• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1310538
審判番号 不服2014-26540  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-25 
確定日 2016-02-23 
事件の表示 特願2012-145106「画像表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月20日出願公開、特開2014- 10531、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月28日の出願であって、平成25年6月25日付けで拒絶理由が通知され、平成25年8月23日付けで手続補正がされ、平成26年2月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年4月14日付けで手続補正がされ、同手続補正が平成26年9月30日付けで却下されるとともに同日付で拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、これに対し、平成26年12月25日に本件審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成27年9月24日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、平成27年11月30日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-2に係る発明は、平成27年11月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1-2に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え、
前記通信手段が、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信したことを受けて、前記制御手段は前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを表示させ、
前記制御手段は、前記外部装置において所定時間操作がなされなかったと判定すると、前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを消去させ、
前記画像表示装置は、
前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信してから、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信しない状態の経過時間を、前記外部装置毎に、前記所定時間が経過するまで計測するタイマ手段と、
前記通信手段により前記外部装置から受信された、前記表示手段に表示されるカーソルの位置情報を記憶する記憶手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記タイマ手段により計測される前記外部装置毎の前記経過時間に応じて、前記外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの前記位置情報を維持したまま変化させ、
前記制御手段は、前記外部装置毎の前記経過時間に応じて前記カーソルの前記属性を、表示されている前記カーソルの前記位置情報を維持したまま変化させる処理を繰返し実行中に、外部装置が当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたことを表すデータを受信したことを受けて、当該外部装置のカーソルの前記属性を、前記カーソルの前記位置情報を維持したまま、前記処理が実行される前の状態に戻し、
前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定することを特徴とする画像表示システム。

【請求項2】
画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ、
前記外部装置に対応するカーソルが通常状態で表示されているときに、当該外部装置が所定の操作を受けたことを表すデータを、前記通信手段が受信したことを受けて、前記制御手段は、当該外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させ、
前記所定の操作は、前記外部装置の傾きを変化させる操作であり、
前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定することを特徴とする画像表示システム。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
理由(イ)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由(ロ)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由(イ)及び(ロ)について:
請求項 3 (当審注:補正前の「請求項3」は、補正後の「請求項2」に対応する。)
引用文献等 A (当審注:当審拒絶理由での引用文献の番号と区別するために、以下、「引用文献1-3」を、それぞれ、「引用文献A-C」と書き換えて表記した。)
備考:
引用文献A(特に【0024】乃至【0033】、【0094】乃至【0111】等を参照)には、表示部と、通信部とを備えた画像表示装置であって、演算部を備え、演算部は通信部を介して入力装置から受信した信号に基づき、所定の動作を実行するものであり、入力装置の角速度センサー及び加速度センサーにより、角速度や加速度の絶対値と基準値に基づいて入力装置が動いたと判定されると、演算部中の表示制御部は、消去されていたポインタを表示する画像表示装置、が記載されている。
ところで引用文献Aでは、角速度の絶対値を用いて入力装置が動いたことを判定していることから、引用文献Aに記載された発明は入力装置の傾きの変化を判定しているものである。
また引用文献Aでは、ポインタの消去及び再表示を行っているが、これはポインタの表示に関する属性の変化の一つに他ならない。

理由(ロ)について:

・・・(中略)・・・

請求項 1-6
引用文献等 A-C
備考:
引用文献B(特に【0024】乃至【0046】、【0069】乃至【0079】等を参照)には、表示装置とコントローラとを備えた情報処理システムであって、情報処理装置を備え、コントローラが操作されると対応するポインタが表示され、一定時間コントローラの操作が行われなかった場合は対応するポインタが消去される情報処理システム、が記載されている。
ところで引用文献Bでは、ポインタの消去及び再表示を行っているが、これはポインタの表示に関する属性の変化の一つに他ならない。なお、ポインタの表示に関する属性を複数段階で変更することは、例えば引用文献C(特に【0046】等)に記載されているように周知である。
また、入力装置の傾き又は位置の変化が検出された場合に、ポインタを利用可能な表示状態に戻す技術は周知である(例えば、引用文献A(特に【0094】乃至【0111】等)を参照)から、係る周知技術を引用文献Bに記載された発明に適用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

引 用 文 献 等 一 覧
A.特開2010-165285号公報
B.特開2011-227628号公報
C.特開2000-222162号公報


2.原査定の理由の判断
(1) 各引用文献の記載事項と、引用発明A、引用発明B
ア 引用文献Aの記載事項と引用発明A
引用文献A(特開2010-165285号公報)には、以下の記載がある(下線は当審において付与。以下同様。)。
(ア) 段落【0024】-【0033】
「【0024】
<1.第1の実施の形態>
[システムの構成]
【0025】
図1は、本発明の情報処理システムの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0026】
この情報処理システム1は、情報処理装置としての画像表示装置12と、それを遠隔制御するポインティングデバイスあるいはリモートコントローラとしての入力装置11とにより構成されている。
【0027】
入力装置11は、加速度センサー31、角速度センサー32、方向ボタン33、決定ボタン34、ドラッグボタン35、演算部36、通信部37、およびアンテナ38を有している。
【0028】
入力装置11はいわゆる空中リモートコントローラを構成する。加速度センサー31と角速度センサー32は、入力装置11が3次元空間で任意の方向に操作された場合、入力装置11の加速度と角速度を検出する。
【0029】
方向ボタン33は、アップボタン33U、ダウンボタン33D、レフトボタン33L、およびライトボタン33Rにより構成される。これらのボタンは、それぞれ対象画像としてのポインタを上、下、左、または右方向に移動させる場合にユーザーにより操作される。方向ボタン33の中央には、決定ボタン34が配置されている。決定ボタン34は選択を確定するとき操作される。
【0030】
ドラッグボタン35は、可動オブジェクトをドラッグするとき操作される。すなわち、可動オブジェクトを所定の方向にドラッグする場合、ポインタを可動オブジェクト上に配置した状態で、ドラッグボタン35を押圧しながら、入力装置11が自由空間でドラッグする方向に操作される。
【0031】
例えばマイクロプロセッサなどよりなる演算部36は、加速度センサー31、角速度センサー32、方向ボタン33、決定ボタン34、およびドラッグボタン35の操作結果を検出する。検出結果に対応するコマンド等の信号は、通信部37により増幅、変調され、アンテナ38を介して、電波で画像表示装置12に送信される。
【0032】
例えばテレビジョン受像機からなる画像表示装置12は、アンテナ51、通信部52、演算部53、および表示部54を有している。
【0033】
アンテナ51は、入力装置11からの電波を受信する。通信部52は、アンテナ51を介して受信した信号を増幅、復調する。例えばマイクロプロセッサなどよりなる演算部53は、通信部52からの信号に基づき、所定の動作を実行する。表示部54は画像を表示する。なお、図示は省略されているが、画像表示装置12は、テレビジョン放送を受信し、画像を表示部54に表示する機能も有している。」

(イ) 段落【0069】-【0085】
「【0069】
[画像表示装置の表示制御処理1]
【0070】
以上のように、入力装置11から信号が送信されると、画像表示装置12はその信号に対応する処理を実行する。この画像表示装置12が実行する処理の例として、ポインタ91の表示位置を、方向ボタン33の操作により制御する場合の処理を説明する。
【0071】
図12は、表示制御処理を説明するフローチャートである。この処理は、入力装置11から信号を受信した画像表示装置12が、その信号に対応して実行する
【0072】
ステップS51において受信部121は、ポインタ移動量とコマンドを受信する。このポインタ移動量とコマンドは、図8のステップS17において、入力装置11から送信されたものである。
【0073】
ステップS52において判定部123は、決定ボタンが操作されたかを判定する。決定ボタン34が操作された場合、ステップS53において実行部124は、受信したコマンドに対応する処理を実行する。その後、処理は終了する。
【0074】
ステップS52において決定ボタン34が操作されていないと判定された場合、ステップS54において判定部123は、方向ボタンが操作されたかを判定する。方向ボタン33が操作されていない場合、ステップS55において表示制御部122は、ポインタの表示を制御する。すなわち表示制御部122は入力装置11から受信したポインタ移動量に基づいて、ポインタ91の位置を演算する。例えばポインタ位置(X(t),Y(t))は、ポインタ移動量(ΔX,ΔY)から、次式に基づいて演算される。
【0075】
(X(t),Y(t))=(X(t)+ΔX,Y(t)+ΔY) (4)
【0076】
そして、表示制御部122は、演算された位置にポインタ91を表示する。これにより、ユーザーの3次元空間における入力装置11の操作に対応する位置にポインタ91が表示される。その後、処理はステップS51に戻る。
【0077】
ステップS54で方向ボタン33が操作されたと判定された場合、ステップS56において判定部123は、モードはいずれの状態であるかを判定する。モードはユーザーの指示に基づいて、モード1またはモード2に予め設定されている。あるいは、ユーザーがその都度選択するようにすることもできる。
【0078】
モード1が設定されている場合、ステップS57において表示制御部122は、方向ボタンの指示方向にポインタを移動する。すなわち、入力装置11が、自由空間で操作された状態で、方向ボタン33が操作された場合、表示制御部122は、自由空間で操作された方向のうち、操作された方向ボタン33が対応する方向の成分のみを有効とする。つまり、表示制御部122は、本体41が自由空間で操作された状態で、方向ボタン33が操作された場合、方向ボタン33の操作後の自由空間での操作量のうち、方向ボタン33の方向の成分に対応する分だけ対象画像を直線的に移動するように制御する機能を有する。換言すれば、方向ボタン33により指示された方向以外の方向への移動は制限され、方向ボタン33により指示された方向にのみ移動可能なように、ポインタ91の移動が規制される。

