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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J |
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管理番号 | 1310612 |
審判番号 | 不服2014-19684 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-10-01 |
確定日 | 2016-02-04 |
事件の表示 | 特願2011-512797「SC-FDMA伝送ダイバーシティのためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日国際公開、WO2009/149561、平成23年 9月15日国内公表、特表2011-525321〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、2009年6月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年6月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月29日付けで拒絶査定され、これに対し、同年10月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年10月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 平成26年10月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成26年3月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された 「 2以上であるN_(A)個のアンテナを有する無線通信装置におけるシングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)アップリンク伝送ダイバーシティのための方法であって、 N個の変調されたデータシンボルのグループに関し、 前記N個の変調されたデータシンボルのN個の周波数領域成分の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルに対してNポイント離散フーリエ変換(DFT)を実行するステップと、 M(M>N)個の複素サブキャリア振幅の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルの前記N個の周波数領域成分をサブバンドMサブキャリアワイドにおいてN個のサブキャリアにマッピングするステップと、 M個の離散時間領域値の基準シーケンスを生成するよう、前記M個の複素サブキャリア振幅の組に対してMポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行するステップと、 前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスのN_(A)-1個の巡回シフト遅延バージョンを生成するステップと、 前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスを用いて前記N_(A)個のアンテナの中の第1のアンテナでSC-FDMAを送信するステップと、 夫々の他のアンテナについて、前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの前記N_(A)-1個の巡回シフト遅延バージョンの夫々1つを用いて生成される夫々のSC-FDMAを送信するステップと を有する方法。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を 「 N_(A)が4であるN_(A)個のアンテナを有する無線通信装置におけるシングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)アップリンク伝送ダイバーシティのための方法であって、 N個の変調されたデータシンボルのグループに関し、 前記N個の変調されたデータシンボルのN個の周波数領域成分の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルに対してNポイント離散フーリエ変換(DFT)を実行するステップと、 M(M>N)個の複素サブキャリア振幅の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルの前記N個の周波数領域成分をサブバンドMサブキャリアワイドにおいてN個のサブキャリアにマッピングするステップと、 M個の離散時間領域値の基準シーケンスを生成するよう、前記M個の複素サブキャリア振幅の組に対してMポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行するステップと、 前記基準シーケンスに対して夫々M/4、-M/4及びM/2だけ巡回シフトされる前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの3個の巡回シフト遅延バージョンを生成するステップと、 前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスを用いて前記N_(A)個のアンテナの中の第1のアンテナでSC-FDMAを送信するステップと、 夫々の他のアンテナについて、前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの前記N_(A)-1個の巡回シフト遅延バージョンの夫々1つを用いて生成される夫々のSC-FDMAを送信するステップと を有する方法。 」 (下線部は補正箇所を示す。) という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、シフト補正の有無、補正の目的要件について 上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内において、本件補正前の「2以上であるN_(A)個のアンテナ」を「N_(A)が4であるN_(A)個のアンテナ」に限定するとともに、本件補正前の「前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスのN_(A)-1個の巡回シフト遅延バージョン」を、「前記基準シーケンスに対して夫々M/4、-M/4及びM/2だけ巡回シフトされる前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの3個の巡回シフト遅延バージョン」に限定するものであるから、特許請求の範囲を限定的に限縮するものである。 したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4(シフト補正)項の規定に適合することは明らかであり、また、同法第17条の2第5項第2号(補正の目的)に掲げる特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。 (2)独立特許要件について 上記補正は、特許請求の範囲の限縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて、以下検討する。 ア 補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。 イ 引用発明及び技術事項 [引用発明] 原査定の拒絶の理由に引用されたCristina Ciochina, Damien Castelain, David Mottier, and Hikmet Sari,Single-Carrier Space-Frequency Block Coding Performance Evaluation([当審仮訳]:シングルキャリア空間周波数ブロック符号化 性能評価),Vehicular Technology Conference, 2007. VTC-2007 Fall. 2007 IEEE 66th ,2007年10月3日(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「 As opposed to OFDMA, i.e. MC FDMA, it seems that a SCFDMA technique would be suited to combine the low PAPR properties of SC transmission with the advantages of FDMA access. The frequency-domain implementation of SC-FDMA, also called DFT (Discrete Fourier Transform)-spread OFDM, has been chosen by the 3GPP (Third Generation Partnership Project) to be the uplink air interface for the Long Term Evolution (LTE) of UMTS (Universal Mobile Terrestrial Systems). This technique is in fact a DFT-precoded OFDMA which keeps the FDMA-like multiple access type, while regaining the low-variation envelope characteristics of SC transmission by means of DFT precoding.」 (715ページ左欄下から2行目?右欄10行目) ([当審仮訳]: OFDMA、すなわちMC FDMAとは対照的に、SCFDMA技術はFDMAアクセスの利点とSC送信の低いPAPR特性を組み合わせるために適しているであろう。DFT(離散フーリエ変換)- spread OFDMとも呼ばれるSC-FDMAの周波数領域実装は、UMTS(ユニバーサル・モバイル・地上システム)のロング・ターム・エボリューション(LTE)のためのアップリンクエアインタフェースとして3GPP(第三世代パートナーシッププロジェクト)によって選択されている。この技術は、実際に、DFTプリコーディングによるSC送信の低変動エンベロープ特性をリゲインさせながら、FDMAのような多重アクセス・タイプを維持する、DFTプレコードOFDMAである。) (イ)「 B. Open-Loop Transmit Diversity in SC-FDMA Future generations of mobile terminals may employ multiple transmit antennas and RF chains to increase user-throughput and/or coverage in uplink. Antennas may thus be used for spatial multiplexing or diversity enhancement. To maximize overall network performance, a dynamic joint optimization of the coding, modulation and antenna schemes is needed according to the propagation conditions for each terminal. In the sequel, we focus on open-loop transmit diversity schemes which can increase performance of cell-edge terminals without available or reliable a priori channel information. Various open loop transmission strategies are investigated here. On one hand, Alamouti coding [9] takes benefit from decorrelation among signals radiated from antenna pairs to double diversity with both very low complexity and optimum decoding performance [8]. As a result of system design, OFDM-based transmission ensures non-selective fading on each subcarrier, fact that makes Alamouti scheme particularly attractive when precoding is processed on the frequency components of the signal, i.e. before the inverse Discrete Fourier Transform (IDFT), at the transmitter side. On the other