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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1310251
審判番号 不服2015-8575  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-08 
確定日 2016-01-21 
事件の表示 特願2011- 72883「車両の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日出願公開、特開2012- 21643〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成23年3月29日(優先権主張 平成22年6月15日)の出願であって、平成26年6月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成26年8月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年2月10日付け(発送日:平成27年2月18日)で拒絶査定がなされ、平成27年5月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成26年8月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
所定の条件が成立したときに変速機(13)のクリープを禁止するように構成した車両の制御装置において、
運転者が車両をクリープ走行させながら駐車する間に運転者のステアリング操作をアシストする駐車支援装置(46)と、
運転者のスイッチ操作で前記駐車支援装置(46)が作動を開始してから車両が目標駐車位置に達して前記駐車支援装置(46)が作動を終了するまでの間は、前記所定の条件が成立しても変速機(13)のクリープを可能にする制御手段(41)と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-60224号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「車両のクリープ制御装置」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア.「【0013】 本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであって、車両の幅寄せや縦列駐車、あるいは狭い場所での車庫入れ操作のように、クリープ現象を積極的に利用して車両の運転操作を行いたいと欲するときには、これを自動的に検出してクリープ防止制御を中止し、クリープ現象を有効利用することができるようにした車両のクリープ制御装置を提供し、上記課題を解決せんとしたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、図1にその要旨を示すように、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジとされているときであっても、所定の条件が成立したときにはニュートラル状態を形成してクリープを防止するように構成した車両のクリープ制御装置において、ステアリングの操作量を検出する手段と、前記操作量からステアリングが操作されている状態にあるか否かを判断する手段と、ステアリングが操作されている状態にあると判断されたときは、前記ニュートラル状態への移行を禁止する手段とを備えたことにより、上記課題を解決したものである。
【0015】
【作用】本発明においては、クリープ防止制御を実行するための条件の1つとして、ステアリングの操作状態を加えるようにしている。
【0016】即ち、本発明においては、ステアリングの操作量を検出し、この操作量の検出によって現在ステアリングが操作状態にあるか否かを判断し、操作状態にあると判断されたときにはニュートラル状態への移行を禁止してクリープ防止制御に入らないようにしている。
【0017】この結果、ステアリングの操作を伴った車両の幅寄せや縦列駐車、あるいは狭い場所での車庫入れ操作時のようなクリープ現象を積極的に利用したいようなときに、クリープの発生が抑制されてしまうような事態を防止することができ、運転者はクリープ車速以下の種々の微速状態をブレーキの操作量にて自在に調整・確保することができるようになって運転操作が非常に容易となる。」

イ.「【0038】コンピュータ80は以上のような各種センサからの信号を分析し、後述する制御フローに従ってクリープ防止制御に入るべきと判断したときには、自動変速機50のフォワードクラッチ(図示省略)の係合圧を低減するように指令し、ドライブレンジであってもニュートラル状態を形成してクリープ現象の発生を防止する。なお、このニュートラルを形成するための具体的な油圧構成等は、従来周知のものがそのまま適用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。」

ウ.記載事項ア.の段落【0014】における「所定の条件が成立したときにはニュートラル状態を形成してクリープを防止するように構成した車両のクリープ制御装置において」との記載及び記載事項イ.の段落【0058】における「クリープ防止制御に入るべきと判断したときには、自動変速機50のフォワードクラッチ(図示省略)の係合圧を低減するように指令し、ドライブレンジであってもニュートラル状態を形成してクリープ現象の発生を防止する。」との記載によれば、車両のクリープ制御装置は、所定の条件が成立したときに自動変速機50のクリープ防止制御を行うことが分かる。

エ.記載事項ア.の段落【0013】における「車両の幅寄せや縦列駐車、あるいは狭い場所での車庫入れ操作のように、クリープ現象を積極的に利用して車両の運転操作を行いたいと欲するときには、これを自動的に検出してクリープ防止制御を中止し、クリープ現象を有効利用することができる」との記載、同段落【0014】における「ステアリングが操作されている状態にあると判断されたときは、前記ニュートラル状態への移行を禁止する手段」との記載及び同段落【0017】における「運転者はクリープ車速以下の種々の微速状態をブレーキの操作量にて自在に調整・確保することができるようになって運転操作が非常に容易となる。」によれば、運転者が車両をクリープ走行させながらステアリングを操作して縦列駐車する間は、クリープ防止制御を中止し、クリープ現象を利用する制御手段を有することが分かる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「所定の条件が成立したときに自動変速機50のクリープ防止制御するように構成した車両のクリープ制御装置において、
運転者が車両をクリープ走行させながら縦列駐車する間は、
前記クリープ防止制御を中止し、クリープ現象を利用する制御手段
を備える車両のクリープ制御装置。」

(2)刊行物2に記載された技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-297520号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「車両の自動操舵装置」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
オ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドライバーのステアリング操作によらずに車両を自動的に駐車するための車両の自動操舵装置に関する。」

カ.「【0004】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両をクリープ走行させながら自動駐車制御を行う際に、車両に加わる正味の制動力を適切に評価することを目的とする。」

