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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1309361
審判番号 不服2015-2363  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-06 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2010-277133「発光素子及びそれを用いたライトユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月30日出願公開、特開2011-129916〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、2010年12月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月21日、大韓民国)の出願であって、平成26年5月7日付けで拒絶理由が通知され、同年8月12日に手続補正がなされて特許請求の範囲の補正がなされたが、同年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年2月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされて特許請求の範囲の補正がなされたものである。

II.平成27年2月6日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年2月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、本願特許請求の範囲の請求項1を
「キャビティが形成され、前記キャビティ領域に水平面を有する本体と、
前記本体の表面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の少なくとも一部領域上に配置された第1及び第2電極と、
前記本体の水平面の絶縁層上から突出するように形成され、前記水平面に対して所定の傾斜角度を有する少なくとも2個以上の傾斜面を含む放熱固着部と、
前記キャビティ領域の傾斜面に位置し、前記第1及び第2電極上に形成された反射層と、
前記少なくとも2個以上の傾斜面に実装されて、前記第1及び第2電極に電気的に接続される2つ以上の発光ダイオードと、を備え、
前記反射層はTi及びAgが順次積層された多層構造を有する発光素子。」
に補正することを含むものであって、「反射層」を「Ti及びAgが順次積層された多層構造を有する」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、以下に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、独立特許要件の検討を行う。

2.引用例
(1)引用例1及び引用発明
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2007-505493号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による。)。

ア 「【0001】
本発明は、半導体発光装置およびその製造方法に関し、より詳細には、半導体発光装置のパッケージ化およびパッケージ化方法に関する。」

イ 「【0014】
図1A?1Hは、本発明の各種実施形態による半導体発光装置用の実装基板の側面断面図である。図1Aを参照すると、本発明の一実施形態による半導体発光装置用の実装基板は、その内部に半導体発光装置を実装するように構成されたキャビティ110をその第1面100aに含む固体金属ブロック100を含む。ある実施形態においては、固体金属ブロック100は、固体アルミニウムブロックを備える。キャビティ110は、機械加工、鋳造、エッチング加工および/または他の従来技法によって形成することができる。キャビティ110の寸法および形状は、キャビティ110に実装された半導体発光装置によって発せられる光の量および/または光の方向を改善し、または最適化するように構成することができる。例えば、傾斜側壁110aおよびまたは半楕円形の断面形状を設けてもよい。ある実施形態においては、金属ブロック100は、約6mm×約9mm、厚さ約2mmのアルミニウム製の矩形固体金属ブロックであってもよく、キャビティ110は、深さ約1.2mmで、直径約2.5mmの円形の床部を有し、所望の放射パターンを得られるように、任意の単純または複雑な形状の側壁110aを有してもよい。なお、ブロック100は、多角形および/または楕円形である他の形状を有してもよい。
【0015】
図1Bに、本発明の他の実施形態による実装基板を示す。図1Bに示すように、固体金属ブロック100の表面上に絶縁被覆を設ける。図1Bに示すように固体金属ブロックの露出した表面全体、または固体金属ブロックの露出した表面の一部だけに絶縁被覆120を設けてもよい。ある実施形態においては、後に記述するように、絶縁被覆120は酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))の薄層を備え、その薄層は、例えば固体アルミニウムブロック100を陽極酸化することによって形成してもよい。他の実施形態においては、被覆120は、絶縁体を提供するには十分な厚さであるが、被覆を通る熱伝導路を最小にするには十分な薄さである。
【0016】
図1Cを参照すると、キャビティ110の絶縁被覆120上に離間した第1および第2の導電性トレース130a、130bが設けられている。離間した第1および第2の導電性トレース130a、130bは、半導体発光装置に接続されるように構成されている。図1Cに示すように、ある実施形態においては、離間した第1および第2の導電性トレース130aおよび130bは、キャビティ110から固体金属ブロック100の第1面100a上へと延びることができる。固体金属ブロック100の一部にのみ絶縁被覆120を設ける場合、被覆120は、第1および第2の離間したトレース130aおよび130bと固体金属ブロック100との間に設ければよく、そうすることによって、第1および第2の金属トレース130aおよび130bを固体金属ブロック100から絶縁する。
【0017】
図1Dは、本発明の他の実施形態を図示し、ここでは、離間した第1および第2の導電性トレース130a’、130b’は、キャビティ110から第1面100aに延び、金属ブロックの少なくとも1つの側面100cをまわって、第1面100aに対向する金属ブロックの第2面100b上へと延びる。このようにして、裏面接触部を設けることができる。
【0018】
本発明のある実施形態においては、離間した第1および第2の導電性トレース130a、130bおよび/または130a’,130b’には金属を備えるものがあり、また、銀などの反射性金属を備えるものもある。他の実施形態では、図1Eに示すように、キャビティ110の離間した導電性トレース130a’、130b’上に別個の反射層132a、132bを設けることができる。このような実施形態では、導電性トレース130a’、130b’は、銅を備え、反射性トレース132a、132bは、銀を備えてもよい。」

