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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1309365
審判番号 不服2015-4501  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-08 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2010-280916「乾燥オリーブ粕粉末を含む飼料」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月 5日出願公開、特開2012-125210〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年12月16日の出願であって、平成26年6月16日付けで拒絶の理由が通知され、拒絶理由通知書の発送の日から60日以内に意見書又は手続補正書が提出されなかったところ、平成26年11月28日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成27年3月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。


第2 平成27年3月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年3月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「オリーブ果実を原料として搾油する際に産出される生オリーブ粕を攪拌下にて乾燥することによって得られる乾燥オリーブ粕粉末を含む飼料。」
から
「オリーブ果実を原料として搾油する際に産出される生オリーブ粕を攪拌下にて乾燥することによって得られる、平均粒径が8mm以下であり、水分含有量が13重量%以下である乾燥オリーブ粕粉末を含む飼料。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「乾燥オリーブ粕粉末」に関して、「平均粒径が8mm以下であり、水分含有量が13重量%以下である」点を限定したものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)引用例1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願出願日前に電気通信回路を通じて公衆に利用可能になった、“「オリーブ牛」初出荷/脂柔らか、風味良く”,[online],四国新聞社ホームページ,2010年5月12日,[平成26年6月16日検索],インターネット<URL:http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/economy/print.aspx?id=20100512000075>(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(1-a)「香川県土庄町の畜産農家が11日、黒毛和牛の飼料に小豆島特産のオリーブの絞りかすを加えて飼育した「小豆島オリーブ牛」9頭を兵庫県加古川市の市場に初出荷した。オリーブオイルの成分の約7割は、牛肉に多く含まれると脂が柔らかく風味が良くなるオレイン酸(不飽和脂肪酸)で、絞りかすにもオイルが5%程度残っており、飼料にすることで口溶けがいい、なめらかな食感の肉が期待できるという。」

(1-b)「飼育したのはJA県小豆地区本部の小豆畜産部会長の石井正樹さん(61)=土庄町滝宮=と小豊島の畜産農家竹内清さん(65)ら3農家。小豆島のイメージアップとオリーブ振興にもつながるとして、付加価値の高い「オリーブ牛」のブランド化を目指して3年前から試行錯誤を重ねてきた。」

(1-c)「昨年秋、「讃岐牛」として関西に出荷し、「よい脂になっている」と評判がよかったという。絞りかすは東洋オリーブ(小豆島町池田)が約20トン提供した。」

(1-d)「現在のオリーブ牛の定義は出荷前から2カ月以上、1日200グラムのオリーブの絞りかすを飼料に混ぜ飼育した生後28カ月以上、500キロ以上の黒毛和牛。」

(1-e)「石井さんは「かすを乾燥させて手で細かく粉末にするなど、手間暇を掛けたただけに、出荷の日を迎えられてうれしい。味には自信がある。産官民で取り組み出荷量を増やしていきたい」と話していた。」

(1-f)上記摘記事項(1-d)及び(1-e)から、「飼料に混ぜるオリーブの絞りかす」は「オリーブの絞りかすを乾燥させて手で細かくした粉末」であるといえる。また、上記(1-a)及び(1-d)で摘記したように、オリーブの絞りかすを飼料に混ぜて牛を飼育しているから、牛をオリーブの絞りかすを乾燥させて手で細かくした粉末を含む飼料で飼育したといえる。

上記の事項を総合すると、 引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用例1発明」という。)
「オイルが5%程度残っているオリーブの絞りかすを乾燥させて手で細かくした粉末を含む飼料。」

(2)周知例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である、特開2005-40738号公報(以下「周知例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2-a)「【0001】
本発明は有機性廃棄物のリサイクル技術に関するものであり、より詳しくは、廃食品や汚泥等から肥飼料を回収する技術に関するものである。」

