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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J
管理番号 1309369
審判番号 不服2015-7610  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-23 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2010-203036「ロボットの回転規制装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月22日出願公開、特開2012-56047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
出願 平成22年 9月10日
拒絶理由の通知 同 26年 4月 3日付け
意見書 同 26年 5月27日
手続補正書 同 26年 5月27日
拒絶理由の通知 同 26年 8月25日付け
意見書 同 26年 9月29日
拒絶査定 同 27年 3月27日付け
同謄本送達 同 27年 4月 7日
審判請求書 同 27年 4月23日


第2 本件出願の発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る発明は、平成26年5月27日付手続補正書により補正された特許請求の範囲、及び願書に添付した明細書ないし図面の記載からみて、上記請求項1及び請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、次の記載のとおりである。

「複数のリンクを関節により連結して構成されたロボットであって、前記複数のリンクのうち、少なくとも一のリンクに他のリンクを連結する関節を回転関節として当該他のリンクを前記一のリンクに対して回転する回転リンクとしたロボットにおいて、
前記一のリンクの外殻と、
前記一のリンクの外殻の内側に回転可能に支持され、前記回転リンクを取り付けた前記回転関節の回転軸と、
前記一のリンクの前記外殻の内側に配設され、一端部を前記外殻または当該外殻と一体の部材に連結し、他端部を前記回転軸または当該回転軸と一体の部材に連結し、前記回転リンクの回転に伴い、前記回転軸または当該回転軸と一体の部材を巻き胴として当該巻き胴の外周に巻取られて伸び切ることにより前記回転リンクの回転動作範囲を規制するワイヤとを具備し、
前記ワイヤの前記他端部は、当該他端部に取り付けられ中心孔を有したリング状連結部材を有し、
前記ワイヤは、前記巻き胴に固定された連結軸に前記リング状連結部材の前記中心孔を嵌合させることにより回転可能に前記巻き胴に連結され、
前記連結軸の中心は、前記巻き胴の回転中心に対し、当該巻き胴の半径rに前記ワイヤの太さdの半分d/2を加えた長さだけオフセットされていることを特徴とするロボットの回転規制装置。」


第3 刊行物、刊行物記載事項、及び刊行物に記載された発明
これに対して、本件出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物であって原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-190637号公報(以下、「刊行物1」という。)の記載事項及び刊行物1に記載された発明は、各々以下のとおりである。

