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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1309544
審判番号 不服2014-21078  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-17 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2011- 67658「冷蔵庫、機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-202612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月25日の出願であって、平成26年8月21日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成26年10月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年10月17日の手続補正の補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年10月17日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成26年3月25日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の
「圧縮機、放熱パイプ、膨脹装置、冷却器、吸入パイプを順に接続して構成される冷凍サイクルと、内箱と外箱の間に断熱材が配設され、前面側に複数の貯蔵室を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の背面の上部あるいは下部に設けられ、前記圧縮機が収納された機械室と、前記断熱箱体の背面あるいは天井面に設けられ、前記圧縮機を制御する制御基板を収納する制御基板箱と、前記制御基板に搭載されたトランジスタやダイオードなどの半導体部品と、外包材の一方の面にアルミ箔を配した複層フィルムを使用し、前記外包材の他方の面にはアルミニウム蒸着が施された複層フィルムを使用した板状の真空断熱材と、を備え、前記半導体部品にワイドバンドギャップ半導体を使用し前記制御基板箱の背面あるいは周囲に前記真空断熱材のアルミ箔を配した複層フィルム側が配置されることを特徴とする冷蔵庫。」を
「圧縮機、放熱パイプ、膨脹装置、冷却器、吸入パイプを順に接続して構成される冷凍サイクルと、内箱と外箱の間に断熱材が配設され、前面側に複数の貯蔵室を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の背面の上部あるいは下部に設けられ、前記圧縮機が収納された機械室と、前記断熱箱体の背面あるいは天井面に設けられ、前記圧縮機を制御する制御基板を収納する制御基板箱と、前記制御基板に搭載されたトランジスタやダイオードなどの半導体部品と、外包材の一方の面にアルミ箔を配した複層フィルムを使用し、前記外包材の他方の面にはアルミニウム蒸着が施された複層フィルムを使用した板状の真空断熱材と、を備え、前記半導体部品にワイドバンドギャップ半導体を使用し、前記制御基板に搭載された前記半導体部品が放熱補助部品を介して前記制御基板箱内の底面と熱的に接続され、前記制御基板箱の背面あるいは周囲に前記真空断熱材のアルミ箔を配した複層フィルム側が配置されている冷蔵庫。」と補正した。(下線は、補正された箇所を示す。)

そして、この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である制御基板について、「半導体部品が放熱補助部品を介して前記制御基板箱内の底面と熱的に接続され」ることを限定するものであり、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。

よって、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的とするものである。

2 独立特許要件についての検討
(1)そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開2009-24921号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

(ア)「【請求項1】
外箱と内箱とによって形成される空間に断熱材を配置してなる冷蔵庫において、
前記外箱の一部に自己発熱部品を収納するための凹部を設け、前記凹部の内箱側への投影面の一部に真空断熱材を配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
外箱と内箱とによって形成される空間に断熱材を配置し、前記外箱の天面内面に接するように配置された放熱パイプと、前記外箱天面部の背面側又は背面部に制御基板や電源基板等の電気部品,圧縮機等の自己発熱部品等のいずれか又は両方を収納するための凹部を設けた冷蔵庫において、前記放熱パイプと前記凹部の内箱側への投影面の一部に真空断熱材を配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
前記凹部が不燃性を有する合成樹脂材料から成る成形品であることを特徴とする請求項1と2のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記真空断熱材が、前記凹部と前記外箱の鋼板部分に跨るように立体的な形状にしたことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記真空断熱材が、少なくとも無機繊維からなる芯材とガスバリヤ性の外包材からなり、前記芯材の厚みを6?15mmとしたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項6】
外箱と内箱とによって形成される空間に断熱材を配置し、前記外箱の天面部に放熱パイプ,凝縮器のいずれか又は両方を配置し、前記外箱の天面背面側又は背面部に制御基板や電源基板等の電気部品,圧縮機等の自己発熱部品のいずれか又は両方を配置した冷蔵庫において、
前記放熱パイプ,凝縮器のいずれか又は両方及び前記自己発熱部品の内箱側投影面の一部に立体形状の真空断熱材を配置したことを特徴とする冷蔵庫。」

