• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02C
管理番号 1310458
審判番号 不服2014-25337  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-11 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2009-252546「燃焼器缶とタービン高温ガス流路を通る冷却空気の流れとに対するタービン翼形部の円周方向クロッキングに関する方法、装置、及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月 3日出願公開、特開2010-121618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年11月4日(パリ条約による優先権主張 2008年11月20日 アメリカ合衆国)の出願であって、平成24年11月2日に手続補正書が提出され、平成25年9月26日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成26年4月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年8月1日付けで拒絶査定がされ、平成26年12月11日に拒絶査定不服審判が請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年1月23日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2.平成26年12月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年12月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成26年12月11日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項6に関しては、本件補正前の(すなわち、平成24年11月2日提出の手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の請求項7の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項6の下記(イ)の記載へと補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項7
「 【請求項7】
タービンエンジン(100)におけるアセンブリであって、
前記タービンエンジン(100)が、圧縮機(106)と、燃焼器(112)と、タービン(110)と、円周方向に間隔を置いて配置されたステータブレード(128)の列及び円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレード(126)とを含む複数の連続する軸方向スタック段とを含んでおり、前記アセンブリが、
前記タービン(110)においてステータブレード(128)の第1の列の上流側に配置された複数の円周方向に間隔を置いて配置され、冷却空気を前記タービン(110)の高温ガス経路内に注入するポートを有する注入ポート(156)
を含んでおり、
前記ステータブレード(128)の1つの前縁(222)の円周方向位置が、前記注入ポート(156)の各々の注入ポート中間点(224)の円周方向位置の前記ステータブレード(128)の第1の列の±15%ピッチ内に配置されるように、前記ステータブレード(128)の第1の列における前記ステータブレード(128)が構成されており、
前記燃焼器(112)が缶型燃焼器(130)を備えており、前記注入ポート(156)が、作動中に缶型燃焼器(130)からタービン(110)へと燃焼生成物を導く隣接トランジションピース後方フレーム(152)間に配置されている、アセンブリ。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項6
「 【請求項6】
タービンエンジン(100)におけるアセンブリであって、
前記タービンエンジン(100)が、圧縮機(106)と、燃焼器(112)と、タービン(110)と、円周方向に間隔を置いて配置されたステータブレード(128)の列及び円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレード(126)とを含む複数の連続する軸方向スタック段とを含んでおり、前記アセンブリが、
前記タービン(110)においてステータブレード(128)の第1の列の上流側に配置された複数の円周方向に間隔を置いて配置され、冷却空気を前記タービン(110)の高温ガス経路内に注入するポートを有する注入ポート(156)
を含んでおり、
前記ステータブレード(128)の1つの前縁(222)の円周方向位置が、前記注入ポート(156)の各々の注入ポート中間点(224)の円周方向位置の前記ステータブレード(128)の第1の列の±15%ピッチ内に配置されるように、前記ステータブレード(128)の第1の列における前記ステータブレード(128)が構成されていて、
前記アセンブリが、前記ステータブレード(128)の第1の列のステータブレード(128)の少なくとも90%及び前記ステータブレード(128)の第2の列のステータブレード(128)の少なくとも90%が-15%ピッチと15%ピッチの間のクロッキング関係をなすように構成された前記ステータブレード(128)の第2の列のステータブレード(128)を更に含んでおり、、
前記燃焼器(112)が缶型燃焼器(130)を備えており、前記注入ポート(156)が、作動中に缶型燃焼器(130)からタービン(110)へと燃焼生成物を導く隣接トランジションピース後方フレーム(152)間に配置されている、アセンブリ。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項7における発明特定事項である「ステータブレード(128)」について、「前記ステータブレード(128)の第1の列のステータブレード(128)の少なくとも90%及び前記ステータブレード(128)の第2の列のステータブレード(128)の少なくとも90%が-15%ピッチと15%ピッチの間のクロッキング関係をなすように構成された前記ステータブレード(128)の第2の列のステータブレード(128)を更に含んで」いる旨を限定することを含むものであって、本件補正前の請求項7に記載された発明と本件補正後の請求項6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項6に関しては、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件についての判断
本件補正における特許請求の範囲の請求項6に関する補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-289003号公報(以下、「引用文献」という。)には、「ガスタービンの冷却構造」に関し、図面とともに、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガスタービンの冷却構造に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、ガスタービンの圧縮機から送りだされた空気の内、燃焼用ではなく各部の冷却のために使用している空気量を減らして燃焼用空気の量を大きくすることが必要である。しかし、冷却に使用する空気の量を減らしただけでは、冷却不足が発生し、耐久性が低下してしまう。本発明は上記に鑑み、冷却用に取り入れた空気の利用を改善して、冷却不足の発生を防ぎながら燃焼用空気の量を増大し、それにより燃焼ガスの温度を低下させてNOxを低減せしめるガスタービンの冷却構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、圧縮機から供給された圧縮空気と燃料ノズルから噴射された燃料を燃焼筒内で燃焼し、その燃焼ガスを燃焼筒に連結された静翼を介して動翼に導き動力を得るガスタービンの冷却構造であって、圧縮空気の一部を冷却空気として静翼シールを含む静翼領域の冷却におこなうようにされていて、静翼シールを含む静翼領域に、要求冷却量の低減または冷却空気の吹き出し部位の低減により、当該領域へ供給する冷却空気の量を低減可能にする静翼領域冷却空気量低減手段を設けた冷却構造が提供される。このように構成されたガスタービンの冷却構造では、静翼領域への冷却空気の量が低減され、その分燃焼用空気が増大するので、燃焼ガス温度がさがり、NOxが低減される。」(段落【0005】及び【0006】)

