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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1309506
審判番号 不服2014-10196  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-02 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2006-287363「ガス状被検物質の受動的捕集器」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 8日出願公開、特開2008-107092〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年10月23日の出願であって、平成26年2月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

その後、当審において、平成27年7月29日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、同年10月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成27年10月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。

「 支持体に、ガス状被検物質の捕集体と、気体分子が分子拡散の原理で通過する拡散体と、がこの順に積層固定されており、
前記捕集体が、前記ガス状被検物質の吸収剤を含浸させたろ紙であり、
前記拡散体が、焼結または溶結した樹脂粒子により形成された平面状多孔質体であり、
前記拡散体において、前記焼結または溶結した前記樹脂粒子の間隙が、連続孔として該拡散体の厚さ方向につながっており、
前記拡散体は、厚さが0.75?1.5mmであり、前記連続孔の孔径が10?100μmであり、および空孔率が20?75%であることを特徴とするガス状被検物質の受動的捕集器。」


第3 当審の平成27年7月29日付け拒絶理由の概要

当審の平成27年7月29日付け拒絶理由のうち、「第3」で提示した拒絶理由の概略は、次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である実公昭58-30220号公報、特開平9-87412号公報、特開2001-183263号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 引用例記載の事項

1 実公昭58-30220号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。

(1)第1頁左欄25?31行
「 大気に開放した窓をもつた箱形容器Aと、容器A内に納めたアルカリ性液または酸性液を含浸した吸水性ろ紙Bと、ろ紙Bが直接大気に曝されぬように容器Aの窓とろ紙Bとの間にろ紙Bに密着して介在させた撥水性ろ紙Cとから成る、風の影響による誤差の小さい酸性または塩基性大気汚染気体物質の濃度測定装置。」

(2)第1頁右欄35行?第2頁左欄2行
「気体は透過するが水溶液は全く透過しない撥水性ろ紙を吸収液と大気との間に吸収液に密着して介在させこれを境界層抵抗体の少くとも1部として使うことにより、装置自体の簡便さを失わずに風の影響を取除くことができる」

(3)第2頁左欄24?32行
「 撥水性ろ紙としては最近開発された弗素樹脂製たとえば4弗化エチレン樹脂製のものが推奨される。孔径の小さいたとえば5μ程度のものを使えば大気中に存在する粒子状物質に付着したイオンの影響も避けることができる。厚さおよび空隙率は測定対象物質、環境条件その他の条件を基に適宜定めることができる。場合により境界層抵抗体としてさらに他の材料を介在させることもできる。」

(4)第2頁右欄2?9行
「 吸水性ろ紙Bとしては普通のセルロース製ろ紙を使つた。トリエタノールアミン(TEA)20vol%水溶液200μlを吸収液として含浸させた。
撥水性ろ紙Cとしては4弗化エチレン樹脂製ろ紙(東洋濾紙社製品PF#1、厚さ1mm、孔径5μ、空隙率72%)を使つた。このろ紙Cは厚さを調整する意味で1?5枚の範囲で重ねて使い実験を行つた。」

(5)第3頁左欄4?5行
「(d)撥水性ろ紙をもつ装置では試料が分子拡散によつて輸送されている」

(6)第1図




(7)上記(6)に摘記した第1図には、符号4が付された吸水性ろ紙Bが、符号1が付された箱形容器A内に、その底部に密着するように納められていること、及び、符号5が付された撥水性ろ紙Cが箱形容器Aの窓2の周辺部に密着していることが示されている。

2 引用例1に記載された発明の認定

上記1(1)ないし(7)を含む引用例1全体の記載を総合すると、引用例1には、

「 大気に開放した窓をもつた箱形容器Aと、箱形容器A内にその底部に密着するように納めた、トリエタノールアミン20vol%水溶液を吸収液として含浸したセルロース製ろ紙と、セルロース製ろ紙が直接大気に曝されぬように箱形容器Aの窓とセルロース製ろ紙との間に箱形容器Aの窓の周辺部及びセルロース製ろ紙に密着して介在させた4弗化エチレン樹脂製ろ紙とから成り、前記4弗化エチレン樹脂製ろ紙は、厚さ1mm、孔径5μ、空隙率72%である、風の影響による誤差の小さい酸性大気汚染気体物質の濃度測定装置。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 特開平9-87412号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐薬品性,耐熱性,通気性,摺動性等の諸特性を備え、各種フィルターや摺動部材等として使用されるポリオレフィン系多孔質シートに関するものである。」

