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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1310461
審判番号 不服2015-904  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-16 
確定日 2016-01-27 
事件の表示 特願2012-542092「地理空間電話通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月 9日国際公開、WO2011/068716、平成25年 4月18日国内公表、特表2013-513301〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2010年11月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年12月3日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年9月10日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成27年1月16日に審判請求がされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成26年2月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。
「会議の参加者間の電話会議を少なくとも1人の前記参加者の場所に基づいて自動的に開始することを可能にする、地理空間電話通信システム内で通信ネットワークに結合するノードであって、
地理空間電話通信アプリケーションを格納するためのメモリと、
前記地理空間電話通信アプリケーションの命令を実行して、第1の通信装置が地理空間的に位置する場所を第2の通信装置から受信し、データベースにアクセスして前記第1の通信装置の登録電話番号を取り出し、前記場所に基づいて前記第1の通信装置と少なくとも前記第2の通信装置との間で電話会議が開始されることを可能にする働きをするプロセッサと
を含むノード。」

3 引用文献の記載と引用発明
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,特表2008-514129号(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。

ア 「【請求項2】
参加者のグループに携帯電話網を提供する通信システムであって、各参加者はCPUと、携帯電話の位置を正確に決定することができるGPSナビゲーション・システムとを含む個々の携帯電話を有し、参加者の通信網内の各携帯電話は、
CPUおよびメモリと、
タッチ・スクリーン・ディスプレイと、
前記通信網内の各参加者を前記表示スクリーン上に表すシンボルを生成する前記CPU内のシンボル生成器と、
各シンボルに関係する個別の電話番号を記憶するデータベースであって、各シンボルは前記通信網内の参加者を表す、データベースと、
前記電話番号データベースと前記タッチ・スクリーンと前記タッチ・スクリーン上のシンボルとに接続し、個々のシンボルにタッチすると前記シンボルで表されるユーザに携帯電話を自動的にかける、前記CPU内の携帯電話発呼ソフトウエアと、
を含み、
前記ディスプレイは、前記通信網内の参加者を表す各シンボルと、固定の位置と、着目した入力された項目の地理的位置のそれぞれを示すことを含む地理的情報を表示するデータベースを含む、
通信システム。
【請求項3】
それぞれの参加者が請求項2記載の携帯電話を有する、前記参加者を含む通信網であって、更に、
シンボルで表されるユーザに携帯電話を自動的にかける前記ソフトウエアが、各ユーザのシンボルにタッチすることにより電話会議に参加する参加者の特定のシンボルにタッチして主電話から1人以上の参加者に電話会議の電話をかけることと、スクリーンにタッチすることにより電話会議の電話をかけてこれにより会議の各参加者は主電話から電話を受けて電話会議を確立するためのソフトウエア・スイッチを提供することとを含む、
通信網。」

イ 「【0001】
本発明は一般に、通信網を用いて人々のグループを管理するために複数の携帯電話/PDA/GPSを用いる統合通信システムに関するものであり、特に、全てのユーザが表示スクリーンのシンボルにタッチすることにより相互の位置と状態とを知り、またユーザ間で迅速に電話をかけまたデータを通信することができ、また他のユーザおよび他のデータベースの情報に関するデータにユーザが容易にアクセスできるようにする機能を有する携帯電話をユーザに提供するものである。」

