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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1309555 |
審判番号 | 不服2014-26169 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-22 |
確定日 | 2016-01-05 |
事件の表示 | 特願2012-509935「乗物用のGPS・GSM・WLANアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日国際公開、WO2010/129628、平成24年10月25日国内公表、特表2012-526475〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯と本願発明 本願は,2010年5月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年5月5日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年3月27日付け拒絶理由通知に対して同年7月2日に意見書が提出されたが,同年8月15日付けで拒絶査定がなされ,これを不服として同年12月22日に審判請求がなされ,平成27年1月27日に審判請求書に対する手続補正書が提出されたものであって,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成24年1月4日付け国際出願翻訳文提出書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「全地球位置把握システム(GPS),グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)及び無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)用のアンテナであって, グランドプレーンを有する誘電体ボードと, 前記誘電体ボードの第1の部分上に配置され,前記誘電体ボードと電気的に接触した第1のアンテナトレースラインであって,WLAN無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第1の曲折トレースを有する第1のアンテナトレースラインと, 前記誘電体ボードの第2の部分上に配置され,前記誘電体ボードと電気的に接触した第2のアンテナトレースラインであって,GSM無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第2の曲折トレースを有する第2のアンテナトレースラインと, 少なくとも1つの全地球測位衛星から無線周波数信号を受信するためのGPSアンテナと, 前記誘電体ボード,前記第1のアンテナトレースライン,前記第2のアンテナトレースライン,及び前記GPSアンテナを収容するための乗物に搭載可能なハウジングと,を有することを特徴とするGPS・GSM・WLANアンテナ。」 2 引用例 (1)引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-22430号公報(以下,「引用例1」という。)には,「車載用アンテナ装置」(発明の名称)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 本発明の実施例にかかる車載用のアンテナ装置の構成を図1に示し,その一部拡大図を図2に示す。 これらの図に示すように,本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は,車両のルーフ10上にAM放送帯を受信すると共に電話の周波数帯で送受信するAM/TELアンテナ2が設置されており,車両のリアガラス11にFM放送帯を受信するFMガラスアンテナ7が設けられている。AM/TELアンテナ2は金属製等とされるアンテナベース5b上に固着されており,AM/TELアンテナ2の下部にはアンテナ回路6が設けられている。アンテナベース5b上には移動体の位置を測定するシステム用のGPS(Global Positioning System)アンテナ3と,衛星ラジオの周波数帯を受信する衛星ラジオアンテナ4が搭載されている。アンテナベース5bには,樹脂製のアンテナカバー5aが水密に嵌合されて防水性のアンテナケース5が構成されている。なお,図1,図2においてアンテナカバー5aはほぼ中央で切断した断面図で示されている。 【0013】 アンテナベース5bの下面には締結部5cが一体に形成されており,締結部5cの外周面に形成されたネジ部にナットを螺着することによりナットとアンテナベース5bとによりルーフ10が挟持されて,アンテナカバー5aとアンテナベース5bからなるアンテナケース5が車両のルーフ10に固着されるようになる。これにより,AM/TELアンテナ2,GPSアンテナ3および衛星ラジオアンテナ4がルーフ10上に設けられるようになる。また,締結部5cには内部に通じる貫通孔が形成されており,この貫通孔を介してケーブルを導入/導出することができる。 