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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1310158 |
審判番号 | 不服2015-2700 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-12 |
確定日 | 2016-02-09 |
事件の表示 | 特願2011-544043「動作を特徴付ける装置と方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日国際公開、WO2010/076313、平成24年 9月 6日国内公表、特表2012-520493、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年12月29日(優先権主張、2009年1月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年2月12日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。 第2 補正の適否・本願発明 平成27年2月12日付けの手続補正は、特許請求の範囲の独立請求項である請求項1、10、21のそれぞれにおいて、補正前の「前記動作が1つの面内にあり」を「前記動作が歩行平面に沿って発生し」とし、補正前の「前記動作を第1の位置と第2の位置の間の個々の動作に分割する少なくとも1つの機能」及び「分割の機能が、第2の位置における衝撃を使用し」を「足の衝撃を測定し、前記動作を、第1の足の衝撃に対応する第1の位置と、第2の足の衝撃に対応する第2の位置の間の個々の動作に分割し」とし、及び、補正前の「個々の動作毎に、前記面内の基準枠における少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を共に決定する少なくとも1つの機能」及び「共に決定する機能が、前記面内における3軸加速度計の出力を使用する」を「個々の動作毎に、少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を共に決定するために、第1の位置と、第2の位置の間の長さを、加速度測定結果に基づいて計算する」とするものであり、それぞれ、特許法第17条の2第5項第3号の特許請求の範囲の不明りょうな記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 したがって、本願の請求項1-21に係る発明は、平成27年2月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 物体の動作を特徴付ける装置であって、前記動作が歩行平面に沿って発生し、前記装置が、 前記物体に固定された少なくとも1つの3軸加速度計と、 計算モジュールと、 を含み、前記計算モジュールが、 - 足の衝撃を測定し、 - 前記動作を、第1の足の衝撃に対応する第1の位置と、第2の足の衝撃に対応する第2の位置の間の個々の動作に分割し、 - 個々の動作毎に、少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を共に決定するために、第1の位置と、第2の位置の間の長さを、加速度測定結果に基づいて計算する、装置。」 第3 原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-3,7-10 ・引用文献 1 ・請求項 4-6,11-20 ・引用文献 1乃至3 1.請求項1に対して 出願人は意見書において、引用文献1記載の発明は、 (1)「物体の動作を、第1の位置と第2の位置に区切ること、そして、区切られた動作の単位ごとに、物体の動作の方向と線を共に決定することについては、「示唆」がない点 (2)「ステップの移動の方向と線を決定することに用いられていないことを示す」点 (3)「面内における足の位置、および、移動の線については、全く触れられて」いない点において、補正後の本願請求項1に係る発明とは相違すると主張している。 出願人の上記主張について検討する。 (1)引用文献1記載の発明は、3軸加速度計よりステップを検出するものであり、例えば、図7の計測結果を基に足を上げている状態(第1の位置)と足を下げている状態(第2の位置)とを区別することは、当業者が適宜設計するべき事項に過ぎない。また、加速度センサの情報を元に動作の方向及び量を測定すること自体は、引用文献2にも記載されているように周知技術に過ぎない。 (2)加速度センサの情報を元に、ステップの方向と距離を測定することは引用文献2に記載されているように周知技術に過ぎない。 結局、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1記載の発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、出願人の上記主張を受け入れることはできない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.米国特許出願公開第2008/0105065号明細書 2.国際公開第2008/061023号 3.特開2006-346323号公報 第4 当審の判断 1.刊行物・引用発明 原査定の拒絶の理由で引用した米国特許出願公開第2008/0105065号明細書(以下、「刊行物」という。)の段落[0014] - [0015]、[0028]、[0034] - [0054]の記載、FIG.2 - FIG.8によれば、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「移動距離計測装置30、3軸の加速度計20、ジャイロセンサ40を備える携帯端末であって、 前記移動距離計測装置30は、ステップ検出ユニット32、搭載位置決定ユニット34、ステップ長さ評価ユニット36を備えており、 前記3軸の加速度計20は、歩行者の横方向、前方向、下方向の加速度をそれぞれ検出し、 前記ジャイロセンサ40は、ロール、ヨー、ピッチの角速度をそれぞれ検出し、 前記ステップ検出ユニット32は、前記加速度信号からスライディングウインド合計データを計算し、前記角速度信号からスライディングウインド合計データを計算し、ローパスフィルタリングによりエラーとノイズを除去して、前記スライディングウインド合計データを用いて一つのステップを検出し、 搭載位置決定ユニット34は、携帯端末の位置が、ユーザのポケットに位置されているか、歩行者の腰に位置されているかのどちらであるかを決定し、 ステップ長さ評価ユニット36は、前記決定される位置に応じて、異なるステップ長さ評価アルゴリズムを選択し、適切なステップ長さ評価パラメータ係数を選択してステップ長さを評価する携帯端末。」 