(2)「【0002】
【従来の技術】従来から、多孔質シートは、例えば、熱可塑性樹脂の粉体を成形型(保形具)に充填し、この成形型を上記樹脂の融点以上に加熱するという焼結法により作製されている。これによれば、熱可塑性樹脂の粉体粒子相互の接触部分が溶融して連結するとともに、上記粉体粒子相互の隙間が連続孔となって多孔質体が形成される。ついで、この多孔質体を切削等によりシート状に成形することにより多孔質シートが作製される。
【0003】多孔質シートの形成材料である熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンが一般的に使用されている。また、本発明者らは、多孔質シートの性能向上を目的として、超高分子量ポリエチレンの粉体を用いる製法(特公平5-66855号公報)を開発し、連続孔が均一に分布する多孔質シートを作製することを可能とした。」

(3)「【0006】本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、多孔質シートの一般的諸特性を備えることはもちろん、そのなかでも特に機械的強度および耐熱性に優れ、かつ気孔率のバラツキが少ない多孔質シートの提供をその目的とする。」

(4)「【0022】このようにして得られる本発明の多孔質シートの気孔率は、通常、10?60%、好ましくは、20?50%である。また、孔の孔径は、通常10?200μmであり、好ましくは、20?100μmである。上記多孔質シートの気孔率と孔径は、原料となるポリオレフィン粉体の粒子径や焼結の際の加圧程度により調整することができる。また、多孔質シートの厚みは、その用途等により適宜決定されるものであるが、好ましくは50?5000μmである。」

(5)「【0026】
【実施例1】内径300mmの通気性円筒状成形型(保形具)に、超高分子量ポリプロピレン粉体(MI:0.01g/10分,分子量:200万,平均粒径:90μm)を5000g充填し、この粉体を60g/cm^(2) で加圧した。他方、開閉バルブ付き水蒸気導入管および排気管を備えた耐圧容器を準備した。そして、上記成形型を加圧状態で上記耐圧容器に入れ、水蒸気導入管の開閉バルブを閉めた状態で、上記排気管の先端に接続されている真空ポンプを作動させて耐圧容器内の脱気を行い、雰囲気圧25mmHgまで減圧した。そして、真空ポンプを停止し、水蒸気導入管の開閉バルブを開放して水蒸気(温度179℃,9気圧)を耐圧容器内に導入し、2時間の加熱処理(焼結処理)を行った。その後、上記成形型を温度25℃まで冷却し、丸棒状の多孔質体を得た。そして、この丸棒状の多孔質体を成形型から取り出し、これを旋盤を用いて周方向に沿って厚み200μmに切削し多孔質シートを作製した。」

(6)「【0028】
【実施例2】実施例1と同じ超高分子量ポリプロピレン3000gと、超高分子量ポリエチレン(分子量400万,平均粒径100μm)2000gをヘンシェルミキサーを用いて2分間混合した。そして、この混合物を用い、実施例1と同様にして厚み200μmの多孔質シートを作製した。」

4 特開2001-183263号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「【0012】
【発明の実施の形態】本発明のパッシブサンプリング用吸着装置の容器形状のフィルタは、フィルタの通気率が通気率が40?100%で、吸着剤の平均粒子径が80?300μmであるものが用いられる。吸着剤の粒子形状は球形であることが好ましい。
【0013】容器形状のフィルタの形状は、フィルタ内部に吸着剤が充填できるものであれば、カップ状、皿状等いずれでもよいが、シリンジとの連結しやすさの点でカップ状が好ましい。また、フィルタの材質は、被測定化学物質を吸着しないものであれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル又はフッ素樹脂の粒子を燒結あるいは溶結して作成・成形されたものが通気性を調整することが容易であるので好ましい。容器形状のフィルタの開口部には、好ましくは溶出用のシリンジが取り外し可能な状態で連結されている。溶出用のシリンジは必ずしも連結されてなくてもよいが、連結されていない場合は、吸着剤を取り出し、ろ過器、ソックスレー等の溶出、濃縮用の別器具を用いなければならず、効率よく被測定化学物質を溶出、濃縮するためにはシリンジが連結されていることが望ましい。また、シリンジ端部には吸着剤が漏れないように孔径が5?75μmの多孔質のフリッツが固定されていることが好ましい。」