FMガラスアンテナ7で受信されたFM受信信号は,FM給電線5dを介してアンテナケース5内のアンテナ回路6に供給されている。この際に,FM給電線5dはアンテナベース5bの下面に形成されている締結部5cの貫通孔からアンテナケース5の内部に導入される。また,アンテナ回路6から出力されるAM帯の受信信号とFM帯の受信信号とが合波されたAM/FM出力信号(AM/FM OUT)と,アンテナ回路6で分波された電話帯信号(TEL OUT)と,衛星ラジオアンテナ4で受信された衛星ラジオ信号(SATELLITE Radio OUT)およびGPSアンテナ3で受信されたGPS信号(GPS OUT)とが,締結部5cの貫通孔から導出された同軸ケーブル5eにより出力されている。同軸ケーブル5eのそれぞれは,対応する電子機器へ接続される。このように構成されたアンテナ装置1においてアンテナケース5の高さは約200mmの低姿勢のアンテナとすることができる。 【0014】 AM/TELアンテナ2の構成を図3に示す。図3に示すように,AM/TELアンテナ2は,ガラスエポキシ基板等の絶縁性の基板2a上に形成されたアンテナパターン2bにより構成されている。アンテナパターン2bは上から下に折り曲げられて展開長が長くされた形状とされているが,これは一例でありこの形状に限るものではなく所定の展開長が得られる種々の形状とすることができる。基板2aの下端には,アンテナパターン2bの給電点2cが設けられており,この給電点2cはアンテナ回路6に接続されている。 次に,FMガラスアンテナ7の構成を図4に示す。図4に示すように,FMガラスアンテナ7は車両のリアガラス11の上部に印刷により形成されており,リアガラス11の中央部にはヒータ線12が印刷により形成されている。FMガラスアンテナ7の上端のほぼ中央には給電点7aが形成されており,この給電点7aにFM給電線5dの一端が接続される。なお,ヒータ線12と電源との間にはチョークコイルが接続されるが,ヒータ線12と電源の上部に設けられているアンテナはFMアンテナとされて,AM帯に比べてはるかに高い周波数帯とされていることからインダクタンスを大きくする必要はなく低廉のチョークコイルとすることができる。 【0015】 次に,アンテナ装置1におけるアンテナ回路6の構成を示すブロック図を図5に示す。 図5に示すように,AM/TELアンテナ2はアンテナ回路6の入力端子1-1に接続され,FMガラスアンテナ7は入力端子1-2に接続される。入力端子1-1に入力されたAM/TELアンテナ2の受信信号は,並列接続されたローパスフィルタ(LPF)20とハイパスフィルタ(HPF)22に入力され,LPF20により抽出されたAM帯の受信信号はAM/FM AMP21に供給される。また,HPF22により抽出された電話帯の信号はアンテナ回路6の出力端子1-4からTEL OUTとして出力される。AM/FM AMP21には入力端子1-2に入力されたFMガラスアンテナ7の受信信号も供給され,増幅されてAM帯の受信信号と合波される。合波されたAM/FM受信信号は出力端子1-3からAM/FM OUTとして出力される。さらに,GPSアンテナ3は入力端子3-1に接続され,GPSアンテナ3により受信されたGPS信号は,低雑音増幅器(LNA)23により増幅されて出力端子3-2からGPS OUTとして出力される。さらにまた,衛星ラジオアンテナ4は入力端子4-1に接続され,衛星ラジオアンテナ4により受信された衛星ラジオ受信信号は,低雑音増幅器(LNA)24により増幅されて出力端子4-2からSATELLITE Radio OUTとして出力される。」 上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,以下の技術事項が読み取れる。 a 上記引用例1の「車載用アンテナ装置」は,【図2】を参照すると「AM/TELアンテナ2」及び「GPSアンテナ3」を含むから,「GPS,TEL及びAM用のアンテナ」といえる。 b 上記「AM/TELアンテナ2」に関し,「図3に示すように,AM/TELアンテナ2は,ガラスエポキシ基板等の絶縁性の基板2a上に形成されたアンテナパターン2bにより構成されている。アンテナパターン2bは上から下に折り曲げられて展開長が長くされた形状とされているが,これは一例でありこの形状に限るものではなく所定の展開長が得られる種々の形状とすることができる。」(段落【0014】)の記載及び【図3】によれば,「ガラスエポキシ基板上に配置」される「アンテナトレースライン」といえ,また,「発明の実施例にかかるアンテナ装置1は,車両のルーフ10上にAM放送帯を受信すると共に電話の周波数帯で送受信するAM/TELアンテナ2が設置されており」(段落【0012】)の記載によれば,「電話の周波数帯の信号を送受信しAM放送帯の信号を受信する」ものである。 さらに,上記「アンテナトレースライン」が動作する際に発生する電界により,アンテナ基板(ガラスエポキシ基板)に電気分極を生じさせることは技術常識であって,このとき上記「アンテナトレースライン」は「ガラスエポキシ基板と電気的に接触した」といい得るものである。 c 上記「GPSアンテナ3」が「少なくとも1つのGPS衛星からGPS信号を受信する」ことは技術常識である。 d 【図2】を参照すると,「AM/TELアンテナ2」及び「GPSアンテナ3」は「車両に搭載可能なアンテナケース5」に収容されている。 