・・・(中略)・・・

【0085】
ステップS56においてモード2が設定されていると判定された場合、ステップS58において表示制御部122は、方向ボタンの指示方向の、最も近い選択オブジェクト上にポインタを移動する。モード2が設定されている場合、本体41の3次元空間における操作は無視される。具体的には、加速度センサー31と角速度センサー32により検出された加速度と角速度は無視される。」

(ウ) 段落【0094】-【0111】
「【0094】
[画像表示装置の表示制御処理2]
【0095】
図18は、他の表示制御処理を説明するフローチャートである。この処理も、入力装置11から信号を受信した画像表示装置12が、その信号に対応して実行する。
【0096】
図18のステップS101乃至ステップS103、ステップS105乃至ステップS109の処理は、図12のステップS51乃至ステップS58の処理と同様の処理である。図19の実施の形態においては、図12のステップS52とステップS54に対応するステップS102とステップS105の間に、ステップS104の判定処理が挿入されている。
【0097】
ステップS104では、ポインタが一定時間静止しているかが判定部123により判定される。ポインタ91が予め設定されている一定の時間静止していない場合、すなわち移動している場合、処理はステップS105に進み、図12における場合と同様の処理が実行される。その説明は繰り返しになるので省略する。
【0098】
ステップS104においてポインタ91が一定時間静止していると判定された場合、ステップS110において表示制御部122は、ポインタを消去する。
【0099】
図19は、ポインタが消去された状態を示す図である。この図19に示されるように、いままで表示されていたポインタ91が消去される。例えばユーザーが入力装置11をテーブル上に載置したまま、一定時間が経過すると、このようにポインタ91が消去される。これにより、非使用状態にポインタ91が無駄に表示され、本来の画像が見難くなるようなことが防止される。
【0100】
ステップS111において判定部123は、入力装置11が動いたかを判定する。例えば検出された角速度や加速度の絶対値が、予め設定されている基準値より大きい場合、入力装置11は動いたと判定される。
【0101】
入力装置11が動いていない場合、ステップS112において判定部123は、入力装置11のボタンが操作されたかを判定する。ボタンが操作されていない場合、処理はステップS111に戻り、それ以降の処理が繰り返される。すなわち、入力装置11がユーザーにより実質的に使用されるまで、ステップS111とステップS112の処理が繰り返される。
【0102】
なお、ステップS111とステップS112の処理が繰り返される時間が、予め設定された所定の時間に達したとき、処理を終了させるようにしてもよい。これにより電池73の消耗を抑制することができる。
【0103】
ステップS111で入力装置11が動いたと判定された場合、およびステップS112においてボタンが操作されたと判定された場合、入力装置11がユーザーにより実質的に使用されたと判断される。そこで、ステップS113において判定部123は、ステートはいずれの状態であるかを判定する。ステートはユーザーによりステート1またはステート2のいずれかに、予め設定されている。
【0104】
ステート1が設定されている場合、ステップS114において設定部125は、ポインタの位置を画面の中央に設定する。そしてステップS116において表示制御部122は、設定された位置に、ポインタを表示する。
【0105】
以上のように、ポインタ91が図19に示されるように表示されていない状態において、入力装置11が動くか、ボタンが操作された場合、ポインタ91が初期表示位置に表示される。
【0106】
図20は、ステート1の場合のポインタの初期表示位置を示す図である。同図に示されるように、ステート1が設定されている場合、ポインタ91は表示部54のほぼ中央に表示される。図20の例においては、ポインタ91は、その先端が、表示部54の中央の点221に位置するように表示されている。
【0107】
これに対してステップ113において、ステート2が設定されていると判定された場合、ステップS115において設定部125は、ポインタの位置を特定オブジェクトの位置に設定する。そしてステップS116において表示制御部122は、設定された位置に、ポインタを表示する。
【0108】
図21は、ステート2の場合のポインタの初期表示位置を示す図である。同図に示されるように、ステート2が設定されている場合、ポインタ91が特定オブジェクトとしての選択オブジェクト201上に表示される。
【0109】
このようにポインタ91の初期表示位置が、常にユーザーの指定する特定の位置に固定されるので、ユーザーはポインタ91の位置を速やかに発見することができ、その後のユーザーの操作が容易となる。
【0110】
[変形例]
【0111】
以上においては、入力装置11により遠隔操作される画像表示装置12は、テレビジョン受像機としたが、パーソナルコンピュータ、その他の情報処理装置とすることができる。」

そうすると、引用文献Aには、以下の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。

「情報処理システム1は、情報処理装置としての画像表示装置12と、それを遠隔制御するポインティングデバイスあるいはリモートコントローラとしての入力装置11とにより構成され、
入力装置11はいわゆる空中リモートコントローラを構成し、加速度センサー31、角速度センサー32、方向ボタン33、決定ボタン34、およびドラッグボタン35の操作結果を検出し、検出結果に対応するコマンド等の信号は、通信部37により増幅、変調され、アンテナ38を介して、電波で画像表示装置12に送信され、
画像表示装置12は、アンテナ51、通信部52、演算部53、および表示部54を有し、
入力装置11から信号が送信されると、画像表示装置12はその信号に対応する処理を実行し、ポインタ91の表示位置を、方向ボタン33の操作により制御する場合の処理において、
受信部121は、ポインタ移動量とコマンドを受信し、
判定部123は、決定ボタンが操作されたかを判定し、
決定ボタン34が操作された場合、実行部124は、受信したコマンドに対応する処理を実行し、
決定ボタン34が操作されていないと判定された場合、判定部123は、方向ボタンが操作されたかを判定し、
方向ボタン33が操作されていない場合、表示制御部122は、ポインタの表示を制御し、すなわち表示制御部122は入力装置11から受信したポインタ移動量に基づいて、ポインタ91の位置を演算し、そして、表示制御部122は、演算された位置にポインタ91を表示し、
方向ボタン33が操作されたと判定された場合、判定部123は、モードはいずれの状態であるかを判定し、モード1が設定されている場合、方向ボタンの指示方向にポインタを移動し、モード2が設定されていると判定された場合、方向ボタンの指示方向の、最も近い選択オブジェクト上にポインタを移動し、
ステップS104では、ポインタが一定時間静止しているかが判定部123により判定され、ポインタ91が一定時間静止していると判定された場合、ステップS110において表示制御部122は、ポインタを消去し、
ステップS111において判定部123は、入力装置11が動いたかを判定し、検出された角速度や加速度の絶対値が、予め設定されている基準値より大きい場合、入力装置11は動いたと判定され、
入力装置11が動いていない場合、ステップS112において判定部123は、入力装置11のボタンが操作されたかを判定し、
ステップS111で入力装置11が動いたと判定された場合、およびステップS112においてボタンが操作されたと判定された場合、入力装置11がユーザーにより実質的に使用されたと判断され、ステップS113において判定部123は、ステートはいずれの状態であるかを判定し、ステートはユーザーによりステート1またはステート2のいずれかに、予め設定され、
ステート1が設定されている場合、ステップS114において設定部125は、ポインタの位置を画面の中央に設定し、そしてステップS116において表示制御部122は、設定された位置に、ポインタを表示し、ポインタ91が表示されていない状態において、入力装置11が動くか、ボタンが操作された場合、ポインタ91が初期表示位置に表示され、
ステート2が設定されていると判定された場合、ステップS115において設定部125は、ポインタの位置を特定オブジェクトの位置に設定し、そしてステップS116において表示制御部122は、設定された位置に、ポインタを表示し、
ポインタ91の初期表示位置が、常にユーザーの指定する特定の位置に固定されるので、ユーザーはポインタ91の位置を速やかに発見することができ、その後のユーザーの操作が容易となる、情報処理システム1。」

イ 引用文献Bの記載事項と引用発明B
引用文献B(特開2011-227628号公報)には、以下の記載がある。
(ア) 段落【0024】-【0046】
「【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報処理システムの構成を示す模式的な図である。
【0025】
情報処理システム100は、複数のユーザ1が共有して見るための画像2を表示する表示装置3と、各ユーザ1により用いられる入力装置であるコントローラ4と、上記表示装置3及び複数のコントローラ4と無線又は有線で接続される情報処理装置とを含む。
【0026】
[情報処理装置の構成]
図2は、本実施形態に係る情報処理装置としてのPC(Personal Computer)5の構成を示すブロック図である。情報処理装置として、PC5の代わりにオーディオ/ビジュアル機器やプロジェクト等が用いられてもよい。
【0027】
PC5は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、入出力インタフェース55、及び、これらを互いに接続するバス54を備える。
【0028】
入出力インタフェース55には、上記した表示装置3及び複数のコントローラ4が接続される。また、入出力インタフェース55には、記憶部58、通信部59、ドライブ部60等が接続される。
【0029】
記憶部58は、不揮発性の記憶デバイスであり、例えばHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、その他の固体メモリである。
【0030】
ドライブ部60は、例えば光学記録媒体、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気記録テープ、フラッシュメモリ等、リムーバブルの記録媒体61を駆動することが可能なデバイスである。これに対し上記記憶部58は、主にリムーバブルでない記録媒体を駆動する、PC5に予め搭載されたデバイスとして使用される場合が多い。
【0031】
通信部59は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等に接続可能な、他のデバイスと通信するためのモデム、ルータ、その他の通信機器である。通信部59は、有線及び無線のどちらを利用して通信するものであってもよい。通信部59は、PC5とは別体で使用される場合が多い。
【0032】
表示装置3は、例えば液晶、EL(Electro-Luminescence)、CRT(Cathode Ray Tube)等が用いられた画面6を有する。本実施形態では、光学顕微鏡により得られた観察対象物の画像が画面6に表示される。画像2は、PC5の記憶部58に記憶されており、以下に示す表示原理に基づいて表示される。