ウ 「【0022】
図1Hは、図1Dに関連して記述した本発明の実施形態を図示し、これらの実施形態は、キャビティに実装され、第1および第2の離間した電気トレース130a’、130b’に接続された半導体発光装置150をさらに含む。その上、図1Hは、他の実施形態において、キャビティに跨るようにレンズ170が延びていることを図示している。さらに他の実施形態においては、半導体発光装置150とレンズ170との間に封入剤160を設ける。封入剤160は、透明なエポキシを備えてもよく、半導体発光装置150からレンズ170への光学的結合を強化することができる。さらに他の実施形態においては、固体金属ブロック100上にレンズリテーナ180を設けて、キャビティ110を跨ぐレンズ170を保持する。」

エ 「【0024】
当然のことながら、図1F?1Hの実施形態は、別個の実施形態として図示されているが、図1A?1Hの各種要素をともに用いて、各種の組み合わせおよび/またはその組み合わせをさらに組み合わせたものを提供してもよい。そのため、例えば、示した実施形態のいずれにも反射層132a、132bを用いてもよく、また示した実施形態のいずれにも半導体発光装置150、レンズ170、封入剤160および/またはレンズリテーナ180を用いてもよい。よって、本発明は、図1A?1Hに示した別個の実施形態に限定されるものではない。」

オ 「【0031】
このように、本発明の実施形態のいくつかは、半導体発光装置用の実装基板にアルミニウムの固体ブロックを用いる。アルミニウムは、効果的なヒートシンクとして用いるのに十分な熱伝導率を有する。加えて、材料コストおよび製造コストを抑えることができる。その上、質の高い絶縁酸化物を成長させる能力により、深刻な衝撃を耐熱性に与えずに所望の電気トレースを形成することが可能となる。なぜなら陽極酸化の厚さを正確に制御で
きるからである。この絶縁層を選択的にパターン化することもでき、それによって、光学的な性能を高めるために、キャビティ側壁上だけを銀でめっき加工するなど、基板に別の金属めっきを付加することが可能になる。」

上記記載によれば、引用例1には、
「傾斜側壁110aを有するキャビティ110をその第1面100aに含む固体金属ブロック100と、
固体金属ブロック100の表面上に設けられた絶縁被覆120と、
絶縁被覆120上に設けられた離間した第1および第2の導電性トレース130a’、130b’と、
第1および第2の導電性トレース130a’、130b’上に設けられた別個の反射層132a、132bと
キャビティに実装され、第1および第2の離間した電気トレース130a’、130b’に接続された半導体発光装置150を備える半導体発光装置。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

(2)引用例2
同じく、原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-4415号公報(以下「引用例2」という。)には次の記載がある。