(2-b)「【0006】
本発明において使用に適する乾燥機は、真空ポンプに連結していると共に内壁を伝熱面とする円筒体内に、乾燥処理対象物を円筒体内壁に押し付けた上掻き取る機能をもつ回転式攪拌羽根を備えているバッチ式の減圧乾燥機であり、その一例を図1に示す。図1において、1は攪拌スクリュー、2は攪拌羽根、3は原料投入口、4は蒸発水分排出口(蒸発蒸気を吸引する真空ポンプと蒸気を冷却する熱交換器が付属している)、5は製品取り出し口、6は加熱蒸気等熱媒の通路(乾燥機の外套部)、7は加熱蒸気等熱媒の投入口を示す。攪拌羽根は、伝熱面である円筒体内壁に被処理物を押し付けて伝熱効果を高める機能をもつ攪拌羽根と円筒体内壁に付着した被処理物を掻き取る機能をもつ攪拌羽根からなることが好ましい。攪拌羽根は、上記の機能を十分に発揮するようにそれらと円筒体内壁との間隔を保つことが好ましい。一例として、攪拌羽根を求心方向と遠心方向に摺動させて、被処理物を伝熱面に押し付け掻き取ることが好ましい。
【0007】
本発明の廃食品等の肥飼料化工程の典型例は、(イ)廃食品等の回収、(ロ)包装材の除去、(ハ)粉砕、(ニ)乾燥機への投入、(ホ)減圧乾燥操作、(へ)粗肥飼取り出し、(ト)不純物の除去、(チ)梱包、(リ)出荷というものであり、先ず廃食品等の回収を行うことから始まる。回収された廃食品等は手作業で包装材を除去される(勿論汚泥や家畜の糞尿等の場合はこの工程は省かれる)。包装材の除去は製品にプラスチック屑の混入を避けるために重要な作業である。包装材を除去された廃食品等はロールミル等で破砕される(減圧乾燥機内の撹拌羽根は食品の破砕が可能なので、この工程は省かれることもある)。破砕された廃食品は減圧乾燥機に投入され、撹拌羽根で撹拌されながら減圧乾燥される。廃食品中の炭水化物の量が多いと、撹拌中に廃食品が餅状になり乾燥効率を下げるので、本発明の特徴である減圧:常圧:減圧の操作は効果がある。」

(2-c)「【0009】
本発明において乾燥処理時間は被処理物の水分率やその成分によっても異なるが、概ね4?6時間である。この減圧状況を常圧にするタイミングは、水分の蒸発速度が鈍り、乾燥機内の温度上昇が起こる時点を目途にするのが好ましい。
常圧に保つ時間は5分以上が好ましく、より好ましくは15?30分である。常圧処理の時間が長すぎると乾燥効率が低下する。また、処理時間が5分より短いと効果がほとんど出ない。常圧処理の回数は少なくとも1回好ましくは2?4回である。
常圧操作の間、温度は徐々に上昇する。次いで乾燥機内の圧力を急速に減圧する。再減圧後1時間程度で被処理物の含水率が10%程度になり、顆粒状の粗肥飼料が得られる。急速減圧の時間は短ければ短いほど好ましい。
【0010】
飼料に求められる水分率は通常10%以下であるが、それに限定されるものではない。本発明では被処理物はその水分率が概ね10%前後になると顆粒状或は粉末状になるので、その時点で乾燥を終了する。乾燥機から取り出された粗肥飼料から選別機(篩い)でプラスチック等の不純物を取り除き製品が得られる。得られた製品は袋詰め等に梱包され出荷される。ここで得られた製品は単独使用も可能であるが、配合飼料の一原料として好ましく使用される。」

上記の事項から、周知例1には次の技術事項が記載されていると認められる。

「廃食品や汚泥等から肥飼料を回収する技術において、回転式攪拌羽根を備えているバッチ式の減圧乾燥機を使用して、廃食品を撹拌羽根で撹拌しながら減圧乾燥し、水分率が概ね10%前後になると顆粒状或は粉末状になるので、その時点で乾燥を終了すること。」

(3)周知例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である、特開2003-102392号公報(以下「周知例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3-a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品廃棄物の処理方法及びその装置に係り、さらに詳しくは、食品廃棄物から高い品質の飼肥料原料が得られると共に、食品廃棄物のリサイクル率の向上を図ることができる食品廃棄物の処理方法及びその装置に関する。」