・・・(中略)・・・

【0042】
また図1に示すように、画面6には、アイコン7やポインタ8等のGUI(Graphical User Interface)が表示される。アイコンとは、CPU51により実行されるプログラムの機能、実行コマンド、またはファイルの内容等が画面6上で画像化されたものである。ポインタ8(いわゆるカーソル)は、入力装置を使ってユーザが指定した画面6上の位置を示すオブジェクトである。
【0043】
本実施形態では、1つのPC5による画像処理系および画像表示系のリソースを複数のユーザで共有するために複数のコントローラ4がPC5に接続される。それぞれのコントローラ4で指定された画面6上の位置には、それぞれのコントローラ4に対応する複数のポインタ8が同時に表示される。すなわち、複数のユーザが1つの画像上で所定の部位をポインタ8で指定しつつ、各々の意見を述べることができる環境がここにある。
【0044】
図1の例では、4つのコントローラ4a?4dに対応する4つのポインタ8a?8dが画面6に表示される。各ポインタ8は、他のポインタと識別可能なように、例えば赤、青、黄、緑等の色により区別されて表示されてもよい。以後、このように複数のコントローラ4に対応する複数のポインタ8が同時に表示され、複数のユーザ1によって用いられる画面であるということから、この画面6を「共有画面6」と呼ぶこととする。また「共有画面6」に表示される画像2を「共有画像2」と呼ぶこととする。
【0045】
コントローラ4は、十字キー41と、決定ボタン42と、LRボタン43と、選択ボタン44とを有し、各ユーザ1からの操作入力をPC5に供給する。十字キー41は、主に上記ポインタ8の移動及び共有画面6に表示される共有画像2の移動に用いられる。決定ボタン42は、コマンドの決定に用いられる。例えば十字キー41を用いてポインタ8をアイコン7上に移動させ、決定ボタン42を押すと所定のコマンドが実行される。LRボタン43は、共有画像2の拡大縮小に用いられる。選択ボタン44は、後述する操作権の移動に用いられる。
【0046】
コントローラ4の形状や、各種ボタンの位置、役割等は適宜設定されてよい。また、コントローラ4に代えて、マウス等のポインティングデバイスやタッチパネル、キーボード等が用いられてもよい。」

(イ) 段落【0069】-【0079】
「【0069】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る情報処理装置としてのPCについて説明する。これ以降の説明では、第1の実施形態で説明した情報処理システム100に用いられる各種の装置やその装置の処理等と同様なものについては、その説明を省略又は簡略化する。
【0070】
図9は、本実施形態に係るPCによる操作ポインタ211及び位置ポインタ216の表示について説明するための図である。図9に示すように、本実施形態では、ユーザにより一定時間操作が行われない位置コントローラに対応する位置ポインタ216が、共有画面6から消去される。これにより、共有画面6上の共有画像2を複数のユーザで観察する際に、操作されない位置ポインタ216が邪魔になることがない。なお、図9では、3つの位置ポインタ216が全て消去されているが、位置ポインタ216ごとに以下で示す処理が行われる。
【0071】
図10は、PCにより位置ポインタ216が消去される処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係るPCでは、定期的にカウンターを増分し、一定値を越えるとタイムアップ情報を出力するウォッチドッグタイマを機能として有する(ステップ201)。CPUは、タイムアップ情報が出力される前に、定期的にウォッチドックタイマのカウンターをクリアする。
【0072】
ウォッチドッグタイマがカウンターを増分するごとに、予め設定されていたタイマ値がデクリメントされる。(ステップ202)。このタイマ値により、位置ポインタ216が消去されるための条件となる、位置ポインタ216が操作されない時間の長さが設定される。タイマ値は、ウォッチドッグタイマのカウントの間隔の長さに基づいて定められればよい。
【0073】
位置ポインタ216が操作されない状態で、位置ポインタ216が消去される条件として設定された時間が経過したか否かが判定される(ステップ203)。ステップ202にてタイマ値がデクリメントされた結果、タイマ値が0になった場合、設定時間が経過したと判定される。タイマ値が0とならない場合、未だ設定時間が経過していないと判定される。
【0074】
未だ設定時間が経過していないと判定された場合(ステップ203のNo)、CPUによりウォッチドッグタイマのカウンターがクリアされ、再びウォッチドッグタイマのカウントに基づいて同様の処理が行われる。設定時間が経過したと判定された場合(ステップ203のYes)、共有画面6から位置ポインタ216が消去され、ウォッチドッグタイマのカウンターがクリアされる(ステップ204)。
【0075】
図11は、消去された位置ポインタ216が再び共有画面6に表示される場合の、PCの処理の一例を示すフローチャートである。ステップ211に示すように、PCにより本実施形態に係る入力デバイスである各コントローラが監視される。PCによる各コントローラの監視は、他の処理のために行われる工程を利用してもよい。
【0076】
監視対象のコントローラにより操作されるポインタが位置ポインタ216であるか否かが判定される(ステップ212)。監視対象のコントローラにより操作されるポインタが位置ポインタ216でないと判定された場合(ステップ212のNo)、ポインタ消去の処理は行われない。位置ポインタ216でない操作ポインタ211は、操作権を有する操作コントローラにより制御され、操作ポインタ211が制御されることで共有画像2に対する各種の操作がPCにより実行される。従って、操作ポインタ211は消去されなくてもよい。
【0077】
監視対象のコントローラにより操作されるポインタが位置ポインタ216であると判定された場合(ステップ212のYes)、その位置ポインタ216が位置コントローラを介して操作されたか否かが判定される(ステップ213)。位置ポインタ216が操作されていないと判定された場合(ステップ213のNo)、ステップ211の各コントローラの監視に戻る。
【0078】
位置ポインタ216が操作されたと判定された場合、(ステップ213のYes)、現在、位置ポインタ216が共有画面6に表示されているか否かが判定される(ステップ214)。位置ポインタ216が共有画面6に表示されていると判定された場合(ステップ214のYes)、図10に示すステップ202で説明したタイマ値が設定される(ステップ215)。位置ポインタ216が共有画面6に表示されていない場合(ステップ214のNo)、共有画面6に位置ポインタ216が表示され(ステップ216)、タイマ値
が設定される。
【0079】
ステップ216において、位置ポインタ216を再び表示させる場合には、前に位置ポインタ216が消去された共有画面6上の位置を記憶しておき、その位置から位置ポインタ216を再表示させてもよい。あるいは、共有画面6の中央等所定の位置から位置ポインタ216を再表示させてもよいし、現在表示中の操作ポインタ211と同じ位置から表示させてもよい。この場合、位置ポインタ216の非表示期間が長かった場合には、どこにその位置ポインタ216があったかをユーザが忘れてしまうため、現在表示されている操作ポインタ211の位置から再表示させることは有効である。」

そうすると、引用文献Bには、以下の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されている。

「情報処理システム100は、複数のユーザ1が共有して見るための画像2を表示する表示装置3と、各ユーザ1により用いられる入力装置であるコントローラ4と、上記表示装置3及び複数のコントローラ4と無線又は有線で接続される情報処理装置とを含み、
PC5は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、入出力インタフェース55、及び、これらを互いに接続するバス54を備え、入出力インタフェース55には、上記した表示装置3及び複数のコントローラ4が接続され、
画面6には、アイコン7やポインタ8等のGUI(Graphical User Interface)が表示され、ポインタ8(いわゆるカーソル)は、入力装置を使ってユーザが指定した画面6上の位置を示すオブジェクトであり、4つのコントローラ4a?4dに対応する4つのポインタ8a?8dが画面6に表示され、
コントローラ4は、十字キー41と、決定ボタン42と、LRボタン43と、選択ボタン44とを有し、各ユーザ1からの操作入力をPC5に供給し、十字キー41は、主に上記ポインタ8の移動及び共有画面6に表示される共有画像2の移動に用いられ、

PCにより位置ポインタ216が消去される処理において、
PCは、定期的にカウンターを増分し、一定値を越えるとタイムアップ情報を出力するウォッチドッグタイマを機能として有し(ステップ201)、
位置ポインタ216が操作されない状態で、位置ポインタ216が消去される条件として設定された時間が経過したか否かが判定され(ステップ203)、ステップ202にてタイマ値がデクリメントされた結果、タイマ値が0になった場合、設定時間が経過したと判定され、
設定時間が経過したと判定された場合(ステップ203のYes)、共有画面6から位置ポインタ216が消去され、ウォッチドッグタイマのカウンターがクリアされ(ステップ204)、