ア 「【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、省電力でありながらも効率良く、光を上方向や下方向など向けて全体的に照射して使用可能な光源体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明にかかる光源体は、異なる方向に光を照射して使用可能な光源体であって、PN接合半導体であり実際に発光する部材であるLED素子と、立体形状を成し且つ前記LED素子を複数支持するベースとを具備し、前記立体形状を構成する構成面のうち、互いに異なる方向を向き且つ光の照射側で法線同士は交差しない関係にある複数の構成面を、前記LED素子を支持するためのLED支持面として設定していることを特徴とする。
【0007】
ここで、「LED素子」とは、一般にベアチップと呼ばれるものを指し、砲弾型のものは含まない。また、LED支持面は、LED素子を直接支持するか或いは間接的に支持するかを問わないものとする。
【0008】
このようなものであれば、各LED支持面にそれぞれ支持させた複数のLED素子がそれぞれ照射する照射光の光軸は、その照射側では交差することがない。
【0009】
したがって、あたかもローソクや電球のように光を上方向や下方向など向けて全体的に照射して使用することができる。
【0010】
また、LED素子を立体形状を構成するLED支持面に支持させているので、例えば、LED素子を平面的に並べて配置した場合よりも、小さな領域から強い光を照射することができるうえ、このことにより、点光源的な作用効果、すなわち、集光化処理や平行化処理を好適に行うことができるなど、多様な使用態様に対しても好適に対応することができる。
【0011】
すなわち、省電力でありながらも効率良く、例えば、ローソクや電球のように光を上方向や下方向など向けて全体的に照射して使用することができ、且つ例えば大光量な平行光を容易に実現するなど、多様化するニーズにも好適に対応できるといった、優れた光源体を提供することができる。
【0012】
なお、各LED素子の光軸同士が、光の反照射側の略一点で交わるものであれば、点光源的な性質をより高めることができる。すなわち、非常に小さな1点で光る理想的な点光源からは、レンズ系との組み合わせによって、例えば非常に小さな1点に集光できるとか、非常に平行度の高い光を得られるとかいった効果を得られるが、それと同等の効果を得
ることができる。」

イ 「【0026】
本実施形態に係る光源体Aは、異なる方向に光を照射して使用可能な光源であって、図1、図2に示すように、平面視略矩形状のLED素子1と、このLED素子1を複数(本実施形態では計5個)支持するベース2と、LED素子1を覆うモールド部材3(図1では略)とを具備するものである。以下、各部を具体的に説明する。
【0027】
LED素子1は、PN接合半導体であり実際に発光する部材であって、本実施形態では、このLED素子1に、エピタキシャル面である上面側から両電極11a、11bをとり且つ天地をひっくり返した状態で電力供給回路22にバンプボンディングにより実装するフリップチップ型のものを用いている。
【0028】
ベース2は、垂直断面形状が略正方形の切頭四角錐体を成す中実ブロック状のものであって、本実施形態では、窒化アルミニウムにより形成している。
【0029】
なお、当該切頭四角錐体を構成する6つの構成面21a?21f(以下、構成面21と総称する)は、互いに異なる方向を向き且つ光の照射側で法線同士は交差しない関係にあるため、これら6つの構成面21全てを、LED素子1を支持するためのLED支持面として設定できるが、当該ベース2の取付部分を確保する等の都合上、本実施形態では、これら6つの構成面21のうち、底面21f以外の構成面21a?21eを、LED支持面として設定している。
【0030】
また、本実施形態では、図2に示すように、前記LED素子1に電力を供給するための電力供給回路22を、ベース2の表面に一体的に形成している。
【0031】
モールド部材3は、LED素子1の照射光を効率良く透過できる材料(例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂や硝子など)により形成したものである。」

ウ 「【0044】
また、ベース2を、窒化アルミニウムにより形成しているが、絶縁体であり且つ熱伝導特性に優れる他の材料を用いて形成することを妨げない。」

エ 「【0054】
そしてこのとき、ベース2を、銅製のものとした上で、例えばCVD法でダイヤモンド薄膜層Dxを表面に形成した銅製基板Dyの上に、該ベース2を載置すれば、LED素子1で発生しベース2に伝熱した熱は、ダイヤモンド薄膜層Dxで銅製基板Dyの表面に沿う方向に伝熱し、さらに、その熱を銅製基板Dyが厚み方向へと放熱するため、LED素子1で発生する熱を非常に効率よく放熱することができる。したがって、コンパクトでありながら放熱効果に優れるといった光源体を備えた照明装置を提供することができる。なお、ダイヤモンド薄膜層Dxが、例えばダイヤモンドライクカーボンなど、純粋なダイヤモンドで以外のものであることを妨げない。
【0055】
また、光源体Aの放熱のために、ヒートパイプを用いるといった実施態様も考えられる。
【0056】
具体的には、図10に示すように、光源体Aを支持し放熱用の放熱部材J(望ましくは、CVD法で形成したダイヤモンド層J1を表面に備える金属)を、金属管の中に中空の筒を内装し常温付近の温度で液化または気化する熱媒を封入して成るヒートパイプHPに接続したものが挙げられる。図10では、このヒートパイプHPに対してフィンFN及び図示しないファンとを設けることで放熱効果をさらに向上させているが、ヒートパイプHPを単独で用いるなど、構成態様はこれに限られるものではない。また、光学ユニット4を用いなくても良い。」

