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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1310421
審判番号 不服2014-11650  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-18 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2011-510522「空間分割多元接続(SDMA)ベースのワイヤレス通信システム中で,空間的チャネルを決定するための方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日国際公開,WO2009/142806,平成23年 8月18日国内公表,特表2011-523811〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2009年3月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年5月21日 米国,2008年8月20日 米国,2008年12月4日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年2月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。そして,審査官が作成した同年7月11日付けの前置報告書に対して,同年10月28日に上申書が提出されている。


第2 補正却下の決定
[結論]
平成26年6月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
平成26年6月18日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成25年12月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
複数のノードと通信する装置において,
処理システムと,
空間ストリーム上で前記ノードに対してデータを送信するように構成されているトランシーバと
を具備し,
前記処理システムは,
一意的なトレーニング信号を使用するための情報を,前記ノードに対して提供することによって,前記ノードからのトレーニング信号を要求し,
前記要求に応答したノードからの,拡散コードまたはスクランブリングコードでカバーされているトレーニング信号を受信し,
前記トレーニング信号に基づいて,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算するように構成されており,
前記情報は,前記トレーニング信号のための拡散コードまたはスクランブリングコードを指定する情報を含む装置。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「【請求項1】
複数のノードと通信する装置において,
処理システムと,
空間ストリーム上で前記ノードに対してデータを送信するように構成されているトランシーバとを具備し,
前記処理システムは,
一意的なトレーニング信号を使用するための情報を,前記ノードに対して提供することによって,前記ノードからのトレーニング信号を要求し,
前記要求に応答したノードからの,拡散コードまたはスクランブリングコードでカバーされているトレーニング信号を受信し,
前記トレーニング信号から,前記ノードのそれぞれに対する,チャネル状態情報を計算し,前記計算されたチャネル状態情報を結合して,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算するように構成されており,
前記情報は,前記トレーニング信号のための拡散コードまたはスクランブリングコードを指定する情報を含む装置。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。
([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)

2 補正の適否
(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
上記補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において,プレコーディング行列の計算に関して,本願発明の「前記トレーニング信号に基づいて,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算するように構成されており」との構成を,「前記トレーニング信号から,前記ノードのそれぞれに対する,チャネル状態情報を計算し,前記計算されたチャネル状態情報を結合して,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算するように構成されており」と構成に限定して,特許請求の範囲を減縮するものである。請求項14,27,41における補正についても,同様である。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。

ア 補正後の発明
上記「1 本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。

イ 引用発明及び周知事項
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用されたMotorola,Uplink sounding for obtaining channel state information at Node B in EUTRA([当審仮訳]:EUTRAにおいてノードBでチャネル状態情報を取得するためのアップリンク・サウンディング),3GPP R1-071342,2007年3月30日(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「

」(1/3ページ8?23行)
([当審仮訳]:
1.はじめに
[1] では,アップリンク・サウンディングの詳細が与えられており,そこでは,ノードBはUEにアップリンク上でどこでどのようにサウンドするかを指示する(すなわち,既知のパイロットシーケンスを送信する)。アップリンク・サウンディング情報は,ノードBにおいて,(特にTDDで)ダウンリンク・プリコーディング重みを決定するため,(FDD又はTDDで)アップリンク上のチャネル依存スケジューリングのため,及び(TDDで)ダウンリンク上のチャネル依存スケジューリングのため,に役立つ。本稿では,EUTRAに重要なアップリンク・サウンディングの特徴を追加する,特定のテキストが提案される。(中略)

[1] からの結論を要約すると,アップリンク・サウンディングの利点は:
1. 送信重みを計算するための計算負荷はノードBに置かれている(UEが行う必要があるのは,ノードBからのサウンディング要求に応答して,サウンディング波形を送信することだけである)。
2. TDDでは,CSIが得られた時からプリコーディング重みを適用する時まで間の時間を非常に小さくする(例えば,3つ又は4つのOFDMシンボル時間)ことができ,アップリンクのサウンディングも高いUE速度で実行可能である。 )

(イ)「2. Overhead Requirements of Uplink Sounding
Assume that: (中略) 4) The UE will send sounding waveforms from two antennas,
(中略)
Note that an advantage of sounding over feedback methods is the overhead is independent of the number of antennas at Node B. 」(1/3ページ末行?2/3ページ1行,同ページ3行,同ページ9?10行)
([当審仮訳]:
2.アップリンク・サウンディングのオーバーヘッド要求
以下のように仮定する:(中略) 4)UEはサウンディング波形を2つのアンテナから送信する
(中略)
フィードバック手法に比べてサウンディングの利点は,オーバーヘッドがノードBのアンテナ数とは無関係であることに留意されたい。)