(イ)「【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するため、外箱と内箱とによって形成される空間に断熱材を配置してなる冷蔵庫において、前記外箱の一部に自己発熱部品を収納するための凹部を設け、前記凹部の断熱材側の面に真空断熱材を配置したことにより、制御基板等の自己発熱部品による庫内への熱漏洩を抑制するものである。自己発熱部品のサイズによっては、前記凹部の深さが大きくなることがあり、この場合、冷蔵庫箱体の断熱厚が薄くなり庫内への熱漏洩が増加するため、真空断熱材を配置することで断熱性能を改善することができる。」

(ウ)「【0024】
(実施の形態1)
図1に示す実施の形態1を示す冷蔵庫は、箱体10内に冷蔵室14と冷凍室15a,15bと野菜室16をそれぞれ区画形成している。冷蔵室14と冷凍室15a,15b及び野菜室16の配置については特にこれに限定するものではない。
【0025】
箱体10は、外箱11と内箱12とを備え、外箱11と内箱12とによって形成される空間に断熱部を設けて箱体10内の各貯蔵室と外部とを断熱している。この外箱11側または前記内箱12側のいずれかに真空断熱材40を配置し、真空断熱材40以外の空間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材13を充填してある。真空断熱材40の配置は、天面,側面,背面,底面,扉面等であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
また、冷蔵庫の冷蔵室14,冷凍室15a,15b,野菜室16等の各室を所定の温度に冷却するために冷凍室15a,15bの背側には冷却器18が備えられており、この冷却器18と圧縮機20とを含み図示しない凝縮機,キャピラリーチューブとを接続し、冷凍サイクルを構成している。冷却器18の上方にはこの冷却器18にて冷却された冷気を冷蔵庫内に循環して所定の低温温度を保持する送風機17が配設されている。」

(エ)「【0029】
また、箱体10の天面後方部には冷蔵庫の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品31を収納するための凹部30が形成されており、電気部品31を覆うカバー32が設けられている。カバー32の高さは外観意匠性と内容積確保を考慮して、外箱11の天面とほぼ同じ高さになるように配置している。特に限定するものではないが、カバー32の高さが外箱の天面よりも突き出る場合は10mm以内の範囲に収めることが望ましい。これに伴って、凹部30は断熱材13側に電気部品31を収納する空間だけ凹んだ状態で配置されるため、内容積確保の観点から、必然的に凹部30と内箱12間の断熱材13の厚さが薄くなってしまう。このため、凹部30の断熱材13側の面に真空断熱材40を配置して断熱性能を確保、強化している。実施の形態1では、真空断熱材40を前述の庫内灯35のケース35aと電気部品31に跨るように略Z形状に成形した1枚の真空断熱材とした。尚、前記カバー32は外部からのもらい火や何らかの原因で発火した場合等を考慮し鋼板製としている。
【0030】
ここで、実施の形態1における真空断熱材40の配置について図2を用いて説明する。図2は図1におけるA部の拡大断面図である。実施の形態1では図2に示すよう、外箱11の天面部内面に放熱パイプ50をアルミテープ50aで固定した箱体10を用いた。凹部30の断熱材13側の面と放熱パイプ50に跨るように真空断熱材40を略Z形状になるように曲げ成形し、柔軟性と断熱性を有する粘着部材52を介して貼り付けている。本実施の形態1では、放熱パイプ50や電気部品31を配置した凹部30等の高温部側に近い部分で断熱することで、庫内への熱漏洩をより低減しているが、特にこの配置に限定するものではない。」