消去された位置ポインタ216が再び共有画面6に表示される場合の、PCの処理において、
位置ポインタ216が位置コントローラを介して操作されたか否かが判定され(ステップ213)、
位置ポインタ216が操作されたと判定された場合、(ステップ213のYes)、現在、位置ポインタ216が共有画面6に表示されているか否かが判定され(ステップ214)、
位置ポインタ216が共有画面6に表示されていない場合(ステップ214のNo)、共有画面6に位置ポインタ216が表示され(ステップ216)、タイマ値が設定され、
ステップ216において、位置ポインタ216を再び表示させる場合には、前に位置ポインタ216が消去された共有画面6上の位置を記憶しておき、その位置から位置ポインタ216を再表示させてもよく、あるいは、共有画面6の中央等所定の位置から位置ポインタ216を再表示させてもよいし、現在表示中の操作ポインタ211と同じ位置から表示させてもよい、情報処理システム100。」

(2) 「本願発明2」と「引用発明A」との対比、判断
ア 対比
本願発明2と引用発明Aとを対比する。

(ア) 引用発明Aの「画像表示装置12」と「入力装置11」とを含む「情報処理システム1」は、本願発明2の「画像表示装置」と「外部装置」とを含む「画像表示システム」に相当する。
よって、引用発明Aの「情報処理システム1は、情報処理装置としての画像表示装置12と、それを遠隔制御するポインティングデバイスあるいはリモートコントローラとしての入力装置11とにより構成され」、「画像表示装置12は、…通信部52、演算部53、および表示部54を有し」ていることは、本願発明2の「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって」、「前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え」ることに相当する。

(イ) 引用発明Aの「入力装置11から信号が送信されると、画像表示装置12はその信号に対応する処理を実行し、ポインタ91の表示位置を、方向ボタン33の操作により制御する場合の処理において、受信部121は、ポインタ移動量とコマンドを受信し、・・・(中略)・・・方向ボタン33が操作されたと判定された場合、判定部123は、モードはいずれの状態であるかを判定し、モード1が設定されている場合、方向ボタンの指示方向にポインタを移動し、モード2が設定されていると判定された場合、方向ボタンの指示方向の、最も近い選択オブジェクト上にポインタを移動」することは、本願発明2の「前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ」ることに相当する。

したがって、本願発明2と引用発明Aとの一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ、
ることを特徴とする画像表示システム。」

<相違点>
本願発明2は、「前記外部装置に対応するカーソルが通常状態で表示されているときに、当該外部装置が所定の操作を受けたことを表すデータを、前記通信手段が受信したことを受けて、前記制御手段は、当該外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させ、前記所定の操作は、前記外部装置の傾きを変化させる操作であり、前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定する」のに対して、引用発明Aは、「入力装置11が動いたと判定された場合」、「ポインタの位置を画面の中央に設定し」て(ステート1)、又は、「ポインタの位置を特定オブジェクトの位置に設定し」て(ステート2)、「再表示」するもの、すなわち、ポインタ自体の表示、非表示を切換えるものであって、「外部装置の傾きを変化させる」場合、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソル(ポインタ)の「表示に関する属性」を変化させるものではない点。

イ 判断
本願発明2と、引用発明Aには、上記した相違点が認められるから、本願発明2は、引用文献Aに記載された発明であるとはいえない。
また、「外部装置の傾きを変化させる」場合に、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソル(ポインタ)の「表示に関する属性」を変化させることは、引用文献Aに示唆はなく、周知技術ともいえないから、引用発明Aにおいて、上記相違点に係る構成を採用することは、容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ むすび
したがって、本願発明2は、引用発明Aに記載された発明であるといえないし、引用発明Aに基づいて当業者が容易に発明することができたものであるともいえない。

(3) 「本願発明1」と「引用発明B」との対比、判断
ア 対比
本願発明1と引用発明Bとを対比する。
(ア) 引用発明Bの「表示装置3、情報処理装置」と、「コントローラ4」とを含む、「情報処理システム100」は、本願発明1の「画像表示装置」と、「外部装置」とを含む、「画像表示システム」に相当する。
よって、引用発明Bの「情報処理システム100は、複数のユーザ1が共有して見るための画像2を表示する表示装置3と、各ユーザ1により用いられる入力装置であるコントローラ4と、上記表示装置3及び複数のコントローラ4と無線又は有線で接続される情報処理装置とを含」むことは、本願発明1の「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え」ることに相当する。

(イ) 引用発明Bの「画面6には、アイコン7やポインタ8等のGUI(Graphical User Interface)が表示され、ポインタ8(いわゆるカーソル)は、入力装置を使ってユーザが指定した画面6上の位置を示すオブジェクトであり、4つのコントローラ4a?4dに対応する4つのポインタ8a?8dが画面6に表示され」ることは、本願発明1の「前記通信手段が、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信したことを受けて、前記制御手段は前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを表示させ」ることに相当する。

(ウ) 引用発明Bの「PCにより位置ポインタ216が消去される処理」であって、「PCは、定期的にカウンターを増分し、一定値を越えるとタイムアップ情報を出力するウォッチドッグタイマを機能として有し(ステップ201)、位置ポインタ216が操作されない状態で、位置ポインタ216が消去される条件として設定された時間が経過したか否かが判定され(ステップ203)、ステップ202にてタイマ値がデクリメントされた結果、タイマ値が0になった場合、設定時間が経過したと判定され、設定時間が経過したと判定された場合(ステップ203のYes)、共有画面6から位置ポインタ216が消去され」ることは、本願発明1の「前記制御手段は、前記外部装置において所定時間操作がなされなかったと判定すると、前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを消去させ」ることに相当する。

(エ) 引用発明Bの「PCは、定期的にカウンターを増分し、一定値を越えるとタイムアップ情報を出力するウォッチドッグタイマを機能として有し(ステップ201)、位置ポインタ216が操作されない状態で、位置ポインタ216が消去される条件として設定された時間が経過したか否かが判定され(ステップ203)」るとともに、「ステップ216において、位置ポインタ216を再び表示させる場合には、前に位置ポインタ216が消去された共有画面6上の位置を記憶してお」くことは、本願発明1の「前記画像表示装置は、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信してから、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信しない状態の経過時間を、前記外部装置毎に、前記所定時間が経過するまで計測するタイマ手段と、前記通信手段により前記外部装置から受信された、前記表示手段に表示されるカーソルの位置情報を記憶する記憶手段とをさらに備え」ることに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明Bとの一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え、
前記通信手段が、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信したことを受けて、前記制御手段は前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを表示させ、
前記制御手段は、前記外部装置において所定時間操作がなされなかったと判定すると、前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを消去させ、
前記画像表示装置は、
前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信してから、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信しない状態の経過時間を、前記外部装置毎に、前記所定時間が経過するまで計測するタイマ手段と、
前記通信手段により前記外部装置から受信された、前記表示手段に表示されるカーソルの位置情報を記憶する記憶手段とをさらに備え、
ることを特徴とする画像表示システム。」

<相違点>
本願発明1は、「前記制御手段は、前記タイマ手段により計測される前記外部装置毎の前記経過時間に応じて、前記外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの前記位置情報を維持したまま変化させ、前記制御手段は、前記外部装置毎の前記経過時間に応じて前記カーソルの前記属性を、表示されている前記カーソルの前記位置情報を維持したまま変化させる処理を繰返し実行中に、外部装置が当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたことを表すデータを受信したことを受けて、当該外部装置のカーソルの前記属性を、前記カーソルの前記位置情報を維持したまま、前記処理が実行される前の状態に戻し、前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定する」のに対して、引用発明Bは、そのようなものではない点。

イ 判断
<相違点>について
引用文献Cには、特に図3、段落【0035】、【0046】を参照すると、マウス、タブレット、ライトペンなどのポインティングデバイスにより、時計回りの円を描き、更に下向きの直線を記入することで、ポインターをフェードアウトさせる記載がある。よって、ポインターの表示に関する属性を複数段階で変化させる点は、周知技術であるといえる。
また、引用文献Aには、「入力装置11が動いたと判定された場合」に、「ポインタの位置を画面の中央に設定し」て(ステート1)、又は、「ポインタの位置を特定オブジェクトの位置に設定し」て(ステート2)、「再表示」すること、すなわち、ポインタ自体の表示、非表示を切換えることの開示があるといえる。
しかし、「外部装置の傾きを変化させる」場合に、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソル(ポインタ)の「表示に関する属性」を処理実行前の状態に戻すことは、各引用文献A,Cに記載も示唆もなく、周知技術ともいえないから、引用発明Bにおいて、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ むすび
したがって、本願発明1は、引用発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(4) 「本願発明2」と「引用発明B」との対比、判断
ア 対比
本願発明2と引用発明Bとを対比する。

(ア) 引用発明Bの「表示装置3、情報処理装置」と、「コントローラ4」とを含む、「情報処理システム100」は、本願発明2の「画像表示装置」と、「外部装置」とを含む、「画像表示システム」に相当する。
よって、引用発明Bの「情報処理システム100は、複数のユーザ1が共有して見るための画像2を表示する表示装置3と、各ユーザ1により用いられる入力装置であるコントローラ4と、上記表示装置3及び複数のコントローラ4と無線又は有線で接続される情報処理装置とを含」むことは、本願発明2の「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え」ることに相当する。

