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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1310048
審判番号 不服2014-20322  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-08 
確定日 2016-01-14 
事件の表示 特願2012- 98447「SOIウェハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開,特開2013-229356〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年4月24日を出願日とする特許出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年 4月24日 審査請求
平成25年11月26日 拒絶理由通知
平成26年 2月 3日 意見書
平成26年 7月 3日 拒絶査定
平成26年10月 8日 審判請求・手続補正書
平成26年12月25日 上申書
平成27年 8月24日 拒絶理由通知
平成27年10月23日 意見書・手続補正書

第2 当審による拒絶理由通知の概要
審判合議体が平成27年8月24日付けで通知した拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)における,特許法第29条第2項の判断(本願に係る発明の容易想到性の判断)の概要は次のとおりである。
平成26年10月8日付け手続補正書により補正された,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11の各請求項に係る発明は,特開平5-283712号公報(以下「引用文献1」という。)記載の発明において,国際公開第00/47969号(以下「引用文献2」という。)にみられるような周知の技術的事項,引用文献2,特開2001-127274号公報(以下「引用文献3」という。),及び特開平9-326396号公報(以下「引用文献4」という。)にみられるような常套手段,並びに特開2011-164057号公報(以下「引用文献5」という。)にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,上記手続補正書により補正された,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 本願発明の容易想到性について
1 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成27年10月23日付け手続補正書により補正された,特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
それぞれシリコンウェハである支持ウェハおよび活性層ウェハが,酸化膜を介して互いに貼り合わせられて構成されるSOIウェハの製造方法であって,
前記支持ウェハの,前記SOIウェハの貼り合わせ面となる第1面にキャビティを形成する工程と,
前記支持ウェハの,前記第1面とは反対側の面にゲッタリング材を形成する工程と,
前記支持ウェハを熱酸化する工程と,
前記支持ウェハの前記第1面と前記活性層ウェハとを貼り合わせる工程と,
貼り合わせられた前記支持ウェハおよび活性層ウェハに対して,貼り合わせ強化熱処理を行う工程と,
前記支持ウェハに形成されたゲッタリング材を除去する工程と,
を備えたことを特徴とするSOIウェハの製造方法。」

2 引用文献及び周知例の記載と引用発明及び周知技術
(1)引用文献1の記載と引用発明
ア 引用文献1
当審拒絶理由通知で引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1には,図面とともに,次の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【0016】
【実施例】実施例1.図1は,この発明の実施例1による半導体圧力センサを示す平面図であり,図2はそのA-A線に沿った側面断面図である。なお,各図中,同一符号は同一又は相当部分を示しているので,説明は省略する。これらの図において,第1の(単結晶)シリコン基板12と第2の(単結晶)シリコン基板11とは,真空室14がその間に形成されるように,界面絶縁膜8を介して貼り合わされ,1枚の基板となっている。また,第2のシリコン基板11には,第2のシリコン基板11と凹部が形成された第1のシリコン基板12とを貼り合わせることによって形成された真空室14を外部と開放するために,エッチング開口部5が形成されている。このエッチング開口部5には,減圧中で成膜される真空蓋6が形成されている。
