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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F04B
管理番号 1310943
審判番号 無効2012-800050  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-04-06 
確定日 2016-01-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4716522号「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」の特許無効審判事件についてされた平成25年6月4日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10193号平成26年3月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 特許第4716522号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4716522号に係る出願は、平成10年9月22日に出願した特願平10-268475号(優先権主張平成9年10月17日)の一部を平成12年10月12日に新たな特許出願とした特願2000-312221号の一部を、平成19年7月10日に新たな特許出願としたものであって、平成23年4月8日に特許の設定登録がなされた。
その後、請求人より平成24年4月6日に、本件請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の特許について特許無効審判の請求がなされた。

本件特許無効審判における経緯は、概略、以下のとおりである。

平成24年 4月 6日 無効審判請求
平成24年 6月26日 答弁書
平成24年 7月19日 無効理由通知
平成24年 8月21日 意見書(被請求人)
平成24年 8月21日 訂正請求書(被請求人)
平成24年10月 9日 弁駁書(請求人)
平成24年12月 4日 審理事項通知書
平成25年 1月18日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成25年 1月18日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年 2月 4日 上申書(請求人)
平成25年 2月 8日 第1回口頭審理
平成25年 3月 1日 審決の予告
平成25年 3月28日 上申書(被請求人)
平成25年 6月 4日 第1次審決
平成26年 3月25日 知財高裁にて第1次審決取消し
平成26年12月 1日 上申書(請求人)
平成26年12月24日 無効理由通知
平成27年 1月14日 上申書(被請求人)
平成27年 9月25日 上申書(被請求人)

第2 当事者の主張
(1)請求人の主張の概要
(ア)第1次審決までの主張
・無効理由1(分割に係る原出願と同一発明に基づく無効理由)
本件特許は、特許第4312941号(甲第1号証)に係る出願を原出願とする分割出願であり、本件特許発明は特許第4312941号の請求項1に係る特許発明(以下、「本件親特許発明」という。)と同一であるから、本件特許は、特許法第39条第1項若しくは第2項により、特許を受ることのできないものである。(審判請求書25頁1行?33頁3行)
・無効理由2
本件特許発明は甲第2号証(実願平2-104147号(実開平4-62368号)のマイクロフィルム)及び甲第3号証(特開平5-170038号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
・無効理由3
本件特許発明は甲第4号証(特開平5-272391号公報)及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
・無効理由4
本件特許発明は不明確であるから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・無効理由5
本件特許発明は実施不可能であるから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
・無効理由6
本件特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(イ)第1次審決、及び、第1次審決取消し以降の主張
(平成26年12月1日差出の上申書の主張)
請求人は、審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、本件訂正発明は、甲第3号証に記載される発明及び周知慣用技術に基づき進歩性を欠如していることを主張したものの、上記主張にかかる無効理由は、第1次審決及び、審決取消訴訟事件(知的財産高等裁判所平成25年(行ケ)第10193号事件)の判決(甲第39号証)において判断が行われていない。
他方で、原告を被請求人とし、被告を請求人とする大阪地方裁判所平成22年(ワ)第18041号特許権侵害差止等請求事件の平成25年7月11日言渡の判決(甲第42号証、106頁7?9行、107頁2、3行)、また、控訴人を被請求人とし、被控訴人を請求人とする知的財産高等裁判所平成25年(ネ)第10069号特許権侵害差止等請求控訴事件の平成26年5月29日言渡の判決(甲第51号証、24頁15行?36頁13行)においては、上記主張にかかる無効理由に基づき、本件訂正発明は特許無効審判において無効にされるべきものと判示された。
したがって、再開後の本審判事件において、本件訂正発明は、甲第3号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとする無効理由について判断されるべきである。

(2)被請求人の主張の概要
(ア)無効理由1?5について
被請求人は答弁書等において、無効理由1?6は何れも根拠が無く、本件特許発明は、特許性を有するものである旨主張している。
(イ)第1次審決取り消し以降の主張
当審は、平成26年12月24日付けで、本件訂正発明は刊行物1(特開平5-170038号公報(甲第3号証))、刊行物2(実願平2-104147号(実開平4-62368号)のマイクロフィルム(甲第2号証))に基づき容易に発明をすることができたものであるとする無効理由を被請求人に通知し、期日を指定して意見書の提出を求めたが、被請求人は期日までに意見書の提出を行っていない。
なお、被請求人は、平成27年9月25日付けで上申書を提出し、審決の予告を希望しない旨申し出ている。

第3 平成24年8月21日差出の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という)について
(1)本件訂正請求の内容
被請求人より平成24年8月21日差出の訂正請求書の訂正の内容は、本件特許発明の特許請求の範囲、明細書を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲、訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。

1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド(8)」とあるのを、「ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド(8)」と訂正する。

2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「ソレノイド(8)に駆動電圧を供給して該ソレノイド(8)を駆動する駆動回路(7)」とあるのを、「ソレノイド(8)に、時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド(8)を駆動する駆動回路(7)」と訂正する。

3.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「電圧が異なる交流電圧の電源(1)から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を検出する検出手段(5)」とあるのを、「電圧が異なる複数の交流電圧の電源(1)のうちの任意の交流電圧の電源(1)から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を検出する検出手段(5)」と訂正する。

4.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、「電源(1)の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド(8)に供給するための所望の直流電圧に変換すべく」とあるのを、「電源(1)の電圧に関わりなく一定の平均電圧をソレノイド(8)に供給するための所望の直流電圧に変換すべく」と訂正する。

5.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に、「前記制御信号は、駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、オン・オフのデューティを制御する信号である」とあるのを、「前記制御信号は、駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号である」と訂正する。

6.訂正事項6
特許明細書の段落【0017】に、「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8」とあるのを、「ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド8」と訂正する。

7.訂正事項7
特許明細書の段落【0017】に、「ソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド8を駆動する駆動回路7」とあるのを、「ソレノイド8に、時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド8を駆動する駆動回路7」と訂正する。

8.訂正事項8
特許明細書の段落【0017】に、「電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」とあるのを、「電圧が異なる複数の交流電圧の電源1のうちの任意の交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」と訂正する。

9.訂正事項9
特許明細書の段落【0017】に、「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための所望の直流電圧に変換すべく」とあるのを、「電源1の電圧に関わりなく一定の平均電圧をソレノイド8に供給するための所望の直流電圧に変換すべく」と訂正する。

10.訂正事項10
特許明細書の段落【0017】に、「前記制御信号は、駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし、オン・オフのデューティを制御する信号である」とあるのを、「前記制御信号は、駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号である」と訂正する。

