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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1309422
審判番号 不服2014-26084  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-22 
確定日 2016-01-07 
事件の表示 特願2013- 89995「ピストンポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開,特開2014-214621〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下,「本願」と言う。)は,平成25年4月23日の特許出願であって,平成26年9月17日付けで拒絶査定がされ(この謄本の送達日は平成26年9月24日),これに対して,平成26年12月22日に本件拒絶査定不服審判が請求された。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成26年4月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下,この発明を「本願発明」と言う。)。
「ポンプ部と,前記ポンプ部を作動させるモータ部とを備え,
前記ポンプ部には,複数のピストンと,該複数のピストンを収容する複数のシリンダ室を有するシリンダと,前記モータ部に駆動されて前記ピストンをそれぞれ往復運動させる斜板とが設けられている,ピストンポンプであって,
前記ポンプ部には,当該ピストンポンプの吐出側の圧力が一定圧力以上となると開弁し前記シリンダ室からの吐出流体をリリーフするリリーフ弁が設けられており,
前記シリンダは,前記シリンダ室からの吐出流体をリリーフするリリーフ路を有しており,
前記リリーフ弁は,前記シリンダの前記リリーフ路に直接収容されており,
前記リリーフ弁は,バルブシートと,該バルブシートに選択的に着座する弁体と,一端が前記弁体に接続されるスプリングホルダと,一端が前記スプリングホルダに支持されるスプリングと,該スプリングの他端を支持する共に,前記スプリングホルダの他端が挿入されて該スプリングホルダの移動を案内するキャップとを備えており,
前記バルブシート,前記弁体,前記スプリングホルダ,前記スプリング及び前記キャップが全て,前記リリーフ路に直接収容されている,
ピストンポンプ。」

3.引用発明
(1)審査官が通知した拒絶の理由に示された特開平10-339231号公報(以下「刊行物1」と言う。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0013】本発明は圧力室の圧力が上昇したときに一義的に定まる圧力が発生したときに確実にバルブ孔を開放することのできる燃料ポンプを提供することを目的とする。
【0014】他の目的は圧力リリーフ弁を圧力コントロール形の弁とすることによって圧力調整を可能にし,しかもポンプ本体に組み込むことによって高圧レギュレータを内装した一体形燃料ポンプを提供することにある。」
・「【0022】
【発明の実施の形態】ハウジングは第1ハウジング11および第2ハウジング12からなり,これらはボルト13により一体化されている。ハウジングの内部はクランク室15となっており,後述するようにガソリンの吸引室16および高圧の圧力室17が形成される。第1ハウジング11の上端部には軸受19が設けてあり,この軸受19に駆動シャフト20が受け入れられている。駆動シャフト20は,周知のように,エンジンのカム軸(開示していない)に連結されて駆動される。駆動シャフト20の一端には,シャフト回転によって摺動運動を発生させる斜板21が設けてあり,ハウジング内面との間にはスラスト軸受22が設けてある。斜板20の内部の凹部には軸受23が設けてあり,揺動板24の一部が受け入れられている。
【0023】斜板21に対して揺動板24がラジアル軸受23およびスラスト軸受25を介して結合(カップル)されている。揺動板24は,駆動シャフト20の回転運動に基づく斜板21の回転運動によって揺動することになる。
【0024】揺動板24に対向して空間を置いてシリンダブロック30が配設してあり,このシリンダブロック30には5個のプランジャ31,圧力調整レギュレータ32および圧力逃し孔33が設けてあり,ボルト34によって第2のハウジング12と一体化されている。