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「キャビティ110」が、本願補正発明の「キャビティ」に相当するところであり、その「傾斜側壁110a」以外の底部は、「(固体金属ブロック100の)第1面100a」と同様に水平面となっているものと認められるから、引用発明の「固体金属ブロック100」は、本願補正発明の「(キャビティが形成され、前記キャビティ領域に水平面を有する)本体」に相当する。
(2)引用発明の「固体金属ブロック100の表面上に設けられた絶縁被覆120」は、本願補正発明の「(前記本体の表面に形成された)絶縁層」に相当する。
(3)引用発明の「絶縁被覆120上に設けられた離間した第1および第2の導電性トレース130a’、130b’」は、本願補正発明の「(前記絶縁層の少なくとも一部領域上に配置された)第1及び第2電極」に相当する。
(4)引用発明の「反射層132a、132b」が「(キャビティ110の)傾斜側壁110a」に位置していることは、引用例1の図1Eから明らかであり、引用発明の「第1および第2の導電性トレース130a’、130b’上に設けられた別個の反射層132a、132b」は、本願補正発明の「(前記キャビティ領域の傾斜面に位置し、前記第1及び第2電極上に形成された)反射層」に相当する。
(5)引用発明の「半導体発光装置」は、「半導体発光装置150を備える」ものであるから、本願補正発明の「発光素子」に相当する。

(6)以上のことから、本願補正発明と引用発明は、
「キャビティが形成され、前記キャビティ領域に水平面を有する本体と、
前記本体の表面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の少なくとも一部領域上に配置された第1及び第2電極と、
前記キャビティ領域の傾斜面に位置し、前記第1及び第2電極上に形成された反射層と、を備える発光素子。」
の点で一致する。

(7)一方、両者は、次の点で相違する。
a.本願補正発明は、「前記本体の水平面の絶縁層上から突出するように形成され、前記水平面に対して所定の傾斜角度を有する少なくとも2個以上の傾斜面を含む放熱固着部と、
前記少なくとも2個以上の傾斜面に実装されて、前記第1及び第2電極に電気的に接続される2つ以上の発光ダイオードと、」を備えるものであるのに対し、
引用発明がこのようなものであるか不明な点。
b.本願補正発明の「反射層」は、「Ti及びAgが順次積層された多層構造を有する」のに対し、引用発明の「反射層132a、132b」は、引用例1の【0018】に記載されるように「銀を備えてもよい」ものであるが、「Ti及びAgが順次積層された多層構造を有する」ものであるか不明な点。

