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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1310636
審判番号 不服2015-6588  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-08 
確定日 2016-02-04 
事件の表示 特願2010-267385「ボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成24年5月17日出願公開、特開2012-91860〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年11月30日(優先権主張平成22年9月30日)の出願であって、平成27年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年4月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2.平成27年4月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年4月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、請求項1についての以下の補正を含む。なお、補正後の請求項における下線は請求人が付したものであり、補正個所を示している。
(1)補正前(平成26年6月9日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1)
合成樹脂材料で形成された有底筒状のボトルであって、
底部の底壁部が、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部と、
該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に前記陥没周壁部とともに上方に向けて移動自在に配設され、
前記可動壁部には、複数のリブがボトル軸を中心に放射状に配設され、
前記可動壁部のうち、前記ボトル軸回りの周方向で隣接する前記リブ同士の間に位置する部分の最外周における周長に対する、前記リブの前記周方向における幅の割合が、0.12以上となっていることを特徴とするボトル。
(2)補正後
合成樹脂材料で形成された有底筒状のボトルであって、
底部の底壁部が、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向かうに従い下方に向けて突出する可動壁部と、
該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に前記陥没周壁部とともに上方に向けて移動自在に配設され、
前記可動壁部には、複数のリブがボトル軸を中心に放射状に配設され、
前記可動壁部のうち、前記ボトル軸回りの周方向で隣接する前記リブ同士の間に位置する部分の最外周における周長に対する、前記リブの前記周方向における幅の割合が、0.12以上となっており、
前記可動壁部は、その直径に対するボトル軸方向の高さの割合が0.05以上になっていることを特徴とするボトル。

上記の請求項1に係る補正は、補正前の請求項1が規定する「立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部」について「内側に向かうに従い下方に突出する」と限定し、さらに「可動壁部の高さ」について「直径に対するボトル軸方向の高さの割合が0.05以上になっている」と限定するものである。そして、補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、補正前の発明と同一である。よって、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記の補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

2.補正発明
補正発明は、上記1(2)に記載されたとおりである。

3.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第2010/056517号(以下「刊行物1」という。)には、プラスチック容器の「減圧による力に応答する容器ベース構造」の発明に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)[0002] This invention generally relates to plastic containers
for retaining a commodity, and in particular a liquid commodity.
More specifically, this invention relates to a panel-less plastic
container having a base structure that allows for significant
absorption of vacuum pressures by the base without unwanted
deformation in other portions of the container.
(本発明は、概して、商品、特に液体の商品を保持するプラスチック容器に関連する。具体的には、本発明は、ベースにおいて優れた減圧の吸収性を有するベース構造を備えたパネルレスのプラスチック容器であって、前記ベース以外の他の部位において好ましくない変形が生じないプラスチック容器に関する。(必要があれば刊行物1に対応する特表2012-509226号公報(以下「対応公表公報」という。)の段落0001を参照。))

(イ)[0011] …… Typically, the industry accommodates vacuum
related pressures with sidewall structures or vacuum panels. Vacuum
panels generally distort inwardly under the vacuum pressures in a
controlled manner to eliminate undesirable deformation in the
sidewall of the container.
(……通常、この業界では、側壁構造あるいは減圧パネルによって減圧に対応している。減圧パネルは、通常、容器の側壁における好ましくない変形を回避するため、減圧下では、制御された状態で内部に変形するようになっている。(対応公表公報の段落0011))

(ウ)[0041] The plastic container 10 of the present invention is a
blow molded, biaxially oriented container with a unitary
construction from a single or multi-layer material. ……
(本発明のプラスチック容器10は、ブロー成形された、1層又は複数層の材料からなる単一構造を有する2軸配向容器である。……(対応公表公報の段落0025))