【0025】揺動板24の下端には上側ベローズキャップ34が固定され,シリンダブロック30には下側ベローズキャップ35が固着され,ベローズ36がこれら下上のベローズキャップ34,35によって保持されている。ベローズ36は,クランク室15中の駆動シャフト20を回転運動から揺動運動に変換する機構部を包含する機構室37と吐出されるべきガソリンで満たされた吸引室16とに分けている。機構室37には,機構部の潤滑を行うために油あるいはグリースが封入される。38はオイルプラグで,オイル封入後,装着される。
【0026】プランジャ31は,シリンダ29内に設けたプランジャヘッド40と,その中に配設される上下のスプリング41,42,ボール43およびスプリング押え44からなり,プランジャヘッドの球状の頂面にはこれに合致する形状とされたスリッパ45が配設されている。プランジャヘッド40にはその長手方向に孔があけてあり,プランジャヘッド内部の空間を介して圧力室17に連通する構成としてあり,圧力室17への出口には,シリンダブロック30に形成された孔を塞ぐチェック弁46が設けてあり,孔はボールによって閉塞される構成とされている。従って,吸引室16を満たすガソリンは,揺動板24の揺動運動に伴ってスリッパ45に設けた溝およびプランジャに設けた連通路を介してチェック弁46を押し下げて圧力室17に送られることになる。この場合,この作動は5つのプランジャについて順次行われることになる。安全のために設けられる圧力逃し孔33にも同様にチェック弁47が設けてあり,シリンダブロックに設けた孔をボールが塞ぐ構成とされている。
【0027】圧力調整レギュレータ32の第1の例について図1および図2に基づいて説明する。圧力調整レギュレータ32は,シリンダブロック30に形成されたシリンダ50内で,このシリンダブロック30に対してその位置がネジ機構とこれを回転させる回転機構により,調整されて固着され,かつ連通孔52の形成された固着台51と,シリンダ50と圧力室17とを連通するバルブ孔53を閉塞・開放する圧力リリーフ弁54と,該圧力リリーフ弁54の押えと55と,前記固着台51とこの押え55との間に両者を押圧するように装置されたスプリング56とから構成されている。圧力リリーフ弁54はバルブ孔53のシート面に接着する圧力リリーフボール57を有しており,このボール弁57は押え55に設けた凹部によって保持される。押え55には連通孔58が設けてある。この例にあっては押え55とシリンダ50面との間に間隙があって,ガソリンが流通できるようになっている。
【0028】揺動板24の揺動に伴って,圧力リリーフボール弁54は閉塞・開放を繰り返し,ガソリンを圧力室17に吐出することになる。この場合,その吐出はON-OFF制御されることが理解されよう。
【0029】燃料タンク(図示せず)内に設けられているフィードポンプ(図示せず)によって0.3Mpaに加圧されたガソリンが吸引道路60を介して吸引室16に吸引され,プランジャ31によって3Mpa以上に昇圧されて高圧の圧力室17に吐出される。圧力室17に吐出されたガソリンは吐出通路61からエンジン(図示せず)へと導かれる。
【0030】図3は,圧力リリーフ弁に使用されたボールのシート部への接触径dpとバルブ孔Dsとの比および圧力増加量の関係を示す図である。図から判るように,dp/Dsが約88%を越えたときに圧力の低下に著しい。時間経過に伴う圧力の低下を考えたときに,dp/Dsを約85%から100%未満に設定することが望ましい。
【0031】材料について言えば,ガソリンに接するシリンダ50,揺動板24,スリッパ45,プランジャ31,チェックバルブボール57ならびにスプリング56はステンレス系材料とすることができるが,耐摩耗性の必要なシリンダ50,揺動板24,チェックバルブボール57はマルテンサイト系のステンレスを使用して焼入れすることが望ましい。
【0032】図4は,他の実施例を示す。図5は,図4に使用する圧力調整レギュレータの一部拡大を示す。
【0033】圧力調整レギュレータの構成を除き,図1とほぼ同じ構成であるので,実質的に同一の構成は除いて説明を行う。