11.訂正事項11
特許明細書の段落【0042】に、「第二?第四の実施形態」とあるのを、「参考例及び第二の実施形態」と訂正する。

12.訂正事項12
特許明細書の段落【0043】に、「第二の実施形態」とあるのを、「第一の参考例」と訂正する。

13.訂正事項13
特許明細書の段落【0047】、【0048】及び【0050】?【0053】に、それぞれ「本実施形態」とあるのを、「本参考例」と訂正する。

14.訂正事項14
特許明細書の段落【0047】に、「実施態様」とあるのを、「参考例」と訂正する。

15.訂正事項15
特許明細書の段落【0054】に、「第三の実施形態」とあるのを、「第二の参考例」と訂正する。

16.訂正事項16
特許明細書の段落【0056】及び【0058】?【0061】に、それぞれ「本実施形態」とあるのを、「本参考例」と訂正する。

17.訂正事項17
特許明細書の段落【0061】に、「第一および第二の実施形態」とあるのを、「第一の実施形態および第一の参考例」と訂正する。

18.訂正事項18
特許明細書の段落【0062】に、「第四の実施形態」とあるのを、「第二の実施形態」と訂正する。

19.訂正事項19
特許明細書の段落【0070】に、「第一、第二および第三の実施形態」とあるのを、「第一の実施形態及び各参考例」と訂正する。

20.訂正事項20
特許明細書の段落【0071】を削除する。

21.訂正事項21
特許明細書の段落【0072】の【図2】に、「本発明の第二の実施形態」とあるのを、「第一の参考例」と訂正する。

22.訂正事項22
特許明細書の段落【0072】の【図3】に、「本発明の第三の実施形態」とあるのを、「第二の参考例」と訂正する。

23.訂正事項23
特許明細書の段落【0072】の【図4】に、「本発明の第四の実施形態」とあるのを、「本発明の第二の実施形態」と訂正する。

(2)訂正事項に対する当審の判断
1.訂正事項1
本件特許発明は「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」であって、「ソレノイド駆動ポンプ」を対象としており、特許明細書(乙第1号証。当初明細書等(甲第13号証)においても同様。)中には、例えば段落【0025】に「該駆動回路はポンプを駆動するソレノイド8に接続され、」と記載されているから、その「ソレノイド」は「ポンプを駆動する」ものであることが記載されている。
そうすると、特許請求の範囲の請求項1に、「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド(8)」とあるのを、「ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド(8)」と訂正することは、「ソレノイド」を限縮するものであって、新規事項の追加でなく、特許請求の範囲の実質拡張・変更でもない。

2.訂正事項2及び訂正事項5
特許明細書(当初明細書等においても同様。)中の関連箇所として、段落【0025】の「該駆動回路7はポンプを駆動するソレノイド8に接続され、電圧を供給してソレノイド8を駆動している。」、段落【0049】の「パルス発生回路29からは、ON時間一定、OFF時間可変の駆動パルスが出力されており、この駆動パルスを用いて駆動回路28のスイッチングが行われる。」、段落【0068】の「デューティ可変発信器45の出力とパルス発生器47の出力とは、AND回路46で形成されるゲート回路に導かれる。そして、AND回路46で形成されるゲート回路の出力によって駆動回路44のスイッチングが行われ、ソレノイド8の駆動制御が行われる。」、段落【0073】の「・・・7、28、44…駆動回路・・・29、38、47…パルス発生器」等が記載されており、駆動回路7と駆動回路28と駆動回路44とは、いずれもソレノイド8を駆動するものであって同様なものと解せ、また、パルス発生器29とパルス発生器47もともに同様なものと解せる。すなわち、特許明細書の図面(乙第1号証。当初明細書等においても同様。)の、図1、図2及び図4において、所望の電圧にする具体的手法は必ずしも一致しないが、駆動回路(7、28、44)によりソレノイド8を駆動する点で一致し、さらに、同じく、図2及び図4のソレノイド駆動ポンプの制御回路において、駆動回路(28、44)にパルス発生器(29、47)から駆動パルスが入力されて、ソレノイド8を駆動する点で一致している。
特に、図2と図4のものは、所望の電圧にする具体的手法が異なるものの、どちらも駆動パルスに応じてソレノイド8が駆動されるものと解せ、この点では同じ技術を開示している。すなわち、図2のものは所望の電圧にする具体的手法の点では本件訂正後の本件特許発明の実施例とはいえないが、駆動パルスに応じてソレノイド8が駆動されるものとの点では、同じ技術を開示していると解せる。
ここで、段落【0049】の「ON時間一定、OFF時間可変の駆動パルス」とは、パルスのオン時間が一定で且つ周期(周波数)が可変なパルスといえ、時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスを意味すると解せる。
そして、駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングすることは、駆動パルス内でスイッチングされなければソレノイドの駆動時に所望の直流電圧がソレノイドに供給されないので技術的意義がないから、少なくとも駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御することになることは技術的に自明である。
これらのことからすると、「ソレノイド(8)に、時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド(8)を駆動する駆動回路(7)」及び「前記制御信号は、駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号である」ことは特許明細書及びその図面(当初明細書等においても同様。)に開示されていたといえる。
さらに、駆動パルスには様々なものがあることは技術的に自明であり、駆動パルスがオン・オフのデューティーを制御されるものであっても、その駆動パルスには様々なものがあることも技術的に自明であるから、これらは「駆動パルス」を特定して「駆動電圧」を限縮するものである。
そうすると、この訂正は特許請求の範囲の限縮を目的とし、新規事項の追加でなく、特許請求の範囲の実質拡張・変更でもない。

3.訂正事項3
特許明細書(当初明細書等においても同様。)中の関連箇所として、例えば、段落【0003】には「電源電圧が異なればそれに対応する駆動回路及びソレノイドを必要とする。」と記載され、例えば、段落【0004】には「ユーザーが使用する電源電圧を間違えると、制御回路が動作不良を起こしたり、焼損するという問題もある。」と記載され、例えば、段落【0022】、【0062】には「電源1が供給可能な電圧は、例えば90?264Vとされる。」と記載されている。これらのことからすると、ユーザーは電圧が異なる複数の交流電圧の電源(1)のうちの任意の交流電圧の電源(1)を使用できることが開示されている。そして、その異なる程度は種々とり得るから、特許請求の範囲の請求項1に、「電圧が異なる交流電圧の電源(1)から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を検出する検出手段(5)」とあるのを、「電圧が異なる複数の交流電圧の電源(1)のうちの任意の交流電圧の電源(1)から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を検出する検出手段(5)」と訂正することは、「電源」を限縮するものであって、この訂正は特許請求の範囲の限縮を目的とし、新規事項の追加でなく、特許請求の範囲の実質拡張・変更でもない。

4.訂正事項4
特許明細書(当初明細書等においても同様。)中の関連箇所として、段落【0001】の「ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する」、段落【0040】の「ソレノイドの駆動電圧のデューティーを制御することにより駆動電圧を一定にできる」、段落【0069】の「デューティーとパルス発生器47の出力とがAND回路46に供給される。・・・、ソレノイド8(を駆動させる駆動回路44)に供給する平均電圧を一定化することが可能となる。」、さらに、段落【0071】の「ソレノイドに与える電気的エネルギである電圧を一定化する」等がある。
これらのことからすると、電気エネルギは電圧であって、さらに、デューティーを制御する本件特許発明ではそれが平均電圧であることが開示されている。
そして、電気エネルギとして、コンデンサの充電量や電流についても開示されていた(特許明細書(当初明細書等においても同様。)の段落【0071】参照。)から、この訂正は「電気エネルギ」を限縮するものであって、特許請求の範囲の限縮を目的とし、新規事項の追加でなく、特許請求の範囲の実質拡張・変更でもない。

5.訂正事項6ないし23
訂正事項6ないし10は特許請求の範囲の訂正に係る訂正事項1ないし5に対応するものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、訂正事項11ないし23は本来本件特許発明の実施例に相当しないものを明瞭とした、明瞭でない記載の釈明を目的とし、いずれも、新規事項の追加ではなく、特許請求の範囲の実質拡張・変更でもない。

6.したがって、上記各訂正事項は、いずれも、特許請求の範囲の減縮及び特許明細書の明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

以上のことから、平成24年8月21日差出の訂正は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5、6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第4 本件訂正発明
本件特許第4716522号の請求項1に係る発明は、平成24年8月21日差出の訂正請求書に添付した、訂正特許請求の範囲、訂正明細書及び本件特許の設定登録時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、「本件訂正発明」という。)。

「ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド(8)に、時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド(8)を駆動する駆動回路(7)と、
電圧が異なる複数の交流電圧の電源(1)のうちの任意の交流電圧の電源(1)から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を検出する検出手段(5)と、
該検出手段(5)で検出した直流電圧に基づいて、駆動回路(7)に提供された直流電圧を、電源(1)の電圧に関わりなく一定の平均電圧をソレノイド(8)に供給するための所望の直流電圧に変換すべく、該駆動回路(7)に制御信号を供給する演算処理部(6)とを具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって、
前記制御信号は、駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。」