(イ) 引用発明Bの「画面6には、アイコン7やポインタ8等のGUI(Graphical User Interface)が表示され、ポインタ8(いわゆるカーソル)は、入力装置を使ってユーザが指定した画面6上の位置を示すオブジェクトであり、4つのコントローラ4a?4dに対応する4つのポインタ8a?8dが画面6に表示され」ることは、本願発明2の「前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ」ることに相当する。

したがって、本願発明2と引用発明Bとの一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ、
ることを特徴とする画像表示システム。」

<相違点>
本願発明2は、「前記外部装置に対応するカーソルが通常状態で表示されているときに、当該外部装置が所定の操作を受けたことを表すデータを、前記通信手段が受信したことを受けて、前記制御手段は、当該外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させ、前記所定の操作は、前記外部装置の傾きを変化させる操作であり、前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定す」るのに対して、引用発明Bは、そのようなものではない点。

イ 判断
<相違点>について
引用文献Cには、特に図3、段落【0035】、【0046】を参照すると、マウス、タブレット、ライトペンなどのポインティングデバイスにより、時計回りの円を描き、更に下向きの直線を記入することで、ポインターをフェードアウトさせる記載がある。よって、ポインターの表示に関する属性を複数段階で変化させる点は周知技術であるといえる。
また、引用文献Aには、「入力装置11が動いたと判定された場合」に、「ポインタの位置を画面の中央に設定し」て(ステート1)、又は、「ポインタの位置を特定オブジェクトの位置に設定し」て(ステート2)、「再表示」、すなわち、ポインタ自体の表示の有無を切換えることの開示があといえる。
しかし、「外部装置の傾きを変化させる」場合に、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソル(ポインタ)の「表示に関する属性」を変化させることは、各引用文献A,Cに記載も示唆もなく、周知技術ともいえないから、引用発明Bにおいて、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ むすび
したがって、本願発明2は、引用発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(5) 小括
したがって、本願発明2は、引用文献Aに記載された発明であるとはいえない。また、引用発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
また、本願発明1-2は、引用発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項:1,2
・引用文献等:1?5
・備考
(請求項1について)
引用文献1の特に段落【0024】?【0032】、【0069】?【0079】、図1、図2、図9?11を参照すると、引用文献1には、
「画像を表示する表示手段(表示装置3)、及び外部装置(コントローラ4)と通信する通信手段(通信部59)を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システム(情報処理システム100)であって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段(CPU51)を備え、
前記通信手段が、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信したことを受けて、前記制御手段は前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを表示させ(ST213YES、ST216)、
前記制御手段は、前記外部装置において所定時間操作がなされなかったと判定すると、前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを消去させ(ST203YES、ST204)、
前記画像表示装置は、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信してから、前記外部装置が操作されたことを表すデータを受信しない状態の経過時間を、前記外部装置毎に、前記所定時間が経過するまで計測するタイマ手段(ウォッチドッグタイマ)をさらに備える画像表示システム。」
の点で本願発明と一致する発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

本願発明と引用発明1は次の点で相違する。

[相違点]本願発明では「前記制御手段は、前記タイマ手段により計測される前記外部装置毎の前記経過時間に応じて、前記外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させ、
前記制御手段は、前記外部装置毎の前記経過時間に応じて前記カーソルの前記属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させる処理を繰返し実行中に、外部装置が当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたことを表すデータを受信したことを受けて、当該外部装置のカーソルの前記属性を、前記処理が実行される前の状態に戻し、
前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定する」とされているのに対し、引用発明1ではそのようにされていない点。

[相違点]について
引用文献2の第3頁左上欄15行?右上欄13行、第3図にも示されているように、カーソルの濃度を時間経過に応じて淡くし、マウスを再操作するとカーソルの濃度を元に戻すことは周知技術であり、この技術を引用発明1に適用できない理由はない。
また、引用文献3、4にも示されているように、外部装置の重力に対する向きを決定することにより外部装置の傾きを検出し、検出した外部装置の傾きでカーソルを移動させることは周知技術であり、この技術を引用発明1に適用できない理由はない。
したがって、引用発明1に、上記引用文献2?4記載の技術を適用し、引用発明1を、上記相違点1に係る本願発明の構成を具備するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。


(請求項2について(その1))
引用文献2の特に第2頁左下欄7行?第3頁右下欄12行、第2図、第3図を参照すると、引用文献2には、
「画像を表示する表示手段(CRT1)、及び外部装置(情報入力用マウス7)と通信する通信手段(マウスインターフェース6)を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段(表示制御回路8)を備え、
前記制御手段は、前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを表示させ(カーソルをやや淡く表示、カーソルをさらに淡く表示(第3図))、
前記通信手段が、前記外部装置が所定の操作を受けたことを表すデータを受信したことを受けて、前記制御手段は、当該外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させ(PD座標更新Y、カーソルを濃く表示(第3図))、
前記所定の操作は、前記外部装置を変化させる(マウスのボールを回転させる)操作である画像表示システム。」
の点で本願発明と一致する発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。

本願発明と引用発明2は次の点で相違する。

[相違点]本願発明では「前記所定の操作は、前記外部装置の傾きを変化させる操作であり、
前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定する」とされているのに対し、引用発明2ではそのようにされていない点。

[相違点]について
引用文献3、4にも示されているように、外部装置の重力に対する向きを決定することにより外部装置の傾きを検出し、検出した外部装置の傾きでカーソルを移動させることは周知技術であり、この技術を引用発明2に適用できない理由はない。
したがって、引用発明2に、上記引用文献3、4記載の技術を適用し、引用発明2を、上記相違点に係る本願発明の構成を具備するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。


(請求項2について(その2))
引用文献5の特に段落【0030】?【0046】、【0079】?【0082】、図1、図2、図9、図10を参照すると、引用文献5には、
「画像を表示する表示手段(表示部13)、及び外部装置(端末装置5a,5b,5n)と通信する通信手段(作業情報管理部11)を備えた画像表示装置(大型表示装置3)と、前記外部装置とを含む画像表示システム(共有情報表示システム1)であって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段(表示態様変化部21)を備え、
前記制御手段は、前記表示手段に、当該外部装置に対応するカーソルを表示させ(段落【0080】、図10)、
前記通信手段が、前記外部装置が所定の操作を受けたことを表すデータを受信したことを受けて、前記制御手段は、当該外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させる(段落【0082】、図11)画像表示システム。」
の点で本願発明と一致する発明(以下、「引用発明3」という。)が開示されていると認められる。

本願発明と引用発明3は次の点で相違する。

[相違点]本願発明では「前記所定の操作は、前記外部装置の傾きを変化させる操作であり、
前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定する」とされているのに対し、引用発明3ではそのようにされていない点。

[相違点]について
引用文献3、4にも示されているように、外部装置の重力に対する向きを決定することにより外部装置の傾きを検出し、検出した外部装置の傾きでカーソルを移動させることは周知技術であり、この技術を引用発明2に適用できない理由はない。
したがって、引用発明3に、上記引用文献3、4記載の技術を適用し、引用発明3を、上記相違点に係る本願発明の構成を具備するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2011-227628号公報
2.特開昭63-282524号公報
3.特開2012-64069号公報
4.特開2008-152751号公報
5.特開2010-170354号公報


2.当審拒絶理由の判断
(1) 各引用文献の記載事項と、引用発明1(引用発明B)、引用発明2、引用発明3
ア 引用文献1(引用文献B)の記載事項と引用発明1(引用発明B)
引用文献1(引用文献B。特開2011-227628号公報 )には、上記第3、2(1)イのとおりの、引用発明1(引用発明B)が記載されている。