【0034】この場合の圧力調整レギュレータは,絞りとダンパーの作用を兼ね備えていることに特徴がある。圧力調整レギュレータは,シリンダブロック30に形成されたシリンダ76内で,シリンダブロック30に一体とされてその一部を構成する筒体70に対してその位置がネジ機構とこれを回転させる回転機構により調整されて固着された固着台71と,圧力室17に連通するバルブ孔53を閉塞・開放する圧力リリーフ弁72と,この圧力リリーフ弁の押え73および74と,および固着台71と,押え74との間に装着されて両者を押圧するスプリング75とから成る。圧力リリーフ弁72はボール80を有する。押え74はシリンダ内壁76に接して摺動する。シリンダブロック30には筒体外面に面してガソリン連通路77が形成してあり,この連通路77は筒体70に設けた孔78,シリンダ76内の空間79および押え73の孔81,筒体70の孔84およびバルブ孔83を介して圧力室17に連通する。ボール82はスプリング75の作用によって常時は孔84を閉塞している。圧力室17の圧力が異常に高くなると,ボール82は押し上げられてダンパー作用をなし,またボール82はシリンダ内壁を摺動する押え,74およびスプリング75の働きによって絞り作用をなす。」
(2)刊行物1の記載事項からすると,燃料ポンプのポンプとしての機能は,駆動シャフト20が回転運動をすることによって,斜板21も回転運動をし,次いで,揺動板24が揺動し,それに伴って,各プランジャ31が往復運動をしながら燃料(ガソリン)を吸引した後に吐出する,というものである。したがって,斜板21,揺動板24,プランジャ31等によりポンプ部が構成されていると理解することができる。
(3)また,刊行物1の記載事項からすると,圧力調整レギュレータ32は,プランジャ31から吐出された燃料の圧力,すなわち燃料ポンプの吐出側の圧力が一定圧力以上となると開弁して,シリンダ29からの吐出燃料をリリーフするものと理解することができる。さらに,圧力調整レギュレータ32は,シリンダ29からの吐出燃料をリリーフするシリンダ50に直接収容されているものと理解することができる。
(4)また,刊行物1の記載事項及び特に図2の記載内容からすると,圧力調整レギュレータ32の機能を考えれば,圧力リリーフ弁54が選択的に着座する部材が当然必要であるところ,当該圧力調整レギュレータ32にあっては,シリンダ50の一部にそのような部材に相当する部位が形成されていることは,当業者にとって自明である。
(5)以上を踏まえ,本願発明の表現にならって整理すると,刊行物1には以下の発明が開示されていると認めることができる(以下,「引用発明」と言う。)。
「斜板(21),揺動板(24),プランジャ(31)等からなるポンプ部と,前記ポンプ部を駆動する駆動シャフト(20)とを備え,
前記ポンプ部には,複数のプランジャ(31)と,該複数のプランジャ(31)を収容する複数のシリンダ(29)を有するシリンダブロック(30)と,前記駆動シャフト(20)に駆動されて前記プランジャ(31)をそれぞれ往復運動させる斜板(21)及び揺動板(24)とが設けられている,燃料ポンプであって,
前記ポンプ部には,当該燃料ポンプの吐出側の圧力が一定圧力以上となると開弁し前記シリンダ(29)からの吐出燃料をリリーフする圧力調整レギュレータ(32)が設けられており,
前記シリンダブロック(30)は,前記シリンダ(29)からの吐出燃料をリリーフするシリンダ(50)を有しており,
前記圧力調整レギュレータ(32)は,前記シリンダブロック(30)の前記シリンダ(50)に直接収容されており,
前記圧力調整レギュレータ(32)は,圧力リリーフ弁(54)と,一端が前記圧力リリーフ弁(54)に接続されるスプリング押え(55)と,一端が前記スプリング押え(55)に支持されるスプリング(56)と,該スプリング(56)の他端を支持する固着台(51)とを備え,前記シリンダ(50)に前記圧力リリーフ弁(54)が選択的に着座する部位があり,
前記圧力リリーフ弁(54),前記スプリング押え(55),前記スプリング(56)及び前記固着台(51)が全て,前記シリンダ(50)に直接収容されている,
燃料ポンプ。」

4.対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「ポンプ部を駆動する駆動シャフト(20)」と本願発明の「ポンプ部を作動させるモータ部」は,「ポンプ部を作動させる手段」である限りで一致する。
イ.引用発明の「プランジャ(31)」は,本願発明の「ピストン」に相当し,引用発明の「燃料ポンプ」は,本願発明の「ピストンポンプ」に相当する。
ウ.引用発明の「シリンダブロック(30)」は,本願発明の「シリンダ」に相当し,引用発明の「シリンダ(29)」は,,本願発明の「シリンダ室」に相当する。
エ.引用発明の「圧力調整レギュレータ(32)」は,本願発明の「リリーフ弁」に相当する。
オ.引用発明の「燃料」は,本願発明の「流体」に相当する。
カ.引用発明の「シリンダ(50)」は,本願発明の「リリーフ路」に相当する。
キ.引用発明の「圧力リリーフ弁(54)」,「スプリング押え(55)」,「固着台(51)」は,それぞれ,本願発明の「弁体」,「スプリングホルダ」,「キャップ」に相当する。