(オ)「【0032】
次に、実施の形態1に用いた真空断熱材40について、図3を用いてその構成を説明する。前記真空断熱材40は、芯材41と該芯材41を圧縮状態に保持するための内包材42、前記内包材42で圧縮状態に保持した芯材41を被覆するガスバリヤ層を有する外被材43、及び吸着剤44とから構成してある。該外被材43は前記真空断熱材40の両面に配置され、同じ大きさのラミネートフィルムの稜線から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせた袋状で構成されている。なお、第1の実施形態において、前記芯材41についてはバインダー等で接着や結着していない無機繊維の積層体として平均繊維径4μmのグラスウールを用いた。前記芯材41については、無機系繊維材料の積層体を使用することによりアウトガスが少なくなるため、断熱性能的に有利であるが、特にこれに限定するものではなく、例えばセラミック繊維やロックウール,グラスウール以外のガラス繊維等の無機繊維等でもよい。前記芯材41の種類によっては内包材42は不要の場合もある。外被材43のラミネート構成についてはガスバリヤ性を有し、熱溶着可能であれば特に限定するものではないが、実施の形態1では、表面層,ガスバリヤ層,熱溶着層の3層構成からなるラミネートフィルムとし、表面層は吸湿性の低い樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、ガスバリヤ層は酸素バリヤ性の高い樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、表面層とガスバリヤ層は金属蒸着層同士が向かい合うように貼り合わせている。熱溶着層については表面層と同様に吸湿性の低いフィルムを用いた。具体的には、表面層をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとし、ガスバリヤ層をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム又はアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルムとし、熱溶着層を未延伸ポリエチレンフィルム又は未延伸ポリプロピレンフィルムとした。ガスバリヤ層として金属箔や樹脂系フィルムに無機層状化合物や樹脂系ガスバリヤコート材等のガスバリヤ膜を設けたものや、熱溶着層には例えば酸素バリヤ性の高いポリブチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレートと他の樹脂の共押出しフィルム等を用いても良い。表面層と熱溶着層に吸湿性の低い樹脂を配置する目的は、酸素バリヤ性の高い上記のガスバリヤ層フィルムは吸湿によりガスバリヤ性が悪化するため、表面層と熱溶着層でサンドイッチしてラミネートフィルム全体の吸湿量を抑制するものである。これにより、真空断熱材40の真空排気工程においても、外被材43が持ち込む水分量が小さいため、真空排気効率が大幅に向上し、高性能化につながっている。尚、外被材43のラミネート構成については、防湿性とガスバリヤ性及び熱溶着性を有していれば特に3層構成に限定するものではない。ここで、各層のラミネートについては、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いてドライラミネートするのが一般的であるが、特にこの方法に限定するものではなく、共押出しや熱ラミネート等による方法或いは組合せによる方法等でも良い。」

(カ)図1又は4には、圧縮機20を箱体10の背面の下部に設けた点が看取できる。
また、図1?4には、真空断熱材40が板状である点が看取できる。

イ 引用例1に記載された発明
上記(ア)?(カ)の記載事項を総合すると、段落【0030】の放熱パイプ50が、段落【0026】の「図示しない凝縮機」であることは明らかであるから、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「冷却器18と圧縮機20とを含み放熱パイプ50、キャピラリーチューブとを接続した冷凍サイクルを構成していて、外箱11と内箱12とによって形成される空間に断熱部を設けて箱体10内の各貯蔵室と外部とを断熱し、箱体10内に冷蔵室14と冷凍室15a,15bと野菜室16をそれぞれ区画形成し、圧縮機20を箱体10の背面の下部に設け、箱体10の天面後方部には冷蔵庫の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品31を収納するための凹部30が形成されており、電気部品31を覆うカバー32が設けられ、凹部30の断熱材13側の面に板状の真空断熱材40を配置し、外被材43は前記真空断熱材40の両面に配置され、同じ大きさのラミネートフィルムの稜線から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせた袋状で構成された板状の真空断熱材40と、を備えた冷蔵庫。」

ウ 原査定において周知技術として示した、本願の出願日前に頒布された特許第3544653号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