(ウ)「

」(3/3ページ2?25行)
([当審仮訳]:
アップリンク・チャネル・サウンディング
ノードBは,UEに対して,特定の時間に,UEの送信アンテナの1又はそれ以上のアンテナから,アップリンク帯域幅の全て又は指定されたサブセットにて,サウンディング波形を送信するように,命令することができる。ノードBでどのようにアップリンク・サウンディングが使用され得るかのいくつかの例は:
・特にTDDシステムで,ダウンリンク・プリコーディング重みを決定するため
・アップリンク上のチャネル依存スケジューリングをサポートするためにチャネル情報を提供するため
・(例えば,CQIフィードバックに報告されていないリソースブロックにおける)CQIフィードバックを増大する,TDDにおけるダウンリンク上のチャネル依存スケジューリングをサポートする,追加のチャネル情報を提供するため

1つのUEの異なる送信アンテナのための又は多数のUEからのサウンディング波形は,次の2つの方法のいずれかで,直交化することができる。:
・個別のサブキャリアを占める異なるサウンディング波形による。このタイプのサウンディングは周波数領域での信号の直交性を実現する(すなわち,1つのUEの異なる送信アンテナのための又は多数のUEからのサウンディング波形は,FDM方式で送信される。)。
・サブキャリアの共通セットを占める,コード領域で直交であるサウンディング波形を構成することによる。一例として,個々のサウンディング波形は,単一の参照シーケンスの時間領域における特定の巡回シフトによって区別することができる(すなわち,1つの端末の異なる送信アンテナのための又は多数のUEからのサウンディング波形は,CDM方式で送信される。)。
サウンディング波形は,サブフレームのデータシンボルのうちの1つを置き換えるように,アップリンク・サブフレームに時間多重化されてもよい。
サウンディング波形は,トランケートされた一般化されたチャープ状のCAZACシーケンスを,サウンディング波形によって占有されるサブキャリアの集合にマッピングすることによって,生成することができる。シーケンスの長さは,トランケーション前に,素数とすべきである。 )

上記(ア)?(ウ)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,
a 引用例は,EUTRA(evolved UMTS(Universal Mobile Telecommunications System) Terrestrial Radio Access)においてノードBでチャネル状態情報を取得するためのアップリンク・サウンディングに関する,3GPPにおける提案であり,当該ノードBは複数のUEと通信する装置であるといえる。
そして,ノードBは,処理を行うための手段と,複数のUEと無線通信するための送受信手段とを有することは技術常識である。ここで,上記(ア)の「アップリンク・サウンディング情報は,ノードBにおいて,(特にTDDで)下りプリコーディング重みを決定するため」との記載,上記(イ)の記載,上記(ウ)の「1つの端末の異なる送信アンテナのための又は多数のUEからのサウンディング波形」との記載によれば,ノードBは複数のアンテナによるMIMO通信を行い得るものと解され,ノードBの送受信手段はプリコーディングにより形成された空間チャネル上でUEに対してデータを送信していると解される。

b 上記(ア)の記載によれば,UEは,ノードBからのサウンディング要求に応答して,サウンディング波形を送信するのであるから,ノードBはUEからのアップリンク・サウンディングに係るサウンディング波形を要求しているといえる。そして,上記(ア)の記載によれば,ノードBはUEにアップリンク上でどこでどのようにサウンドするかを指示するのであるから,ノードBはアップリンク・サウンディングのための情報をUEに対して提供しているといえる。

c 上記(ウ)には,コード領域で直交であるサウンディング波形を構成し,1つの端末の異なる送信アンテナのための又は多数のUEからのサウンディング波形をCDM方式で送信することが記載されている。そして,コード領域で直交であるサウンディング波形は,トランケートされた一般化されたチャープ状のCAZACシーケンス(シーケンスの長さは,トランケーション前に,素数)を,サウンディング波形によって占有されるサブキャリアの集合にマッピングすること等によって生成されると理解される。
したがって,ノードBは要求に応答したUEからの,コード領域で直交化されているサウンディング波形を受信しているといえる。

d 上記(ア),(ウ)の記載によれば,UEはノードBからのサウンディング要求に応答し,サウンディング波形を送信し,ノードBは当該サウンディング波形に基づいて送信重みを計算し,TDDにおけるダウンリンクのプリコーディング重みを決定していることは明らかである。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「複数のUEと通信する装置において,
処理を行うための手段と,
空間チャネル上で前記UEに対してデータを送信するように構成されている送受信手段とを具備し,
前記処理を行うための手段は,
アップリンク・サウンディングのための情報を,前記UEに対して提供し,前記UEからのアップリンク・サウンディングに係るサウンディング波形を要求し,
前記要求に応答したUEからの,コード領域で直交化されているサウンディング波形を受信し,
前記サウンディング波形に基づいて送信重みを計算し,TDDにおけるダウンリンクのプリコーディング重みを決定するように構成された装置。」

