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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60H
管理番号 1309981
審判番号 不服2014-5706  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-27 
確定日 2016-01-13 
事件の表示 特願2008- 18983「自動車の環境管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月14日出願公開,特開2008-184154〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成20年(2008年)1月30日(パリ条約による優先権主張2007年1月30日 米国)の出願であって,平成26年1月28日付けで拒絶査定され,平成26年3月27日に拒絶査定不服審判が請求されると共に,同日付け手続補正書が提出された後,平成27年4月30日付けで当審の拒絶理由が通知され,平成27年6月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項3に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年6月9日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる(この補正により補正前の請求項1に「上記冷房装置は、電動コンプレッサーを含み、」との発明特定事項が実質的に追加された。)。
「フロントガラスと、自動車の各々の環境状態を検出する少なくとも一つのセンサと、空調システムと、を有し、
上記空調システムは、複数の機能を実行するよう動作可能な空調制御装置を含み、
上記複数の機能は、空気流を生成するファン装置、上記空気流を冷却する冷房装置、上記空調システムに導入される外気の量及び内気循環空気の量を制御する内気循環装置、上記空気流の向きを制御するモード装置、及び上記空気流を加熱する暖房装置の動作制御を含み、
上記機能の少なくとも一部は、上記フロントガラスの防曇を達成するために自動制御可能であって、
上記自動制御可能な機能の少なくとも一部は、自動車の乗員による複数の手動オーバーライドの少なくとも1つの制約を受ける
自動車の環境管理方法であって、
上記冷房装置は、電動コンプレッサーを含み、
上記自動車の特定の環境状態を判定する工程と、
上記判定された環境状態に基づいて、上記フロントガラスの防曇をいつ行うのが望ましいのかを判定する工程と、
上記複数の手動オーバーライドの状態を判定する工程と、
上記複数の手動オーバーライドがいずれも選択されていないと判定されたときにのみ、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行するのを許容する工程と、
上記複数の手動オーバーライドの少なくとも1つが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能を終了する、或いは、実行するのを許容しない工程と、
を備える自動車の環境管理方法。」

3.引用例
本願の優先日の前に日本国内において頒布され,当審の拒絶理由に引用した特開2005-306063号公報(以下,「引用例」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
本発明は、窓ガラスの曇りを判定して、窓ガラスの防曇制御を自動的に実行する自動制御方式の車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動制御方式の車両用空調装置では、夏期の冷房時には冷房用熱交換器をなす蒸発器の温度が冷房のための所定の低温となるように冷凍サイクルの圧縮機作動を制御し、また、冬期の暖房時には蒸発器の温度が窓ガラスの曇り防止のための除湿作用を発揮できる温度域となるようにように冷凍サイクルの圧縮機作動を制御している。
【0003】
このような従来技術の代表例として特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術では、車室内への吹出空気の目標温度TAOを車両の空調熱負荷条件に基づいて算出するとともに、この目標温度TAOに基づいて車室内温度制御のための第1目標蒸発器温度を算出している。
【0004】
また、車室内湿度を湿度センサにより検出し、この湿度センサの検出信号に基づいて車室内湿度制御のための第2目標蒸発器温度を算出し、更に、外気温等に基づいて窓ガラスの防曇制御のための第3目標蒸発器温度を算出している。
【0005】
そして、これら第1ないし第3目標蒸発器温度のうち、最低の温度を最終的に目標蒸発器温度として決定し、実際の蒸発器温度(具体的には蒸発器吹出空気温度)がこの目標蒸発器温度となるように冷凍サイクルの圧縮機作動を制御している。
【0006】
このような蒸発器温度の制御によって、車室内温度制御のみならず、車室内湿度を快適範囲に制御するとともに、窓ガラスの防曇制御を自動的に実行して、窓ガラスの曇り発生を未然に防止している。
【特許文献1】特許第3309528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蒸発器温度の制御のために冷凍サイクルの圧縮機を作動させることは当然に圧縮機駆動動力が必要となり、圧縮機駆動源をなす車両エンジンの燃費を悪化させることにつながる。そのため、一般的な車両(自動車)ユーザーにおいては、冷房の必要性が高い夏期以外の季節(秋、冬、春)になると、冷凍サイクルの圧縮機を作動させることはもったいないと判断して、空調パネルに備えられているエアコンスイッチ(圧縮機作動スイッチ)を手動操作によりオフ状態とし、圧縮機を強制的に停止させることがしばしば行われる。
【0008】
また、ユーザーによっては、冷風が直接吹き当たることが苦手なため、よほど暑い時以外はエアコンスイッチをオフ状態とし、圧縮機を強制的に停止させる場合もある。
【0009】
その結果、折角、窓ガラスの防曇制御を自動的に行う機能を備えているにもかかわらず、圧縮機の強制停止によって窓ガラスの曇りを発生しやすい車室内高湿度状況を引き起こす。そして、窓ガラスの曇りが視認できるレベルに拡大してから車両ユーザーがエアコンスイッチをオン操作するのであるが、一旦発生した曇りを解消するには時間がかかり、その間車両の前方視界が悪化した状態に維持され、車両の運転に危険を生じる。
【0010】
更に、エアコンスイッチをオン操作して冷凍サイクルの圧縮機を作動させると、「蒸発器の除湿作用により窓ガラスの防曇機能を発揮できる」ことを知らないユーザーの場合は、窓ガラスの曇り発生に対して適切な対処ができない。その結果、前方視界が悪化した危険な状態が長時間持続されるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記点に鑑み、窓ガラスの防曇制御を自動的に行う機能を備えた自動制御方式の車両用空調装置において、圧縮機駆動動力の省動力化と窓ガラスの防曇性確保との両立を図ることを目的とする。」