2.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (ア)引用発明の「歩行者」は、本願発明の「物体」に相当するといえる。 (イ)引用発明の「ステップ」は、歩行者の歩きのステップであることは明らかであり、本願発明の「物体の動作」に相当し、本願発明と同様に「歩行平面に沿って発生」していることは明らかである。 (ウ)引用発明の携帯端末が歩行者の腰に位置された場合の「3軸の加速度計20」は、本願発明の「前記物体に固定された少なくとも1つの3軸加速度計」に相当する。 (エ)引用発明の「ステップ検出ユニット32」は、スライディングウインド合計データを計算し、ローパスフィルタリングによりエラーとノイズを除去して一つのステップを検出しているから、本願発明の「足の衝撃を測定し、前記動作を、第1の足の衝撃に対応する第1の位置と、第2の足の衝撃に対応する第2の位置の間の個々の動作に分割」する「計算モジュール」と「前記動作を、個々の動作にする」「計算モジュール」である点では一致する。 (オ)引用発明の「ステップ長さ評価ユニット36」は、加速度測定結果に基づいてステップ長さを評価することは明らかであるから、本願発明の「個々の動作毎に、少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を共に決定するために、第1の位置と、第2の位置の間の長さを、加速度測定結果に基づいて計算する」「計算モジュール」と「動作の長さを、加速度測定結果に基づいて計算する」「計算モジュール」である点では一致する。 (カ)引用発明の「携帯端末」は、歩行者のステップを検出し、ステップの長さを評価するから、本願発明の「物体の動作を特徴付ける装置」といい得るものである。 そうすると、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。 「物体の動作を特徴付ける装置であって、前記動作が歩行平面に沿って発生し、前記装置が、 前記物体に固定された少なくとも1つの3軸加速度計と、 計算モジュールと、 を含み、前記計算モジュールが、 前記動作を、個々の動作にし、 動作の長さを、加速度測定結果に基づいて計算する、装置。」 他方、本願発明と引用発明は次の点で相違する。 <相違点> 本願発明では、「計算モジュール」が「足の衝撃を測定し、前記動作を、第1の足の衝撃に対応する第1の位置と、第2の足の衝撃に対応する第2の位置の間の個々の動作に分割し、個々の動作毎に、少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を共に決定するために、第1の位置と、第2の位置の間の長さを、加速度測定結果に基づいて計算する」のに対し、引用発明では、「前記ステップ検出ユニット32は、前記加速度信号からスライディングウインド合計データを計算し、前記角速度信号からスライディングウインド合計データを計算し、ローパスフィルタリングによりエラーとノイズを除去して、前記スライディングウインド合計データを用いて一つのステップを検出し」、「ステップ長さ評価ユニット36は、前記決定される位置に応じて、異なるステップ長さ評価アルゴリズムを選択し、適切なステップ長さ評価パラメータ係数を選択してステップ長さを評価する」ものである点。 3.判断 上記相違点について検討する。 原査定の理由に引用された国際公開第2008/061023号(以下、「刊行物2」という。)の段落[0026]-[0029]、[0037]-[0038]には、フットウェア104に3軸の加速度計等のセンサ106を備え、足が動いたとき、足がリフトされたときに動きや位置の変化を検出してデータ出力し、出力された連続した足の動きのデータが予め定められたパターンに一致するか否かで足の動作を認識することが記載され、段落[0030]には、センサ106は、(1)フットウェア104のグラウンドとの衝撃の強さ、(2)ステップや動きにおけるフットウェア104の移動した距離を計測できることが記載されている。 原査定の理由に引用された特開2006-346323号公報(以下、「刊行物3」という。)には、運動靴に加速度センサを備え、加速度センサから加速度ノルムを計算し、計算された加速度ノルムが閾値を超えると報知することが記載されている。 しかしながら、上記刊行物2及び刊行物3に記載された技術は、相違点に係る本願発明の「足の衝撃を測定し、前記動作を、第1の足の衝撃に対応する第1の位置と、第2の足の衝撃に対応する第2の位置の間の個々の動作に分割し、個々の動作毎に、少なくとも1つの軸に対する前記個々の動作の移動の方向と線を共に決定するために、第1の位置と、第2の位置の間の長さを、加速度測定結果に基づいて計算する」構成ではなく、その構成を示唆するものでもない。 したがって、引用発明において相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって容易であるとはいえない。 本願発明は、当業者が引用発明及び刊行物2,3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 ほかに、引用発明において相違点に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったとする根拠は見当たらない。 本願の請求項2?9、21に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項10に係る発明は、本願発明を方法として表現したものであり、請求項11?20に係る発明は、請求項10に係る発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1?21に係る発明は、当業者が引用発明及び刊行物2,3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-01-25 |
出願番号 | 特願2011-544043(P2011-544043) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 森田 充功、▲高▼瀬 健太郎 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
和田 志郎 桜井 茂行 |
発明の名称 | 動作を特徴付ける装置と方法 |
代理人 | 木村 高久 |
代理人 | 木村 高久 |