軽量化の要求にそぐわないものとなる。」
(8e)【図2】及び上記(8b)、(8c)の記載から、第2フィルタ24は平板状であり、吸気筒25に入った空気は第2フィルタ24を上方に通過して吸気流路26から電動送風機61に吸引されることが見てとれる。

第6 当審の判断
1 無効理由1の(1)及び(2)について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「サイクロン式のダストボックス2」は、その構造と機能からみて、本件発明1の「吸い込まれた空気を旋回させることにより該空気から塵埃を遠心分離するサイクロン集塵装置」に相当する。よって、甲1発明の「サイクロン式のダストボックス2を備えた電気掃除機」は、本件発明1の「吸い込まれた空気を旋回させることにより該空気から塵埃を遠心分離するサイクロン集塵装置を備える電気掃除機」に相当する。
また、甲1発明の「ダストボックス本体5」は、「ダストボックス2」の構成部材であり、その底部の空間部にサイクロン空間からの塵埃を堆積させているから、本件発明1の「遠心分離された塵埃を収容する集塵容器」に相当する。
甲1発明の「ダストボックス本体5の内側に」「同心状に配置」された「略円筒状の外側フィルタ部6」は、本件発明1の「前記集塵容器内に配置され」た「内筒」に相当する。
また、甲1発明の「外側フィルタ部6」は、「外側筒状部材8、該外側筒状部材8の上部側面に形成した複数本のスリット8a及び当該スリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9とから構成され」ている。そして、「ダストボックス本体5の内壁、外側フィルタ9及び鍔部10とによって囲まれた」「第1サイクロン空間25内部において空気が旋回しながら外側フィルタ9へ流れ、塵埃は隙間34を通ってダストボックス本体5底部の空間部26に堆積」する。よって、甲1発明の「ダストボックス本体5の」「第1サイクロン空間25内部において」「塵埃」を「ダストボックス本体5底部の空間部26に堆積」させた後の「空気が旋回しながら」「流れ」る「外側フィルタ9」に「周囲を被覆」された「スリット8a」は、本件発明1の「前記集塵容器で塵埃が分離された後の空気を排出するための排気口」に相当する。
甲1発明は、「ダストボックス本体5の内側に」「略円筒状の」「内側フィルタ部7」をさらに有している。「内側フィルタ部7」は、「内側筒状部材11、該内側筒状部材11の下部側面に形成された複数本のスリット11a、当該スリット11aの周囲を被覆する内側フィルタ12及び内側筒状部材11の上部に延設された円筒状ホルダ11bとから構成され」、「内側筒状部材11の上部に延設された円筒状ホルダ11bは、円筒状フィルタ29を保持」している。そして、「外側フィルタ部6及び内側フィルタ部7は、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂下状態に固着され」、「円筒状フィルタ29」が「上蓋部14内部に収納されて」いる。このことから、甲1発明の「円筒状フィルタ29」は、「外側フィルタ部6及び内側フィルタ部7」の上部の「上蓋部14内部に収納されて」いること、すなわち「円筒状フィルタ29」は「外側フィルタ部6」の上部に配置されていることが理解できる。よって、甲1発明の「外側フィルタ部6」の上部に配置された「円筒状フィルタ29」は、本件発明1の「前記内筒の上方に配置され」た「上方濾過部材」に相当する。
また、甲1発明について、空気の流れに着目すると、「第1サイクロン空間25内部において空気が旋回しながら外側フィルタ9へ流れ」、「外側フィルタ9内部に流れた空気はさらに旋回し」、「外側筒状部材8の内壁、内側フィルタ12及び鍔部13によって囲まれた」「第2サイクロン空間27内部において空気が旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ」、「ダストボックス本体5で塵埃がろ過された空気は、内側筒状部材11内を旋回しながら上方へ流れ、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらにろ過され」ている。そして、「外側フィルタ9」は「外側フィルタ部6」の「スリット8aの周囲を被覆する」ものであるところ、空気は当該「外側フィルタ部6」の「スリット8a」を流れることは明らかである。そうすると、甲1発明において、「外側フィルタ9」を流れた空気、すなわち「外側フィルタ部6」の「スリット8a」を流れた空気は、「内側フィルタ12」を通過した後、「円筒状フィルタ29によりさらにろ過され」ることが理解できる。よって、甲1発明の「外側フィルタ部6」の「スリット8a」を流れた空気を「さらにろ過」する「円筒状フィルタ29」は、本件発明1の「前記内筒から排気された空気を濾過する上方濾過部材」に相当する。
