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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A01B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A01B
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A01B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A01B
審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する A01B
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A01B
管理番号 1309859
審判番号 訂正2015-390109  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2015-09-29 
確定日 2015-12-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3163269号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3163269号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判の請求に係る特許第3163269号は、平成9年5月20日に出願されたものであって、その請求項1?8に係る発明は平成13年2月23日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成27年9月29日に請求項1?7からなる一群の請求項に係る発明について本件訂正審判が請求されたものである。


第2 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第3163269号の明細書(以下「本件特許明細書」という。)を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。


第3 訂正の内容

本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「複数の泥土塗付け面にて形成する、」とあるのを、「複数の泥土塗付け面にて形成し、これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている」に訂正する。

請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。

(2)訂正事項2

発明の詳細な説明の段落【0006】に記載された「複数の泥土塗付け面にて形成したものである。」とあるのを、「複数の泥土塗付け面にて形成し、これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されているものである。」に訂正する。


第4 当審の判断

1 訂正の目的の適否について

(1)訂正事項1

訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「複数の泥土塗付け面」について、「これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
.
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項2

訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、【特許請求の範囲】の記載と【発明の詳細な説明】の記載との整合性を得るために訂正をするものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。


2 新規事項の追加の有無について

訂正事項1、2は、本件特許明細書の「そして、略扇形状の複数の泥土塗付け板は、その径大部の端縁部に突設された取付片に隣接する泥土塗付け板の径小部の端縁部を順次取り付けることにより、この複数の泥土塗付け板にて側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて回転半径を小さくした複数の径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かってそれぞれ次第に回転半径を大きくした円弧状の複数の径大部を有する側面修復体の外周面が構成される。」(段落【0011】)、「・・・泥土塗付け板67は、前記軸受体63を中心として前記側面修復体43の回転方向の一端部を径小部68とし、この径小部68から前記側面修復体43の回転方向と反対側の他端部を径大部69とするようになっている。」(段落【0052】)、「・・・この各泥土塗付け板67の外周面が泥土塗付け面79として形成されている。」(段落【0054】)、「つぎに、前記取付基板66の外周面に沿って前記複数の泥土塗付け板67が順次配設され、これらの各泥土塗付け板67において隣接する泥土塗付け板67の相互の取付は、その一方の泥土塗付け板67の径小部68の端縁部70を前記取付基板66の外面に接合し、この径小部68の端縁部70に他方の泥土塗付け板67の径大部69の端縁部70に突設した取付片73を当接し、この取付片73の突片75の連通孔74から径小部68の端縁部70の一方の取付孔71及びこれらに連通して形成された前記取付基板66の一方の挿通孔76にボルト77を挿通し、このボルト77にナット78を締着する。」(段落【0056】)の記載に加え、特許請求の範囲の請求項2において、複数の泥土塗付け面を複数の泥土塗付け板によって構成するに際して取付基板を必須の構成要件としない発明が開示されていることを勘案すると、本件特許明細書並びに図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

したがって、訂正事項1、2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。


3 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について

訂正事項1、2は、上記したように特許請求の範囲の減縮、または当該減縮に伴う明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、これら訂正事項1、2によって、実質上特許請求の範囲が拡張されたり、変更されたりするものでないことは明らかである。

したがって、訂正事項1、2は、特許法第126条第6項の規定に適合する。


4 独立特許要件について

訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後の請求項1ないし7に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかについて検討する。

なお、本件の訂正前の請求項1記載の特許発明に係る特許権について、東京地方裁判所平成26年(ワ)第24958号特許権侵害等差止等請求事件(以下「侵害事件」という。)として訴訟が係属しており、同事件の被告は平成27年7月3日付け「被告準備書面(2)」において、訂正前の請求項1記載の特許発明は、刊行物1(特開平8-275606号公報)に記載された発明と刊行物2(実願昭51-125984号(実開昭53-42911号)のマイクロフィルム)に記載された技術事項から当業者が容易に想到し得たものであるから特許法29条2項に該当し、取付基板のない発明は実施例に開示されておらず発明の詳細な説明に記載された発明ではないから特許法第36条6項1号に該当し、円弧状に「湾曲した形状の」径大部という文言は略円錐形状の取付基板の外面から次第に離間する形状を示すものであるから、略円錐形状の取付基板を必須の構成要素としない当該文言は不明確なので特許法第36条6項2号に該当し、その特許には無効理由が存在すると主張している(平成27年10月9日付け上申書を参照。)。

4-1 特許法第29条第2項要件について

(1) 本件訂正発明

本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、次のとおりのものである。

「トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して前記機枠に回転自在に設けられ前記ロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、を具備し、
前記畦塗り体は、前記機枠に回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固着され前記旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体と、この側面修復体に連設され前記旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体と、を有し、
前記側面修復体は、前記旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を、この側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成し、
これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されていることを特徴とする畦塗り機。」

(2) 刊行物

侵害事件で示された文献であって、請求人が審判請求書において提示している、本件特許の出願前に頒布された刊行物は、以下のとおりである。

刊行物1:特開平8-275606号公報
刊行物2:実願昭51-125984号(実開昭53-42911号)のマイクロフィルム

(3) 刊行物の記載事項

ア 刊行物1

下線は当審で付与した。以下同様。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は畦塗り機に係り、主として水田を区画する旧畦を畦塗り修復して水漏れを防ぐものに関する。」

(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の畦塗り機は、機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削爪を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して前記機枠に回転自在に設けられこのロータリーの各切削爪にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、前記機枠に設けられ前記ロータリー及び畦塗り体を回転駆動させる駆動手段とを具備し、前記畦塗り体は、泥土を塗り付けて旧畦の上面部を修復する上面塗り部及びこの上面塗り部の端部に連設され泥土を塗り付けて旧畦の側面部を修復する側面塗り部を有し、この側面塗り部は旧畦の側面部を修復する外周面を楕円面とした楕円錐体状に形成したものである。」

(ウ)「【0028】つぎに、前記機枠1の第1の伝動パイプ13の外端部には軸受体29及びスリーブ(図示せず)を介して前後方向の伝動ケース30が前記第1の出力軸15を中心として上下方向に回動自在に取着支持され、この伝動ケース30の後端部には左右に軸受31を有する軸受体32が固着され、この軸受体32の左右の軸受31には左右方向の回転軸33が回転自在に支持され、かつ、この回転軸33は右側に向かって水平状に突出されている。」

(エ)「【0029】また、前記回転軸33には右側に向かって所定の間隔毎にこの回転軸33に対して直交する方向の多数の取付孔34がそれぞれ貫通して形成され、この各取付孔34にはボルト・ナットのような連結手段たとえば連結ピン35が挿脱自在に装着されるようになっている。また、前記回転軸33には前記連結ピン35にて泥土を旧畦Bの上面部C及び旧畦Bの側面部Dに沿って塗り付けて旧畦Bを修復する畦塗り体36が回転軸33の軸方向に位置調節自在に取着されている。
【0030】前記畦塗り体36は、前記回転軸33に対して軸方向に摺動自在に挿通する挿通孔37を形成した中空筒状の連結軸体38を有し、この連結軸体38の挿入端部と反対側には前記各取付孔34に連通するとともに前記連結ピン35を挿通する連通孔39が貫通して形成されている。
【0031】また、前記連結軸体38の外端部には旧畦Bの上面部Cに泥土を塗り付けて修復する円筒状の上面塗り部40及びこの上面塗り部40の端部に形成されたテーパー状の連続部41に連設され旧畦Bの側面部Dに泥土を塗り付けて修復する楕円錐体状の側面塗り部42が複数のボルト43にてそれぞれ取着されている。」

(オ)「【0035】しかして、前記側面塗り部42は中心点から半径を大きくした大径部L及び中心点から半径を小さくした小径部lを有して外周面を楕円面42a とした楕円錐体状に形成されている。そして、側面塗り部42の大径部Lでは側面塗り部42の開口縁部42b に対して外面部は所定の角度の傾斜角度αとなるとともに、側面塗り部42の小径部lでは側面塗り部42の開口縁部42b に対して外面部は前記大径部Lの傾斜角度αより小さい傾斜角度βとなっている。したがって、側面塗り部42は全体的には外周面を楕円面42a とし、かつ、前記上面塗り部40に向かって次第に縮径した楕円錐体状に形成され、この側面塗り部42は各位置の平面で切断してもその切り口は楕円になる形状に形成されている。」

(カ)「【0053】トラクタの三点懸架機構に機枠1の三点連結部を連結するとともに、トラクタのPTO軸に動力伝達軸を介してミッション28の入力軸3を連結する。」

(キ)「【0061】また、畦塗り体36に供給された畦塗り用の泥土は、この畦塗り体36の上面塗り部40及び側面塗り部42にて旧畦Bの上面部C及び旧畦Bの側面部Dに沿って順次塗り付けられ、この泥土にて旧畦Bの上面部C及び旧畦Bの側面部Dが順次修復されるとともに、この旧畦Bが所定の形態に順次整畦される。」

(ク)「【0064】そして、この側面塗り部42に供給された畦塗り用の泥土は、側面塗り部42の大径部Lでは小径部lよりも強い押し付け力で旧畦Bの側面部Dに向かって押し付けながら塗り付けられ十分に締め固められて旧畦Bの側面部Dが修復される。そうして、この側面塗り部42の楕円面42a からなる外周面にて旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜して形態に整畦される。」

(ケ)「【0071】つぎに、前記各実施例では、上面塗り部40及び側面塗り部42を同軸上に一体に連結した畦塗り体36は伝動ケース30に設けた左右方向の回転軸33に直接軸架固定する場合について説明したが、図14に示すように、この畦塗り体36の上面塗り部40と側面塗り部42とは分離して形成し、その側面塗り部42は前記回転軸33に連動連結された上下方向の第1の連動回転軸110 に連結固定するとともに、その上面塗り部40は前記第1の連動回転軸110 に連動連結された第2の連動回転軸111に連結固定するようにしてもよい。」

(コ)「【0075】このように構成することにより、楕円錐体状の側面塗り部42の下方に向かって縮径した楕円面42a からなる外周面にて泥土が旧畦Bの側面部Dに対して強い押し付け力で押し付けながら塗り付けられて十分に締め固められつつ旧畦Bの側面部Dが順次修復されるとともに、この旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜した形態に整畦される。」

(サ)上記(ウ)から、回転軸33は、機枠1に回転自在に支持されているといえる。

(シ)上記(イ)及び(エ)を踏まえて、図4をみると、畦塗り体36は、回転軸33に対して連結ピン35で固定された連結軸体38と、連結軸体38の外端部に複数のボルト43にて取着されている側面塗り部42と、側面塗り部42に連設される上面塗り部40とを有することは明らかである。


(ス)上記(カ)から、機枠1がトラクタの三点懸架機構に連結される三点連結部を有するといえる。

(セ)上記(ク)から、側面塗り部42は旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜した形態に整畦するといえる。

(ソ)上記(キ)を踏まえて、図3及び図4をみると、
側面塗り部42を回転させる回転軸33が旧畦Bの上下方向と直交する方向に延びるものであることは明らかであり、
上面塗り部40が旧畦Bの上面部Cを水平面状に修復することは明らかである。

(タ)上記(ウ)及び(ケ)から、回転軸33が機枠1に回転自在に支持されているといえる。

(チ)上記(ケ)を踏まえて、図14をみると、
側面塗り部42を回転させる第1の連動回転軸110が旧畦Bの上下方向と平行な方向に延びるものであることは明らかであり、
上面塗り部40が旧畦Bの上面部Cを水平面状に修復するものであることは明らかである。

