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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M |
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管理番号 | 1310572 |
審判番号 | 不服2015-2596 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-10 |
確定日 | 2016-02-23 |
事件の表示 | 特願2010-255271「集合住宅用インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年6月7日出願公開,特開2012-109683,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成22年11月15日の出願であって,平成26年1月14日付けで拒絶理由が通知され,同年3月24日付けで手続補正がされ,同年10月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,これに対し,平成27年2月10日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において同年8月5日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され,同年10月13日付けで手続補正がされ,同年10月23日付けで最後の拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され,同年12月22日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-5に係る発明は,平成27年12月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 「 【請求項1】 充電ステーションを監視し,その空き状態を判別して,空き判別情報を出力する機能を備えた電動車両の充電システムに,接続連携された集合住宅用インターホンシステムであって, 前記充電システムと通信して,充電情報を受信する充電情報受信部と, 住戸インターホンから充電情報の要求を受けたときには,前記充電情報受信部から充電情報を受信し,要求を受けた住戸インターホンの住戸アドレスを指定して,該充電情報を配信し, 前記住戸インターホンから問い合わせ要求を受けたときには,前記機能から空き判別情報を受信して,問い合わせを受けた住戸インターホンの住戸アドレスを指定して,該空き判別情報を配信する充電情報配信部とを備えたことを特徴とする,集合住宅用インターホンシステム。 【請求項2】 請求項1に記載の集合住宅用インターホンシステムにおいて, 前記充電情報受信部で受信した充電情報を時系列的に蓄積保存する充電情報記憶部をさらに備えている集合住宅用インターホンシステム。 【請求項3】 請求項1または2に記載の集合住宅用インターホンシステムにおいて, 前記住戸インターホンは,前記充電情報配信部から配信されてきた充電情報に基づいて,電動車両の充電中,充電完了,充電異常,充電プラグの着脱の中で少なくとも1以上の報知を行うことを特徴とする集合住宅用インターホンシステム。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の集合住宅用インターホンシステムにおいて, 前記充電情報配信部は,前記住戸インターホンから,前記充電ステーションの空き自動通知要求を受けると,前記充電ステーションに空きが発生したときに,該自動通知要求を受けた住戸インターホンに空き発生情報を通知して報知させる構成にしている,集合住宅用インターホンシステム。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか1項に記載の集合住宅用インターホンシステムにおいて,前記住戸インターホンは,充電開始を通知する充電情報を受信してから,充電完了を通知する充電情報を受信するまでの間,充電開始からの経過時間を表示することを特徴とする,集合住宅用インターホンシステム。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 1.請求項1?3について引用文献1?3 引用文献1には,集合住宅の各居室に設けられ,操作パネルや通信部を備えた充電予約装置において,充電管理装置と交信し,駐車場の充電装置の充電予約を各住戸ごとに行えることについて記載されている(特に,段落【0018】-【0021】,【0036】-【0039】,【0047】及び図1を参照)。 