第5 当審通知の平成26年12月24日付け無効理由
原告を被請求人とし、被告を請求人とする大阪地方裁判所平成22年(ワ)第18041号特許権侵害差止等請求事件において、同裁判所は、平成25年7月11日に判決を言渡し、同判決中で、本件訂正発明は、甲第3号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づき進歩性を欠如しており、特許無効審判において無効にされるべきものと判示した(甲第42号証、106頁7?9行、107頁2、3行。)。
控訴人を被請求人とし、被控訴人を請求人とする知的財産高等裁判所平成25年(ネ)第10069号特許権侵害差止等請求控訴事件において、知的財産高等裁判所は、平成26年5月29日に判決を言渡し、同判決中で、大阪地方裁判所の上記無効判断を是認し、本件訂正発明は、甲第3号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づき、進歩性を欠如しており、特許無効審判により無効とされるべきものと判示した(甲第51号証、24頁15行?36頁13行)。
当審は、以上の経緯を参酌し、平成24年8月21日差出の訂正請求書による訂正請求について、請求のとおり訂正を認めるとした上で、次の趣旨の無効理由を通知した。
「本件特許第4716522号の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。



刊行物1 特開平5-170038号公報
刊行物2 実願平2-104147号(実開平4-62368号)のマイクロフィルム」

第6 当審の判断
(1)刊行物発明
当審による平成26年12月24日付け無効理由の通知において引用した特開平5-170038号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジンで駆動される発電機と、この発電機により充電されるバッテリとを備えた自動車のエンジンに係り、特に、バッテリの定格電圧と自動車電装品の定格電圧が異なった場合でも柔軟に対応が可能な自動車用エンジン制御装置に関する。」

イ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】自動車用のエンジンでは、例えば燃料ポンプやアイドル回転速度制御用の電磁ソレノイドなどの電気的アクチュエータ等、その運転や制御に種々の電気的な装置(補機)が使用され、更に自動車用として、ヘッドライトなど各種の照明器具や空調装置、音響機器など各種の電装品が数多く使用されているが、これらの補機を含む電装品は、例えば、12[V]などの所定の定格電圧をもっており、当然のこととして、この定格電圧のもとで動作させたときに、初めて所期の性能が発揮されるようになっており、従って、バッテリから供給されている電圧が、この定格電圧よりも高くなると、動作に異常が現われ、故障や火災にいたる虞れが生じる。」

ウ.「【0006】本発明は、バッテリの電圧が定格電圧から上昇しても、常に安定した電装品の動作が可能で、平常と変らぬエンジン性能のもとで安全に自動車の運行を継続させることができる自動車用エンジン制御装置の提供を目的とする。
【0007】
【問題を解決するための手段】上記目的は、バッテリ電圧が定格電圧から上昇するにつれ、デューティ比が100%を含むその近傍から低下して行く矩形波信号を発生する演算手段を設け、この矩形波信号により、自動車用電装品に対する電力の供給を制御するようにして達成される。
【0008】
【作用】演算手段から発生される矩形波信号のデューティ比により、電装品に供給される電流の実効値が制御されるから、バッテリ電圧が定格値から上昇しても、電装品に流れる電流の実効値を定格電圧のときと同じに保つことができ、従って、バッテリの電圧が異常に上昇しても、電装品は平常通りに動作し、自動車を安全に運行させることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明による自動車用エンジン制御装置について、図示の実施例により詳細に説明する。図1は本発明の一実施例で、この図において、12はマイコンのCPUで、エンジンの回転制御に必要な各種データのデジタル処理を行なう。・・・」

エ.「【0010】・・・。20?22はそれぞれアンド(論理積)ゲート回路で、まずアンドゲート回路20はエアコン制御回路200に制御信号20aを供給して電磁クラッチ201を動作させ、アンドゲート回路21はアイドル制御回路210に制御信号21aを供給してスロットルバルブの復帰開度を制御する電磁ソレノイド211を動作させ、アンドゲート回路22は燃料ポンプ回路220に制御信号22aを供給して燃料ポンプ221を動作させる。」

オ.「【0011】・・・。また、この実施例では、図示してないが、このエンジン制御システム10の制御対象となる自動車用エンジンと、これにより駆動されている、定格電圧が12[V]よりも所定値だけ高い発電機と、この発電機の出力により充電される、定格電圧が12[V]のバッテリとを備え、このバッテリから12[V]の電源電圧V_(B )が供給され、これにより全ての電装品が動作されるようになっている。ここで、10はエンジン制御システムの全体を表わす。」

カ.「【0012】次に、この実施例の動作について説明する。CPU12は入出力インターフェイス回路18を介して、自動車用エンジンに設けられている各種のセンサ(この実施例ではエアフローセンサ60、クランク角センサ70、水温センサ80、イグニッシヨンスイッチ90、バッテリ電圧100、車室温センサ110を用いている)からの信号を取り込み、これらの信号を基にして、ROM14に記憶されているエアコン制御用のプログラムと、アイドル制御用のプログラム、それに燃料ポンプ制御用のプログラムを実行し、これにより電磁クラッチ201を駆動するためのクラッチ制御信号20Aと、アイドル制御信号21A、それに燃料ポンプ制御信号22Aを、それぞれ出力する。
【0013】一方、これと並行して、CPU12は、同じくROM14に記憶されているデューティ算定プログラムを実行し、バッテリ電圧100を取り込み、これに応じて図2に示すような、所定のDUTY(デューティ比)[%]を有する矩形波を作成し、これを矩形波信号18AとしてI/O18から出力させ、ゲート回路18を介してアンドゲート回路20?22のそれぞれに入力するように動作する。
【0014】ここで、この矩形波信号18AのDUTYとは、図2の右側に示してあるように、矩形波信号18Aのパルス幅Aと、その周期(=1/周波数)Bの比であり、この実施例では、図3に示すように、この矩形波信号18AのDUTYは、バッテリ電圧V_(B )が12[V]のときに100%で、これからバッテリ電圧V_(B )が上昇するにつれてDUTYが低下してゆくように、CPU12による演算が行なわれるようになっている。なお、この実施例では、矩形波信号18Aの周期B、つまり周波数を一定にしたままで、パルス幅Aを変化させて、図3の特性が得られるようにしている。
【0015】従って、この実施例では、エアコン制御回路200の制御信号20aは、クラッチ制御信号20Aと矩形波信号18Aの論理積を取ったものとなり、以下、同様に、アイドル制御回路210の制御信号21aは、アイドル制御信号21Aと矩形波信号18Aの論理積を取ったものに、そして燃料ポンプ回路220の制御信号22aは、燃料ポンプ制御信号22Aと矩形波信号18Aの論理積を取ったものに、それぞれなる。
【0016】この結果、この実施例によれば、何らかの理由、例えばバッテリのジャンプスタートなどにより、バッテリ電圧V_(B )が24[V]になったとしても、このときには、矩形波信号18AのDUTYが、図3に示すように100[%]から所定の値に低下されるため、各電装品、つまり、図1では電磁クラッチ201と電磁ソレノイド211、それに燃料ポンプ221に供給される電流は、この所定値のDUTYを有する矩形波信号18Aによりチョッパ制御されて、その実効値はバッテリ電圧V_(B )が12[V]のときと同じにされるので、これら電装品が消費する電力は、バッテリ電圧V_(B )が12[V]のときと同じに保たれ、従って、この実施例によれば、常に平常と変らぬ運転状態を保つことが出来る。
【0017】このことについて、更に詳しく説明すると、一般に負荷(電気装置)で消費される電力Pは、この負荷に流れる電流Iの実効値と、この負荷の端子電圧Vの積で表わされ、他方、矩形波信号によりチョッパ制御されたときに装置に流れる電流Iの実効値は、この矩形波動信号のDUTYに比例することが知られている。このため、電圧が変動したときでも、負荷で消費される電力を一定値に保つためには、電圧変動分の2乗に反比例したDUTYの矩形波信号で負荷をチョッパ制御しなければならない。
【0018】そこで、この実施例では、図3に示すように、定格バッテリ電圧値V_(B )=12[V]のときに矩形波信号18AのDUTYを100%とし、バッテリ電圧V_(B )が12[V]以上の電圧V_(B)’のときのDUTYをDUTY(V_(B)’)で表わし、これが、DUTY(V_(B)’)=1/(V_(B)’/V_(B))^(2)[%]で表わされるDUTYの矩形波信号18Aを出力するようになっており、この結果、負荷で消費される電力は、バッテリ電圧が定格電圧以上に変動した場合でも常に定格バッテリ電圧時と同じ値となり、負荷の最適動作状態を維持すること(が)でき、バッテリ電圧の上昇による負荷の過電圧破壊、異常動作が防止できるのである。
【0019】次に、この実施例では、図3に示すように、バッテリ電圧V_(B ) が12[V]の定格電圧以下と、最大電圧V_(Bmax)(=48[V])以上の領域で、矩形波信号18AのDUTYが0[%]になるように構成してあり、この結果、上記の領域では、負荷を駆動する信号の出力が禁止されてしまうことになり、不必要な電流によるバッテリ上がりを防止したり、またバッテリのダンプサージ等による異常電圧発生時での負荷の誤動作や破壊、故障の発生を防止することができる。」