(ツ)上記(コ)から、側面塗り部42は旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜した形態に整畦するといえる。

(テ)上記(ア)?(ク)及び(サ)?(ソ)からみて、刊行物1には以下の発明(以下「刊行物1発明1」という。)が記載されている。
「トラクタの三点懸架機構に連結される三点連結部を有する機枠1と、この機枠1に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削爪62を有するロータリー63と、このロータリー63の後方に位置して機枠1に回転自在に設けられこのロータリー63の各切削爪62にて跳ね上げられた泥土を旧畦Bに塗り付けて旧畦Bを修復する畦塗り体36と、回転軸33と、を具備し、回転軸33は、旧畦Bの上下方向と直交する方向に延び機枠1に回転自在に支持されている回転軸33であって、畦塗り体36は、回転軸33に対して連結ピン35で固定された連結軸体38と連結軸体38の外端部に複数のボルト43にて取着され旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜した形態に整畦する側面塗り部42と、側面塗り部42に連設され旧畦Bの上面部Cを水平面状に修復する上面塗り部40と、を有し、側面塗り部42は、旧畦Bの側面部を修復する外周面を楕円面とした畦塗り機。」

(ト)また、上記(ケ)、(コ)及び(タ)?(ツ)からみて、刊行物1には刊行物1発明1の変形例として以下の発明(以下「刊行物1発明2」という。)も記載されている。
「トラクタの三点懸架機構に連結される三点連結部を有する機枠1と、この機枠1に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削爪62を有するロータリー63と、このロータリー63の後方に位置して機枠1に回転自在に設けられこのロータリー63の各切削爪62にて跳ね上げられた泥土を旧畦Bに塗り付けて旧畦Bを修復する畦塗り体36と、回転軸33と、第1の連動回転軸110と、第2の連動回転軸111と、を具備し、回転軸33は、機枠1に回転自在に支持された回転軸33であって、畦塗り体36は、回転軸33に連動連結された旧畦Bの上下方向と平行な方向に延びる第1の連動回転軸110に連結固定され旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜した形態に整畦する側面塗り部42と、この側面塗り部42と分離して形成され第1の連動回転軸110に連動連結された第2の連動回転軸111に連結固定された旧畦Bの上面部Cを修復する上面塗り部40と、を有し、側面塗り部42は、旧畦Bの側面部を修復する外周面を楕円面とした畦塗り機。」


イ 刊行物2
(ア)「本考案は、畔塗り機における畔塗り整形装置に関する。」(第1頁第13?14行)

(イ)「第1図は畔塗り機全体の側面図を示し、前方における走行車(A)は、ミツシヨンケース(1)の下部両側に両側車輪(2)(2)’の車軸部(3)(3)’を延設し、ミツシヨンケース(1)の前方にエンジン(E)を搭載するとともに機体後方にハンドル(4)を延出して構成する。
前記ミツシヨンケース(1)後部のヒツチ(5)にはヒツチ体(6)を介してステー(7)を連接し、右側車輪(2)の後方には前方下部に開口(8)’を設けるとともに下方および右側方を開放したカバー体(8)を配設して、該カバー体(8)の上部に固設したギヤーボツクス(9)を前記ステー(7)の右端部に連結体(10)を介して連設し、前記ミツシヨンケース(1)からギヤボツクス(9)には伝動ケース(11)を伝動連結して構成する。
前記ギヤボツクス(9)内からカバー体(8)の内方に垂直の回転軸(12)を垂設して、該回転軸(12)には揚土ローター(B)を連結するが、該揚土ローター(B)は、回動軸(13)の周囲に2枚の揚土羽根(b)(b)を傾斜状に相互に交差させて1組として取付けるとともに、軸方向に複数組を取付けて構成し、該揚土ローター(B)が畔際の土壌を揚上して上部側方の案内板(14)に案内させながら畔側面(15a)及び畔上面(15b)上に揚土できるように構成する。
また、カバー体(8)の後部には右側方を開放するカバー体(16)を連設し、該カバー体(16)の上部に固設したギヤボツクス(17)には前記ギヤボツクス(9)から伝動ケース(18)を伝動連結し、ギヤボツクス(17)内からカバー体(16)の内方には回動軸(19)を垂設して、該回動軸(19)には羽根状回転体(C)を装設するが、該回転体(C)は、回動軸(19)に支杆(20)を介して複数の羽根板(21)を固設するとともに各羽根板(21)が背面視において側方に傾斜し、回転方向にも後退角を有するようにして構成し、該回転体(C)が泥土を畔側面(15a)上に対してたたくようになでつけうるように構成する。
(D)は整形板を示し、該整形板(D)は、畔側面(15a)上に泥土を塗る側面整形板(D1)と、畔上面(15b)上に泥土を塗る上面整形板(D2)とからなり、上面整形板(D2)を支持体(22)を介して上面整形板(D1)に取付ける。」(第2頁第5行?第4頁第3行)

(ウ)「しかして、畔塗りに際し、右側車輪(2)を畔際にそわせて走行車(A)を矢印(イ)方向に前進させると、該走行車(A)により牽引されて矢印(ロ)方向に回転する揚土ローター(B)が畔際の泥土を揚上して案内板(14)に案内させながら第4図に示すように畔上に揚土する。
次いで追従する回転体(C)が矢印(ハ)方向に回転しながら各羽根板(21)により、畔上の揚土を畔側面(15a)に対し第5図に示すようにたたいてなでつける。
その後に追従する整形板(D)は、回転体(C)により脱水されて密着するようなでつけられた畔側面(15a)上に対し側面整形板(D1)でもつて、また、上面整形板(D2)により畔上面(15b)上に第6図に示すように塗り整形を行なつて畔塗りを行うことができる。」(第4頁第7行?第5頁第2行)

(エ)「このように本考案は、・・・揚土ローターによる畔側の揚土を畔側面上にたたくようになでつけることができる羽根状回転体を装設したから、・・・、塗りつけられる泥土の密度を大にしてひび割れや水溶解したりくずれたりすることのないよう、泥土が畔に良好に密着するよう確実良好に畔塗りができる特徴を有する。」(第5頁第3行?第16行)

(オ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえて第3図及び第5図をみると、
羽根状回転体(C)の外周面が、畔の上下方向と平行な方向に延びる回動軸(19)によって回転する羽根状回転体(C)の回転方向に所定の間隔をおいて、回動軸(19)を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの羽根状回転体(C)の回転方向と反対側に向かって回動軸(19)を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の羽根板(21)にて形成されていることは明らかである。

(カ)上記(ア)?(オ)からみて、刊行物2には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「刊行物2技術」という。)。

「外周面を、畔の上下方向と平行な方向に延びる回動軸(19)によって回転する羽根状回転体(C)の回転方向に所定の間隔をおいて、回動軸(19)を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの羽根状回転体(C)の回転方向と反対側に向かって回動軸(19)を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の羽根板(21)にて形成し、泥土を畔側面(15a)上に対してたたくようになでつけうるように構成する羽根状回転体(C)を備える畔塗り機」


(4) 刊行物1発明1を主引例として、対比・判断

ア 対比

本件訂正発明と刊行物1発明1とを対比する。

(ア)刊行物1発明1の「機枠1」、「ロータリー63」、「旧畦B」、「側面部D」、「側面塗り部42」、「上面部C」、「上面塗り部40」、「回転軸33」及び「畦塗り機」が、それぞれ本件訂正発明の「機枠」、「ロータリー」、「旧畦」、「側面部D」、「側面修復体」、「上面部C」、「上面修復体」、「回転軸」及び「畦塗り機」に相当する。

(イ)刊行物1発明1の「トラクタの三点懸架機構に連結される三点連結部を有する機枠1」は、本件訂正発明の「トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠」に相当する。

(ウ)刊行物1発明1の「切削爪62」は、畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げるものなので、本件訂正発明の「切削刃」に相当する。

(エ)刊行物1発明1の「畦塗り体36」及び「回転軸33」は、本件訂正発明の「畦塗り体」に相当する。

(オ)刊行物1発明1の「旧畦Bの上下方向と直交する方向に延び機枠1に回転自在に支持されている回転軸33」は、本件訂正発明の「機枠に回転自在に設けられた回転軸」に相当する。

(カ)刊行物1発明1の「回転軸33に対して連結ピン35で固定された連結軸体38と連結軸体38の外端部に複数のボルト43にて取着され泥土を塗り付けて旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜した形態に整畦する側面塗り部42」は、「側面塗り部42」が「連結軸体38」を介して「回転軸33」に固着しているといえるので、本件訂正発明の「この回転軸に固着され前記旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体」に相当する。

(キ)刊行物1発明1の「側面塗り部42に連設され旧畦Bの上面部Cを水平面状に修復する上面塗り部40」は、本件訂正発明の「この側面修復体に連設され前記旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体」に相当する。

(ク)刊行物1発明1の「側面塗り部42は、旧畦Bの側面部を修復する外周面を楕円面とした」は、「外周面」である「楕円面」が泥土塗付け面であることは明らかなので、本件訂正発明の「側面修復体は、前記旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を、この側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成」と、「側面修復体は、旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を泥土塗付け面にて形成」する点で共通する。

(ケ)上記(ア)?(ク)からみて、本件訂正発明と刊行物1発明1とは、
「トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して機枠に回転自在に設けられロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、を具備し、畦塗り体は、機枠に回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固着され旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体と、この側面修復体に連設され旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体と、を有し、側面修復体は、旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を泥土塗付け面にて形成する畦塗り機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]:「側面修復体」の「外周面」に関して
本件訂正発明は、「側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成し、これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている」のに対して、
刊行物1発明1は、「楕円面」である点。


イ 判断

上記相違点について検討する。

(ア)刊行物2には、「外周面を、畔の上下方向と平行な方向に延びる回動軸(19)によって回転する羽根状回転体(C)の回転方向に所定の間隔をおいて、回動軸(19)を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの羽根状回転体(C)の回転方向と反対側に向かって回動軸(19)を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の羽根板(21)にて形成し、泥土を畔側面(15a)上に対してたたくようになでつけうるように構成する羽根状回転体(C)を備える畔塗り機」という技術事項が記載されている。(上記(3)イ(カ)参照。)

(イ)刊行物1発明1における「側面塗り部42」は、「上面塗り部40」と「連設され」た状態で、これが「固着され」る「旧畦Bの上下方向と直交する方向に延びる回転軸33」により回転するものであるのに対して、刊行物2技術における「羽根状回転体(C)」は、「畔の上下方向と平行な方向に延びる回動軸(19)」により回転するものである。また、刊行物1発明1において上面塗り部40と側面塗り部42が連接する構成を備えるのに対して、刊行物2技術はそのような構成を備えない。

(ウ)上記(イ)に記載したように、刊行物1発明1と刊行物2技術とでは、畦塗り機の構造が大きく異なり、刊行物1発明1の外周面を楕円面とした側面塗り部42と刊行物2技術の複数の羽根板(21)にて形成された羽根状回転体(C)が対応すると認識することは困難であるから、当業者といえども、刊行物1発明1に対する刊行物2技術の適用を着想し得ない。

(エ)また、刊行物1発明1と刊行物1発明2とでは畦塗り機の構造が大きく異なるため、刊行物1に刊行物1発明2が開示されていることが、当業者が刊行物1発明1に対して刊行物2技術を適用することを着想させる根拠となるともいえない。なお、刊行物1発明2を主引例とした場合については、次項(5)にて検討することとする。

(オ)さらに、上記相違点のうち本件訂正発明の「複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている」構成に相当する構成は、刊行物1発明1及び刊行物2技術の何れも備えていないため、刊行物1発明1及び刊行物2技術に基づいて本件訂正発明に想到することはできない。