引用文献2には,住戸外での電気自動車の充電に関し,充電履歴が記憶され,室内コントローラのディスプレイにおいて充電中の充電電圧・充電電流の変化や充電中の異常(コネクタ抜け等)をモニタできることについて記載されている(特に,要約,段落【0010】,【0013】,【0016】-【0018】及び図1,2を参照)。 引用文献3には,集合住宅における共用車両の予約や利用状況の照会を,インターホン装置の住戸端末で行えることについて記載されている(特に,段落【0015】,【0029】,【0030】,【0040】-【0042】及び図2,3を参照)。 引用文献1記載の発明における居室内の充電予約装置において,引用文献2に記載されているように充電状況等をモニタできるようにし,充電装置側から当該充電状況等を配信するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 また,引用文献3に記載されているような,居室内からの遠隔操作・監視のための装置として,インターホンシステムの住戸インターホンを兼用するという技術思想を採用し,引用文献1記載のシステムを集合住宅用インターホンシステムとして構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 2.請求項4について引用文献1?3 引用文献1には,前記充電予約装置から出力された住戸番号及び予約状況要求信号(本願の「問い合わせ要求」に対応)に応答した当該充電管理装置から,前記充電予約装置に対し,空き情報を報知することについても記載されている(特に,段落【0036】-【0039】を参照)。 3.請求項5について引用文献1?4(略) 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2010-152511号公報 2.特開平09-233720号公報 3.特開2003-196782号公報 4.(略)」 また,拒絶査定の備考として,以下の記載がある。 「<平成26年 3月24日付け手続補正に係る請求項1?3について> 平成26年 3月24日付け手続補正の請求項1に係る「前記充電ステーションを監視し,その空き状態を判別して,空き判別情報を出力する監視手段」を備える点について,平成26年 1月14日付け拒絶理由における引用文献1(特開2010-152511号公報,特に,【0026】段,【0036】段?【0039】段,【図2】)には,予約処理部において,空いている充電スタンド(請求項1における「充電ステーション」に対応)を含む予約情報テーブルを有し,予約情報テーブルから,充電スタンドの空き状況を示す空き情報テーブルを作成して出力する旨の発明が記載されており,引用文献1に記載された発明の予約処理部において,予約情報テーブルに空いている充電スタンドを登録するため,充電スタンドを監視して空き状態を判別することは,当業者ならば容易になし得ることと認められます。 次に,平成26年 3月24日付け手続補正の請求項1に係る「前記住戸インターホンから問い合わせ要求を受けたときには,前記監視手段から空き判別情報を受信して,問い合わせを受けた住戸インターホンの住戸アドレスを指定して,該空き判別情報を配信する充電情報配信部」を備える点について,引用文献1(特に,【0036】段?【0039】段,【図4】)には,充電予約装置から住戸番号と予約状況要求信号(請求項1における「問い合わせ要求」に対応)を予約処理部へ送信し,予約処理部から空き情報テーブルを住戸へ送信する旨の発明が記載されています。 そして,情報を特定の送信先へ送信する際,アドレスを指定して送信することは周知慣用技術であると認められるので,引用文献1に記載された発明において予約処理部から空き情報テーブルを住戸へ送信する際,住戸のアドレスを指定して送信することは,当業者ならば容易になし得ることと認められます。 ここで,出願人は,平成26年 3月24日付け意見書において, 「引用文献1は,充電ステーションの予約の空情報を表示して予約手続を受け付けることが記載されています。しかし,利用者が,充電ステーションの空状態をリアルタイムに確認できる構成にはなっていません。」 と主張していますが,引用文献1(特に,【0037】段)には,住戸の操作パネルに空き情報テーブルを表示する旨の発明が記載されており,引用文献1に記載された発明においても,予約状況要求信号(請求項1における「問い合わせ要求」に対応)を行った後,充電スタンドの空き情報の表示により,充電スタンドの空き状況を確認できる点は,本願発明と同じであると認められます。 したがって,平成26年 3月24日付け手続補正に係る請求項1?3に係る発明は,依然として,平成26年 1月14日付け拒絶理由における引用文献1?3に記載された発明から,当業者ならば容易になし得たことです。」 2.