hand, transmit diversity schemes that don't involve any specific decoding scheme have been proposed: Cyclic Delay Diversity (CDD) [10] consists in transmitting cyclically delayed copies of the original signal from the different transmit antennas whilst Transmit Antenna Selection (TAS) relies on switching between multiple transmit antennas during the transmission of a coded data block [11]. Fig.1 presents the related transmitter block diagrams with two transmit antennas and M out of N allocated subcarriers. The Alamouti transmit diversity case is depicted in Fig. 1a).M modulation symbols x_(k)^((i)) (k=0…M-1) compose data block vector x^((i)), which is jointly DFT-precoded. DFT-output vectors s^((i)) are then Alamouti precoded to form two M-sized vectors s^(Tx1(i)) and s^(Tx2(i)). Mapping of vector s^(Tx1(i)) (resp. s^(Tx2(i))) on M out of N inputs of the IDFT is applied on antenna branch Tx1 (resp. Tx2) according to the subcarrier mapping strategy. A cyclic prefix (CP) is inserted in order to avoid inter-symbol interference. Alamouti precoding is processed between the frequency components of single-carrier signals, i.e., on vectors s^((i)) obtained after DFT for reasons detailed in [6]. Fig. 1b) corresponds to the case when either Open-Loop TAS (OL-TAS) or CDD is employed as transmit diversity technique. Only one IDFT module is needed. In the case of OL-TAS, a switch sends the signal (the striped boxes are inactive) on either the first or the second transmit antennas, under some constraints detailed in section III. In the CDD case, both transmit-antennas are simultaneously active, antenna Tx2 transmitting a cyclically delayed copy of the signal transmitted on antenna Tx1. Here, CP insertion is performed after the cyclic shift. (716ページ左欄10行目?右欄4行目) ([当審仮訳]: B. SC-FDMAにおけるオープンループ送信ダイバーシティ モバイル端末の将来の世代は、アップリンクでユーザスループットおよび/またはカバレッジを増加させるために複数の送信アンテナ及びRFチェーンを使用することになる。アンテナは、そのような空間多重化又はダイバーシティ強化のために使用される。ネットワーク全体のパフォーマンスを最大化するために、符号化、変調及びアンテナ方式の動的な同時最適化は、各端末の伝搬状況に応じて必要とされる。後段では、有効性もしくは信頼性のあるプライオリチャネル情報なしでセル端の端末の性能を向上させることができる、オープンループ送信ダイバーシティ方式に焦点を当てる。 様々なオープンループ送信ストラテジーをここで検討する。まず、アラムーチ符号[9]は、とても低い複雑性と最適な復号性能[8]でダイバーシティをダブル化するためにアンテナのペアから放射される信号間の非相関性に利点がある。システム設計の結果として, OFDMベースの送信は、送信側で信号のOFDM周波数成分、すなわち、離散フーリエ変換(IDFT)以前にプリコーディングが処理されるとき、アラムーチスキームが特にアトラクティブになるという事実から、各サブキャリアでの非選択フェージングを保証する。他方で、特別な復号スキームを含まない送信ダイバーシティスキームが提案されてきた。巡回遅延ダイバーシティ(CDD)[10]は、異なった送信アンテナからオリジナルな信号の遅延コピーを巡回的に送信するのに対し、送信アンテナセレクション(TAS)は、コード化されたデータブロックの送信期間の間、複数のアンテナ間でのスイッチングに依存する。図1は、2個の送信アンテナとNのうちMに割り当てられたサブキャリアの関連する送信ブロック図を示す。 アラムーチ送信ダイバーシティのケースが、図1a)に図式化される。M変調シンボルx_(k)^((i))(k=0、・・・、M-1)は、データブロックベクトルx^((i))を形成し、それらは同時にDFTプリコードされる。DFT出力ベクトルs^((i))は、それから、2つのサイズMのベクトルs^(Tx1(i))とs^(Tx2(i))を形成するためアラムーチ符号化される。IDFTのN入力のうちMへのベクトルs^(Tx1(i))(s^(Tx2(i)))のマッピングが、サブキャリアマッピングストラテジーに従いアンテナブランチTx1(Tx2)に適用される。サイクリックプレフィックス(CP)が、シンボル間干渉を避けるために挿入される。アラムーチプレコーディングは、シングルキャリア信号の周波数成分間、すなわち、[6]で詳述された理由のためDFTの後で得られるベクトルs^((i))について処理される。 