(カ)以上のとおりであるから、本件訂正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(5) 刊行物1発明2を主引例として、対比・判断

ア 対比

本件訂正発明と刊行物1発明2とを対比する。

(ア)刊行物1発明2の「機枠1」、「ロータリー63」、「旧畦B」、「側面部D」、「側面塗り部42」、「上面部C」、「上面塗り部40」、「回転軸33」及び「畦塗り機」が、それぞれ本件訂正発明の「機枠」、「ロータリー」、「旧畦」、「側面部D」、「側面修復体」、「上面部C」、「上面修復体」、「回転軸」及び「畦塗り機」に相当する。

(イ)刊行物1発明2の「トラクタの三点懸架機構に連結される三点連結部を有する機枠1」は、本件訂正発明の「トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠」に相当する。

(ウ)刊行物1発明2の「切削爪62」は、畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げるものなので、本件訂正発明の「切削刃」に相当する。

(エ)刊行物1発明2の「畦塗り体36」及び「回転軸33」及び「第1の連動回転軸110」及び「第2の連動回転軸111」は、本件訂正発明の「畦塗り体」に相当する。

(オ)刊行物1発明2の「機枠1に回転自在に支持された回転軸33」は、本件訂正発明の「機枠に回転自在に設けられた回転軸」に相当する。

(カ)刊行物1発明2の「回転軸33に連動連結された旧畦Bの上下方向と平行な方向に延びる第1の連動回転軸110に連結固定され泥土を塗り付けて旧畦Bの側面部Dが下方に向かって拡開傾斜した形態に整畦する側面塗り部42」は、本件訂正発明の「この回転軸に固着され前記旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体」に相当する。

(キ)刊行物1発明2の「この側面塗り部42と分離して形成され第1の連動回転軸110に連動連結された第2の連動回転軸111に連結固定された旧畦Bの上面部Cを修復する上面塗り部40」は、本件訂正発明の「この側面修復体に連設され前記旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体」と、「旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体」で共通する。

(ク)刊行物1発明2の「側面塗り部42は、旧畦Bの側面部を修復する外周面を楕円面とした」は、「外周面」である「楕円面」が泥土塗付け面であることが明らかなので、本件訂正発明の「側面修復体は、前記旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を、この側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成」と、「側面修復体は、旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を泥土塗付け面にて形成」する点で共通する。

(ケ)上記(ア)?(ク)からみて、本件訂正発明と刊行物1発明2とは、
「トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して機枠に回転自在に設けられロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、を具備し、畦塗り体は、機枠に回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に連結され旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体と、旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体と、を有し、側面修復体は、旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を泥土塗付け面にて形成する畦塗り機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本件訂正発明では、「上面修復体」が「側面修復体に連設され」、「側面修復体」が「回転軸に固着され」、「側面修復体」の「外周面」を「側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成し、これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている」のに対して、刊行物1発明2では、「上面塗り部40」が「側面塗り部42と分離して形成され」、「側面塗り部42」が「回転軸33に連動連結された旧畦Bの上下方向と平行な方向に延びる第1の連動回転軸110に連結固定され」、「側面塗り部42」の「外周面」を「楕円面とし」ている点。


イ 判断

上記相違点について検討する。

(ア)刊行物2には、「外周面を、畔の上下方向と平行な方向に延びる回動軸(19)によって回転する羽根状回転体(C)の回転方向に所定の間隔をおいて、回動軸(19)を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの羽根状回転体(C)の回転方向と反対側に向かって回動軸(19)を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の羽根板(21)にて形成し、泥土を畔側面(15a)上に対してたたくようになでつけうるように構成する羽根状回転体(C)を備える畔塗り機」という技術事項が記載されている。(上記(3)イ(カ)参照。)

(イ)そして、刊行物1発明2と刊行物2技術とは、ともに畦塗り機に関するものであって、畦の上下方向と平行な方向に延びる軸によって回転する畦側面形成部材を備える点で共通するから、刊行物1発明2において、側面塗り部の構成として、刊行物2技術の「外周面を、畦の上下方向と平行な方向に延びる回動軸(19)によって回転する羽根状回転体(C)の回転方向に所定の間隔をおいて、回動軸(19)を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの羽根状回転体(C)の回転方向と反対側に向かって回動軸(19)を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の羽根板(21)にて形成した羽根状回転体(C)」を採用することは、当業者が容易に着想し得たことである。

(ウ)刊行物2技術の「羽根状回転体(C)の回転方向に所定の間隔をおいて、回動軸(19)を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの羽根状回転体(C)の回転方向と反対側に向かって回動軸(19)を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の羽根板(21)にて形成」することは、本件訂正発明の「側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成」することに相当するから、刊行物1発明2において、「外周面を、畔の上下方向と平行な方向に延びる回動軸(19)によって回転する羽根状回転体(C)の回転方向に所定の間隔をおいて、回動軸(19)を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの羽根状回転体(C)の回転方向と反対側に向かって回動軸(19)を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の羽根板(21)にて形成した羽根状回転体(C)」を採用すれば、「側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成」した「側面修復体」の「外周面」を備えることになる。

(エ)しかしながら、上記相違点のうち、本件訂正発明の「上面修復体」が「側面修復体に連設され」る構成、「側面修復体」が「(畔の上下方向と平行な方向に延びるものとは異なる)機枠に回転自在に設けられた回転軸に固着され」る構成、及び、「複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている」構成に相当する構成は、刊行物1発明2及び刊行物2技術の何れも備えていないため、刊行物1発明2及び刊行物2技術に基づいて本件訂正発明に想到することはできない。

(オ)また、刊行物1発明2及び刊行物2技術と刊行物1発明1とでは、畦塗り機の構造が大きく異なるため、刊行物1に刊行物1発明1が開示されていることが、当業者が刊行物1発明2に対して刊行物2技術を適用したものに、「上面修復体」が「側面修復体に連設され」る構成及び「側面修復体」が「回転軸に固着され」る構成を採用することを着想させる根拠となるともいえない。

(カ)さらに、上記相違点のうち本件訂正発明の「複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている」構成に相当する構成は、刊行物1発明2及び刊行物2技術の何れも備えていないため、刊行物1発明2及び刊行物2技術に基づいて本件訂正発明に想到することはできない。

(キ)以上のとおりであるから、本件訂正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(6)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明(訂正後の請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、訂正後の請求項2?7に係る発明は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、同様に、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


4-2 特許法第36条第6項第1号要件について

(1)侵害事件において、取付基板のない発明は実施例に開示されておらず発明の詳細な説明に記載された発明ではないから特許法第36条6項1号違反に該当すると主張されているので、この点について、検討する。

(2)確かに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、複数の泥土塗り付け面(泥土塗り付け板)を回転軸に取り付ける発明について、複数の泥土塗り付け面(泥土塗り付け板)を取付基板を用いずに回転軸に取り付ける実施例は開示されていない。

(3)しかしながら、本件訂正発明の課題は、発明の詳細な説明を参酌すると、「側面修復体の複数の泥土塗付け面にて旧畦の側面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押し付けて塗り固めるとともに、この旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に十分に固く締め固めて修復でき」るようにすること(段落【0005】参照)であるところ、当該課題を解決するためには、側面修復体を構成する泥土塗り付け板があればよく、取付基板を用いることによって得られる効果は、「請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、複数の泥土塗付け板は、回転軸に固着された略円錐形状の取付基板の外周面に順次配設して取り付けるので、この略円錐形状の取付基板の外周面に複数の泥土塗付け板をそれぞれ確実に取り付けることができ、この取付基板にて複数の泥土塗付け板が土圧を受けても複数の泥土塗付け板を確実に保持することができる。」(段落【0128】)との記載を参酌すると、複数の泥土塗付け板をそれぞれ確実に取り付けることができ、この取付基板にて複数の泥土塗付け板が土圧を受けても複数の泥土塗付け板を確実に保持することができるとする、本件訂正発明が解決する課題に関して、付加的なものに過ぎない。

(4)上記(3)から、取付基板を用いることは、本件訂正発明の課題を解決するために必須の構成とはいえない。

(5)また、刊行物2(第3図参照)によって、畦塗り機において、複数の羽根板(21)を、複数の羽根板(21)のそれぞれに対応して設けた支杆(20)を用いて回転軸(19)に固着する方法が知られていることからみて、複数の泥土塗り付け面(泥土塗り付け板)を回転軸に取り付けるに際して必ずしも取付基板を必要としないことは、当業者にとって明らかである。

(6)上記(3)?(5)から、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、複数の泥土塗り付け面(泥土塗り付け板)を取付基板を用いずに回転軸に取り付ける実施例が開示されていないとしても、当業者が出願時の技術常識を参酌すれば、取付基板を用いずに本願発明の課題を解決できることは明らかである。

(7)以上のとおりであるから、本件訂正発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。


4-3 特許法第36条第6項第2号要件について

(1)侵害事件において、円弧状に「湾曲した形状の」径大部という文言は略円錐形状の取付基板の外面から次第に離間する形状を示すものであるから、略円錐形状の取付基板を必須の構成要素としない当該文言は不明確なので特許法第36条6項2号違反に該当すると主張されているので、この点について、検討する。

(2)本件訂正発明における「円弧状に湾曲した形状の径大部」なる構成は、本件訂正発明における「側面修復体の回転方向と反対側に向かって」「回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした」という構成によって、回転軸と「円弧状に湾曲した形状の径大部」の各部位との相対的な位置関係が明確にされているため、略円錐形状の取付基板との相対的な位置関係が規定されていなくても明確に把握することができる。

(3)以上のとおりであるから、本件訂正発明は明確である。


4-4 独立特許要件についてのまとめ

上記4-1?4-3で検討した事項に加え、本件訂正発明が、独立して特許を受けることができないとするその他の理由は見いだせない。

したがって、本件訂正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができない発明とすることはできないから、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。