ウ 「【0031】
また表示スクリーン16(特に地図スクリーン16b)には、ラベルのついていない1対の異なる形のシンボル30(小さな三角形)および34(小さな四角形)が示されている。これらのシンボル30および34は、本発明に用いられる全携帯電話通信網の一部である表示された地域内の通信網携帯電話ユーザを表してよい。各ユーザは図1に示すものと同じ携帯電話を有する。シンボル30の緯度および経度はデータベース内で特定の電話
番号に関連付けられている。表示スクリーン16bはタッチ・スクリーンであって、スクリーン16bのx,y座標をCPUのソフトウエアに与える。ソフトウエアはx,y座標を緯度および経度に関係づけて、その地点に最も近い通信網参加者のシンボルまたはエンティティのシンボルにアクセスできるアルゴリズムを有する。
【0032】
特定のGPSが与える緯度および経度(これは図1に示す携帯電話にすでに送られている)にあってシンボル(三角形)30で表される携帯電話ユーザに電話をかけるには、図1で携帯電話1と呼んでいる電話のオペレータすなわち発呼者はスタイラスまたは指14を用いて三角形30にタッチした後で、表示領域16cに重なって表示されるスイッチのマトリックスの中の「CALL」ソフトウエア・スイッチにタッチする。すると携帯電話1はシンボル30を表す位置に居る携帯電話ユーザにすぐ携帯電話をかける。第2の携帯電話ユーザはシンボル34で表されている。これは小さな正方形であるが、表示領域内の個々の携帯電話ユニットを表すものであればどんな形状またはアイコンでもよい。シンボル30を囲む輪は、このシンボルはすでにタッチされているので、「CALL」と表示されたソフト・スイッチにタッチすれば電話がかけられることを示す。ここで「CALL」スイッチにタッチすると電話がかかる。
【0033】
別のタイプのシンボル表示は実際に電話がかかっていることを示してよい。また、携帯電話1のオペレータはスタイラスまたは指を用いて表示スクリーン上でタッチした後でCALLスイッチにタッチすることにより、警察署またはその他の場所、建物、または設備(その電話番号はデータベース内に記憶されている)に電話をかけることができる。また、オペレータはシンボル34とシンボル30の両方にタッチして、シンボル30および34で表される2つの携帯電話およびユーザの間の電話会議を行うことができる。この場合も、シンボル34を囲む輪は電話がかかっていることを示す。
【0034】
また図1に示すシステムは少数の電話で電話会議を開始することができる。それには、発呼者が会議を行いたいと思うディスプレイ16上の全ての表示されたシンボルにスタイラスまたは指を用いてタッチした後で電話会議ソフト・スイッチを選択する。またオペレータは、オペレータが迅速に電話をかけたいと思う会議サブネットを予め確立しておくことができる。このためには、オペレータはシンボルにタッチするか、または参加者アドレスのリストまたはマトリックスから参加者を選択して、参加者に網ソフトウエア・スイッチを割り当てる。オペレータがこれらの参加者と電話会議を行いたいときは、オペレータは単にこのグループに関連する網ソフトウエア・スイッチにタッチすればよい。そのシンボルにタッチするかまたはそのサブネット・ソフト・スイッチを選択すると、ユーザが前もって指示した各携帯電話に対する「電話1」からの通常の小さな電話会議を準備するソフトウエアがユニット内に備えられている。最初の電話がかかるとその相手は自動的に保留になり、順に他の発呼者に電話がかけられまたは返事があって保留になるというようにして全ての関係者に電話がつながると、各電話に電話会議が告げられる。各参加者に電話がかかると、携帯電話1から要求された電話会議が進行中であると電話は告げる。これは全てソフトウエアが行う。」

エ 「【0040】
通信装置はデータベースも有する。これは、LCDディスプレイ上の地理的表示と、LCDディスプレイのタッチ・スクリーン上のx,y座標と地理的表示とを関係づけるソフトウエアとを含む。また、通信網の一部である他の携帯電話ユーザを表すシンボルを地理的表示上に表示するソフトウエアもある。通信網の一部である全ての参加者の携帯電話は、統合されまたは電子的に接続されたGPSナビゲーション・システムを含む。各電話は他の携帯電話に電話をかけて、その緯度および経度による位置と状態の情報を知らせるよう要求することができる。各携帯電話は着目した他のエンティティを入力してそれぞれにカテゴリ(車、人、タンク、事故、またはその他のカテゴリ)を割り当てることができる。次に、これらの各エンティティの緯度および経度と各カテゴリとを通信網で送る。また各電話は固定物(地図で参照される固定の位置であって、レストラン、ガソリン・スタンド、病院、消防署、軍事基地、住宅、会社、政府機関、街路の位置などを含む)の緯度および経度と電話番号とを有し、これらをデータベース内に含み、スクリーン上に表示することができる。
【0041】
したがって本発明は携帯電話/PDA/GPSシステムを提供し、このシステムは、スクリーン上にシンボルで表示される1人以上の他の携帯電話ユーザと、各携帯電話ユーザが着目した項目と考える入力されたエンティティと、予め確立された着目した地点(地図で参照される固定の位置であって、レストラン、ガソリン・スタンド、病院、消防署、軍事基地、住宅、会社、政府機関、街路の位置などを含む)とを示す地図表示を含む。
【0042】
また本発明は、表示されたシンボルのそれぞれの特定の携帯電話番号を有するデータベースを含み、このデータベースはシンボルと、地理的スクリーン上のその位置と、記憶された電話番号との間の関係を与える。
【0043】
また本発明のソフトウエア・プログラムにより、携帯電話1のオペレータは、該当するスイッチにスタイラスまたは指でタッチするという方法で、表示スクリーン上の電話ユーザを表すシンボルの1つにタッチして電話をかけることができる。このとき、ソフトウエアは指定されたシンボルの電話の電話番号をメモリから自動的に検索し、そのシンボルに関連する携帯電話番号にすぐ電話をかける。これは全て、データベース内の電話を表すシンボルにタッチした後で「CALL」ソフト・スイッチにタッチするだけで行われる。
【0044】
更に、複数の携帯電話ユーザが存在するとき、携帯電話1のオペレータはスタイラスまたは指を用いて1人以上の携帯電話ユーザのシンボルにタッチした後で「電話会議」と表示されたソフトウエア・スイッチにタッチする。これによりソフトウエアは、スタイラスまたは指でタッチしまたは予め確立された参加者の会議網スイッチを選択することにより、全ての指定された携帯電話ユーザとの電話会議を開始して実行する。地域内で電話会議を行う必要のある電話ユーザの数が或る少数より多い場合は、携帯電話による電話会議に技術的な制限があるので、このシステムは異なるメッセージを送って、遠方の携帯電話に特定の800番という会議番号に電話をかけさせる。これにより、より多数の参加者が会議を行うことができるようになる。このように、設定された数より多くの電話ユーザと電話会議を行うことをユーザが選択する場合は、ソフトウエアは800番ソフトウエア・スイッチを用いるよう指示する。」