・「【0031】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の全体構成の概要を示すもので、車両用空調装置は車室内最前部の計器盤(図示せず)の内側部に配設される室内空調ユニット1を備えている。この室内空調ユニット1はケース2を有し、このケース2内に車室内へ向かって空気が送風される空気通路を構成する。
【0032】
このケース2の空気通路の最上流部に内気導入口3および外気導入口4を有する内外気切替箱5を配置している。この内外気切替箱5内に、内外気切替手段としての内外気切替ドア6を回転自在に配置している。
【0033】
この内外気切替ドア6はサーボモータ7によって駆動されるもので、内気導入口3より内気(車室内空気)を導入する内気モードと外気導入口4より外気(車室外空気)を導入する外気モードとを切り替える。
【0034】
内外気切替箱5の下流側には車室内に向かう空気流を発生させる電動式の送風機8を配置している。この送風機8は、遠心式の送風ファン8aをモータ8bにより駆動するようになっている。送風機8の下流側にはケース2内を流れる空気を冷却する蒸発器9を配置している。この蒸発器9は、送風機8の送風空気を冷却する冷房用熱交換器で、冷凍サイクル装置10を構成する要素の一つである。
【0035】
なお、冷凍サイクル装置10は、圧縮機11の吐出側から、凝縮器12、受液器13および減圧手段をなす膨張弁14を介して蒸発器9に冷媒が循環するように形成された周知のものである。凝縮器12には電動式の冷却ファン12aによって室外空気(冷却空気)が送風される。
【0036】
冷凍サイクル装置10において、圧縮機11は電磁クラッチ11aを介して車両エンジン(図示せず)により駆動される。従って、電磁クラッチ11aの通電の断続により圧縮機11の作動を断続制御できる。また、蒸発器9は、膨張弁14にて減圧された後の低温低圧の気液2相状態の冷媒が送風機8の送風空気から吸熱して蒸発することにより、送風空気を冷却する。
【0037】
一方、室内空調ユニット1において、蒸発器9の下流側にはケース2内を流れる空気を加熱するヒータコア15を配置している。このヒータコア15は車両エンジンの温水(エンジン冷却水)を熱源として、蒸発器9通過後の空気(冷風)を加熱する暖房用熱交換器である。ヒータコア15の側方にはバイパス通路16が形成され、このバイパス通路16をヒータコア15のバイパス空気(冷風)が流れる。
【0038】
蒸発器9とヒータコア15との間に温度調整手段をなすエアミックスドア17を回転自在に配置してある。このエアミックスドア17はサーボモータ18により駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調整可能になっている。
【0039】
このエアミックスドア17の開度によりヒータコア15を通る空気量(温風量)と、バイパス通路16を通過してヒータコア15をバイパスする空気量(冷風量)との割合を調整し、これにより、車室内に吹き出す空気の温度を調整するようになっている。
【0040】
ケース2の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラスWに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口19、乗員の顔部に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口20、および乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出口21の計3種類の吹出口が設けられている。
【0041】