(ウ)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照しながら、本発明の各実施の形態について説明する。先ず、本発明を適用しえる従来のガスタービンの燃焼器の周辺の基本的な構造を図7を参照して説明する。ケーシング1で形成される車室2内に燃焼器3が配設されていて、また車室2内には圧縮機4(一部のみ図示)で圧縮された高温の空気が矢印100で示されるように導入される。燃焼器3は、燃料と空気を燃焼して燃焼ガスを発生する燃焼筒6と、燃焼筒6に燃料と空気を燃焼筒6に導く導入部5から成り、燃焼筒6の後端は静翼シール7を介して静翼8に結合され、静翼8の後流側には動翼9が配設されている。
…(中略)…
【0013】以下、上記のような従来技術のガスタービンに適用される本発明のガスタービン燃焼器の各実施の形態について説明する。…(後略)…」(段落【0010】ないし【0013】)

(エ)「【0017】次に、第2の実施の形態の詳細を説明する。第2の実施の形態は静翼8の冷却に使用する空気の量を低減し、その分、燃焼用空気を増加させるものである。先ず、従来、静翼8が燃焼筒6の後端出口に対してどのように配置されているかを図2を参照して説明する。図2は、燃焼筒6側から静翼を見たものであって、8個の燃焼筒6の後端が一点鎖線で示されているが、図示のように、隣接する燃焼筒6の後端の放射方向部分の間には隙間6cが形成され、この隙間からも冷却用の空気が放出されている。そして、静翼シュラウド40、41に支持される静翼8が、隙間6cの位置と、各燃焼筒6の後端の円周方向の中央の位置に配設されている。
【0018】以下、必要に応じて、中間部分の静翼を中央静翼8a、隙間6cの位置の静翼を側部静翼8bということにする。図2に示される静翼8は前縁部が示されており、図示されるようにこの前縁部に静翼8をフィルム冷却するための空気吹き出し穴80が多数形成されている。
【0019】図3は、図2のような構造とされた静翼の部分における、温度分布を示したもので、図示のように、中央部分が高く、隙間6cが含まれる側部領域は比較的低い。すなわち、中央静翼8aは高温領域にあるが、側部静翼8bは低温領域にある。そこで、図4の(F)に示される従来技術に対して、第2の実施の形態においては図4の(A)に示すように中央静翼8aは従来通り前縁部に空気吹き出し穴80を設けるが、側部静翼8bについては前縁部の空気吹き出し穴80を廃止して、その分、冷却空気を減少する。
【0020】第2の実施の形態は、上記のように構成され、作用し、静翼8の冷却のための空気の量を減らすことができ、その分、燃焼用空気を増大させることができ、燃焼温度を下げてNOxの低減をおこなうことができる。なお。中央静翼8aも側部静翼8bも内部に冷却空気通路81、82を有しており、前縁部の空気吹き出し穴80から放出される空気は前側の冷却空気通路81を通って供給される。」(段落【0017】ないし【0020】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)ないし(エ)並びに図2ないし4及び図7の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていることが分かる。

(カ)上記(1)(ア)ないし(エ)並びに図2ないし4及び図7の記載から、引用文献には、ガスタービンが記載されていることが分かる。

(キ)上記(1)(ウ)及び図7の記載から、引用文献に記載されたガスタービンは、圧縮機4と、燃焼器3と、円周方向に間隔を置いて配置された静翼8の列及び円周方向に間隔を置いて配置された動翼9を含んでいることが分かる。なお、以下、静翼8と動翼9からなる装置を、便宜上「タービン」という。

(ク)上記(1)(エ)及び図2ないし4の記載から、引用文献に第2の実施の形態として記載されたガスタービンは、タービンにおいて静翼8の列の上流側に配置された複数の円周方向に間隔を置いて配置され、燃焼ガス経路内に冷却用の空気を放出する隙間6cを含むことが分かる。