【0017】上述したように構成された半導体圧力センサの製造方法は,図3?図13に示すように行われる。すなわち,図3に示す第2のシリコン基板11の裏面に界面絶縁膜8として例えばシリコン酸化膜を形成する(図4)。また,図5に示す第1のシリコン基板12の表面に真空室14となる凹部を形成するために,エッチングマスク13をその表面及び裏面に形成する(図6)。シリコンエッチングを行って,第1のシリコン基板12に凹部を形成し,エッチングマスク13を除去する(図7)。
【0018】次に,図8に示すように,第2のシリコン基板11と第1のシリコン基板12とを界面絶縁膜8を介して貼り合わせた後,第2のシリコン基板11表面を加工する。この第2のシリコン基板11の厚さによって圧力センサとしての感度が決まるため,必要な厚さに制御して加工を行う(図9)。次に,真空室エッジ部15に隣接する部分の第2のシリコン基板11に,シリコンエッチングによりエッチング開口部5を形成する(図10)。さらに,エッチング開口部5から等方性エッチングを行って界面絶縁膜8をサイドエッチングし,後に真空室14となる空洞部を外部と開放させる(図11)。
【0019】次に,減圧中で成膜してエッチング開口部5に真空室蓋6を形成することにより,真空室14が形成される(図12)。そして,図13に示すように,第2のシリコン基板11に,デバイスを形成する。すなわち,第2のシリコン基板11が受圧して歪みが最も大きくなる真空室エッジ部15に,シリコン酸化膜をマスク,保護膜としてゲージ抵抗1を形成する。ゲージ抵抗1は,真空室14の各辺に対応する部分に4本形成し,拡散配線2によってブリッジに結線されている。
【0020】この拡散配線2もゲージ抵抗1と同様に,シリコン酸化膜9をマスクにして不純物を注入し,アニールを行うことによって形成する。また,アニールと同時に酸化も行って,拡散配線2上にシリコン酸化膜9を形成し,保護膜とする。次いで,第2のシリコン基板11の表面を保護するため,ガラスコート10を形成する。ただし,真空室14上の第2のシリコン基板11上のガラスコート10は除去する。こうして,半導体圧力センサが製造される。
【0021】なお,上述した実施例1では,界面絶縁膜8を第2のシリコン基板11に形成したが,図14に示すように,第1のシリコン基板12の凹部12Aに形成してもよい。この場合,真空室14上の薄い第2のシリコン基板11に界面絶縁膜8を形成しないため,第2のシリコン基板11が界面絶縁膜8の膜応力等の影響を受けず,優れた特性が得られる効果を奏する。」
(イ)図14には,凹部12Aを含む第1のシリコン基板12の表面に,界面絶縁膜8を形成することが記載されていると認められる。
イ 引用発明
上記アより,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「第1の(単結晶)シリコン基板12とデバイスが形成される第2の(単結晶)シリコン基板11が,真空室14がその間に形成されるように,界面絶縁膜であるシリコン酸化膜8を介して貼り合わされて構成される半導体圧力センサの製造方法であって,
上記第1のシリコン基板12の表面に上記真空室14となる凹部を形成し,
上記凹部を含む上記第1のシリコン基板12の表面に界面絶縁膜としてシリコン酸化膜8を形成し,
上記第2のシリコン基板11と上記第1のシリコン基板12とを上記シリコン酸化膜8を介して貼り合わせる,
半導体圧力センサの製造方法。」

(2)引用文献2ないし5の記載と周知の技術的事項,常套手段及び周知技術
ア 引用文献2ないし5の記載
(ア)引用文献2
当審拒絶理由通知で引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献2には,図面とともに,次の記載がある。
「1.技術分野
この発明は,半導体圧力センサに関し,シリコン製のダイアフラムに形成された歪みゲージを用いた半導体圧力センサに関するものである。
2.背景技術
従来より歪みゲージを用いた半導体圧力センサがある。すなわち,シリコン基板に感圧ダイアフラムを設けてから,その上に拡散抵抗層によるセンサ素子(ピエゾ抵抗素子)を設けたものである。ダイアフラムの歪みを検出することによって,圧力変化を測定する。
図7は,歪みゲージを用いた従来の半導体圧力センサを示す斜視図であり,その一部は断面を示す。同図に示すように,センサ・チップ200は,ダイヤフラム110を有するシリコン基体101と,ダイヤフラム110上のセンサ素子とによって作られている。ダイアフラム110は,周縁部を除くシリコン基体101の中央部一帯を薄膜化することによって作られており,拡散抵抗からなる歪みゲージ105a?105d,金属配線103および端子104a?104dによって構成されたホイートストン・ブリッジ回路113を有する。
・・・
3.発明の開示
[発明が解決しようとする課題]
以上に示した圧力センサは,ダイヤフラムおよび拡散抵抗の形成のためにシリコン基板の微細加工を必要とし,十分に防塵を考慮した半導体プロセスで作られる。ところが,現状のクリーンルームにおいては,いくら防塵対策を施しても,微量の金属不純物が混入したり,工程の途中での生成されたりしてしまうのが実状である。その結果,このような金属不純物によってセンサ出力にふらつきが生じてしまうことがある。