以上を総合すると,上記引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されていると認める。 「GPS,TEL及びAM用のアンテナであって, ガラスエポキシ基板と, 前記ガラスエポキシ基板上に配置され,前記ガラスエポキシ基板と電気的に接触したアンテナトレースラインであって,電話の周波数帯の信号を送受信しAM放送帯の信号を受信するためのアンテナトレースラインと, 少なくとも1つのGPS衛星からGPS信号を受信するためのGPSアンテナと, 前記ガラスエポキシ基板,前記アンテナトレースライン,及び前記GPSアンテナを収容するための車両に搭載可能なアンテナケースと,を有する,GPS,TEL及びAM用のアンテナ。」 (2)引用例2記載の技術事項 同じく原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2007/101719号(以下,「引用例2」という。)には,「MOBILE STATION AND METHOD OF A NAVIGATION SYSTEM(当審仮訳:移動局及びナビゲーションシステムの方法)」(発明の名称)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。 イ 「In one embodiment of the invention a mobile station of a navigation system comprises a transceiver for a connection to a base station via a radio link. The radio link is preferably bidirectional. In further refinements the transceiver is operable for at least one of a GSM (Global System for Mobile Communications), UMTS (Universal Mobile Telecommunications System), WLAN (wireless local area network) and satellite connection. ・・・(中略)・・・ Said mobile station is operable to calculate a route to said received destination. In a further refinement said mobile station is operable to receive a GPS (global position system) signal and to evaluate a current position from said GPS signal. (当審仮訳:本発明の一実施例において,ナビゲーションシステムの移動局は,無線リンクを介して基地局と接続するためのトランシーバーを備える。無線リンクは,好ましくは双方向性である。更なる改良として,トランシーバーは,GSM (Global System for Mobile Communications), UMTS (Universal Mobile Telecommunications System), WLAN (wireless local area network)及び衛星通信のうちの少なくとも1つで動作可能である。 ・・・(中略)・・・ 上記移動局は,上記受信した目的地への経路を計算するように動作可能である。更なる改良として,上記移動局は,GPS (global position system)信号を受信しそのGPS信号から現在位置を評価するよう動作可能である。)」(2頁30行?3頁17行) 上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,上記引用例2には,以下の技術事項(以下,「引用例2記載の技術事項」という。)が開示されていると認める。 「車両用の無線リンクとしてGSM,UMTS,WLAN,GPSを用いること。」 (3)周知技術 例えば,原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-68736号公報(以下,「周知例」という。)には「多周波アンテナ」(発明の名称)の構造に関し,以下の事項が記載されている。 ウ 「【0011】(第1の実施形態)まず,本発明に係る多周波アンテナの第1の実施形態について説明する。この第1の実施形態は,図1にその構成を示すように,放射導体板を,長さの異なる複数の単位放射導体を有する構成としたものである。 【0012】地導体板101上に,3つの単位放射導体板1021,1022,1023を有する放射導体板102が設置されている。放射導体板102は,短絡板103によって地導体板101と接続され,また同軸給電線104によって,図示しない送受信回路に接続されている。 【0013】次に,図1に示す3周波共用アンテナの多共振動作の作用について説明する。既に説明したように,例えば図15に示す逆Fアンテナの放射導体は,図中L1の長さが約λ/4(λは波長)となる周波数で共振することが知られている。 