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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16C |
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管理番号 | 1310047 |
審判番号 | 不服2014-19586 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-09-30 |
確定日 | 2016-01-14 |
事件の表示 | 特願2011- 10451「エンジン用シャフト」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日出願公開、特開2012-149743〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯・本願発明 本願は、平成23年1月21日の出願であって、平成26年6月25日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年7月1日)、これに対し、平成26年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がされ、その後、当審において平成27年5月22日付けで拒絶理由が通知され(以下「当審拒絶理由」という。)、平成27年7月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 そして、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成27年7月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 内輪と外輪が分割されていない一体型の内輪と外輪の間に、保持器と転動体を収容した一体型ニードル軸受が配置され、内輪、外輪、転動体は、鋼製で、その少なくとも内輪が、窒素富化層を有する部材で構成されている組立式の4サイクル2気筒以上のエンジンに使用するエンジンのコントロールシャフト、カムシャフト、又はバランスシャフトのいずれかである組立式のエンジン用シャフト。」 第2 刊行物 これに対して、当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2006-226400号公報(以下「刊行物」という。)には、「シャフト装置」に関して、図面(特に、図2及び図3参照。)とともに、次の事項が記載されている。 (1)「【0009】 また、前記シャフトには、当該シャフトと別体とされているカムが外嵌状として取り付けられており、前記転がり軸受は、環状の一体物からなる軌道輪を有して前記シャフトに外嵌状として取り付けられている。この構成によれば、カムがシャフトと別体とされていることにより、転がり軸受をシャフトに取り付けてからその隣にカムを取り付けることができる。そして、転がり軸受け及びカムの取り付けのために、転がり軸受及びカムを、シャフトの端部からシャフトを挿入状として夫々所定位置まで移動させることができる。 従って、例えば一対のカムの間に、カムの最大外径よりも小さい内径とされた環状の一体物からなる軌道輪を有した転がり軸受を設けることができる。 そして、転がり軸受において、軌道面につなぎ目を生じさせることがない。なお、軌道輪が分割構造とされて軌道面につなぎ目が存在すると、そのつなぎ目を転がり軸受の転動体が通過する際に振動や騒音が発生し、軸受の寿命を低下させてしまう。」 (2)「【0012】 このようなシャフト装置が用いられている具体的な装置としては、例えば、自動車用のエンジンの給排気弁の作動用のカムシャフト装置がある。以下において、本発明を図1に示すような、カム2を有しているシャフト1を回転可能としているカムシャフト装置として説明する。 【0013】 図2は、図1の要部を示す断面図であり、このカムシャフト装置は、直線状のシャフト1と、このシャフト1と別体であってシャフト1に外嵌状に取り付けられている複数の卵形のカム2と、シャフト1を回転可能に支持している複数の転がり軸受3とを備えている。そして、シャフト1にカム2及び転がり軸受3が、シャフト1の軸方向の所定位置に配設されている。また、一対で1組とされているカム2の間に、1つの転がり軸受3が設けられている。 【0014】 この装置におけるシャフト1は、図4に示す従来例のように鋳造によってシャフト本体部44とカム部43とが一体構造とされたカムシャフトではなく、図1と図2に示すように、シャフト1とカム2とが夫々別体として作製されてから組み立てられてカムシャフトとなる組み立て構造によるものである。つまり、シャフト1は直線状の部材であり、カム2には、シャフト1に外嵌状となるための貫通孔10が形成されている。これにより、このカム2は、シャフト1の端部から外嵌状となってシャフト1に沿って軸方向に移動でき、シャフト1の軸方向所定の位置(カム取付部14)に取り付けられる。 【0015】 また、転がり軸受3は、シャフト1に外嵌状として取り付けられてシャフト1を回転可能に支持しており、深溝玉軸受とされている。この転がり軸受3は、図2と図3に示すように、シャフト1の外周面1aに転がり軸受3の内輪軌道溝6が形成されており、シャフト1の径方向外方に外輪5が設けられている。そして、このシャフト1に形成されている軌道溝6と外輪5に形成されている軌道溝12との間に複数の玉7からなる転動体が介在している。これら玉7は保持器13により保持されている。 【0016】 そして、この転がり軸受3の軌道輪は、分割構造とされたものではなくて環状の一体物(ワンピース構造)からなる。つまり、外輪5が分割構造とされたものではなく環状の一体物からなる。これにより、軌道面につなぎ目を生じさせない。 そして、カム2がシャフト1と別体とされていることにより、このような転がり軸受3を、シャフト1の途中部であって例えば一対のカム2の間に設けることができる。つまり、一対のカム2の間にこの転がり軸受3を設ける場合、1つ目のカム2をシャフト1の端部から外嵌させて所定のカム取付部14に取り付け、2つ目のカム2をシャフト1に外嵌させて取り付ける前に、この転がり軸受3をシャフト1の端部からシャフト1を挿入状として、シャフト1に沿って軸方向に移動させ、シャフト1の軸方向所定の位置(転がり軸受取付部15)に取り付ける。