(エ)[0045] The base 20 of the plastic container 10, which extends
inward from the body portion 18, generally includes a chime 32, a
contact ring 34 and a central portion 36. As illustrated in FIGS.
5-8, 10, and 12-18, the contact ring 34 is itself that portion of
the base 20 that contacts a support surface 38 that in turn
supports the container 10. As such, the contact ring 34 may be a
flat surface or a line of contact generally circumscribing,
continuously or intermittently, the base 20. The base 20 functions
to close off the bottom portion of the plastic container 10 and,
together with the elongated neck 14, the shoulder region 16, and
the body portion 18, to retain the commodity.
(プラスチック容器10のベース20は、胴体部18から内部に延び、通常、へり32、接触リング34及び中央部36を含む。図5?8、10、12?18に示されているように、接触リング34は、容器10を支持する支持面38に接触するベース20の一部位である。また、接触リング34は、平坦面あるいはベース20をほぼ連続的あるいは断続的に全体を囲む接触線である。ベース20は、プラスチック容器10の底部分を閉塞する機能と、細長首部14、肩部16及び胴体部18ととともに、商品を保持する機能とを有する。(対応公表公報の段落0029))

(オ)[0046] …… To accommodate vacuum forces while allowing for
the omission of vacuum panels and pinch grips in the body portion
18 of the container 10, the base 20 of the present invention adopts
a novel and innovative construction. Generally, the central portion
36 of the base 20 has a central pushup 40 and an inversion ring 42.
The inversion ring 42 includes an upper portion 54 and a lower
portion 58. When viewed in cross section (see FIGS. 5, 7, 10, 13
and 16), the inversion ring 42 is generally "S" shaped.
Additionally, the base 20 includes an upstanding circumferential
wall or edge 44 that forms a transition between the inversion ring
42 and the contact ring 34.
(……容器10の胴体部18から減圧パネル及びピンチグリップを省略しつつ、減圧の力に対応するために、本発明に係るベース20は、新規で画期的な構造を採用する。概略的に、ベース20の中央部36は、押上部40と、反転リング42とを有する。反転リング42は、上部54と下部58とを含む。断面図では(図5、7、10、13及び16参照)、反転リング42は、略“S”字形状を成す。さらに、ベース20は、反転リング42と接触リング34との間の遷移部を形成する、直立した円周状の壁あるいは縁44を含む。(対応公表公報の段落0030))

(カ)[0047] As shown in FIGS. 1-8, 10, and 12-18, the central
pushup 40, when viewed in cross section, is generally in the shape
of a truncated cone having a top surface 46 that is generally
parallel to the support surface 38. Side surfaces 48, which are
generally planar in cross section, slope upward toward the central
longitudinal axis 50 of the container 10. The exact shape of the
central pushup 40 can vary greatly depending on various design
criteria. ……
(図1?8、10及び12?18に示すように、断面をみると、中央押上部40は、概略、支持面38に略平行な上面46を有する略円錐台の形状である。側面48は、断面が概ね平面であり、容器10の中央縦軸50の方向に向けて上方に傾斜する。中央押上部40の正確な形状は、様々な設計基準に応じて大きく変化し得る。……(対応公表公報の段落0031))

