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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1310205
審判番号 不服2014-468  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-10 
確定日 2015-11-11 
事件の表示 特願2011-505136「対象を見る方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月 3日国際公開、WO2009/146170、平成23年 7月28日国内公表、特表2011-522281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
特許出願: 平成21年4月14日
(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年4月14日、米国、を伴う国際出願)
拒絶理由通知: 平成24年10月31日(発送日:同年11月6日)
手続補正: 平成25年2月6日
拒絶理由通知: 平成25年3月19日(発送日:同年同月26日)
手続補正: 平成25年7月23日
補正却下: 平成25年9月4日(送達日:平成25年9月10日)
拒絶査定: 平成25年9月4日(送達日:平成25年9月10日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成26年1月10日
拒絶理由通知: 平成26年11月21日
(発送日:同年同月25日、以下、「当審拒絶理由」という。)
手続補正: 平成27年5月22日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成27年5月22日


2 当審拒絶理由
当審拒絶理由の理由2の概要は、以下のとおりである。

「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



本願請求項1,7及びこれらを引用する請求項3ないし6,9ないし12に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
すなわち、請求項1において、「前記変化させた視覚コントラストを300ミリ秒未満の所定時間にわたり維持する・・・」とあるが、該所定時間を「300ミリ秒未満」と限定した発明は本願の明細書及び図面には記載されておらず、また自明でもない。
本願の明細書(段落【0023】及び【0025】)において、「300ms」との記載はあるものの、これは、より小さなコントラストでの「84ms」が同等の明るさ刺激を有するという説明での、比較対象条件として挙げられているにすぎない。このことは、本願の明細書(段落【0025】)において、「・・・重要な利点が、ある値の範囲内の継続期間を伴う視覚刺激を与えるように照明器具を動作することから得られると確信する。好ましい一実施形態において、その範囲は80?88msである。別の実施形態において、その範囲は、75から100msの任意部分とすることができる。」と記載されていることからも明らかといえる。
また、上記所定時間が短すぎれば、必要な明るさが得られず、「明るさを減少させることなく刺激期間を最適範囲に減少させることによって、光源のパワー出力を減少させることができる」(本願の明細書、段落【0015】)との課題解決手段を反映しないものとなることも自明であるから、発明の詳細な説明に記載されている上記所定の時間の範囲は、80ms以上88ms以下、もしくは75ms以上100ms以下、のいずれかのみであるといえる。
なお、請求項7の記載に関しても同様である。 」


3 本件補正

本件補正により、請求項1ないし12は以下のように補正された。
「【請求項1】
明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる方法であって、
該光源から発光を提供し、
100ミリ秒未満の所定時間にわたり光源を起動し続いて光源を未起動し、および明るさおよびコントラストを最適化するのに十分な適当な反復率で、起動と未起動を繰り返すことにより、明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させながら
バックグラウンドに対して対象の認識された視覚コントラストを改善すること
からなる方法。
【請求項2】
前記時間は、83ミリ秒である、請求項1に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる方法。
【請求項3】
前記視覚コントラストを変化させるステップは、対象を照明するステップである、請求項1に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる方法。
【請求項4】
前記認識された視覚コントラストの改善を所定の間隔をあけて繰り返す、請求項1に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる方法。
【請求項5】
前記視覚コントラストの改善量は、対象の視覚内容に基づいて決定される、請求項1に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる方法。
【請求項6】
前記視覚コントラストの改善は、対象の輝度を調整することで達成される、請求項1に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる方法。
【請求項7】
明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる装置であって、
発光を提供する光源;
100ミリ秒未満の所定時間にわたり光源を起動し続いて光源を未起動し、および明るさおよびコントラストを最適化するに十分な適当な反復率で、起動と未起動を繰り返すことにより、明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させながら
バックグラウンドに対して対象の認識された視覚コントラストを改善する手段、
からなる装置。
【請求項8】
前記時間は83ミリ秒である、請求項7に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる装置。
【請求項9】
前記視覚コントラストを改善させるための手段は、対象を照明するための手段を更に備える、請求項7に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる装置。
【請求項10】
前記改善するための手段は、前記変化した視覚コントラストを所定の間隔をあけて繰り返し維持する手段を更に備える、請求項7に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる装置。
【請求項11】
前記視覚コントラストの改善量は、対象の視覚内容に基づいて決定される、請求項7に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる装置。
【請求項12】
前記視覚コントラストを改善させるための手段は、対象の照明レベルを調整するための手段を更に備える、請求項11に記載の明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる装置。」