キ.「【0022】次に、バック駐車/左モード(車両Vの左側にある駐車位置にバックしながら駐車するモード)を例にとって、自動駐車制御の内容を説明する。
【0023】先ず、図2(A)に示すように、車両Vを駐車しようとする車庫の近傍に移動させ、車体の左側面を車庫入口線にできるだけ近づけた状態で、予め決められた基準(例えば左側のサイドミラー)が車庫の中心線に一致する位置(スタート位置(1)[審決注:公報では丸付き数字の1、以下同様。)に車両Vを停止させる。そして、モード選択スイッチS_(7)を操作してバック駐車/左モードを選択するとともに自動駐車スタートスイッチS_(8)をONすると、自動駐車制御が開始される。自動駐車制御が行われている間、操作段階教示装置11のディスプレイには自車の現在位置、周囲の障害物、駐車位置、スタート位置から駐車位置までの自車の予想移動軌跡、前進から後進に切り換える折り返し位置等が表示され、併せて操作段階教示装置11のスピーカからの音声でドライバーに前記折り返し位置におけるセレクトレバー10の操作等の各種の指示や警報が行われる。
【0024】自動駐車制御により、ドライバーがブレーキペダル9a(図1参照)を緩めて車両Vをクリープ走行させるだけで、ステアリングホイール1を操作しなくても、モード選択スイッチS_(7)により選択されたバック駐車/左モードのデータに基づいて前輪Wf,Wfが自動操舵される。即ち、スタート位置(1)から折り返し位置(2)まで車両Vが前進する間は前輪Wf,Wfは右に自動操舵され、折り返し位置(2)から駐車完了位置(3)まで車両Vが後進する間は前輪Wf,Wfは左に自動操舵される。」

ク.記載事項オ.の段落【0001】における「本発明は、ドライバーのステアリング操作によらずに車両を自動的に駐車するための車両の自動操舵装置に関する。」との記載によれば、車両の自動操舵装置はドライバーのステアリング操作をアシストすることが分かる。

ケ.記載事項キ.の段落【0023】の「自動駐車スタートスイッチS_(8)をONすると、自動駐車制御が開始される。」との記載及び同段落【0024】の「自動駐車制御により、ドライバーがブレーキペダル9a(図1参照)を緩めて車両Vをクリープ走行させるだけで、ステアリングホイール1を操作しなくても、モード選択スイッチS_(7)により選択されたバック駐車/左モードのデータに基づいて前輪Wf,Wfが自動操舵される。即ち、スタート位置(1)から折り返し位置(2)まで車両Vが前進する間は前輪Wf,Wfは右に自動操舵され、折り返し位置(2)から駐車完了位置(3)まで車両Vが後進する間は前輪Wf,Wfは左に自動操舵される。」との記載によれば、ドライバーの自動駐車スタートスイッチS_(8)のオン操作で作動を開始してから、車両が目標駐車位置に達して作動を終了するまでの間に自動駐車制御が行われることが分かる。

上記記載事項及び認定事項を総合すると、刊行物2には、次の技術事項(以下、「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されている。

「運転者のステアリング操作をアシストする車両の自動操舵装置であって、ドライバーの自動駐車スタートスイッチS_(8)のONで作動を開始してから、車両が目標駐車位置に達して作動を終了するまでの間、運転者のステアリング操作をアシストすること。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「自動変速機50」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明における「変速機」に相当し、以下同様に、「車両のクリープ制御装置」は「車両の制御装置」に、「縦列駐車」は「駐車」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「クリープ防止制御を中止し、クリープ現象を利用する制御手段」は、所定の条件が成立して行われるクリープ防止制御が中止されて、自動変速機50のクリープを可能にするのであるから、本願発明の「所定の条件が成立しても変速機のクリープを可能にする制御手段」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「所定の条件が成立したときに変速機のクリープを禁止するように構成した車両の制御装置において、
運転者が車両をクリープ走行させながら駐車する間は、前記所定の条件が成立しても変速機のクリープを可能にする制御手段を備える車両の制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明は、「運転者のステアリング操作をアシストする駐車支援装置」を有し、「運転者のスイッチ操作で前記駐車支援装置が作動を開始してから車両が目標駐車位置に達して前記駐車支援装置が作動を終了するまでの間」は運転者のステアリング操作をアシストするのに対し、引用発明は、「運転者のステアリング操作をアシストする駐車支援装置」を有しない点(以下、「相違点」という。)。

4.当審の判断
相違点について検討する。
本願発明と刊行物2に記載された技術事項とを対比すると、刊行物2に記載された技術事項における「ドライバー」は、本願発明における「運転者」に相当し、以下同様に、「車両の自動操舵装置」は「駐車支援装置」に、「自動駐車スタートスイッチS_(8)のON」操作は「スイッチ操作」に、それぞれ相当する。
そうすると、刊行物2に記載された技術事項は、本願発明の用語を用いて表現すると、「運転者のステアリング操作をアシストする駐車支援装置であって、運転者のスイッチ操作で作動を開始してから、車両が目標駐車位置に達して作動を終了するまでの間、運転者のステアリング操作をアシストすること。」ということができる。
ここで、刊行物2の記載事項カ.の段落【0004】における「車両をクリープ走行させながら自動駐車制御を行う際に」との記載によれば、刊行物2に記載された技術事項は、車両の駐車時においてクリープ走行を利用するものであるから、引用発明と共通の技術分野に属するものである。
そうすると、刊行物1及び刊行物2に接した当業者であれば、引用発明に刊行物2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。
してみると、引用発明における「車両のクリープ制御装置(本願発明における「車両の制御装置」に相当。)」に刊行物2に記載された技術事項における「車両の自動操舵装置(本願発明における「駐車支援装置」に相当。)」を適用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-18 
結審通知日 2015-11-25 
審決日 2015-12-10 
出願番号 特願2011-72883(P2011-72883)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀内 亮吾  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 大内 俊彦
中川 隆司
発明の名称 車両の制御装置  
代理人 仁木 一明  
代理人 落合 健  
代理人 ▲ぬで▼島 愼二  

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