(3-b)「【0033】次に、上記食品廃棄物の処理方法を実現する食品廃棄物の処理装置について説明する。図2に示したように、本発明の食品廃棄物の処理装置は、乾燥設備を持たない食品廃棄物排出者から回収された食品廃棄物1をボイル乾燥することによってボイル乾燥品2を得るボイル乾燥部21(上記食品廃棄物の処理方法における第1のステップS1を担う)と、上記ボイル乾燥品2に対して乾燥設備を有する食品廃棄物排出者から回収された食品廃棄物乾燥品3を混合することによって2次乾燥品4を得る混合部22(上記食品廃棄物の処理方法における第2のステップS2を担う)と、上記2次乾燥品4から飼肥料原料5を製造する飼肥料原料製造部23(上記食品廃棄物の処理方法における第3のステップS3を担う)より成るものである。
【0034】そして、上記ボイル乾燥部21は、乾燥設備を持たない食品廃棄物排出者から回収された食品廃棄物1をボイル乾燥させて食品廃棄物1からボイル乾燥品2を得るボイル乾燥装置26を備えて成り、上記ボイル乾燥装置26の上流側には、回収された食品廃棄物1が集積される食品廃棄物受入槽24と、上記集積された食品廃棄物1を破砕する破砕装置25と、上記破砕装置25によって破砕された食品廃棄物1を一旦収容しておくと共に、ボイル乾燥装置26への食品廃棄物1の供給量を調整する食品廃棄物ホッパー38が設けられ、さらに、上記ボイル乾燥装置26の下流側には、ボイル乾燥装置26によってボイル乾燥されたボイル乾燥品2を冷却するための冷却装置27が設けられている。
【0035】そして、上記混合部22は、上記ボイル乾燥部21にてボイル乾燥されたボイル乾燥品2が送られ集積されると共に、乾燥設備を有する食品廃棄物排出者から回収された食品廃棄物乾燥品3が投入され、ボイル乾燥品2と食品廃棄物乾燥品3の混合を行って2次乾燥品4を得る集積・混合ホッパー28より成り、本実施の形態では、食品廃棄物乾燥品の投入装置39によって上記集積・混合ホッパー28内への食品廃棄物乾燥品3の投入が行われるように構成されている。
【0036】そして、上記飼肥料原料製造部23は、2次乾燥品4を高温加熱殺菌するための高温加熱殺菌装置31と、高温加熱殺菌された2次乾燥品4から油脂分6を除去するための脱脂装置32より成り、2次乾燥品4に対して高温加熱殺菌及び脱脂を行うことによって、2次乾燥品から飼肥料原料5を得るものである。
【0037】さらに、上記飼肥料原料製造部23を構成する高温加熱殺菌装置31の上流側には、上記混合部22にて得られた2次乾燥品4から異物の除去を行うための磁選機及び磁石を備えた異物除去装置29と、異物の除去が行われた2次乾燥品4の粒子の均等化を行うフルイ装置30と、粒子の均等化が行われた2次乾燥品4を一旦収容し、高温加熱殺菌装置31に供給される2次乾燥品4の供給量を所定の量に調整する2次乾燥品ホッパー40が設けられており、上記高温加熱殺菌装置31による2次乾燥品4の高温加熱殺菌が効率良く且つ確実に行われるように構成されている。」