(2) 引用発明
ア 上記(1)ア及びウより,引用文献1には,携帯電話は,各参加者を表すシンボルの緯度および経度に基づいて,各参加者の携帯電話に自動的に電話会議の電話をかけて電話会議を開始することについて記載されていると認める。
また,上記(1)イによれば,引用文献1には,携帯電話は,複数の携帯電話を用いる統合通信システムの通信網内の携帯電話であることについて記載されている。
したがって,引用文献1において,電話会議の参加者の間の電話会議を,各参加者の緯度および経度に基づいて自動的に開始する,統合通信システムの通信網内の携帯電話について記載されているといえる。

イ 上記(1)アによれば,引用文献1には,メモリとCPUとCPU内の携帯電話発呼ソフトウェアとを含む携帯電話が記載されている。
したがって,引用文献1において,携帯電話は,携帯電話発呼ソフトウェアを記憶するメモリを含むことは明らかである。

ウ 上記(1)ア,ウ及びエより,引用文献1には,CPU内の携帯電話発呼ソフトウェアは,シンボルで表される他の携帯電話に電話をかけるために,携帯電話のオペレータが地図スクリーン上でタッチした他の携帯電話を表すシンボルの緯度および経度を取得することについて記載されていると認める。
したがって,引用文献1において,携帯電話は,携帯電話発呼ソフトウェアにより,他の携帯電話の緯度および経度を取得するようにするCPUを含むことについて記載されているといえる。

エ 上記(1)ア及びウより,引用文献1には,携帯電話発呼ソフトウェアは,シンボルの緯度および経度と特定の電話番号が関連付けられているデータベースに接続し,個々のシンボルにタッチするとそのシンボルで表される他の携帯電話に電話をかけることが記載されていると認める。
したがって,引用文献1において,携帯電話発呼ソフトウェアは,データベースに接続して,他の携帯電話の電話番号を取得することが記載されているといえる。

オ 上記(1)ア,ウ及びエより,引用文献1には,携帯電話発呼ソフトウェアは,携帯電話のオペレータがタッチしたシンボルの緯度および経度に基づいて,他の携帯電話のユーザに電話をかけることについて記載されている。
そして,上記(1)ウによれば,引用文献1には,オペレータは複数のシンボルにタッチして,複数のシンボルで表される2つの携帯電話のユーザとの間で電話会議を行うことについて記載されている。
したがって,引用文献1において,携帯電話発呼ソフトウェアは,タッチしたシンボルの緯度および経度に基づいて,他の携帯電話のユーザとの間で電話会議を行うことについて記載されているといえる。