原査定の理由の判断 (1)引用文献の記載事項 (引用文献1) 引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】本発明は電気自動車の充電システムに関するものである。」 イ 「【0014】図1に本発明の実施の形態を示す。まず,集合住宅の各住戸1には,コントローラ(制御部1a)により制御されて動作する施解錠認証手段16と電気錠2が配置される。施解錠認証手段16は,住戸居住者が所持する携帯器(携帯型ID保持体3)に設定された携帯器3固有の認証IDを登録するための登録部16aと,登録部16aへの操作により登録された認証IDを格納するID格納部16bと,認証部16cとを有する。 【0015】?【0017】(略) 【0018】また,各住戸1には,上記制御部1aにより制御される充電予約装置(充電予約部15),操作パネル1b,および通信部1cが配置される。充電予約部15は,通信部1cを利用して後述する充電管理装置17の予約処理部14と交信して充電予約を行うことができ,操作パネル1bには,予約状況,予約手順等が表示される。 【0019】一方,共用玄関8には共用玄関8の開閉を制御するための共用玄関制御装置7が設置される。共用玄関制御装置7は,制御部8aにより制御されて動作する共用玄関用認証手段6,扉開閉装置8b,および通信部8cを備える。共用玄関用認証手段6は,登録部6a,ID格納部6b,および認証部6cを備え,認証部6cでの携帯器3の認証が成立すると,扉開閉装置8bが駆動されて共用玄関8に設置された電動扉の開操作が行われる。 【0020】(略) 【0021】また,駐車場には,充電管理装置17と,適数の充電スタンド10から構成される充電装置5が設置される。充電管理装置17は,制御部17aに接続される充電用認証手段4,課金情報生成部11,予約処理部14,充電制御部13,および通信部17bを有する。充電用認証手段4は,認証部4a,およびID格納部4bを備え,ID格納部4bには,上述した共用玄関用認証手段6から通信部17bに送出された認証IDと住戸番号とが関連テーブル12に関連付けられて格納される。」 ウ 「【0026】充電スタンド10の使用予約を処理する予約処理部14は,図2(a)に示す予約情報テーブルと,図2(b)に示す住戸別登録テーブルとを有しており,上述した住戸1の充電予約部15から予約申し込みがあった際に予約情報テーブルを使用して図2(c)に示すように,空き情報テーブルを操作パネル1bに表示し,空き時間での予約を促す。 【0027】予約申し込みをした住戸1からの予約時間指定があった場合,予約処理部14は,重複予約とならないことを確認した後,上記両テーブルに登録し,予約が完了する。」 エ 「【0036】図4に各住戸1における充電予約装置15の動作フローを示す。まず,各住戸1の操作パネル1bにより充電予約を選択し,充電予約部15を起動すると(ステップ200),通信部1cを介した充電管理装置17の通信部17bとの通信が開始され,予約処理部14に対して住戸番号と予約状況要求信号を出力する(ステップ201)。予約状況要求信号を受信した予約処理部14は(ステップ202),予約情報テーブルから空き情報テーブルを生成し(ステップ203),各住戸1に送信する(ステップ204)。 【0037】充電予約装置15が上記予約状況を受信すると(ステップ205),各住戸1の操作パネル1bに空き情報テーブルを表示して利用状況を居住者に知らせる(ステップ206)。空き情報テーブルには,日付,空きステーション番号,時間等が表示される。 【0038】居住者は,上記空き情報テーブルとともに表示される予約手続き画面を埋めることにより予約手続を行うことができる(ステップ207)。予約手続は,予約情報テーブルの空きステーション,時間を指定して行われ,必要に応じて暗証番号の入力を求めることができる。 【0039】以上のようにして充電予約装置15による予約が終了すると,予約内容が充電予約装置15から充電管理装置17に出力され(ステップ208),受信した充電管理装置17は(ステップ209),予約重複等,予約内容を点検を行った後(ステップ210),予約情報テーブル,および住戸別登録テーブルに登録する(ステップ211)。登録後,充電管理装置17は予約完了信号を出力し(ステップ212),これを受けた充電予約装置15は(ステップ213),予約完了を操作パネル1bに表示した後(ステップ214),制御を終了する。」 ここで,前記段落【0018】の記載,図4及びその説明箇所である段落【0036】?【0039】の記載を参照すると,充電予約部15と,制御部1a,操作パネル1b及び通信部1cを含めて「充電予約装置」と捉えることができる。 