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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1309548
審判番号 不服2014-23810  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-21 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2011-267345「太陽電池電極用ペースト組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月17日出願公開、特開2013-120807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年12月6日の出願であって、平成26年2月17日付けの拒絶の理由が通知され、これに対し、同年4月24日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月8日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これに対し、同年11月21日に請求された拒絶査定不服審判であって、同日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成26年11月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年11月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の
「【請求項1】
導電性粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池電極用ペースト組成物であって、
前記ガラスフリットは酸化物換算で38?59(mol%)のPbOと、3?8(mol%)のB_(2)O_(3)と、8?32(mol%)のSiO_(2)と、1?12(mol%)のLi_(2)Oと、3(但し、3.0を除く)?30(mol%)のTiO_(2)と、0?2(mol%)のP_(2)O_(5)とを含み、且つPb/(Si+Ti)(mol比)が1.0?1.9の範囲内にあるガラスから成ることを特徴とする太陽電池電極用ペースト組成物。」を
「【請求項1】
導電性粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池電極用ペースト組成物であって、
前記ガラスフリットは酸化物換算で38?59(mol%)のPbOと、3?8(mol%)のB_(2)O_(3)と、8?30.1(mol%)のSiO_(2)と、1?12(mol%)のLi_(2)Oと、3?30(mol%)のTiO_(2)と、0?2(mol%)のP_(2)O_(5)とを含み、且つPb/(Si+Ti)(mol比)が1.0?1.9の範囲内にあるガラスから成ることを特徴とする太陽電池電極用ペースト組成物。」と補正するものである。

(2)補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1の構成要素である「ガラスフリット」に関し、「SiO_(2)」を「酸化物換算で」、補正前は「8?32(mol%)」含む構成であったものを補正後は「8?30.1(mol%)」含む構成とする補正、及び、本件補正前の請求項1の構成要素である「ガラスフリット」に関し、「TiO_(2)」を「酸化物換算で」、補正前は「3(但し、3.0を除く)?30(mol%)」含む構成であったものを補正後は「3?30(mol%)」含む構成とする補正である。
ここで、上記本件補正のうち、前者は、特許請求の範囲を限定的に減縮するものであるが、後者は、「ガラスフリット」に関し、「TiO_(2)」を「酸化物換算で」3(mol%)含む構成が加わっているので、明らかに特許請求の範囲を拡張するものである。
そうすると、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1を限定的に減縮するものではないから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとは認められない。
また、本件補正が、誤記の訂正、または、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことも明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定された事項を目的とするものではない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明
平成26年11月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年4月24日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。(上記「2」[理由]「(1)」参照。)