カ 上記アないしオより,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「電話会議の参加者の間の電話会議を,各参加者の緯度および経度に基づいて自動的に開始する,統合通信システムの通信網内の携帯電話であって,
携帯電話発呼ソフトウェアを記憶するメモリと,
携帯電話発呼ソフトウェアにより,他の携帯電話の緯度および経度を取得し,データベースに接続して,他の携帯電話の電話番号を取得し,タッチしたシンボルの緯度および経度に基づいて,他の携帯電話のユーザとの間で電話会議を行うようにするCPUと
を含む携帯電話。」

4 周知文献と周知技術
(1)周知文献1
原査定の拒絶の理由に引用された,特開2007-228251号公報(以下「周知文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
ア 「【0042】
図6は、実施の形態に係る通信システムにおいて、発信側ユーザ及び着信側ユーザにおける音声対話が始まるまでの発信側音声対話装置、着信側音声対話装置及びサーバ110のそれぞれの動作を示すシーケンス図である。
【0043】
ユーザが対話相手選択ボタン(図示せず)を押下すると、図7に示すように、対話相手の候補となる着信側音声対話装置を選出するための属性選択画面700が入出力部206に表示される。
【0044】
発信側音声対話装置のユーザは、まず、対話相手の候補となる着信側音声対話装置を選出するための属性である性別、年齢、趣味及び場所の少なくとも1つの属性を選択する(シーケンスS601)。ここでは、属性として、年齢、趣味及び場所が選択されたものと仮定する。このとき、入出力部206は、図8に示すように、更に属性を絞り込むための属性絞込み選択画面800を表示する。
【0045】
発信側音声対話装置のユーザは、属性絞込み選択画面800のプルダウンキーにタッチして、各属性を絞り込んで選択する。このとき、発信側音声対話装置のユーザが場所の属性を選択するに際して、地図から指定すると選択した場合、図9に示すように、発信側音声対話装置のユーザの現在地周辺の地図が入出力部206に表示される。発信側音声対話装置のユーザは、指定したい場所が領域であるなら、その領域を囲むように、表示された地図を指でなぞって指定する。また、指定したい場所が道路沿いであるなら、その道路に沿うように、表示された地図を指でなぞって指定する。なお、発信側音声対話装置のユーザが場所の属性を選択するに際して、直接場所を示す名称が入力されてもよい。
【0046】
発信側音声対話装置の通信部204は、選択された属性情報を、ネットワーク120を介して、サーバ110に送信する(シーケンスS602)。このとき、送信された属性情報は、サーバ110の通信部301で受信される(シーケンスS603)。
【0047】
候補選出部303は、通信部301で受信された属性情報と、記憶部302に記憶されたユーザ情報及び着信情報とを比較して、対話相手の候補となる着信側音声対話装置を選出する(シーケンスS604)。
【0048】
サーバ110の通信部301は、候補選出部303が選出した対話相手の候補となる着信側音声対話装置の候補情報を、ネットワーク120を介して、発信側音声対話装置に送信する(シーケンスS605)。このとき、送信された候補情報は、発信側音声対話装置の通信部204で受信される(シーケンスS606)。
【0049】
地図生成部205は、通信部204で受信した候補情報と地図格納部202に格納された地図データとに基づいて、対話相手の候補となる着信側音声対話装置の位置を含む地図データを生成する。入出力部206は、地図生成部が生成した地図データの表す地図を表示する。
【0050】
入出力部206は、対話相手の候補となる着信側音声対話装置の位置を含む地図から、対話相手となる着信側音声対話装置の選択を受付ける(シーケンスS607)。このとき、ユーザは、図10に示すように、選択したい相手を領域で指定するなら、その領域を囲むように、表示された対話相手の候補となる着信側音声対話装置の位置を含む地図を指でなぞって指定する。また、選択したい相手を個別に指定するなら、その着信側音声対話装置の位置を指でタッチして指定する。なお、対話相手の候補となる着信側音声対話装置の位置を含む地図において、対話相手となる着信側音声対話装置の位置に、当該着信側音声対話装置のユーザ情報がポップアップ表示される構成としてもよい。このようにすれば、発信側音声対話装置のユーザ所望の対話相手の選択が容易になる。
【0051】
発信側音声対話装置の通信部204は、入出力部206で受付けた対話相手となる着信側音声対話装置の選択情報を、ネットワーク120を介して、サーバ110に送信する(シーケンスS608)。このとき、送信された選択情報は、通信部301で受信される(シーケンスS609)。
【0052】
グループ化部304は、通信部301で受信した選択情報に基づいて、対話相手となる着信側音声対話装置をグループ化する(シーケンスS610)。制御部300は、発信側音声対話装置とグループ化部304でグループ化された着信側音声対話装置とのコネクションを確立する(シーケンスS611)。
【0053】
コネクションの確立が行われた後、発信側音声対話装置のユーザは、対話開始部209を操作しながら、音声入力部210に向かって声を発して、グループ化された着信側音声対話装置のユーザと音声通信を行う(シーケンスS612)。」