そうすると,摘記事項アないしエ及び図面(特に,図1及び図4)の記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「電気自動車を充電する充電スタンド10の使用予約についての予約情報テーブルから空き情報テーブルを作成して送信する予約処理部14を備えた充電管理装置17と通信する,集合住宅の各住戸に配置された充電予約装置において, 住居番号と予約状況要求信号を送信し,前記予約処理部14から前記空き情報テーブルを受信し,予約内容を送信し,前記予約処理部14から予約完了信号を受信する通信部1cを備える充電予約装置。」 (引用文献2) 引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている。 オ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,電気自動車の充電器を制御するコントローラに関するものである。」 カ 「【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので,室内において充電状況の監視や異常の検知が行えるよう構成したものである。」 キ 「【0010】 【発明の実施の形態】以下,本発明を具体的に説明する。図1は本発明コントローラの使用状況を示す説明図である。図1中の破線内は車庫や屋外であることを示している。電気自動車1には内蔵されたバッテリ2の充電条件を制御する車載コントローラ3が設置されている。このバッテリ2を充電する家庭用充電器4はAC商用周波数電源5から電力が供給され,充電電圧・電流を制御する充電器コントローラ6が設けられている。また,屋内には室内コントローラ7が設置され,充電器4と接続されている。充電時,充電器4とバッテリ2は充電器側コネクタ8と車体側コネクタ9の結合により接続される。 【0011】?【0012】(略) 【0013】そして,車載コントローラ3や充電器4から送られてきた情報に基づいて室内コントローラ7で充電状況の監視を行うと共に,全ての充電履歴を管理する。その手順を以下に説明する。室内コントローラ7の制御パネルは図2に,各コントローラ3,6,7の機能ブロック図を図3に示す。 【0014】?【0015】(略) 【0016】その他,車載コントローラ3は充電電圧・電流検知手段15を具える。また,タイマー手段16により充電開始日時,充電終了日時,充電時間などを計時する。さらに,本例ではバッテリ2の温度検知手段17も設けた。バッテリは群電池で構成されているので,各素電池の温度を検出し,異常充電になっている電池がないかどうか監視する。また,バッテリの温度条件に合わせて,充電曲線を決定できる。これにより,夏と冬など,温度の異なる環境に対応した最適な充電曲線を決定できる。充電中はこれらの検知データを充電曲線データと共に室内コントローラ7に常時出力する。そして,これらの充電履歴は室内コントローラの記憶手段18に記憶される。正常に充電が行われている場合は室内コントローラの運転表示ランプ19が点灯する。また,充電中は時間の経過に伴う充電電圧・充電電流の変化をディスプレイ13でモニタできる。室内コントローラ7は,充電曲線のどこまで充電が終了したかによって充電完了率を演算し,さらに充電完了率から走行可能距離を演算してディスプレイ13に表示する。即ち,どのモードで充電を行っても,充電中,充電完了時,または充電を途中で中止したときには,その時点での充電完了率,走行可能距離を知ることができる。 【0017】一方,充電中に異常が発生した場合,室内コントローラ7でこれを監視できる。車載コントローラ3または充電器コントローラ6で異常を検知し,異常信号を室内コントローラ7に出力する。室内コントローラ7ではこの信号に基づいて異常表示ランプ20が点灯し,スピーカ21から警告音が発せられると共に異常の内容がディスプレイ13に表示される。 【0018】これにより,例えば異常がコネクタ8,9の抜けの場合,これらを接続して再度充電をやり直す処置が容易に行える。異常の検知に伴って充電器4からバッテリ2への送電は停止され,充電は自動的に中止される(自動停止手段)。検知する異常としては,充電中に過電流が流れた場合,地絡事故が起こった場合,充電ケーブルが断線した場合,コネクタ8,9が抜けた場合などが挙げられる。例えば,過電流は車載コントローラ3または充電器コントローラ6の充電電圧・電流検知手段15,22 により,コネクタの抜けは車載コントローラ3のコネクタ接続検知手段23により検知する。コネクタ接続検知手段23は,マグネットとその位置検出スイッチなどを用いればよい。なお,コネクタが抜けたり断線した場合,車載コントローラ3から充電器コントローラ6への伝送路が確保できなくなる。そのため,充電器コントローラ6でもこれらの異常を監視し,室内コントローラ7に異常信号を出力できるようにしている。充電器コントローラ6で断線やコネクタの抜けを検知するには,車載コントローラ3から充電器コントローラ6への信号入力が途絶えることで検知できる。万一,自動停止手段が適切に動作しない場合,地震や火災などの場合には,室内コントローラ7に設けた押しボタン式の非常停止手段24により手動でいつでも充電を中止できる。」 