図1b)は、オープンループTAS(OL-TAS)またはCDDが送信ダイバーシティ技術として採用されている場合に対応する。IDFTモジュールは、一つだけ必要となる。OL-TASの場合、セクションIIIで詳述するいくつかの制約の下で、スイッチが、第1または第2の送信アンテナのいずれかに信号を送信する(ストライプのボックスは非アクティブである)。CDDの場合には、双方の送信アンテナが同時にアクティブとなり、第1のアンテナで送信される信号の巡回遅延コピーが第2のアンテナで送信される。ここで、CP挿入は、巡回シフトの後に処理される。) (ウ) 「 Figure 1. SC-FDMA transmitter (M out of N allocated subcarriers, 2 transmit antennas): a) Alamouti-based transmit diversity; b) Open-Loop Transmit Antenna Selection (OL-TAS, only the gray box is active) or Cyclic Delay Diversity (CDD, only the striped boxes are active).」(716ページ右欄最上段) ([当審仮訳]: 図1 SC-FDMA送信機(NのうちMにサブキャリア割当、2個の送信アンテナ):a)アラムーチ送信ダイバーシティ;b)オープンループ送信アンテナ選択(OL-TAS、グレイのボックスのみアクティブ)または巡回遅延ダイバーシティ(CDD、ストライプのボックスのみアクティブ)) (エ)「 C. Cyclic Delay Diversity (CDD) Let us consider a system with two Tx antennas like in Fig. 1b. The signal after the N-point IDFT is split between two antenna branches: the original SC-FDMA symbol is sent on Tx1, and the SC-FDMA symbol on Tx2 is cyclically shifted by a delay 0≦δ≦N-1. At the receiver, the cyclic delayed copy is transparently received as additional echo or multipath. Let us denote by h_(k )^((rx,tx)) the complex valued channel coefficient on subcarrier k from transmit antenna tx to receive antenna rx. At the receive antenna rx, the superposition of the original signal and the virtual echo results in a transformed channel coefficient (式省略) CDD technique transforms a system with multiple transmit antennas into an equivalent single transmit antenna system; the transformed channel finds its frequency selectivity increased as a result of the virtual echoes produced by the CDD technique.」 (718ページ右欄6行目-21行目) ([当審仮訳]: C.巡回遅延ダイバーシティ(CDD) 図1bのような2つの送信アンテナを使用したシステムを考えてみる。NポイントIDFT後の信号は、2つのアンテナに枝分かれする:オリジナルなSC-FDMAシンボルは、Tx1に送られ、Tx2のSC-FDMAシンボルは、遅延δ( 0≦δ≦N-1)だけ巡回シフトされたものとなる。受信機では、巡回遅延されたコピーは付加的なエコー又はマルチパスとして透過的に受信される。送信アンテナtxから受信アンテナrxへのサブキャリアkの複素数値チャネル係数をh_(k)^((rx、tx))によって示す。受信アンテナrxにおいて、オリジナルな信号と仮想エコーとの重畳により変換されるチャネル係数は、以下のようになる。 (式省略) CDD技術は、複数の送信アンテナを有するシステムを単一の送信アンテナシステムと同等のシステムに変える。変換されたチャネルは、CDD技術によって生成される仮想エコーの結果としてその周波数選択性が増すことが見いだされる。) (オ)「 We assess the performance of our new proposed scheme (SC-SFBC) with respect to the other existing transmit diversity techniques (SFBC, STBC, OL-TAS and CDD). Let us first consider 5 resource units (60 localized subcarriers) allocated to each user with 2 receive antennas. Results in Fig. 4 show that, for a BER target of 10^(-4), SFBC loses 0.2 dB compared to STBC as a result of a larger impact of channel frequency selectivity (no Doppler). SC-SFBC additionally loses 0.2 dB because of quite different channel realizations on jointly precoded frequency components.」 (718ページ右欄下から10行目-最下行) ([当審仮訳]: 我々の新たに提案するスキーム(SC-SFBC)の性能を他の既存の送信ダイバーシティ技術(SFBC、STBC、OL-TASとCDD)と比較して評価する。最初に、各ユーザーに5つのリソースユニット(60の局所的なサブキャリア)を割り当てて、2個の受信アンテナを用いる場合を考える。図4の結果は、BER目標10^(-4)に対して、SFBCがチャネル周波数選択性(ドップラーなし)のより大きなインパクトの結果としてSTBCと比較して0.2dB下がることを示している。SC-SFBCは、一緒にプリコードされた周波数成分の全く異なるチャネル実現のため、0.2dB更に下がる。) 