キ.「【0028】
【発明の効果】本発明によれば、バッテリ電圧の異常な上昇による自動車用電装品の過電圧破壊や移動動作を防止する効果がある。また、自動車の高性能化に対する要求が高まるにつれ、将来は、現在の12[V]に代えて、例えば24[V]や、更には48[V]など電圧の高いバッテリを使用するシステムへの移行が必至であるが、このとき、本発明によれば、従来の電装品の定格を変更することなく、そのまま対応が可能であるという効果がある。」

図1も参照すると、「バッテリ電圧100」は、上記カ.の「【0012】次に、この実施例の動作について説明する。CPU12は入出力インターフェイス回路18を介して、自動車用エンジンに設けられている各種のセンサ(この実施例ではエアフローセンサ60、クランク角センサ70、水温センサ80、イグニッシヨンスイッチ90、バッテリ電圧100、車室温センサ110を用いている)からの信号を取り込み」とあるように、「センサ」の一つでもあるといえる。

上記カ.には、CPU12がバッテリ電圧100を取り込み、バッテリ電圧V_(B )が12[V]のときから上昇するにつれてDUTY(デューティ比)が低下してゆくようにCPU12による演算が行なわれ、燃料ポンプ221が消費する電力をバッテリ電圧V_(B )が12[V]のときと同じに保たれるよう、燃料ポンプ回路220に出力される「制御信号22a」が記載されている。
ここで、センサである「バッテリ電圧100」が検出する、「バッテリ電圧V_(B )」 は、バッテリから燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧であり、また、燃料ポンプ221が消費する電力をバッテリ電圧V_(B )が12[V]のときと同じに保つことは、燃料ポンプ回路220が燃料ポンプ221に供給する直流電圧の実効値を、バッテリの電圧に関わりなく、負荷である燃料ポンプ221の定格電圧の「12V」に保つよう、CPU12が、「バッテリ電圧100」の検出した直流電圧と「12V」とを比較して、燃料ポンプ回路220に「制御信号22a」を出力するものといえる。

上記ア.の「本発明は、・・・特に、バッテリの定格電圧と自動車電装品の定格電圧が異なった場合でも柔軟に対応が可能な自動車用エンジン制御装置に関する」との記載、及び、上記キ.の「本発明によれば、・・・自動車の高性能化に対する要求が強まるにつれ、将来は、現在の12[V]に代えて、例えば24[V]や、更には48[V]など電圧の高いバッテリを使用するシステムへの移行が必至であるが、このとき、本発明によれば、従来の電装品の定格を変更することなく、そのまま対応が可能であるという効果がある」との記載から、バッテリの定格電圧と電装品である燃料ポンプの定格電圧が異なる場合でも、燃料ポンプの定格電圧を変更することなく対応可能とするものといえ、しかも、バッテリの定格電圧として、12V、24V及び48Vが挙げられていることから、バッテリの定格電圧が12Vの場合だけではなく、24Vである場合や48Vである場合についても、従来の電装品(燃料ポンプ)の定格電圧を変更することなく、そのまま対応可能とすることが記載されているものである。
そして、上記カ.の「【0019】次に、この実施例では、図3に示すように、バッテリ電圧V_(B )が12[V]の定格電圧以下と、最大電圧V_(Bmax)(=48[V])以上の領域で、矩形波信号18AのDUTYが0[%]になるように構成してあり、この結果、上記の領域では、負荷を駆動する信号の出力が禁止されてしまうことになり、不必要な電流によるバッテリ上がりを防止したり、またバッテリのダンプサージ等による異常電圧発生時での負荷の誤動作や破壊、故障の発生を防止することができる。」との記載を参照すれば、バッテリ電圧が12V以下と48V以上となる領域を除く、「12V?48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に直流電圧を提供する」ものといえる。

したがって、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「燃料ポンプ221を動作させる燃料ポンプ回路220と、12?48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧を検出するセンサ(バッテリ電圧100)と、該センサ(バッテリ電圧100)で検出した直流電圧を、燃料ポンプ221の定格電圧12Vと比較し、かつ、燃料ポンプ回路220に提供された直流電圧の実効値を、バッテリから提供された電圧が12Vのときと同じ値になるように、該燃料ポンプ回路220に制御信号22aを出力するCPU12とを具備し、バッテリの電圧に関わりなく、負荷で消費される電力が、バッテリから提供される電圧が12Vのときと同じ値になるように制御された直流電圧を燃料ポンプ221に供給する燃料ポンプ221の制御回路であって、前記制御信号22aは、前記燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧をスイッチングし、通電時間の割合であるDUTY(デューティ比)を、バッテリの電圧値に応じて制御する信号であることを特徴とする燃料ポンプ221の制御回路。」

(2)本件訂正発明と刊行物発明との対比
本件訂正発明と刊行物発明とを対比する。
ア.刊行物発明の「燃料ポンプ221」と、電気式ポンプの一種である本件訂正発明の「ソレノイド駆動ポンプ」とは、電気式ポンプである点で一致する。

イ.刊行物発明の「12?48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧を検出するセンサ(バッテリ電圧100)」と、本件訂正発明の「電圧が異なる複数の交流電圧の電源(1)のうちの任意の交流電圧の電源から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を検出する検出手段(5)」とは、「電圧が異なる電源から駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段」である点で一致する。

ウ.本件訂正発明の「駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号(制御信号)」は、「駆動回路(7)に提供される直流電圧」につき、1周期内でスイッチをオンにする時間と、スイッチをオフにする時間とを制御し、これによって「駆動回路(7)に提供された直流電圧を、電源(1)の電圧に関わりなく一定の平均電圧」である「所望の直流電圧」に変換する(つまり、オン(通電する)時間の出力となる「駆動回路(7)に提供された直流電圧」と、オフ(遮断する)時間の出力となる「無電圧」とによって、1周期の間の「平均電圧」として「所望の直流電圧」に変換する)信号を意味すると解される。
一方、刊行物発明における「制御信号22a」は、燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧をスイッチングし、通電時間の割合であるDUTY(デューティ比)を、バッテリから提供される電圧値に応じて制御する信号である。
つまり、刊行物発明における「制御信号22a」は、本件訂正発明の「駆動回路(7)」に当たる「燃料ポンプ回路220」に提供される直流電圧について、その通電時間の割合であるDUTY(デューティ比)を制御し、バッテリの定格電圧が「所望の直流電圧」である「燃料ポンプ221の定格電圧12V」のときと同じ消費電力になるよう変換するものであるから、本件訂正発明の「駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号(制御信号)」に相当する。
そして、刊行物発明の「センサ(バッテリ電圧100)で検出した直流電圧を、燃料ポンプ221の定格電圧12Vと比較し」、「バッテリから提供される電圧が12Vのときと同じ値になるように制御された直流電圧を燃料ポンプ221に供給する」ことと、本件訂正発明の「検出手段(5)で検出した直流電圧に基づいて、駆動回路(7)に提供された直流電圧を、電源(1)の電圧に関わりなく一定の平均電圧をソレノイド(8)に供給するための所望の直流電圧に変換」することとは、「検出手段で検出した直流電圧に基づいて、電源の電圧に関わりなく一定の電気エネルギを供給するための所望の直流電圧に変換」する点で一致する。