[周知事項]
同じく原査定の拒絶の理由に引用されたCATT et al.,Pre-coding for EUTRA TDD([当審仮訳]:EUTRA TDDのためのプリコーディング),3GPP R1-071749,2007年3月30日(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(エ)「

(中略)

」(1ページ20行?2ページ1行)
([当審仮訳]:
2.TDDのためのプリコーディング
2.1. コードブックvs非コードブック
CSIが送信機において知られている場合,プリコーディング行列は,システムの性能を高めるために,送信機で瞬時に計算することができ,いかなるコードブックも必要とされない。しかし,送信機でCSIが使用できない場合は,プリコーディング行列は受信機で計算され,コードブックインデックスにより送信機にフィードバックすることができる。共有性のため,コードブック・ベースのプリコーディングはFDD及びTDD動作の双方においてサポートされることが合意されている。しかしながら,非コードブック・ベースのプリコーディングは,コードブック・ベースのプリコーディングに比べて以下のユニークな利点を維持するので,少なくともTDD動作ではサポートされるべきである。
・ フィードバック遅延,フィードバック・エラー,量子化損失が無い,コードブックベースのプリコーディングに対する大幅なパフォーマンス・ゲイン。
・ アップリンク周波数依存スケジューリングのためのアップリンク・チャネルサウンディングは,TDD動作におけるチャネル相反性を維持するために再利用することができ,プリコーディング行列を計算するために使用することができる。
・各ユーザのための全てのCSIはeノードBで知られており,計算及び決定のほとんどは,ほぼ完全にeノードBで実施され,ユーザに伝送されるエネルギー及びMU-MIMOのためのユーザ間干渉を最適にバランスするために,高度な信号処理技術がeノードBに導入され得る。
・専用参照信号を用いることにより,より多くの送信アンテナが簡単にサポートされる
(中略)
(図2は省略) )

同じく原査定の拒絶の理由に引用されたCATT et al.,Views on the High Level Principles of MIMO for unicast traffic in E-UTRA downlink([当審仮訳]:E-UTRAダウンリンクにおけるユニキャスト・トラフィックのMIMOのハイレベル原則に関する見解),3GPP R1-060521,2006年 2月17日(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(オ)「

」(1ページ20行?末行,2ページ31行?3ページ10行)
([当審仮訳]:
2.E-UTRAダウンリンクにおけるMIMOの一般的な送信機のブロック構造
(図1は省略)
図1 E-UTRAダウンリンクにおけるMIMOの一般的な送信機のブロック構造
(中略)
3.MIMOのハイレベル原則に関する見解
3.1. トピック1:SU-MIMO vs MU-MIMO
SU-MIMO(SDM)は,MU-MIMO(SDMA)の特別な場合であることが指摘されている。送信ストリーム(ビーム)がすべて1つの端末に集中しているとき,MU-MIMOはSU-MIMOとなる。SU-MIMOを使用するか又はMU-MIMOを使用するかは,ノードB/システムの能力によって決定される。図1の関連する処理ユニットは,ユーザグループ化ユニットと,スケジューリングユニットである。デフォルトの動作モードは,MU-MIMOの場合,UEの要求(例えば,サービス情報,優先順位),対応するプリコーディング行列等によって決定することができるグループ化情報によって,ユーザはグループ化される。1つのグループが,コントローラユニットからの選択されたグループのインデックスに応じて選択される。複数のユーザーを含むグループが選択されてもよく,このため動作モードは実際にMU-MIMOとなる。しかし,単一ユーザのグループが選択される場合,動作モードはSU-MIMOとなる。SU-MIMOのみがサポートされている場合は,グループの数Gはユーザの数のKに等しくなる,すなわち,ユーザグルーピングユニットはトランスペアレントになる。
また,デフォルトの動作モードがMU-MIMOである場合に,UE受信機は,どのストリームがそれに属するのかを知る必要がある。このストリーム割当情報又は参照信号割当情報は,ダウンリンク制御信号を介して,対応するUEに転送される。しかし,SU-MIMOのみがサポートされている場合は,すべてのストリームは同じUEのみに属し,UEではストリームの数のみが必要とされる。そのためMU-MIMOの評価では,ダウンリンク制御信号のオーバーヘッド及びスケジューリングの複雑さが考慮されるべきである。 )

(カ)「

(中略)