上記摘記事項の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると、 a.図1b)によれば、図1b)のSC-FDMA送信機が、2個のアンテナを有していることが読み取れるから、N_(A)が2であるN_(A)個のアンテナを有するSC-FDMA送信機といえる。さらに、上記摘記事項(イ)の「モバイル端末の将来の世代は、アップリンクでユーザスループットおよび/またはカバレッジを増加させるために複数の送信アンテナ及びRFチェーンを使用することになる。アンテナは、そのような空間多重化又はダイバーシティ強化のために使用される。」の記載及び図1b)のSC-FDMA送信機の全体構成から読み取れる動作からみて、SC-FDMAアップリンク送信ダイバーシティのための方法が記載されていると認められる。よって、引用例には、N_(A)が2であるN_(A)個のアンテナを有するSC-FDMA送信機におけるSC-FDMAアップリンク送信ダイバーシティのための方法が記載されているといえる。 b.図1b)より、図1b)の「DFT(size M)」において、サイズMの変調シンボルのデータブロックに対して、サイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組を出力することが読み取れる。また、上記摘記事項(ア)の「DFT (Discrete Fourier Transform)」(当審仮訳:DFT(離散フーリエ変換))と記載されていることから、「DFT(size M)」において、サイズMの変調シンボルのサイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組を生成するよう、前記サイズMの変調シンボルに対してサイズMの離散フーリエ変換(DFT)を実行するといえる。 c.図1b)より、図1b)の「Zero insertion and subcarrier mapping(M*N)」において、サイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組に対して、ゼロ挿入とサブキャリアマッピングを行うことにより、サイズNのサブキャリア信号の組を出力することが読み取れる。そして、マッピングにおいてゼロ挿入することから、サイズN>サイズM、すなわち、N>Mとなることは明らかである。よって、「Zero insertion and subcarrier mapping(M*N)」において、サイズN(N>M)のサブキャリア信号の組を生成するよう、前記サイズMの変調シンボルの前記サイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組をサイズNのサブキャリアのうちのサイズMのサブキャリアにマッピングするといえる。 d.図1b)より、図1b)の「IDFT(size N)」において、サイズNのサブキャリア信号の組に対して、サイズNのIDFTを実行を実行することが読み取れる。また、上記摘記事項(ア)の「the inverse Discrete Fourier Transform (IDFT)」(当審仮訳:逆離散フーリエ変換(IDFT))の記載及び、上記摘記事項(エ)の「the N-point IDFT」(当審仮訳:NポイントIDFT)の記載から、「IDFT(size N)」において、Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を生成するよう、前記サイズNのサブキャリア信号の組に対してNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行するといえる。 e.上記摘記事項(エ)の「図1bのような2つの送信アンテナを使用したシステムを考えてみる。NポイントIDFT後の信号は、2つのアンテナに枝分かれする:オリジナルなSC-FDMAシンボルは、Tx1に送られ、Tx2のSC-FDMAシンボルは、遅延量δ(0≦δ≦N-1)だけ巡回シフトされたものとなる。」の記載及び、図1b)の「Cyclic delay δ+CP(only for CDD)」において、Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力が入力され、アンテナTx2に出力されることが読み取れることから、「Cyclic delay δ+CP(only for CDD)」において、Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力に対して遅延量δだけ巡回シフトされるNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を生成するといえる。 f.図1b)より、図1b)の「アンテナTx1」において、Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力が「CP(only for CDD)」を経由して入力されることが読み取れ、上記e.を参酌すると、「アンテナTx1」は、巡回シフトされないオリジナルなSC-FDMAシンボルを送信しており、さらに、上記a.も参酌すると、「アンテナTx1」において、Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を用いてN_(A)個のアンテナの中のアンテナTx1でSC-FDMAシンボルを送信するといえる。 g.図1b)より、図1b)の「アンテナTx2」において、Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力が「Cyclic delay δ+CP(only for CDD)」を経由して入力されることが読み取れる。そして、上記e.及び上記f.を参酌すると、アンテナTx2について、Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力に対してN_(A)-1通りの遅延量δだけ巡回シフトされるNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を用いて生成されるSC-FDMAシンボルを送信するといえる。 