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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1309515 |
審判番号 | 不服2014-12537 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-30 |
確定日 | 2016-01-04 |
事件の表示 | 特願2011-194382「高効率及び高輝度を有する積層型有機発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日出願公開、特開2012- 18931〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2005年4月7日を国際出願日とする特願2007-507245号(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年4月9日、韓国)の一部を平成23年9月6日に新たな特許出願としたものであって、平成25年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年11月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年2月26日付けで拒絶査定され、これを不服として、同年6月30日に審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成26年6月30日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年6月30日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、平成25年11月7日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲についてするものであって、そのうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1を削除するとともに、本件補正前の請求項2に、 (1) 「【請求項1】 積層型有機発光素子であって、 外部電源が接続された陽極と、 外部電源が接続された陰極と、 前記陽極と前記陰極との間に位置する2以上の発光部と、及び、 前記2以上の発光部との間に位置してなる内部電極とを備えてなり、 前記各発光部が、発光層を備えてなり、 前記内部電極が、仕事関数が4.5eV以下である、金属、その合金及びその酸化物よりなる群から選ばれる物質よりなる単一層のものであり、 前記2以上の発光部の少なくとも一つが、電子親和度が4eV以上である有機物を含有する有機物層を備えてなり、 前記有機物層が、前記2以上の発光部の少なくとも一つにおける前記発光層と、前記内部電極との間に形成されてなることを特徴とする、積層型有機発光素子。 【請求項2】 前記電子親和度が4eV以上である有機物は、下記式1で表わされる化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の積層型有機発光素子。 【化1】 [式中、R_(1)?R_(6)はそれぞれ水素、ハロゲン原子、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO_(2))、スルホニル(-SO_(2)R)、スルホキシド(-SOR)、スルホンアミド(-SO_(2)NR_(2))、スルホン酸塩(-SO_(3)R)、トリフルオロメチル(-CF_(3))、エステル(-COOR)、アミド(-CONHRまたは-CONRR’)、置換または非置換の直鎖または分枝鎖のC_(1)-C_(12)アルコキシ、置換または非置換の直鎖または分枝鎖のC_(1)-C_(12)アルキル、置換または非置換の芳香族または非芳香族の異型環、置換または非置換のアリール、置換または非置換のモノまたはジアリールアミン、及び置換または非置換のアラルキルアミンよりなる群から選ばれ、前記R及びR’はそれぞれ置換または非置換のC_(1)-C_(60)のアルキル、置換または非置換のアリール、及び置換または非置換の5-7元異型環よりなる群から選ばれる。]」 とあったものを、新たな請求項1として (2) 「【請求項1】 積層型有機発光素子であって、 外部電源に接続された陽極と、 外部電源に接続された陰極と、 前記陽極と前記陰極との間に位置する2以上の発光部と、及び、 前記2以上の発光部との間に位置してなる内部電極とを備えてなり、 前記各発光部が、発光層を備えてなり、 前記内部電極が、仕事関数が4.5eV以下である、金属及び前記金属の合金からなる群から選ばれる物質よりなる単一層のものであり、 前記2以上の発光部の少なくとも一つが、電子親和度が4eV以上である有機物を含有する有機物層を備えてなり、 前記有機物層が、前記2以上の発光部の少なくとも一つにおける前記発光層と、前記内部電極との間に形成されてなり、かつ、 前記電子親和度が4eV以上である有機物が、下記式1で表わされる化合物であることを特徴とする、積層型有機発光素子。 【化1】 [式中、R_(1)?R_(6)はそれぞれ水素、ハロゲン原子、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO_(2))、スルホニル(-SO_(2)R)、スルホキシド(-SOR)、スルホンアミド(-SO_(2)NR_(2))、スルホン酸塩(-SO_(3)R)、トリフルオロメチル(-CF_(3))、エステル(-COOR)、アミド(-CONHRまたは-CONRR’)、置換または非置換の直鎖または分枝鎖のC_(1)-C_(12)アルコキシ、置換または非置換の直鎖または分枝鎖のC_(1)-C_(12)アルキル、置換または非置換の芳香族または非芳香族の異型環、置換または非置換のアリール、置換または非置換のモノまたはジアリールアミン、及び置換または非置換のアラルキルアミンよりなる群から選ばれ、前記R及びR’はそれぞれ置換または非置換のC_(1)-C_(60)のアルキル、置換または非置換のアリール、及び置換または非置換の5-7元異型環よりなる群から選ばれる。]」 