エ.刊行物発明の「燃料ポンプ回路220に制御信号22aを出力するCPU12」は、本件訂正発明の「駆動回路(7)に制御信号を供給する演算処理部(6)」に相当する。

オ.本件訂正発明の「駆動回路(7)」が、「時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド(8)を駆動する」ことは、本件訂正発明の「駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する」ことの結果として、「駆動回路(7)」が「ソレノイド(8)を駆動する」際に行なわれる動作であるといえ、刊行物発明における「制御信号22a」に基づく、「燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧をスイッチングし、通電時間の割合であるDUTY(デューティ比)を、バッテリの電圧値に応じて制御する」ことの結果として、「燃料ポンプ回路220」が「制御された直流電圧を燃料ポンプ221に供給する」ことと異ならない。
そうすると、刊行物発明の「制御された直流電圧を燃料ポンプ221に供給する」、「燃料ポンプ回路220」と、本件訂正発明の「時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド(8)を駆動する駆動回路」とは、「電気式ポンプに時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して駆動する駆動回路」の点において一致する。

したがって、両者は、「電気式ポンプに時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して駆動する駆動回路と、電圧が異なる電源から駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段と、該検出手段で検出した直流電圧に基づいて、電源の電圧に関わりなく一定の電気エネルギを供給するための所望の直流電圧に変換すべく、該駆動回路に制御信号を供給する演算処理部とを具備する電気式ポンプの制御回路であって、前記制御信号は、駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし、駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とする電気式ポンプの制御回路。」である点で一致する。

その一方、本件訂正発明と刊行物発明は、次の点で相違する。
[相違点1]
本件訂正発明は、電気式ポンプの制御回路ではあるが、その種類をソレノイド駆動ポンプを駆動する制御回路に限定しているのに対して、刊行物発明は、電気式ポンプの制御回路であり、これをソレノイド駆動ポンプを駆動する制御回路に限定していない点。
[相違点2]
駆動回路に提供される直流電圧が、本件訂正発明では、複数の交流電圧の電源のうちの任意の交流電圧の電源から整流された直流電圧であるのに対して、刊行物発明では、12?48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧である点。

(3)相違点に関する判断
[ 相違点1]
自動車用の燃料ポンプとして、ソレノイド駆動方式のダイヤフラムポンプやプランジャポンプを用いることは、一般に行われている周知慣用技術である。
また、刊行物発明の制御回路は、CPU12がROM14に記憶されている燃料ポンプ制御用のプログラムを実行して、燃料ポンプ制御信号22Aを出力するものである(【0012】?【0016】)ため、同プログラムの設定により、制御対象となるポンプを任意に選択、変更することが可能であり、また、刊行物発明は、バッテリの電圧にかかわりなく消費電力を同一値とするものであることからしても、燃料ポンプとしてソレノイド駆動ポンプを用いることを阻害する要因はなく、また、ソレノイド駆動ポンプを用いることで顕著な作用効果が得られるわけでもない。
したがって、刊行物発明の制御回路の制御対象である「燃料ポンプ221」を、自動車用の燃料ポンプとして周知であるソレノイド駆動ポンプとすることは、当業者が実施に当たり適宜選択し得る設計事項である。

[相違点2]
刊行物の【0001】には、自動車のエンジンで駆動される発電機と、この発電機により充電されるバッテリとを備えることが記載されているところ、自動車のバッテリが、発電機で発電した交流電圧を直流電圧に整流して蓄電することは技術常識である(例えば、昭和53年発行の社団法人電気学会作成『電気工学ハンドブック』(甲第51号証)には、「現在ではほとんどの自動車に交流発電方式が採用されるに至った」(782頁右下)、「交流発電機は、・・・整流回路を内蔵したものである」(783頁左上)、「交流発電機の出力特性は、所定端子電圧(12V系では14V、24V系では28)・・・」(783頁左中)、との記載があり、また、「交流発電機と組合せて使用される電圧調整器」(783頁左中)の回路図には、交流発電機ないし交流発電機部と蓄電池が図示されている(783頁右60図、61図)。)。
そうすると、刊行物には、燃料ポンプについて交流電圧を整流した後の直流電圧を供給することの明示はないが、上記技術常識を考慮すれば、刊行物発明の燃料ポンプにおいて、交流電圧を整流した直流電圧を供給することは、当業者であれば自然に想起し得ることといえる。
また、複数の交流電圧の電源のうちの任意の交流電圧の商用電源を用いたソレノイド駆動ポンプも、ポンプの技術分野では周知技術である(例えば、平成18年1月頃作成の被請求人の製品カタログ(乙第25号証)の2頁目には、「ケミポンN型はソレノイド(電磁石)の往復運動を利用した、電磁駆動方式のダイヤフラムポンプです。」、また、電源(単相50/60)として、「100、110、・・・240許容変動範囲±10%)」との記載があり、昭和63年8月発行の日本フィーダー工業株式会社の製品カタログ(甲第10号証)の2頁目には、「他に先駆けて電磁駆動方式の定量ポンプを産業界にご提案したNフィーダーが・・・」、また、電源仕様として、「AC100V±10%単相/AC110V±10% 単相/・・・/AC240V+5%-10% 単相」との記載があり、平成6年6月発行の社団法人日本電子機械工業会直流安定化電源技術委員会作成の『スイッチング電源通則(AC-DC)』(甲第11号証)の17頁の表4には、定格入力電圧(V)が「110/220」の場合の許容範囲(V)が「90-132/180-264」であるとの記載がある。)。
したがって、ポンプの技術分野に習熟した当業者にとっては、刊行物発明の燃料ポンプにおける制御回路の技術(デューティ制御の技術)において、複数の交流電圧の電源のうちの任意の交流電圧の商用電源を用いることは、容易に想到し得ることである。

以上より、本件訂正発明を刊行物発明と対比したときの相違点は、当業者にとって、周知慣用技術及び技術常識を適用することで容易に想到できた構成といえる。
また、本件訂正発明の発明特定事項により奏される効果も、刊行物発明、周知慣用技術及び技術常識からみて、格別顕著であるとはいえない。
よって、本件訂正発明は、刊行物発明と周知慣用技術とに基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、それに係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
被請求人から、平成27年9月25日付けの上申書によって、審決の予告を希望しない旨の意思表示があったので、特許法第164条の2第1項に規定する審決の予告は、行なわないこととする。