(ア)「【請求項1】
少なくとも1部に開口部を有する内箱と、外箱と、前記開口部を閉塞する蓋と、前記外箱に取り付けられた高温冷媒配管と、前記内箱と前記外箱との間に配置され前記外箱に貼り付けられた、2層以上のシート状で対向する面同士が接触する無機繊維の積層体からなる芯材と前記芯材を挟む複層フィルムからなる真空断熱材と、前記内箱と前記外箱との間の前記真空断熱材以外の空間に充填された発泡樹脂とからなる冷蔵庫であって、前記複層フィルムは表面保護層と中間層と熱シール層を設けたフィルムであり、前記真空断熱材を構成する前記積層体の一方の面に配置された前記複層フィルムと、前記積層体の他の面に配置された前記複層フィルムとは積層構成が異なり、一方の前記複層フィルムは、前記中間層にアルミ箔を有し、他方の前記複層フィルムは、前記中間フィルム層にアルミニウム蒸着が施され、前記真空断熱材は、前記アルミ箔を有する前記複層フィルム側が高温側に配置されている冷蔵庫。」

(イ)「【0002】
【従来の技術】
近年、家電製品に対する省エネルギー化は避けられない重要課題である。冷蔵庫その他の様々な家電製品に使用される断熱箱においても断熱材の高性能化が必要不可欠となっている。一方で、地球環境保護に対する積極的な取り組みが重要となってきており、家電製品への緊急の要求として省エネルギー化があり、熱に関連する電気機器の断熱性能の向上が重要課題となっている。」

(ウ)「【0074】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、真空断熱材の経時発生ガスが非常に少なく、また加工性に優れるため、経時信頼性に優れかつ生産性に優れた冷蔵庫を得ることができる。また、薄いシート状物質を芯材に用いているので冷蔵庫の断熱箱の厚みが薄くなり、冷蔵庫の省スペース化になる。また、真空断熱材は、アルミ箔を有する複層フィルム側が高温側になるように配置するので、アルミニウム蒸着が施されたフィルム層が温度の上昇により、ガス透過性が生じ、真空断熱材の真空度が低下し、断熱性能が劣化することを防止できる。」

エ 引用例2に記載された周知事項
上記(ア)?(ウ)の記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項(以下「引用例2記載の周知事項」という。)が記載されている。

「冷蔵庫における断熱性能の向上のために、芯材を挟む複層フィルムからなる真空断熱材と、前記複層フィルムは表面保護層と中間層と熱シール層を設けたフィルムであり、一方の前記複層フィルムは、前記中間層にアルミ箔を有し、他方の前記複層フィルムは、前記中間フィルム層にアルミニウム蒸着が施され、前記真空断熱材は、前記アルミ箔を有する前記複層フィルム側が高温側に配置すること」


(3) 対比・判断

ア ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「キャピラリーチューブ」は、その作用及び構造から、本件補正発明の「膨脹装置」に相当し、以下同様に、「外箱11と内箱12とによって形成される空間に断熱部を設け」た「箱体10」は「断熱箱体」に、「外被材43」は「外包材」に相当する。

(イ)引用発明の「冷却器18と圧縮機20とを含み放熱パイプ50、キャピラリーチューブとを接続した冷凍サイクル」は、冷凍サイクルは閉回路であるから、当然に冷媒が圧縮機に戻る吸入パイプを有しており、圧縮機20、放熱パイプ50、キャピラリーチューブ、冷却器18、吸入パイプの順に接続されることは技術常識であるから、本件補正発明の「圧縮機、放熱パイプ、膨脹装置、冷却器、吸入パイプを順に接続して構成される冷凍サイクル」に相当する。

(ウ)引用発明の「外箱11と内箱12とによって形成される空間に断熱部を設け」、「冷蔵室14と冷凍室15a,15bと野菜室16をそれぞれ区画形成し」、「外箱11と内箱12とによって形成される空間に断熱部を設け」た「箱体10」は、冷蔵室14と冷凍室15a,15bと野菜室16をそれぞれ区画形成することが、前面側に複数の貯蔵室を有することといえるから、本件補正発明の「内箱と外箱の間に断熱材が配設され、前面側に複数の貯蔵室を有する断熱箱体」に相当する。