(2)「【0017】フィルタ1は、フィルタの通気率が40?100%、より好ましくは50?100%であることが重要で、40%未満であると、被測定化学物質の吸着量が著しく低下する。100%を超える場合は分子拡散以外の力、たとえば風等の影響を受けていると考えられ、測定バラツキが大きくなり不適当である。通気率の測定は、以下の方法で行うことができる。サンプリングポンプ(柴田、MP-603T)の吸引口のアダプタ(長さ3cmm、シリコンチューブ)にシリンジ(内径:4.6φ、長さ50mm、ツベルクリン用)の先端を差し込み、初期流量Aリットル/min(2.0?3.0リットル/min)で空気を吸引する。この状態で、開口部にフィルタを差し込み、その時の吸気量B リットル/minを読む。通気率はB/A×100として求める。また、フィルタは、分子拡散特性を利用して被測定化学物質が通過できるようになっていれば、その材質は、ろ紙、ろ布、硝子、テフロン及びその他の樹脂粒子を燒結あるいは溶結によって得られる多孔性材料等何れを用いてもよく、また、その細孔径についても、吸着剤がもれない大きさであれば特に限定しないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、フッ素樹脂の粒子を燒結あるいは溶結して作製・成形されるフィルタは通気性を調整することが容易であり、結果として高い吸着率を得ることが可能となるので好ましい。」


第5 本願発明と引用発明との対比

1 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「箱形容器A」がその底部に密着するに納められたセルロース製ろ紙を支持することは明らかであるから、引用発明の「箱形容器A」は、本願発明の「支持体」に相当する。

(2)
ア 引用発明の「酸性大気汚染気体物質」は、本願発明の「ガス状被検物質」に相当する。

イ 引用発明の「吸収液として」の「トリエタノールアミン20vol%水溶液」が、「酸性大気汚染気体物質」を吸収するためのものであることは明らかであるから、引用発明の「吸収液として」の「トリエタノールアミン20vol%水溶液」は、本願発明の「ガス状被検物質の吸収剤」に相当する。

ウ よって、引用発明の「トリエタノールアミン20vol%水溶液を吸収液として含浸したセルロース製ろ紙」は、本願発明の「ガス状被検物質の吸収剤を含浸させたろ紙であ」る「ガス状被検物質の捕集体」に相当する。

(3)引用例1の上記摘記事項1(5)の記載によれば、引用発明の「4弗化エチレン樹脂製ろ紙」を気体分子が分子拡散の原理で通過することは明らかであるから、引用発明の「4弗化エチレン樹脂製ろ紙」は、本願発明の「気体分子が分子拡散の原理で通過する拡散体」に相当する。

(4)
ア 引用発明において、「トリエタノールアミン20vol%水溶液を吸収液として含浸したセルロース製ろ紙」が「箱形容器A内にその底部に密着するように納め」られており、「箱形容器Aの窓とセルロース製ろ紙との間に箱形容器Aの窓の周辺部及びセルロース製ろ紙に密着して」「4弗化エチレン樹脂製ろ紙」が「介在」していることから、「箱形容器A」に「セルロース製ろ紙」と「4弗化エチレン樹脂製ろ紙」とが積層固定されていることは明らかである。

イ よって、引用発明において、「箱形容器A内にその底部に密着するように」「トリエタノールアミン20vol%水溶液を吸収液として含浸したセルロース製ろ紙」が「納め」られ、、「箱形容器Aの窓とセルロース製ろ紙との間に箱形容器Aの窓の周辺部及びセルロース製ろ紙に密着して」「4弗化エチレン樹脂製ろ紙」が「介在」していることは、本願発明の「支持体に、ガス状被検物質の捕集体と、気体分子が分子拡散の原理で通過する拡散体と、がこの順に積層固定されて」いることに相当する。

(5)引用発明において、4弗化エチレン樹脂製ろ紙の厚さが1mmであり、空隙率が72%であることは、本願発明において、拡散体の厚さが0.75?1.5mmであり、空孔率が20?75%であることと一致する。

(6)引用発明の「濃度測定装置」において、「トリエタノールアミン20vol%水溶液を含浸したセルロース製ろ紙」が酸性大気汚染気体物質を受動的に捕集することは明らかであるから、引用発明の「濃度測定装置」は、本願発明の「受動的捕集器」に相当する。

2 一致点及び相違点

よって、本願発明と引用発明とは、

「 支持体に、ガス状被検物質の捕集体と、気体分子が分子拡散の原理で通過する拡散体と、がこの順に積層固定されており、
前記捕集体が、前記ガス状被検物質の吸収剤を含浸させたろ紙であり、
前記拡散体は、厚さが0.75?1.5mmであり、および空孔率が20?75%であるガス状被検物質の受動的捕集器。」

