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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1310430
審判番号 不服2014-14540  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-25 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2010-536045「ラテックス塗料用の殺生物剤、グラインドおよび分散相を含有するラテックス塗料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月11日国際公開、WO2009/073309、平成23年 2月24日国内公表、特表2011-505459〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成20年11月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、平成19年11月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年11月8日に手続補正書が提出され、平成25年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年6月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月17日付けで拒絶査定され、これに対し、平成26年7月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、前置審査に付されたが同年10月10日付けで審査官により前置報告書が作成されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明は、平成26年7月25日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
塗料組成物の製造方法であって:
グラインド相を、グラインド相成分及び水不溶性殺生物剤を一緒に混合することによって調製し、該グラインド相成分は1種以上の顔料を含み、該混合は高剪断インペラで一定撹拌により行うこと;並びに
該グラインド相を1種以上のラテックスレジン及び他のレットダウン成分と混合すること;
を含み、
該水不溶性殺生物剤が、少なくとも50質量%の殺生物剤を含む高固形分物質である、方法。」

第3 原査定の理由の概要

原査定の理由は、平成25年2月27日付けの拒絶理由通知書に記載された理由であって、その拒絶の理由の一つは、概略、以下のものである。

<理由>

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物:特開2003-12426号公報
(原査定における引用文献F。以下、「引用刊行物」という。)

第4 引用刊行物の記載事項

原査定において引用された上記引用刊行物には、以下の事項が記載されている。

1a 「【請求項1】 四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を含有することを特徴とする、抗菌防かび防藻組成物。」

1b 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌防かび防藻組成物および塗料組成物、詳しくは、抗菌性、防かび性および/または防藻性を発現する抗菌防かび防藻組成物、および、その抗菌防かび防藻組成物を含有する塗料組成物に関する。」

1c 「【0041】四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を生成するには、四価金属のリン酸塩と二価金属イオンとの共存下に、二価金属の水酸化物を生成させればよい。例えば、(i)四価金属イオンおよび二価金属イオンが共存する水溶液中で四価金属のリン酸塩を生成し、次いで、二価金属の水酸化物を生成してもよく、また、(ii)二価金属イオンを含有しない水溶液中で予め四価金属のリン酸塩を生成した後、二価金属イオンを含む水溶液を加え、二価金属の水酸化物を生成させてもよい。
・・・(中略)・・・
【0056】そして、このようにして得られる本発明の組成物は、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を含有する組成物として得ることができる。本発明の組成物は、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現するとともに、無機化合物から構成されるので、現在使用されている有機化合物の有効成分に比べて、毒性が低く、また、耐熱性が高く、水による溶脱も少ない。そのため、本発明の抗菌防かび防藻組成物は、抗菌剤、防かび剤および/または防藻剤として、各種の産業製品に適用することができ、とりわけ、塗料に適用した場合には、その塗料によって形成される塗膜を、有害微生物から過酷な環境下においても長期にわたって有効に保護することができる。」

1d 「【0063】また、着色顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、酸化クロム、黄鉛、酸化亜鉛などの無機顔料、ハンザイエロー、レーキレッド、フタロシアニンブルー、シンカシャレッドなどの有機顔料が用いられる。この着色顔料は、特に配合しなくてもよいが、配合する場合には、着色顔料の塗料組成物中の配合割合は、0.01?50重量%、好ましくは、1?30重量%である。」