また、甲1発明の「上蓋部14」は、「ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する」ものであり、かつ「円筒状フィルタ29」を「(上蓋部14)内部に収納」するものであるから、その構造上、「上蓋部14」は「円筒状フィルタ29」の上部を覆っていることは明らかである。よって、甲1発明の「円筒状フィルタ29」の上部を覆う「上蓋部14」は、本件発明1の「前記上方濾過部材の上部を覆う上部筐体」に相当する。
また、甲1発明の「吸引された塵埃を含む空気はダストボックス2内に入り、」「第1サイクロン空間25内部において空気が旋回しながら外側フィルタ9へ流れ、塵埃は隙間34を通ってダストボックス本体5底部の空間部26に堆積し、」「外側フィルタ9内部に流れた空気はさらに旋回し、第2サイクロン空間27内部において空気が旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、内側フィルタ12を通過できない大きさの塵埃は、隙間35を通ってダストボックス本体5底部の空間部28に堆積し、」「ダストボックス本体5で塵埃がろ過された空気は、内側筒状部材11内を旋回しながら上方へ流れ、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらにろ過された後、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外へ出」ることは、本件発明1の「前記集塵容器で塵埃が分離された後の空気は、前記内筒及び、前記上方濾過部材を」「通過し、前記上部筐体を通って排気され」ることに相当する。
甲1発明において、「円筒状フィルタ29」は、「外側フィルタ部6」の上部に配置されているから、甲1発明の「外側フィルタ部6」の「外側筒状部材8の下端」は「円筒状フィルタ29」側と反対に位置する。そして、甲1発明において、「ダストボックス本体5の底部の底蓋21は、外側筒状部材8の下端との間の隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられ」ていることから、「外側筒状部材8の下端」は、「ダストボックス本体5の底部の底蓋21」まで延設されていることが理解できる。また、「ダストボックス本体5の底部の底蓋21は」、「開閉自在に構成されてダストボックス本体5の下端開口を開放するようになっており、ダストボックス本体5内部の空間部26及び空間部28に堆積した塵埃は、底蓋21を開けると落下」するから、甲1発明の「外側筒状部材8の下端」は開放されていることも理解できる。よって、甲1発明において、「外側フィルタ部6」は「円筒状フィルタ29」側と反対にある「外側筒状部材8の下端」が開放されており、「ダストボックス本体5の底部の底蓋21」まで延設されていることは、本件発明1において、「前記内筒」は「前記上方濾過部材と反対側の端部が開放され、該開放された端部は、前記集塵容器の底面まで延設され」ていることに相当する。
そして、甲1発明において、「吸引された塵埃を含む空気はダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回し、第1サイクロン空間25内部において空気が旋回しながら外側フィルタ9へ流れ、塵埃は隙間34を通ってダストボックス本体5底部の空間部26に堆積し、」「外側フィルタ9内部に流れた空気はさらに旋回し、第2サイクロン空間27内部において空気が旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、内側フィルタ12を通過できない大きさの塵埃は、隙間35を通ってダストボックス本体5底部の空間部28に堆積」することは、本件発明1において、「前記集塵容器で遠心分離された塵埃」「は、前記集塵容器の底部に収容される」ことに相当する。