以上を総合すると、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「 N_(A)が2であるN_(A)個のアンテナを有するSC-FDMA送信機におけるSC-FDMAアップリンク送信ダイバーシティのための方法であって、 サイズMの変調シンボルのデータブロックに関し、 前記サイズMの変調シンボルのサイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組を生成するよう、前記サイズMの変調シンボルに対してサイズMの離散フーリエ変換(DFT)を実行すること サイズN(N>M)のサブキャリア信号の組を生成するよう、前記サイズMの変調シンボルの前記サイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組をサイズNのサブキャリアのうちのサイズMのサブキャリアにマッピングすること Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を生成するよう、前記サイズNのサブキャリア信号の組に対してNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行すること 前記Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力に対して遅延量δだけ巡回シフトされるNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を生成すること 前記サイズNの逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を用いて前記N_(A)個のアンテナの中のアンテナTx1でSC-FDMAシンボルを送信すること アンテナTx2について、前記Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力に対してN_(A)-1通りの遅延量δだけ巡回シフトされるNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を用いて生成されるSC-FDMAシンボルを送信すること を有する方法。」 [技術事項] 同じく原査定の拒絶の理由に引用された、石橋功至、落合秀樹、河野隆二,巡回遅延ダイバーシティを用いた符号化DAPSK変調に関する一検討(電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2006年10月12日,RCS2006-148(以下、「引用例2」という。))には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (カ)「あらまし 近年,遅延ダイバーシティ(Delay diversity)技術が再び注目を集めている。遅延ダイバーシティは送信信号を複数のアンテナから時間遅延させて送信することでダイバーシティ利得を得ることのできる非常にシンプルな送信ダイバーシティ技術である。一方,周波数分割多重(OFDM )と差動符号化振幅位相変調(DAPSK)の組み合わせは,高い周波数利用効率とシンプルな送受信回路系が実現できる技術として知られている。OFDMに遅延ダイバーシティ技術を用いた場合,各アンテナで与えられる時間遅延がガードインターバル長を超える必要性があり,周波数利用効率を著しく低下させてしまう。この問題を解決する手法としてOFDM変調信号を巡回させながら遅延させる巡回遅延ダイバーシティ(CDD)という技術が提案されている。本稿では,巡回遅延ダイバーシティを用いた符号化DAPSK変調方式を提案し,計算機シミュレーションを用いて,提案方式が任意の送信アンテナ本数分のダイバーシティ利得が得られることを示す。また,提案方式のパラメーターの最適化についても議論する。」 (91ページ1行目-9行目) (キ)「 2.1 送信器構成 図1に送信アンテナ数Txのときの、巡回遅延ダイバーシティを用いた符号化DAPSK変調方式の送信器構成を示す。情報系列dは,符号化率R の符号器に入力され,符号語系列cとなる。符号語系列cは直並列変換されて,ビットごとに独立なインターリーブを受ける。t番目のOFDM信号におけるk番目のサブキャリアに対応するインターリーバの出力を(c_(t、k) ^(-0)、・・・、c_(t,k)^(-m-1))とし,これがM値DAPSK 信号に変調されるとする(ここでm = log_(2)Mである)。 (途中省略) DAPSK変調信号は,Nシンボルごとにサブキャリア数NのOFDM信号に変調される。ここでOFDM変調処理は離散逆フーリエ変換を用いて以下のように表される。 (式省略) 本稿では簡単のため,符号長とサブキャリア数は等しいものとして議論する。OFDM変調された信号系列(x_(0),・・・,x_((N-1)))はアンテナごとに異なる巡回遅延を受ける[5]。今アンテナLの送信信号は次のように表される。 (式省略) ここでδは各送信アンテナにおける時間遅延量を決めるパラメータである。巡回遅延された信号はそれぞれGIを付加され,送信される。」 (92ページ右欄10行-93ページ左欄13行) (ク)「3 .計算機シミュレーション 提案方式の特性を計算機シミュレーションを用いて示す。符号器として符号化率1/1,(133, 171)_(8) の畳み込み符号を用いる。サブキャリア数及び符号長はN =N_(c)=2048,変調器は16DAPSK 、受信アンテナ数は簡単のため1本とする.計算機シミュレーションの結果を図3に示す。アンテナで与える遅延量δは1シンボルとしている。またE_(b) は情報1 ビット当たりの送信電力である.数値結果を図3に示す。提案方式はどの送信アンテナ数に対しても,フルダイバーシティを達成できており,高い効果が得られている。またランダムインターリーバ,ブロックインーターリーバ,どちらを用いたでもフルダイバーシティを達成しているが,ランダムインターリーバの実装は不可能であることから,提案ブロックインターリーバが有効であると考えられる。 次に各送信アンテナにおける時間遅延量を決めるパラメータであるδの最適化について議論する。送信アンテナ数Tx=2,符号長及びサブキャリア数をN =N_(c)=256とし,インターリーバとして提案ブロックインターリー バを用いる。最大の遅延量δ_(max) は δ_(max) =N/Tx (12) で与えられる。図4 に数値結果を示す.シミュレーション結果より,幅広いδの領域でほぼ同等の特性が得られている。CDDでは,ダイバーシティ効果を十分に得るためには,遅延量δは、必ず最大遅延広がりτ_(max)よりも大きくなくてはならない[4],[8]。 ゆえに一般的には,δは次の範囲をとる。 δ_(max) <δ≦N/Tx (13) 実際の環境においてδ_(max)は未知であることから,遅延量δは,とりうる範囲で最も大きくとっておくことが望ましい。しかしながら遅延により与えられた位相回転が周波数軸上に周期的な深いノッチディップを引き起こしてしまう可能性があるため,設計の際には十分に注意が必要である[8]。」 (94ページ左欄1行目-右欄8行目) また、図1から、巡回遅延ダイバーシティを用いた送信器において、送信アンテナ毎に時間遅延量δを累積遅延させていく構成が読み取れ、また、図3では、(送信アンテナ数)Tx=4の場合を含めて計算機シミュレーションしていることが読み取れる。 