の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
拡散体が、本願発明は、「焼結または溶結した樹脂粒子により形成された平面状多孔質体であり」、「前記焼結または溶結した前記樹脂粒子の間隙が、連続孔として該拡散体の厚さ方向につながっており」、「前記連続孔の孔径が10?100μmであ」るのに対し、引用発明は、「孔径5μ」の「4弗化エチレン樹脂製ろ紙」である点。


第6 当審の判断

1 上記相違点について検討する。

ガス状被検物質の受動的捕集器において、ガス状被検物質を通過させる部材は、拡散フィルターとして知られている(例えば、特開平10-300647号公報、特開2004-191120号公報等参照。)。

ここで、焼結または溶結した樹脂粒子により形成され、前記焼結または溶結した樹脂粒子の間隙が連続孔として厚さ方向につながった平面状多孔質体を各種フィルターとして用いることは、引用例2の段落【0001】(上記第4の3(1))、【0002】(上記第4の3(2))に記載されているように本願出願前に周知の事項である。

しかも、引用例3には、パッシブサンプリング用吸着装置(本願発明の「受動的捕集器」に相当。)に関して、段落【0017】(上記第4の4(2))に、フィルタの通気率と風の影響との関連性を指摘する旨の記載、及び、フィルタの材質として、ろ紙と、樹脂粒子を焼結あるいは溶結して得られる多孔性材料とが、同等に用いられうる旨の記載があり、段落【0016】(上記第4の4(1))に、通気性を調整する観点では、樹脂粒子を焼結あるいは溶結して成形したフィルタが好ましい旨の記載もある。

さらに、上記第4の3(1)に摘記した引用例1の記載によれば、引用発明の4弗化エチレン樹脂製ろ紙には、気体は透過するが水溶液は全く透過しない機能が求められるものであること、また、一般に、外界に露出する部材には、接触による変形防止のために適度な強度が求められるものであること、並びに、厚さの薄い部材には、取扱いの容易性及び変形防止の観点から適度な強度を有することが好ましいこと、に鑑みれば、引用発明において、4弗化エチレン樹脂製ろ紙と同様に撥水性を有し、変形のしにくい樹脂により形成された拡散フィルターを用いることには、動機付けがあるものといえる。

してみると、「風の影響による誤差の小さい酸性大気汚染気体物質の濃度測定装置」である引用発明において、酸性大気汚染気体物質を通過させるが水溶液は透過しない「4弗化エチレン樹脂製ろ紙」に代えて、周知の「焼結または溶結した樹脂粒子により形成され、前記焼結または溶結した樹脂粒子の間隙が連続孔として厚さ方向につながった平面状多孔質体」を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ここで、拡散フィルターの厚さ、空隙率及び孔径が、いずれも気体の透過性に影響を及ぼす要素であり、それによりガス状物質の検出感度等に影響を及ぼすことは、本願出願前における技術常識である。

また、引用発明の4弗化エチレン樹脂製ろ紙の孔径は5μであるが、引用文献1の「孔径の小さいたとえば5μ程度のものを使えば大気中に存在する粒子状物質に付着したイオンの影響も避けることができる。」(上記第4の1(3))との記載によれば、「粒子状物質に付着したイオンの影響」を避けることは、引用発明に求められる必須の条件であるとは認められない。

そして、「風の影響を取り除く」という引用発明の本来の課題、引用例1の「厚さおよび空隙率は測定対象物質、環境条件その他の条件を基に適宜定めることができる。」(上記第4の1(3))との記載に鑑みれば、引用発明において、本来の課題である風の影響を取り除くことに最重点を置き、粒子状物質に付着したイオンの影響に対しては許容範囲を広げるべく最適化を施し、拡散体の厚さ及び空隙率に加えて孔径をも設定し、5μよりも大きい孔径を採用することに、阻害要因があるとはいえない。

よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

2 本願発明の奏する作用効果

本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明で特定される拡散体の「厚さが0.75?1.5mmであり、前記連続孔の孔径が10?100μmであり、および空孔率が20?75%であること」により、引用例1ないし3から予測される程度を超えた効果が奏されることを裏付けるような実施例は記載されていない。
よって、本願発明によってもたらされる効果は、引用例1ないし3の記載事項及び本願出願前に周知の事項から当業者が予測し得る程度のものである。

3 まとめ

以上のとおりであり、本願発明は、引用発明、引用例1ないし3の記載事項、及び、本願出願前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-02 
結審通知日 2015-11-04 
審決日 2015-11-17 
出願番号 特願2006-287363(P2006-287363)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土岐 和雅  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 麻生 哲朗
渡戸 正義
発明の名称 ガス状被検物質の受動的捕集器  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 三和 晴子  
代理人 三和 晴子  
代理人 渡辺 望稔  

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