一般的にMOSFET等の各種半導体装置を製造する場合,ウエハ段階で金属不純物を捕獲することにより,素子等への影響を除去することが行われている。これはゲッタリングと呼ばれるものであり,その原理の違いから,EG(エクストリンシック・ゲッタリング)法と,IG(イントリンシック・ゲッタリング)法とに分類される。EG法は,ウエハ裏面をサンドブラスト法等を用いて荒らし,できあがった粗面領域に不純物を集める手法である。」
(イ)引用文献3
当審拒絶理由通知で引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献3には,図面とともに,次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は張り合わせSOIウェーハの製造方法,詳しくは活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの間にシリコン酸化膜が存在する張り合わせSOIウェーハの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2枚のシリコンウェーハを張り合わせた張り合わせ基板の一種として,張り合わせSOIウェーハが知られている。これは,デバイスが作製される活性層用ウェーハと,これを裏側から支持する支持基板用ウェーハとの間に,厚さ数μmのシリコン酸化膜が埋め込まれた張り合わせウェーハである。以下,従来の張り合わせSOIウェーハの製造方法を説明する。すなわち,まずCZ法により引き上げられた単結晶シリコンインゴットをスライスし,研磨して,鏡面に仕上げられた2枚のシリコンウェーハを用意する。次いで,一方のシリコンウェーハである活性層用ウェーハ,または,他方のシリコンウェーハである支持基板用ウェーハ,もしくは,これら両方のウェーハを熱酸化炉に挿入し,ここで熱酸化処理して,処理後のウェーハ全体を絶縁膜であるシリコン酸化膜により覆う。それから,両ウェーハを室温において重ね合わせる。続いて,所定の張り合わせ熱処理を施す。その後,張り合わせ不良領域を除去するために,活性層用ウェーハの外周部の面取りを行う。次に,活性層用ウェーハの表面を研削・研磨する。これにより,埋め込み酸化膜を有する張り合わせSOIウェーハが作製される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで,このように活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの間に埋め込まれるシリコン酸化膜の成膜方法には,上述した3つの方法がある。ただし,いずれの方法で作製された場合であっても,最近,デバイスメーカ側からの受注の多くは,シリコン酸化膜が厚い張り合わせSOIウェーハである。一般的に,このシリコン酸化膜はウエット雰囲気による高温の熱酸化処理により成膜される。すなわち,厚いシリコン酸化膜を成膜するには,このシリコンウェーハを高温の炉内に長時間さらしておかなければならなかった。ところが,その炉内には銅,モリブデン,鉄などの金属不純物が存在する。このため,長時間にわたって熱処理していると,微細な不純物が,ウェーハ外膜のシリコン酸化膜に付着し,また,シリコン中に混入してしまい,活性層用ウェーハの金属汚染を招いていた。
【0004】一方,シリコンウェーハにおけるデバイスの作製領域は,通常,表層部の10μm以下の領域である。張り合わせSOIウェーハの場合,厚さが数10μm?数μmの活性層用ウェーハの表層部にデバイスが造られる。このように,活性層用ウェーハを活性領域として利用すれば,活性層用ウェーハの結晶特性が重要になる。このため,そのウェーハ表面は完全に無欠陥でなければならず,表層部としても均質かつ無欠陥であることが要求される。しかしながら,この従来の張り合わせSOIウェーハでは,前述したように炉内において長時間をかけて厚いシリコン酸化膜を成膜するために,この成膜時に熱酸化処理されるウェーハが金属汚染を受けやすかった。このため,例えば酸化膜耐圧などの電気的特性が低下するという問題点があった。
【0005】そこで,発明者は,活性層用ウェーハにシリコン酸化膜を成膜する前に,この活性層用ウェーハの片面にゲッタリング層を形成しておけば,熱酸化処理時に,この酸化膜に付着した金属不純物をゲッタリング層に捕獲し,それを後に除去することで,この活性層用ウェーハの表層部の無欠陥化を図ることができ,その電気的特性を高めることができることを知見し,この発明を完成させた。
【0006】
【発明の目的】この発明は,活性層用ウェーハの金属汚染を抑止することで,その電気的特性を高めることができる張り合わせSOIウェーハの製造方法を提供することを,その目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は,活性層用ウェーハの片面にゲッタリング層を形成する工程と,ゲッタリング層の形成後,活性層用ウェーハを熱酸化処理して,シリコン酸化膜により覆う工程と,この後,上記活性層用ウェーハのゲッタリング層とは反対側の面に支持基板用ウェーハを張り合わせる工程と,上記活性層用ウェーハのゲッタリング層を除去する工程とを備えた張り合わせSOIウェーハの製造方法である。