イ 引用文献2の記載事項と引用発明2
引用文献2(特開昭63-282524号公報)には、以下の記載がある。
(ア) 2ページ左下欄7行-3ページ右下欄12行
「〔実施例〕
以下、この発明の情報処理装置のカーソル表示装置を図示の実施例に基づいて説明する。
第1図は本発明の情報処理装置のカーソル表示装置の表示画面を示す概念図であり、第2図は本発明のカーソル表示装置のブロック構成図、第3図は本発明のカーソル表示装置の動作を示すフローチャートである。
第2図に示すように、マイクロコンピュータ等からなるCPU3のバスラインにはこのカーソル表示装置の全体の動作を司っているシステムROM4やシステムRAM5が接続されている。
上記バスラインには情報入力用のマウス7を接続するためのマウスインターフェース6が接続されており、さらにビットマップ方式のメモリ素子からなる表示メモリ9とが接続され、CRTに表示される文字等は表示制御回路8からの制御信号により制御される。この表示メモリ9はデジタル/アナログコンバータ10を介して図示しないCRTに接続されている。
そして、上記マウス7の裏面側に回転自在なボールが取付けられ、このボールの回転によりCRT上における座標更新がされる。即ち、停止していたマウス7がオペレータにより操作されるとボールが回転し、座標更新がなされる。
更に、上記CPU3のバスラインには一定時間毎に割り込み信号を発生する割り込みコントローラ11が接続されており、この割り込みコントローラ11にはオペレータがカーソルの表示している時間幅を任意に設定することが可能なタイマー12が接続されている。
次に、このように構成されているカーソル表示装置の動作を第1?3図によって説明する。
オペレータがワープロ等のCRT1に向かって、丸や三角等の図形データをマウス7を用いて入力していく。
この時には、上記CRT1の上には濃い矢印で示されるカーソル2(2a)が表示されている(第1図(a)参照)。
この濃いカーソルの場合には、オペレータがマウス7を絶えず使って図形情報を入力している場合であって、この時にはオペレータがカーソルを見ながら必要なデータを入力しているのでカーソル表示そのものは目障りになることはない。
ところが、オペレータが一連の図形情報の入力が終了したとすると、この場合には再び図示しないキーボードから文字や数字等のデータを入力することとなる。
そして、第3図に示すように、カーソルが濃く表示された状態で、オペレータがポインティングデバイスであるマウス7を使用しないまま、例えば10秒間が所定時間として経過すると、第1図(b)に示すようにカーソル2bはやや淡く表示される。
更に、マウス7を使用しないまま10秒間経過すると第1図(c)に示すようにカーソル2cはさらに淡く表示され、以下同様にカーソルは第1図(d)に示す符号2d、第1図(e)に示す符号2eというように淡くなっていき、ついには消滅していく。
一方、第3図に示すようにカーソルを濃く表示した状態で、マウス7の更新が終了した後の数秒の間にキーボードから文字データを入力し、最初のマウスの使用の終了後から10秒以内にマウス7を再操作すると、ポインティングデバイスであるマウス7座標位置は再更新されるので、カーソルは再び濃く表示される。
以上のような動作が第2図に示すブロック図において次のように行われる。
即ち、オペレータがマウス7を操作することによりマウスのボール(図示せず)が回転し、マウスインターフェース6を介して図形データが座標情報としてCPU3に送られる。
この図形データはCPU3から表示制御回路8に送られ、この表示制御回路8においてビットマツプ方式の制御が行なわれ、この図形データは表示メモリ9に格納される。
そして、D/Aコンバータ10を介して具体的な円や曲線の図形としてCRTに表示される。
一方、オペレータが時間比較回路12に対し予め10秒間というように設定をしておくと、上記マウス7を使い始めてからの時間が監視されていて、上記10秒間が経過したとすると、時間比較回路12から所定の信号がタイムオーバー信号として発せられて、割り込みコントローラ11に送られる。
すると、この割り込みコントローラ11からCPU3に対し割り込み信号が送られるので、CPU3は表示制御回路8へ信号を送り、カーソルの表示濃度をそれまでの状態から「やや薄い状態」にする。
以上のように時間の経過を監視することにより、所定の時間が経過したなら徐々にカーソルの濃度を薄くしていけばよい。
なお、前記第3図に示したフローチャートにおいてはカーソルの濃度表示を濃い状態、淡い状態、やや淡い状態、更に淡い状態、消滅した状態の5段階を示したが、何も5段階に限る必要はないのは勿論である。
〔効果〕
本発明によれば、それまでマウス等のポインティングデバイスを使っていて、所定の時間だけ使用しない場合には徐々に薄くなって消えるようにしているので、オペレータにとってポインティングデバイスによるカーソル表示が目障りとなることがない。」

(イ) 第3図
第3図の右下付近には、「カーソルを消す」処理後、「PD(ポインティングデバイス)座標更新」の有無を判定して、もし「Yes」ならば、「時間計測ストップ」処理後、「カーソルを濃く表示」する記載があると認定できる。

そうすると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「マイクロコンピュータ等からなるCPU3のバスラインにはこのカーソル表示装置の全体の動作を司っているシステムROM4やシステムRAM5が接続され、上記バスラインには情報入力用のマウス7を接続するためのマウスインターフェース6が接続されており、さらにビットマップ方式のメモリ素子からなる表示メモリ9とが接続され、CRTに表示される文字等は表示制御回路8からの制御信号により制御され、この表示メモリ9はデジタル/アナログコンバータ10を介してCRTに接続されており、
上記マウス7の裏面側に回転自在なボールが取付けられ、このボールの回転によりCRT上における座標更新がされ、即ち、停止していたマウス7がオペレータにより操作されるとボールが回転し、座標更新がなされ、
更に、上記CPU3のバスラインには一定時間毎に割り込み信号を発生する割り込みコントローラ11が接続されており、この割り込みコントローラ11にはオペレータがカーソルの表示している時間幅を任意に設定することが可能なタイマー12が接続され、
オペレータがワープロ等のCRT1に向かって、丸や三角等の図形データをマウス7を用いて入力していく時には、上記CRT1の上には濃い矢印で示されるカーソル2(2a)が表示されており、
カーソルが濃く表示された状態で、オペレータがポインティングデバイスであるマウス7を使用しないまま、例えば10秒間が所定時間として経過すると、カーソル2bはやや淡く表示され、
更に、マウス7を使用しないまま10秒間経過するとカーソル2cはさらに淡く表示され、以下同様にカーソルは淡くなっていき、ついには消滅していき、
カーソルを消す処理後、ポインティングデバイス座標更新の有無を判定して、もし「Yes」ならば、カーソルを濃く表示する、カーソル表示装置。」

ウ 引用文献5の記載事項と引用発明3
引用文献5(特開2010-170354号公報)には、以下の記載がある。

(ア) 段落【0017】
「このような構成によれば、カーソル操作がなければ、カーソルイメージを、他ユーザのカーソル操作の邪魔にならない所定エリア(例えば、表示画面上の隅に近いエリアや、アクティブウィンドウ外のエリアなど)へ自動的に移動させることができる。」