とするものである(下線は補正により追加された事項を示す。)。 2 補正の目的の適否及び新規事項の有無 (1)上記請求項1に対する補正のうち、「外部電源が接続された陽極」及び「外部電源が接続された陰極」を、それぞれ「外部電源に接続された陽極」及び「外部電源に接続された陰極」とする補正は、特許法17条の2第5項3号に掲げられた誤記の訂正を目的とするものであり、また、上記補正は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、願書に最初に添付された明細書を「当初明細書」といい、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面をあわせて「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてした補正であって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 (2)上記請求項1に対する補正のうち、「金属、その合金及びその酸化物よりなる群」を、「金属及び前記金属の合金からなる群」とする補正は、当初明細書等の【請求項1】、【0035】ないし【0037】の記載を根拠にして、本件補正前の「内部電極」の物質を限定するものである。 (3)上記(2)の補正は、本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、本件補正の前後で請求項1(本件補正前の請求項2)に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、上記(2)の補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされた補正であって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 3 独立特許要件の検討 (1)引用例の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由で「引用例(1)」として引用され、本願の優先権主張の日より前(以下「優先日前」という。)に頒布された刊行物である、特開平11-329749号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。) (ア)「【請求項1】 基板上に少なくとも第1の電極と、それぞれ発光機能を有する層を含有する2種以上の有機層と、第2の電極とを順次有し、 前記有機層の間には、電気的に浮遊している中間電極を有する構成素子の集合体である有機EL表示装置。」 (イ)「【0015】 【発明の実施の形態】本発明の有機EL表示装置は、例えば図1に示すように、基板1上に少なくとも第1の電極2と、それぞれ発光機能を有する層を含有する2種以上の有機層3a,3bと、第2の電極5とを順次有し、前記有機層3aと有機層3bとの間には、電気的に浮遊している中間電極4を有する構成素子の集合体である。」 (ウ)「【0046】中間電極は、発光波長帯域、通常350?800nm、特に各発光光に対する光透過率が60%以上、好ましくは80%以上、特に90%以上であることが好ましい。通常、発光光は中間電極を通って取り出されるため、その透過率が低くなると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度が得られなくなる傾向がある。 【0047】中間電極は、上記光透過率を確保しうるものであれば下記の金属系材料を用いることもできる。この場合には、仕事関数の小さい物質が好ましく、例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系としては、例えばAg・Mg(Ag:0.1?50at%)、Al・Li(Li:0.01?14at%)、In・Mg(Mg:50?80at%)、Al・Ca(Ca:0.01?20at%)等が好ましい。また、特にこれらの酸化物を用いることが好ましい。中間電極を酸化物とすることにより、ITO等の酸化物を第1の電極に用いると、対になった酸化物で有機層を囲むようになり、耐候性が向上する。」 (エ)「【0050】なお、中間電極に接する有機層には、後述の有機物や、好ましくはこれに替え、あるいはこれに加えて電子注入性、またはホール輸送性材料であって、これらの電極材料と相性のよい物質を適宜選択して用いることが好ましい。このような有機物質として、例えば、ポリチオフェンや、銅フタロシアニン等を挙げることができる。」 (オ)「【0051】第1の電極は、通常ホール注入電極として機能する。この第1の電極は、通常、基板側から発光した光を取り出す構成であるため、上記中間電極と同様に、透明ないし半透明な電極が好ましい。透明電極としては、上記中間電極同様にITO、IZO、ZnO、SnO2、In2O3等が挙げられ、好ましくはITO、IZOである。」 (カ)「【0054】第2の電極は、通常、電子注入電極として機能する。電子注入電極としては、低仕事関数の物質が好ましく、上記中間電極で例示したもの等が挙げられる。なお、電子注入電極は蒸着法やスパッタ法で形成することが可能である。」 (キ)「 」 (ク)上記(ア)ないし(キ)から、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「基板上に少なくとも第1の電極と、それぞれ発光機能を有する層を含有する2種以上の有機層と、第2の電極とを順次有し、 前記有機層の間には、電気的に浮遊している中間電極を有する構成素子の集合体である有機EL表示装置であって、 前記中間電極は、発光波長帯域に対する光透過率が60%以上であり、前記光透過率を確保しうるものであれば金属系材料を用いることができ、 前記金属系材料として、仕事関数の小さい物質が好ましく、例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系を用いることが好ましく、 前記中間電極に接する有機層には、電子注入性、またはホール輸送性材料であって、電極材料と相性のよい物質を適宜選択して用いることが好ましく、 前記第1の電極は、通常、ホール注入電極として機能し、前記第2の電極は、通常、電子注入電極として機能する、 有機EL表示装置。」 (以下「引用発明1」という。) イ 原査定の拒絶の理由で「引用例(2)」として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2003-519432号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 陽極と陰極との間に下記の化学式(1)で示される有機化合物を含む層が少なくとも一つ以上挿入される有機発光素子。 【化1】 上記化学式(1)において、Rは各々独立的にまたは同時に水素原子、炭素数1?12の炭化水素、ハロゲン、アルコキシ基、アリールアミン基、エステル基、アミド、芳香族炭化水素、複素環式化合物、ニトロ基、ニトリル(-CN)基からなる群から選択される。 【請求項2】 前記化学式(1)で示される有機化合物を含む層は、正孔注入層、正孔移送層、または正孔注入移送層である請求項1に記載の有機発光素子。」 (イ)「【0058】 前記実施例及び比較例に示されているように、化学式(1)を満たす一例である化学式(1a)の化合物はp-型有機質半導体的性質を有し、p-型半導体的性質を要求する正孔注入層に使用された時に有機発光素子の駆動電圧を下げることができ、適切な他の物質との混合物を形成した時にその相対的比率に従って低駆動電圧を維持することができる。 【0059】 さらに、前記素子の半減期が従来に最も安定性を維持することができることが知られているフタロシアニン銅錯化合物より安定していることが確認された。このような現象は本発明の化学式(1)の化合物がより高い正孔注入能力及び正孔移送能力を有し、電極との安定した界面を形成することができることを示す。 【0060】 従って、前記化合物は正孔注入または正孔移送の特性が要求される他の素子に応用できることが分かる。 【0061】 【発明の効果】 本発明の素子はp-型半導体的性質を有する有機化合物を含有する層を含むので発光寿命を大いに向上させることができ、低い駆動電圧を有することができる。 以上、好適な実施形態を参照しながら本発明を具体的に述べたが、当業者であれば、添付の請求項に記載した本発明の精神及び技術的範囲から逸脱することなく、種々の改良と置換が可能であることを理解するであろう。」 (ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。 「陽極と陰極との間に下記の化学式(1)で示される有機化合物を含む層が少なくとも一つ以上挿入される有機発光素子であって、 【化1】 上記化学式(1)において、Rは各々独立的にまたは同時に水素原子、炭素数1?12の炭化水素、ハロゲン、アルコキシ基、アリールアミン基、エステル基、アミド、芳香族炭化水素、複素環式化合物、ニトロ基、ニトリル(-CN)基からなる群から選択され、 前記化学式(1)で示される有機化合物を含む層は、正孔注入層、正孔移送層、または正孔注入移送層であり、 上記化学式(1)の化合物は、高い正孔注入能力及び正孔移送能力を有し、電極との安定した界面を形成することができるものであり、 発光寿命を向上させることができ、低い駆動電圧を有する、 有機発光素子。」 (以下、「引用発明2」という。) (2)対比 本願補正発明と、引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「第1の電極」は、「通常、ホール注入電極として機能」するものであるから、本願補正発明の「陽極」に相当し、引用発明1の「第2の電極」は、「通常、電子注入電極として機能」するものであるから、本願補正発明の「陰極」に相当する。有機EL表示装置において、通常電源は装置外部にあり、引用発明1においてもこれを否定すべき記載はないから、これらの電極が、「外部電源に接続された」ものであることは明らかである。 イ 引用発明1の「それぞれ発光機能を有する層を含有する2種以上の有機層」は、本願補正発明の「2以上の発光部」に相当し、引用発明1の「発光機能を有する層」は、本願補正発明の「発光層」に相当する。そして、引用発明1の「構成素子」は、「それぞれ発光機能を有する層を含有する2種以上の有機層」(2以上の発光部)を有しており、前記(1)ア(キ)で摘記した図面からみて各層は「積層」されているから、本願補正発明の「積層型有機発光素子」に相当する。 ウ 引用発明1の「中間電極」は、本願補正発明の「内部電極」に相当する。そして、引用発明1の「K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr」はいずれも仕事関数が4.5eV以下の金属である(特開2005-135624号公報の【0062】の記載、本願当初明細書等の【0037】の記載、参照。)から、引用発明1の「中間電極は、発光波長帯域に対する光透過率が60%以上であり、前記光透過率を確保しうるものであれば金属系材料を用いることができ、前記金属系材料として、仕事関数の小さい物質が好ましく、例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系を用いること」は、本願補正発明の「内部電極が、仕事関数が4.5eV以下である、金属及び前記金属の合金からなる群から選ばれる物質よりなる単一層のもの」に相当する。 