(3-c)「【0050】上記ボイル乾燥装置26は、図4に示したように、食品廃棄物1を収容するためのボイル乾燥槽51を備え、上記ボイル乾燥槽51の外周にはジャケット53が設けられており、上記ジャケット53の内部には、蒸気Sが供給されるように構成され、上記ボイル乾燥槽51の内壁面は、上記ジャケット53に供給された蒸気Sの熱を食品廃棄物1に伝えるための伝熱面52として構成されている。
【0051】さらに、上記ボイル乾燥装置26のボイル乾燥槽51は、円筒形状に形成されているものであって、上記ボイル乾燥槽51の内部には、重力方向に沿う方向に回転軸54が配設されており、上記回転軸54には、回転巻上羽根、螺旋回転羽根等の撹拌手段55が連結され、しかも、上記回転軸54及び撹拌手段55は、上記ボイル乾燥槽51の外部に設けられたモーター56によって回転R可能に構成されている。
【0052】そして、上記ボイル乾燥装置26におけるボイル乾燥槽51内に送られた食品廃棄物1は、図5に示したように、ボイル乾燥槽51内にて回転Rする撹拌手段55によって撹拌される際の遠心力Pにより、ボイル乾燥槽51の伝熱面52に押し当てられ、さらに、上記撹拌手段55の平坦面57によって、ボイル乾燥槽51内にて巻き上げ(図中矢印U)られるものであり、伝熱面52から伝わる蒸気Sの熱によってボイル乾燥が行われる。」

上記の事項から、周知例2には次の技術事項が記載されていると認められる。

「食品廃棄物から飼肥料原料を得る技術において、撹拌手段55を備えたボイル乾燥装置26を使用して、食品廃棄物1が撹拌手段55によって撹拌される際の遠心力Pにより、ボイル乾燥槽51の伝熱面52に押し当てられ、さらに、撹拌手段55の平坦面57によって、ボイル乾燥槽51内にて巻き上げられることにより、伝熱面52から伝わる蒸気Sの熱によってボイル乾燥が行われ、粒子を含むボイル乾燥品2が得られること。」

(4)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
ア 引用例1発明における「オイルが5%程度残っているオリーブの絞りかす」は、絞られることでオイルが5%程度残ったものであることから、搾油する際に生産されるものであることは明らかであり、さらに、オリーブの絞りかすの原料がオリーブ果実であることは当然の事項なので、「オリーブ果実を原料として搾油する際に産出される生オリーブ粕」に相当する。

イ 引用例1発明における「オリーブの絞りかすを乾燥させて手で細かくした粉末」と、本願補正発明における「撹拌下にて乾燥することによって得られる」「乾燥オリーブ粕粉末」とは、ともにオリーブ粕(かす)を乾燥させて粉末にするものであるから、「乾燥粉末にする」ことで共通する。

ウ 引用例1発明における「粉末」は、オリーブの絞りかすを乾燥させて粉末にしたものなので、本願補正発明における「乾燥オリーブ粕粉末」に相当する。

エ したがって、本願補正発明と引用例1発明とは、
「オリーブ果実を原料として搾油する際に産出される生オリーブ粕を乾燥粉末にすることによって得られる乾燥オリーブ粕粉末を含む飼料。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]:「乾燥粉末にする」に関して、
本願補正発明は、「撹拌下にて乾燥する」ことによって行うのに対し、
引用例1発明は、「乾燥させて手で細かく粉末にする」ことによって行う点。

[相違点2]:「乾燥オリーブ粕粉末」に関して、
本願補正発明は、「平均粒径が8mm以下」であるのに対し、
引用例1発明は、そのような特定がない点。

[相違点3]:「乾燥オリーブ粕粉末」に関して、
本願補正発明は、「水分含有量が13重量%以下」であるのに対し、
引用例1発明は、そのような特定がない点。

(5)判断
ア 相違点に係る当審の判断
(ア) 相違点1について
a 周知技術について
上記(2)で説示したように、周知例1には、「廃食品や汚泥等から肥飼料を回収する技術において、回転式攪拌羽根を備えているバッチ式の減圧乾燥機を使用して、廃食品を撹拌羽根で撹拌しながら減圧乾燥し、水分率が概ね10%前後になると顆粒状或は粉末状になるので、その時点で乾燥を終了すること。」が記載されていると認められ、また、上記(3)で説示したように、周知例2には、「食品廃棄物から飼肥料原料を得る技術において、撹拌手段55を備えたボイル乾燥装置26を使用して、食品廃棄物1が撹拌手段55によって撹拌される際の遠心力Pにより、ボイル乾燥槽51の伝熱面52に押し当てられ、さらに、撹拌手段55の平坦面57によって、ボイル乾燥槽51内にて巻き上げられることにより、伝熱面52から伝わる蒸気Sの熱によってボイル乾燥が行われ、粒子を含むボイル乾燥品2が得られること。」が記載されていると認められるから、食品等の廃棄物を乾燥させて飼料を回収する技術において、撹拌手段を備えた乾燥装置を用いて食品等の廃棄物を撹拌下にて乾燥することにより乾燥粉末状の飼料を得ることは、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)であるといえる。