これら吹出口19?21の上流部にはデフロスタドア22、フェイスドア23およびフットドア24が回転自在に配置されている。これらの吹出モードドア22?24は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ25によって開閉操作される。
【0042】
吹出モードドア22?24の開閉によって、フェイス吹出口20を開口するフェイスモード、フェイス吹出口20とフット吹出口21の両方を同時に開口するバイレベルモード、フット吹出口21を開口するフットモード、フット吹出口21とデフロスタ吹出口19の両方を同時に開口するフットデフロスタモード、およびデフロスタ吹出口19を開口するデフロスタモードモード等の吹出モードを切り替える。
【0043】
次に、本実施形態の電気制御部の概要を説明すると、空調制御装置30は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この空調制御装置30は、そのROM内に空調制御のための制御プログラムを記憶しており、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0044】
空調制御装置30の入力側にはセンサ群31?36からセンサ検出信号が入力され、また、車室内前部の計器盤(図示せず)付近に配置される空調パネル37から各種操作信号が入力される。
【0045】
センサ群としては、具体的には、外気温(車室外温度)Tamを検出する外気センサ31、内気温(車室内温度)Trを検出する内気センサ32、車室内に入射する日射量Tsを検出する日射センサ33、蒸発器9の空気吹出部に配置されて蒸発器吹出空気温度Teを検出する蒸発器温度センサ34、ヒータコア15に流入する温水(エンジン冷却水)温度Twを検出する水温センサ35、車室内の相対湿度RHrを検出する湿度センサ36等が設けられている。
【0046】
また、空調パネル37には各種操作スイッチとして、図2に示すスイッチ38?45が設けられている。吹出モードスイッチ38は吹出モードドア22?24により設定される各種吹出モードをマニュアル設定するための信号を出すもので、フェイスモードスイッチ38a、バイレベルモードスイッチ38b、フットモードスイッチ38c、フットデフロスタモードスイッチ38d、およびデフロスタモードスイッチ38eを備えている。
【0047】
内外気切替スイッチ39は内外気切替ドア6による内気モードと外気モードをマニュアル設定する信号を出すもので、内気モードスイッチ39aと外気モードスイッチ39bを備えている。
【0048】
エアコンスイッチ40は圧縮機11の作動指令および停止指令をマニュアル設定する信号(電磁クラッチ11aのON、OFF信号)を出すものである。エアコンスイッチ40の操作ノブ40aには、圧縮機11の作動中(オン状態)を表示する表示部40bが備えられている。
【0049】
温度設定スイッチ41は車室内の設定温度の信号を出すもので、設定温度上昇用のスイッチ41aと、設定温度低下用のスイッチ41bと、設定温度表示部41cとを備えている。
【0050】
送風機作動スイッチ42は送風機8の風量切替をマニュアル設定するための信号を出すもので、送風機8の低風量用スイッチ42a、第1中風量用スイッチ42b、第1中風量より所定量多い第2中風量用スイッチ42c、および大風量用のスイッチ42dを備えている。
【0051】
オートスイッチ43は空調自動制御状態の指令信号を出すもので、オートスイッチ43をオン状態にすると、エアコンスイッチ40がオフ状態であっても、電磁クラッチ11aに通電して、圧縮機11を作動状態にし、かつ、各種空調機器の作動を自動制御する状態にする。オフスイッチ44は空調装置の停止信号を出すものであり、オフスイッチ44の操作によって各種空調機器がすべて停止状態となる。」