エ 引用発明1の「中間電極に接する有機層」は、本願補正発明の「前記2以上の発光部の少なくとも一つにおける前記発光層と、前記内部電極との間に形成されて」いる「有機物層」に相当する。 オ 上記アないしエから、本願補正発明と引用発明1とは、 「積層型有機発光素子であって、 外部電源に接続された陽極と、 外部電源に接続された陰極と、 前記陽極と前記陰極との間に位置する2以上の発光部と、及び、 前記2以上の発光部との間に位置してなる内部電極とを備えてなり、 前記各発光部が、発光層を備えてなり、 前記内部電極が、仕事関数が4.5eV以下である、金属及び前記金属の合金からなる群から選ばれる物質よりなる単一層のものであり、 前記2以上の発光部の少なくとも一つが、有機物層を備えてなり、 前記有機物層が、前記2以上の発光部の少なくとも一つにおける前記発光層と、前記内部電極との間に形成されてなる、積層型有機発光素子。」 である点で一致し、次の点で相違している。 相違点:前記「有機物層」が、 本願補正発明では、「電子親和度が4eV以上である有機物を含有」し、かつ、該電子親和度が4eV以上である有機物が、「下記式1で表わされる化合物 【化1】 [式中、R_(1)?R_(6)はそれぞれ水素、ハロゲン原子、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO_(2))、スルホニル(-SO_(2)R)、スルホキシド(-SOR)、スルホンアミド(-SO_(2)NR_(2))、スルホン酸塩(-SO_(3)R)、トリフルオロメチル(-CF_(3))、エステル(-COOR)、アミド(-CONHRまたは-CONRR’)、置換または非置換の直鎖または分枝鎖のC_(1)-C_(12)アルコキシ、置換または非置換の直鎖または分枝鎖のC_(1)-C_(12)アルキル、置換または非置換の芳香族または非芳香族の異型環、置換または非置換のアリール、置換または非置換のモノまたはジアリールアミン、及び置換または非置換のアラルキルアミンよりなる群から選ばれ、前記R及びR’はそれぞれ置換または非置換のC_(1)-C_(60)のアルキル、置換または非置換のアリール、及び置換または非置換の5-7元異型環よりなる群から選ばれる。]」 であるのに対し、 引用発明1では、電子注入性、またはホール輸送性材料であって、これらの電極材料と相性のよい物質を適宜選択して用いるのであって、その物質が特定されていない点。 (3)判断 ア 引用発明2の「化学式(1)で示される有機化合物」は、本願補正発明の「式1で表される化合物」に相当し、したがって「電子親和度が4eV以上である有機物」である。 イ 引用発明2は、「有機発光素子」に関するものであり、引用発明1と共通の技術分野に属する。そして、有機発光素子において発光寿命の向上及び駆動電圧の低減は周知の課題であるから、引用発明1において、中間電極に接する有機層に用いる物質(ホール輸送性材料であって電極材料と相性のよい物質を適宜選択して用いることが好ましい)として、高い正孔注入能力及び正孔移送能力(「ホール輸送能力」と同義)を有し、電極との安定した界面を形成する化合物である、引用発明2の化学式(1)で示される有機化合物を採用し、よって相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到し得たことである。 ウ そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得た範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ まとめ 上記アないしウから、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 補正の却下の決定についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成25年11月7日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?8によって特定されるものであるところ、そのうち、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(1)に本件補正前の請求項2として記載したとおりのものである。 2 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び引用例2の記載事項は、上記第2の[理由]3(1)及び(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願補正発明は、上記第2[理由]2のとおり、本願補正発明の誤記を訂正するとともに発明特定事項を限定したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2[理由]3のとおり、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-03 |
結審通知日 | 2015-08-04 |
審決日 | 2015-08-21 |
出願番号 | 特願2011-194382(P2011-194382) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 濱野 隆 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 大瀧 真理 |
発明の名称 | 高効率及び高輝度を有する積層型有機発光素子 |
代理人 | 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ |