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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H04J |
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管理番号 | 1309473 |
審判番号 | 不服2014-26029 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-19 |
確定日 | 2016-01-06 |
事件の表示 | 特願2012-132411「インパルス雑音の軽減のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日出願公開、特開2012-231483〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1 手続の経緯 本願は,2006年8月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年8月12日,2005年10月31日,2006年1月11日 米国)を国際出願日とする出願の一部を平成24年6月11日に新たな特許出願として出願したものであって,平成25年6月27日付け拒絶理由通知に対して同年12月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成26年1月29日付け最後の拒絶理由通知に対して同年6月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが,同年8月11日付けで平成26年6月4日付けで提出された手続補正書による手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,これに対して同年12月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 2 拒絶査定の概要 平成26年6月4日付け拒絶査定は,同年1月29日付け拒絶理由通知書(以下,「第2拒絶理由通知書」という。)に記載した理由によって本願を拒絶するというものであり,第2拒絶理由通知書に記載された概要は次のとおりである。 『平成25年12月27日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 補正後の請求項1に「周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って前記受信されたマルチキャリア信号を補正する」との記載があるが,当該事項は当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等の記載から自明であるとも認められない。例えば,段落0008に「受信されたマルチキャリア信号の一部分の補正は,周波数領域において雑音推定に従って実行される。」との記載があるが,当該段落の「補正」が,なまった値の位置に基づいて,算出されたモデルの値に従って行われるものであることは,記載されていない。』 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年12月19日付け手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正 平成26年12月19日付け手続補正(以下,「本件第2補正」という。)は,平成25年12月27日付け手続補正(以下,「本件第1補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を次のとおり補正することを含むものである。 (本件第1補正後の請求項1) 「【請求項1】 伝送路を介したマルチキャリア信号により伝えられるシンボルを推定するステップと, 前記推定シンボル,基準値の集合,および,前記伝送路の推定応答に基づいて,前記シンボルを伝える前記受信されたマルチキャリア信号の一部分のモデルの算出するステップと, 時間領域において,前記推定シンボルのなまった値を特定するステップと, 周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って前記受信されたマルチキャリア信号を補正するステップと, を含むことを特徴とする信号処理の方法。」(以下,「本願発明」という。) (本件第2補正後の請求項1) 「【請求項1】 伝送路を介したマルチキャリア信号により伝えられるシンボルを,シンボル推定器を用いて推定するステップと, 前記推定シンボル,基準値の集合,および,前記伝送路の推定応答に基づいて,前記シンボルを伝える前記受信されたマルチキャリア信号の一部分のモデルを,モデル計算機を用いて算出するステップと, 時間領域において,前記推定シンボルのなまった値を,雑音検出器を用いて特定するステップと, 周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を,信号補正器を用いて補正するステップと, を含むことを特徴とする信号処理の方法。」(以下,「補正後発明」という。なお,下線は請求人により付された補正箇所である。) 2 本件第2補正に対する当審の判断 本件第2補正により,拒絶査定において特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとされた「周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って前記受信されたマルチキャリア信号を補正する」という本願発明の発明特定事項は,「周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を,信号補正器を用いて補正する」という補正後発明の発明特定事項に変更された。 そこで,当該補正後発明の発明特定事項が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であるか否かについて検討する。 (1)「前記なまった値の位置」について 上記補正後発明の発明特定事項における「前記なまった値」が,「時間領域において,前記推定シンボルのなまった値を,雑音検出器を用いて特定するステップ」における「推定シンボルのなまった値」を指すことは明らかであるところ,「推定シンボルのなまった値の位置」に関し,明細書の段落【0290】-【0292】には以下の記載がある。 「【0290】 タスクT720は,なまっていると特定された推定シンボル内の時間領域位置の命令を出力するように構成されることができる。一例では,タスクT720は,k∈{0,1,...,M-1}に対する以下の式に従って,2値ベクトルまたはマスクqを算出する。 【0291】 【数92】 【0292】 推定シンボル内のなまった値の位置に関する情報は,受信信号S10の対応するサンプルの値を修正するのに使用されることができる。」 この記載と【図25A】?【図28】の記載を照らし合わせると,「なまった値の位置」とは「なまっていると特定された推定シンボル内の時間領域位置」であり,より具体的にはマスクq(k)=1となるサンプル時間kを示すものと解される。 (2)「前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を,信号補正器を用いて補正する」ことについて 明細書の段落【0296】-【0297】には以下の記載がある。 「【0296】 受信信号S10に基づいて,タスクT740は,算出されたモデルの値に従って補正信号を算出する。タスクT740は,また,推定シンボルのなまった値の位置に基づいて受信信号S10を補正するように実装されることができる。タスクT740の実装形態T742は,なまった値に対応する受信信号のサンプルをモデルの対応する値に入れ替えることにより受信信号S10を補正する。1つのこのような実施例では,タスクT742は,以下の式などに従って補正信号y^((1))を算出する。 【0297】 【数93】 」 上記記載中の「算出されたモデルの値」,「受信信号S10」,「補正信号y^((1))」が,それぞれ,補正後発明の発明特定事項における「算出されたモデルの値」,「受信されたマルチキャリア信号」,『「信号補正器を用いて補正」された信号』に相当することは明らかであり,また,上記記載と【図25A】?【図28】の記載を照らし合わせ,かつ,上記『(1)「前記なまった値の位置」について』での検討も踏まえると, 補正後発明の発明特定事項における「前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を,信号補正器を用いて補正する」ことは, マスクq(k)=1となるサンプル時間kにおいて,すなわち,「なまっていると特定された推定シンボル内の時間領域位置」である時に,補正信号y^((1))(k)としてモデルの値s_(m)(k)を選択し, マスクq(k)=0となるサンプル時間kにおいて,すなわち,「なまっていると特定された推定シンボル内の時間領域位置」ではない時に,補正信号y^((1))(k)として受信信号y^((0))(k)を選択する処理を行うことである,と解される。 (3)まとめ 以上より,「前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を,信号補正器を用いて補正する」処理は,サンプル時間kの関数であるマスクq(k)の値に応じて実行される処理であり,さらに,補正に用いられる信号である「算出されたモデルの値(s_(m)(k))」及び「受信されたマルチキャリア信号(受信信号y^((0))(k))」並びに補正された後の信号である「補正信号y^((1))(k)」は,いずれもサンプル時間kの関数であるから,上記処理は「時間領域において」行われる処理であることは明らかである。 そして,上記処理を「周波数領域において」行うことは当初明細書等に記載されておらず,また,たとえ上記「算出されたモデルの値」,「受信されたマルチキャリア信号」,「補正信号」等の各種信号をFFTにより周波数領域の信号に変換することが当業者により適宜なし得ることであるとしても,そのように周波数領域に変換した信号を「サンプル時間kの関数であるマスクq(k)の値」に応じてどのように処理するのかは当業者に自明の事項であるとは言えない。 3 小括 以上のとおりであるから,本件第2補正は,本願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 したがって,本件第2補正(平成26年12月19日付け手続補正)は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件第2補正(平成26年12月19日付け手続補正)は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定 1 本件補正」の項で「本願発明」として認定した,本件第1補正後の請求項1に記載された通りのものである。 2 本件第1補正に対する当審の判断 そこで,本件第1補正(平成25年12月27日付け手続補正)を検討するに,本件第1補正後の「周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を補正する」という本願発明の発明特定事項は,本件第2補正後の「周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を,信号補正器を用いて補正する」という補正後発明の発明特定事項から,「信号補正器を用いて」という発明特定事項を除いたものであり,両者は「周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って,前記受信されたマルチキャリア信号を補正する」点で共通する。 そうすると,上記「第2 補正却下の決定」において述べたことは本件第1補正にも同様に当てはまり,本件第1補正は,本願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 3 請求人の主張について 請求人は審判請求書において,原査定の拒絶の理由の対象である本件第1補正に関して次のとおり主張している。 『ところで,本願明細書の段落[0009]には,「この方法は,また,推定されたシンボルのなまった値の時間領域においての特定と,なまった値の位置に基づいた,計算されたモデルの値に従う受信されたマルチキャリア信号の補正とを含む。」と開示されております。また,本願明細書の段落[0010]には,「この方法は,また,それぞれの特定されたなまった成分に対しての,なまった成分の対応する周波数における伝送路の推定応答の修正を含む。」と開示されております。なお,下線は,強調のために付したものであります。さらに,本願明細書の段落[0217]?[0223]及び図19D?図19Eには,周波数領域においてなまっていると特定された位置の受信信号が,初期チャネル応答推定の隣接する値に基づいて補正される場合について開示されております。 これらの開示内容に鑑みれば,補正前の本願請求項1に係る発明の「周波数領域において,前記なまった値の位置に基づいて,前記算出されたモデルの値に従って前記受信されたマルチキャリア信号を補正する」という構成は,本願の当初明細書等に開示されていることが明らかであります。したがって,本願発明を上記構成に限定するための手続補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであることから,特許法第17条の2第3項違反の拒絶理由に該当しないと思料致します。』 以下,この主張について検討する。 (1)まず,本願明細書の段落[0009]には,確かに「この方法は,また,推定されたシンボルのなまった値の時間領域においての特定と,なまった値の位置に基づいた,計算されたモデルの値に従う受信されたマルチキャリア信号の補正とを含む。」と開示されているが,該「補正」を「周波数領域において」行うことについては記載も示唆もない。 (2)次に,本願明細書の段落[0010]には,確かに「この方法は,また,それぞれの特定されたなまった成分に対しての,なまった成分の対応する周波数における伝送路の推定応答の修正を含む。」と開示されているが,該「なまった成分の対応する周波数における伝送路の推定応答の修正」が,「なまっていると特定された推定シンボル内の時間領域位置」に基づいて行われることについては記載も示唆もない。 (3)次に,本願明細書の段落[0217]?[0223]及び図19D?図19Eには,請求人の主張するような「周波数領域においてなまっていると特定された位置の受信信号が,初期チャネル応答推定の隣接する値に基づいて補正される場合について」の開示はなく,「受信信号により周波数領域においてなまっていると特定された位置の初期チャネル応答推定が,その隣接する位置の値に基づいて補正される場合について」の開示があると認められるが,この開示における「初期チャネル応答推定」の「補正」についても,上記(2)と同様に「なまっていると特定された推定シンボル内の時間領域位置」に基づいて行われることについては記載も示唆もない。 したがって,審判請求書における請求人の主張は採用できない。 4 むすび 以上に検討したとおり,本件第1補正(平成25年12月27日付け手続補正)は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 したがって,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-05 |
結審通知日 | 2015-08-11 |
審決日 | 2015-08-25 |
出願番号 | 特願2012-132411(P2012-132411) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(H04J)
P 1 8・ 561- Z (H04J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 富澤 哲生 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 坂本 聡生 |
発明の名称 | インパルス雑音の軽減のための方法 |
代理人 | 早川 裕司 |
代理人 | 村雨 圭介 |
代理人 | 佐野 良太 |