よって結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ソレノイド駆動ポンプの制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する。さらに詳しくは、ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化することが可能なソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソレノイド駆動ポンプとしては種々のものが存在するが、その制御回路の基本的構成としては、例えば図5に示す如く、ソレノイド8の一端側の端子8aに直流電源を接続し、又その他端側には、パルスのオン時間が一定で且つオンの周期(周波数)が可変なパルス発生回路11に接続されたスイッチ12を設けて、該スイッチ12のパルス信号に応じた切換えによりソレノイド8に電流を断続的に供給させるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来のようなソレノイド駆動ポンプの制御回路において、ソレノイド8の一端側の端子8aに接続する直流電源と、パルス発生回路11の適用される電圧の範囲がスイッチ12によって決定されている。
即ち、電源電圧に対応するスイッチ12を有する制御回路が使用されるため、電源電圧が異なればそれに対応する駆動回路及びソレノイドを必要とする。
従って制御回路の種類が複数となり、在庫管理が困難であるという問題がある。
【0004】
また、上述のように制御回路及びソレノイドは電源電圧に対応するため、ユーザーが使用する電源電圧を間違えると、制御回路が動作不良を起こしたり、焼損するという問題もある。
【0005】
更に、ユーザーは電源電圧に応じてポンプと制御回路を複数種類扱うこととなり、管理が困難であるばかりでなく、管理コストが大きくなるという問題もある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、ユーザーが電源電圧の選択を必要としないソレノイド駆動ポンプの制御回路を提供することを課題とする。
【0007】
また、本発明の他の課題は、種類が低減され、従って管理が容易なソレノイド駆動ポンプの制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路は、ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド8に、時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド8を駆動する駆動回路7と、電圧が異なる複数の交流電圧の電源1のうちの任意の交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5と、該検出手段5で検出した直流電圧に基づいて、駆動回路7に提供された直流電圧を、電源1の電圧に関わりなく一定の平均電圧をソレノイド8に供給するための所望の直流電圧に変換すべく、該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって、前記制御信号は、駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴としている。
【0018】
このように、検出手段5により駆動回路7に電圧を供給する電源1の電圧を検出し、該検出した電圧に基づいて、駆動回路7に提供された直流電圧を所望の電圧に変換するように、演算処理部6において、ソレノイドの駆動回路7が所望の電圧をソレノイド8に供給すべく駆動回路7に制御信号を供給するので、電源1がソレノイド8を駆動するために適していない電圧である場合においても、駆動回路7に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイド8に供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る制御回路によれば、検出手段により駆動回路に電圧を供給する電源の電圧を検出し、該検出した電圧に基づいて、駆動回路に提供された直流電圧を所望の電圧に変換するように、演算処理部において、ソレノイドの駆動回路が所望の電圧をソレノイドに供給すべく駆動回路に制御信号を供給するので、電源がソレノイドを駆動するために適していない電圧である場合においても、一種の制御回路で駆動回路に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイドに供給することができ、従って、ユーザーが電源電圧を一定にする等の選択を行う必要がない。
【0020】
更に、一種の制御回路で電圧の異なる電源に対応することができるので、制御回路の種類が低減され、管理が非常に容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図である。
図1において、1は交流電圧の電源を示す。電源1が供給可能な電圧は、例えば90?264Vとされる。
2は電源1の電圧を後述の演算処理部に提供するため、電源1の電圧の10分の1程度、例えば24V程度の交流の低圧へと変換する変圧器を示し、3は例えばダイオード等から構成され、変圧器2からの電圧を直流電圧に整流すると同時に安定化を行う整流回路を示す。
【0023】
また、4はソレノイド8を駆動する直流電圧を生成する例えばダイオード等から構成される整流回路を示す。また、5は検出手段であり、この検出手段5は、整流回路4からの電圧を分圧し、例えば0?5V程度に変換し、その変換した電圧を検出する役割を果たす検出部と、該検出された電圧をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器とから構成されている。以下、本実施形態においては、検出手段5をアナログ/デジタル変換部(以下、単にA/D変換部という)5という。
ここで、A/D変換部5においては、検出部において整流回路4からの電圧を分圧し、0?5V程度の低圧に変圧するので、高圧では扱えないA/D変換器においても扱うことができる。
【0024】
6は、上述の整流回路3からの直流電圧で駆動され、且つA/D変換部5からのデジタル信号、即ち電源電圧のデジタル化された値が入力される演算処理部を示す。本実施形態において、演算処理部6は、例えばCPUで構成される。また、演算処理部6は、ポンプの運転を制御可能な制御部9に電気的に接続されていると共に、駆動電圧等の予め記憶されている設定値を供給可能な、ROM等のデータ供給部11に接続されている。
【0025】
前記演算処理部6及び整流回路4は、更に本実施形態の駆動手段たる駆動回路7に電気的に接続されており、該駆動回路7はポンプを駆動するソレノイド8に接続され、電圧を供給してソレノイド8を駆動している。
【0026】
上述の変圧器2、整流回路3、整流回路4、A/D変換部(検出手段)5、演算処理部6、駆動回路(駆動手段)7、ソレノイド8及び制御部9から本発明のソレノイド駆動ポンプの制御回路10が構成されており、該制御回路10の動作を以下に説明する。
【0027】
まず、電源1からの交流電圧は変圧器2と整流回路4に分岐される。変圧器2においては演算処理部6を駆動するため、電源1の電圧を低圧に変換し、低圧に変換された電圧を整流回路3へ送る。整流回路3においては、電源1の電圧を直流電圧とした後、演算処理部6へと送る。
【0028】
一方、整流回路4からの直流電圧は、A/D変換部5へ送られてデジタル信号(以下、入力値という)に変換された後、演算処理部6に入力される。
【0029】
更に、演算処理部6には、ROM等のデータ供給部11から、予め設定された駆動電圧(以下、設定値という)が入力される。
【0030】
尚、演算処理部6には更に、第2の制御部12からポンプの運転・停止に関する信号(例えば、作業者によるオン・オフのスイッチング動作)や、予め設定されているストローク数等を示す信号が入力され、その信号に基づいて演算処理部6が制御部9に制御信号を送る。
【0031】
演算処理部6は、演算処理部6に入力される上記直流電圧を示す信号(例えば直流電圧に比例する信号)をモニターすべく、直流電圧を示す信号を上記第2の制御部12に入力する。第2の制御部12においては、上述の現在の直流電圧に基づき、ソレノイド8に断線等の異常がないかどうかを検出し、異常があることが検出されると、ポンプを停止させるよう、信号を演算処理部6に送る。
演算処理部6においては、前記信号に基づいて、ポンプを停止させるよう、ソレノイド8にかける電圧を調整すべく制御信号を制御部9に入力する。
【0032】
また、第2の制御部12において異常がないと検出された場合には、ポンプを運転させ、オン・オフの周期の調整を行うべく制御信号を演算処理部6へ送る。
前記演算処理部6においては、A/D変換部5からの入力値が調整され、ソレノイド8を駆動する駆動電圧を前記設定値とすべく、オン・オフのデューティを調整する制御信号が制御部9に送られる。
【0033】
このように、演算処理部6においては、上述の制御信号(ポンプを運転・停止させる、又はオン・オフの周期の調整を行う制御信号)に基づいて、駆動回路7を制御する制御部9に供給するための、制御部用信号が生成される。
換言すると、制御部9を介して、演算処理部6からの制御信号をソレノイド8の駆動回路7に供給することができる。
【0034】
前記制御部用信号は、制御部9からソレノイド8を駆動する駆動回路7に送られる一方、整流回路4からは電源1の直流電圧が駆動回路7に付加される。即ち、駆動回路7には、電源1の直流電圧が供給されるが、同時に制御部9から制御部用信号が供給されることとなる。