・「【0081】
これにより、省動力スイッチ45がユーザによってオン操作された場合にも、蒸発器吹出空気温度Teが防曇制御のための第3目標蒸発器温度TEO3となるように圧縮機11の作動を制御して防曇運転を行うことができる。よって、窓ガラスWの曇り発生を未然に防止でき、車両の安全運転の確保に貢献できる。
【0082】
しかも、窓ガラスの曇り判定を行い、窓ガラスの曇り有りと判定した場合のみに、圧縮機11の作動による防曇運転を行い、窓ガラスの曇りが無いときはステップS150にて圧縮機11を常に停止するから、圧縮機11の停止期間が非常に長くなり、圧縮機駆動動力の省動力効果を格段と向上できる。」

・「【0115】
また、圧縮機11として回転数が調整可能な電動圧縮機を用いてもよい。この場合は、図3のステップS50?S70や図7、8のステップS170における圧縮機断続制御の代わりに、蒸発器9の実際の吹出空気温度Teが目標蒸発器吹出温度TEOとなるように圧縮機回転数を連続的に制御すればよい。」

・また,図1には,全体システム構成図が示され,図2には,空調パネルの正面図が示されている。

これらの事項及び図示内容を総合し,特に背景技術について整理すると,引用例には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「前方視界に関わる窓ガラスと,車両の車室内湿度を検出する湿度センサと,車両用空調装置と,を備え,
上記車両用空調装置は,車室内温度制御及び車室内湿度制御するものを備え,
上記車室内温度制御及び車室内湿度制御することは冷房のための冷凍サイクルの圧縮機の作動を制御することを含み,
上記圧縮機の作動の制御は,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇のために制御を自動的に実行して,
上記制御を自動的に実行する圧縮機の作動の制御は,車両ユーザーの手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態とし,強制停止される
車両用空調装置の制御方法であって,
上記冷房のための冷凍サイクルは,車両エンジンを駆動源とする圧縮機を含み,
上記車両の前方視界に関わる窓ガラスの曇りを判定し,
上記判定した前方視界に関わる窓ガラスの曇りに基づいて,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇の制御を自動的に行い,
上記手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態と,
上記手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態でないとき,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇のための,上記車両用空調装置の上記制御を自動的に実行する圧縮機の作動の制御を実行でき,
上記手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態のとき,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇のための,上記車両用空調装置の上記制御を自動的に実行する圧縮機の作動を停止する,或いは,オフ状態であるから実行できない,
車両用空調装置の制御方法。」

さらに,引用例には,次の事項(以下,「引用例記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「自動車のセンサ群を有し,
車両用空調装置は,空気流を生成する送風機,上記空気流を冷却する冷凍サイクル装置,上記車両用空調装置に導入される外気の量及び内気循環空気の量を内気モードか外気モードとして制御する内外気切替箱,上記空気流の向きを制御する吹出モードドア,及び上記空気流を加熱するヒータコアの動作制御を含む複数の機能を実行するよう動作可能な空調制御装置を含み,
それぞれの機能に応じた車両用空調装置の設定の操作スイッチ,例えば,吹出モードスイッチ,内外気切替スイッチ,エアコンスイッチ,温度設定スイッチ,送風機作動スイッチを備え,
上記機能の少なくとも一部である冷凍サイクル装置の圧縮機の動作は,窓ガラスの防曇を達成するために自動制御可能な自動車の空調方法。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

機能・構造からして,引用発明の「前方視界に関わる窓ガラス」は本願発明の「フロントガラス」に相当し,以下同様に,「車両」は「自動車」に,「車室内湿度」は「環境状態」に,「湿度センサ」は「少なくとも一つのセンサ」に,「車両の車室内湿度を検出する湿度センサ」は「自動車の各々の環境状態を検出する少なくとも一つのセンサ」に,「車両用空調装置」は「空調システム」に,「備え」の態様は「有し」及び「含み」の態様に,「車室内温度制御及び車室内湿度制御することは冷房のための冷凍サイクルの圧縮機の作動を制御すること」は「冷房装置の動作制御」に,「防曇のため」は「防曇を達成するため」に,「制御を自動的に実行して(する)」との態様は「自動制御可能であって(な)」との態様に,「車両ユーザーの」は「自動車の乗員による」に,「車両用空調装置の制御方法」は「自動車の環境管理方法」に,「冷房のための冷凍サイクル」は「冷房装置」に,「車両の前方視界に関わる窓ガラスの曇りを判定し」は「自動車の特定の環境状態を判定する工程と」に,「判定した前方視界状態に関わる窓ガラスの曇り」は「判定された環境状態」に,それぞれ相当している。
また,引用発明の「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態」は,引用例の段落【0007】の「空調パネルに備えられているエアコンスイッチ(圧縮機作動スイッチ)を手動操作によりオフ状態とし、圧縮機を強制的に停止させる」との記載からすると,本願明細書の段落【0019】,【0020】,【0023】,【0025】の記載を参酌すれば,本願発明の「手動オーバーライド」に相当している。

そして,引用発明の「車室内温度制御及び車室内湿度制御するもの」と本願発明の「複数の機能を実行するよう動作可能な空調制御装置」とは「機能を実行するよう動作可能な空調制御装置」の概念で共通している。
引用発明の「圧縮機の作動の制御」と本願発明の「機能の少なくとも一部」とは,「機能」の概念で共通している。
引用発明の「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態とし,強制停止される」態様と本願発明の「複数の手動オーバーライドの少なくとも1つの制約を受ける」態様とは,「手動オーバーライドの制約を受ける」態様の概念で共通している。
引用発明の「車両エンジンを駆動源とする圧縮機」と本願発明の「電動コンプレッサー」とは「コンプレッサー」の概念で共通している。
引用発明の「防曇制御を自動的に行」うことは防曇の実行のタイミングを決定しているから,結局,引用発明の「防曇制御を自動的に行い」の態様と本願発明の「防曇をいつ行うのが望ましいのかを判定する工程」の態様とは,「防曇をいつ行うのかを判定する」態様の限りにおいて一致している。