(エ)引用発明の「箱体10の背面の下部に設け」た「圧縮機20」は、当然に、圧縮機20が収納された空間を有し、当該空間は機械室と表現できるから、本件補正発明の「前記断熱箱体の背面の上部あるいは下部に設けられ、前記圧縮機が収納された機械室」に相当する。

(オ)引用発明の「箱体10の天面後方部に」「冷蔵庫の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品31」が配置されていることと、本件補正発明の「前記断熱箱体の背面あるいは天井面に設けられ、前記圧縮機を制御する制御基板を収納する制御基板箱」が配置されていることとは、引用発明の冷蔵庫の運転を制御することが圧縮機の制御を含むことは明らかであるから、「前記断熱箱体の背面あるいは天井面に設けられ、前記圧縮機を制御する制御基板」を配置することの限りで共通する。

(カ)引用発明の「外被材43は前記真空断熱材40の両面に配置され、同じ大きさのラミネートフィルムの稜線から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせた袋状で構成された板状の真空断熱材40」と、本件補正発明の「外包材の一方の面にアルミ箔を配した複層フィルムを使用し、前記外包材の他方の面にはアルミニウム蒸着が施された複層フィルムを使用した板状の真空断熱材」とは、「外包材を有する板状の真空断熱材」の限りで共通する。

(キ)引用発明の「凹部30の断熱材13側の面に板状の真空断熱材40を配置し」ていることは、凹部30に配置された冷蔵庫の運転を制御するための基板や電源基板の内箱12側に真空断熱材40が配されていることであるから、引用発明の「凹部30の断熱材13側の面に板状の真空断熱材40を配置し」ていることと、本件補正発明の「前記制御基板箱の背面あるいは周囲に前記真空断熱材のアルミ箔を配した複層フィルム側が配置されている」こととは、「前記制御基板の背面あるいは周囲に前記真空断熱材が配置されている」の限りで共通する。

イ 一致点・相違点
したがって、両者は、

「圧縮機、放熱パイプ、膨脹装置、冷却器、吸入パイプを順に接続して構成される冷凍サイクルと、内箱と外箱の間に断熱材が配設され、前面側に複数の貯蔵室を有する断熱箱体と、前記断熱箱体の背面の上部あるいは下部に設けられ、前記圧縮機が収納された機械室と、前記断熱箱体の背面あるいは天井面に設けられ、前記圧縮機を制御する制御基板と、外包材を有する板状の真空断熱材と、を備え、前記制御基板の背面あるいは周囲に前記真空断熱材が配置されている冷蔵庫。」

の点で一致し、下記の点で相違する。

(相違点1)
制御基板について、本件補正発明では、制御基板箱に収納されているのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
(相違点2)
本件補正発明では、「前記制御基板に搭載されたトランジスタやダイオードなどの半導体部品」を備え、「半導体部品にワイドバンドギャップ半導体を使用して」おり、「前記制御基板に搭載された前記半導体部品が放熱補助部品を介して前記制御基板箱内の底面と熱的に接続され」ているのに対して、引用発明では、制御基板に搭載された部品が特定されておらず、放熱構造が不明である点。
(相違点3)
板状の真空断熱材について、本件補正発明では、「外包材の一方の面にアルミ箔を配した複層フィルムを使用し、前記外包材の他方の面にはアルミニウム蒸着が施された複層フィルムを使用した」ものであって、「前記制御基板箱の背面あるいは周囲に前記真空断熱材のアルミ箔を配した複層フィルム側が配置されている」のに対して、引用発明では、外被材43は前記真空断熱材40の両面に配置され、同じ大きさのラミネートフィルムの稜線から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせた袋状で構成されており、凹部30の断熱材13側の面に真空断熱材40を配置している点。