第5 むすび

以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
畦塗り機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して前記機枠に回転自在に設けられ前記ロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、を具備し、
前記畦塗り体は、前記機枠に回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固着され前記旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体と、この側面修復体に連設され前記旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体と、を有し、
前記側面修復体は、前記旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を、この側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成し、
これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、
これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されている
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】 複数の泥土塗付け面は、一端部を径小部とし他端部を径大部とする略扇形状の複数の泥土塗付け板にて形成し、この複数の泥土塗付け板は径大部の端縁部にこの端縁部から内側に向かって突設され隣接する泥土塗付け板の径小部の端縁部を取り付ける取付片をそれぞれ有し、この取付片にて隣接する泥土塗付け板の径小部の端縁部と径大部の端縁部との間に段差部を形成する、
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】 複数の泥土塗付け板は、回転軸に固着された略円錐形状の取付基板の外周面に順次配設して取り付ける、
ことを特徴とする請求項1または2記載の畦塗り機。
【請求項4】 上面修復体は、側面修復体の縮径端部に嵌合し旧畦の肩部を略円弧状面に修復する拡開部を形成した略円筒状の肩修復部と、この肩修復部に連設され旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項5】 上面修復部は、前記旧畦の上面部を修復する外周面を、この上面修復部の回転方向に所定の間隔をおいてこの上面修復部の回転中心を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの上面修復部の回転方向と反対側に向かってそれぞれ上面修復部の回転中心を中心として次第に回転半径を大きくした径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成した、
ことを特徴とする請求項4記載の畦塗り機。
【請求項6】 複数の泥土塗付け面は、肩修復部に連設された円筒体の外周面に取り付けられる複数の円弧状板にて形成し、この複数の円弧状板は上面修復部の回転方向を一端部とし上面修復部の回転方向と反対側を他端部とし、この円弧状板の一端部上に隣接する円弧状板の他端部を重合固定して、複数の円弧状板の一端部を回転半径を小さくした径小部とするとともに複数の円弧状板の他端部を回転半径を大きくした径大部とする、
ことを特徴とする請求項5記載の畦塗り機。
【請求項7】 側面修復体は、機枠に回転自在に設けられた回転軸にこの回転軸を中心として偏心回転可能に設けた、
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項8】 トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して前記機枠に回転自在に設けられ前記ロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、を具備し、
前記畦塗り体は、前記機枠に回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固着され前記旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体と、この側面修復体に連設され前記旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体と、を有し、
前記側面修復体は、略円錐形状の取付基板およびこの取付基板の外周面に沿って配設された略扇形状の複数の泥土塗付け板を有し、
前記複数の泥土塗付け板の各々は、前記側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記取付基板の外面から次第に離間する円弧状に湾曲した形状にそれぞれ形成されている
ことを特徴とする畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は畦塗り機に係り、主として水田を区画する旧畦を畦塗り修復して整畦するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の畦塗り機としては、たとえば、特開平8-9706号公報に記載されているように、トラクタに連結する機枠に左右方向の伝導ケースを突設し、この伝導ケースに畦際の土を掘土する回転自在の掘土ロータリ及び前記トラクタの車輪の外側方に突出して前記掘土ロータリからの掘土を旧畦上に落下させる誘導部材をそれぞれ固定し、この誘導部材の後方に位置して前記機枠に固定された前後方向の伝導ケースに旧畦上に落下された盛土を掻き込んで畦塗り整畦する整畦体を回転自在に軸架し、この整畦体は畦斜面を形成する笠状回転体と、この笠状回転体の頂部側の中心部に軸方向に突設した円筒体と、を有し、前記笠状回転体の外周面を多数本の稜線角部を放射状に配設した多角錐台の外面形状に形成する構成が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に記載の構成では、整畦体の笠状回転体の外周面の多数本の稜線角部で畦斜面(旧畦の側面部)の盛土を押し付けて畦斜面に塗り固めるようにしたものであるが、この際、多数本の稜線角部で盛土を掻き出すことも少なくなく、畦斜面の盛土を畦斜面の塗り固めに十分に生かすことができず、また、笠状回転体の外周面の多数本の稜線角部はこの整畦体を駆動回転する回転軸を中心として同じ回転半径でそれぞれ形成されているため、この多数本の稜線角部は畦斜面の盛土を同じ押付力で畦斜面に押し付けて塗り固めることができても、盛土を畦斜面に徐々に強く押し付けて塗り固めることができず、畦斜面を十分に固く締め固めることができない、という問題がある。
【0004】
また、円筒体の外周面にて畦上の盛土を塗り固めるため、畦上面の盛土を同じ押付力で畦上面に押し付けて塗り固めることができても、徐々に強く押し付けて塗り固めることができず、畦上面を十分に固く締め固めることができず、整畦後の畦は畦斜面と畦上面との連続部に形成される角部から崩れ易い、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、側面修復体の複数の泥土塗付け面にて旧畦の側面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押し付けて塗り固めるとともに、この旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に十分に固く締め固めて修復でき、また、上面修復体の肩修復部にて旧畦の肩部を固く締め固めて略円弧状面に修復できるとともに、この上面修復体の複数の泥土塗付け面にて泥土を旧畦の上面部に徐々に強く押し付けて塗り固めるとともに、この旧畦の上面部を水平状に固く締め固めて修復でき、全体として崩れ難く整畦できる畦塗り機を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の畦塗り機は、トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して前記機枠に回転自在に設けられ前記ロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、を具備し、前記畦塗り体は、前記機枠に回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固着され前記旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体と、この側面修復体に連設され前記旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体と、を有し、前記側面修復体は、前記旧畦の側面部に泥土を塗り付ける外周面を、この側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて前記回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記回転軸を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成し、これら複数の泥土塗付け面は、前記径小部及び前記径大部を有する複数の泥土塗付け板にて形成し、これら複数の泥土塗付け板のうち隣接する泥土塗付け板の相互が連結されているものである。
【0007】
そして、トラクタの懸架機構にて機枠が旧畦際に沿って牽引進行されるとともに、この機枠に設けられたロータリー及び畦塗り体がそれぞれ駆動回転されることにより、このロータリーの各切削刃にて旧畦の側面部及び旧畦の畦際が順次切削されるとともに、これらの切削土が畦塗り用の泥土として畦塗り体に向かって跳ね上げ供給される。
【0008】
また、畦塗り体に供給された畦塗り用の泥土は、この畦塗り体の側面修復体にて旧畦の側面部に順次塗り付けられて十分に固く締め固められ旧畦の側面部が下方に向かって拡開した傾斜側面に修復されると同時に、この畦塗り体の上面修復体にて畦塗り用の泥土が旧畦の上面部に順次塗り付けられて十分に固く締め固められ旧畦の上面部が水平状面に修復される。
【0009】
この際、すなわち、側面修復体にて旧畦の側面部に泥土を塗り付けて修復する際、この側面修復体の外周面を、この側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成したことにより、この複数の泥土塗付け面にて旧畦の側面部にこの旧畦の側面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けられ、したがって、旧畦の側面部が十分に固く締め固められて下方に向かって拡開した傾斜面に順次修復される。
【0010】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、複数の泥土塗付け面は、一端部を径小部とし他端部を径大部とする略扇形状の複数の泥土塗付け板にて形成し、この複数の泥土塗付け板は径大部の端縁部にこの端縁部から内側に向かって突設され隣接する泥土塗付け板の径小部の端縁部を取り付ける取付片をそれぞれ有し、この取付片にて隣接する泥土塗付け板の径小部の端縁部と径大部の端縁部との間に段差部を形成する、ものである。
【0011】
そして、略扇形状の複数の泥土塗付け板は、その径大部の端縁部に突設された取付片に隣接する泥土塗付け板の径小部の端縁部を順次取り付けることにより、この複数の泥土塗付け板にて側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて回転半径を小さくした複数の径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かってそれぞれ次第に回転半径を大きくした円弧状の複数の径大部を有する側面修復体の外周面が構成される。
【0012】
また、この側面修復体が駆動回転されることにより、この複数の泥土塗付け板にて旧畦の側面部にこの旧畦の側面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けられ、したがって、旧畦の側面部が十分に固く締め固められて下方に向かって拡開した傾斜面に順次修復される。
【0013】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項1または2記載の畦塗り機において、複数の泥土塗付け板は、回転軸に固着された略円錐形状の取付基板の外周面に順次配設して取り付ける、ものである。
【0014】
そして、この略円錐形状の取付基板の外周面に複数の泥土塗付け板がそれぞれ確実に取り付けられ、この取付基板にて複数の泥土塗付け板が土圧を受けても複数の泥土塗付け板が確実に保持される。
【0015】
請求項4記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、上面修復体は、側面修復体の縮径端部に嵌合し旧畦の肩部を略円弧状面に修復する拡開部を形成した略円筒状の肩修復部と、この肩修復部に連設され旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復部と、を有する、ものである。
【0016】
そして、略円筒状の肩修復部にて旧畦の肩部が順次略円弧状面に修復されると同時に、上面修復部にて旧畦の上面部が順次水平状面に修復される。また、旧畦の肩部が順次略円弧状面に修復されることにより、整畦された畦が肩部から簡単に崩れことが防止される。
【0017】
請求項5記載の畦塗り機は、請求項4記載の畦塗り機において、上面修復部は、前記旧畦の上面部を修復する外周面を、この上面修復部の回転方向に所定の間隔をおいてこの上面修復部の回転中心を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの上面修復部の回転方向と反対側に向かってそれぞれ上面修復部の回転中心を中心として次第に回転半径を大きくした径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成した、ものである。