上記のとおり、請求項1及び7において、「300ミリ秒未満」とされていた、光源を起動する(コントラストを維持する)時間である「所定時間」が、本件補正によって「100ミリ秒未満」と補正された。また、同請求項において、「明るさおよびコントラストを最適化するに十分な適当な反復率で、起動と未起動を繰り返すことにより」光源のパワー出力を減少させ、視覚コントラストを改善する、とする補正がなされ、さらに、視覚コントラストの改善が「バックグラウンドに対して」のものであるとする補正も行われている。


4 当審の判断
(1)請求項1及び7には、「100ミリ秒未満の所定時間にわたり光源を起動し続いて光源を未起動し・・・」と記載されている。
これに対する効果について、本願の明細書の段落【0015】には、「明るさを減少させることなく刺激期間を最適範囲に減少させることによって、光源のパワー出力を減少させることができる」と記載され、そしてそのような効果を奏する「最適範囲」に関し、発明の詳細な説明には以下のように記載されている。

「【0010】
刺激の期間は、その知覚された明るさに影響を及ぼすことが判明している。Blochの法則は、時間相反則とも呼ばれるが、視覚刺激の期間が増大するにつれ、(刺激の実際の輝度を増大させることなく)その検知閾値が減少することを述べている。Blochの法則は、(見る条件に応じて)最高30?130ミリ秒の時間継続期間で働き・・・」
「【0020】
継続期間が増大すると、開始反応および後発射の大きさが約83msの期間まで増大することになり、その後、後発射のみ大きさが増大し、次いで減少することが分かった。・・・」
「【0025】
・・・重要な利点が、ある値の範囲内の継続期間を伴う視覚刺激を与えるように照明器具を動作することから得られると確信する。好ましい一実施形態において、その範囲は80?88msである。別の実施形態において、その範囲は、75から100msの任意部分とすることができる。・・・」

これらの記載からみて、上記効果を奏する「最適範囲」が下限値を有することは明らかであり、その下限値として記載されている値は80または75msのみであるといえる。またそもそも、光源を起動する時間が短すぎれば、必要な明るさが得られず、上記のような効果を奏し得ないことも、技術常識からみて明らかといえる。
そうすると、上記「所定時間」が下限値を有さず、100ミリ秒未満から0ミリ秒近傍までの範囲を含むものである請求項1及び7は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明の記載内容を越えて特許を請求するものである。
したがって、本願請求項1,7及びこれらを引用する請求項3ないし6,9ないし12に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2)請求項1及び7において、「・・・明るさおよびコントラストを最適化するに十分な適当な反復率で、起動と未起動を繰り返すことにより、明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させながら」とあり、該記載は、適当な反復率とすることにより、明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させるものを含むと解される。
しかしながら、本願の明細書には、
「【0032】
・・・コントラストを改善するために84msのパルスによってもたらされる照明を増大させることができる。同様に、反復率制御器34を、明滅を避けるために時間値t2を調整すべく設けることができる。」
との記載はあるものの、この「反復率制御器34」による調整は、「84msのパルス」を用いた際に生じる「明滅を避けるため」に行われるのであって、反復率制御器34による調整が「明るさを減少させることなく光源のパワー出力を減少させる」というものではない。
したがって、本願請求項1,7及びこれらを引用する請求項2ないし6,8ないし12に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(3)請求項1及び7において、「バックグラウンドに対して対象の認識された視覚コントラストを改善する手段」とあるが、視覚コントラストの改善を「バックグラウンドに対して」行うことについては本願の明細書及び図面には記載されておらず、また、本願の明細書には、そもそも「バックグラウンド」に関する記載も示唆もない。
したがって、本願請求項1,7及びこれらを引用する請求項2ないし6,8ないし12に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。


5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-16 
結審通知日 2015-06-18 
審決日 2015-06-30 
出願番号 特願2011-505136(P2011-505136)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
P 1 8・ 537- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 直行  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 中塚 直樹
清水 稔
発明の名称 対象を見る方法  
代理人 小林 恒夫  
代理人 齋藤 正巳  
代理人 木村 克彦  
代理人 岡部 讓  
代理人 高梨 憲通  
代理人 臼井 伸一  
代理人 本田 亜希  

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