(2)周知文献2
原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2009/105298号(以下「周知文献2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
ア 「 [0020] The system 100 also includes a presence component 114 for receiving presence information from one or more presence information sources 116 and presenting the presence information and the location information in a conferencing session. The location information (e.g., virtual, physical) is converted and presented in a user understandable format. In other words, the presence and/or location information can be presented via a display, in an audio format (e.g., interactive voice response), message, etc. The location information can also be made actionable (e.g., a hyperlink) where a user can select the location information to join the session. In other words, a user could be presented with the presence and location (e.g., virtual information) as an active link of a fellow participant before the session, during the session, and/or after the session. If the user chooses to join, the user can simply select (or click) on the active link presented and be joined into the session in response to this action. 」
([当審仮訳]:
[0020]システム100はまた、1つまたは複数のプレゼンス情報ソース116からプレゼンス情報を受信しかつ会議セッションにおいてプレゼンス情報及び位置情報を示すプレゼンスコンポーネント114を含む。(例えば、仮想の、物理的な)位置情報は、変換されて、ユーザーが理解できるフォーマットで示される。言い換えれば、プレゼンス情報及び/または位置情報は、ディスプレイを介して、音声フォーマット(例えば、自動音声応答)、メッセージ等で示されてもよい。位置情報は、実行可能(例えば、ハイパーリンク)にされてもよく、そこでユーザーが該位置情報を選択してセッションに参加することができる。言い換えれば、ユーザーには、セッションの前、セッションの間、および/またはセッションの後に、アクティブリンクとして、仲間の参加者のプレゼンス及び位置(例えば、仮想情報)が示され得る。ユーザーが参加することを選択する場合、ユーザーは示されたアクティブリンクを単に選択(またはクリック)し、この動作に応じてセッションに参加することができる。)

イ 「[0030] More specifically, a user has a client communications application running that is compatible with processing session server data and signals, including presence information and location information. This communications application can run as a background process transparent to the user actions with the client system (e.g., cell phone, portable computer). The user can receive an email that includes a link to the session, and which the selection of which joins the user to the session hosted by the server 228. By joining, the client communications program is now aware that the user in the session, looks at the session information (e.g., session title or name "Software Design Meeting"), and updates the user presence to indicate "in session", for example. The client communications program passes the active link (e.g., URL) with client presence information up to the session server 228. The server 228 can then publish this information to any entity (user, device or system) subscribed to the user's presence.」
([当審仮訳]:
[0030]より具体的には、ユーザーは、プレゼンス情報及び位置情報を含む処理セッションサーバデータ及び信号に対応する、実行中のクライアント通信アプリケーションを有する。この通信アプリケーションは、クライアントシステム(例えば、携帯電話、ポータブルコンピュータ)へのユーザー操作に透過的バックグランドプロセスとして実行することができる。ユーザーは、セッションへのリンクを含む電子メールを受信することができ、該リンクを選択すると、ユーザーをサーバ228によってホストされるセッションに参加させる。参加により、クライアント通信プログラムは、そのとき、ユーザーがセッション中であることを知って、セッション情報(例えば、セッションタイトルまたはセッション名「ソフトウェア設計ミーティング」)を見て、例えば、「セッション中」を表示するようにユーザープレゼンスを更新する。クライアント通信プログラムは、セッションサーバ228にクライアントプレゼンス情報とともにアクティブリンク(例えば、URL)を渡す。次に、サーバ228は、ユーザーのプレゼンスを定期的に求める任意のエンティティ(ユーザー、装置、またはシステム)に、この情報をパブリッシュすることができる。)