4.判断
(1)上記相違点aについて検討する。
引用発明の「固体金属ブロック100」は、引用例1の【0031】の「本発明の実施形態のいくつかは、半導体発光装置用の実装基板にアルミニウムの固体ブロックを用いる。アルミニウムは、効果的なヒートシンクとして用いるのに十分な熱伝導率を有する。」との記載からみて、ヒートシンクとして用いられるものと認められるから、引用発明の「半導体発光装置150」は、ヒートシンクのような放熱部材として機能する基板に実装されるものであると認められるところ、引用例2には、放熱部材として機能する基板に実装される光源として「点状光源体A」が記載されている(例えば、引用例2の図9には、【0054】に記載される「銅製基板Dy」の上に「点状光源体A」が載置されている様子が図示され、図10には、【0056】に記載される「放熱部材J」で「点状光源体A」が支持されている様子が図示されている。)。
さらに、この「点状光源体A」は、放熱性に優れるだけでなく、引用例2の【0010】に記載される「小さな領域から強い光を照射することができる」との効果や【0012】に記載される「(レンズ系との組み合わせによって、例えば非常に小さな1点に集光できるとか、非常に平行度の高い光を得られるとかいった点状光源と)同等の効果」を得られるものであるから、引用発明の「半導体発光装置150」として、引用例2に記載される「点状光源体A」を採用することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、引用例2に記載される「点状光源体A」は、例えば、引用例2の図1に示されるように「切頭四角錐体をなす中実ブロック状」の「ベース2」の各斜面に「LED素子1」を支持するものであるから(この点、引用例2の【0026】、【0028】?【0029】の記載を参照されたい。)、この図1に示される「点状光源体A」を引用発明の「半導体発光装置150」に採用した場合に、引用発明が上記相違点aに係る本願補正発明の発明特定事項を備えるものとなることは明らかである。
すなわち、「引用例2の図1に示される点状光源体A」を引用発明の「半導体発光装置150」に採用した場合、「点状光源体A」の「底面21f」が引用発明の「キャビティ110」の底面部の「絶縁層120」上に載置されるものと認められるところであり、本願明細書の【0061】には、「このような放熱固着部315は、基板310自体を加工して実装領域が傾斜面を有するように突出させるか、又は発光ダイオード340a、340bの接続が可能な所定構造物を付着して形成することが可能である。」と、所定構造物を付着することも「形成」することとして記載していることから、引用発明の「半導体発光装置150」に採用した、引用例2における「点状光源体A」の「ベース2」は、本願補正発明と同様に「本体の水平面の絶縁層上から突出するように形成され」たものといえる。
また、引用例2の「点状光源体A」の「ベース2」は、【0044】に記載されるように「熱伝導特性に優れる」材料とされているから、本願補正発明と同様に「放熱固着部」といえる。
また、引用例2の「図1に示される点状光源体Aのベース2」は、前記のごとく「切頭四角錐体」をなすから、本願補正発明と同様に「水平面に対して所定の傾斜角度を有する少なくとも2個以上の傾斜面を含む」ものといえる。
さらに、引用例2の「図1に示される点状光源体Aのベース2」は、前記のごとく、「切頭四角錐体」の各斜面に「LED素子1」を支持するものであるから、引用発明の「半導体発光装置150」に引用例2の「図1に示される点状光源体A」を採用したものが、本願補正発明と同様に「前記少なくとも2個以上の傾斜面に実装されて、前記第1及び第2電極に電気的に接続される2つ以上の発光ダイオード」を備えることは、明らかである。
以上のとおりであって、結局、上記相違点aに係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用発明の「半導体発光装置150」に引用例2の「図1に示される点状光源体A」を採用することにより、当業者が容易に成し得たものと認められる。

(2)上記相違点bについて検討するに、電極上に形成される反射層として、「Ti及びAgが順次積層された多層構造を有する」ものは、本願の優先日前に頒布された国際公開第2009/031856号(以下「引用例3」という。)の段落[29]に「A mirror layer 128 is formed on the conductive layer 126. The mirror layer 128 selectively comprises a sequentially-stacked Ti layer/ Ag layer」と記載されているから、引用発明の「導電性トレース130a’、130b’上に設けられた別個の反射層132a、132b」として「Ti及びAgが順次積層された多層構造を有する」ものを採用することに格別の困難性は認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例1ないし引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
上記II.のとおり、本件補正は却下されたので、本願請求項に係る発明は、平成26年8月12日に補正された手続補正における特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載される事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項によって特定されるものである。

「キャビティが形成され、前記キャビティ領域に水平面を有する本体と、
前記本体の表面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の少なくとも一部領域上に配置された第1及び第2電極と、
前記本体の水平面の絶縁層上から突出するように形成され、前記水平面に対して所定の傾斜角度を有する少なくとも2個以上の傾斜面を含む放熱固着部と、
前記キャビティ領域の傾斜面に位置し、前記第1及び第2電極上に形成された反射層と、
前記少なくとも2個以上の傾斜面に実装されて、前記第1及び第2電極に電気的に接続される2つ以上の発光ダイオードと、を備える発光素子。」

2.判断
本願発明は、本願補正発明において「前記反射層はTi及びAgが順次積層された多層構造を有する」との事項を省いたものであるから、上記II.[理由]2.ないし4.(1)における検討からみて、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められる。

3.むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-03 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2010-277133(P2010-277133)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 星野 浩一
山口 裕之
発明の名称 発光素子及びそれを用いたライトユニット  
代理人 重森 一輝  
代理人 小野 誠  
代理人 市川 英彦  
代理人 金山 賢教  
代理人 岩瀬 吉和  

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