1 刊行物1記載の事項
刊行物1には以下の事項が記載されている。
(1)段落【0001】?【0003】
「【0001】
本発明は、回転範囲規制機構及び産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット、特に多関節型ロボットでは複数の関節においてそれぞれの回転軸の中心軸線を回動中心に回動部材が回動することによってロボットの先端に取着されたロボットハンド等のエンドエフェクタに所望のロボット動作を行わせている。多関節型ロボットのうち、半導体ウエハや液晶用ガラス基板の搬送等によく用いられる水平多関節型ロボットは、図6に示すように、例えば固定ベース100に第1回転軸101を介して回動可能に連結された第1アーム102と、この第1アーム102の先端に第2回転軸103を介して連結された第2アーム104とで水平関節型のアームが構成される。その第2アーム104の先端には、昇降及び回転可能な作業軸105を介してエンドエフェクタ(図示しない)が装備される。このロボットRB1の場合、固定ベース100と第1アーム102及び第1アーム102と第2アーム104との結合部で相対的な回転を無限に許すと、2つの部材の間に延びる配線あるいは配管が過度に捩れて破損したり、ロボットRB1が予期せぬ動きをしたときに周囲のものにぶつかってしまったりする可能性がある。そのため、従来から、固定ベース100と第1アーム102の結合部、第1アーム102と第2アーム104の結合部においては、2つの部材間の相対回転を一定範囲に規制するためのストッパ機構が設けられている。
【0003】
図7は、固定ベース100と第1アーム102とのストッパ機構110を示す。図7において、固定ベース100と第1アーム102の結合部では、第1アーム102を回動させる第1回転軸101にストッパ107を突設し、さらに固定部材となる固定ベース100の所定位置にストッパ107と係合するストッパ受け108を固着した。これによって、ストッパ107がストッパ受け108に係合することによって第1回転軸101の回転を一定範囲に規制した。」
(2)段落【0016】,【0017】
「【0016】
図1において、ロボットRBは、水平多関節型の産業用ロボットであって、床面B等に固設された基台1の上面には、固定ベース3が固着されている。ロボットRBは、固定ベース3の右側下部の接続ケーブル5を介してロボットコントローラRCに接続されるとともに、そのロボットコントローラRCに基づいて駆動制御される。なお、ロボットコントローラRCには、ティーチングペンダントやパーソナルコンピュータ等の周辺装置が接続されており、その周辺装置からロボットRBの機種情報や教示データ等のロボットを駆動させるための情報信号等が入力されている。また、ロボットコントローラRCは、周辺装置から入力される情報信号に基づいてロボットRBを駆動制御するようになっている。
【0017】
また、固定ベース3の上部には、第1アーム10が水平方向に360°以上回転可能に連結されている。固定ベース3には、第1駆動モータM1が配設されている。図2に示すように、第1駆動モータM1はそのモータハウジング12が固定ベース3に対して固設されている。第1駆動モータM1は減速機を備えたモータであって、その出力軸16は、第1アーム10の基端部内に突出し、第1アーム10に対して連結固定されている。従って、固定ベース3に固設された第1駆動モータM1が正逆回転すると、減速機にて減速された出力軸16の正逆回転に伴って第1アーム10は出力軸16の中心軸線C1を回動中心に水平方向に回転するようになっている。」
(3)段落【0036】?【0042】
「【0036】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図5に従って説明する。
なお、本実施形態は、ストッパ機構ST2に、第1実施形態と相違した特徴を有しているため、説明の便宜上、その特徴を有するストッパ機構ST2について図5に従って説明する。図5は、本実施形態のストッパ機構ST2の動作を説明するための平面図である。
【0037】
図5に示すように、モータハウジング12の出力軸16側(第1アーム10側)の側面12aの外周縁には、固定側取付部を構成する1つの固定側突起60が固着されている。出力軸16の外周であって、図5(a)において固定側突起60と対向する位置には、回転側取付部を構成する略L字状の1つの回転側突起62が固着されている。回転側突起62は、第1駆動モータM1が正逆転すると、出力軸16と一体回転するようになっている。なお、固定側突起60は、固定ベース3に固設されたモータハウジング12に固着されているため、出力軸16の回転に連動して回転しない。
【0038】
また、固定側突起60と回転側突起62には、可撓性を有する金属からなる第3ワイヤW3の両端部がそれぞれ連結されている。すなわち、第3ワイヤW3は、その一端が固定側突起60に連結されるとともに、その他端が回転側突起62に連結されている。なお、本実施形態では、固定側突起60と、回転側突起62と、第3ワイヤW3とからストッパ機構ST2が構成されている。また、第3ワイヤW3は、出力軸16の円周の略5/8の長さに設定されている。
【0039】
図5(a)に示す回転側突起62が固定側突起60と最も近接して相対向する位置を基準位置Dとして、図5(b)に示すように、出力軸16が基準位置Dから右回りに回転すると、回転側突起62がその出力軸16の回転に連動して右回りに回転する。この時、第3ワイヤW3は、その両端部が固定側突起60と回転側突起62とに連結されたまま、たるみの部分(図5(a)参照)が出力軸16の外周に沿って巻き付くように伸びる。そして、出力軸16(回転側突起62)が基準位置Dから右回りに225°回転すると、第3ワイヤW3は出力軸16の外周に沿って伸びきるようになっている。これによって、出力軸16は225°以上の右回りへの回転が規制されるようになっている。
【0040】
一方、図5(c)に示すように、出力軸16が基準位置Dから左回りに回転すると、回転側突起62がその出力軸16の回転に連動して左回りに回転する。この時、第3ワイヤW3は、その両端部が固定側突起60と回転側突起62に連結されたまま、たるみの部分(図5(a)参照)が出力軸16の外周に沿って巻き付くように伸びる。そして、出力軸16(回転側突起62)が基準位置Dから左回りに225°回転すると、第3ワイヤW3は出力軸16の外周に沿って伸びきるようになっている。これによって、出力軸16は225°以上の左回りへの回転が規制されるようになっている。
【0041】
このように、本実施形態では、第3ワイヤW3によって、出力軸16の回転を右回りに225°、左回りに225°の範囲に規制することができる。これによって、固定ベース3及び第1アーム10の総相対回転量を450°に規制することができるため、回転範囲を360°以上に確保することができ、作業能率を向上させることができる。
【0042】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、第3ワイヤW3の長さを、出力軸16の円周の1/2以上の略5/8に設定した。従って、出力軸16の回転を左回りに及び右回りにそれぞれ180°以上の225°に規制することができる。そのため、固定ベース3及び第1アーム10の総相対回転量を360°以上に規制することができる。その結果、ロボットRBの作業能率を向上させることができる。また、第3ワイヤW3の長さを変更することによって、出力軸16の回転範囲を容易に変更することができる。」