1e 「【0069】そして、本発明の塗料組成物は、その形態は特に限定されず、有機溶媒系の塗料組成物としても、また、水系の塗料組成物としても用いることができる。有機溶媒系の塗料組成物として用いる場合には、抗菌防かび防藻組成物を含む各成分を、適宜の割合において、有機溶媒に分散することによって調製すればよく、また、水系の塗料組成物として用いる場合には、抗菌防かび防藻組成物を含む各成分を、適宜の割合において、水に懸濁または乳化により分散させることによって調製すればよい。これらのうち、本発明の塗料組成物は、水系の塗料組成物として調製することが好ましい。
【0070】本発明の塗料組成物を、水系の塗料組成物、例えば、エマルション塗料として調製するには、例えば、体質顔料、着色顔料および抗菌防かび防藻組成物を含むミルベースを調製した後、このミルベースに、レットダウンとしての各成分を順次配合する。ミルベースの調製は、例えば、体質顔料、着色顔料および抗菌防かび防藻組成物を水に配合して、必要により、スルファミン酸または/およびその塩、凍結防止剤(エチレングリコールなど)、分散剤、湿潤剤、消泡剤などの公知の添加剤を添加した後、混合撹拌する。
【0071】そして、このようにして調製されたミルベースに、レットダウンとしての、エマルション樹脂や、必要により、界面活性剤、造膜助剤(高沸点溶剤など)、消泡剤、pH調整剤、増粘剤などの公知の添加剤を添加した後、撹拌混合すればよい。なお、本発明の塗料組成物を、このようなエマルション塗料として調製する場合には、VOCの低減化を図るべく、凍結防止剤(エチレングリコールなど)および造膜助剤(高沸点溶剤など)を用いない処方によって調製することが好ましい。
【0072】そして、本発明の塗料組成物は、抗菌防かび防藻組成物が配合されているので、本発明の塗料組成物により形成された塗膜は、高温高湿環境下においても、長期にわたり、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現する。
【0073】そのため、本発明の塗料組成物を、例えば、屋内の浴室や屋外の外壁などを塗装するための塗料として用いれば、環境、あるいは、湿気や雨水によっても溶脱することなく、長期にわたり、抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を維持することができる。なお、本発明の塗料組成物を、台所に適用すれば、優れた抗菌効果を発現させて、台所の良好な衛生環境を確保することができ、また、上記したように、浴室に適用すれば、優れた防かび効果を発現させて、浴室の良好な衛生環境を確保することができる。さらに、本発明の塗料組成物は、人体に対する安全性が高く、より一層、環境にやさしい塗料として用いることができる。」