(イ) 段落【0030】-【0046】
「【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明に係る共有情報表示装置の実施形態について詳細に説明する。図1は、共有情報表示装置が使用された共有情報表示システムの構成例を示す。
【0031】
共有情報表示システム1は、会議や共同作業において複数のユーザ(会議参加者)が同じ作業コンテンツ(例えば、会議録や、プレゼンテーション資料などの電子データ)を参照したり共同で編集したりすることができるようにするためのものであって、一つの大型表示装置3と複数の端末装置5a,5b,5nとを有し、それらが相互通信可能なように通信ネットワーク7に接続されている。
【0032】
大型表示装置3は、フラットパネルディスプレイ、電子ホワイトボード、液晶イメージプロジェクターなどのような大画面を表示できる表示装置を有し、例えば会議室などに設置されていて、会議室に居るユーザ達が一緒にその大画面に表示された情報を見ることができるようにするものである。
【0033】
各端末装置5a,5b,5nは、各ユーザが個人的に使用する携帯型または据え置き型のコンピュータ(例えば、各ユーザが会議室に持参する携帯型パーソナルコンピュータまたは携帯電話機、或いは、各ユーザが執務室内で使用するパーソナルコンピュータなど、
何でもよい)あって、そこにインストールされたプログラムを実行することで、本発明の一実施形態にかかる共有情報表示装置として機能する。
【0034】
また、大型表示装置3は、各端末装置5a,5b,5nと同様の一つの端末装置として使用可能な一つのコンピュータでもあって、そこにインストールされたプログラムを実行することで、本発明の一実施形態にかかる共有情報表示装置として機能する。
【0035】
図2は、図1に示された共有情報表示システムにおける本発明の一実施形態にかかる共有情報表示装置の機能を示す機能ブロック図である。
【0036】
大型表示装置3も各端末装置5a,5b,5nも、本発明の一実施形態にかかる共有情報表示装置として機能し、その共有情報表示装置としての機能構成は基本的に同じである。そこで、図2では、代表して、大型表示装置3がもつ共有情報表示装置としての機能構成だけが図示されている。大型表示装置3は、作業情報管理部11、表示部13、カーソル移動部15、ユーザ属性情報部17、カーソルイメージ準備部19、カーソルイメージ準備部19に付属するグルーピング部19a、表示態様変化部21、及びカーソル操作検出部23を備える。
【0037】
作業情報管理部11は、複数のユーザにより参照又は編集されることになる作業コンテンツデータと複数のユーザからのカーソル操作信号とを入力する。作業コンテンツデータの入力元は、大型表示装置3それ自体(大型表示装置3がもつ図示しない記憶装置)であってもよいし、各端末装置5a,5b,5nであってもよいし、或いは、大型表示装置3が通信可能な(図1には示されていない)任意の外部装置であってもよい。各ユーザからのカーソル操作信号の入力源は、各ユーザが使用する端末装置、例えば、端末装置5a,5b,5n及び大型表示装置3それ自体(大型表示装置3がもつカーソル操作検出部23)である。作業情報管理部11は、入力した作業コンテンツデータを表示部13に送り、また、入力した各ユーザのカーソル操作信号をカーソル移動部15及び表示態様変化部21に送る。
【0038】
表示部13は、表示画面を有し、作業情報管理部11から作業コンテンツデータを受けて、その作業コンテンツデータのイメージを表示画面上に表示する。また、表示部13は、カーソルイメージ準備部19により準備される複数のユーザのカーソルイメージを入力し、それらのカーソルイメージを作業コンテンツデータのイメージと同時に表示画面上に表示する。
【0039】
カーソル移動部15は、作業情報管理部11から各ユーザのカーソル操作信号を受け、そのうちのカーソル移動を要求するカーソル操作信号に応答して、表示部13を制御することで、各ユーザのカーソルイメージを表示画面上で移動させる。
【0040】
ユーザ属性情報部17は、複数のユーザがそれぞれ持つユーザ属性値を示したユーザ属性情報(例えば、氏名、識別コード、ニックネーム、所属する職場、今いる場所、所望するアバターのイメージ、会議の場合であればどの案に賛同しているか、所望するカーソルイメージのイメージデータ、又は、カーソルイメージの色や形などのデザイン情報など)を、任意の外部装置から取得したり、或いは任意の方法で入力したりして、そのユーザ属性情報を記憶する。ユーザ属性情報には、1又は複数のユーザ属性項目(例えば、氏名、識別コード、ニックネーム、所属する職場、今いる場所、所望するアバターのイメージ、会議の場合であればどの案に賛同しているか、所望するカーソルイメージのイメージデータ、又は、カーソルイメージの色や形などのデザイン情報など)について、それぞれのユーザのユーザ属性値が記述されている。
【0041】
カーソルイメージ準備部19は、ユーザ属性情報に基づいて、各ユーザのカーソルイメージの表示態様がそのユーザ属性値に応じた表示態様になるように、各ユーザのカーソルイメージを準備又は作成する。通常、ユーザによりユーザ属性値が異なるから、ユーザにより異なる表示態様をもつカーソルイメージが準備されることになる。ここで、カーソルイメージの「表示態様」とは、表示画面に表示されたカーソルイメージの形状、色彩、模様、サイズなどの静的外観、カーソルイメージの点滅や外観の変化などの動的外観、カーソルイメージの表示位置、及び/又はカーソルイメージの表示位置の変化など、表示画面上でユーザが各カーソルイメージを他のカーソルイメージから峻別するのに役立つカーソルイメージがもつ種々の視覚的な特性のいずれをも含む意味である。
【0042】
カーソルイメージ準備部19によって各ユーザのカーソルイメージの表示態様を決めるやり方としては、一つのユーザ属性項目についてのユーザ属性値のみに基づいて、カーソルイメージの表示態様を決定するようにしてもよいし(例えば、各人が所望するカーソルイメージのイメージデータを、そのまま各人のカーソルイメージとして使う)、或いは、複数のユーザ属性項目についてのユーザ属性値に基づいて表示態様を決定するようにしてもよい(例えば、各人の所属職場に基づきカーソルイメージの形状を決定して、そのイメージデータを各人のカーソルイメージとして使う)。
【0043】
カーソルイメージ準備部19はグルーピング部19aを有する。グルーピング部19aは、上記ユーザ属性情報に基づいて、複数のユーザを2以上のグループに分類する。グルーピングの仕方としては、所定の1又はそれ以上の属性項目のユーザ属性値に基づいて、例えば、所属部署によって、或いは、或る案に賛成しているか否かによって、ユーザをグルーピングすることができる。カーソルイメージ準備部19は、各グループに属するユーザのカーソルイメージの表示態様が、そのグループが共通にもつユーザ属性値に応じた共通特徴をもつように、各ユーザのカーソルイメージを準備することができる。例えば、同じグループに属するユーザのカーソルイメージの形状又は色彩を同じし、グループ間では異なるようにする、というようにである。
【0044】
表示態様変化部21は、各ユーザからのカーソル操作信号が所定条件(例えば、所定時間以上に亘ってカーソル操作を行ってない、そのカーソルが他のカーソルと表示画面上の同じエリア内に存在する、この共有情報表示装置(この例の場合は、大型表示装置3)に入力されたカーソル操作信号であるか他の共有情報表示装置(この例の場合は、他の端末装置5a、5b、5n)に入力されたカーソル操作信号であるか、又は、特定種類のカーソル操作を要求した、など)を満たすか否かを判定して、判定の結果に応じてそのユーザのカーソルイメージの表示態様を変化させる機能を備えている。例えば、表示態様変化部21は、所定時間に亘って移動のないカーソルを待機場所へ移動させたり、議決内容の決定権限をもつ決定者のカーソルを目立つように表示したりする。
【0045】
カーソル操作検出部23は、この共有情報表示装置(この場合は、大型表示装置3)にそのユーザから入力されたカーソル操作信号を検出して、作業情報管理部11へ送信する。
【0046】
また、各端末装置5a、5b、5nがもつ共有情報表示装置としての機能構成は大型表示装置3と同様である。ただし、各端末装置5a、5b、5nのカーソル操作検出部23は、その端末装置5a、5b、5nに入力されたカーソル操作信号を検出することになる。また、各端末装置5a、5b、5nのユーザ属性情報部17がもつユーザ属性情報の内容がどうであるか、カーソルイメージ準備部19がユーザ属性情報に基づいてどのようなやり方でカーソルイメージの表示態様を決めるか、及び/又は、表示態様変化部21がどのようなやり方でカーソルイメージの表示態様を変化させるか、などは、端末装置5a、5b、5nごとに異なっていてもよいし、共通であってもよい。或いは、各端末装置5a、5b、5nが、自装置のユーザ属性情報部17やカーソルイメージ準備部19を機能させずに、他の特定の共有情報表示装置、例えば大型表示装置3、で準備されたカーソルイメージを、大型表示装置3から受け取って、大型表示装置3と同じ表示態様でカーソルイメージを表示するようにしてもよい。」

(ウ) 段落【0079】-【0082】
「【0079】
図10は、カーソル操作が一定時間に亘ってなかった場合の図9に示された制御の結果の表示画面例を示す。
【0080】
図10に示された例では、ニックネームが“Tar”のカーソル操作が一定時間に亘ってなかった場合、“Tar”のカーソルが、例えば、小さな点のような簡易カーソルイメージに変更され、かつ、表示画面上の作業コンテンツを表示したウインドウの外の右下隅の場所へ移動させられる。なお、簡易カーソルイメージであっても、そこには、ニックネームのイメージ“Tar”が表示されているので、そのカーソルがどのユーザのものかが分かる。
【0081】
図11は、図10の後にカーソル操作が再開された場合の図9に示された制御の結果の表示画面例を示す。
【0082】
図10に示された状態の後に、ニックネーム“Tar”のカーソルの操作が再開した場合、図11に示すように、画面右下の“Tar”のカーソルイメージが、通常のカーソルイメージに復帰する。このとき、そのカーソルの場所は、画面右下のままであるが、その位置から、そのユーザがカーソル操作で所望の位置へ移動させるこができる。」

そうすると、引用文献5には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「カーソル操作がなければ、カーソルイメージを、他ユーザのカーソル操作の邪魔にならない所定エリアへ自動的に移動させるものであって、
共有情報表示システム1は、一つの大型表示装置3と複数の端末装置5a,5b,5nとを有し、それらが相互通信可能なように通信ネットワーク7に接続され、
大型表示装置3は、作業情報管理部11、表示部13、カーソル移動部15、ユーザ属性情報部17、カーソルイメージ準備部19、カーソルイメージ準備部19に付属するグルーピング部19a、表示態様変化部21、及びカーソル操作検出部23を備え、
ニックネームが“Tar”のカーソル操作が一定時間に亘ってなかった場合、“Tar”のカーソルが、例えば、小さな点のような簡易カーソルイメージに変更され、かつ、表示画面上の作業コンテンツを表示したウインドウの外の右下隅の場所へ移動させられ、
ニックネーム“Tar”のカーソルの操作が再開した場合、画面右下の“Tar”のカーソルイメージが、通常のカーソルイメージに復帰し、このとき、そのカーソルの場所は、画面右下のままであるが、その位置から、そのユーザがカーソル操作で所望の位置へ移動させることができる、共有情報表示システム1。」

(2) 「本願発明1」と「引用発明1」との対比、判断
ア 対比
本願発明1と引用発明1(引用発明B)との一致点、相違点は、上記第3、2(3)アのとおりである。

イ 判断
<相違点>について
引用文献2には、上記(1)イのとおり、引用発明2が記載されている。すなわち、「停止していたマウス7がオペレータにより操作されるとボールが回転し、座標更新がなされるものにおいて」、「オペレータがポインティングデバイスであるマウス7を使用しないまま、例えば10秒間が所定時間として経過すると、カーソル2bはやや淡く表示され、以下同様にカーソルは淡くなっていき、ついには消滅していき」、「カーソルを消す処理後、ポインティングデバイス座標更新の有無を判定して、もし「Yes」ならば、カーソルを濃く表示する」記載がある。よって、経過時間に応じてポインター(カーソル)の表示に関する属性を変化させ、座標更新が有った場合、すなわち、ポインター(カーソル)が移動した場合に、「表示に関する属性」を処理実行前の状態に戻す開示があるといえる。
引用文献3(特開2012-64069号公報。特に段落【0008】、【0040】-【0050】を参照)、引用文献4(特開2008-152751号公報。特に【要約】を参照)にそれぞれ記載されるように、一般に、カーソルを移動させるために、装置の重力に対する向きを決定して、装置の傾きを変化させる操作を検出する点は、周知技術である。
引用文献5には、上記(1)ウのとおり、引用発明3が記載されている。すなわち、カーソル操作がなければ、他ユーザのカーソル操作の邪魔にならない所定エリアへカーソルを自動的に移動させるものであって、カーソル操作が一定時間に亘ってなかった場合、小さな点のような簡易カーソルイメージに変更され、かつ、表示画面の右下隅へ移動させられ、カーソルの操作が再開した場合、通常のカーソルイメージに復帰し、このとき、そのカーソルの場所は、画面右下のままであることの開示があるといえる。
しかし、「外部装置の傾きを変化させる」場合に、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソル(ポインタ)の「表示に関する属性」を処理実行前の状態に戻すことは、各引用文献2-5に記載も示唆もなく、周知技術ともいえないから、引用発明1において、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ むすび
したがって、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(3) 「本願発明2」と「引用発明1」との対比、判断
ア 対比
本願発明2と引用発明1(引用発明B)との一致点、相違点は、上記第3、2(4)アのとおりである。