摘記事項オないしキ及び図面の記載を総合すると,引用文献2には,以下の技術事項が記載されている。 「屋外の充電器で電気自動車に充電を行う充電コントローラにおいて,充電の異常を検知するため,コネクタの抜けを監視すること。」 (引用文献3) 引用文献3には,図面とともに以下の事項が記載されている。 ク 「【0015】 【発明の実施の形態】本発明に係る車両共用システムの一実施形態の概略構成図を図1に示す。この車両共用システムでは,同じ集合住宅1に入居する居住者をサービス対象とし,複数の世帯の居住者で複数台の共用車両を共用する。 【0016】集合住宅1は1乃至複数の居住棟で構成される。各居住棟には複数戸の住戸2があり,各住戸2にはインターホン装置としての機能を有する住戸端末10が設けられている。」 ケ 「【0029】ところで,本発明に係る車両共用システムでは各住戸2の住戸端末10と車両管理サーバー31との間で,集合住宅1の共用の通信設備であるインターホンシステムを利用した第1の通信手段を用いてデータ通信を行っている。そして,インターホンシステムの制御装置23には,伝送線を介して入力される信号から,共用車両の利用に関わる通信データを識別して,車両管理サーバー31に出力するデータ識別装置25(データ識別手段)が設けられており,このデータ識別装置25を介して各住戸端末10は車両管理サーバー31に接続される。すなわち,データ識別装置25では,各住戸端末10から伝送線を介して入力されるデータの中に,車両管理サーバー31宛に送信されたデータがあった場合のみ,そのデータを車両管理サーバー31に送信する。ここに,第1の通信手段は,住戸端末10の通信回路部17や,データ識別装置25や,車両管理サーバー31の住戸用通信部32aや,インターホンシステムの伝送路などで構成され,集合住宅1の既存の通信設備であるインターホンシステムを利用しているので,車両共用システムの導入に際して新たに通信設備を設置する必要が無く,初期費用を低減でき,またインターホンシステムを利用する部分の通信コストは略零なので,通信コストを削減することもできる。 【0030】車両管理サーバー31では,各住戸端末10からのデータを受信すると,受信したデータの内容に応じて共用車両の予約や利用照会等の処理を行っているが,各住戸2の居住者の内,車両共用システムを利用する利用者の名前,年齢,性別,などの登録情報や,共用車両の予約状況を示す予約情報や,各利用者の利用料金を示す料金情報はデータベースDB1に保管される。そして,車両管理サーバー31で何らかの処理が行われる度に,データベースDB1に登録されたデータは更新される。また,データベースDB2は,データベースDB1に登録されたデータをバックアップするために用意されており,データベースDB1のデータが定期的にデータベースDB2にバックアップされるようになっている。尚,図1ではバックアップ用のデータベースDB2を車両管理センター30内に設置しているが,保安上あるいは防災上のリスクを分散するために別の場所に設置するようにしても良い。」 コ 「【0040】次に,何れかの住戸2に居住する利用者が住戸端末10を用いて共用車両の利用を予約する手順について説明する。利用者が,自宅に設置された住戸端末10のセレクトキー15bを押操作すると,表示部16の画面が予約登録の画面に切り替わり,住戸端末10から車両管理サーバー31にアクセスして,共用車両の予約処理を実行する。この時,表示部16には利用したい日時や目的地などの項目を入力する画面が表示され,利用者が入力キー15fを操作して各項目を入力し,車両の予約操作を行うと,住戸端末10から幹線20及び分岐装置21を介してデータ識別装置25へ車両の予約を要求する信号が出力される。データ識別装置25は,幹線20を介して入力される信号から車両管理センター30への信号を識別しており,住戸端末10から車両の予約を要求する信号が入力されると,この信号を車両管理サーバー31に出力する。 【0041】この時,車両管理サーバー31は,データベースDB1から予約状況を示す予約情報D4を読み込み,共用車両に空きがあれば予約処理を実行する。その結果は制御装置23を介して住戸端末10に返送され,住戸端末10の表示部16に表示される。そして,利用者が住戸端末10の表示部16を見て,予約結果を確認すると,予約処理が完了する。 【0042】また,何れかの住戸2に居住する利用者が住戸端末10を用いて利用状況を照会する手順について説明する。管理センター30のデータベースDB1には最新の予約情報D4とは別に,予約情報D4の履歴を示す情報が登録されている。また,料金情報D5についても前回の締め日から現在までの利用実績に応じた累計の料金情報が最新の情報として保存されるとともに,最新情報とは別に過去の履歴を示す料金情報が登録されている。