4 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された「特開2011-66354号公報 」(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
(1)発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイヤースルー法で形成する太陽電池電極用に好適なペースト組成物に関する。」
「【課題を解決するための手段】
【0011】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、導電性粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池電極用ペースト組成物であって、前記ガラスフリットが酸化物換算でLi_(2)O 0.6?18(mol%)、PbO 20?65(mol%)、B_(2)O_(3) 1?18(mol%)、SiO_(2) 20?65(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成ることにある。
【発明の効果】
【0012】
このようにすれば、太陽電池電極用ペースト組成物は、これを構成するガラスフリットがLi_(2)O 0.6?18(mol%)、PbO 20?65(mol%)、B_(2)O_(3) 1?18(mol%)、SiO_(2) 20?65(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成ることから、反射防止膜上に塗布して受光面電極を形成するに際して優れたファイヤースルー性が得られるため、線幅を細くしても良好なオーミックコンタクトが得られる。しかも、本発明のペースト組成物は、優れたファイヤースルー性を有することから、良好なオーミックコンタクトを保ったままガラス量を減じることができるので、受光面電極のライン抵抗を一層低くできる利点がある。したがって、本発明の太陽電池電極用ペースト組成物によれば、オーミックコンタクトやライン抵抗の悪化を伴うことなく受光面電極の細線化が可能になる。この結果、細線化して受光面積を大きくしても十分に接触抵抗が低いことから曲線因子が低下しないので、光電変換効率の高い太陽電池セルが得られる。」
「【0020】
また、本発明の電極用ペーストを構成する前記ガラスは、その特性を損なわない範囲で他の種々のガラス構成成分や添加物を含み得る。例えば、Al、Zr、Na、Ca、Zn、Mg、K、Ti、Ba、Sr等が含まれていても差し支えない。Alはガラスの安定性を得るために有効な成分であるから、特性には殆ど影響しないが、含まれていることが好ましい。これらは例えば合計30(mol%)以下の範囲で含まれ得る。例えば、AlおよびTiはそれぞれ6(mol%)以下が好ましく、3(mol%)以下が一層好ましい。また、Znは30(mol%)以下が好ましく、15(mol%)以下が一層好ましい。これらAl,Ti,Znを適量含む組成とすることで、並列抵抗Rshが向上し、延いては開放電圧Vocおよび短絡電流Iscが向上するので一層高い電気的特性が得られる。」
「【0036】
また、前記の受光面電極20は、例えば一様な厚さ寸法の厚膜導体から成るもので、図2に示されるように、受光面24の略全面に、多数本の細線部を有する櫛状を成す平面形状で設けられている。上記の厚膜導体は、Agを67?98(wt%)の範囲内、例えば94.3(wt%)程度、およびガラスを2?33(wt%)の範囲内、例えば5.7(wt%)程度を含む厚膜銀から成るもので、そのガラスは酸化物換算した値で、PbOを20?65(mol%)の範囲内、例えば39(mol%)程度、B_(2)O_(3)を1?18(mol%)の範囲内、例えば12.0(mol%)程度、SiO_(2)を20?65(mol%)の範囲内、例えば31.0(mol%)程度、Li_(2)Oを0.6?18(mol%)の範囲内、例えば6.0(mol%)程度、Al_(2)O_(3)を0?6(mol%)の範囲内、例えば3(mol%)程度、TiO_(2)を0?6(mol%)の範囲内、例えば3(mol%)程度、ZnOを0?30(mol%)の範囲内、例えば6(mol%)程度の割合でそれぞれ含む鉛ガラスである。また、上記の導体層の厚さ寸法は例えば20?30(μm)の範囲内、例えば25(μm)程度で、細線部の各々の幅寸法は例えば80?130(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度で、十分に高い導電性を備えている。」
「【0043】
以上のペースト原料をそれぞれ用意して、例えば導体粉末を77?88(wt%)、ガラスフリットを1?10(wt%)、ベヒクルを7?14(wt%)、溶剤を3?5(wt%)の割合で秤量し、攪拌機等を用いて混合した後、例えば三本ロールミルで分散処理を行う。これにより、前記電極用ペーストが得られる。
【0044】
上記のようにして電極用ペーストを調製する一方、適宜のシリコン基板に例えば、熱拡散法やイオンプランテーション等の良く知られた方法で不純物を拡散し或いは注入して前記n層14およびp^(+)層16を形成することにより、前記シリコン基板12を作製する。次いで、これに例えばPE-CVD(プラズマCVD)等の適宜の方法で窒化珪素薄膜を形成し、前記反射防止膜18を設ける。
【0045】
次いで、上記の反射防止膜18上に前記図2に示すパターンで前記電極用ペーストをスクリーン印刷する。これを例えば150(℃)で乾燥し、更に、近赤外炉において740?900(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施す。これにより、その焼成過程で電極用ペースト中のガラス成分が反射防止膜18を溶かし、その電極用ペーストが反射防止膜18を破るので、電極用ペースト中の導体成分すなわち銀とn層14との電気的接続が得られ、前記図1に示されるようにシリコン基板12と受光面電極20とのオーミックコンタクトが得られる。受光面電極20は、このようにして形成される。」
「【0047】
ガラス組成を種々変更して、上記の製造工程に従って太陽電池10を製造し、市販のソーラーシミュレータを用いてその出力を測定して曲線因子FF値を評価した結果を、ガラス組成と併せて表1に示す。表1において、No.1?4、6?24、26?29、32?38、41、42、44、45、47?50、53?56、58?63、65?72、74?91、93?97、99、100が実施例で、その他が比較例である。一般に、太陽電池はFF値が70以上であれば使用可能とされているが、高いほど好ましいのはもちろんであり、本実施例においては、FF値が75より大きいものを合格とした。
【0048】
【表1】


「【0055】
また、実施例のNo.65?72、74?78、83?91はAl_(2)O_(3)、Li_(2)O、TiO_(2)、ZnOを何れも含む7成分系であるが、PbOが22.4?45(mol%)、B_(2)O_(3)が3.0?18.0(mol%)、SiO_(2)が21.7?41.1(mol%)、Al_(2)O_(3)が3.0(mol%)、Li_(2)Oが0.6?18.0(mol%)、TiO_(2)が3.0(mol%)、ZnOが6.0?15.0(mol%)の範囲で、何れも75を越えるFF値が得られた。この7成分系において比較例を見ると、B_(2)O_(3)が19(mol%)以上と多いNo.73、92と、Li_(2)Oが0.4(mol%)と少ないNo.64では、FF値が73以下に留まった。」
(2)引用例記載の事項
上記(1)の記載事項(特に【表1】のNo.75を参照)によると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「導電性粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池電極用ペースト組成物であって、
前記ガラスフリットが酸化物換算で39.0(mol%)のPbOと、3.0(mol%)のB_(2)O_(3)と、31.0(mol%)のSiO_(2)と、6.0(mol%)のLi_(2)Oと、3.0(mol%)のTiO_(2)とを含むガラスから成る太陽電池電極用ペースト組成物。」