【0008】活性層用ウェーハ片面にゲッタリング層を形成するEG(ExternalGettering)法の種類は限定されない。例えば,低温CVD法によりウェーハ面にポリシリコンを被着させるポリバックシール(PBS)法,ウェーハ裏面に微細なアルミナなどを吹き付けて,機械的なひずみを与えるサンドブラスト法,イオン注入法,レーザ法,リンゲッタリング法,ウェーハ面にボロンを高濃度でドーピングするボロンゲッタリング法,塩酸酸化によりシリコン面の金属不純物を塩化物として昇華させる化学ゲッタリング法などが挙げられる。
・・・
【0010】なお,この発明の技術的思想は,活性層用ウェーハだけなく,支持基板用ウェーハにもゲッタリング層を形成することを拒まない。すなわち,支持基板用ウェーハの片面にゲッタリング層を形成させ,その後,これを熱酸化炉で熱酸化処理すると,炉内を浮遊中の金属不純物が,仮に支持基板用ウェーハに付着しても,その不純物はゲッタリング層に良好に捕獲される。そのため,この支持基板用ウェーハの金属汚染を抑えることができる。
・・・
【0012】
【作用】この発明によれば,シリコン酸化膜を成膜する前に,活性層用ウェーハの一面にゲッタリング層を形成しておく(他面は鏡面)。その後,この活性層用ウェーハに熱酸化炉内で熱酸化処理を施し,この活性層用ウェーハをシリコン酸化膜で覆う。その際,この炉内の金属不純物が活性層用ウェーハ表面に付着したとしても,その不純物はゲッタリング層に捕獲される。次いで,活性層用ウェーハのゲッタリング層とは反対側の面に支持基板用ウェーハを張り合わせる。さらに,張り合わせたウェーハを張り合わせ熱処理炉に挿入して,この炉内で張り合わせ熱処理を行なう。この際も,前述した熱酸化処理時と同じように,仮に炉内の金属不純物が活性層用ウェーハ表面に付着したとしても,その不純物はゲッタリング層に捕獲される。その後,張り合わせウェーハにおいて活性層用ウェーハのゲッタリング層を除去する。この結果,ゲッタリング層に捕獲された金属不純物がウェーハから除去される。これにより,デバイスが形成される活性層用ウェーハの表層部の金属汚染量を低減させることができる。すなわち,活性層用ウェーハの表層部の電気的特性(酸化膜耐圧など)を高めることができる。」
(ウ)引用文献4
当審拒絶理由通知で引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献4には,図面とともに,次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体集積回路装置およびその製造技術に関し,特に,高速・低消費電力LSIの製造に用いられる貼り合わせSOI(Silicon on Insulator)ウェハのゲッタリングに適用して有効な技術に関するものである。
・・・
【0004】SOIウェハは,一般に,三層構造を成している。最上層(以下表面シリコン層と称する)は厚さ0.1μm?数μmの単結晶シリコン層であり,ここに半導体集積回路素子が形成される。中間層として,厚さ数百nmの埋め込みSiO_(2)膜(以下BOXと称する)を有し,最下層にシリコン基板を有するものである。
【0005】このようなSOIウェハにおいても,シリコンウェハと同様に,半導体集積回路素子が形成される領域となる表面シリコン層に含まれる金属原子あるいは欠陥等の不純物をゲッタリングして,半導体集積回路素子の性能を向上させる技術が必要である。
・・・
【0013】本発明のさらに他の目的は,ゲッタリング層により不純物をゲッタリングし,半導体集積回路装置の性能を向上することにある。
・・・
【0055】(実施の形態2)図8は,本発明の他の実施の形態である半導体集積回路装置の一例を示した要部断面図である。
【0056】本実施の形態2の半導体集積回路装置12は,半導体支持基板13,半導体支持基板13上に形成された絶縁層であるBOX3およびBOX3上に形成された半導体薄膜層である表面シリコン層4からなるSOI構造を有するものであり,表面シリコン層4には図示しないが半導体集積回路素子が形成されている。
【0057】また,半導体支持基板13の裏面には,多結晶シリコン膜14が約1μmの膜厚で形成されている。この多結晶シリコン膜14が,ゲッタリング領域となる。
【0058】このような半導体集積回路装置12によれば,表面シリコン層4に存在する不純物を,BOX3および半導体支持基板13を介して多結晶シリコン膜14にゲッタリングすることにより,表面シリコン層4に形成された半導体集積回路素子の性能を向上することができ,半導体集積回路装置12の高性能化,歩留まり向上を図ることができる。
・・・
【0067】なお,本実施の形態2では,ゲッタリング領域として多結晶シリコン膜14の例を示したが,窒化シリコン膜の形成,あるいはサンドブラストによる表面粗化処理であってもよい。・・・」
(エ)引用文献5
当審拒絶理由通知で引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献5には,図面とともに,次の記載がある。
「【0011】
実施の形態1.