(ケ)上記(1)(エ)及び図2ないし4の記載から、引用文献に第2の実施の形態として記載されたガスタービンにおいて、静翼8の内、側部静翼8bの円周方向の位置が、隙間6cに正対するように配置されることが分かる。

(コ)上記(1)(エ)及び図2ないし4の記載から、引用文献に第2の実施の形態として記載されたガスタービンにおいて、燃焼筒6の後端の放射方向部分の間に隙間6cが形成されることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図2ないし4及び図7の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ガスタービンであって、
該ガスタービンが、圧縮機4と、燃焼器3と、円周方向に間隔を置いて配置された静翼8の列と円周方向に間隔を置いて配置された動翼9からなるタービンとを含んでおり、ガスタービンが、
タービンにおいて静翼8の列の上流側に配置された複数の円周方向に間隔を置いて配置され、燃焼ガス経路内に冷却用の空気を放出する隙間6cを含んでおり、
静翼8の内、側部静翼8bの円周方向の位置が、隙間6cに正対するように配置され、
燃焼筒6の後端の放射方向部分の間に隙間6cが形成されたガスタービン。」

2.-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ガスタービン」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願補正発明における「タービンエンジンにおけるアセンブリ」、「タービンエンジン」及び「アセンブリ」に相当し、以下同様に、「圧縮機4」は「圧縮機」に、「燃焼器3」は「燃焼器」に、「燃焼ガス経路」は「高温ガス経路」に、「冷却用の空気」は「冷却空気」に、「放出」は「注入」に、「隙間6c」は「注入ポート」に、それぞれ相当する。
そして、本願補正発明における「タービンエンジンが、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、円周方向に間隔を置いて配置されたステータブレードの列及び円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレードとを含む複数の連続する軸方向スタック段とを含んでおり」に関し、「タービンの構成要素として、ステータブレードとロータブレードを有する」ことが技術常識であるところ、本願補正発明のタービンエンジンが、「タービン」とは別に、「ステータブレードの列及びロータブレードを含む複数の連続する軸方向スタック段」を有するようにも理解でき、その点で本願補正発明は明確でない。しかし、本願の明細書の段落【0023】に「タービン124は複数の段を含むことができる。…(中略)…第1の段は、…(中略)…複数のタービンバケット又はタービンロータブレード126と、…(中略)…複数のノズル又はタービンステータブレード128とを含む。」と記載され、「ステータブレードとロータブレードが、タービンの構成要素である」ことを示しており、本願の明細書のその他の部分に、これに反する記載もないことから、本願補正発明は、「タービンの構成要素として、ステータブレードの列及びロータブレードを含む複数の連続する軸方向スタック段を有する」ものであると理解できる。
また、引用発明における「静翼8」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願補正発明におけるに「ステータブレード」に、同様に、「動翼9」は「ロータブレード」に相当する。
したがって、「タービンエンジンが、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、円周方向に間隔を置いて配置されたステータブレードの列及び円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレードとを含んで」いるという限りにおいて、引用発明において「ガスタービンが、圧縮機4と、燃焼器3と、円周方向に間隔を置いて配置された静翼8の列と円周方向に間隔を置いて配置された動翼9からなるタービンとを含んで」いることは、本願補正発明において「タービンエンジンが、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、円周方向に間隔を置いて配置されたステータブレードの列及び円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレードとを含む複数の連続する軸方向スタック段とを含んで」いることに相当する。
さらに、引用発明における「静翼8の列」は、静翼の列として第1番目の列であり、本願補正発明における「ステータブレードの第1の列」に相当するから、引用発明において「タービンにおいて静翼8の列の上流側に配置された複数の円周方向に間隔を置いて配置され、燃焼ガス経路内に冷却用の空気を放出する隙間6c含んで」いることは、本願補正発明において「タービンにおいてステータブレードの第1の列の上流側に配置された複数の円周方向に間隔を置いて配置された注入ポートとを備え」ることに相当する。
また、引用発明において「側部静翼8bの円周方向の位置が、隙間6cに正対する」ことは、側部静翼8bの円周方向の位置が、隙間6cの位置の静翼の第1番目の列の0%ピッチにあること意味するから、引用発明において「静翼8の内、側部静翼8bの円周方向の位置が、隙間6cに正対するように配置され」ることは、本願補正発明において「前記ステータブレードの1つの前縁の円周方向位置が、前記注入ポートの各々の注入ポート中間点の円周方向位置の前記ステータブレードの第1の列の±15%ピッチ内に配置されるように、前記ステータブレードの第1の列における前記ステータブレードが構成され」ることに相当する。