(キ)[0050] When initially formed, the central pushup 40 and the
inversion ring 42 remain as described above and shown in FIGS. 1,
3, 5, 7, 10, 13 and 16. Accordingly, as molded, a dimension 52
measured between the upper portion 54 of the inversion ring 42 and
the support surface 38 is greater than or equal to a dimension 56
measured between the lower portion 58 of the inversion ring 42 and
the support surface 38. Upon filling, the central portion 36 of the
base 20 and the inversion ring 42 will slightly sag or deflect
downward toward the support surface 38 under the temperature and
weight of the product. As a result, the dimension 56 becomes almost
zero, that is, the lower portion 58 of the inversion ring 42 is
practically in contact with the support surface 38. Upon filling,
capping, sealing, and cooling of the container 10, as shown in
FIGS. 2, 4, 6, 8, 12, 14 and 17, vacuum related forces cause the
central pushup 40 and the inversion ring 42 to rise or push upward
thereby displacing volume. In this position, the central pushup 40
generally retains its truncated cone shape in cross section with
the top surface 46 of the central pushup 40 remaining substantially
parallel to the support surface 38. The inversion ring 42 is
incorporated into the central portion 36 of the base 20 and
virtually disappears, becoming more conical in shape (see FIGS. 8,
14 and 17). Accordingly, upon capping, sealing, and cooling of the
container 10, the central portion 36 of the base 20 exhibits a
substantially conical shape having surfaces 60 in cross section
that are generally planar and slope upward toward the central
longitudinal axis 50 of the container 10, as shown in FIGS. 6, 8,
14 and 17. This conical shape and the generally planar surfaces 60
are defined in part by an angle 62 of approximately 7° to
approximately 23°, and more typically between approximately 10°
and approximately 17°, relative to a horizontal plane or the
support surface 38. As the value of dimension 52 increases and the
value of dimension 56 decreases, the potential displacement of
volume within container 10 increases. ……
(最初形成されたとき、中央押上部40及び反転リング42は、前述し、図1、3、5、7、10、13及び16に示されるような状態のままである。したがって、型成形されたように、反転リング42の上部54と支持面38との間の寸法52は、反転リング42の下部58と支持面38との間の寸法56より大きいか同じになる。充填の際、ベース20の中央部36と反転リング42は、製品の温度及び重量によって、わずかに沈下、すなわち支持面38に向けて下方に歪む。その結果、寸法56は、ほとんど零となり、反転リング42の下部58は、事実上、支持部38に接触した状態となる。容器10に充填し、蓋をし、密封し、そして、冷却する際、図2、4、6、8、12、14及び17に示すように、減圧による力は、容量変化によって、中央押上部40及び反転リング42を持ち上げる、すなわち上方に押し上げる。この位置において、中央押上部40は、概して、支持面38に実質的に平行のままである、中央押上部40の上面46とともに、断面において円錐台形状に保持される。反転リング42は、ベース20の中央部36に組み込まれ、より円錐形となって、実質的に見えなくなる(図8、14及び17参照)。したがって、容器10に蓋をし、密封し、冷却する際、ベース20の中央部36は、図6、8、14及び17に示すように、断面において、略平面と、容器10の中央縦軸50に向けて上方に向かう傾斜とを有する面60を備えた、実質、円錐形状を成す。この円錐形状及び略平行面60は、水平面あるいは支持面38に対して、約7°から約23°まで、より典型的には、約10°から約17°までの角度62によってある程度規定される。寸法52が増大し、寸法56が減少するほど、容器10の容量を変化させる能力が増大する。……(対応公表公報の段落0034))

(ク)[0058] The inventors have further determined that the "S"
geometry of the inversion ring 42 may even perform better when
additional, alternative hinges or hinge points are provided (see
FIGS. 13-18). That is, as illustrated in FIGS. 13-15, the inversion
ring 42 may include grooves 100 located between the upper portion
54 and the lower portion 58 of the inversion ring 42. As shown (see
FIGS. 13-15), grooves 100 generally completely surround and
circumscribe the central pushup 40. It is contemplated that grooves
100 may be continuous or intermitten. While two (2) grooves 100 are
shown (see FIG. 15), and is the preferred configuration, those
skilled in the art will know and understand that some other number
of grooves 100, i.e., 3, 4, 5, etc., may be appropriate for some
container configurations.
(本発明者は、さらに、反転リング42の“S”字形状に、別ヒンジ又はヒンジ点を追加すると、より良い機能を果たすことを見つけている(図13?18参照)。すなわち、図13?15に示すように、反転リング42は、反転リング42の上部54と下部58との間に位置する溝100を含み得る。図示されているように(図13?15参照)、溝100は、概して、中央押上部40を完全に取り囲んでいる。溝100は、連続的あるいは断続的であってよい。2つの溝100が示されており(図15参照)、好ましい実施形態である。当業者は、ある容器の構造には溝100を他の数、例えば3つ、4つ、5つなどにすると適切となり得ることを理解できるであろう。(対応公表公報の段落0050))