1f 「【0076】実施例1(組成物(Zn(II)-Ti(IV))の調製)
硫酸チタン溶液(約30g重量%濃度、和光純薬製試薬)43.7gを水25.8gに添加した。この水溶液は、0.055モルのTi(IV)イオンを含んでいた。この水溶液に室温下、撹拌しながら15重量%のリン酸水溶液約53.6gを滴下したところ、白色沈殿物が生成した。白色沈殿物が生成した混合液をそのまま2時間撹拌した。
【0077】白色沈殿物を含む混合液に硫酸亜鉛の結晶(ZnSO_(4)・7H_(2)O,和光純薬製試薬特級)6.75gを添加して溶解した。この混合液は、0.023モルのZn(II)イオンを含んでいた。得られた混合液に、15%水酸化ナトリウム溶液をpHが7.0となるまで滴下した。なお、水酸化ナトリウムの滴下に際し、pHが低下した場合には、さらに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約7.0に保持した。pHの低下が認められなくなるまで撹拌を続けると、Zn(II)-Ti(IV)を含む白色沈殿物が生成した。
【0078】生成した白色沈殿物を吸引濾別し、温脱イオン水で十分洗浄した後、40℃で乾燥し、乾燥物を乳鉢で120μm以下に粉砕することにより、白色粉末の抗菌防かび防藻組成物(Zn(II)-Ti(IV))を得た。
【0079】実施例2(組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))の調製)
実施例1で得られた抗菌防かび防藻組成物(Zn(II)-Ti(IV))70重量部に対して酸化チタン粉末(石原産業(株)製,MC-90)30重量部を混合し、得られた混合物をジェットミル粉砕機に供給し、粉砕することによりさらに微粉末とし、抗菌防かび防藻組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))を得た。なお、得られた抗菌防かび防藻組成物の微粉末の平均粒径は5μmであった。
【0080】実施例3(組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))の調製)
硫酸チタン溶液(約30重量%濃度、和光純薬製試薬)43.7重量部を水25.8重量部に添加した。この水溶液は、0.055モルのTi(IV)イオンを含んでいた。この水溶液に室温下、撹拌しながら15重量%のリン酸水溶液53.6重量部を滴下したところ、白色沈殿物が生成した。白色沈殿物が生成した混合液をそのまま2時間撹拌した。
【0081】白色沈殿物を含む混合液に硫酸亜鉛の結晶(ZnSO_(4)・7H_(2)O,和光純薬製試薬特級)6.75重量部を添加して溶解した。この混合液は、0.023モルのZn(II)イオンを含んでいた。
【0082】得られた混合液に、15%水酸化ナトリウム溶液をpHが7.0となるまで滴下した。なお、水酸化ナトリウムの滴下に際し、pHが低下した場合には、さらに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約7.0に保持した。pHの低下が認められなくなるまで撹拌を続けると、Zn(II)-Ti(IV)を含む白色沈殿物が生成した。
【0083】生成した白色沈殿物を吸引濾別し、温脱イオン水で十分洗浄した後、40℃で乾燥し、乾燥物を乳鉢で120μm以下に粉砕することにより、Zn(II)-Ti(IV)を含む白色粉末を得た。
【0084】得られた白色粉末70重量部に酸化チタン(MC-90、石原産業(株)製)30重量部を混合し、混合物をジェットミル粉砕機にかけて、Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2)を含む平均粒子径5μmの微粉末を得た。
【0085】100重量部の50重量%スルファミン酸アンモニウム水溶液に、50重量部の前記微粉末を撹拌しながら徐々に加え、室温でさらに10分間撹拌した。室温で30分間静置後、濾過および水洗を2回行ない、濾過残渣を120℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した。室温まで放冷後、乳鉢で粉砕して、抗菌防かび防藻組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))を得た。
【0086】実施例4?7および比較例1(塗料組成物の調製)
表1に示す割合(重量%)において、まず、チタン白、体質顔料および抗菌防かび防藻組成物(実施例4:実施例1の組成物(Zn(II)-Ti(IV))、実施例5:実施例2の組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))、実施例6:実施例3の組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))、実施例7:実施例2の組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))、比較例1:添加なし)を水に加え、さらに、エチレングリコール、分散剤、湿潤剤、消泡剤、50重量%スルファミン酸アンモニウム水溶液(実施例7のみ)を添加した後、撹拌混合することにより、ミルベースを調製した。次いで、これに、レットダウンとして、エマルション樹脂、界面活性剤、造膜助剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、水、pH調整剤(実施例4?実施例7のみ)を順次添加した後、撹拌混合することにより、実施例4?7および比較例1の塗料組成物を得た。なお、各成分の詳細を以下に示す。
【0087】(ミルベース)
チタン白:ルチル型酸化チタン(商品名:TITANIX JR-900、テイカ(株)社製)
体質顔料:炭酸カルシウム(商品名:ホワイトンSB、白石カルシウム(株)社製)
分散剤:ポリカルボン酸ナトリウム塩(商品名:オロタン850、ローム・アンド・ハース社製)
湿潤剤:アルキルエーテルサルフェート(商品名:トライトンCF-10、ユニオン・カーバイド社製)
消泡剤:鉱物油とポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤の混合物(商品名:ノプコ8043-L、サンノプコ(株)社製)
(レットダウン)
エマルション樹脂:アクリル・スチレン系エマルション(商品名:ウルトラゾールC-62、ガンツ化成(株)社製)
界面活性剤:ポリオキシエチレン誘導体(商品名:エマルゲンA-500、花王(株)社製)の50重量%溶液造膜助剤:2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS-12、チッソ(株)社製)
消泡剤:鉱物油とポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤の混合物(商品面:ノプコ8034-L、サンノプコ社製)
防腐剤:ハロゲン化窒素硫黄化合物(商品名:スラオフCA、武田薬品工業(株)社製)
増粘剤:ヒドキエチルセルロース(商品名:SP-600、ダイセル(株)社製)の2重量%水溶液pH調整剤:アンモニア水(28%)
【0088】
【表1】