利用者が,自宅に設置された住戸端末10のセレクトキー15cを押操作すると,表示部16の画面が利用照会の画面に切り替わり,住戸端末10から車両管理サーバー31にアクセスして,利用状況の照会処理を実行する。この時,車両管理センター30からデータ識別装置2を介して住戸端末10へ利用状況のデータが送信され,信号処理部18が受信した利用状況のデータを表示部16に表示させているので,表示部16の画面を見て利用状況を確認することができる。」 摘記事項クないしコ及び図面の記載を総合すると,引用文献3には以下の技術事項が記載されている。 「車両管理サーバーに接続された集合住宅用インターホンシステムであって, 各住戸に設けられたインターホン端末と, 前記インターホン端末と接続された制御装置を備え, 前記インターホン端末は,前記制御装置を介して前記車両管理サーバーとデータ通信を行い,共用車両の利用の予約や利用状況の確認を行うこと。」 (2)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「充電スタンド10」は,本願発明の「充電ステーション」に相当する。 引用発明の「空き情報テーブル」と本願発明の「空き判別情報」は,「充電ステーション」の利用可能に係る情報である点で共通し,引用発明の「予約処理部14」と本願発明の「機能」は,「利用可能に係る情報を送信」する点で共通する。 引用発明の「充電管理装置17」は,本願発明の「電動車両の充電システム」に対応するから,引用発明の「集合住宅の各住戸に配置された充電予約装置」と本願発明の「集合住宅用インターホンシステム」は,「充電システム」に「接続連携」される点で共通する「集合住宅用システム」といえる。 引用発明の「通信部1c」は,「前記予約処理部14から予約完了信号を受信する」機能と「前記予約処理部14から前記空き情報テーブルを受信」する機能を備えている。そして,前者の機能は,「充電管理装置17から情報を受信する」機能といえるから,本願発明の「前記充電システムと通信して,充電情報を受信する充電情報受信部」と,「前記充電システムと通信して情報を受信する手段」である点で共通する。また,後者の機能と本願発明の「充電情報配信部」は,「前記機能から利用可能に係る情報を受信する手段」である点で共通する。 そうすると,本願発明と引用発明とは,以下の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「充電ステーションについての空き判別情報を出力する機能を備えた電動車両の充電システムに,接続連携された集合住宅用システムであって, 前記充電システムと通信して情報を受信する手段と, 前記機能から利用可能に係る情報を受信する手段とを備えた 集合住宅用システム。」 (相違点1) 一致点である「利用可能に係る情報」について, 本願発明は,「前記住戸インターホンから問い合わせ要求を受けたとき」の「充電ステーション」の「空き状態」であるのに対し, 引用発明は,「充電スタンド10の使用予約」についての「空き情報テーブル」である点。 (相違点2) 一致点である「前記充電システムと通信して情報を受信する手段」の前記「情報」について, 本願発明では「充電情報」であり,さらに本願発明は,「住戸インターホンから充電情報の要求を受けたときには,前記充電情報受信部から充電情報を受信し,要求を受けた住戸インターホンの住戸アドレスを指定して,該充電情報を配信する充電情報配信部」を備えるのに対し, 引用発明では「予約完了信号」であり,さらに引用発明は,「前記予約処理部14から予約完了信号を受信する通信部1c」を備える点。 (相違点3) 一致点である「集合住宅用システム」について,本願発明は,「集合住宅用インターホンシステム」であるのに対し,引用発明は,「集合住宅の各住戸に配置された充電予約装置」である点。 (3)判断 上記相違点1について検討する。 本願発明の「空き判別情報」と引用発明の「空き情報テーブル」は,それぞれ異なる手段により異なる目的で作成された情報であるから,予約の状況を示す「空き情報テーブル」を,実際の空き状態を示す「空き判別情報」に転用することができないことは,明らかである。 また,引用文献2は,図1に見て取れるように,個人の住宅の車庫に設置されている電気自動車の充電器の充電状況を室内から監視できないという技術課題(段落【0003】等)を解決するために,上述のとおり「屋外の充電器で電気自動車に充電を行う充電コントローラにおいて,充電の異常を検知するため,コネクタの抜けを監視すること。」が記載されている。 ここで,上記「コネクタの抜けの監視」に関して検討すると,引用文献2では,個人の住宅で車庫に設置された充電器の異常を監視するために「コネクタの抜け」,すなわちコネクタが接続されていない状態を検知するものであり本願発明のように集合住宅で充電スタンドを共用するために充電ステーションの「空き状態」を監視するものではないことは明らかである。 