まず,この発明の実施の形態1における半導体圧力センサ1aの構成を説明する。図1は,この発明の実施の形態1における半導体圧力センサ1aを示す断面図である。
【0012】
図1において,半導体圧力センサ1aは,第1シリコン基板2の一方の面3と,第2シリコン基板6の一方の面7とが接合された構成となっている。第1シリコン基板2の一方の面3には凹部8aが形成されており,第2シリコン基板6は,この凹部8aを封止するように第1シリコン基板2と接合されている。・・・
【0013】
第2シリコン基板6の他方の面12の所定位置には,ダイヤフラム11の歪みを抵抗変化として検出する歪検出素子13が形成され,歪検出素子13の電気信号を外部に取り出す配線層16が形成されている。そして,歪検出素子13および配線層16は保護膜17によって覆われている。
・・・
【0025】
次に,この発明の実施の形態1における半導体圧力センサ1aの製造方法について説明する。図3は,この発明の実施の形態1における半導体圧力センサ1aの製造工程を示す断面図である。
【0026】
まず,図3(a)に示すように,第1シリコン基板2を準備する。ここで,第1シリコン基板2は,P型導電型であって,面方位(100)の単結晶シリコン基板である。
【0027】
次に,図3(b)に示すように,第1シリコン基板2の一方の面3に第2酸化シリコン膜21を,他方の面26に第4酸化シリコン膜27を形成する。第2酸化シリコン膜21および第4酸化シリコン膜27の形成方法としては,熱酸化法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などがあるが,緻密な酸化シリコン膜を容易に形成できる熱酸化法を用いることが好ましい。よって,ここでは熱酸化法を用いて,第1シリコン基板2を酸化性雰囲気中でアニール処理することによって,第2酸化シリコン膜21および第4酸化シリコン膜27を形成する。
・・・
【0030】
次に,図3(e)に示すように,第1シリコン基板2の一方の面3における,前工程で第2酸化シリコン膜21を除去したことによって露出したシリコンの部分をエッチングして凹部8aを形成する。エッチングの手段としては,六フッ化硫黄ガスを用いたプラズマエッチングが用いられる。プラズマエッチングの際に,パーフルオロシクロブタンガスと六フッ化硫黄ガスとを交互に導入することによって,およそ垂直にエッチングすることが可能である。
・・・
【0033】
次に,図3(g)に示すように,第1シリコン基板2の凹部8aを封止するように,第1シリコン基板2の一方の面3と第2シリコン基板6の一方の面7とを第2酸化シリコン膜21を介して仮接合する。ここで,第2シリコン基板6は,N型導電型であって,面方位(100)の単結晶シリコン基板である。さらに,第2シリコン基板6の厚さは,ダイヤフラム11を形成するために適した厚さよりも厚くなっている。
【0034】
このとき,温度は室温でよい。大気中,真空中のいずれでもよいが,半導体圧力センサ1aの圧力基準室となる凹部8aおよび第2シリコン基板6で囲まれた空間を真空にしたい場合は,真空中で仮接合を行うことが好ましい。ここでは,凹部8aおよび第2シリコン基板6で囲まれた空間内に残留した水分を後の工程で利用するため,1Pa程度もしくはそれより高い圧力の真空状態が適している。
【0035】
次に,アニール処理を行う。ここでは,酸化性雰囲気,例えば酸素や水蒸気雰囲気でのアニール処理が適している。アニール温度は1000?1200℃の範囲が好ましく,アニール時間は1時間以上が好ましく,より好ましくは6時間程度がよい。このアニール処理によって,仮接合状態であった第1シリコン基板2と第2シリコン基板6とが完全に接合される。」
イ 周知の技術的事項,常套手段及び周知技術
(ア)上記ア(ア)より,シリコン基板に感圧ダイアフラムを設け,その上に拡散抵抗層によるセンサ素子(ピエゾ抵抗素子)を設けてなる半導体圧力センサでは,ダイヤフラム及び拡散抵抗の形成のためにシリコン基板の微細加工を必要とし,十分に防塵を考慮した半導体プロセスで作られるが,微量の金属不純物が混入したり,工程の途中で生成されたりしてしまい,その結果,このような金属不純物によってセンサ出力にふらつきが生じるとの問題点があることは,引用文献2にみられるように,本願出願前,当該技術分野では周知の技術的事項と認められる。
(イ)上記ア(ア)ないし(ウ)より,それぞれシリコンウェハである支持ウェハおよび活性層ウェハが,酸化膜を介して互いに貼り合わせられて構成されるSOI(Silicon on Insulator)ウェハの製造において,製造工程中でウェハに混入する金属不純物を捕獲する手段として,支持ウェハ又は活性層ウェハの少なくとも一方における,貼り合わせ面ではない面に,粗面領域やポリシリコン膜などからなるゲッタリング層を形成する方法(EG法)は,引用文献2ないし4にみられるように,当該技術分野では常套手段と認められる。
(ウ)上記ア(エ)より,凹部が形成された第1シリコン基板の一方の面に,上記凹部を封止するように第2シリコン基板の一方の面が接合され,上記第2シリコン基板の他方の面に,ダイヤフラムの歪みを抵抗変化として検出する歪検出素子が形成された,半導体圧力センサの製造方法において,酸化シリコン膜を介して室温で貼り合わせられた上記第1シリコン基板及び上記第2シリコン基板に対して,貼り合わせ強化熱処理を行うことは,引用文献5にみられるように,当該技術分野では周知の技術と認められる。