2 刊行物1記載の発明
刊行物1記載の上記(1)ないし(3)の事項を技術常識を考慮に入れながら本件出願の発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

(刊行物1発明)
「複数のリンクを関節により連結して構成されたロボットであって、前記複数のリンクのうち、固定ベース3に固設されたモータハウジング12の出力軸16に第1アーム10を連結固定した水平回転関節を回転関節として当該第1アーム10を前記固定ベース3に対して回転する回転リンクとしたロボットにおいて、
前記固定ベース3の上部に固設されたモータハウジング12と、
前記モータハウジング12の内側に回転可能に支持され、前記第1アーム10に連結固定された前記回転関節の出力軸16と、
一端部を前記モータハウジング12の出力軸16側(第1アーム10側)の側面12aの外周縁に固着した、固定側取付部を構成する固定側突起60に連結し、他端部を前記出力軸16の外周であって前記固定側突起60と対向する位置に固着した、回転側取付部を構成する回転側突起62に連結し、前記第1アーム10の回転に伴い、前記出力軸16の外周に沿って巻き付き、出力軸16が基準位置Dから左右225°回転すると伸びきることにより前記第1アーム10の回転動作範囲を規制する第3ワイヤW3とを具備するロボットの回転範囲規制機構。」


第4 対比
本件出願の発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「ワイヤ」は、その配設状態が本件出願の発明にて「前記一のリンクの前記外殻の内側に配設され」とされている点を除いて、本件出願の発明の「ワイヤ」に相当し、
以下、同様に、
刊行物1発明の「水平回転関節」である「回転関節」とされる「固定ベース3の上部に固設されたモータハウジング12」、「モータハウジング12の出力軸16」及び「第1アーム10」は、本件出願の発明の「回転関節」とされる「一のリンク」、「前記回転リンクを取り付けた前記回転関節の回転軸」及び「他のリンク」に相当し、
上記「ワイヤ」の「一端部」及び「他端部」が「連結」されるとした、「前記モータハウジング12の出力軸16側(第1アーム10側)の側面12aの外周縁に固着した、固定側取付部を構成する固定側突起60」及び「前記出力軸16の外周であって前記固定側突起60と対向する位置に固着した、回転側取付部を構成する回転側突起62」は、本件出願の発明における「ワイヤ」の「一端部」及び「他端部」が「連結」されるとした「一のリンクの外殻と一体の部材」及び「回転軸と一体の部材」に相当する。
この対応関係の整理に伴い、刊行物1発明の「回転動作範囲」の「規制」に関して付されている「前記第1アーム10の回転に伴い、前記出力軸16の外周に沿って巻き付き、出力軸16が基準位置Dから左右225°回転すると伸びきることにより前記第1アーム10の回転動作範囲を規制する」なる事項は、ワイヤの対象物への巻き付きにより生じた、伸び切りに至る状態変化が、本件出願の発明の「ワイヤ」に付された「前記回転リンクの回転に伴い、前記回転軸または当該回転軸と一体の部材を巻き胴として当該巻き胴の外周に巻取られて伸び切ることにより前記回転リンクの回転動作範囲を規制する」に相当する。
さらに、刊行物1発明は「ロボットの回転範囲規制機構」として表現されているが、本件出願の発明と同様に「ロボットの回転規制装置」としても表現できるものである。
したがって、本件出願の発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。