ウ 当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

(相違点1について)
冷凍サイクルを制御する基板を箱状部材に収納することは、周知(例えば、拒絶理由に引用された特開2002-62042号公報(【0018】?【0021】、【図3】等)の制御基板回路5をベース部41と蓋部42からなる箱に収納する点、特開2010-84948号公報(【0038】、【図2】?【図5】等)のプリント基板31を電装箱40に収納する点参照。)である。
そして、引用発明の冷蔵庫の冷凍サイクルを制御する基板の取付において、前記周知の事項を適用し、本件補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
冷蔵庫の圧縮機の制御において、効率化のためにワイドギャップ半導体を用いることは慣用手段(例えば、拒絶理由に引用した特開2006-50804号公報(【0002】、【0031】、【0032】等)の効率化のために、冷蔵庫の圧縮機1の電力供給装置4にIGBT、MOSFET、炭化シリコン等のシリコン半導体を用いる点、拒絶理由に引用した特開2008-61414号公報(【0015】?【0017】、【0032】等)の冷蔵庫の圧縮器の駆動に高効率化や低ノイズ化のために、ワイドギャップ半導体を用いる点。)である。
また、放熱のために、制御基板に搭載された電子部品が放熱補助部品を介して制御基板箱内の底面と熱的に接続することは、周知(例えば、特開2010-84948号公報(【0040】?【0043】等)のプリント基板31に搭載されたパワー素子33が熱伝導性グリスなどを介して電装品箱40の底面部40dに熱的に接続している点参照。)である。
そして、引用発明の冷蔵庫の圧縮機の制御において求められる効率化及びその制御基板に用いられる電子部品の放熱のために、上記慣用手段であるワイドギャップ半導体を用いること及び周知の事項である制御基板に搭載された電子部品が放熱補助部品を介して制御基板箱内の底面と熱的に接続することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
引用例2記載の周知事項の「前記中間層にアルミ箔を有」する「一方の前記複層フィルム」は、本願発明の「一方の面にアルミ箔を配した複層フィルム」に相当し、同様に、「アルミニウム蒸着が施され」た「他方の前記複層フィルム」は、本願発明の「他方の面にはアルミニウム蒸着が施された複層フィルム」に相当し、引用例2記載の周知事項の「一方の前記複層フィルム」と「他方の前記複層フィルム」とは、芯材を挟んでいることから、本願発明の「外包材」に相当する。
そうすると、引用例2記載の周知事項は、「冷蔵庫における断熱性能の向上のために、外包材の一方の面にアルミ箔を配した複層フィルムを使用し、前記外包材の他方の面にはアルミニウム蒸着が施された複層フィルムを使用したものであって、前記真空断熱材は、前記アルミ箔を有する前記複層フィルム側が高温側に配置すること」が記載されているといえる。
そして、引用発明の冷蔵庫においても断熱性能の向上は、当然に内在する課題であるから、そのために、引用発明の真空断熱材に引用例2記載の周知事項を適用することは当業者が容易に想到しうることである。
また、引用例2記載の周知事項は、アルミ箔を有する前記複層フィルム側を高温側に配置するものであるから、引用発明の真空断熱材に適用した場合、基板や電源基板で熱を発生することとなるから、制御基板の背面あるいは周囲に真空断熱材のアルミ箔を配した複層フィルム側が配置されることとなる。
したがって、引用発明に引用例2記載の周知事項を適用し、本件補正発明の上記相違点3に係る事項とすることは当業者が容易に想到しうることである。

(本願発明の作用効果)
そして、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、周知の事項及び慣用の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(4) 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知の事項及び慣用の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年10月17日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年3月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成26年10月17日の手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
平成26年2月13日付けの拒絶理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成26年10月17日の手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、制御基板について、「半導体部品が放熱補助部品を介して前記制御基板箱内の底面と熱的に接続され」ることの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、更に他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 平成26年10月17日の手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件についての検討」の「(3)対比・判断」に記載したとおりの引用発明、周知の事項及び慣用の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、周知の事項及び慣用の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-20 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-12 
出願番号 特願2011-67658(P2011-67658)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
佐々木 正章
発明の名称 冷蔵庫、機器  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 倉谷 泰孝  
代理人 村上 加奈子  
代理人 松井 重明  

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