3 本願発明と引用発明との対比
(1)対比
ア 引用発明における「第1の(単結晶)シリコン基板12」,「デバイスが形成される第2の(単結晶)シリコン基板11」,及び「界面絶縁膜であるシリコン酸化膜」は,それぞれ,本願発明の「支持ウェハ」,「活性層ウェハ」,及び「酸化膜」に相当するといえる。
そして,引用発明は,第1の(単結晶)シリコン基板12とデバイスが形成される第2の(単結晶)シリコン基板11が,真空室14がその間に形成されるように,界面絶縁膜であるシリコン酸化膜8を介して貼り合わされて構成される半導体圧力センサの製造方法であることより,SOI(Silicon on Insulator)ウェハを製造していると認められ,「SOIウェハの製造方法」ともいうことができる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「それぞれシリコンウェハである支持ウェハおよび活性層ウェハが,酸化膜を介して互いに貼り合わせられて構成されるSOIウェハの製造方法」である点で共通すると認められる。
イ 引用発明における「上記第1のシリコン基板12の表面」及び「真空室14となる凹部」は,それぞれ,本願発明の「前記支持ウェハの,前記SOIウェハの貼り合わせ面となる第1面」及び「キャビティ」に相当するといえる。
そうすると,引用発明における「上記第1のシリコン基板12の表面に上記真空室14となる凹部を形成」することは,本願発明の「前記支持ウェハの,前記SOIウェハの貼り合わせ面となる第1面にキャビティを形成する工程」に相当すると認められる。
ウ 本願発明の「前記支持ウェハを熱酸化する工程」と,引用発明における「上記凹部を含む上記第1のシリコン基板12の表面に界面絶縁膜としてシリコン酸化膜8を形成」することとは,「前記支持ウェハに酸化膜を形成する工程」である点で共通するといえる。
エ 引用発明における「上記第2のシリコン基板11と上記第1のシリコン基板12とを上記シリコン酸化膜8を介して貼り合わせる」ことは,本願発明の「前記支持ウェハの前記第1面と前記活性層ウェハとを貼り合わせる工程」に相当すると認められる。

(2)一致点及び相違点
上記(1)から,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる。
ア 一致点
「それぞれシリコンウェハである支持ウェハおよび活性層ウェハが,酸化膜を介して互いに貼り合わせられて構成されるSOIウェハの製造方法であって,
前記支持ウェハの,前記SOIウェハの貼り合わせ面となる第1面にキャビティを形成する工程と,
前記支持ウェハに酸化膜を形成する工程と,
前記支持ウェハの前記第1面と前記活性層ウェハとを貼り合わせる工程と,
を備えたことを特徴とするSOIウェハの製造方法。」
イ 相違点
・相違点1
本願発明は,「前記支持ウェハの,前記第1面とは反対側の面にゲッタリング材を形成する工程」,及び「前記支持ウェハに形成されたゲッタリング材を除去する工程」を備えるのに対し,引用発明は上記の工程を備えていない点。
・相違点2
共通点に係る構成の「前記支持ウェハに酸化膜を形成する工程」について,本願発明は「前記支持ウェハを熱酸化する工程」により酸化膜を形成するのに対し,引用発明では,「上記凹部を含む上記第1のシリコン基板12の表面に界面絶縁膜としてシリコン酸化膜8を形成」する際の形成方法は特定されておらず,「シリコン酸化膜8」が「第1のシリコン基板12」を熱酸化して形成されるか否かは不明である点。
・相違点3
本願発明は,「貼り合わせられた前記支持ウェハおよび活性層ウェハに対して,貼り合わせ強化熱処理を行う工程」を備えているのに対し,引用発明において,「上記第2のシリコン基板11と上記第1のシリコン基板12とを上記シリコン酸化膜8を介して貼り合わせる」処理の内容は特定されておらず,「第2のシリコン基板11」と「第1のシリコン基板12」との貼り合わせの際に,貼り合わせ強化熱処理が行われるか否かは不明である点。

4 相違点についての検討
(1)相違点1について
引用発明は,第1の(単結晶)シリコン基板12とデバイスが形成される第2の(単結晶)シリコン基板11が,真空室14がその間に形成されるように,界面絶縁膜であるシリコン酸化膜8を介して貼り合わされて構成される半導体圧力センサの製造方法であって,引用文献1に記載された,マスクを用いたシリコンエッチングにより,上記第1のシリコン基板12の表面に上記真空室14となる凹部を形成する際(【0018】,上記2(1)ア(ア)参照。)や,マスクを用いた不純物注入とその後のアニールとにより,上記第2のシリコン基板11にゲージ抵抗1及び拡散配線2を形成する際(【0019】及び【0020】,上記2(1)ア(ア)参照。)に,上記第1のシリコン基板12及び上記第2のシリコン基板11の微細加工を必要とすることは明らかである。
そして,上記2(2)イ(ア)のとおり,シリコン基板に感圧ダイアフラムを設け,その上に拡散抵抗層によるセンサ素子(ピエゾ抵抗素子)を設けてなる半導体圧力センサでは,ダイヤフラム及び拡散抵抗の形成のためにシリコン基板の微細加工を必要とし,十分に防塵を考慮した半導体プロセスで作られるが,微量の金属不純物が混入したり,工程の途中で生成されたりしてしまい,その結果,このような金属不純物によってセンサ出力にふらつきが生じるとの問題点があることは,引用文献2にみられるように,本願出願前,当該技術分野では周知の技術的事項と認められる。