さらに,引用発明の「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態により」との態様は,状態を判定することを包含するから,本願発明の「複数の手動オーバーライドの状態を判定する工程と」と「手動オーバーライドの状態を判定する」限りにおいて一致している。
引用発明の「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態でないとき」は,本願発明の「複数の手動オーバーライドがいずれも選択されていないと判定されたときにのみ」と「手動オーバーライドが選択されていないとき」の限りにおいて一致している。
引用発明の「圧縮機の作動の制御を実行でき」の態様は,本願発明の「機能の少なくとも一部を実行するのを許容する工程と」と「機能を実行するのを許容する」態様の限りにおいて一致している。
引用発明の「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態のとき」は,本願発明の「複数の手動オーバーライドの少なくとも1つが選択されていると判定されたときに」と「手動オーバーライドが選択されているとき」の限りにおいて一致している。
引用発明の「圧縮機の作動を停止する,或いは,オフ状態であるから実行できない」態様は,本願発明の「機能を終了する、或いは、実行するのを許容しない工程と」と「機能を終了する,或いは,実行するのを許容しない」態様の限りにおいて一致している。
これらのことから,結局,引用発明の「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態と,上記手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態でないとき,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇のための,上車両用空調装置の上記制御を自動的に実行する圧縮機の作動の制御を実行でき,上記手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態のとき,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇のための,上記車両用空調装置の上記制御を自動的に実行する圧縮機の作動を停止する,或いは,オフ状態であるから実行できない」態様と本願発明の「複数の手動オーバーライドの状態を判定する工程と、上記複数の手動オーバーライドがいずれも選択されていないと判定されたときにのみ、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行するのを許容する工程と、上記複数の手動オーバーライドの少なくとも1つが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能を終了する、或いは、実行するのを許容しない工程とを備える」態様とは,「手動オーバーライドの状態を判定し,上記手動オーバーライドが選択されていないとき,上記フロントガラスの防曇を達成するための,上記空調システムの上記自動制御可能な機能を実行するのを許容する,上記手動オーバーライドが選択されているとき,上記フロントガラスの防曇を達成するための,上記空調システムの上記自動制御可能な機能を終了する,或いは,実行するのを許容しない」態様の概念で共通している。

したがって両者は,
「フロントガラスと,自動車の各々の環境状態を検出する少なくとも一つのセンサと,空調システムと,を有し,
上記空調システムは,機能を実行するよう動作可能な空調制御装置を含み,
上記機能は,冷房装置の動作制御を含み,
上記機能は,上記フロントガラスの防曇を達成するために自動制御可能であって,
上記自動制御可能な機能は,自動車の乗員による手動オーバーライドの制約を受ける
自動車の環境管理方法であって,
上記冷房装置は,コンプレッサーを含み,
上記自動車の特定の環境状態を判定する,
上記判定された環境状態に基づいて,上記フロントガラスの防曇をいつ行うのかを判定する,
上記手動オーバーライドの状態を判定する,
上記手動オーバーライドが選択されていないとき,上記フロントガラスの防曇を達成するための,上記空調システムの上記自動制御可能な機能を実行するのを許容する,
上記手動オーバーライドが選択されていると判定されたとき,上記フロントガラスの防曇を達成するための,上記空調システムの上記自動制御可能な機能を終了する,或いは,実行するのを許容しない,
自動車の環境管理方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
「空調制御装置が実行する機能」は,本願発明では「複数の機能」であり,「複数の機能は、空気流を生成するファン装置、上記空気流を冷却する冷房装置、上記空調システムに導入される外気の量及び内気循環空気の量を制御する内気循環装置、上記空気流の向きを制御するモード装置、及び上記空気流を加熱する暖房装置の動作制御を含」むのに対し,引用発明では「複数の機能」ではなく,「車室内温度制御及び車室内湿度を制御することは冷房のための冷凍サイクルの圧縮機の作動を制御することを含」む,すなわち,「冷房装置の動作制御を含」む点。