ウ 「[0038] FIG. 4 illustrates a method of providing communications information. At 400, presence information related to presence of an entity is received. At 402, location information related to location of the entity is received. At 404, the presence information and the location information are combined. At 406, the location information is presented with the presence information in association with a communications session.
[0039] The location information defines virtual or physical location of a user or user device. The selection of the active link automatically joins the entity to the session. In one implementation, a presence system publishes the location information and the presence information to another entity, one or more of before, during, or after a communications session. Moreover, presentation of one or more of the presence information or the location information can be based on one or more permissions of the user to receive the information. This can be imposed using a server policy, for example, that stipulates that only the required permission(s) (e.g., employee, team member, etc.) will allow this information to be accessed by an invitee or other entity type.
[0040] In the following scenario, Participant A is in a web conferencing meeting. A coworker, Invitee B, wants to join Participant A and others in the meeting, but does not know the meeting address. Invitee B does know that Participant A will be attending the meeting. Invitee B opens up an application that allows for finding users associated user presence. Invitee B finds Participant A and sees that Participant A's location shows that Participant A is in the virtual meeting. Invitee B then clicks the meeting location and joins the web conference. Invitee B found the virtual location via the presence information.」
([当審仮訳]:
[0038]図4は、通信情報を提供する方法を示す。ステップ400において、エンティティのプレゼンスに関連するプレゼンス情報が受信される。ステップ402において、エンティティの位置に関連する位置情報が受信される。ステップ404において、プレゼンス情報と位置情報とが結合される。ステップ406において、位置情報は、通信セッションに関連するプレゼンス情報とともに示される。
[0039]位置情報は、ユーザーまたはユーザー装置の仮想位置または物理的な位置を特定する。アクティブリンクを選択すると、エンティティをセッションに自動的に参加させる。1つの実施例において、プレゼンスシステムは、通信セッションの前、通信セッションの間、通信セッションの後のうちの1つまたは複数の時に、位置情報及びプレゼンス情報を別のエンティティにパブリッシュする。更に、プレゼンス情報または位置情報のうちの1つまたは複数を提示することは、情報を受信するための1つまたは複数のユーザーの許可に基づいてもよい。このことは、例えば、必須の許可(複数可)(例えば、従業員、チームメンバ等)がある場合のみ、招待された人または他のエンティティタイプがこの情報にアクセスできることを規定するサーバポリシを用いて課せられてもよい。
[0040]以下のシナリオにおいて、参加者Aは、ウェブ会議ミーティングに出ている。同僚、即ち招待された人Bは、ミーティングに出ている参加者A及び他の人に加わりたいが、ミーティングアドレスを知らない。招待された人Bは、参加者Aがミーティングに出席しているということを知っている。招待された人Bは、ユーザープレゼンスに関連しているユーザーを見つけることが可能になるアプリケーションを開始する。招待された人Bは、参加者Aを見つけて、参加者Aが仮想ミーティングに出ていることを参加者Aの位置が示すということを知る。次に、招待された人Bは、ミーティング位置をクリックして、ウェブ会議に参加する。招待された人Bは、プレゼンス情報を介して仮想位置を見つけた。)

(3)当該技術分野における周知技術
上記(1)及び(2)の周知文献1及び2の記載にみられるように,「グループで通話するシステムにおいて,通話相手を特定する地図上の位置又は物理的な位置を受信し,通話相手の位置に基づいて,グループでの通話を開始する処理をサーバが行うこと。」は,周知技術であるといえる。

5 本願発明と引用発明との対比,一致点及び相違点
(1)対比
ア 引用発明における「緯度および経度」が,地理空間上の位置として場所を特定するものであることは明らかであるから,本願発明における「場所」に相当する。
また,上記3(2)アによれば,引用発明における「統合通信システム」は,各参加者を表すシンボルの緯度および経度に基づいて,各参加者の携帯電話に自動的に電話会議の電話をかけて電話会議を開始する複数の携帯電話を用いるシステムであるから,本願発明における「地理空間電話通信システム」に相当するといえる。
そして,引用発明における「携帯電話」と,本願発明における「ノード」とは,通信装置である点で一致している。
そうすると,本願発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「会議の参加者間の電話会議を少なくとも1人の前記参加者の場所に基づいて自動的に開始することを可能にする,地理空間電話通信システム内で通信ネットワークに結合する通信装置」である点で共通するということができる。

イ 上記3(2)エのとおり,引用発明における「携帯電話発呼ソフトウェア」は,タッチしたシンボルの緯度および経度に関連付けられている他の携帯電話の電話番号に電話をかけるものであるから,本願発明における「地理空間電話通信アプリケーション」に相当する。
そうすると,引用発明は,本願発明における「地理空間電話通信アプリケーションを格納するためのメモリ」に相当する構成を備えるということができる。