ク.引用発明の「スプリング(56)の他端を支持する固着台(51)」と,本願発明の「スプリングの他端を支持する共に,前記スプリングホルダの他端が挿入されて該スプリングホルダの移動を案内するキャップ弁体」は,「スプリングの他端を支持するキャップ」である限りで一致する。
ケ.以上を踏まえると,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。
[一致点]
ポンプ部と,前記ポンプ部を作動させる手段とを備え,
前記ポンプ部には,複数のピストンと,該複数のピストンを収容する複数のシリンダ室を有するシリンダと,前記ポンプ部を作動させる手段に駆動されて前記ピストンをそれぞれ往復運動させる斜板とが設けられている,ピストンポンプであって,
前記ポンプ部には,当該ピストンポンプの吐出側の圧力が一定圧力以上となると開弁し前記シリンダ室からの吐出流体をリリーフするリリーフ弁が設けられており,
前記シリンダは,前記シリンダ室からの吐出流体をリリーフするリリーフ路を有しており,
前記リリーフ弁は,前記シリンダの前記リリーフ路に直接収容されており,
前記リリーフ弁は,弁体と,一端が前記弁体に接続されるスプリングホルダと,一端が前記スプリングホルダに支持されるスプリングと,該スプリングの他端を支持するキャップとを備え,
前記弁体,前記スプリングホルダ,前記スプリング及び前記キャップが全て,前記リリーフ路に直接収容されている,
ピストンポンプ。
[相違点1] ポンプ部を作動させる手段が,本願発明ではモータ部であるのに対して,引用発明では駆動シャフトである点。
[相違点2] リリーフ弁に関し,本願発明ではバルブシートと言う部材が備えられていて,弁体が該バルブシートに選択的に着座するように構成されているのに対して,引用発明では,リリーフ路(シリンダ)に弁体(圧力リリーフ弁)が選択的に着座する部位が設けられている点。
[相違点3] キャップが,本願発明では,スプリングホルダの他端が挿入されて該スプリングホルダの移動を案内するのに対して,引用発明はそのようなものではない点。
イ.上記相違点1?3について検討する。
(ア)相違点1について
一般的に,ポンプを作動させるためにモータを用いることは,慣用されている。ポンプの形式がピストンポンプであっても同様である。
したがって,引用発明において,ポンプ部を駆動させるためのモータ部を構成すること,すなわち,相違点1に係る本願発明の構成を採用することには,当業者にとっての格別の創意工夫は見いだせない。
(イ)相違点2について
審査官が,刊行物1とともに示した特開2002-89727号公報(以下,「刊行物2」と言う。)は,流体たる油の圧力が一定のものとなるように制御するために,一定値以上になると開弁する弁に関するものであって,「バルブシート」がボディから独立した部材として構成されていてバルブ装着孔に直接収納される構成(以下,「刊行物2記載の構成」と言う。)が記載されている。
引用発明,特にそのリリーフ弁の構成に関し,流体機器の分野の当業者にとって,刊行物2記載の構成を考慮すれば,引用発明において相違点2に係る本願発明の構成を採用することは,通常の創作能力を発揮してなし得たことにすぎない。
(ウ)相違点3について
審査官が,刊行物1,2とともに示した特開2008-138785号公報(以下,「刊行物3」と言う。)は,流体の圧力が一定のものとなるように制御するために,一定値以上になると開弁する弁に関するものであって,弁体を付勢する調圧ばねは,一端が弁リテーナに支持され,多端がガイド部材に支持されるとともに,当該弁リテーナは,一端が当該弁体に接続され,多端は当該ガイド部材に挿入されて当該弁リテーナの動きがガイドされる構成(以下,「刊行物3記載の構成」と言う。)が記載されている。
引用発明,特にそのリリーフ弁の構成に関し,流体機器の分野の当業者にとって,刊行物3記載の構成を考慮すれば,引用発明において相違点3に係る本願発明の構成を採用することは,通常の創作能力を発揮してなし得たことにすぎない。
(エ)以上を踏まえると,本願発明の構成は,引用発明及び刊行物2,3記載の構成に基づいて当業者が容易に採用し得た範囲内のものである。
しかも,本願発明の構成により,引用発明及び刊行物2,3記載の構成から予期される以上の格別顕著な効果がもたらされるとも言えない。
ウ.したがって,本願発明は, 引用発明及び刊行物2,3記載の構成に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。