【0018】
そして、複数の泥土塗付け面にて旧畦の上面部にこの旧畦の上面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の上面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けられ、したがって、旧畦の上面部が十分に固く締め固められて水平状面に順次修復される。
【0019】
請求項6記載の畦塗り機は、請求項5記載の畦塗り機において、複数の泥土塗付け面は、肩修復部に連設された円筒体の外周面に取り付けられる複数の円弧状板にて形成し、この複数の円弧状板は上面修復部の回転方向を一端部とし上面修復部の回転方向と反対側を他端部とし、この円弧状板の一端部上に隣接する円弧状板の他端部を重合固定して、複数の円弧状板の一端部を回転半径を小さくした径小部とするとともに複数の円弧状板の他端部を回転半径を大きくした径大部とする、ものである。
【0020】
そして、複数の円弧状板は、この円弧状板の一端部上に隣接する円弧状板の他端部を重合固定して順次取り付けることにより、この複数の円弧状板にて上面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて回転半径を小さくした複数の径小部及びこの径小部からこの上面修復体の回転方向と反対側に向かってそれぞれ次第に回転半径を大きくした複数の径大部を有する上面修復体の外周面が構成される。
【0021】
また、この上面修復体が駆動回転されることにより、この複数の円弧状板にて旧畦の上面部にこの旧畦の上面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の上面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けられ、したがって、旧畦の上面部が十分に固く締め固められて水平状面に順次修復される。
【0022】
請求項7記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、側面修復体は、機枠に回転自在に設けられた回転軸にこの回転軸を中心として偏心回転可能に設けた、ものである。
【0023】
そして、側面修復体に供給された畦塗り用の泥土は、この側面修復体を構成する複数の泥土塗付け面の径大部にて泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押しつけ順次塗付けられるとともに、この複数の泥土塗付け面にて構成される側面修復体の外周面の偏心回転により泥土が旧畦の側面部に十分に固く締め固められ、したがって、旧畦の側面部が下方に向かって拡開した傾斜側面に順次固く修復される。
【0024】
請求項8記載の畦塗り機は、トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠に回転自在に設けられ畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有するロータリーと、このロータリーの後方に位置して前記機枠に回転自在に設けられ前記ロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体と、を具備し、前記畦塗り体は、前記機枠に回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固着され前記旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する側面修復体と、この側面修復体に連設され前記旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復体と、を有し、前記側面修復体は、略円錐形状の取付基板およびこの取付基板の外周面に沿って配設された略扇形状の複数の泥土塗付け板を有し、前記複数の泥土塗付け板の各々は、前記側面修復体の回転方向と反対側に向かって前記取付基板の外面から次第に離間する円弧状に湾曲した形状にそれぞれ形成されているものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
1は機枠で、この機枠1は中空角柱状の左右方向の主フレーム2を有し、この主フレーム2の両端部にロワアーム3がそれぞれ前下方に向かって傾斜して一体に突設され、この両側のロワアーム3の先端部に連結部4がそれぞれ突設され、この両側の連結部4は左右方向のロワピン5にてそれぞれ形成されている。
【0027】
また、前記主フレーム2の中間上部にマスト6が前上方に向かって傾斜して一体に突設され、このマスト6の先端部に連結部7が設けられ、この連結部7は着脱可能な連結ピン8にて形成されている。また、前記主フレーム2の下部に沿って板状の取付フレーム9が一体に固着され、この取付フレーム9の左右方向の略中間部に軸受体10にて前後方向の動力中継軸11が回転自在に軸架され、この動力中継軸11は前後に前記軸受体10の前後部から突出された連結軸部12をそれぞれ有している。
【0028】
また、前記主フレーム2の両側端部にこの主フレーム2の上下から後方に向かって取付板13がそれぞれ相対して平行に一体に突設され、この両側端部の上下の取付板13に上下方向の取付軸14がそれぞれ挿脱自在に取り付けられている。
【0029】
さらに、前記一方側のロワアーム3の外側部に上下面に開口した中空筒状のスタンドホルダー15が一体に固着され、前記他方側のロワアーム3の外側部に左右方向の支持アーム16が外側方に向かって水平状に一体に突設され、この支持アーム16の突出端部に上下面に開口した中空筒状のスタンドホルダー17が一体に固着されている。
【0030】
18は前記主フレーム2の後方に配置される機枠としての可動フレームで、この可動フレーム18は左右方向に延在した中空パイプ状のフレーム本体19を有し、このフレーム本体19の一端部に前後方向の第1の伝動ケース20が上下方向に回動自在に取り付けられ、前記フレーム本体19の他端部に前記第1の伝動ケース20と平行に前後方向の回動板21が上下方向に回動自在に取り付けられている。
【0031】
また、前記フレーム本体19は中間部に入力軸22を前方に向けて回転自在に突出したミッション23が設けられ、このミッション23の第1の出力軸24が前記フレーム本体19内の一方側に回転自在に設けられ、この第1の出力軸24の出力端部が前記第1の伝動ケース20の基端部内に回転自在に突出されている。
【0032】
また、前記ミッション23の第2の出力軸25が前記フレーム本体19内の他方側に回転自在に設けられている。また、前記ミッション23内に前記第1の出力軸24のベベルギヤ26、前記第2の出力軸25のベベルギヤ27及びこの両ベベルギヤ26,27に噛合した前記入力軸22のベベルギヤ28がそれぞれ設けられている。
【0033】
また、前記第1の伝動ケース20と前記回動板21との先端部間に前記フレーム本体19と平行に中空パイプ状の左右方向の第2の伝動ケース29が取り付けられ、この第2の伝動ケース29内に左右方向の伝動軸30が回転自在に設けられ、この伝動軸30の一端部が前記第1の伝動ケース20の先端部内に回転自在に突出され、この伝動軸30の突出端部は前記第1の出力軸24の出力端部に前記第1の伝動ケース20内に設けた連動媒体31を介して連動連結されている。
【0034】
つぎに、前記伝動軸30の他端部は前記第2の伝動ケース29の他端部に設けた軸受体32にて回転自在に軸支され、この伝動軸30の他端部にこの伝動軸30の延長方向の外側方に向かって畦塗り用の泥土を切削して後述する畦塗り体に跳ね上げるロータリー33が回転自在に連結されている。
【0035】
前記ロータリー33は前記伝動軸30の他端部に連結され旧畦Aに交差する方向の左右方向の回転軸34と、この回転軸34に軸方向に間隔をおいて周側部にブラケット35を介して放射状に突設された多数の切削刃36と、を有して構成され、この多数の切削刃36の中で外側端部に位置する切削刃36は他の切削刃36の長さより短くその先端部が内側方に向かって折り曲げ形成されている。
【0036】
また、前記回動板21の先端部に前記ロータリー33の前方面、上方面及び両側方面をそれぞれ被覆したカバー体37が固着されている。そして、前記ロータリー33がアップカット方向に回転駆動されることにより、その各切削刃36にて旧畦Aの側部及び畦際を畦塗り用の泥土として切削されるとともに、これらの泥土は前記カバー体37に案内されてこのカバー体37の後方面から後述する畦塗り体に跳ね上げ供給されるようになっている。
【0037】
また、前記フレーム本体19の他端部に後下方に向かって下降傾斜した前後方向の第3の伝動ケース38が固定され、この第3の伝動ケース38内に前記第2の出力軸25の出力端部が突出されている。また、前記第3の伝動ケース38の後端部に軸受体39が固定され、この軸受体39に旧畦Aに交差する方向の左右方向の回転軸40が回転自在に軸架され、この回転軸40の一端部が前記第3の伝動ケース38内に突出され、この回転軸40の突出端部は前記第2の出力軸25の出力端部に連動媒体41を介して連動連結されている。
【0038】
つぎに、前記回転軸40の他端部に前記ロータリー33の後方に位置してこのロータリー33の各切削刃36にて跳ね上げられた泥土を旧畦Aに塗り付けて旧畦Aを修復する畦塗り体42が固着されている。この畦塗り体42は後述するように前記回転軸40の他端部に固着され旧畦Aの側面部Bを下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する略円錐形状の側面修復体43と、この側面修復体43の縮径端部に一体に連設され旧畦Aの上面部Cを水平状面に修復する略円筒形状の上面修復体44と、を有している。
【0039】
そして、前記畦塗り体42は前記回転軸40にてダウンカット方向に駆動回転されることにより、その側面修復体43にて旧畦Aの側面部Bを下方に向かって拡開した傾斜側面に修復すると同時にその上面修復体44にて旧畦Aの上面部Cを水平状面に修復するようになっている。また、前記畦塗り体42は前記カバー体37に連続した延長カバー部37aにて上方部が被覆されるようになっている。
【0040】
つぎに、前記フレーム本体19の両側部に前後方向の連結アーム45がそれぞれ前方に向かって水平かつ平行に一体に固着され、この両側部の連結アーム45の先端部の上下に取付板46がそれぞれ相対して平行に一体に固着され、この両側部の上下の取付板46に前記両側部の取付軸14と略同間隔で上下方向の連結軸47がそれぞれ挿脱自在に装着されている。
【0041】
つぎに、前記機枠1の主フレーム2に平行リンク48にて前記可動フレーム18が左右方向に移動自在に連結され、この可動フレーム18の前記ロータリー33及び前記畦塗り体42がトラクタの一方側の車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及びトラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ移動可能になっている。
【0042】
前記平行リンク48は所定の間隔をおいて平行に配設される前後方向の一対のリンク49にて形成され、この一対のリンク49の一端部に形成された軸挿通部が前記主フレーム2の両側部の上下の取付板13間にそれぞれ挿入された状態で、この軸挿通部が前記取付軸14にてそれぞれ回動自在に取り付けられている。また、前記一対のリンク49の他端部に形成された軸挿通部が前記フレーム本体19の両側部の上下の取付板46間にそれぞれ挿入された状態で、この軸挿通部が前記連結軸47にてそれぞれ回動自在に取り付けられている。
【0043】
そして、前記一対のリンク49及びこの一対のリンク49を連結した両側部の連結アーム45にて前記機枠1の主フレーム2に前記可動フレーム18のフレーム本体19が所定の高さ位置に支持され、かつ、このフレーム本体19の他端部に固定された前記第3の伝動ケース38を介して前記畦塗り体42が所定の高さ位置に支持されている。
【0044】
そうして、前記一対のリンク49にて前記前側左右の取付軸14及び後側左右の連結軸47を介して前記機枠1の主フレーム2に対して前記可動フレーム18が左右方向に移動自在に連結支持されていることにより、この可動フレーム18の前記ロータリー33及び前記畦塗り体42がトラクタの一方側の車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及びトラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ移動可能になっている。
【0045】
つぎに、前記機枠1の主フレーム2に前記ロータリー33及び前記畦塗り体42を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた前記一対のリンク49を回動移動不能に支持する平行リンク支持手段52が回動自在に取り付けられている。
【0046】
前記平行リンク支持手段52は前記一対のリンク49及びこの一対のリンク49の両端部間を結んで形成される平行四辺形の一方の対角位置に配設される支持片53にて形成され、この支持片53は一端部が前記主フレーム2の一方の取付軸14の下端部に回動自在に取り付けられ、その他側部にこの支持片53の他端部に向かって所定の間隔をおいて離間し前記他方の連結軸47に係脱自在に係合する複数の係合孔54がそれぞれ形成されている。
【0047】
つぎに、前記第3の伝動ケース38の前端部に略コ字形状のブラケット55が前方に向かって一体に突設され、このブラケット55に前記回動板21を介して前記ロータリー33を上下方向に設定位置を調節可能に支持する調節手段56が取り付けられている。
【0048】
前記調節手段56は、前記回動板21に突設された略L字形状のブラケット57に下端部が回動自在に軸架された上下方向の調節支杆58と、この調節支杆58に回動自在に螺着された調節螺杆59と、この調節螺杆59を回動自在に挿通支持しかつ前記第3の伝動ケース38のブラケット55に回動自在に支持されたブロック状の支持体60と、前記調節螺杆59を回動操作する操作ハンドル61と、を有して構成されている。