(2)一致点・相違点
本件発明1と甲1発明との相当関係は上記のとおりであるから、両者は、
「吸い込まれた空気を旋回させることにより該空気から塵埃を遠心分離するサイクロン集塵装置を備える電気掃除機において、
前記サイクロン集塵装置は、遠心分離された塵埃を収容する集塵容器と、
前記集塵容器内に配置され、前記集塵容器で塵埃が分離された後の空気を排出するための排気口を有する内筒と、
前記内筒の上方に配置され、前記内筒から排気された空気を濾過する上方濾過部材と、
前記上方濾過部材の上部を覆う上部筐体とを備え、
前記集塵容器で塵埃が分離された後の空気は、前記内筒及び、前記上方濾過部材を通過し、前記上部筐体を通って排気され、
前記内筒は、前記上方濾過部材と反対側の端部が開放され、該開放された端部は、前記集塵容器の底面まで延設されており、
前記集塵容器で遠心分離された塵埃は、前記集塵容器の底部に収容されることを特徴とする電気掃除機。」
である点で一致し、以下の点で相違するものと認める。

(相違点1)
本件発明1においては、空気が上方濾過部材を上方に通過するのに対して、甲1発明においては、円筒状フィルタ29は空気を上方に通過させるものとはいえない点
(相違点2)
本件発明1においては、上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容されるのに対して、甲1発明においては、円筒状フィルタ29とダストボックス本体5底部の空間部28との間に内側フィルタ部7が配置されており、円筒状フィルタ29にろ過される塵埃は、ダストボックス本体5底部の空間部26又は28に収容されるとはいえない点