5 対比
引用発明は、「ガラスフリットが酸化物換算で39.0(mol%)のPbOと、」「31.0(mol%)のSiO_(2)と、」「3.0(mol%)のTiO_(2)とを含むガラスから成る」構成を有するものであるから、「Pb/(Si+Ti)(mol比)」は約1.147となり、本願発明の「Pb/(Si+Ti)(mol比)が1.0?1.9の範囲内にある」ことに相当する構成を有するものである。
そうすると、引用発明の「ガラスフリットが酸化物換算で39.0(mol%)のPbOと、3.0(mol%)のB_(2)O_(3)と、31.0(mol%)のSiO_(2)と、6.0(mol%)のLi_(2)Oと、3.0(mol%)のTiO_(2)とを含むガラスから成る」構成と、本願発明の「ガラスフリットは酸化物換算で38?59(mol%)のPbOと、3?8(mol%)のB_(2)O_(3)と、8?32(mol%)のSiO_(2)と、1?12(mol%)のLi_(2)Oと、3(但し、3.0を除く)?30(mol%)のTiO_(2)と、0?2(mol%)のP_(2)O_(5)とを含み、且つPb/(Si+Ti)(mol比)が1.0?1.9の範囲内にあるガラスから成る」構成とは、「ガラスフリットは酸化物換算で38?59(mol%)のPbOと、3?8(mol%)のB_(2)O_(3)と、8?32(mol%)のSiO_(2)と、1?12(mol%)のLi_(2)Oと、TiO_(2)と、0?2(mol%)のP_(2)O_(5)とを含み、且つPb/(Si+Ti)(mol比)が1.0?1.9の範囲内にあるガラスから成る」構成で一致する。

上記から、本願発明と引用発明は、
「導電性粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池電極用ペースト組成物であって、
前記ガラスフリットは酸化物換算で38?59(mol%)のPbOと、3?8(mol%)のB_(2)O_(3)と、8?32(mol%)のSiO_(2)と、1?12(mol%)のLi_(2)Oと、TiO_(2)と、0?2(mol%)のP_(2)O_(5)とを含み、且つPb/(Si+Ti)(mol比)が1.0?1.9の範囲内にあるガラスから成ることを特徴とする太陽電池電極用ペースト組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「ガラスフリット」に含まれる「TiO_(2)」が「酸化物換算で」、本願発明は、「3(但し、3.0を除く)?30(mol%)」であるのに対し、引用発明は「3.0(mol%)」である点。

6 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
引用例には、「受光面電極20は、例えば一様な厚さ寸法の厚膜導体から成るもので、図2に示されるように、受光面24の略全面に、多数本の細線部を有する櫛状を成す平面形状で設けられている。上記の厚膜導体は、Agを67?98(wt%)の範囲内、例えば94.3(wt%)程度、およびガラスを2?33(wt%)の範囲内、例えば5.7(wt%)程度を含む厚膜銀から成るもので、そのガラスは酸化物換算した値で、PbOを20?65(mol%)の範囲内、例えば39(mol%)程度、B_(2)O_(3)を1?18(mol%)の範囲内、例えば12.0(mol%)程度、SiO_(2)を20?65(mol%)の範囲内、例えば31.0(mol%)程度、Li_(2)Oを0.6?18(mol%)の範囲内、例えば6.0(mol%)程度、Al_(2)O_(3)を0?6(mol%)の範囲内、例えば3(mol%)程度、TiO_(2)を0?6(mol%)の範囲内、例えば3(mol%)程度、ZnOを0?30(mol%)の範囲内、例えば6(mol%)程度の割合でそれぞれ含む鉛ガラスである。」(【0036】)と記載されており、鉛ガラスに酸化物換算した値で、TiO_(2)を0?6(mol%)の範囲内、例えば3(mol%)程度の割合で含有させることが記載されており、また、「これらAl,Ti,Znを適量含む組成とすることで、並列抵抗Rshが向上し、延いては開放電圧Vocおよび短絡電流Iscが向上するので一層高い電気的特性が得られる。」(【0020】)と記載されている。
また、本願発明の「ガラスフリット」に含まれる「TiO_(2)」は、「酸化物換算で、」「3(但し、3.0を除く)?30(mol%)」であるのに対し、引用発明は「3.0(mol%)」であって、それらの数値が測定等によって判別できる物理量であり、また、離散的な値ではなく連続的な値であることに鑑みれば、その数値の相違は格別の意味を有さない極々僅かなものであるといえる。
そうすると、引用発明において、並列抵抗Rshの向上、延いては開放電圧Vocおよび短絡電流Iscの向上を考慮しながら、ガラスフリットに含まれるTiO_(2)を酸化物換算で、3(但し、3.0を除く)?30(mol%)とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。

上記相違点については以上のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例記載の事項から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-29 
結審通知日 2015-11-04 
審決日 2015-11-17 
出願番号 特願2011-267345(P2011-267345)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 土屋 知久
松川 直樹
発明の名称 太陽電池電極用ペースト組成物  
代理人 池田 治幸  
代理人 池田 光治郎  

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