そうすると,引用発明において,上記第1のシリコン基板12に上記真空室14となる凹部を形成するための微細加工を施す際や,上記第2のシリコン基板11にゲージ抵抗1及び拡散配線2を形成するための微細加工を施す際に,十分に防塵を施しても上記第1のシリコン基板12及び上記第2のシリコン基板11に金属不純物が混入し,その結果,センサ出力にふらつきが生じるとの問題点が生じるので,混入した金属不純物を捕獲して除去する必要があることは,上記周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして,上記2(2)イ(イ)のとおり,それぞれシリコンウェハである支持ウェハおよび活性層ウェハが,酸化膜を介して互いに貼り合わせられて構成されるSOIウェハの製造において,製造工程中でウェハに混入する金属不純物を捕獲する手段として,支持ウェハ又は活性層ウェハの少なくとも一方における,貼り合わせ面ではない面に,粗面領域やポリシリコン膜などからなるゲッタリング層を形成する方法(EG法)は,引用文献2ないし4にみられるように,当該技術分野では常套手段と認められるから,引用発明において,上記周知の技術的事項に基づいて,上記第1のシリコン基板12に上記真空室14となる凹部を形成するための微細加工や,上記第2のシリコン基板11に上記ゲージ抵抗1及び上記拡散配線2を形成するための微細加工で混入した金属不純物を捕獲する際に,捕獲手段として,上記第1のシリコン基板12の上記真空室14となる凹部が形成される表面と反対側の面に,ゲッタリング材を形成する手段を採用することは,当業者が普通に行い得るものと認められる。
また,製造工程の最後で,上記金属不純物を捕獲したゲッタリング材を除去することは,引用文献3(【0005】及び【0017】,上記2(2)ア(イ)参照。)にみられるように,当業者が当然に行い得るものと認められる。
以上から,引用発明において,上記第1のシリコン基板12の上記真空室14となる凹部が形成される表面と反対側の面に,ゲッタリング材を形成し,上記第1のシリコン基板12に形成されたゲッタリング材を除去すること(相違点1に係る構成とすること)は,上記周知の技術的事項,及び上記常套手段に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

(2)相違点2について
ア それぞれシリコンウェハである支持ウェハおよび活性層ウェハが,酸化膜を介して互いに貼り合わせられて構成されるSOIウェハの製造方法において,上記酸化膜を,一方のウェハを熱酸化することにより形成することは,引用文献3(【0002】,【0010】及び【0012】,上記2(2)ア(イ)参照。)及び引用文献5(【0027】,上記2(2)ア(エ)参照。)にみられるように,当業者により普通に行われているものであり,引用発明において,デバイスが形成される第2の(単結晶)シリコン基板11との貼り合わせ面である,第1のシリコン基板12の表面に,界面絶縁膜としてシリコン酸化膜8を形成する際に,上記シリコン酸化膜8を,上記第1のシリコン基板12を熱酸化して形成することは,当業者が普通に行い得るものである。
イ なお,本願請求項1の記載からは,本願発明において,「前記支持ウェハの,前記第1面とは反対側の面にゲッタリング材を形成する工程」と「前記支持ウェハを熱酸化する工程」のいずれを先に行うかとの順序関係が特定されているとは認められないが,本願明細書には,「前記支持ウェハの,前記第1面とは反対側の面にゲッタリング材を形成する工程」の後に「前記支持ウェハを熱酸化する工程」を行うことが記載されている(【0042】及び【0043】,図3(b)及び(c))ので,この点についても検討する。
それぞれシリコンウェハである支持ウェハおよび活性層ウェハが,酸化膜を介して互いに貼り合わせられて構成されるSOIウェハの製造において,支持ウェハ又は活性層ウェハの少なくとも一方における,貼り合わせ面ではない面に,粗面領域やポリシリコン膜などからなるゲッタリング層を形成した後に,シリコンウェハを熱酸化して上記酸化膜を形成し,ゲッタリング層を酸化膜で被覆することは,引用文献3(【0010】及び【0012】,上記2(2)ア(イ)参照。)にみられるように当業者が普通に行い得るものと認められる。
そうすると,上記(1)で検討したように,引用発明において,引用文献2にみられるような周知の技術的事項,及び引用文献2ないし4にいられるような常套手段に基づいて,金属不純物を捕獲するためのゲッタリング材を,上記第1のシリコン基板12の上記真空室14となる凹部が形成される表面と反対側の面に形成する際に,上記ゲッタリング材を形成した後に,界面絶縁膜となるシリコン酸化膜8を,上記第1のシリコン基板12を熱酸化して形成し,上記ゲッタリング材をシリコン酸化膜で被覆することも,当業者が普通に行い得るものと認められる。
ウ 以上から,相違点2に係る構成は,引用発明において,当業者が普通に行い得るものと認める。

(3)相違点3について