従って、駆動回路7においては制御部9で生成された制御部用信号を増幅し、ソレノイド8を駆動する駆動電圧を制御することによってソレノイド8に適切な電圧を加えて駆動することができる、或いは、ポンプを停止させる制御信号であれば、ソレノイドに電圧が加わらないように制御できるのである。
【0035】
ここで、制御部9から駆動回路7に供給される制御部用信号について説明する。該制御部用信号は、ソレノイド8に供給される、整流回路4からの直流電圧をスイッチングし、オン・オフのデューティを制御する信号である。
【0036】
このように、電源1からの電圧を演算処理部6において所望の電圧と比較し、ソレノイドの駆動回路7が所望の電圧をソレノイド8に供給すべく、制御部9から駆動回路7に制御部用信号を供給するので、電源1がソレノイド8を駆動するために適していない電圧である場合においても、駆動回路7に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイド8に供給することができる。
【0037】
即ち、電源1が異なる場合にも、駆動回路7を含む制御回路10を異ならしめることなく、一種の制御回路で電圧の異なる電源に対応することができる。
【0038】
従って、ユーザーが電源電圧を一定にする等の調整を行う必要がなく、電源電圧を調整する手間が省けるという効果が得られる。
【0039】
更に、一種の制御回路で電圧の異なる電源に対応することができるので、制御回路の種類が低減され、電源が異なる際に対応する制御回路を選択する必要がない。従って、対応する制御回路の選択を誤り、制御回路及びソレノイドの動作不良を引き起こしたり、焼損する等の問題が無く、管理が非常に容易となる。
【0040】
また、本実施形態に係る制御回路は、ソレノイドの駆動電圧のデューティを制御することにより駆動電圧を一定にできるため、直流ソレノイドの駆動回路で、ソレノイドを駆動する電源に電圧を安定化する機能が備わっていないもの全般に適用することが可能である。
【0041】
上述の実施の形態においては、演算処理部としてCPUを用いたが、A/D変換部で検出した電圧をソレノイド8に供給する所望の電圧と比較し、検出した電圧を所望の電圧にすべく制御信号を駆動回路7に供給する、即ち駆動回路7の直流電圧をスイッチングすることができるものであれば、適宜変更可能である。
【0042】
また、上述の実施の形態においては、駆動電圧の設定値が演算処理部内に記憶されている場合について説明したが、設定値が記憶される場所は、演算処理部内に限定されず、例えばROM等の外部記憶素子であってもよい。
このように、ROM等の外部記憶素子に設定値を記憶させれば、外部記憶素子を交換するのみで容易に設定値を変更することができる効果が得られる。なお、これは、以下に説明する各参考例及び第二の実施形態についても同様である。
【0043】
<第一の参考例>
図2は、第一の参考例に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図である。
図2において、1は交流電圧の電源を示す。電源1が供給可能な電圧は、例えば90?264Vとされる。
【0044】
21は電源1の電圧を後述の比較手段たる電圧比較器に提供するため、電源1の電圧を整流する整流回路を示している。
ここでは、整流回路21を介して電源1からの電圧を電圧比較器に提供する構成を示しているが、場合によっては、整流回路21の上流側に降圧回路を配し、また、整流回路21の下流側に平滑回路を配してもよい。このような構成であれば、降圧回路、整流回路、および平滑回路を介して、電源1からの電圧が電圧比較器へ提供されることとなる。
【0045】
22はソレノイド8を駆動させる直流電圧を生成する、例えばダイオード等から構成される整流回路を示している。
【0046】
23は整流回路21から提供される電源1の電圧と基準電圧23aとを比較する電圧比較器を示している。基準電圧23aとしては、例えばDC5Vが与えられる。
【0047】
25は半波全波切替回路であり、この半波全波切替回路25においては、電圧比較器23の結果に基づいて、整流回路22の切替が行われる。具体的には、電圧比較器23に基準電圧23aが与えられた状態で、電源1の電圧が100V程度(例えば90V?165V程度)である場合には全波、200V程度(例えば165Vから264V程度)である場合には半波となるように、ソレノイド8に供給するための電源を整流する整流回路22の切替が行われる。
なお、ここでは、供給される電圧を2つの領域(90V?165Vの領域と165V?264Vの領域)に区分けして、それぞれの領域に応じて半波・全波の切替を行う場合について示したが、本参考例はこの構成に限定されるものではない。したがって、例えば、供給される電圧を、90V?144V、144V?180V、180V?264Vの3つの領域に区分けして、半波全波回路25の制御を行ってもよい。具体的には、90V?144Vの領域については全波に切り替え、180V?264Vの領域については半波に切り替え、そして、144V?180Vの領域については半波全波切替回路25からの出力を停止するように制御することも好ましい。実際の供給電源は、100V近傍(90V?144V)の領域、あるいは200V近傍(180V?264V)の領域に存在することが多いため、かかる構成も参考例の一つとしては好適であり、この構成によれば、比較的低容量の安定化電源回路26を用いてもソレノイド駆動ポンプの制御回路を構成することが可能となる。また、このように3つの領域に区分けする構成においては、新たに電圧比較器等を設ける必要がある。
【0048】
26は安定化電源回路であり、電源1の電圧に応じて全波・半波に切り替えられた脈流電力が、この安定化電源回路26に供給されることとなる。この安定化電源回路26の出力電圧は、基準電圧26aにより安定化されている。この安定化電源回路26においては、余分なエネルギを熱等に変換して放出すること等によって、電源1からのエネルギの安定化を図っている。基準電圧26aとしては、例えばDC5Vが与えられる。
なお、本参考例においては、整流回路22からの脈流電力を直接に安定化電源回路26に供給する場合を示したが、場合によっては、整流回路22と安定化電源回路26との間に平滑回路を配し、平滑回路を介して脈流電力を安定化電源回路26に供給するように構成してもよい。
【0049】
28はソレノイド8を駆動させる駆動手段たる駆動回路であり、この駆動回路28にはパルス発生回路29が電気的に接続されている。パルス発生回路29からは、ON時間一定、OFF時間可変の駆動パルスが出力されており、この駆動パルスを用いて駆動回路28のスイッチングが行われる。
【0050】
図2に示された本参考例においては、電圧の検出を行う検出手段は、基準電圧23aが与えられている電圧比較器23を用いて構成されている。なお、場合によっては、整流回路22およびその周辺の機器(例えば、降圧回路、平滑回路等)をも合わせて、検出手段として機能する場合もある。
また、演算処理部は、基準電圧23aが与えられている電圧比較器23および半波全波切替回路25を用いて構成されている。
【0051】
以上のように、本参考例においては、電源1からの電圧と、基準電圧23aとを電圧比較器23で比較して、その結果に基づいて、全波・半波の切替を行って、駆動回路28に供給される電圧の制御が行われる。
すなわち、図2に示した制御回路20を用いることにより、ソレノイド8(を駆動させる駆動回路28)に供給する電源電圧を一定化することが可能となる。
【0052】
したがって、本参考例によれば、電源1からの電圧を電圧比較器23において所望の電圧(基準電圧23aに基づく電圧)と比較し、駆動回路28が所望の電圧をソレノイド8に供給すべく、半波全波切替回路25からの信号に基づいて、整流回路22が制御される。本参考例によれば、このように、半波全波切替回路25からの信号に基づいて整流回路22が制御されるので、駆動回路28に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイド8に供給することが可能となる。
【0053】
すなわち、本参考例においても、第一の実施形態と同様に、電源1が異なる場合にも、一種の制御回路20で電圧の異なる電源に対応することができる。したがって、ユーザーが電源電圧を一定にする等の調整を行う必要がなく、電源電圧を調整する手間が省けるという効果が得られる。
さらに、一種の制御回路20で電圧の異なる電源に対応することができるので、制御回路の種類が低減され、電源が異なる際に対応する制御回路を選択する必要がない。したがって、対応する制御回路の選択を誤り、制御回路及びソレノイドの動作不良を引き起こしたり、焼損する等の問題が無く、管理が非常に容易となる。
【0054】
<第二の参考例>
図3は、第二の参考例に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図である。
図3において、1は交流電圧の電源を示す。電源1が供給可能な電圧は、例えば90?264Vとされる。
【0055】
31はソレノイド8を駆動させる直流電圧を生成する、例えばダイオード等から構成される整流回路を示している。
【0056】
本参考例においては、電源1から、整流回路31、充電制御スイッチ32、および電流制限回路33を介して、コンデンサ34に直流電力が充電される。
【0057】
また、このコンデンサ34には、分圧回路36が接続されており、コンデンサ34両端の電圧を電圧比較器37に導くように構成されている。さらに、電圧比較器37には、基準電圧37aが与えられている。すなわち、この電圧比較器37においては、コンデンサ34の電圧と基準電圧37aとが比較され、コンデンサ34の電圧が監視されている。基準電圧37aとしては、例えばDC5Vが与えられる。
また、コンデンサ34には、放電制御スイッチ35が接続されている。この放電制御スイッチ35は、パルス発生器38の信号で開閉し、コンデンサ34に充電された直流電力をソレノイド8に供給するように構成されている。