第5 当審の判断

1 引用発明

引用刊行物には、摘記事項1d、1e、摘記事項1fの実施例4?6のとおり、「塗料組成物の調製」については、「チタン白(着色顔料)、体質顔料および抗菌防かび防藻組成物」「を水に加え、さらに、エチレングリコール、分散剤、湿潤剤、消泡剤」「を添加した後、撹拌混合することにより、ミルベースを調製し、これに、レットダウンとして、エマルション樹脂、界面活性剤、造膜助剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、水、pH調整剤」「を順次添加した後、撹拌混合すること」が記載されている。
摘記事項1fには、さらに、「抗菌防かび防藻組成物」が「実施例4:実施例1の組成物(Zn(II)-Ti(IV))、実施例5:実施例2の組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))、実施例6:実施例3の組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))」であること、「エマルション樹脂」が「アクリル・スチレン系エマルション(商品名:ウルトラゾールC-62、ガンツ化成(株)社製)」であることも記載されている。

そうすると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

『塗料組成物の調製方法であって、
ミルベースを、チタン白(着色顔料)、体質顔料、水、エチレングリコール、分散剤、湿潤剤、消泡剤および「抗菌防かび防藻組成物〔実施例1の組成物(Zn(II)-Ti(IV))、実施例2の組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))、実施例3の組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))〕」を、撹拌混合することにより調製し、
該ミルベースを、「エマルション樹脂:アクリル・スチレン系エマルション(商品名:ウルトラゾールC-62、ガンツ化成(株)社製)」、界面活性剤、造膜助剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、水、pH調整剤と撹拌混合する方法。』

2 本願発明と引用発明との対比

ここで、本願発明と引用発明を対比する。

(1) 引用発明の「調整方法」は本願発明の「製造方法」に、以下同様に、「ミルベース」は「グラインド相」に、「チタン白(着色顔料)、体質顔料、水、エチレングリコール、分散剤、湿潤剤、消泡剤」は「グラインド相成分」に、「チタン白(着色顔料)、体質顔料」は「1種以上の顔料」に、それぞれ相当する。

(2) 引用発明の「抗菌防かび防藻組成物〔実施例1の組成物(Zn(II)-Ti(IV))、実施例2の組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))、実施例3の組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))〕」は、摘記事項1cの【0041】及び摘記事項1fの【0076】?【0083】の調整法によれば、「四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を含有する組成物」といえ、また、摘記事項1cの【0056】によれば、「優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現するとともに」、「水による溶脱も少ない」ことから、本願発明の「水不溶性殺生物剤」に相当するといえる。

(3) 本願明細書の発明の詳細な説明における【0032】に、「ラテックスレジンは、有機ポリマー粒子の水性分散体である。一般的な種類のポリマーとしては、アクリル、ビニルアクリル、スチレン化アクリル、およびバーサチック酸(versatic acid)のポリビニルエステルが挙げられる。」と記載されていることもあり、引用発明の「エマルション樹脂:アクリル・スチレン系エマルション(商品名:ウルトラゾールC-62、ガンツ化成(株)社製)」が本願発明の「1種以上のラテックスレジン」に相当する。
さらに、引用発明の「界面活性剤、造膜助剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、水、pH調整剤」は本願発明の「他のレットダウン成分」に相当するといえる。

(4) 引用発明の「撹拌混合する」は、本願発明の「一緒に混合する」または「混合する」に相当する。

(5) 上記(1)?(4)から、本願発明は、引用発明と、以下の点で一致している。

「塗料組成物の製造方法であって:
グラインド相を、グラインド相成分及び水不溶性殺生物剤を一緒に混合することによって調製し、該グラインド相成分は1種以上の顔料を含み、
該グラインド相を1種以上のラテックスレジン及び他のレットダウン成分と混合すること;
を含む方法。」

そして、以下の点で相違している。


[相違点1]