(ケ)[0059] Alternatively, it is contemplated that the above-
described alternative hinges or hinge points may take the form of a
series of indents or dimples. That is, as illustrated in FIGS.
16-18, the inversion ring 42 may include a series of indents or
dimples 102 formed therein and throughout. As shown (see FIGS.
16-18), the series of indents or dimples 102 are generally circular
in shape. The indents or dimples 102 are generally spaced
equidistantly apart from one another and arranged in a series of
rows and columns that completely cover the inversion ring 42.
Similarly, the series of indents or dimples 102 generally
completely surround and circumscribe the central pushup 40 (see
FIG. 18). It is equally contemplated that the series of rows and
columns of indents or dimples 102 may be continuous or intermitten.
The indents or dimples 102, when viewed in cross section, are
generally in the shape of a truncated or rounded cone having a
lower most surface or point and side surfaces 104. Side surfaces
104 are generally planar and slope inward toward the central
longitudinal axis 50 of the container 10. The exact shape of the
indents or dimples 102 can vary greatly depending on various design
criteria. While the above-described geometry of the indents or
dimples 102 is preferred, it will be readily understood by a person
of ordinary skill in the art that other geometrical arrangements
are similarly contemplated.
(また、前述した別ヒンジ又はヒンジ点は、一連の凹部又は窪みの形状を採り得る。すなわち、図16?18に示されているように、反転リング42は、その中の至る所に形成された、一連の凹部又は窪み102を含み得る。図示されているように(図16?18参照)、一連の凹部又は窪み102は、概して、環状を成している。凹部又は窪み102は、概して、互いに等距離に離間して配置されており、また、反転リング42を完全に覆う一連の行及び列として配列されている。同様に、凹部又は窪み102は、概して、中央押上部40を完全に囲んでいる(図18参照)。凹部又は窪み102の一連の行及び列は、連続的あるいは断続的となり得る。凹部又は窪み102は、断面で見ると、先端を切り取った又は丸みのある、最下面又は最下点、及び側面104を有する略円錐台形状を成す。側面104は、略平面かつ容器10の中央縦軸50の内側に向かう傾斜である。凹部又は窪み102の正確な形状は、種々の設計基準に応じて大きく変化し得る。前述した凹部又は窪み102の配列は好ましいが、当業者は、他の配列も考え得ることを直ちに理解するであろう。(対応公表公報の段落0051))

(コ)Figure-1、Figure-2には、有底筒状のボトル状のプラスチック容器10が示されている。

(サ)Fig-13?Fig-15には、ベース20の反転リング42に、追加の別ヒンジ又はヒンジ点として機能する2つの溝100(上記(ク)参照)を設けた形態が示されており、Fig-15には、これら2つの溝100は、ボトル状の容器10の軸を中心にした円状の溝であることが示されている。

(シ)Fig-16には、ベース20の断面形状として、成形時に外周縁部に位置する接触リング34と、該接触リング34の径方向の内側から連なり上方に向けて延びる壁あるいは縁44を備える形態が示されている。ベース20の断面形状は、さらに、該壁あるいは縁44の上端部54から容器の径方向の内側に向かい、円錐台形の中央押上部40へと向けて延びる反転リング42を備えており、該反転リング42は、該壁あるいは縁44の上端部54から、容器の径方向の内側に向かうに従い下方に向けて突出する、下部58に到るまでの「反転リング42の径方向外側部分」と、下部58で上方に方向を変更して中央押上部40の側面48まで延び、該側面48に接続する「反転リング42の径方向内側部分」からなる形態が示されている。

(ス)Fig-17には、Fig-16に示されたベース部20の反転リング42が壁44との接続部である上端部を中心に立ち上がった状態が示されている。

(セ)Fig-18には、反転リング42に「一連の凹部又は窪み102」が中央押上部40の上面46から、ボトル状の容器10の軸を中心にして、多数本(36本)の放射線状に配設された形態が示されている。