その後、2つ目のカム2をシャフト1にその端部から外嵌させて取り付ければよい。」 (3)「【0026】 ・・・(略)・・・ そして、シャフト1を支持する軸受の全てが転がり軸受3(深溝玉軸受及び円筒ころ軸受11)とされていることにより、特に回転始動時、低速回転時における摩擦抵抗を小さくすることができ、シャフト装置全体において回転の際の摩擦損失を大幅に低減できる。従って、自動車のエンジンにこのシャフト装置を用いることにより、さらに、エンジンの燃費向上に貢献できる。」 (4)「【0030】 ・・・(略)・・・ 転がり軸受3がシャフト1とは別体の内輪を有するようしてもよい。この場合、内輪は環状で一体物からなり、シャフト1に外嵌状として取り付けられている。」 (5)上記(2)の「このようなシャフト装置が用いられている具体的な装置としては、例えば、自動車用のエンジンの給排気弁の作動用のカムシャフト装置がある。以下において、本発明を図1に示すような、カム2を有しているシャフト1を回転可能としているカムシャフト装置として説明する。」(段落【0012】)との記載及び「この装置におけるシャフト1は、・・・シャフト1とカム2とが夫々別体として作製されてから組み立てられてカムシャフトとなる組み立て構造によるものである。」(段落【0014】)との記載から、エンジンのカムシャフトであるエンジン用シャフト1であって、このシャフト1は組立式であることが記載されているから、刊行物には、組立式のエンジンに使用するエンジンのカムシャフトである組立式のエンジン用シャフト1が記載されているといえる。 (6)上記(4)の「転がり軸受3がシャフト1とは別体の内輪を有するようしてもよい。この場合、内輪は環状で一体物からなり、」(段落【0030】)との記載から、転がり軸受3として環状の一体物からなる内輪が配置されている軸受を把握することができる。 これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「環状の一体物からなる内輪と外輪5の間に、保持器13と転動体を収容した転がり軸受3が配置されている組立式のエンジンに使用するエンジンのカムシャフトである組立式のエンジン用シャフト1。」 第3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「環状の一体物からなる内輪と外輪5」は、本願発明の「内輪と外輪が分割されていない一体型の内輪と外輪」に相当し、以下同様に、「保持器13」は「保持器」に、「エンジン用シャフト1」は「エンジン用シャフト」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明の「転がり軸受3」と本願発明の「一体型ニードル軸受」とは、引用発明の内輪と外輪5が環状の一体物からなるから、「一体型軸受」という限りで共通する。 したがって、両者は、 「内輪と外輪が分割されていない一体型の内輪と外輪の間に、保持器と転動体を収容した一体型軸受が配置されている組立式のエンジンに使用するエンジンのカムシャフトである組立式のエンジン用シャフト。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 一体型軸受が、本願発明は、「一体型ニードル軸受」であるのに対し、 引用発明は、「転がり軸受3」である点。 [相違点2] 本願発明は、「内輪、外輪、転動体は、鋼製で、その少なくとも内輪が、窒素富化層を有する部材で構成され」るのに対し、 引用発明は、かかる構成を有しているか明らかでない点。 [相違点3] 本願発明は、組立式のエンジン用シャフトが、「4サイクル2気筒以上の」エンジンに使用するものであるのに対し、 引用発明は、かかる限定を有していない点。 第4 当審の判断 そこで、相違点について検討する。 1 相違点について (1)相違点1について エンジンのカムシャフトにおいて、内輪と外輪の間に、保持器と転動体を収容した一体型ニードル軸受を配置することは従来周知である(例えば、特開2010-168948号公報の段落【0012】、【0013】及び【0017】並びに図1及び図3、特開2009-14174号公報の段落【0021】、【0025】及び【0060】並びに図2ないし図4を参照。)。 してみると、引用発明の転がり軸受3を、「一体型ニードル軸受」とすることは、適宜なし得た設計変更にすぎず、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について エンジン用シャフトに用いられる軸受の長寿命化を図るために、内輪、外輪、転動体を、鋼製とし、かつ、窒素富化層を有する部材で構成することは従来周知である(例えば、特開2004-293780号公報の段落【0027】、【0033】、【0041】ないし【0046】、【0067】及び【0071】を参照。)。 してみると、機械構成部品の長寿命化は一般的な課題であるので、上記周知技術を参酌して、引用発明の転がり軸受3の「内輪、外輪、転動体」を「鋼製」とし、「その少なくとも内輪が、窒素富化層を有する部材で構成され」るようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)相違点3について エンジンとして、4サイクル2気筒以上のものは従来周知である(例えば、特開2001-349321号公報の段落【0041】及び【0042】を参照。)。 してみると、引用発明の組立式のエンジン用シャフト1を、「4サイクル2気筒以上の」エンジンに使用することは、単なる用途限定にすぎない。 2 効果について 本願発明が奏する効果は、引用発明及び上記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。 3 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-04 |
結審通知日 | 2015-11-10 |
審決日 | 2015-11-27 |
出願番号 | 特願2011-10451(P2011-10451) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F16C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲垣 彰彦 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
大内 俊彦 森川 元嗣 |
発明の名称 | エンジン用シャフト |
代理人 | 鳥居 和久 |