凹部が形成された第1シリコン基板の一方の面に,上記凹部を封止するように第2シリコン基板の一方の面が接合され,上記第2シリコン基板の他方の面に,ダイヤフラムの歪みを抵抗変化として検出する歪検出素子が形成された,半導体圧力センサの製造方法において,酸化シリコン膜を介して室温で貼り合わせられた上記第1シリコン基板及び上記第2シリコン基板に対して,貼り合わせ強化熱処理を行うことは,引用文献5にみられるように,当該技術分野では周知の技術と認められ,引用発明の「上記第2のシリコン基板11と上記第1のシリコン基板12とを上記シリコン酸化膜8を介して貼り合わせる」処理において,貼り合わせ強化熱処理が行われることは,引用文献1には明記されていなくても自明といえる。
また,仮にそうでないとしても,引用発明において,「第2のシリコン基板11」と「第1のシリコン基板12」との貼り合わせの際に,貼り合わせ強化熱処理を行うことは,当業者が普通に行い得るものと認める。
以上から,相違点3に係る構成は,本願発明と引用発明との実質的な相違点とは認められず,また,仮にそうでないとしても,引用発明において,当業者が普通に行い得るものと認める。

5 本願発明の作用効果について
本願明細書の記載によれば,本願発明は,「キャビティSOIウェハが供されるデバイスの製造工程において高温処理を行っても,ゲッタリング材が酸化膜で被覆されているので,ゲッタリング材中に捕捉された金属不純物が,拡散速度が極端に遅い酸化膜中を透過して外部に拡散することを防止することができる。そのため,金属不純物に対して優れたゲッタリング能力を有するSOIウェハを得ることができる。」(【0035】)との作用効果,及び「キャビティSOIウェハの製造工程において,ゲッタリング材に捕捉した金属不純物をゲッタリング材ごと除去することができるので,金属不純物を含有しない信頼性の高いキャビティSOIウェハを得ることができる。さらに,キャビティSOIウェハが供されるデバイスの製造工程において,たとえ薄肉化した活性層が破損しても,金属不純物が残留していないので,製造装置を金属不純物で汚染するような事態を未然に防止することができる。」(【0053】)との作用効果を奏する。
他方,上記4(1)のとおり,引用発明において,第1のシリコン基板12に真空室14となる凹部を形成するための微細加工を施す際や,第2のシリコン基板11にゲージ抵抗1及び拡散配線2を形成するための微細加工を施す際に,上記第1のシリコン基板12及び上記第2のシリコン基板11に金属不純物が混入するとの問題点に鑑み,上記第1のシリコン基板12及び上記第2のシリコン基板11に混入した金属不純物を捕獲して除去するために,上記第1のシリコン基板12の上記真空室14となる凹部が形成される表面と反対側の面に,ゲッタリング材を形成し,上記第1のシリコン基板12に形成されたゲッタリング材を除去することは,引用文献2にみられるような周知の技術的事項,及び引用文献2ないし4にみられるような常套手段に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められ,また,上記金属不純物を捕獲したゲッタリング材を,製造工程の最後で除去することは,当業者が当然に行い得るものと認められる。
そして,上記4(2)イのとおり,引用発明において,上記周知の技術的事項,及び上記常套手段に基づいて,上記第1のシリコン基板12の上記真空室14となる凹部が形成される表面と反対側の面に,上記ゲッタリング材を形成する際に,上記ゲッタリング材を形成した後に,界面絶縁膜となるシリコン酸化膜8を,上記第1のシリコン基板12を熱酸化して形成し,上記ゲッタリング材をシリコン酸化膜で被覆することも,当業者が普通に行い得るものと認められる。
そうすると,本願発明における上記の作用効果は,引用文献2にみられるような周知の技術的事項,及び引用文献2ないし4にみられるような常套手段に基づいて,当業者が容易に予測し得るものといえる。
以上から,本願発明の奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

6 小括
したがって,本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明),並びに引用文献2にみられるような周知の技術的事項,引用文献2ないし4にみられるような常套手段,及び引用文献5にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第3 結言

以上検討したとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-13 
結審通知日 2015-11-17 
審決日 2015-11-30 
出願番号 特願2012-98447(P2012-98447)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右田 勝則  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 河口 雅英
綿引 隆
発明の名称 SOIウェハの製造方法  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 飯野 智史  
代理人 田村 義行  
代理人 大宅 一宏  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
代理人 上田 俊一  

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