エ.請求人は,審判請求書において,原審における認定の不備につき主張するので,これについての見解を述べておく。
(ア)原審の拒絶理由通知書には,判断の対象となる請求項に係る発明と引用文献1に記載されたものとの相違点を明示的に記載した個所はないが,引用文献1に記載されたものを示した上で,判断の対象となる請求項に係る発明が備えている構成である,ピストンポンプにおいてポンプ部を作動させるモータ部を備えた構成,スプリングホルダの移動をスプリングの他端を支持するキャップに当該スプリングホルダの他端を挿入して案内する構成,リリーフ弁の弁体が着座するバルブシートをリリーフ路内に収容される部品とする構成等についての事実を指摘した上で,引用文献1記載のものにそれらの構成を加えることにより対象とする請求項に係る発明の進歩性が認められない,との判断を示したものである。
また,原審の拒絶査定においても,請求人(出願人)が手続補正をしたことによって請求項に付加され,かつ,請求人(出願人)が意見書において相違点であると主張する構成についても,引用文献1に記載されたものとの相違点ととらえた上で判断を示したものである。
そうしてみると,原審においても,実質的に相違点を踏まえた上での判断を示したものと言うことができる。
したがって,原審における相違点の扱い方をもって原査定を取り消さなければならないようなものではない。
(イ)原審においては,拒絶査定に「引用文献1に記載のバルブシート」と言う表現があるのだが,かかる表現は,「引用文献4には,リリーフ弁の弁体が着座するバルブシートを,リリーフ路内に収容される部品としたものが記載されており,引用文献1,4に記載のものはリリーフ弁という技術分野に属する点で共通するため,引用文献4の記載に照らして,引用文献1に記載のバルブシートを,リリーフ路内に収容される部品とすることにも格別の困難性は認められない」という文脈に於いて用いられているものであり,それに先立ち通知された拒絶理由通知書では「引用文献1には,・・・前記リリーフ路と一体のバルブシートに選択的に着座する弁体・・・記載されている」と記載されていることから,原審では,リリーフ路の一部を「バルブシート」と称したことは明らかである。
ところで,既に本審決において引用発明を認定するに際して述べたように,引用文献1において,シリンダ(50)の一部に圧力リリーフ弁(54)が選択的に着座する部位が形成されていることは自明である。
そして,弁体が着座する部位,すなわち弁座は,“シート”と称されることも一般的であって,そのような表現は,弁座がハウジングから独立した部材である場合に限って用いられるものではない(必要であれば,「油圧機器と応用回路-新版-」(金子敏夫著,日刊工業新聞社発行,4版,昭和43年12月10日)の“5.3.2”の図5・20(p.113),図5・22(p.118)における「シート」を参照。)。
そうすると,原審における「バルブシート」とは,シリンダ(50)の一部に圧力リリーフ弁(54)が選択的に着座する部位を表現したものであることは,当業者にとって容易に理解し得る事項である。参照符号との関係が明らかでないからと言って,そのような理解が成り立たないものではない。
なお,弁を構成するに際し,弁座をハウジングから独立した部材として構成することも,弁座をハウジングに形成することも,そもそも,当業者にとって周知慣用の手段である。
(ウ)したがって,請求人の主張を採用することはできない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び刊行物2,3記載の構成に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-30 
結審通知日 2015-11-10 
審決日 2015-11-24 
出願番号 特願2013-89995(P2013-89995)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏原 郁昭  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 新海 岳
松永 謙一
発明の名称 ピストンポンプ  
代理人 梶並 順  
代理人 飯野 智史  
代理人 大宅 一宏  
代理人 曾我 道治  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 上田 俊一  
代理人 武井 義一  

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