(2)上記の記載事項を、補正発明に照らして整理する。
ア.上記(1)(キ)の「反転リング42の上部54と支持面38との間の寸法52」と、同「反転リング42の下部58と支持面38との間の寸法56」との差は、上記(1)(シ)の「反転リング42の径方向外側部分」の「容器軸方向高さ」と呼ぶことができる。Fig-13、Fig-16からみて、この「反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さ」は、「ある高さ」を有している。この「ある高さ」が、反転リング42の直径(Fig-13又はFig-16の符号「B」参照)に対して、「ある割合」になっていることは、自明である。

イ.上記の(1)に摘記した事項及び、上記アで検討した事項を踏まえると、刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
《引用発明》
A.プラスチックで形成された有底筒状のボトル状の容器10であって、
B.ベース20が、
B-1.外周縁部に位置する接触リング34と、
B-2.該接触リング34の、容器径方向内側から連なり上方に向けて延びる壁あるいは縁44と、
B-3.該壁あるいは縁44の上端部から容器径方向の内側に向かうに従い下部58まで下方に向けて突出する反転リング42の径方向外側部分と、
B-4.該下部58から上方に向けて延びる反転リング42の径方向内側部分と、該径方向内側部分に接続する中央押上部40の側面48と、を備え、
C.前記反転リング42は前記壁あるいは縁44との接続部を中心に、前記中央押上部40とともに上方に向けて移動自在に配設され、
D.前記反転リング42には、一連の凹部又は窪み102が、ボトル状の容器10の軸を中心にして、多数本の放射線状に配設され、
E.前記反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さは、反転リング42の直径に対して、ある割合になっている、
F.ボトル状の容器。

4.補正発明と引用発明との対比
引用発明の構成Aの「プラスチック」及び「ボトル状の容器10」は、それぞれ補正発明の「合成樹脂材料」及び「ボトル」に相当する。
引用発明の構成Bの「ベース20」は、補正発明の「底部の底壁部」に相当する。
引用発明の構成B-1の「接触リング34」は、補正発明の「接地部」に相当する。
引用発明の構成B-2の「容器径方向」及び「壁あるいは縁44」は、それぞれ補正発明の「ボトル径方向」及び「立ち上がり周壁部」に相当する。
引用発明の構成B-3の「反転リング42の径方向外側部分」は、補正発明の「可動壁部」に相当する。
引用発明の構成B-4の「反転リング42の径方向内側部分」と「中央押上部40の側面48」とを合わせた構成は、補正発明の「陥没周壁部」に相当する。
引用発明の構成Cの「反転リング42は前記壁あるいは縁44との接続部を中心に、前記中央押上部40とともに上方に向けて移動自在に配設され」は、補正発明の「可動壁部は、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に前記陥没周壁部とともに上方に向けて移動自在に配設され」との要件を満たす。
本願明細書段落0023の「図示の例では、リブ26は、上方に向けて曲面上に窪んだ複数の凹部26aが径方向に沿って断続的に、かつ真直ぐ延在して構成されている。」という記載及び図2、3の記載から、補正発明の「リブ」は、「複数の凹部が径方向に沿って断続的に、かつ真直ぐ延在」する形態を含むことが明らかである。一方、刊行物1の段落0059の記載(上記3(1)(ケ)参照)及び図16?18から、引用発明の「一連の凹部又は窪み102」が、補正発明の「リブ」の上記形態と同様に「複数の凹部が径方向に沿って断続的に、かつ真直ぐ延在」する形態であることが了知できる。つまり、補正発明の「リブ」と引用発明の「一連の凹部又は窪み102」とは、同一の形態を含む。したがって、引用発明の構成Dの「多数本の放射線状に配設されている」「一連の凹部又は窪み102」は、補正発明の「複数のリブ」に相当する。
引用発明の構成Dの「反転リング42には、一連の凹部又は窪み102が、ボトル状の容器10の軸を中心にして、多数本の放射線状に配設されている」は、補正発明の「可動壁部には、複数のリブがボトル軸を中心に放射状に配設され」との要件を満たす。
引用発明の構成Eの「反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さ」は、補正発明の「可動壁部」の「ボトル軸方向の高さ」に相当する。引用発明の構成Eの「反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さは、反転リング42の直径に対して、ある割合になっている」と、補正発明の「可動壁部は、その直径に対するボトル軸方向の高さの割合が0.05以上になっている」とは、「可動壁部は、その直径に対するボトル軸方向の高さの割合がある値になっている」限りにおいて相当する。