b 判断
(a) 一般的に、関連する技術分野に置換可能な技術手段があるときは、当業者がその転用を容易に着想し得るといえるところ、引用例1発明及び上記周知技術とは、ともに食品等の廃棄物を乾燥させて飼料を回収する技術であるから、引用例1発明に上記周知技術を適用することは、当業者であれば容易に着想したことといえる。

(b) 引用例1の記載において、東洋オリーブから約20トンのオリーブの絞りかすの提供を受けていること、及び、引用例1発明を用いて飼育したオリーブ牛の出荷量を増やすことを目指していることを考慮すると、人の手で行う工程を装置に行わせるようにして、オリーブの絞りかすから効率的に粉末を得ることの課題が内在しているといえる。そもそも、機械化は一般的な課題である。

(c) 上記(a)及び(b)の事情を考慮すると、引用例1発明において、上記周知技術を適用して、「撹拌下にて乾燥する」構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。

(イ) 相違点2について
引用例1発明におけるオリーブの絞りかすは細かく粉末にされるので、粉末となったオリーブの絞りかすの平均粒径は十分に小さいと考えるのが妥当である。また、家畜にとっての食べやすさの点から、飼料の粒径を数mm程度とすることは技術常識である(例.特開2001-245606号公報、段落【0014】、段落【0020】、特開平3-87151号公報、第2頁右上欄第19行?第2頁左下欄第20行参照。)。したがって、引用例1発明において、オリーブの絞りかすの平均粒径を8mm以下とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(ウ) 相違点3について
引用例1発明におけるオリーブの絞りかすは手で細かく粉末にできる程度に乾燥させられるものなので、乾燥されたオリーブの絞りかすに含まれる水分量は十分に低いと考えるのが自然であること、及び、本願出願時において飼料の水分含有量を13重量%以下とすることはよく知られていること(例.周知例1、段落【0010】、特開2003-274916号公報、段落【0004】参照。)から、引用例1発明において、オリーブの絞りかすの水分含有量を13重量%以下とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(エ) 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1?3によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用例1発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(オ) まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用例1発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであることから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

イ 請求人の主張について
請求人は、請求の理由において「引用文献2?4のいずれにも、飼料を製造すべく、少なくとも「生オリーブ粕」を出発材料として用いて撹拌下で乾燥することについて示唆すらされていない以上、それによってどのような性状を有する乾燥物が得られるかについてもこれら引用文献から知る余地がないというべきであります。 」と主張している。
しかしながら、有機性廃棄物を「撹拌下にて乾燥する」ことにより乾燥粉末状の飼料を得ることは上記ア(ア)aで説示したとおり周知技術であり、引用例1発明に上記周知技術をどのような条件で適用した場合にどのような性状を有する乾燥物が得られるかについて、予め試行実験等を行うことにより把握しておくことは、当業者が実施すべき自明の事項である。

3 補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成22年12月16日付け願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「オリーブ果実を原料として搾油する際に産出される生オリーブ粕を攪拌下にて乾燥することによって得られる乾燥オリーブ粕粉末を含む飼料。」

2 引用例
引用例1及びその記載事項並びに引用例1記載の発明(引用例1発明)は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から「平均粒径が8mm以下であり、水分含有量が13重量%以下である」という事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2」に記載したとおり、当業者が引用例1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が引用例1発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-19 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-09 
出願番号 特願2010-280916(P2010-280916)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦上田 泰  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 小野 忠悦
谷垣 圭二
発明の名称 乾燥オリーブ粕粉末を含む飼料  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  

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