(3)判断
ア 相違点1について
甲第2号証、甲2号証の1及び甲第2号証の2には、サイクロン式の集塵装置を備えた電気掃除機において(上記記載事項(3a)、(4a)、(5a)参照)、集塵装置2は、略円筒で上部外周面の開口部がメッシュで覆われた外側フィルタフィクスチャ11と(上記記載事項(3b)、(4b)、(5b)参照)、外側フィルタフィクスチャ11の上部に配置されるダストフィルタ30(上記記載事項(3c)、(4c)、(5c)参照)を備え、ダストボックス10内のサイクロン空間に配置された外側フィルタフィクスチャ11等で塵埃が濾過された空気は、その後、平板状のダストフィルタ30を上方に通過して、更に濾過されたのちに集塵装置2外に出るように構成された(上記記載事項(3d)、(3e)、(3f)、(4d)、(4e)、(4f)、(5d)、(5e)、(5f)参照)ものが記載されている。
甲第2号証の3には、サイクロン式の集塵が行われる集塵カップ4を備えた電気掃除機において(上記記載事項(6a)、(6d)参照)、集塵カップ4の蓋32には第1フィルタ34と第2フィルタ35が取付けられ(上記記載事項(6b)参照)、空気が旋回するカップ本体21内に位置する第1フィルタ34は金網などから有底筒状に形成され、第2フィルタ35は第1フィルタ34よりもメッシュが細かく、平板状であって、第1フィルタ34よりの上部に配置され(上記記載事項(6c)参照)、第1フィルタ34を通過した空気は、平板状の第2フィルタ35を上方に通過したのち、吸気路15に流入する(上記記載事項(6e)参照)ものが記載されている。
甲第2号証の4には、サイクロン式の集塵装置を備えた電気装置において(上記記載事項(7a)、(7b)、(7c)参照)、集塵装置であるダストカップ31は、集塵フィルタである略有底円筒状のネットフィルタ42(上記記載事項(7d)参照)と、ネットフィルタ42では捕捉できなかったさらに微細な細塵を捕捉する細塵捕捉手段としての補助フィルタ43(上記記載事項(7e)参照)を備え、サイクロン部35に位置するネットフィルタ42を通過した吸込風は、排気口41を介してダストカップ31の上端に取り付けられた補助フィルタ43を通過し、ネットフィルタ42で捕捉できなかったさらに微細な細塵がこの補助フィルタ43に捕捉され(上記記載事項(7d)、(7f)、(7g)参照)、ネットフィルタ42を通過した空気は補助フィルタ43を上方に通過して蓋体13の連通凹部44に吸い込まれる(上記記載事項(7h)参照)ものが記載されている。
甲第2号証の5には、サイクロン方式の集塵部を備えた電気掃除機において(上記記載事項(8a)参照)、集塵ケース11は、フィルタ21及び第1フィルタ19が設けられた吸気筒25(上記記載事項(8b)、(8d)参照)と細かい塵埃を濾過する第2フィルタ24(上記記載事項(8b)参照)を備え、旋回流のある塵埃分離部15に位置する吸気筒25に入った空気は、その後、平板状の第2フィルタ24を上方に通過して吸気流路26から電動送風機61に吸引される(上記記載事項(8d)、(8e)参照)ものが記載されている。
これらの文献の記載にみられるように、甲1発明の属する技術分野であるサイクロン式の集塵装置を備えた電気掃除において、当該サイクロン式の集塵装置が、サイクロン空間に配置される円筒状のフィルタと、該円筒状のフィルタを通過した空気に含まれる塵埃をさらに捕集する平板状のフィルタを有し、円筒状のフィルタを通過した空気を平板状のフィルタを上方に通過する構成とすることは、本件特許出願前の周知技術である。
甲1発明のダストボックス2が備えている、「略円筒状の外側フィルタ部6」と該「略円筒状の外側フィルタ部6」を通過した空気に含まれる塵埃をさらに捕集する「円筒状フィルタ29」の形状は、ともに「円筒状」である。しかしながら、サイクロン空間に配置されないフィルタについては特段「円筒状」である必要はなく、サイクロン空間に配置されたフィルタを通過した空気に含まれる塵埃をさらに捕集するという機能を果たし得る範囲で、集塵装置から空気を流出させる排気口の位置や該排気口への通風路の向き等に応じて、当業者が適宜に設計変更し得るものであることを考慮すれば、サイクロン空間に配置されていないフィルタである甲1発明の「円筒状フィルタ29」に代えて、同様の機能を果たす上記周知の「空気を上方に通過させる平板状フィルタ」を採用しようとすることには十分な動機づけが存在するといえるし、甲1発明の「円筒状フィルタ29」に代えて上記周知の「空気を上方に通過させる平板状フィルタ」を採用することに何ら阻害要因はない。
そうすると、甲1発明の「円筒状フィルタ29」に代えて、上記周知の「空気を上方に通過させる平板状フィルタ」を採用すること、すなわち上記相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
甲1発明の「ダストボックス本体5内部の空間部26及び空間部28に堆積した塵埃」についてみると、「空間部26」に堆積する塵埃は、第1サイクロン空間25内部において空気から分離された塵埃であり、「空間部28」に堆積する塵埃は、第2サイクロン空間27内部において空気から分離され、内側フィルタ12を通過できない大きさの塵埃である。
一方、甲1発明において、「円筒状フィルタ29によりさらにろ過された」塵埃は、ダストボックス本体5でろ過され、内側筒状部材11内を旋回しながら上方へ流れた空気に含まれる塵埃であることが把握できるが、当該塵埃が円筒状フィルタ29に捕集された後、どのように廃棄されるかは明らかではない。
しかし、甲1発明において、内側筒状部材11の下端が鍔部13によって閉鎖された「内側フィルタ部7」が、円筒状フィルタ29とダストボックス本体5底部の空間部28との間に配置されているから、円筒状フィルタ29に捕集された塵埃が下方に落下したとしても、内側フィルタ部7の存在により、ダストボックス本体5底部の空間部28に達することはない。甲1発明のこうした構造を考慮すれば、甲1発明は、少なくとも、円筒状フィルタ29に捕集された塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に堆積させるものではなく、またそうした技術思想を見出すこともできない。
そうしてみると、甲1発明において、円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させようとする動機づけは存在しない。また、内側フィルタ部7が備えられていることは、円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させることの阻害要因となる。
なお、甲第2号証、甲第2号証の1及び甲第2号証の2に記載された集塵装置は、ダストフィルタ30と内側集塵部39とは開口部38を介して空間は連通しているが(上記記載事項(3d)、(4d)、(5d)参照)、ダストフィルタ30は集塵装置から取り外してメンテナンスを行うことが予定されているものであるから(上記記載事項(3c)、(4c)、(5c)参照)、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させるものが開示されているとはいえない。
また、甲第2号証の3、甲第2号証の4、甲第2号証の5にも、甲1発明において円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させることについての記載や示唆は見当たらない。
よって、甲1発明に、甲第2号証、甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第2号証の3、甲第2号証の4、甲第2号証の5に記載された技術的事項を適用することはできないし、仮に適用することを想定したとしても、甲1発明において円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させるようにすることはできない。
したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成を得ることが容易であるということはできない。

ウ 本件発明1の奏する効果について
本件発明1は、集塵容器で遠心分離された塵埃と上方濾過部材から落下した塵埃をともに集塵容器の底部に収容することができるという顕著な作用効果を奏するものと認められる(本件特許明細書【0012】、【0026】?【0031】、【0069】?【0070】の記載等参照)。