したがって、補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
《一致点》
合成樹脂材料で形成された有底筒状のボトルであって、
底部の底壁部が、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向かうに従い下方に向けて突出する可動壁部と、
該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に前記陥没周壁部とともに上方に向けて移動自在に配設され、
前記可動壁部には、複数のリブがボトル軸を中心に放射状に配設され、
前記可動壁部は、その直径に対するボトル軸方向の高さの割合がある値になっているボトル。

《相違点1》
補正発明が「前記可動壁部のうち、ボトル軸回りの周方向で隣接する前記リブ同士の間に位置する部分の最外周における周長に対する、前記リブの前記周方向における幅の割合(以下、本願明細書の記載に倣って「リブ幅比率」という。)が、0.12以上となって」いると規定しているのに対し、
引用発明は、反転リングの周方向で隣接する「凹部又は窪み102」の幅とそれらの間に位置する周長の割合を特定していない点。

《相違点2》
補正発明が「前記可動壁部は、その直径に対するボトル軸方向の高さの割合が0.05以上となっている」と規定しているのに対し、
引用発明は、反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さと、反転リング42の直径との割合を特定していない点。

5.相違点の判断
(1)相違点1について
刊行物1の段落0058、0059の記載からみて、引用発明の「一連の凹部又は窪み102」は、図13?15に示された「円状の溝100」と同様に「追加の別ヒンジ又はヒンジ点」として働くものである(上記3(1)(ク)、同(ケ)、同(サ)参照)。したがって、引用発明の「一連の凹部又は窪み102」では、「一連の凹部又は窪み102」の最外周における周方向に隣接する相互の間隔(周長)に対する、「凹部又は窪み102」の幅の割合(リブ幅比率)が大きいほど、「円状の溝100」と同様な「追加の別ヒンジ又はヒンジ点」として機能しやすいことが、当業者に明らかである。そうすると、引用発明において、「凹部又は窪み102」を「追加の別ヒンジ又はヒンジ点」として機能しやすくすることを考慮して、リブ幅比率が0.12以上である構成にすることは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。

(2)相違点2について
刊行物1の段落0050には、引用発明の反転リングについて「寸法52が増大し、寸法56が減少するほど、容器10の容量を変化させる能力が増大する」と記載されている(上記3(1)(キ)参照)。これは、「反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さ」が大きいほど、容器内容積の大きな変化にも対応できること、すなわち、「優れた減圧の吸収性を有する」(上記3(1)(ア)参照)ことを意味している。そうすると、引用発明の減圧の吸収性を優れたものとすることを考慮して、「反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さ」を大きくし、その結果、反転リング42の径方向外側部分の容器軸方向高さと、反転リング42の直径との割合が0.05以上となるようにすることは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。

(3)補正発明の効果
補正発明を全体としてみても、補正発明が奏する効果は、格別顕著なものではなく、当業者の予測の範囲内の事項である。したがって、補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、補正前(平成26年6月9日に補正された)特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明という。」)は上記第2の1(1)のとおりである。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項及び引用発明は、上記第2の3のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、補正発明を特定する事項の一部である、可動壁部の突出方向についての限定事項、及び可動壁部の高さと直径との割合についての限定事項を欠くもので、他の構成については補正発明と差異がない。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、本願発明をさらに限定したものに相当する補正発明が、上記のとおり引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
原査定は妥当である。よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-24 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-14 
出願番号 特願2010-267385(P2010-267385)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 幸雄  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 栗林 敏彦
三宅 達
発明の名称 ボトル  
代理人 志賀 正武  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 鈴木 三義  

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