イ 判断
<相違点>について
引用文献2には、上記(1)イのとおり、引用発明2が記載されている。すなわち、「停止していたマウス7がオペレータにより操作されるとボールが回転し、座標更新がなされるものにおいて」、「オペレータがポインティングデバイスであるマウス7を使用しないまま、例えば10秒間が所定時間として経過すると、カーソル2bはやや淡く表示され、以下同様にカーソルは淡くなっていき、ついには消滅していき」、「カーソルを消す処理後、ポインティングデバイス座標更新の有無を判定して、もし「Yes」ならば、カーソルを濃く表示する」記載がある。よって、経過時間に応じてポインター(カーソル)の表示に関する属性を変化させ、座標更新が有った場合、すなわち、ポインター(カーソル)が移動した場合に、「表示に関する属性」を処理実行前の状態に戻す開示があるといえる。
引用文献3(特開2012-64069号公報。特に段落【0008】、【0040】-【0050】を参照)、引用文献4(特開2008-152751号公報。特に【要約】を参照)にそれぞれ記載されるように、一般に、カーソルを移動させるために、装置の重力に対する向きを決定して、装置の傾きを変化させる操作を検出する点は、周知技術である。
引用文献5には、上記(1)ウのとおり、引用発明3が記載されている。すなわち、カーソル操作がなければ、他ユーザのカーソル操作の邪魔にならない所定エリアへカーソルを自動的に移動させるものであって、カーソル操作が一定時間に亘ってなかった場合、小さな点のような簡易カーソルイメージに変更され、かつ、表示画面の右下隅へ移動させられ、カーソルの操作が再開した場合、通常のカーソルイメージに復帰し、このとき、そのカーソルの場所は、画面右下のままであることの開示があるといえる。
しかし、「外部装置の傾きを変化させる」場合に、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソル(ポインタ)の「表示に関する属性」を変化させることは、各引用文献2-5に記載も示唆もなく、周知技術ともいえないから、引用発明1において、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ むすび
したがって、本願発明2は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(4) 「本願発明2」と「引用発明2」との対比、判断
ア 対比
本願発明2と引用発明2とを対比する。

(ア) 引用発明2の「カーソル表示装置、CRT」と、「マウス7」とを含む、「カーソル表示装置、CRT、マウス7からなるシステム」は、本願発明2の「画像表示装置」と「外部装置」とを含む「画像表示システム」に相当するといえる。
よって、引用発明2の「マイクロコンピュータ等からなるCPU3のバスラインには……情報入力用のマウス7を接続するためのマウスインターフェース6が接続されており、……CRTに表示される文字等は表示制御回路8からの制御信号により制御され」ることは、本願発明2の「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって」、「前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え」ることに相当する。

(イ) 引用発明2の「オペレータがワープロ等のCRT1に向かって、丸や三角等の図形データをマウス7を用いて入力していく時には、上記CRT1の上には濃い矢印で示されるカーソル2(2a)が表示されて」いることは、本願発明2の「前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ」ることに相当する。

したがって、本願発明2と引用発明2との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ、
ることを特徴とする画像表示システム。」

<相違点>
本願発明2は、「前記外部装置に対応するカーソルが通常状態で表示されているときに、当該外部装置が所定の操作を受けたことを表すデータを、前記通信手段が受信したことを受けて、前記制御手段は、当該外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させ、前記所定の操作は、前記外部装置の傾きを変化させる操作であり、前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定する」のに対して、引用発明2は、「停止していたマウス7がオペレータにより操作されるとボールが回転し、座標更新がなされるものにおいて」、「オペレータがポインティングデバイスであるマウス7を使用しないまま、例えば10秒間が所定時間として経過すると、カーソル2bはやや淡く表示され、以下同様にカーソルは淡くなっていき、ついには消滅していき」、「カーソルを消す処理後、ポインティングデバイス座標更新の有無を判定して、もし「Yes」ならば、カーソルを濃く表示する」もの、すなわち、マウス(外部装置)を操作しないことに応じてポインター(カーソル)の表示に関する属性を変化させるものであって、装置の傾きを変化させる操作に応じて、カーソルの表示の属性を変化させるものではない点。

イ 判断
<相違点>について
引用文献3(特開2012-64069号公報。特に段落【0008】、【0040】-【0050】を参照)、引用文献4(特開2008-152751号公報。特に【要約】を参照)にそれぞれ記載されるように、一般に、カーソルを移動させるために、装置の重力に対する向きを決定して、装置の傾きを変化させる操作を検出する点は、周知技術である。
しかし、「外部装置の傾きを変化させる」場合に、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソル(ポインタ)の「表示に関する属性」を変化させることは、各引用文献3、4に記載も示唆もなく、周知技術ともいえないから、引用発明2において、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ むすび
したがって、本願発明2は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(5) 「本願発明2」と「引用発明3」との対比、判断
ア 対比
本願発明2と引用発明3とを対比する。

(ア) 引用発明3の「大型表示装置3」と「複数の端末装置5a,5b,5n」とを含む「共有情報表示システム1」は、本願発明2の「画像表示装置」と「外部装置」とを含む「画像表示システム」に相当する。
よって、引用発明3の「共有情報表示システム1は、一つの大型表示装置3と複数の端末装置5a,5b,5nとを有し、それらが相互通信可能なように通信ネットワーク7に接続され、大型表示装置3は、…表示部13、カーソル移動部15、…カーソルイメージ準備部19、…、表示態様変化部21、及びカーソル操作検出部23を備え」ることは、本願発明2の「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって」、「前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え」ることに相当する。

(イ) 引用発明3の「ニックネーム“Tar”のカーソルの操作が再開した場合、画面右下の“Tar”のカーソルイメージが、通常のカーソルイメージに復帰し、このとき、そのカーソルの場所は、画面右下のままであるが、その位置から、そのユーザがカーソル操作で所望の位置へ移動させることができる」ことは、本願発明2の「前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ」ることに相当する。

したがって、本願発明2と引用発明3との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「画像を表示する表示手段、及び外部装置と通信する通信手段を備えた画像表示装置と、前記外部装置とを含む画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、前記表示手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記表示手段に、前記外部装置に対応するカーソルを表示させ、
ることを特徴とする画像表示システム。」

<相違点>
本願発明2は、「前記外部装置に対応するカーソルが通常状態で表示されているときに、当該外部装置が所定の操作を受けたことを表すデータを、前記通信手段が受信したことを受けて、前記制御手段は、当該外部装置に対応する前記カーソルの、前記表示手段による表示に関する属性を、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま変化させ、前記所定の操作は、前記外部装置の傾きを変化させる操作であり、前記外部装置は、当該外部装置の重力に対する向きを決定することにより、当該外部装置の傾きを変化させる操作を受けたか否かを判定する」のに対して、引用発明2は、「カーソル操作がなければ、カーソルイメージを、他ユーザのカーソル操作の邪魔にならない所定エリアへ自動的に移動させるものであって」、「ニックネームが“Tar”のカーソル操作が一定時間に亘ってなかった場合、“Tar”のカーソルが、例えば、小さな点のような簡易カーソルイメージに変更され、かつ、表示画面上の作業コンテンツを表示したウインドウの外の右下隅の場所へ移動させられ」、「ニックネーム“Tar”のカーソルの操作が再開した場合、画面右下の“Tar”のカーソルイメージが、通常のカーソルイメージに復帰し、このとき、そのカーソルの場所は、画面右下のままであるが、その位置から、そのユーザがカーソル操作で所望の位置へ移動させることができる」もの、すなわち、カーソル操作がなければ、他ユーザの邪魔にならない画面右下のような所定エリアに自動的に移動して、小さな点のような簡易カーソルイメージに変更し、カーソル操作が再開すると、カーソルの場所は、自動的に移動された画面右下のままで、通常のカーソルイメージに復帰するものであって、カーソルが通常状態で表示されているときに、装置の傾きを変化させる操作に応じて、表示されている前記カーソルの位置を維持したまま、カーソルの表示の属性を変化させるものではない点。

イ 判断
<相違点>について
引用文献3(特開2012-64069号公報。特に段落【0008】、【0040】-【0050】を参照)、引用文献4(特開2008-152751号公報。特に【要約】を参照)にそれぞれ記載されるように、一般に、カーソルを移動させるために、装置の重力に対する向きを決定して、装置の傾きを変化させる操作を検出する点は、周知技術である。
しかし、「カーソルが通常状態で表示されているときに」、「外部装置の傾きを変化させる操作に応じて」、「表示されている前記カーソルの位置を維持したまま」、カーソルの「表示に関する属性」を変化させることは、各引用文献3、4に記載も示唆もなく、周知技術ともいえないから、引用発明3において、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ むすび
したがって、本願発明2は、引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(6)小括
したがって、本願発明1-2は、当業者が引用発明1-3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2012-145106(P2012-145106)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
山澤 宏
発明の名称 画像表示システム  
代理人 清水 敏  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