エ 被請求人の主張について
(ア)上記第4の2(1)の主張について
上記(3)アにおいて説示したとおりであり、被請求人の上記主張は理由がなく、採用できない。

オ 請求人の主張について
(ア)上記第3の2(1)の主張について
請求人の上記主張は、サイクロン式の集塵装置における「捕集効率の向上」という周知の課題の下、甲第1号証に、甲第2号証の2(甲第2号証、甲第2号証の1)の適用を試みるという、一般的な適用可能性についての動機づけを指摘するに留まり、甲1発明において「円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させる」動機づけが存在することの根拠を示したものとはいえない。
そして、甲1発明において、内側フィルタ部7が円筒状フィルタ29とダストボックス本体5底部の空間部28との間に配置されている構造を考慮すれば、円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させようとする動機づけが存在しないことは上記(3)イにおいて説示したとおりである。
よって、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用できない。
(イ)上記第3の2(2)の主張について
甲1発明において、円筒状フィルタ29にろ過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させようとする動機づけが存在しないことは上記(3)イにおいて説示したとおりであるし、甲第2号証の2(甲第2号証、甲第2号証の1)に記載されたダストフィルタ30は、集塵装置から取り外してメンテナンスを行うことが予定されているものであるから、ダストフィルタ30と内側集塵部39とが開口部38を介して空間が連通しているとしても、甲第2号証の2(甲第2号証、甲第2号証の1)は、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させることを開示するものではないことも上記(3)イにおいて説示したとおりである。
よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用できない。

カ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、周知技術である甲第2号証(甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第2号証の3、甲第2号証の4、甲第2号証の5)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証(甲第2号証の1、甲第2号証の2)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

2 無効理由2の(1)について
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「サイクロン式のダストボックス2は、掃除機本体1の前部に上方から挿入されることにより着脱自在に設けられ」ていることは、本件発明2の「サイクロン集塵装置は、掃除機本体から一体として着脱可能に構成される」ことに相当する。
そして、本件発明2は、本件発明1に「前記サイクロン集塵装置は、掃除機本体から一体として着脱可能に構成される」という構成が付加されたものであるところ、本件発明2と甲1発明のその余の相当関係は、上記1(1)に述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件発明2と甲1発明との一致点・相違点について、上記2(1)に示した相当関係を踏まえると、本件発明2と甲1発明とは「サイクロン集塵装置は、掃除機本体から一体として着脱可能に構成される」という構成においても一致する。よって、本件発明2と甲1発明とは、上記1(2)と同様の点において相違するものと認める。

(3)判断
相違点についての判断は、上記1(3)のとおりである。したがって、本件発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

3 無効理由2の(2)?(4)について
(1)甲第2号証、甲第2号証の1及び甲第2号証の2について
甲第2号証には、サイクロン式の集塵装置を備えた電気掃除機において(上記記載事項(3a)参照)、集塵装置2は、略円筒で上部外周面の開口部がメッシュで覆われた外側フィルタフィクスチャ11と(上記記載事項(3b)参照)、外側フィルタフィクスチャ11の上部に配置されるダストフィルタ30(上記記載事項(3c)参照)を備え、ダストボックス10内のサイクロン空間に配置された外側フィルタフィクスチャ11等で塵埃が濾過された空気は、その後、平板状のダストフィルタ30を上方に通過して、更に濾過されたのちに集塵装置2外に出るように構成された(上記記載事項(3d)、(3e)、(3f)参照)ものが記載されている。
また、甲第2号証に記載された集塵装置は、ダストフィルタ30と内側集塵部39とは開口部38を介して空間は連通しているが(上記記載事項(3d)参照)、ダストフィルタ30は集塵装置から取り外してメンテナンスを行うことが予定されているものである(上記記載事項(3c)参照)。
よって、甲第2号証には、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させることは開示されていない。
また、甲第2号証の1及び甲第2号証の2には、甲第2号証と同じ集塵装置が記載されている。よって、甲第2号証の1及び甲第2号証の2にも、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させることは開示されていない。