上記(カ)(キ)(ク)の記載及び図1、図3並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例2には以下のような事項が(以下、「技術事項」という。)が記載されていると認める。 「OFDM変調信号を巡回させながら遅延させる巡回遅延ダイバーシティ技術において、送信アンテナ数Tx(Tx=4の場合を含む)、符号長(サブキャリア数)N,各送信アンテナにおける時間遅延量δとするとき、ダイバーシティ効果を十分に得るために、δ=N/Txとすることが望ましいこと。」 ウ 対比・判断 補正後の発明と引用発明とを対比すると (ケ)引用発明の「N_(A)が2であるN_(A)個のアンテナ」と、補正後の発明の「N_(A)が4であるN_(A)個のアンテナ」とは、「N_(A)が複数であるN_(A)個のアンテナ」である点で共通する。また、引用発明の「SC-FDMA送信機」は、無線で通信する装置であることは明らかであるから、補正後の発明の「無線通信装置」に含まれる。してみると、両者は、下記の相違点1は別として、「N_(A)が複数であるN_(A)個のアンテナを有する無線通信装置におけるシングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)アップリンク伝送ダイバーシティのための方法」で共通する。 (コ)引用発明の「サイズM」は、補正後の発明の「N個」と実質的に同じ意味であり、また、引用発明の「変調シンボル」は、補正後発明の「変調されたデータシンボル」に相当する。よって、引用発明の「サイズMの変調シンボルのデータブロック」は、補正後の発明の「N個の変調されたデータシンボルのグループ」に相当する。 (サ)離散フーリエ変換(DFT)により,周波数領域成分が出力されることは技術常識であるから、引用発明の「サイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))」は、M個の周波数領域成分の組といえる。そして、上記(コ)を参酌すると、引用発明の「前記サイズMの変調シンボルのサイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組」は、補正後の発明の「前記N個の変調されたデータシンボルのN個の周波数領域成分の組」に相当する。してみると、引用発明の「前記サイズMの変調シンボルのサイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組を生成するよう、前記サイズMの変調シンボルに対してサイズMの離散フーリエ変換(DFT)を実行すること」は、補正後の発明の「前記N個の変調されたデータシンボルのN個の周波数領域成分の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルに対してNポイント離散フーリエ変換(DFT)を実行するステップ」に相当する。 (シ)引用発明の「サブキャリア信号の組」が「複素サブキャリア振幅の組」であることは明らかである。また、引用発明の「サイズM」は、補正後の発明の「N個」と実質的に同じ意味である。よって、上記(サ)を参酌すると、引用発明の「サイズN(N>M)のサブキャリア信号の組を生成するよう、前記サイズMの変調シンボルの前記サイズMのS_(0)^((i))?S_(M-1)^((i))の組をサイズNのサブキャリア信号のうちのサイズMのサブキャリアにマッピングすること」は、補正後の発明の「M(M>N)個の複素サブキャリア振幅の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルの前記N個の周波数領域成分をサブバンドMサブキャリアワイドにおいてN個のサブキャリアにマッピングするステップ」に相当する。 (ス)引用発明の「Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力」は、逆離散フーリエ変換(IDFT)によって離散時間領域値が出力されることは技術常識であるから、「N個の離散時間領域値」といえ、さらに、(アンテナTx2に対する)巡回シフト遅延の基準となる信号シーケンスともいえる。よって、引用発明の「Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力」は、補正後発明の「M個の離散時間領域値の基準シーケンス」に相当する。したがって、引用発明の「Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を生成するよう、前記サイズNのサブキャリア信号の組に対してNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行すること」は、補正後の発明の「M個の離散時間領域値の基準シーケンスを生成するよう、前記M個の複素サブキャリア振幅の組に対してMポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行するステップ」に相当する。 (セ)上記(ス)を参酌すると、引用発明の「前記Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力に対して遅延量δだけ巡回シフトされる前記Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を生成する」と、補正後の発明の「前記基準シーケンスに対して夫々M/4、-M/4及びM/2だけ巡回シフトされる前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの3個の巡回シフト遅延バージョンを生成するステップ」とは、下記の相違点2は除いて、「前記基準シーケンスに対して所定量だけ巡回シフトされる離散時間領域値の基準シーケンスの巡回シフト遅延バージョンを生成するステップ」である点で共通する。 (ソ)引用発明の「SC-FDMAシンボル」は、補正後の発明の「SC-FDMA」に相当する。そして、上記(ス)を参酌すると、引用発明の「前記Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を用いて前記N_(A)個のアンテナの中のアンテナTx1でSC-FDMAシンボルを送信すること」は、補正後の発明の「前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスを用いて前記N_(A)個のアンテナの中の第1のアンテナでSC-FDMAを送信するステップ」に相当する。 (タ)引用発明の「アンテナTx2」について、アンテナTx1からみて、他のアンテナであるから、「他のアンテナ」と称することは、任意である。