【0014】そこで,図1に示すように,放射導体板102を長さの異なる複数の単位放射導体板,例えば3つの単位放射導体板1021,1022,1023を有する構成とすることにより,1枚の放射導体板で3周波以上の周波数での動作が可能となる。 【0015】図2は,図1に示した,多周波アンテナの反射係数の周波数特性を示す図である。図1のように多周波アンテナを構成することにより,放射導体板102は図1中の第1の単位放射導体板1021の長さ(図中のLA)をλ/4(λは波長)とする周波数即ち,図2中のA,図1中の第2の単位放射導体板1022の長さ(図中のLB)をλ/4とする周波数,即ち,図2中のB,及び,図1中の第3の単位放射導体板1023の長さ(図中のLC)をλ/4とする周波数,即ち,図2中のCの,3つの周波数で共振し,1枚の放射導体板102での多周波アンテナが実現できる。」 エ 「【0035】(変形例)前記各実施形態においては,各単位放射導体板を長方形のものとしたが,図14(a)?(d)に示すように,導体板の形状は任意形状であってよい。更に,このように,図14中に示した放射導体板の一辺71の幅を狭くすることにより,一辺71の部分を狭くしなかった場合のアンテナ,即ち,点線でその外郭を示したアンテナ72より,一層の小型化を図ることが可能となる。また,給電方法は,前記の如き同軸線路を用いたものに限らず,ストリップ線路や電磁結合による給電等,任意に選択して実施することができる。」 上記摘記事項エ及び図14に変形例として示された放射導体板の形状は「曲折トレース」と言い得るものであることを踏まえると,上記周知例に記載されているように,多周波共用アンテナの構成として, 「各々が異なる無線周波数信号を受信するための曲折トレースを有する複数のアンテナトレースラインを地導体に対向する位置に並べて形成すること。」(以下「周知技術」という。) は周知である。 3 対比 本願発明と引用発明とを対比するに, a 引用発明の「GPS,TEL及びAM用のアンテナ」と本願発明の「全地球位置把握システム(GPS),グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)及び無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)用のアンテナ」は,「GPSを含む複数用途用のアンテナ」である点で共通する。 b 引用発明の「ガラスエポキシ基板」は本願発明の「誘電体ボード」に相当する。 c 引用発明の「前記ガラスエポキシ基板上に配置され,前記ガラスエポキシ基板と電気的に接触したアンテナトレースラインであって,電話の周波数帯の信号を送受信しAM放送帯の信号を受信するためのアンテナトレースライン」と本願発明の「前記誘電体ボードの第1の部分上に配置され,前記誘電体ボードと電気的に接触した第1のアンテナトレースラインであって,WLAN無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第1の曲折トレースを有する第1のアンテナトレースラインと,前記誘電体ボードの第2の部分上に配置され,前記誘電体ボードと電気的に接触した第2のアンテナトレースラインであって,GSM無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第2の曲折トレースを有する第2のアンテナトレースライン」は,「前記誘電体ボード上に配置され,前記誘電体ボードと電気的に接触したアンテナトレースライン」の点で共通する。 d 引用発明の「少なくとも1つのGPS衛星からGPS信号を受信するためのGPSアンテナ」は本願発明の「少なくとも1つの全地球測位衛星から無線周波数信号を受信するためのGPSアンテナ」に相当する。 e 引用発明の「車両」,「アンテナケース」は,それぞれ,本願発明の「乗物」,「ハウジング」に相当する。 以上をまとめると,両者は以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「GPSを含む複数用途用のアンテナであって, 誘電体ボードと, 前記誘電体ボード上に配置され,前記誘電体ボードと電気的に接触したアンテナトレースラインと, 少なくとも1つの全地球測位衛星から無線周波数信号を受信するためのGPSアンテナと, 前記誘電体ボード,前記アンテナトレースライン,及び前記GPSアンテナを収容するための乗物に搭載可能なハウジングと,を有する,GPSを含む複数用途用のアンテナ。」 (相違点1) 「アンテナ」の「GPSを含む複数用途」が, 本願発明では「全地球位置把握システム(GPS),グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)及び無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)」であるのに対し, 引用発明では「GPS,TEL及びAM」である点。 (相違点2) 「誘電体ボード」に関し, 本願発明の「誘電体ボード」は「グランドプレーンを有する」のに対し, 引用発明の「ガラスエポキシ基板」がグランドプレーンを有するか否かは明らかでない点。 (相違点3) 「アンテナトレースライン」に関し, 本願発明では「誘電体ボードの第1の部分上に配置され」「WLAN無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第1の曲折トレースを有する第1のアンテナトレースライン」と「誘電体ボードの第2の部分上に配置され」「GSM無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第2の曲折トレースを有する第2のアンテナトレースライン」であるのに対し, 引用発明では「前記ガラスエポキシ基板上に配置され」「電話の周波数帯の信号を送受信しAM放送帯の信号を受信するためのアンテナトレースライン」である点。 4 検討 上記各相違点につき検討する。 (相違点1)について 引用発明の「GPS,TEL及びAM用のアンテナ」は明らかに車両用のアンテナであって「GPS,TEL及びAM」は「車両用の無線リンク」といい得るものであるが,一般に,そのような車両用の無線リンクの種類や数は当業者が必要に応じて適宜選択すべきものであり,また,具体的な無線リンクの種類については,上記「2 引用例 (2)引用例2記載の技術事項」に記したように「車両用の無線リンクとしてGSM,UMTS,WLAN,GPSを用いること。」が引用例2に開示されている。 そうすると,引用発明の無線リンクとしてGPS,GSM,WLANを選択することにより,引用発明の「GPS,TEL及びAM用のアンテナ」を本願発明のように「全地球位置把握システム(GPS),グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)及び無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)用のアンテナ」とすることは,上記引用例2記載の技術事項に基づいて当業者が適宜なし得ることである。 次に,(相違点2)及び(相違点3)についてまとめて検討する。 まず,上記「2 引用例 (3)周知技術」に記したように,多周波共用アンテナの構成として「各々が異なる無線周波数信号を受信するための曲折トレースを有する複数のアンテナトレースラインを地導体に対向する位置に並べて形成すること。」は周知技術である。 そして,引用発明の「アンテナトレースライン」が受信する「電話の周波数帯の信号」と「AM放送帯の信号」に関し,引用例1の「図5に示すように,AM/TELアンテナ2はアンテナ回路6の入力端子1-1に接続され,FMガラスアンテナ7は入力端子1-2に接続される。入力端子1-1に入力されたAM/TELアンテナ2の受信信号は,並列接続されたローパスフィルタ(LPF)20とハイパスフィルタ(HPF)22に入力され,LPF20により抽出されたAM帯の受信信号はAM/FM AMP21に供給される。また,HPF22により抽出された電話帯の信号はアンテナ回路6の出力端子1-4からTEL OUTとして出力される。」(段落【0015】)の記載によれば,異なる周波数の信号であることは明らかであるから,引用発明の「アンテナトレースライン」は「多周波共用アンテナ」といえる。 そうすると,引用発明の「前記ガラスエポキシ基板上に配置され」る「アンテナトレースライン」の構成として,上記多周波共用アンテナの構成に関する周知技術を単に採用することにより, (1)引用発明の「ガラスエポキシ基板」を本願発明の「誘電体ボード」のように「グランドプレーンを有する」構成とすること(相違点2) (2)さらに,「(相違点1)について」で検討したように引用発明1の無線リンクとしてGSM,WLANを選択することが適宜なし得るものであることを踏まえると,引用発明の「前記ガラスエポキシ基板上に配置され」「電話の周波数帯の信号を送受信しAM放送帯の信号を受信するためのアンテナトレースライン」を,本願発明のように「前記誘電体ボードの第1の部分上に配置され」「WLAN無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第1の曲折トレースを有する第1のアンテナトレースライン」及び「前記誘電体ボードの第2の部分上に配置され」「GSM無線周波数信号を送受信するための少なくとも1つの第2の曲折トレースを有する第2のアンテナトレースライン」とすること(相違点3) は,いずれも当業者が容易に想到し得たものである。 そして,本願発明が奏する効果も引用発明,引用例2記載の技術事項及び周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2記載の技術事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-11 |
結審通知日 | 2015-08-12 |
審決日 | 2015-08-26 |
出願番号 | 特願2012-509935(P2012-509935) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 宣博、中木 努 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 山中 実 |
発明の名称 | 乗物用のGPS・GSM・WLANアンテナ |
代理人 | 岩崎 吉信 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 熊倉 禎男 |