(2)本件発明2との対比、相違点
上記3(1)を踏まえて、本件発明2と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点において相違する。
(相違点)
本件発明2においては、上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容されるのに対して、甲第2号証に記載された発明においては、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させるといえない点

(3)判断
ア 上記相違点について検討する。
甲第2号証の1及び甲第2号証の2には、甲第2号証と同じ集塵装置が記載されるのみであり、本件発明2における「上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容される」構成についての記載や示唆は見当たらない。
また、甲1発明は、円筒状フィルタ29に捕集された塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に堆積させるものではなく、またそうした技術思想を見出すこともできないことは、上記1(3)イで述べたとおりである。
また、甲第2号証の3、甲第2号証の4、甲第2号証の5にも、本件発明2における「上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容される」構成についての記載や示唆は見当たらない。
したがって、甲第2号証に記載された発明において、上記相違点に係る本件発明2の構成を得ることが容易であるということはできない。
また同様に、甲第2号証の1、甲第2号証の2に記載された発明において、上記相違点に係る本件発明2の構成を得ることが容易であるということはできない。

イ 本件発明2の奏する効果について
本件発明2は、本件発明1を含むものであるところ、上記1(3)ウで述べたとおりである。

ウ 小括
したがって、本件発明2は、甲第2号証、甲第2号証の1、甲第2号証の2のいずれかに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

4 無効理由2の(5)について
(1)甲第2号証の3について
甲第2号証の3には、サイクロン式の集塵が行われる集塵カップ4を備えた電気掃除機において(上記記載事項(6a)、(6d)参照)、集塵カップ4の蓋32には第1フィルタ34と第2フィルタ35が取付けられ(上記記載事項(6b)参照)、空気が旋回するカップ本体21内に位置する第1フィルタ34は金網などから有底筒状に形成され、第2フィルタ35は第1フィルタ34よりもメッシュが細かく、平板状であって、第1フィルタ34よりの上部に配置され(上記記載事項(6c)参照)、第1フィルタ34を通過した空気は、平板状の第2フィルタ35を上方に通過したのち、吸気路15に流入する(上記記載事項(6e)参照)ものが記載されている。

(2)本件発明2との対比、相違点
上記4(1)を踏まえて、本件発明2と甲第2号証の3に記載された発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点において相違する。
(相違点)
本件発明2においては、上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容されるのに対して、甲第2号証の3に記載された発明においては、第2フィルタ35に捕集された塵埃はカップ本体21に収容されるかどうか明らかでない点

(3)判断
ア 上記相違点について検討する。
甲1発明は、円筒状フィルタ29に捕集された塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に堆積させるものではなく、またそうした技術思想を見出すこともできないことは、上記1(3)イで述べたとおりである。
また、甲第2号証、甲第2号証の1及び甲第2号証の2には、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させることは開示されていない。
また、甲第2号証の4、甲第2号証の5にも、本件発明2における「上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容される」構成についての記載や示唆は見当たらない。
したがって、甲第2号証の3に記載された発明において、上記相違点に係る本件発明2の構成を得ることが容易であるということはできない。

イ 本件発明2の奏する効果について
上記3(3)イで述べたとおりである。

ウ 小括
したがって、本件発明2は、甲第2号証の3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

5 無効理由2の(6)について
(1)甲第2号証の4について
甲第2号証の4には、サイクロン式の集塵装置を備えた電気装置において(上記記載事項(7a)、(7b)、(7c)参照)、集塵装置であるダストカップ31は、集塵フィルタである略有底円筒状のネットフィルタ42(上記記載事項(7d)参照)と、ネットフィルタ42では捕捉できなかったさらに微細な細塵を捕捉する細塵捕捉手段としての補助フィルタ43(上記記載事項(7e)参照)を備え、サイクロン部35に位置するネットフィルタ42を通過した吸込風は、排気口41を介してダストカップ31の上端に取り付けられた補助フィルタ43を通過し、ネットフィルタ42で捕捉できなかったさらに微細な細塵がこの補助フィルタ43に捕捉され(上記記載事項(7d)、(7f)、(7g)参照)、ネットフィルタ42を通過した空気は補助フィルタ43を上方に通過して蓋体13の連通凹部44に吸い込まれる(上記記載事項(7h)参照)ものが記載されている。