」(4ページ4?26行,5ページ11行?同ページ下から4行)
([当審仮訳]:
3.4. トピック4:プリコーディング
プリコーディングの使用が評価に含まれることは,LTEのMIMO電話会議で決定されている。プリコーディングは,アンテナ領域のMIMO信号処理をビーム領域処理に変換し,システム性能を向上させるために既知のCSIを有する複数のアンテナによって可能となる追加の自由度を利用する [2]。それはつまり,プリコーダユニットに入力されるストリームの数がSである場合,S個の一般化ビームが生成される,すなわち,各ビームはプリコーディング行列の各列に対応することに留意されたい。また,SU-MIMO(SDM)及びMU-MIMO(SDMA)の概念は,ビーム領域において簡単に説明することができる。全てのビームが単一のユーザに割り当てられている場合はSU-MIMOであり,ビームが異なるユーザに割り当てられている場合はMU-MIMOである。ビームが1つ,すなわちS=1の場合,プリコーディングは,動的な送信ビーム・フォーミング又は閉ループ送信ダイバーシチになる。したがって,動的な送信ビーム・フォーミング又は閉ループ送信ダイバーシチは,プリコーディングされたMIMOの特別なケースとして見ることができる。
一般に,プリコーディング行列はM×Sの次元を有し,ここでSはストリームの数であり,Mは図1に示したアンテナの数である。ストリームの入力ベクトルと空間チャネルからの出力ベクトルは,以下の関係を有する。
(数式1は省略)
ここでYはN×1次元の受信されたシンボルのベクトルであり,XはS×1次元の同じ時間-周波数単位を使用して送信されたシンボルのベクトルであり,Vはプリコーディング行列であり,Hは,N×M次元のチャネル行列であり,N_(0)はN×1次元の雑音ベクトルであり,Nは受信機におけるアンテナの数である。H_(E)は,プリコーディング行列とチャネル行列から接合された等価チャネル行列である。等価チャネル行列を使用すると,特にTDD動作で受信機での検出処理を簡略化することができる。
(中略)
アンテナ選択やグループ化のようないくつかの他のスキームは,プリコーディングを用いて簡単に実現することができる。例えば,ストリーム数が2であり,アンテナ数が4である場合,そしてプリコーディング行列が例えば式(2)で示される場合,アンテナ選択スキームが用いられる。プリコーディング行列が例えば式(3)で示される場合,アンテナグルーピングスキームが用いられる。
(数式2,3は省略)
このように,CATT [3]によりEUTRAのために提案されたPSRC-SNCのMIMO方式は,ストリーム数が4でありアンテナ数が8である場合,(4)式のようなプリコーディング行列を用いて実現することができる。
(数式4は省略)
ここで,w_(1)及びw_(2)は1つのアンテナグループの各アンテナに対するビームフォーマット重みである。
また,MIMOのための送信電力割り当てスキーム方式もプリコーディングで簡単に実現できる。1つのストリームに関連する重みの大きさは,当該ストリームへの電力配分に影響を与える。 )

(キ)「

」(6ページ22?39行)
([当審仮訳]:
3.6. トピック6:MIMO動作をサポートするのに必要なフィードバック情報
3.6.1. CSI
CSIは,ランク(及び/又はアンテナサブセット)の選択,及び/又はプリコーディング等をサポートするのに必要とされる。プリコーディング及びランクアダプテーションはLTE MIMO電話会議の後,評価のために含まれている。そのため,ランクアダプテーションやプリコーディングのような先進送信適応技術をサポートするために,CSIは,獲得され使用されるべきである。
2種類のCSI獲得方法,すなわち,図1で既に区別されている,FDD動作おけるダウンリンクで獲得してフィードバックする方法,及びTDD動作でチャネルサウンディングによりアップリンクで獲得する方法が考慮されるべきである。ダウンリンク獲得方法は実際のCSIを知るためにダウンリンクで参照信号がプリコーディングされないことを要し,フィードバックスキームを必要とする。これは,アップリンクのフィードバックオーバーヘッドをもたらし,プリコーディング行列の量子化によりプリコーディング性能が減じられる。アップリンク獲得方法は,各送信アンテナに割り当てられた多数の直交参照信号を要し,実際のCSIを知るためにアップリンクでプリコーディングされないことを要し,フィードバックスキームを必要としない。このアップリンク参照信号の要件はTR25.814に含まれており,フィードバックオーバーヘッドをもたらし得る。TDD動作ではプリコーディング行列の量子化は必要とされないので,送信機でフルCSIを使用でき,そのためより高いプリコーディング性能を得ることができる。 )

同じく原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2006/124042号(以下,「周知例3」という。)には,「ON-DEMAND REVERSE-LINK PILOT TRANSMISSION」([当審仮訳]:オンデマンド型のリバースリンクパイロット送信)([当審注]:周知例3についての[当審仮訳]は,周知例3のパテントファミリーである特表2008-546226号公報の記載に基づく。)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ク)「 [0033] Each terminal also transmits a regular pilot on the assigned signaling channel. The regular pilot is a pilot that the terminal is required to transmit. A terminal may transmit the regular pilot and signaling separately (e.g., using TDM, FDM, or CDM) or may embed the pilot within the signaling. For example, a terminal may transmit an N-bit signaling value by (1) identifying a code sequence corresponding to that signaling value from among 2 ^(N) possible code sequences, (2) generating a waveform for that code sequence, and (3) transmitting the waveform. A base station receives the transmitted waveform, determines a hypothesized code sequence that is most likely to have been transmitted based on the received waveform, removes the hypothesized code sequence from the received waveform, and processes the resultant waveform to estimate the RL channel response.
[0034] A base station can obtain an RL channel estimate for a terminal based on the regular pilot sent on the signaling channel assigned to that terminal. The base station may transmit data to the terminal on all or a portion of the segment used by the assigned signaling channel. In this case, the base station can use the RL channel estimate for the assigned signaling channel for FL data transmission to the terminal. The base station may also transmit data to the terminal on one or more segments that are not used by the assigned signaling channel. In this case, the base station can direct the terminal to transmit an on-demand pilot on the segment(s) that will be used by the base station.
(中略)
[0036] FIG. 5 shows an embodiment of wideband on-demand pilot transmission for a channel structure 500. For this embodiment, each terminal transmits a regular pilot along with data on the reverse link when scheduled for RL data transmission and transmits no pilot when not scheduled. Each terminal transmits a wideband on-demand pilot on the reverse link whenever directed by a base station. Multiple terminals may transmit wideband on-demand pilots simultaneously in a time window designated for on-demand pilot transmission. This time window may occur in each TDD frame (as shown in FIG. 5), each scheduling interval, and so on. The wideband on-demand pilots may be generated in various manners. To mitigate pilot-to-pilot interference among multiple terminals, the wideband on-demand pilots transmitted by the terminals may be orthogonalized in the frequency domain or the time domain.
[0037] In an embodiment, a terminal generates a wideband on-demand pilot in the frequency domain using CDM. The terminal covers a pilot symbol for each frequency subband with an orthogonal code assigned to the terminal. This orthogonal code may be a Walsh code, an orthogonal variable spreading factor (OVSF) code, a quasi- orthogonal function (QOF), and so on. Covering is a process whereby a symbol to be transmitted is multiplied by all L chips of an L-chip orthogonal code to generate L covered symbols, which are sent in L symbol periods. For an OFDM-based system, the terminal further processes the covered symbols for all K subbands in each symbol period to generate an OFDM symbol for that symbol period. The terminal transmits the wideband on-demand pilot in an integer multiple of L symbol periods. Each terminal is assigned a different orthogonal code. A base station is able to recover the wideband on- demand pilot from each terminal based on the orthogonal code assigned to that terminal.
[0038] In another embodiment, a terminal generates a wideband on-demand pilot in the time domain using CDM. For this embodiment, the terminal covers a pilot symbol with its assigned L-chip orthogonal code to generate L covered symbols. The terminal then spectrally spreads the L covered symbols across the entire system bandwidth (e.g., all K subbands in an OFDM-based system) with a pseudo-random number (PN) code that is common for all terminals. The terminal transmits the wideband on-demand pilot in an integer multiple of L sample periods. The base station is able to recover the wideband on-demand pilot from each terminal based on the assigned orthogonal code.
[0039] In yet another embodiment, a terminal generates a wideband on-demand pilot in the time domain with a PN code assigned to that terminal. For this embodiment, a terminal spectrally spreads a pilot symbol across the entire system bandwidth with its assigned PN code, which is used for both orthogonalization and spectral spreading. Each terminal is assigned a different PN code, which may be a different time shift of a common PN code. The base station is able to recover the wideband on-demand pilot from each terminal based on the assigned PN code. 」(7ページ3行?8ページ末行)
([当審仮訳]:
[0033] 各端末はまた,指定された信号発信チャネル上で規則的なパイロットを送信する。規則的なパイロットとは,端末が送信する必要があるパイロットである。端末は,(例えばTDM,FDM,CDMを使用して)規則的なパイロットの送信と信号発信を別々に行うか,あるいは信号発信にパイロットを組み込むことができる。例えば,端末はNビットの信号発信値を次のとおり送信できる。即ち,(1)2^(N)個の可能な符号シーケンスから,この信号発信値に関連した符号シーケンスを識別し,(2)この符号シーケンスに波形を生成し,(3)この波形を送信する。基地局は,この送信された波形を受信し,受信した波形に基づいて送信されたと最も思われると仮説された符号シーケンスを決定し,受信した波形からこの仮説された符号シーケンスを除去し,除去後の波形を処理してRLチャネル反応を推定する。
[0034] 基地局は,この端末に指定された信号発信チャネル上で送られた規則的なパイロットに基づいて端末にRLチャネル推定を取得できる。この基地局は,指定された信号発信チャネルが使用するセグメントの全てまたは1部分上においてデータを端末へ送信することができる。この場合,基地局は,FLデータを端末に送信するように指定された信号発信チャネルに,RLチャネル推定を使用することができる。基地局はまた,データを,指定された信号発信チャネルによって使用されない1つ以上のセグメント上で端末へ送信することができる。この場合,基地局は,これが使用するセグメント(1つ以上)上でオンデマンド型パイロットを送信するように端末に命令することが可能である。
(中略)
[0036] 図5は,チャネル構造500のための広帯域オンデマンド型のパイロット送信の実施形態を示す。この実施形態の場合,各端末は,RLデータ送信にスケジューリングされた時間にリバースリンク上で規則的なパイロットとともにデータを送信し,また,スケジューリングされていない時間にはパイロットを送信しない。各端末は,リバースリンク上で,基地局が命令した任意の時間に広帯域オンデマンド型のパイロットを送信する。オンデマンド型パイロット送信に設計された1つの時間ウィンドウにおいて同時に複数の端末が広帯域オンデマンド型パイロットを送信することができる。この場合には,ウィンドウは(図5に示すように)各TDDフレーム内,各スケジューリング間隔内などにおいて発生する。広帯域オンデマンド型のパイロットは,様々な方法で生成されてもよい。複数の端末間でパイロット対パイロットの干渉を緩和するために,端末によって送信された広帯域オンデマンド型のパイロットを周波数域または時間域内で直交化させることができる。
[0037] 或る実施形態では,端末が,CDMを使用して,周波数域内に広帯域オンデマンド型パイロットを生成する。この端末は,この端末に指定された直交符号と共に,各周波数サブバンドのパイロットシンボルを被覆する。この直交符号はウォルシュ符号,直交可変拡散係数(OVSF)符号,準直交関数(QOF)などであってもよい。被覆とは,送信されるシンボルにLチップ直交符号のL個全てのチップを掛けて,L個の被覆されたシンボルを生成する処理である。被覆されたシンボルはL個のシンボル期間中に送られる。OFDMベースのシステムでは,端末はさらに,各シンボル期間中に,この被覆されたシンボルをK個全てのサブバンドについて処理することで,このシンボル期間のOFDMシンボルを生成する。端末は,L個のシンボル期間の倍数である整数にて広帯域オンデマンド型パイロットを送信する。各端末には異なる直交符合が指定される。基地局は,指定された直交符号に基づいて,広帯域オンデマンド型パイロットを各端末から復元することができる。
[0038] 別の実施形態では,端末は,CDMを使用して,時間ドメイン内で広帯域オンデマンド型パイロットを生成する。この実施形態の場合,端末が,これに指定されたL個のチップ直交符号によりパイロットシンボルを被覆させることで,L個の被覆されたシンボルを生成する。次に,端末が,全ての端末に共通する擬似ランダム数(PN)符号によって,L個の被覆されたシンボルをシステム帯域幅全体(例えば,OFDMベースシステムにおけるK個全てのサブバンド)に亘ってスペクトル拡散させる。端末は,広帯域オンデマンド型パイロットを,L個のサンプル期間の倍数でえある整数にて送信する。基地局は,指定された直交符号に基づいて,各端末から広帯域オンデマンドパイロットを復元することができる。
[0039] さらに別の実施形態では,端末は,この端末にPN符合が指定された状態で,時間域において広帯域オンデマンド型パイロットを生成する。この実施形態の場合,端末は,直交化とスペクトル拡散の両方に使用される指定されたPN符号と共に,システム帯域幅全体にかけてパイロットシンボルをスペクトル拡散させる。各端末は異なるPN符号に指定され,このPN符号は通常のPN符号と異なる時間移動である。基地局は,指定されたPN符号に基づいて,各端末から広帯域オンデマンド型パイロットを復元することができる。 )