してみると,引用文献2から,本願発明の「充電ステーションを監視し,その空き状態を判別」に相当する事項は,想起し得ないというべきである。 また,引用文献3は,共用車両を利用する利用者の利便性を向上させた車両共用システムを提供すること(段落【0007】)を目的として,上述のとおり「車両管理サーバーに接続された集合住宅用インターホンシステムであって,各住戸に設けられたインターホン端末と,前記インターホン端末と接続された制御装置を備え,前記インターホン端末は,前記制御装置を介して前記車両管理サーバーとデータ通信を行い,共用車両の利用の予約や利用状況の確認を行うこと。」が記載されている。 しかしながら,引用文献3では,「共用車両の利用の予約や利用状況の確認」のためのデータ通信を行うことが記載されているものの,車両の充電に関する事項は記載がなく,引用文献3から,本願発明の「充電ステーションを監視し,その空き状態を判別」に相当する事項は,想起し得ないというべきである。 そうすると,引用発明に引用文献2及び3に記載された事項を採用しても前記相違点1に係る構成に容易に想到し得るとはいえない。 (4)小括 以上のとおりであるから,相違点2及び3について検討するまでもなく,本願発明は,当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたとはいえない。 また,本願の請求項2-5に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,同様に,当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由1の概要 当審拒絶理由1の概要は,以下のとおりである。 「本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1-5について 請求項1に記載の「前記充電ステーションを監視し,その空き状態を判別して,空き判別情報を出力する監視手段」における「前記充電ステーション」は前記されておらず,「前記」が何を意味しているのかが不明瞭である。 なお,単に「前記」を削除すると,請求項1の記載からみて「監視手段」も「集合住宅用インターホンシステム」に含まれることとなり,補正の根拠とされる従前の請求項4の「前記充電システムは,充電ステーションを監視し,その空き状態を判別して,空き判別情報を出力する監視手段を備えており」や,図1の記載と対応しない点に留意されたい。」 2.当審拒絶理由1の判断 平成27年10月13日付け手続補正書によって,本願の請求項1は「充電ステーションを監視し,その空き状態を判別して,空き判別情報を出力する機能を備えた電動車両の充電システムに,接続連携された集合住宅用インターホンシステムであって, ・・・集合住宅用インターホンシステム。」と補正された。このことにより,当審拒絶理由1は解消したが,当該補正によって下記当審拒絶理由2を通知することが必要となった。 3.当審拒絶理由2の概要 最後の拒絶理由である当審拒絶理由2の概要は,以下のとおりである。 「この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1には,「前記監視手段」と記載されているが,この記載よりも前に「監視手段」の記載が無く,「前記」がどのような事項を指示しているのかが不明である。」 4.当審拒絶理由2の判断 平成27年10月13日付け手続補正書によって,本願の請求項1「前記監視手段」は,「前記機能」に補正された。 この補正は,特許法第17条の2第5項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し,特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同第4項(シフト補正)の規定に適合することも明らかである。 そして,当該補正により当審拒絶理由2は解消した。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-02-09 |
出願番号 | 特願2010-255271(P2010-255271) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H04M)
P 1 8・ 121- WY (H04M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松平 英、戸次 一夫 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 林 毅 |
発明の名称 | 集合住宅用インターホンシステム |
代理人 | 奥村 公敏 |
代理人 | 沖本 周子 |
代理人 | 中井 宏行 |