【0049】
そして、前記操作ハンドル61を回動操作することにより、この調節螺杆59にて調節支杆58が上下動されるとともに、この調節支杆58にてブラケット57を介して回動板21が前記フレーム本体19を中心として上下方向に回動され、かつ、この回動板21にて一端部が第1の伝動ケース20に支持されている第2の伝動ケース29が上下方向に回動され、この第2の伝動ケース29に連結したロータリー33が上下方向に設定位置が調節されるようになっている。
【0050】
つぎに、前記畦塗り体42は、前記回転軸40の多角形軸部62に嵌合してボルト・ナットにて連結されこの回転軸40にて駆動回転される中空多角形状に形成された回転軸としての左右方向の軸受体63と、この軸受体63の外端部に固着すなわちこの軸受体63を中心部に固着した円盤状のフランジ64と、このフランジ64に連結され旧畦Aの側面部Bを下方に向かって拡開した傾斜側面に修復する前記略円錐形状の側面修復体43と、この側面修復体43の縮径端部に位置して前記フランジ64に連結され旧畦Aの上面部Cを水平状面に修復する前記略円筒形状の上面修復体44と、を有している。
【0051】
前記側面修復体43は、前記フランジ64の外側部に環状の縮径端部65を接合し前記第3の伝動ケース38に向かって拡開した略円錐形状の取付基板66と、この取付基板66の外周面に沿って順次配設された略扇形状の複数の泥土塗付け板67と、を有して構成されている。
【0052】
また、前記複数の泥土塗付け板67は、前記軸受体63を中心として前記側面修復体43の回転方向の一端部を径小部68とし、この径小部68から前記側面修復体43の回転方向と反対側の他端部を径大部69とするようになっている。
【0053】
また、前記径小部68の端縁部70に複数の取付孔71が離間してそれぞれ形成され、前記径大部69の端縁部72にこの端縁部72から前記取付基板66に向かって略直角状に折り曲げられ隣接する泥土塗付け板67の径小部68の端縁部70を当接して取り付ける取付片73が形成され、この取付片73は隣接する泥土塗付け板67の径小部68の前記一方の取付孔71に連通する連通孔74を形成した突片75を有している。
【0054】
そして、前記複数の泥土塗付け板67は、その径小部68が前記取付基板66の外面に接合され、その径大部69が前記取付基板66の外面から次第に離間する円弧状に湾曲した形状にそれぞれ形成され、この各泥土塗付け板67の外周面が泥土塗付け面79として形成されている。
【0055】
また、前記複数の泥土塗付け板67は、前記取付片73の高さにより径大部69が径小部68から側面修復体43の回転方向と反対側に向かって次第に回転半径が大きくなるように形成されている。
【0056】
つぎに、前記取付基板66の外周面に沿って前記複数の泥土塗付け板67が順次配設され、これらの各泥土塗付け板67において隣接する泥土塗付け板67の相互の取付は、その一方の泥土塗付け板67の径小部68の端縁部70を前記取付基板66の外面に接合し、この径小部68の端縁部70に他方の泥土塗付け板67の径大部69の端縁部70に突設した取付片73を当接し、この取付片73の突片75の連通孔74から径小部68の端縁部70の一方の取付孔71及びこれらに連通して形成された前記取付基板66の一方の挿通孔76にボルト77を挿通し、このボルト77にナット78を締着する。
【0057】
また、一方の泥土塗付け板67の径小部68の他方の取付孔71から前記取付基板66の他方の挿通孔76にボルト77を挿通し、このボルト77にナット78を締着する。このようにして、前記取付基板66の外周面に沿って前記複数の泥土塗付け板67が順次取り付けられている。
【0058】
そして、前記各泥土塗付け板67の泥土塗付け面79にて旧畦Aの側面部Bに泥土を塗付ける側面修復体43の外周面80が構成され、この外周面80に側面修復体43の回転方向に所定の間隔をおいて側面修復体43の縮径端部65から拡径端部に亘って前記軸受体63を中心として回転半径を小さくした複数の径小部68及びこの各径小部68から側面修復体43の回転方向と反対側に向かって前記軸受体63(回転軸)を中心として次第に回転半径を大きくした、すなわち、外方に向かって次第に突出した円弧状の複数の径大部69がそれぞれ形成され、かつ、前記径小部68の端縁部70と、この端縁部70に隣接する前記径大部69の端縁部72との間に複数の段差部81がそれそれ放射状に形成されている。
【0059】
つぎに、前記上面修復体44は、前記取付基板66の縮径端部65の外側部に取り付ける左右方向の円筒体82と、この円筒体82の側面修復体43側に位置して外周部に嵌合固定され旧畦Aの肩部Dを修復する略円筒状の肩修復部83と、この肩修復部83に連結され前記円筒体82の外側に位置して外周部に嵌合され旧畦Aの上面部Cを修復する略円筒形状の上面修復部84と、を有して構成されている。
【0060】
また、前記円筒体82は、内端部に前記取付基板66の縮径端部65の外側部に当接する内端板85が固定され、外端部に外端板86が固定され、前記内端板85と外端板86との間の中間部に固定された中間板87をそれぞれ有している。
【0061】
そして、前記多角形軸部62のフランジ64に取付基板66の縮径端部65を介して円筒体82の内端板85が当接された状態でこのフランジ64に円筒体82の中間板87から前記内端板85及び縮径端部65を挿通した複数のボルト82a及びナット82bにて円筒体82が一体に固着されている。また、前記中間板87に外端板86が複数のボルト82c及びナット82dにて一体に固着されている。
【0062】
また、前記肩修復部83は、前記各泥土塗付け板67の縮径端部88に位置する内端部に前記各泥土塗付け板67の縮径端部88に向かって次第に拡開しこの縮径端部88に嵌合する拡開部89を有して形成されている。
【0063】
また、前記上面修復部84は、前記円筒体82の外周部に取り付ける複数の円弧状板90にて形成され、この各円弧状板90は前記上面修復体44の回転方向の一端部を径小部91とし、前記上面修復体44の回転方向と反対側の他端部を径大部92として形成されている。
【0064】
また、前記各円弧状板90の一端部の径小部91に前記円筒体82に形成された複数の取付孔93に連通する複数の挿通孔94がそれぞれ形成され、前記各円弧状板90の他端部の径大部92に隣接する円弧状板90の一端部の径小部91の複数の挿通孔94及び前記円筒体82に形成された複数の取付孔93に連通する複数の挿通孔95がそれぞれ形成されている。
【0065】
そして、前記各円弧状板90は、その径小部91が前記円筒体82の外面に接合され、その径大部92が前記円筒体82の外面から次第に離間する円弧状に湾曲した形状にそれぞれ形成され、その外周面が泥土塗付け面96として形成されている。
【0066】
つぎに、前記円筒体82の外周面に沿って前記複数の円弧状板90が順次配設され、これらの各円弧状板90において隣接する円弧状板90の相互の取付は、その一方の円弧状板90の径小部91の端縁部を前記円筒体82の外面に接合し、この径小部91の端縁部に他方の円弧状板90の径大部92の端縁部を重合する。そして、この径大部92の複数の挿通孔95から径小部91の複数の挿通孔94及びこれらに連通して形成された前記円筒体82の複数の取付孔93にボルト97をそれぞれ挿通し、この各ボルト97にナット98をそれぞれ締着する。
【0067】
そして、前記円弧状板90の泥土塗付け面96にて旧畦Aの上面部Cに泥土を塗付ける上面修復部84の外周面99が構成され、この外周面99に上面修復部84の回転方向に所定の間隔をおいて上面修復部84を回転中心を中心として回転半径を小さくした複数の径小部91及びこの各径小部91から上面修復部84の回転方向と反対側に向かって上面修復部84の回転中心を中心として次第に回転半径を大きくした円弧状の複数の径大部92がそれぞれ形成されている。
【0068】
つぎに、前記実施の形態の作用を説明する。
【0069】
トラクタEの懸架機構Fすなわち、トップリンクa及び両側部のロワリンクbに連結されたクイックカプラcの上部フックdを機枠1の連結ピン8に係合するとともに前記クイックカプラcの左右の下部フックeを機枠1の両側部のロワピン5にそれぞれ係合する。
【0070】
また、トラクタEの動力取出軸(PTO軸)に動力伝達軸(図示せず)の一端部をユニバーサルジョイントを介して連結するとともに、この動力伝達軸の他端部を機枠1の動力中継軸11の前側部の連結軸部12にユニバーサルジョイントを介して連結する。
【0071】
さらに、機枠1の動力中継軸11の後側部の連結軸部12に動力伝達軸(図示せず)の一端部をユニバーサルジョイントを介して連結するとともに、この動力伝達軸の他端部を可動フレーム18のフレーム本体19に設けたミッション23の入力軸22にユニバーサルジョイントを介して連結する。
【0072】
つぎに、畦塗り作業時は、平行リンク支持手段52すなわち支持片53を連結軸47から取り外すことにより、平行リンク48の支持が解除される。そして、機枠1の主フレーム2に対して平行リンク48を介して可動フレーム18を外側方に向かって押動することにより、この平行リンク48にて可動フレーム18が主フレーム2に対して離間しつつ外側方に向かって水平移動され、この可動フレーム18のロータリー33及びこのロータリー33の後方に位置した畦塗り体42がトラクタEの一方側の車輪より外側方に突出される。
【0073】
また、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が畦塗り作業位置に突出移動された時点で、支持片53の所定の位置の係合孔54内に連結軸47を挿入するとともに、この連結軸47に支持片53を抜け止めする図示しない抜止めピンを装着することにより、この支持片53が平行リンク48の対角位置の一方の取付軸14と他方の連結軸47との間に掛け渡された状態で位置決めされる。
【0074】
そして、この支持片53にて平行リンク48が回動移動不能に支持されて位置固定されることにより、この可動フレーム18が位置固定されるとともに、この可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42がトラクタEの一方側の車輪より外側方に突出された畦塗り作業位置に位置決めされる。
【0075】
つぎに、トラクタEにて機枠1が旧畦A際に沿って牽引進行されるとともに、このトラクタEのPTO軸からの出力により動力伝達軸を介して動力中継軸11が回転され、この動力中継軸11にて動力伝達軸を介して可動フレーム18のミッション23の入力軸22が回転され、この入力軸22のベベルギヤ28にて第1の出力軸24のベベルギヤ26及び第2の出力軸25のベベルギヤ27がそれぞれ回転される。
【0076】
そして、第1の出力軸24にて第1の伝動ケース20内の連動媒体31及び第2の伝動ケース29内の伝動軸30がそれぞれ回転され、この伝動軸30にてロータリー33がアップカット方向に向かって駆動回転される。また、第2の出力軸25にて第3の伝動ケース38内の連動媒体41を介して回転軸40が回転され、この回転軸40にてこの回転軸40を中心として畦塗り体42がダウンカット方向に向かって泥土に対してスリップ回転する早い速度で駆動回転される。
【0077】
また、ロータリー33が駆動回転されることにより、このロータリー33の各切削刃36にて旧畦Aの側面部B及び旧畦A際が順次切削されるとともに、これらの切削土が各切削刃36にてカバー体37に沿って持ち回られ、かつ、このカバー体37の案内作用により畦塗り用の泥土として畦塗り体42に向かって供給される。
【0078】
この際、ロータリー33がアップカット方向に向かって駆動回転されることにより、このロータリー33の各切削刃36にて切削土がカバー体37に沿って持ち回られるとともに、これらの切削土が旧畦Aに対して上方から落下され、畦塗り体42の前方に畦塗り用の泥土として十分に供給される。また、切削土が旧畦Aに対して上方から落下供給されることにより、ロータリー33に畦塗り体42を可及的に近付けた位置に配設することができ、前後方向の全長を可及的に短小化することが可能になる。
【0079】
また、畦塗り体42に供給された畦塗り用の泥土は、この畦塗り体42の側面修復体43にて旧畦Aの側面部Bに沿って順次塗り付けられて十分に固く締め固められ、この旧畦Aの側面部Bは下方に向かって拡開した傾斜側面に順次修復されると同時に、この畦塗り体42の上面修復体44の肩修復部83にて旧畦Aの肩部Dに沿って順次塗り付けられ十分に固く締め固められ、この旧畦Aの肩部Dが円弧状に順次修復されるとともに、この上面修復体44の上面修復部84にて旧畦Aの上面部Cに沿って順次塗り付けられて十分に固く締め固められ、この旧畦Aの上面部Cが水平状面に順次修復される。
【0080】
この際、側面修復体43の外周面80を、この側面修復体43の回転方向に所定の間隔をおいて縮径端部から拡径端部に亘って回転半径を小さくした複数の径小部68及びこの各径小部68からこの側面修復体43の回転方向と反対側に向かってそれぞれ次第に回転半径を大きくした円弧状の複数の径大部69を有する複数の泥土塗付け面79にて形成したことにより、この複数の泥土塗付け面79にて旧畦Aの側面部Bにこの旧畦Aの側面部Bの泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく順次塗り付けられ、かつ、この複数の径大部69にて旧畦Aの側面部Bに徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けられる。
【0081】
また、側面修復体43の外周面80を形成した泥土塗付け面79を有する複数の泥土塗付け板67は、回転軸としての軸受体63に固着された略円錐形状の取付基板66の外周面に順次配設して取り付けられていることにより、この略円錐形状の取付基板66の外周面に複数の泥土塗付け板67がそれぞれ確実に取り付けられ、この取付基板66にて複数の泥土塗付け板67が旧畦Aの側面部Bに泥土を塗り付ける際に強い土圧を受けても複数の泥土塗付け板67が確実に保持され、複数の泥土塗付け板67が変形することを防止される。