e 上記(ウ),(カ)?(ク)の記載によれば,「アップリンク・サウンディングに用いる参照信号を区別するために,ウォルシュ符号等の直交符号でカバーしたりPN符号でスペクトル拡散したりすることにより直交化すること。」は周知であると認められる(以下,「周知事項1」という。)。

f 上記(オ)の「MU-MIMOである場合に,UE受信機は,どのストリームがそれに属するのかを知る必要がある。このストリーム割当情報又は参照信号割当情報は,ダウンリンク制御信号を介して,対応するUEに転送される。」,上記(キ)の「アップリンク獲得方法は,各送信アンテナに割り当てられた多数の直交参照信号を要し,」,上記(ク)の[0037]の「この端末に指定された直交符号」,「各端末には異なる直交符合が指定される。」及び[0039]の「各端末は異なるPN符号に指定され,」との記載によれば,「コード領域で直交であるサウンディング波形を生成するための参照符号を基地局からUEに割当てること。」は普通に行われていることである(以下,「周知事項2」という。)。

g 上記(エ)?(キ)の記載によれば,「アップリンク・サウンディングを用いて送信機でCSIを得て,プリコーディング行列を計算し,MU-MIMOのためのプリコーディングを行うこと。」は周知であると認められる(以下,「周知事項3」という。)。


