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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1310482
審判番号 不服2014-26109  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-22 
確定日 2016-01-28 
事件の表示 特願2012-506355「壁掛け型カップボード用外れ止めシステム」拒絶査定不服審判事件〔2010年10月28日国際公開、WO2010/121687、平成24年10月18日国内公表、特表2012-524873〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2010年3月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年4月24日、イタリア国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月23日付けで拒絶理由が通知され、平成26年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年8月28日付け(発送日:平成26年9月1日)で拒絶査定され、これに対し、平成26年12月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成26年4月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
カップボード(40、70、105、110、150)が、カップボード保持デバイス(40、90、124、163)のフック(41、73、91、125、162)によって、壁(48、77、98、114、154)に固定された支持体(47、76、97、115、155)にフック止めされた、壁掛け型カップボード用の外れ止めシステムにおいて、
前記フック(41、73、91、125、162)と、前記支持体(47、76、97、115、155)との間に、前記カップボードの偶発的なフック外れを防止する係合-係合解除自在の解除手段(51、79、101、121、160、167)が設けられている、ことを特徴とするシステム。」

第2 刊行物
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である実公昭59-38912号公報(以下、「刊行物」という。)には、「吊戸棚ハンガー」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

1 「そこで本考案は、上述従来の事情に鑑みて検討の結果、吊戸棚ハンガーを改良したもので、本体に耐震用止めネジを螺合し、該ネジにより受座を取付け用壁側に押圧するよう構成したことによつて、フツクと受座を緊締状態に掛止できて緩みを生じたり、外れることのないようにしようとするものである。」(第1ページ右欄第15-21行。)

2 「以下本考案の実施例を示した図面について詳述すれば、第3図、第4図において、本体1には上下調整ネジ2によつて上下移動調整可能にガイドレール3が内装してあり、そのガイドレール3にはフツク4が前後調整ネジ5により前後に移動調整可能に係嵌して形成され、吊戸棚の側板6、天板7、裏板8に突き合わせして、本体1から突設した埋込杆9と木ネジ10・・・・・・で吊戸棚を固定し、上記裏板8の窓孔8aから外方へ突出したフツク4を、躯体等の壁11に木ネジ12・・・・・・等で固定した受座13に掛止して吊戸棚を吊持するようになつている。
さらに本案は、上記本体1の後部一側からブラケツト1aを一体に突設して図示の如く裏板8に突き合わせするようにし、該ブラケツト1aにネジ孔1bを前後方向に貫通形成して耐震用止めネジ14を螺進退可能に螺合し、先端14aで上記受座13を壁11側へ押圧可能に構成したものである。
(省略)
又、上記耐震用止めネジ14は、第1図第2図に示したように、フツク4の引掛部4aと掛止する受座13の引掛部13aを先端部14aで押圧するようにしてもよく、又は第5図、第6図に示したように引掛部13aの基端部13dを押圧するようにしてある。
更に、上記フツク4と、受座13の両引掛部4a,13aはその掛止面に第4図に示したように凹凸部4b,13bを設けて相互に嵌合した状態で掛止するか、又は第5図、第6図に示したように、掛止面4c、13cに形成して相互に前後及び上下両方向、つまり二軸方向に相対掛止されるようにして、両者の掛止が外れ難くなつている。
而して、上記構成において、上述のように吊戸棚を固定した後、フツク4の引掛部4aを受座13の引掛部13aに掛合し、前後調整ネジ5により、フツク4を第4図、第6図において右方向へ移動させることで、上記両引掛部4a,13aが緊締状態に掛止されることは従来例と同様であるが、本案によるときは、次に耐震用止めネジ14を螺進させ、その先端14aで受座13を壁11側へ押圧する。
つまり、耐震用止めネジ14は受座13を、フツク4と掛止して引きよせられる方向とは反対側方向に押圧して吊戸棚を吊持するものである。
以上説明したように本考案に係る吊戸棚ハンガーによれば、本体1に耐震用止めネジ14を螺合して、受座13を壁11側に押圧するように構成したものであるから、フツク4と受座13を両引掛部4a,13aで掛止し、その掛止を緊締状態とするべくフツク4が前後調節ネジ14(「5」の誤記)により前方に移動される方向とは反対方向に受座13は耐震用止めネジ14にて押圧されるので、フツク4と受座13は掛止方向により強力に圧着されることになり、上記掛止を更に堅固とすることができ、振動等によつても外れ難く優れた耐震性を有する効果がある。」(第1ページ右欄第22-第2ページ右欄第10行。第1ペ-ジ右欄第31行の「躯」は、原文では旧漢字であって、つくりは「区」ではなく「匚」の中に「品」。)

3 「図面の簡単な説明
第1図、第2図は吊戸棚ハンガーの従来例を示した夫々平面図と縦断側面図、第3図、第4図は本考案に係る吊戸棚ハンガーを示した夫々平面図と一部切欠した側面図、第5図、第6図は同ハンガーの他の実施例を夫々示した傾視図と一部切欠した側面図である。」(第2ページ右欄第21-27行。)