(2)本件発明2との対比、相違点
上記5(1)を踏まえて、本件発明2と甲第2号証の4に記載された発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点において相違する。
(相違点)
本件発明2においては、上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容されるのに対して、甲第2号証の4に記載された発明においては、補助フィルタ43に捕捉された微細な細塵はダストカップ31に収容されるかどうか明らかでない点

(3)判断
ア 上記相違点について検討する。
甲1発明は、円筒状フィルタ29に捕集された塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に堆積させるものではなく、またそうした技術思想を見出すこともできないことは、上記1(3)イで述べたとおりである。
また、甲第2号証、甲第2号証の1及び甲第2号証の2には、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させることは開示されていない。
また、甲第2号証の3、甲第2号証の5にも、本件発明2における「上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容される」構成についての記載や示唆は見当たらない。
したがって、甲第2号証の4に記載された発明において、上記相違点に係る本件発明2の構成を得ることが容易であるということはできない。

イ 本件発明2の奏する効果について
上記3(3)イで述べたとおりである。

ウ 小括
したがって、本件発明2は、甲第2号証の4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6 無効理由2の(7)について
(1)甲第2号証の5について
甲第2号証の5には、サイクロン方式の集塵部を備えた電気掃除機において(上記記載事項(8a)参照)、集塵ケース11は、フィルタ21及び第1フィルタ19が設けられた吸気筒25(上記記載事項(8b)、(8d)参照)と細かい塵埃を濾過する第2フィルタ24(上記記載事項(8b)参照)を備え、旋回流のある塵埃分離部15に位置する吸気筒25に入った空気は、その後、平板状の第2フィルタ24を上方に通過して吸気流路26から電動送風機61に吸引される(上記記載事項(8d)、(8e)参照)ものが記載されている。

(2)本件発明2との対比、相違点
上記6(1)を踏まえて、本件発明2と甲第2号証の5に記載された発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点において相違する。
(相違点)
本件発明2においては、上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容されるのに対して、甲第2号証の5に記載された発明においては、第2のフィルタ24で濾過される細かい塵埃は集塵ケース11に収容されるかどうか明らかでない点

(3)判断
ア 上記相違点について検討する。
甲1発明は、円筒状フィルタ29に捕集された塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に堆積させるものではなく、またそうした技術思想を見出すこともできないことは、上記1(3)イで述べたとおりである。
また、甲第2号証、甲第2号証の1及び甲第2号証の2には、ダストフィルタ30に捕集された塵埃を内側集塵部39に収容させることは開示されていない。
また、甲第2号証の3、甲第2号証の4にも、本件発明2における「上方濾過部材から落下した塵埃は、集塵容器の底部に収容される」構成についての記載や示唆は見当たらない。
したがって、甲第2号証の5に記載された発明において、上記相違点に係る本件発明2の構成を得ることが容易であるということはできない。

イ 本件発明2の奏する効果について
上記3(3)イで述べたとおりである。

ウ 小括
したがって、本件発明2は、甲第2号証の5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

7 まとめ
以上のとおり、本件発明1は、
(1)甲第1号証、甲第2号証(甲第2号証の1、甲第2号証の2)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、また、
(2)甲第1号証に記載された発明、周知技術である甲第2号証(甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第2号証の3、甲第2号証の4、甲第2号証の5)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
また、本件発明2は、
(1)甲第1号証、
(2)甲第2号証、
(3)甲第2号証の1、
(4)甲第2号証の2、
(5)甲第2号証の3、
(6)甲第2号証の4、
(7)甲第2号証の5
に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
よって、本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでなく、特許法第123条第1項第2号に該当するものではない。
よって、請求人の主張する無効理由1及び2は、いずれも理由がなく採用できないものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては本件発明1及び2に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-04 
結審通知日 2015-03-06 
審決日 2015-03-17 
出願番号 特願2011-248346(P2011-248346)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早房 長隆  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 千壽 哲郎
山崎 勝司
登録日 2012-10-12 
登録番号 特許第5108972号(P5108972)
発明の名称 サイクロン集塵装置,電気掃除機  
代理人 岡 始  
代理人 深見 久郎  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 森田 俊雄  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 堀井 豊  
代理人 吉田 昌司  

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