そして、上記(ス)、(ソ)を参酌すると、引用発明の「アンテナTx2について、前記Nポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力に対してN_(A)-1通りの遅延量δだけ巡回シフトされるNポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)出力を用いて生成されるSC-FDMAシンボルを送信すること」と、補正後の発明の「夫々の他のアンテナについて、前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの前記N_(A)-1個の巡回シフト遅延バージョンの夫々1つを用いて生成される夫々のSC-FDMAを送信するステップ」とは、下記の相違点2を除き、「他のアンテナについて、前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの前記N_(A)-1個の巡回シフト遅延バージョンを用いて生成されるSC-FDMAを送信するステップ」で共通する。 以上を総合すると、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「N_(A)が複数であるN_(A)個のアンテナを有する無線通信装置におけるシングルキャリア周波数分割多重アクセス(SC-FDMA)アップリンク伝送ダイバーシティのための方法であって、 N個の変調されたデータシンボルのグループに関し、 前記N個の変調されたデータシンボルのN個の周波数領域成分の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルに対してNポイント離散フーリエ変換(DFT)を実行するステップと、 M(M>N)個の複素サブキャリア振幅の組を生成するよう、前記N個の変調されたデータシンボルの前記N個の周波数領域成分をサブバンドMサブキャリアワイドにおいてN個のサブキャリアにマッピングするステップと、 M個の離散時間領域値の基準シーケンスを生成するよう、前記M個の複素サブキャリア振幅の組に対してMポイント逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行するステップと、 前記基準シーケンスに対して所定量だけ巡回シフトされる前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの巡回シフト遅延バージョンを生成するステップと、 前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスを用いて前記N_(A)個のアンテナの中の第1のアンテナでSC-FDMAを送信するステップと、 他のアンテナについて、前記M個の離散時間領域値の基準シーケンスの巡回シフト遅延バージョンを用いて生成されるSC-FDMAを送信するステップと を有する方法。 」 (相違点1) 一致点の「N_(A)が複数であるN_(A)個のアンテナ」に関し、補正後の発明は、「N_(A)が4個」としているのに対して、引用発明は「N_(A)が2個」である点。 (相違点2) 一致点の「巡回シフト遅延バーション」及び「所定量の巡回シフト」に関して、補正後の発明は、「巡回シフト遅延バーション」が3個あり、該3個の「所定量の巡回シフト」が「夫々M/4、-M/4及びM/2」であるのに対して、引用発明は、「巡回シフト遅延バーション」が1個(N_(A)-1個)しかなく、「所定量の巡回シフト」が「1通り(N_(A)-1通り)の遅延量δ」である点。 以下、上記相違点について検討する。 (相違点1)及び(相違点2)について 上記技術事項として示したように、「OFDM変調信号を巡回させながら遅延させる巡回遅延ダイバーシティ技術において、送信アンテナ数Tx(Tx=4の場合を含む)、符号長(サブキャリア数)N,各送信アンテナにおける時間遅延量δとするとき、ダイバーシティ効果を十分に得るために、δ=N/Txとすることが望ましいこと。」は、公知の技術事項である。 そして、上記技術事項も引用発明と同様に、OFDM変調信号を巡回させながら遅延させる巡回遅延ダイバーシティの送信技術に係るものであり、ダイバーシティ効果を十分に得ることを課題とする点においても共通する。してみると、引用発明に上記技術事項を適用し、送信アンテナの数を4個とする(相違点1)とともに、符号長とサブキャリア数を同じNとした上で、各送信アンテナにおける時間遅延量(巡回シフト量)δ=N/4とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。その際、基準となる信号シーケンスに対して各アンテナで時間遅延量δずつ累積遅延していくことになるから、基準となる信号シーケンスに対して3個の巡回シフト遅延バージョン、すなわち、N/4巡回シフト遅延バージョン,2N/4(N/2)巡回シフト遅延バージョン、3N/4(Nが符号長であることから、-N/4と同一)巡回シフト遅延バージョンが生成されること(相違点2)は、当然の事項である。 そして、補正後の発明が奏する効果も、引用発明及び引用例2に記載された技術事項から、当業者が容易に予測できる範囲内のものである。 よって、補正後の発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成26年10月1日に提出された手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。 2.引用発明及び技術事項 引用発明、引用例2に記載された技術事項は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件について」の項で引用発明、引用例2に記載された技術事項として認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明、引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-19 |
結審通知日 | 2015-08-24 |
審決日 | 2015-09-24 |
出願番号 | 特願2011-512797(P2011-512797) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04J)
P 1 8・ 121- Z (H04J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 篤男、大野 友輝 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
▲高▼橋 真之 大塚 良平 |
発明の名称 | SC-FDMA伝送ダイバーシティのためのシステム及び方法 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 西島 孝喜 |