【0058】
さらに、図3に示された本参考例においては、電圧比較器37の出力およびパルス発生器38の出力がNOR回路39に導かれる。NOR回路39においては、このNOR回路39に供給された電圧比較器37の比較値とパルス発生器38からの値とに基づいて、充電制御スイッチ32の制御が行われる。NOR回路39による充電制御スイッチ32の制御によって、コンデンサ34の充電量が一定に保たれる。
【0059】
図3に示された本参考例においては、電圧の検出を行う検出手段は、基準電圧37aが与えられている電圧比較器37と分圧回路36とを用いて構成されている。なお、場合によっては、電流制限回路33およびその周辺の機器をも合わせて、検出手段として機能する場合もある。
また、演算処理部は、基準電圧37aが与えられている電圧比較器37、分圧回路36およびNOR回路39を用いて構成されている。
さらに、駆動手段は、コンデンサ34および放電制御スイッチ35を用いて構成されている。
【0060】
以上のように、本参考例においては、コンデンサ34に充電された電圧と、基準電圧37aとを電圧比較器37で比較して、その結果をNOR回路39に供給する。そして、電圧比較器37からの値と、パルス発生器38からの値とをNOR回路39に供給し、これらの値に基づいて、コンデンサ34の充電量を調整する充電制御スイッチ32の制御を行っている。
すなわち、図3に示した制御回路30を用いることにより、ソレノイド8に供給するエネルギを一定化することが可能となる。
【0061】
したがって、本参考例においても、第一の実施形態および第一の参考例と同様に、電源1が異なる場合にも、一種の制御回路30で電圧の異なる電源に対応することができる。したがって、ユーザーが電源電圧を一定にする等の調整を行う必要がなく、電源電圧を調整する手間が省けるという効果が得られる。
さらに、一種の制御回路30で電圧の異なる電源に対応することができるので、制御回路の種類が低減され、電源が異なる際に対応する制御回路を選択する必要がない。したがって、対応する制御回路の選択を誤り、制御回路及びソレノイドの動作不良を引き起こしたり、焼損する等の問題が無く、管理が非常に容易となる。
【0062】
<第二の実施形態>
図4は、本発明の第二の実施形態に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図である。
図4において、1は交流電圧の電源を示す。電源1が供給可能な電圧は、例えば90?264Vとされる。
【0063】
41は電源1の電圧を後述の演算回路に提供するため、電源1の電圧を整流する整流回路を示している。
ここでは、整流回路41を介して電源1からの電圧を演算回路に提供する構成を示しているが、場合によっては、整流回路41の上流側に降圧回路を配し、また、整流回路41の下流側に平滑回路を配してもよい。このような構成であれば、降圧回路、整流回路、および平滑回路を介して、電源1からの電圧が演算回路へ提供されることとなる。
【0064】
42は演算回路であり、この演算回路42には基準電圧42aが与えられており、この演算回路42によって、後述するデューティ可変発信器が制御される。基準電圧26aとしては、例えばDC5Vが与えられる。
【0065】
43はソレノイド8を駆動する直流電圧を生成する、例えばダイオード等から構成される整流回路を示している。
【0066】
44はソレノイド8を駆動させる駆動手段たる駆動回路である。この駆動回路44には、整流回路43が接続されており、整流回路43から駆動回路44に対して、ソレノイド8を駆動させるための直流電力が供給される。また、駆動回路44には、後述するAND回路からの制御信号も供給される。
【0067】
図4に示された本実施形態においては、電圧の検出を行う検出手段は、基準電圧42aが与えられている演算回路42を用いて構成されている。なお、場合によっては、整流回路41およびその周辺の機器をも合わせて、検出手段として機能する場合もある。
また、演算処理部は、基準電圧42aが与えられている演算回路42、デューティ可変発信器45およびAND回路46を用いて構成されている。
【0068】
本実施形態においては、演算回路42に対して、整流回路41からの電圧(電源部1の電圧)と、基準電圧42aとが供給され、演算回路42からの出力によってデューティ可変発信器45のデューティが調節される。また、デューティ可変発信器45の出力とパルス発生器47の出力とは、AND回路46で形成されるゲート回路に導かれる。そして、AND回路46で形成されるゲート回路の出力によって駆動回路44のスイッチングが行われ、ソレノイド8の駆動制御が行われる。
【0069】
すなわち、本実施形態によれば、基準電圧42aが与えられている演算回路42に整流回路41(電源部1)からの電圧が供給され、その電圧に応じて、演算処理分42からデューティ可変発信器45に対して、制御信号が供給される。そして、電源部1の電圧に応じた演算回路42からの制御信号によって、デューティ可変発信器45のデューティが調節され、このデューティとパルス発生器47の出力とがAND回路46に供給される。つまり、本実施形態によれば、このAND回路46から駆動回路44に対して出力される制御信号は、電源部1の電圧に応じて可変であるように構成されているので、ソレノイド8(を駆動させる駆動回路44)に供給する平均電圧を一定化することが可能となる。
【0070】
したがって、本実施形態においても、第一の実施形態及び各参考例と同様に、電源1が異なる場合にも、一種の制御回路40で電圧の異なる電源に対応することができる。したがって、ユーザーが電源電圧を一定にする等の調整を行う必要がなく、電源電圧を調整する手間が省けるという効果が得られる。
さらに、一種の制御回路40で電圧の異なる電源に対応することができるので、制御回路の種類が低減され、電源が異なる際に対応する制御回路を選択する必要がない。したがって、対応する制御回路の選択を誤り、制御回路及びソレノイドの動作不良を引き起こしたり、焼損する等の問題が無く、管理が非常に容易となる。
【0071】 (削除)
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図。
【図2】第一の参考例に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図。
【図3】第二の参考例に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図。
【図4】本発明の第二の実施形態に係るソレノイド駆動ポンプの制御回路を示すブロック図。
【図5】従来のソレノイド駆動ポンプの制御回路の一例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0073】
1…電源 5…A/D変換部分 6…演算処理部
7,28,44…駆動回路 8…ソレノイド
21,22,31,41,43…整流回路 23,37…電圧比較器
23a,26a,37a,42a…基準電圧 25…半波全波切替回路
26…安定化電源回路 29,38,47…パルス発生器
34…コンデンサ 35…放電制御スイッチ 36…分圧回路
39…NOR回路 42…演算回路 45…デューティ可変発信器
46…AND回路
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド(8)に、時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して、該ソレノイド(8)を駆動する駆動回路(7)と、
電圧が異なる複数の交流電圧の電源(1)のうちの任意の交流電圧の電源(1)から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を検出する検出手段(5)と、
該検出手段(5)で検出した直流電圧に基づいて、駆動回路(7)に提供された直流電圧を、電源(1)の電圧に関わりなく一定の平均電圧をソレノイド(8)に供給するための所望の直流電圧に変換すべく、該駆動回路(7)に制御信号を供給する演算処理部(6)とを具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって、
前記制御信号は、駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし、前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-12-01 
結審通知日 2015-12-03 
審決日 2015-12-15 
出願番号 特願2007-181014(P2007-181014)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (F04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 刈間 宏信尾崎 和寛佐藤 正浩中野 宏和  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 槙原 進
矢島 伸一
登録日 2011-04-08 
登録番号 特許第4716522号(P4716522)
発明の名称 ソレノイド駆動ポンプの制御回路  
代理人 水谷 直樹  
代理人 北田 明  
代理人 大川 博之  
代理人 曽我部 高志  
代理人 藤本 昇  
代理人 藤本 昇  
代理人 吉田 研二  
代理人 橋本 信吾  
代理人 北田 明  
代理人 大川 博之  
代理人 長嶋 孝幸  

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