[一致点]
複数のリンクを関節により連結して構成されたロボットであって、前記複数のリンクのうち、少なくとも一のリンクに他のリンクを連結する関節を回転関節として当該他のリンクを前記一のリンクに対して回転する回転リンクとしたロボットにおいて、
前記一のリンクの外殻と、
前記一のリンクの外殻の内側に回転可能に支持され、前記回転リンクを取り付けた前記回転関節の回転軸と、
一端部を当該外殻と一体の部材に連結し、他端部を前記回転軸と一体の部材に連結し、前記回転リンクの回転に伴い、前記回転軸を巻き胴として当該巻き胴の外周に巻取られて伸び切ることにより前記回転リンクの回転動作範囲を規制するワイヤとを具備するロボットの回転規制装置。

そして、本件出願の発明と刊行物1発明とは、以下の2点で相違している。
1 相違点1
本件出願の発明では、回転リンクの回転動作範囲を規制するワイヤが、一のリンクの外殻の内側に配設されているのに対して、刊行物1発明では、ワイヤがそのように配設されているのかどうか明らかでない点。
2 相違点2
本件出願の発明の「ワイヤ」の「他端部」は、「中心孔を有したリング状連結部材」を有し、かつ、前記ワイヤは、前記巻き胴に固定された連結軸に当該「リング状連結部材の前記中心孔を嵌合させることにより回転可能に前記巻き胴に連結」されるとされ、また、「前記連結軸の中心は、前記巻き胴の回転中心に対し、当該巻き胴の半径rに前記ワイヤの太さdの半分d/2を加えた長さだけオフセットされている」こととされているのに対して、刊行物1発明の「ワイヤ」の他端部は、相当するとされた「出力軸16」への取付けの具体的態様を明らかとせず、また、「オフセット」に関しても明らかでない点。


第5 当審の判断
上記相違点1、2について、各々検討する。
1 相違点1について
刊行物1には、ワイヤが回転関節を構成するリンクに対してどのように配設されるかについては、直接明記されてこそいない。しかし、比較参照として説明された従来技術とされる、回転リンクの回転動作範囲を規制するストッパ機構は、段落【0003】及び図7に示されているとおり、固定ベースの内側に配設されている。そして、当該ストッパ機構をワイヤへと置換させたものが刊行物1発明とされている事情を鑑みると、当該ワイヤはリンクに相当する第1アーム10、固定ベース3の接触面内、すなわちリンクの外殻の内側に収納されるようになすことは、十分想到しうる事項である。
またそうでないとしても、当該分野の当業者が有する技術常識として、産業用ロボットにおいて、回転リンク部に配置するケーブル(例えば、駆動用のモータへの給電ワイヤも含む)を、できるだけロボット本体外部に出ないように構成することは以前から求められてきた課題に過ぎない。そして、そのために当該ケーブルを、ロボットを構成するリンク外殻の内側に配設することは、例えば、特開2009-220221号公報、特開2007-283449号公報、特開2007-237342号公報等に示されているように従来周知でもある。
そうしてみると、回転リンクの回転動作範囲を規制するワイヤを、一のリンクの外殻の内側に配設することは、当該ワイヤを配設するに当たって適宜なし得る程度の事項であるといえる。