[相違点2]
「手動オーバーライドの制約を受ける」こと,それに伴い「手動オーバーライドの状態を判定し,上記手動オーバーライドが選択されていないとき,上記フロントガラスの防曇を達成するための,上記空調システムの上記自動制御可能な機能を実行するのを許容する,上記手動オーバーライドが選択されているとき,上記フロントガラスの防曇を達成するための,上記空調システムの上記自動制御可能な機能を終了する,或いは,実行するのを許容しない」ことが,本願発明では「複数の手動オーバーライドの少なくとも1つの制約を受ける」のであって,それに伴い「複数の手動オーバーライドの状態を判定する工程と、上記複数の手動オーバーライドがいずれも選択されていないと判定されたときにのみ、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行するのを許容する工程と、上記複数の手動オーバーライドの少なくとも1つが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能を終了する、或いは、実行するのを許容しない工程を備える」のに対し,引用発明では「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態とし,強制停止される」のであって,それに伴い「手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態により,上記手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態でないとき,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇のための,上車両用空調装置の上記制御を自動的に実行する圧縮機の作動の制御を実行でき,上記手動操作によるエアコンスイッチのオフ状態のとき,上記前方視界に関わる窓ガラスの防曇のための,上記車両用空調装置の上記制御を自動的に実行する圧縮機の作動を停止する,或いは,オフ状態であるから実行できない」点。

[相違点3]
「コンプレッサー」が,本願発明では「電動コンプレッサー」であるのに対し,引用発明では「車両エンジンを駆動源とする圧縮機」である点。

[相違点4]
「防曇をいつ行うのかを判定する」ことが,本願発明では「防曇をいつ行うのが望ましいのかを判定する工程」であるのに対し,引用発明では「防曇制御を自動的に行」う点。

5.判断
上記相違点について以下検討する。

[相違点1]及び[相違点2]について
車室内温度制御及び車室内湿度制御する車両用空調装置において,車両用空調装置の吹出モード,内外気切替,温度設定,送風機作動等の複数の機能を実行・制御すること及びそれらに応じた複数の手動オーバーライドのスイッチを備えることは,上記「3.」において「引用例記載事項」として摘記した外,例示するまでもなく本願の優先日前に周知の事項である。また,車両用空調装置の内外気切替の機能を実行・制御するものにおいて,外気の量及び内気循環空気の量を両者の割合いとして制御する内気循環装置も本願の優先日前に周知の事項である(必要であれば,特開平5-139152号公報,特開平6-171340号公報,特開2000-355208号公報,等参照。)。そして,引用発明の車室内温度制御及び車室内湿度制御するに際し,これら複数の機能を備えることは車両ユーザーに望まれることといえる。
また,引用発明は,冷房装置を用いる防曇制御をエアコンスイッチがオフ状態の際には実行しないものであって,この防曇制御は冷風が吹かない状態の送風機が作動しない際にも実行できないから,引用発明をして冷房装置と送風機の両方が作動するときに防曇を実行し,いずれかが作動しないときに防曇を実行しない防曇制御を行うものとすることも,当業者が容易に想到し得たことといえる。そうすると,引用発明における手動オーバーライドのスイッチの複数化に伴い,複数の手動オーバーライドのスイッチの状態を判定し,いずれのスイッチも選択されていないと判定されたときにのみ,制御を実行し,その反対の状態として,複数の手動オーバーライドのスイッチのうちの1つでも選択されているときには,制御を実行できないものとすることは,当業者が容易に想到し得たことといえる。
そして,一般的制御システムにおいて,分岐処理等において判断を行うこと,すなわち判定工程を行うことは普通のことである。
したがって,引用発明をして上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
車両用空調装置の圧縮機として電動コンプレッサーを用いることは,引用例の段落【0115】に「圧縮機11として回転数が調整可能な電動圧縮機を用いてもよい」と記載されている外,例示するまでもなく本願の優先日前に周知の事項である。そして,引用発明において電動コンプレッサーを採用することに特段の妨げとなる事項も認められない。
したがって,引用発明をして上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点4]について
引用発明は,環境状態に基づいて窓ガラスの防曇制御を自動的に実行するものであるから,環境の所定の状態の判定に基づいて防曇実行の判定を行う必要があり,そのために防曇をいつ行うのが望ましいのかを判定することは,制御システムの具体化に際し普通に採用できることといえる。
したがって,引用発明をして上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,本願発明の全体構成により奏される効果も,引用発明,引用例記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって,本願発明は引用発明,引用例記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易になし得たものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願の特許請求の範囲の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-05 
結審通知日 2015-08-18 
審決日 2015-08-31 
出願番号 特願2008-18983(P2008-18983)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 一正  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 田村 嘉章
佐々木 正章
発明の名称 自動車の環境管理方法  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
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