【0082】
したがって、側面修復体43にて旧畦Aの側面部Bが十分に固く締め固められて下方に向かって拡開した傾斜側面に順次修復される。
【0083】
また、上面修復部84の外周面99を、この上面修復部84の回転方向に所定の間隔をおいてこの上面修復部84の回転中心を中心として回転半径を小さくした複数の径小部91及びこの複数の径小部91からこの上面修復部84の回転方向と反対側に向かってそれぞれ上面修復部84の回転中心を中心として次第に回転半径を大きくした複数の径大部92を有する複数の泥土塗付け面96にて形成したことにより、この複数の泥土塗付け面96にて旧畦Aの上面部Cにこの旧畦Aの上面部Cの泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく塗付けられ、この複数の径大部92にて旧畦Aの上面部Cに泥土が徐々に強く押し付けられて順次固く塗り付けられる。
【0084】
また、上面修復部84の外周面99を形成した泥土塗付け面96を有する複数の円弧状板90は、円筒体82の外周面に順次配設して複数の円弧状板90の一端部の径小部91上に隣接する円弧状板90の他端部の径大部92をそれぞれ重合固定して取り付けられていることにより、この円筒体82にて複数の円弧状板90が旧畦Aの上面部Cに泥土を塗り付ける際に強い土圧を受けても複数の円弧状板90が確実に保持され、複数の円弧状板90が変形することを防止される。
【0085】
したがって、上面修復部84にて旧畦Aの上面部Cが十分に固く締め固められて水平状面に順次修復される。
【0086】
このようにして、畦塗り体42の側面修復体43及び上面修復体44にて旧畦Aの側面部B及び旧畦Aの上面部Cがそれぞれ十分に固く締め固められて旧畦Aが所定の形態に順次整畦される。
【0087】
つぎに、非畦塗り作業時は、平行リンク支持手段52の支持片53を連結軸47から取り外すことにより、平行リンク48の支持が解除される。そして、機枠1の主フレーム2に対して平行リンク48を介して可動フレーム18を内側方に向かって押動することにより、この平行リンク48にて可動フレーム18が主フレーム2に対して接近しつつ内側方に向かって水平移動され、この可動フレーム18のロータリー33及びこのロータリー33の後方に位置した畦塗り体42がトラクタEの内側方に後退される。
【0088】
この際、すなわち、可動フレーム18並びにこの可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42を非畦塗り作業位置に後退移動する際に、このロータリー33すなわち、ロータリー33のカバー体37が機枠1の一方側のロワピン5またはロワアーム3に当接して非畦塗り作業位置に移動できない場合には、調節手段56を調節操作することにより、ロータリー33及びカバー体37が機枠1の一方側のロワピン5またはロワアーム3から離間した位置に下降回動される。したがって、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が非畦塗り作業位置にスムーズに後退移動される。
【0089】
すなわち、調節手段56の操作ハンドル61を回動操作することにより、この操作ハンドル61にて調節螺杆59が回動され、この調節螺杆59にて調節支杆58が下降され、この調節支杆58の下端部にてブラケット57を介して回動板21が下方に向かって押動される。そして、この回動板21が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として下降回動され、この回動板21により下降される第2の伝動ケース29にて第1の伝動ケース20が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として下降回動される。
【0090】
したがって、回動板21及び第1の伝動ケース20によりフレーム本体19を中心として下降回動される第2の伝動ケース29にてロータリー33及びカバー体37がこの第2の伝動ケース29と同時に下降回動され、このロータリー33及びカバー体37が機枠1の一方側のロワピン5またはロワアーム3から離間した位置に下降回動され、このロータリー33及びカバー体37が一方側のロワピン5またはロワアーム3に当接することなく非畦塗り作業位置にスムーズに後退移動される。
【0091】
また、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が非畦塗り作業位置に後退移動された時点で、支持片53の所定の位置の係合孔54内に他方の連結軸47を挿入するとともに、この連結軸47に支持片53を抜け止めする抜止めピンを装着することにより、この支持片53が平行リンク48の対角位置の一方の取付軸14と他方の連結軸47との間に掛け渡された状態で位置決めされる。
【0092】
そして、この支持片53にて平行リンク48が回動移動不能に支持されて位置固定されることにより、この可動フレーム18が位置固定されるとともに、この可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42がトラクタAの内側方に後退移動された非畦塗り作業位置に位置決めされ、このロータリー33及び畦塗り体42がそれぞれトラクタAの一方側の車輪から外側方に大きく突出することが防止される。
【0093】
したがって、機枠1の後方の所定位置に可動フレーム18並びにこの可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が配置固定され、このロータリー33及び畦塗り体42にてトラクタA側に偏荷重が生じて重量バランスが損なわれることがなく、道路走行時及び圃場への出入り時の安定走行が確保され、かつ、道路走行時の交通障害の問題も解消される。
【0094】
つぎに、畦塗り作業時は、ロータリー33及びカバー体37が一方側のロワピン5またはロワアーム3から離間した位置に下降され状態を呈しているので、可動フレーム18並びにこの可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42をスムーズに畦塗り作業位置に移動される。
【0095】
そして、調節手段56の操作ハンドル61を、前記可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42を非畦塗り作業位置に後退移動させる場合と反対方向に向かって回動して調節操作することにより、この操作ハンドル61にて調節螺杆59が回動され、この調節螺杆59にて調節支杆58が上昇され、この調節支杆58の下端部にてブラケット57を介して回動板21が引上げ回動される。そして、この回動板21が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として上昇回動され、この回動板21により上昇される第2の伝動ケース29にて第1の伝動ケース20が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として上昇回動される。
【0096】
したがって、回動板21及び第1の伝動ケース20によりフレーム本体19を中心として上昇回動される第2の伝動ケース29にてロータリー33及びカバー体37がこの第2の伝動ケース29と同時に上昇回動され、このロータリー33が旧畦Aを切削する所定の位置に上昇される。
【0097】
また、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置にオフセットされる際は、機枠1の主フレーム2の両側部の取付軸14及び可動フレーム18の両側部の連結軸47を中心として一対のリンク49がそれぞれ回動され、この一対のリンク49にて機枠1の主フレーム2に対して可動フレーム18がスムーズに移動され、この可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が容易に畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置にオフセットされる。
【0098】
つぎに、前記実施の形態では、畦塗り体42の略円錐形状の側面修復体43の中心部に回転軸としての軸受体63を固着し、この軸受体63を中心として畦塗り体42の側面修復体43及び上面修復体44を回転させる場合について説明したが、これに限らず、畦塗り体42の側面修復体43及び上面修復体44は軸受体63を中心として偏心回転させるようにしてもよい。
【0099】
この場合は、たとえば、図10及び図11に示すように、軸受体63の外端部に円盤状のフランジ64を固着する際に軸受体63の外端部に円盤状のフランジ64の偏心位置を一体に固着し、すなわち、円盤状のフランジ64の偏心位置に軸受体63を一体に固着し、このフランジ64の周縁部に前記実施の形態に用いた複数のボルト82aを挿通する複数の挿通孔100をそれぞれ形成する。
【0100】
そして、軸受体63のフランジ64に取付基板66の縮径端部65を介して円筒体82の内端板85を当接した状態でこのフランジ64の複数の挿通孔100に円筒体82の中間板87から前記内端板85及び縮径端部65を挿通した複数のボルト82aをそれぞれ挿通し、これらの各ボルト82aにナット82bをそれぞれ螺着して締め付けることにより、これらが共締めされて一体に固着されている。
【0101】
その他の構成については前記実施の形態の場合と同様であるから前記実施の形態と同一構成については前記実施の形態に用いた符号を記入してそれらの説明を省略する。
【0102】
このように構成することにより、回転軸40にて軸受体63が回転されるとともに、この軸受体63を中心として畦塗り体42の側面修復体43及び上面修復体44がそれぞれ図12に示すように偏心回転される。
【0103】
そして、側面修復体43に供給された畦塗り用の泥土は、この側面修復体43を構成する複数の泥土塗付け面79の径大部69にて泥土を掻き出すことなく旧畦Aの側面部Bに徐々に強く押しつけ順次塗付けられるとともに、この複数の泥土塗付け面79にて構成される側面修復体43の外周面80の偏心回転により泥土が旧畦Aの側面部Bに十分に固く締め固められ、したがって、旧畦Aの側面部Bが下方に向かって拡開した傾斜側面に順次固く修復される。
【0104】
すなわち、側面修復体43の外周面80は図12に示すように実線に示す状態と2点鎖線に示す状態とを繰り返しながら回転進行され、旧畦Aの側面部Bに対しては2点鎖線に示すように複数の泥土塗付け面79が順次旧畦Aの側面部Bに食い込む状態に突出し、これらの泥土塗付け面79にて旧畦Aの側面部Bの泥土が旧畦Aの側面部Bに強く押圧されながら順次塗付けられ、したがって、旧畦Aの側面部Bの泥土が固く締め固められ、この旧畦Aの側面部Bが下方に向かって拡開した傾斜側面に順次固く修復される。
【0105】
また、上面修復体44に供給された畦塗り用の泥土は、この上面修復体44を構成する複数の泥土塗付け面96の径大部92にて泥土を掻き出すことなく旧畦Aの上面部Cに徐々に強く押しつけ順次塗付けられるとともに、この複数の泥土塗付け面96にて構成される上面修復体44の外周面99の偏心回転により泥土が旧畦Aの上面部Cに十分に固く締め固められ、したがって、旧畦Aの上面部Cが水平状面に順次固く修復される。
【0106】
すなわち、上面修復体44の外周面99は図12に示すように実線に示す状態と2点鎖線に示す状態とを繰り返しながら回転進行され、旧畦Aの上面部Cに対しては2点鎖線に示すように複数の泥土塗付け面96が順次旧畦Aの上面部Cに食い込む状態に突出し、これらの泥土塗付け面96にて旧畦Aの上面部Cの泥土が旧畦Aの上面部Cに強く押圧されながら順次塗付けられ、したがって、旧畦Aの上面部Cの泥土が固く締め固められ、この旧畦Aの上面部Cが水平状面に順次固く修復される。
【0107】
さらに、肩修復部83に供給された畦塗り用の泥土は、この肩修復部83にてこの泥土を掻き出すことなく旧畦Aの肩部Dに沿って順次塗付けられて十分に固く締め固められ、この旧畦Aの肩部Dが円弧状面に順次修復される。
【0108】
すなわち、肩修復部83の外周面部は図12に示すように実線に示す状態と2点鎖線に示す状態とを繰り返しながら回転進行され、旧畦Aの肩部Dに対しては2点鎖線に示すように肩修復部83の外周面部が順次旧畦Aの肩部Dに食い込む状態に突出し、旧畦Aの肩部Dの泥土が旧畦Aの肩部Dに強く押圧されながら順次塗付けられ、したがって、旧畦Aの肩部Dの泥土が固く締め固められ、この旧畦Aの肩部Dが円弧状面に順次固く修復される。
【0109】
したがって、畦塗り体42の側面修復体43、上面修復体44及び肩修復部83にて全体として旧畦Aが所定の形態に固く修復されて整畦される。
【0110】
つぎに、前記図10乃至図12に示す実施の形態では、畦塗り体42の側面修復体43及び上面修復体44は偏心位置に設けた回転軸としての軸受体63を中心として偏心回転させる場合について説明したが、これに限らず、畦塗り体42の側面修復体43は、回転軸としての軸受体63を偏心位置に設けることなく略円錐形状の取付基板66の中心部に軸受体63を設け、この軸受体63を中心として取付基板66の外周面に沿って順次配設する略扇形状の複数の泥土塗付け板67を偏心回転させるようにしてもよい。
【0111】
この場合は、たとえば、図13及び図14に示すように、取付基板66の外周面に沿って順次配設する複数の泥土塗付け板67は、6枚の泥土塗付け板67a,67b,67c,67d,67e,67fにて構成され、これらの各泥土塗付け板67a,67b,67c,67d,67e,67fの相互の取り付けは、まず、隣接する泥土塗付け板67a,67bの相互及び隣接する泥土塗付け板67a,67fの相互では、その径小部68の端縁部70を取付基板66の外面にそれぞれ接合し、この径小部68の端縁部70に隣接する径大部69の端縁部70に突設した取付片73をそれぞれ当接し、これらの相互を前記実施の形態の場合と同様にボルト77・ナット78にてそれぞれ連結する。
【0112】