ウ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,
(ア)本願明細書の【0016】の記載によれば,補正後の発明の「ノード」はユーザ端末を含むから,引用発明の「複数のUE」は補正後の発明の「複数のノード」に含まれる。
また,引用発明の「空間チャネル」はMIMO通信においてプリコーディングにより形成されるチャネルであるところ,本願明細書の【0005】,【0040】の記載によれば,補正後の発明の「空間ストリーム」はMIMO技術のプレコーディングマトリックスにより規定されるチャネルといえるから,引用発明の「空間チャネル」は補正後の発明の「空間ストリーム」に相当する。
さらに,「処理を行うための手段」,「送受信手段」を,それぞれ「処理システム」,「トランシーバ」と称することは任意である。
したがって,両者は,「複数のノードと通信する装置において,処理システムと,空間ストリーム上で前記ノードに対してデータを送信するように構成されているトランシーバとを具備」する点で差異は無い。

(イ)本願明細書の【0023】の記載によれば,補正後の発明の「トレーニング信号」は「サウンディング信号」とも呼ばれ,同【0036】の記載によれば,アクセスポイントSTA-A 302aから応答局STA-B 302bからSTA-X 302xのそれぞれに対して要求し,当該応答局から当該アクセスポイントに送信されるものであるから,アップリンクのものである。
また,本願明細書の【0036】の記載によれば,補正後の発明の「一意的なトレーニング信号を使用するための情報を,前記ノードに対して提供することによって,前記ノードからのトレーニング信号を要求し,」の「・・・提供することによって・・・要求し」は,単にトレーニング信号の要求(トレーニング要求(TRQ)メッセージ350)に「一意的なトレーニング信号を使用するための情報」が含まれていることを包含していることは明らかである。
そして,同【0038】,【0039】の記載によれば,「一意的なトレーニング信号を使用するための情報」には,「応答局STA-B 302bからSTA-X 302xのそれぞれからの受信されたトレーニング信号が区別されることができるように」するための情報である,スクランブルに用いる「一意的な受信局識別子」やそれぞれの応答局に対して割り当てられる「一意的なウォルシュカバーコード」が含まれることは明らかである。ここで,補正後の発明の「拡散コード」は直交コードである「ウォルシュカバーコード」を含むところ,直交コードでカバーされているトレーニング信号は,コード領域で直交化されていることは明らかである。
一方,引用発明の「アップリンク・サウンディングに係るサウンディング波形」は,アップリンクの「サウンディング信号」といえ,コード領域で直交化されているものである。
また,補正後の発明の「一意的なトレーニング信号を使用するための情報」と,引用発明の「アップリンク・サウンディングのための情報」とは,「アップリンク・サウンディングのための情報」である点で共通している。
したがって,両者は,下記の相違点1は別として,「前記処理システムは」,「アップリンク・サウンディングのための情報を,前記ノードに対して提供することによって,前記ノードからのトレーニング信号を要求し,前記要求に応答したノードからの,コード領域で直交化されているトレーニング信号を受信」する点で共通している。

(ウ)補正後の発明の「前記トレーニング信号から,前記ノードのそれぞれに対する,チャネル状態情報を計算し,前記計算されたチャネル状態情報を結合して,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算するように構成されており」と,引用発明の「前記要求に応答したUEからの,コード領域で直交化されているサウンディング波形を受信し,前記サウンディング波形に基づいて送信重みを計算し,TDDにおけるダウンリンクのプリコーディング重みを決定するように構成されており」とは,下記の相違点2は別として,「前記トレーニング信号から,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算するように構成されている」点で共通している。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「複数のノードと通信する装置において,
処理システムと,
空間ストリーム上で前記ノードに対してデータを送信するように構成されているトランシーバとを具備し,
前記処理システムは,
アップリンク・サウンディングのための情報を,前記ノードに対して提供することによって,前記ノードからのトレーニング信号を要求し,
前記要求に応答したノードからの,コード領域で直交化されているトレーニング信号を受信し,
前記トレーニング信号から,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算するように構成されている,装置。」