グラインド相成分及び水不溶性殺生物剤を一緒に混合する際、本願発明が「高剪断インペラで一定撹拌により行うこと」であるのに対し、引用発明の混合は、その点の明示がない点。

[相違点2]

本願発明の「水不溶性殺生物剤」が、「少なくとも50質量%の殺生物剤を含む高固形分物質」であるのに対し、引用発明の「水不溶性殺生物剤」は、その点の明示がない点。

3 相違点の検討

以下、上記[相違点1]、[相違点2]について順に検討する。

(1) [相違点1]について

引用発明の技術分野において、塗料の構成成分を混合する際に、高剪断インペラで一定撹拌により行うことは、本願出願前より周知の技術事項(以下、「周知の技術事項1」という。)に過ぎない(例えば、特表2000-500515号公報の第11頁第4行?第12頁第10行、及び、編者 社団法人 色材協会、塗料用語辞典、日本、1993.01.20発行、1版1刷、139-140頁「高速かく拌機」の欄参照。)。

以上のとおり、引用発明におけるグラインド相成分及び水不溶性殺生物剤を一緒に混合する際、本願の出願時点で周知の技術事項である高剪断インペラを採用し、一定撹拌により行うことは、当業者が容易になしえることと認められる。

(2) [相違点2]について

引用発明の「抗菌防かび防藻組成物〔実施例1の組成物(Zn(II)-Ti(IV))、実施例2の組成物(Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))、実施例3の組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)-Ti(IV)-TiO_(2))〕」(水不溶性殺生物剤)は、摘記事項1fによれば、「白色粉末」、つまり「粉末」であることから固形分は、概ね100質量%に近い状態であるといえ、その点で本願発明の「少なくとも50質量%」と重複するものである。

また、殺生物剤について、少なくとも50質量%の殺生物剤を含む高固形分物質とすることは、本願の出願時点で周知の技術事項(以下、「周知の技術事項2」という。)に過ぎない(例えば、特開平8-268810号公報の【請求項1】、【0002】、【0027】、特表2004-509943号公報の【請求項1】、【請求項3】、【0002】、【0019】参照。)。

そして、本願明細書を仔細にみても、当該水不溶性殺生物剤に関し、

「【0022】
殺生物剤を高固形分配合物として送達する場合、配合物は、好ましくは、少なくとも約50質量%、より好ましくは少なくとも約60質量%、さらにより好ましくは少なくとも約70質量%、およびさらに好ましくは少なくとも約80質量%の殺生物剤を含有する。特に好ましくはBIT(約70?85%活性ペーストとして)である。十分な殺生物剤を添加して、最終塗料製品における濃度約0.005質量%?2質量%、好ましくは約0.01質量%?0.2質量%の殺生物剤(配合物の総質量基準)を与える。」との記載、また、実施例に関する【表1】(表1A)の「殺生物剤」として、「BIT(1,2-ベンズイソチアゾール-3(H)-オン)固体粉末(85%活性)」との記載が認められるにとどまり、発明特定事項の「少なくとも50質量%」における「50質量%」に臨界的意義を認めるに足りる記載(実施例等)は何ら開示されていないから、本願発明が規定する上記「少なくとも50質量%」という数値範囲を選択することに格別の技術的意義を見い出すことはできない。

以上検討のとおり、引用発明における水不溶性殺生物剤について、本願発明に規定する数値範囲に規定することは、当業者にとって容易なことと認められる。

4 小括

上記3のとおり、本願発明は、引用発明、周知の技術事項1及び周知の技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、周知の技術事項1及び周知の技術事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-21 
結審通知日 2015-08-25 
審決日 2015-09-07 
出願番号 特願2010-536045(P2010-536045)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 國島 明弘
日比野 隆治
発明の名称 ラテックス塗料用の殺生物剤、グラインドおよび分散相を含有するラテックス塗料の製造方法  
代理人 古賀 哲次  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 齋藤 都子  
代理人 石田 敬  
代理人 胡田 尚則  
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