4 第5図




5 第6図


6 第6図からは、フック4の引掛部4aの掛止面4cが右下(先端が壁11から離れる方向)に傾斜し、受座13の引掛部13aの掛止面13cが左上(先端が壁11に近づく方向)に傾斜し、掛止面4cと掛止面13cとが当接する構造が看てとれる。

7 吊戸棚は吊戸棚ハンガーのフック4によって壁11に固定された受座13に掛止されるから、フック4及び受座13は「掛止機構」ということができる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物には、第5図及び第6図に係る吊戸棚ハンガーの実施例に関して、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「吊戸棚が、吊戸棚ハンガーのフック4によって、壁11に固定された受座13に掛止された、吊戸棚用の、振動等によっても外れることのない掛止機構において、前後調整ネジ5によりフック4を移動可能とし、
前記フック4と前記受座13との間に、傾斜した掛止面4c,13cを有する引掛部4a,13aが設けられ、両掛止面4c,13cが二軸方向に相対掛止された、掛止機構。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「吊戸棚」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「カップボード」及び「壁掛け型カップボード」に相当し、以下同様に、「吊戸棚ハンガー」は「カップボード保持デバイス」に、「フック4」は「フック」に、「壁11」は「壁」に、「受座13」は「支持体」に、「掛止」は「フック止め」に、「掛止機構」は「システム」に、それぞれ相当する。

また、引用発明は、前後調整ネジ5によりフック4を移動することで、フック4の引掛部4aの掛止面4cを、受座13の引掛部13aの掛止面13cに、二軸方向に相対掛止させると、両引掛部4a,13aの掛止が外れ難くなるから、引用発明の「傾斜した掛止面4c,13cを有する引掛部4a,13a」と、本願発明の「前記カップボードの偶発的なフック外れを防止する係合-係合解除自在の解除手段」とは、「カップボードのフック外れを防止する手段」という点で一致する。

したがって、両者は、
「カップボードが、カップボード保持デバイスのフックによって、壁に固定された支持体にフック止めされた、壁掛け型カップボード用の外れ止めシステムにおいて、
前記フックと、前記支持体との間に、カップボードのフック外れを防止する手段が設けられている、システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
「カップボードのフック外れを防止する手段」が、本願発明は、カップボードの「偶発的な」フック外れを防止する「係合-係合解除自在の解除」手段であるのに対し、引用発明は、傾斜した掛止面4c,13cを有する引掛部4a,13aである点。

第4 当審の判断
上記相違点について検討する。

本願の明細書の段落【0063】ないし【0070】及び【図30】ないし【図35】には、本願発明の「カップボードの偶発的なフック外れを防止する係合-係合解除自在の解除手段」の第6実施例として、フック162を、ねじ164により壁154から離れる方向に移動させることで、フック状フラップ167を支持体155のフラップ160にしっかりとフック止めして、フック162と支持体155とが偶発的に外れるのを防止するとともに、フック162を壁154に近づく方向に移動させることで、フック162と支持体155とが外れることが記載されている。
一方、引用発明は、前後調整ネジ5により、フック4を壁11から離れる方向に移動させることで、フック4の引掛部4aを受座13の引掛部13aへ緊締状態に掛止し、フック4を壁11に近づく方向に移動させることで、フック4と受座13を外すものである。
そうすると、本願発明の第6実施例の「フック状フラップ167」及び「フラップ160」の動作に照らせば、引用発明の「傾斜した掛止面4c,13cを有する引掛部4a,13a」は、本願発明の「係合-係合解除自在の解除手段」に相当するといえる。

また、引用発明の両掛止面4c,13cの二軸方向の相対掛止は、両者の傾斜によって相互に前後及び上下両方向に掛止されるものであるから、その傾斜をどのように設定するかは、設計事項といえる。
そして、刊行物には、「耐震用止めネジ14を螺進させ、その先端14aで受座13を壁11側へ押圧する」と、「フツク4と受座13は掛止方向により強力に圧着されることになり、上記掛止を更に堅固とすることができ、振動等によつても外れ難く優れた耐震性を有する効果がある。」との記載がある。
そうすると、刊行物の上記記載を参酌して、引用発明の両掛止面4c,13cの傾斜を設定し、「偶発的な」外れを防止するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明による効果は、引用発明から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。

したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることが出来ない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をするべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-03 
結審通知日 2015-09-07 
審決日 2015-09-18 
出願番号 特願2012-506355(P2012-506355)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 莊司 英史  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
大内 俊彦
発明の名称 壁掛け型カップボード用外れ止めシステム  
代理人 弟子丸 健  
代理人 松下 満  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 井野 砂里  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 辻居 幸一  

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