以上から、本願補正発明と引用発明は、
「 タービンエンジンにおけるアセンブリであって、
タービンエンジンが、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、円周方向に間隔を置いて配置されたステータブレードの列及び円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレードとを含んでおり、アセンブリが、
タービンにおいてステータブレードの第1の列の上流側に配置された複数の円周方向に間隔を置いて配置され、冷却空気を前記タービンの高温ガス経路内に注入するポートを有する注入ポート
を含んでおり、
ステータブレードの1つの前縁の円周方向位置が、注入ポートの各々の注入ポート中間点の円周方向位置の前記ステータブレードの第1の列の±15%ピッチ内に配置されるように、ステータブレードの第1の列におけるステータブレードが構成されているアセンブリ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

〈相違点〉
(a)「タービンエンジンが、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、円周方向に間隔を置いて配置されたステータブレードの列及び円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレードとを含んで」いることに関し、本願補正発明においては、「タービンエンジンが、ステータブレードの列及びロータブレードを含む複数の連続する軸方向スタック段を含んで」いるのに対し、引用発明においては、「ガスタービンが、静翼8の列と動翼9」が複数の連続する軸方向スタック段を含むか否か不明である点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願補正発明においては、「前記アセンブリが、前記ステータブレードの第1の列のステータブレードの少なくとも90%及び前記ステータブレードの第2の列のステータブレードの少なくとも90%が-15%ピッチと15%ピッチの間のクロッキング関係をなすように構成された前記ステータブレードの第2の列のステータブレードを更に含」むのに対し、引用発明においては、そのような構成を有するか不明である点(以下、「相違点2」という。)。
(c)本願補正発明においては、「燃焼器が缶型燃焼器を備えており、注入ポートが、作動中に缶型燃焼器からタービンへと燃焼生成物を導く隣接トランジションピース後方フレーム間に配置されている」のに対し、引用発明においては、燃焼器の形式が不明であり、燃焼筒6の後端の放射方向部分の間に隙間6cが形成される点(以下、「相違点3」という。)。

2.-3 判断
上記各相違点のうち、まず、相違点1について検討する。
「ガスタービンにおけるタービンを、静翼の列及び動翼の列を軸方向に複数連続させたスタック段として構成すること」は、慣用技術(以下、「慣用技術」という。例えば、特開2006-52910号公報の【特許請求の範囲】の【請求項1】及び図1、並びに特開昭50-13703号公報の第2図等参照。)である。
そして、引用発明において、タービンの静翼8の列及び動翼9を、上記慣用技術のように軸方向に複数連続させたスタック段として構成することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点2に関し、ガスタービンのタービンにおいて、第1の列と第2の列の静翼のクロッキング関係は、通常、空気力学等を考慮し、運転効率を総合的に判断して、モデリング等の解析手法又はリグ試験等の実験的手法により決定される事項であるから、本願補正発明において、第1の列と第2の列のステータブレードのクロッキング関係を一定の範囲内に定めた点は、タービン設計上の事項にすぎない。そして、本願の明細書には、「前記ステータブレードの第1の列のステータブレードの少なくとも90%及び前記ステータブレードの第2の列のステータブレードの少なくとも90%が-15%ピッチと15%ピッチの間のクロッキング関係をなすように構成」することに関し、その臨界的な作用効果について何ら説明がなく、技術常識を参酌してもその臨界的な作用効果は明らかでない。また、-15%ピッチと15%ピッチの間という範囲は、0%、すなわちクロッキングを行わないこと含むことからみて、この数値限定によって顕著な効果を奏するものとはいえない。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

更に、相違点3に関し、ガスタービンに、缶型燃焼器を用い、燃焼室とタービン入口とを移行部品によって接続することは、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2006-242559号公報の段落【0002】、並びに特開2004-116992号公報の段落【0003】等参照。)である。
そして、引用発明において、上記周知技術を適用して、燃焼器3に缶型燃焼器を用い、燃焼筒6の後端の放射方向部分を移行部品、すなわちトランジションピースとして形成することよって、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明並びに慣用技術及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

以上から、本願補正発明は、引用発明並びに慣用技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、平成26年12月11日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成26年4月1日提出の手続補正書によって補正された明細書、平成24年11月2日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲、及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであり、請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項7】のとおりのものである。

2.引用発明
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2001-289003号公報)記載の発明(引用発明)は、前記第2.の[理由]2.-1の(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明と引用発明とは、上記第2.の[理由]2.-2で示した相違点1及び3で相違し、その余の点で一致する。
そして、引用発明において、相違点1及び3に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、上記第2.の[理由]2.-3に記載したように、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明を全体として検討しても、引用発明並びに慣用技術及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに慣用技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4.むすび
上記第3.のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-18 
結審通知日 2015-08-25 
審決日 2015-09-09 
出願番号 特願2009-252546(P2009-252546)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02C)
P 1 8・ 121- Z (F02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 出口 昌哉佐藤 健一  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 中村 達之
金澤 俊郎
発明の名称 燃焼器缶とタービン高温ガス流路を通る冷却空気の流れとに対するタービン翼形部の円周方向クロッキングに関する方法、装置、及びシステム  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