(相違点1)
一致点の「アップリンク・サウンディングのための情報」に関し,補正後の発明は「一意的なトレーニング信号を使用するための情報」であり,当該情報は「前記トレーニング信号のための拡散コードまたはスクランブリングコードを指定する情報を含む」ものであるのに対し,引用発明は,当該情報は,一意的なトレーニング信号を使用するための情報であるのか否か明らかでなく,アップリンク上でどこでどのようにサウンドするかを指示するものである点。
これに伴い,要求に応答したノードから受信する,一致点の「コード領域で直交化されているトレーニング信号」に関し,補正後の発明は「拡散コードまたはスクランブリングコードでカバーされているトレーニング信号」であるのに対し,引用発明は「コード領域で直交化されているサウンディング波形」である点。

(相違点2)
一致点の「前記トレーニング信号から,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算する」に関し,補正後の発明は「前記トレーニング信号から,前記ノードのそれぞれに対する,チャネル状態情報を計算し,前記計算されたチャネル状態情報を結合して,空間ストリームを規定するプレコーディング行列を計算する」ものであるのに対し,引用発明は当該処理が明らかにされていない点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例には「1つの端末の異なる送信アンテナのための又は多数のUEからのサウンディング波形は,次の2つの方法のいずれかで,直交化することができる。」と記載されている(上記イ[引用発明](イ)参照。)から,1つの端末の異なる送信アンテナからのサウンディング波形又は多数のUEからのサウンディング波形は一意的に区別可能であると解される。
そして,引用例の「ノードBはUEにアップリンク上でどこでどのようにサウンドするかを指示する(すなわち,既知のパイロットシーケンスを送信する)。」との記載(上記イ[引用発明](ア)参照。)の記載によれば,「アップリンク・サウンディングのための情報」として「既知のパイロットシーケンス」を送信することが示唆されているところ,周知事項1のとおり「アップリンク・サウンディングに用いる参照信号を区別するために,ウォルシュ符号等の直交符号でカバーしたりPN符号でスペクトル拡散したりすることにより直交化すること。」及び周知事項2のとおり「コード領域で直交であるサウンディング波形を生成するための参照符号を基地局からUEに割当てること」は周知であることに鑑みれば,「アップリンク・サウンディングのための情報」として,「前記トレーニング信号のための拡散コードまたはスクランブリングコードを指定する情報を含む」「一意的なトレーニング信号を使用するための情報」を採用すること(すなわち,相違点1。)は,当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
周知事項3のとおり「アップリンク・サウンディングを用いて送信機でCSIを得て,プリコーディング行列を計算し,MU-MIMOのためのプリコーディングを行うこと。」は周知である。そして,例えば周知例2(上記イ[周知事項](カ)の(4)式参照。)からも明らかであるように,MU-MIMOの場合,送信機の複数の送信アンテナ群が複数のUEに対応するところ,プリコーディング行列は当該複数のUEに対する全ての送信アンテナについて処理を行うのであるから,各UEのそれぞれに対するチャネル状態情報を計算し,前記計算されたチャネル状態情報を結合して,MU-MIMOの空間チャネルを規定するプレコーディング行列を計算することは当然のことにすぎない。したがって,相違点2には実質的な相違はない,あるいは容易になし得ることに過ぎない。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び周知事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり,補正後の発明は,引用発明及び周知事項に基づいて当業
者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


なお,請求人は平成26年10月28日付け上申書で補正案を提示し,「トレーニング信号からのノードの各々に関するチャネル状態情報(CSI)行列を計算すること,プリコーディングマトリックスの少なくとも1つが,複数のチャネル状態情報行列を使用して計算される」ことはいずれの引用文献にも開示されていない旨主張している。しかし,請求人が引用文献4と称する周知例2の(1)式によれば(4)式(上記イ[周知事項](カ)の(1)式,(4)式参照。)のプリコーディング行列は,対角に配置される各(w_(1),w_(2))のグループが結合されたものであるところ,各(w_(1),w_(2))のグループはMU-MIMOにおける各UEに対するチャネル状態情報行列から計算された重みと解するのが自然であるから,上記主張は採用できない。


3 結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年6月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本

願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 引用発明及び周知事項
引用発明及び周知事項は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明及び周知事項」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び周知事項に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-17 
結審通知日 2015-08-18 
審決日 2015-09-07 
出願番号 特願2011-510522(P2011-510522)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04J)
P 1 8・ 121- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡 裕之  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山本 章裕
菅原 道晴
発明の名称 空間分割多元接続(SDMA)ベースのワイヤレス通信システム中で、空間的チャネルを決定するための方法と装置  
代理人 野河 信久  
代理人 井上 正  
代理人 佐藤 立志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 砂川 克  
代理人 井関 守三  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  

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