2 相違点2について
まず、本件出願の発明が採用した、ワイヤ端部の取付け構造、すなわち、巻取りドラムに巻き取られる線条部材の端部に、中心孔を有するリング状連結部材を取付け、巻取りドラムに固定された連結軸に前記リング状連結部材の前記中心孔を嵌合させることにより前記線条部材を巻取りドラムに連結することは、原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された実願昭53-151594号(実開昭55-70489号)のマイクロフィルム(ロープ2端部に固定されている取付孔を有すロープソケット4と、取付孔に挿入される取付ピン5を参照。)及び同じく引用文献4として引用された実願平3-96568号(実開平5-44995号)のCD-ROM(索条16の巻取り側先端部に固着されたリング部を有する金具と、リング部を軸支する軸支手段27を参照。)に示されているように従来周知である。
そうすると、上記相違点2の前半に係る事項については、刊行物1記載の発明において、ワイヤ端部の取付け構造としてさまざまな構造がある中で、上記従来周知の事項を選択して、ワイヤの他端部は、当該他端部に取り付けられ中心孔を有したリング状連結部材を有し、前記ワイヤは、巻き胴に固定された連結軸に前記リング状連結部材の前記中心孔を嵌合させることにより回転可能に前記巻き胴に連結することに格別の困難性は見当たらない。
次いで、ワイヤ太さを加味した取付け時のオフセット措置、すなわち、上記相違点2の後半に係る事項について検討する。
そもそも本件出願の発明で、このようなワイヤ取付けでワイヤ太さを加味したオフセット措置を講じるとした事情は、その明細書【0040】に記載された、
「ワイヤ27が巻き胴18に巻き取られたとき、当該ワイヤ27が特にローラ29との固着部分において巻き胴18の外周面から浮き上がることがない。このため、ワイヤ27の長さLを定めることによってフランジ8の回転動作範囲を所望する角度に精度良く定めることができる。」
を狙ったものと理解される。
ここで、刊行物1の第3図を参照すると、第1回転側突起22aの近傍の第1ワイヤW1が巻き胴から浮き上がっている状態が理解されるところ、刊行物1発明を実施しようとすれば、連結軸の中心を、巻き胴の回転中心に対し、巻き胴の半径rにワイヤの太さdの半分のd/2よりも大きい長さを加えた長さだけオフセットすることは十分想到しうる事項である。
そして、刊行物1発明において回転を225°に規制していることに関し、d/2よりも大きい長さを加えた長さでオフセットしていても、ワイヤ長としていかほどの全長が必要であるかについては、作図をすれば225°となるワイヤ必要長を計算できることが、技術者であれば当然に理解できる事項であって、オフセット量をd/2よりも大きい長さから、d/2に変更したことにより俄に「回転動作範囲を所望する角度に精度良く定めることができる」ようになったとは考えられない。
してみると、オフセットをd/2にしたことに格別の作用効果は認められず、d/2より大きくしたことに代えてd/2のみに限定することは、オフセットを決定するにあたり適宜決定しうる設計的な事項にすぎない。

3 本件出願の発明の効果について
本件出願の発明の採用する構成によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び上記従来周知の事項並びに設計上の平易な事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。


第6 むすび
したがって、本件出願の発明は、刊行物1記載の発明及び従来周知の事項並びに設計上の平易な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものである。
よって、本件出願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-28 
結審通知日 2015-11-04 
審決日 2015-11-18 
出願番号 特願2010-203036(P2010-203036)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青山 純金丸 治之藤島 孝太郎  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 栗田 雅弘
西村 泰英
発明の名称 ロボットの回転規制装置  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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