また、隣接する泥土塗付け板67b,67cの相互及び隣接する泥土塗付け板67e,67fの相互では、その径小部68の端縁部70を取付基板66の外面にそれぞれ接合し、この径小部68の端縁部70の外側部に所定の高さの第1の外側スペーサ102を配置するとともに、この端縁部70の内側部に前記第1の外側スペーサ102の高さの略半分の高さの第1の内側スペーサ103を配置し、この端縁部70の第1の外側スペーサ102及び第1の内側スペーサ103に隣接する径大部69の端縁部70に突設した取付片73をそれぞれ当接し、これらの相互を前記実施の形態の場合と同様にボルト77・ナット78にてそれぞれ連結する。
【0113】
また、隣接する泥土塗付け板67c,67dの相互及び隣接する泥土塗付け板67d,67eの相互では、その径小部68の端縁部70を取付基板66の外面にそれぞれ接合し、この径小部68の端縁部70の外側部に前記第1の外側スペーサ102の高さの略2倍大の高さの第2の外側スペーサ104を配置するとともに、この端縁部70の内側部に前記第1の外側スペーサ102と略同じ高さの第2の内側スペーサ105を配置し、この端縁部70の第2の外側スペーサ104及び第2の内側スペーサ105に隣接する径大部69の端縁部70に突設した取付片73をそれぞれ当接し、これらの相互を前記実施の形態の場合と同様にボルト77・ナット78にてそれぞれ連結する。
【0114】
そして、取付基板66の外周面に沿って順次配設固定された6枚の泥土塗付け板67a,67b,67c,67d,67e,67fは、その泥土塗付け板67c,67d,67e,67fの相互間にそれぞれ介在させた前記第1の外側スペーサ102と第2の外側スペーサ104及び第1の内側スペーサ103と第2の内側スペーサ105により、畦塗り体42の側面修復体43は全体的には略楕円形状に構成され、この側面修復体43は軸受体63を中心として偏心回転されるようになっている。
【0115】
その他の構成については前記実施の形態の場合と同様であるから前記実施の形態と同一構成については前記実施の形態に用いた符号を記入してそれらの説明を省略する。
【0116】
このように構成することにより、回転軸40にて軸受体63が回転されるとともに、この軸受体63を中心として畦塗り体42の側面修復体43が図14に示すように偏心回転される。
【0117】
そして、側面修復体43に供給された畦塗り用の泥土は、この側面修復体43を構成する複数の泥土塗付け面79の径大部69にて泥土を掻き出すことなく旧畦Aの側面部Bに徐々に強く押しつけ順次塗付けられるとともに、この複数の泥土塗付け面79にて構成される側面修復体43の外周面80の偏心回転により泥土が旧畦Aの側面部Bに十分に固く締め固められ、したがって、旧畦Aの側面部Bが下方に向かって拡開した傾斜側面に順次固く修復される。
【0118】
すなわち、側面修復体43の外周面80は図14に示すように実線に示す状態と2点鎖線に示す状態とを繰り返しながら回転進行され、旧畦Aの側面部Bに対しては2点鎖線に示すように複数の泥土塗付け面79が順次旧畦Aの側面部Bに食い込む状態に突出し、これらの泥土塗付け面79にて旧畦Aの側面部Bの泥土が旧畦Aの側面部Bに強く押圧されながら順次塗付けられ、したがって、旧畦Aの側面部Bの泥土が固く締め固められ、この旧畦Aの側面部Bが下方に向かって拡開した傾斜側面に順次固く修復される。
【0119】
また、上面修復体44に供給された畦塗り用の泥土は、この上面修復体44を構成する複数の泥土塗付け面96の径大部92にて泥土を掻き出すことなく旧畦Aの上面部Cに徐々に強く押しつけ順次塗付けられるとともに、この複数の泥土塗付け面96にて泥土が旧畦Aの上面部Cに十分に固く締め固められ、したがって、旧畦Aの上面部Cが水平状面に順次固く修復される。
【0120】
さらに、肩修復部83に供給された畦塗り用の泥土は、この肩修復部83にてこの泥土を掻き出すことなく旧畦Aの肩部Dに沿って順次塗付けられて十分に固く締め固められ、この旧畦Aの肩部Dが円弧状面に順次修復される。
【0121】
したがって、畦塗り体42の側面修復体43、上面修復体44及び肩修復部83にて全体として旧畦Aが所定の形態に固く修復されて整畦される。
【0122】
なお、各泥土塗付け板67a,67b,67c,67d,67e,67fの相互の取り付け時には第1の外側スペーサ102及び第2の外側スペーサ104並びに第1の内側スペーサ103及び第2の内側スペーサ105はそれぞれ必要に応じて前記配置関係のもとで高さを変えて組み付けることにより、側面修復体43の偏心量が可変調整され、この側面修復体43が軸受体63を中心として偏心回転される。
【0123】
また、前記実施の形態では、第1の外側スペーサ102及び第2の外側スペーサ104並びに第1の内側スペーサ103及び第2の内側スペーサ105を用いて軸受体63を中心として側面修復体43を偏心回転させる場合について説明したが、これに限らず、側面修復体43はこの側面修復体43を構成する複数の泥土塗付け板67の径大部69の端縁部70にそれぞれの配置位置に応じて取付片73の高さを可変調整して形成するとともに、これらの泥土塗付け板67をそれぞれの取付片73を介して前記実施の形態の場合と同様に連結するようにしてもよい。
【0124】
このように構成することにより、側面修復体43は部品点数の少ない簡単な構成によって全体的には略楕円形状に構成され、この側面修復体43は軸受体63を中心として偏心回転される。そして、この側面修復体43の各泥土塗付け面79にて旧畦Aの側面部Bの泥土が旧畦Aの側面部Bに強く押圧されながら順次塗付けられ、したがって、旧畦Aの側面部Bの泥土が固く締め固められ、この旧畦Aの側面部Bが下方に向かって拡開した傾斜側面に順次固く修復される。
【0125】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、側面修復体の外周面を、この側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて回転軸を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かって次第に回転半径を大きくした円弧状に湾曲した形状の径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成したので、この複数の泥土塗付け面にて旧畦の側面部にこの旧畦の側面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けることができ、したがって、旧畦の側面部が十分に固く締め固められて下方に向かって拡開した傾斜側面に修復して整畦することができ、この畦の傾斜側面が崩れ落ちることを確実に防止できる。
【0126】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、略扇形状の複数の泥土塗付け板は、その径大部の端縁部に突設された取付片に隣接する泥土塗付け板の径小部の端縁部を順次取り付けることにより、この複数の泥土塗付け板にて側面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて縮径端部から拡径端部に亘って回転半径を小さくした複数の径小部及びこの径小部からこの側面修復体の回転方向と反対側に向かってそれぞれ次第に回転半径を大きくした円弧状の複数の径大部を有する複数の泥土塗付け面からなる側面修復体の外周面を簡単に構成することができる。
【0127】
また、側面修復体が駆動回転されることにより、この複数の泥土塗付け板の泥土塗付け面にて旧畦の側面部にこの旧畦の側面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けることができ、したがって、旧畦の側面部が十分に固く締め固められて下方に向かって拡開した傾斜側面に修復して整畦することができる。
【0128】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、複数の泥土塗付け板は、回転軸に固着された略円錐形状の取付基板の外周面に順次配設して取り付けるので、この略円錐形状の取付基板の外周面に複数の泥土塗付け板をそれぞれ確実に取り付けることができ、この取付基板にて複数の泥土塗付け板が土圧を受けても複数の泥土塗付け板を確実に保持することができる。
【0129】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、上面修復体は、側面修復体の縮径端部に嵌合し旧畦の肩部を略円弧状面に修復する拡開部を形成した略円筒状の肩修復部と、この肩修復部に連設され旧畦の上面部を水平状面に修復する上面修復部とを有するので、略円筒状の肩修復部にて旧畦の肩部を順次略円弧状面に修復できると同時に、上面修復部にて旧畦の上面部を順次水平状面に修復できる。また、旧畦の肩部が順次略円弧状面に修復されることにより、整畦された畦が肩部から簡単に崩れることを防止できる。
【0130】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果に加え、上面修復部は、旧畦の上面部を修復する外周面を、この上面修復部の回転方向に所定の間隔をおいてこの上面修復部の回転中心を中心として回転半径を小さくした径小部及びこの径小部からこの上面修復部の回転方向と反対側に向かってそれぞれ上面修復部の回転中心を中心として次第に回転半径を大きくした径大部を有する複数の泥土塗付け面にて形成したので、、複数の泥土塗付け面にて旧畦の上面部にこの旧畦の上面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の上面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けることができ、したがって、旧畦の上面部が十分に固く締め固められて水平状面に順次修復して整畦することができ、この畦が水平状面から簡単に崩れることを防止できる。
【0131】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、複数の円弧状板は、この円弧状板の一端部上に隣接する円弧状板の他端部を重合固定して順次取り付けることにより、この複数の円弧状板にて上面修復体の回転方向に所定の間隔をおいて回転半径を小さくした複数の径小部及びこの径小部からこの上面修復体の回転方向と反対側に向かってそれぞれ次第に回転半径を大きくした複数の径大部を有する複数の泥土塗付け面からなる上面修復体の外周面を簡単に構成することができる。
【0132】
また、この上面修復体が駆動回転されることにより、この複数の円弧状板の泥土塗付け面にて旧畦の上面部にこの旧畦の上面部の泥土を十分に生かしこの泥土を掻き出すことなく旧畦の上面部に徐々に強く押し付けて順次固く塗り付けることができ、したがって、旧畦の上面部が十分に固く締め固められて水平状面に順次修復して整畦することができる。
【0133】
請求項7の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、側面修復体は、機枠に回転自在に設けられた回転軸にこの回転軸を中心として偏心回転可能に設けたので、側面修復体に供給された畦塗り用の泥土は、この側面修復体を構成する複数の泥土塗付け面の径大部にて泥土を掻き出すことなく旧畦の側面部に徐々に強く押しつけ順次塗付けることができるとともに、この複数の泥土塗付け面にて構成される側面修復体の外周面が全体として偏心回転されることにより、この外周面にて泥土を旧畦の側面部に塗付けながら十分に固く締め固めることができ、したがって、旧畦の側面部を下方に向かって拡開した傾斜側面に順次固く修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施の形態を示す畦塗り機の平面図である。
【図2】
同上側面図である。
【図3】
同上畦塗り体の側面図である。
【図4】
同上断面図である。
【図5】
同上一部の分解斜視図である。
【図6】
同上泥土塗付け板の正面図である。
【図7】
同上泥土塗付け板を変形して半径を異なる状態にした説明図である。
【図8】
同上上面修復体の拡大断面図である。
【図9】
同上畦塗り作業状態を示す説明図である。
【図10】
他の実施の形態を示す畦塗り体の断面図である。
【図11】
同上回転軸の偏心状態を示す説明図である。
【図12】
同上畦塗り作業状態を示す説明図である。
【図13】
更に他の実施の形態を示す畦塗り体の側面図である。
【図14】
同上畦塗り作業状態を示す畦塗り体の断面図である。
【符号の説明】
1 機枠
4,7 連結部
33 ロータリー
36 切削刃
40,63 回転軸
42 畦塗り体
43 側面修復体
44 上面修復体
66 取付基板
67 泥土塗付け板
68,91 径小部
69,92 径大部
70,72 端縁部
73 取付片
79,96 泥土塗付け面
80,99 外周面
81 段差部
82 円筒体
83 肩修復部
84 上面修復部
89 拡開部
90 円弧状板
A 旧畦
B 側面部
C 上面部
D 肩部
E トラクタ
F 懸架機構
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-11-25 
結審通知日 2015-11-27 
審決日 2015-12-09 
出願番号 特願平9-130079
審決分類 P 1 41・ 856- Y (A01B)
P 1 41・ 854- Y (A01B)
P 1 41・ 851- Y (A01B)
P 1 41・ 853- Y (A01B)
P 1 41・ 832- Y (A01B)
P 1 41・ 855- Y (A01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
谷垣 圭二
登録日 2001-02-23 
登録番号 特許第3163269号(P3163269)
発明の名称 畦塗り機  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 聡  
代理人 山田 哲也  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 襄  

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