ウ 上記3(2)ウより,引用発明における「他の携帯電話」は,携帯電話のオペレータのタッチによって緯度および経度が取得される対象であるから,本願発明の「第1の通信装置」に相当する。
そして,上記3(2)エのとおり,引用発明における「電話番号」は,データベースにおいて,シンボルの緯度および経度と関連付けられている特定の電話番号であるから,本願発明における「登録電話番号」に相当する。
更に,上記3(2)オより,引用発明における「携帯電話」は,複数のシンボルにタッチすることで他の携帯電話のユーザと電話会議を行うものであるから,本願発明における「第2の通信装置」に相当するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記地理空間電話通信アプリケーションの命令を実行して,第1の通信装置が地理空間的に位置する場所」を取得し、「データベースにアクセスして前記第1の通信装置の登録電話番号を取り出し,前記場所に基づいて前記第1の通信装置と少なくとも前記第2の通信装置との間で電話会議が開始されることを可能にする働きをするプロセッサ」を有する点で共通するということができる。

(2)一致点及び相違点
上記(1)から,本願発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。
[一致点]
「会議の参加者間の電話会議を少なくとも1人の前記参加者の場所に基づいて自動的に開始することを可能にする,地理空間電話通信システム内で通信ネットワークに結合する通信装置であって,
地理空間電話通信アプリケーションを格納するためのメモリと,
前記地理空間電話通信アプリケーションの命令を実行して,第1の通信装置が地理空間的に位置する場所を取得し,データベースにアクセスして前記第1の通信装置の登録電話番号を取り出し,前記場所に基づいて前記第1の通信装置と少なくとも前記第2の通信装置との間で電話会議が開始されることを可能にする働きをするプロセッサと
を含む通信装置。」

[相違点]
・相違点1
一致点の「通信装置」において,本願発明は,「ノード」であるのに対し,引用発明では,「携帯電話」である点。

・相違点2
一致点の「第1の通信装置が地理空間的に位置する場所を取得し」に関し,本願発明は,「第2の通信装置から受信」しているのに対し,引用発明では,「携帯電話」のオペレータのタッチにより取得している点。

6 相違点についての検討
相違点1及び相違点2について以下まとめて検討する。
引用発明において,「携帯電話」は,「他の携帯電話」の緯度および経度を取得し,「他の携帯電話」との電話会議を行うものである。
そして,上記4(3)のとおり,「グループで通話するシステムにおいて,通話相手を特定する地図上の位置又は物理的な位置を受信し,通話相手の位置に基づいて,グループでの通話を開始する処理をサーバが行うこと。」は周知技術である。そして,引用発明と周知技術とは,通話相手の位置に基づいて電話の接続処理を行う技術分野に属する点において共通する。
したがって,引用発明において,当該周知技術を適用し,「他の携帯電話」の緯度および経度を取得し,「他の携帯電話」のユーザとの間で電話会議を行うようにするための処理を,サーバ,すなわち,「携帯電話」に対して外部のノードが行うように構成を変更すること(相違点1に係る構成とすること)は当業者が容易に想到し得ることであり,その際,「携帯電話」から「他の携帯電話」の緯度および経度を取得するようにすること(相違点2に係る構成とすること)は,上記周知技術からみて当然の帰結にすぎない。

以上から,相違点に係る構成は,引用発明に周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。
そして,本願発明の作用効果も引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が予測できる範囲のものである。

なお,審判請求書において,請求人は審判請求の理由として,引用文献1は,ユーザが指定するのは地図上の「場所」ではなく,特定の通信装置である点で,本願発明の「場所」とは相違する旨の主張をしている。
しかしながら,上記3(2)ウないしオに記載のとおり,引用文献1において,携帯電話のオペレータは,地図上のシンボルをタッチすることで,シンボルの緯度および経度を特定し,シンボルの緯度及び経度から対応する電話番号に電話をかけるものであるから,タッチされた場所の情報に基づいて電話をかけているといえる。
よって,上記主張は採用できない。

以上のとおり,本願発明は,引用発明と周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

7 結言

したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-28 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-14 
出願番号 特願2012-542092(P2012-542092)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松原 徳久  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 富澤 哲生
高野 美帆子
発明の名称 地理空間電話通信システム  
代理人 岡部 讓  
代理人 川崎 孝  
代理人 吉澤 弘司  

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