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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02B |
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管理番号 | 1311002 |
審判番号 | 不服2015-7480 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-21 |
確定日 | 2016-03-04 |
事件の表示 | 特願2014-24955号「等角等方配置型レシプロエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月24日出願公開、特開2015-151902号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年2月13日の出願であって、平成26年8月20日付けで拒絶理由が通知され、平成26年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年1月16日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年4月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成27年11月10日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年1月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成27年4月21日付けの手続補正により補正された明細書及び平成28年1月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 傘歯車式クランク機構を備え、ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置される4気筒レシプロエンジンであって、 前記傘歯車式クランク機構は、 傘歯車の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に、 隣設される該傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支し、 前記基台部は前記傘歯車の外側に配置され、 前記コネクティングロッドは前記傘歯車の内側に配置され、 前記各傘歯車を同期して連動する機構であり、 各前記ピストンはシリンダ中心から等角等方位置に配列され、 該各傘歯車の中心から外側に突出する出力軸によって回転動力を得ることを特徴とする等角等方配置型4気筒レシプロエンジン。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 理由1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) <理由1、2> ・請求項 1、2 ・引用文献 1または2 ・備考 引用文献1の第1頁右下欄第3行?第2頁左下欄第17行及び図2?4には、「傘歯車式クランク機構を備え、ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置されるレシプロエンジンであって、前記傘歯車式クランク機構は、傘歯車(引用文献1の「ベベルギヤー6」)の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に」、「隣設される前記傘歯車の其々の歯部が噛み合わないように離隔距離を有して基台部に回転自在に軸支し、前記傘歯車の全ての歯部と噛み合う出力用傘歯車(同「受動ベベルギヤー7」)を設け、該出力用傘歯車から突出した出力軸により、回転動力を得る等角等方配置型レシプロエンジン」が記載されている。 すると、引用文献1に記載された発明と本願請求項1、2に係る発明とで、発明特定事項に差異がない。 また、引用文献2の第5頁第11行?第6頁第29行及び図1?5にも、本願請求項1、2に係る発明と同様の構成が記載されている。 ・請求項 5 ・引用文献 1または2 ・備考 引用文献1及び2のいずれにも、「傘歯車式クランク機構が4組から構成される4気筒であって、ピストンレイアウトがシリンダの中心からスクエア状に配列されている」ことが記載されている。 <理由2> ・請求項 3、4 ・引用文献 1または2 ・備考 引用文献1または2に記載された発明において、基台部、傘歯車、コネクティングロッドの位置関係をどのようにするかは、当業者が適宜に決定し得た事項である。 ・請求項 6 ・引用文献 1及び3、または、2及び3 ・備考 引用文献3の第7頁右下欄第6?17行、第8頁右上欄第20行?左下欄第4行及び図1、5には、クランク軸の2分の1回転に減速された回転ディスク(引用文献3の「カム板140、142」)に設けられたカムにより、吸排気バルブを駆動する技術が記載されている。 そして、引用文献1または2に記載された発明に、引用文献3に記載された発明の上記技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 ・請求項 7 ・引用文献 1または2 ・備考 引用文献1及び2のいずれにも、「出力用傘歯車の出力用傘歯車出力軸が、シ リンダ領域の中央に延長され」ていることが記載されている。 そして、出力用傘歯車出力軸の適当な箇所に発電機等の作業機を設けることは 当業者が適宜になし得たことである。 <理由3> 以下の点で、請求項2?7に係る発明は明確でない。 (1)請求項2に記載の「隣設される前記傘歯車の其々の歯部が噛み合わないように離隔距離を有して基台部に回転自在に軸支し」について、請求項2が引用する請求項1には、「隣設される該傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支し」と記載されており、両者の記載が整合しない。したがって、傘歯車がどのように噛み合っているのか不明確である。請求項2の構成を、請求項1を引用する形で記載するのは無理があるのではないか。 (2)請求項6に記載の「出力軸の2分の1回転に減速された1枚の回転ディスクに設けられたカムにより、4気筒全ての吸排気バルブを駆動する」について、請求項2を引用する場合、出力軸は出力用傘歯車に接続されているが、傘歯車と出力用傘歯車のギア比が不明であるため、「出力軸の2分の1回転に減速」することで、所望のタイミングで吸排気バルブを駆動することができるのか不明である。 (傘歯車と出力用傘歯車のギア比が1:1の場合のみ、適切なタイミングで吸排気バルブを駆動することができると考えられる)。回転ディスクはクランク軸の2分の1回転に減速されているということであろうか。 (3)請求項7に記載の「出力用傘歯車の出力用傘歯車出力軸」について、請求項2を引用しない場合、「出力用傘歯車」がどのような部材を意味しているのか不明確である。 (4)上記請求項を引用する他の請求項についても同様に不明確である。 引 用 文 献 等 一 覧 刊行物1:特開昭49-35716号公報 刊行物2:韓国公開特許第10-2007-0058719号公報 刊行物3:特開昭52-1306号公報 2.原査定の理由の判断 [1]理由1及び2について (1)刊行物の記載事項 a)刊行物1の記載事項 図1ないし図6及び明細書全体の記載からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。 「クランクシャフト5を備え、各ピストン3が各シリンダによって構成される中心からみて均等の角度及び位置に配置される4気筒往復動エンジンであって、 クランクシャフト5は、 クランクピンとコンロッド4を介してピストン3の往復運動を回転運動に変換すると共に、 各気筒におけるべゝルギヤー6を互いに離間させつつ共通の受動べゝルギヤー7に噛み合わせてクランクケースに軸支し、 クランクケースはべゝルギヤー6の外側に配置され、 各べゝルギヤー6は互いに連動する機構を有するものであって、 各ピストン3はエンジン全体の中心からみて均等の角度及び位置に配置され、 受動べゝルギヤー7に固着された主軸8を介して動力を得る、 ピストン3が各シリンダによって構成される中心からみて均等の角度及び位置に配置される4気筒往復動エンジン。」 b)刊行物2の記載事項 drawing1(図1)ないしdrawing8(図8)の記載からみて、刊行物2には以下の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。 「クランクシャフトを備え、各ピストンがエンジン全体の中心からみて均等な角度及び位置に配置される4気筒往復動エンジンであって、 クランクシャフトは、 クランクピンとコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に、 各気筒における傘歯車を互いに離間させつつ共通の傘歯車に噛み合わせてクランクケースに軸支し、 クランクケースは傘歯車の外側に配置され、 各傘歯車は互いに連動する機構を有するものであって、 各ピストンがエンジン全体の中心からみて均等な角度及び位置に配置され、 共通の傘歯車に固着された軸を介して動力を得る、 各ピストンがエンジン全体の中心からみて均等な角度及び位置に配置される4気筒往復動エンジン。」 c)刊行物3の記載事項 明細書第7ページ右下欄第6?17行及び明細書第8ページ右上欄第20行?左下欄第4行並びに図1、5の記載からみて、刊行物3には以下の事項が記載されている。 「クランク軸の2分の1回転に減速されたカム板140、142に設けられたカムにより、吸排気バルブを駆動すること。」 (2)対比・判断 (2-1)本願発明と刊行物1記載の発明との対比・判断 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、 刊行物1記載の発明における「各ピストン3が各シリンダによって構成される中心からみて均等の角度及び位置に配置される」ことは、その機能、構成及び技術的意義から、本願発明における「ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置される」ことに相当し、以下同様に、「4気筒往復動エンジン」は「4気筒レシプロエンジン」に、「コンロッド4」は「コネクティングロッド」に、「ピストン3」は「ピストン」に、「べゝルギヤー6」は「傘歯車」に、「クランクケース」は「基台部」に、「互いに連動」は「同期して連動」に、それぞれ相当する。 そして、刊行物1記載の発明における「クランクシャフト5」と「傘歯車式クランク機構」とは、「傘歯車を駆動するクランク機構」である限りにおいて一致する。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「傘歯車を駆動するクランク機構を備え、ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置される4気筒レシプロエンジンであって、 前記傘歯車を駆動するクランク機構は、 クランクピンとコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に、 基台部は前記傘歯車の外側に配置され、 各傘歯車を同期して連動する機構であり、 各前記ピストンはシリンダ中心から等角等方位置に配列される、 等角等方配置型4気筒レシプロエンジン。」 [相違点1] 傘歯車を駆動するクランク機構に関して、本願発明においては、「傘歯車式クランク機構」において「傘歯車の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッド」を備え、さらに、「コネクティングロッドは前記傘歯車の内側に配置」されるものであるのに対して、刊行物1記載の発明においては、クランクシャフト5がそのような構成を有していない点(以下、「相違点1」という。)。 [相違点2] 本願発明においては、傘歯車に関して、「隣設される該傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支」するものであって、「各傘歯車の中心から外側に突出する出力軸によって回転動力を得る」ものであるのに対して、刊行物1記載の発明においては、べゝルギア6に関して、「各気筒におけるべゝルギア6を互いに離間させつつ共通の受動べゝルギア7に噛み合わせてクランクケースに軸支し」、「受動べゝルギア7に固着された主軸8を介して動力を得る」ものである点(以下、「相違点2」という。)。 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 本願発明における、「傘歯車式クランク機構」において「傘歯車の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッド」を備え、さらに、「コネクティングロッドは前記傘歯車の内側に配置」される点は、刊行物2及び刊行物3の明細書及び図面の全体をみても記載や示唆がなされていないから、刊行物1記載の発明及び刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。 [相違点2について] 本願発明における、傘歯車に関して、「隣設される該傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支」するものであって、「各傘歯車の中心から外側に突出する出力軸によって回転動力を得る」点は、刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体をみても記載や示唆がなされていないから、刊行物1記載の発明及び刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。 そうすると、本願発明は、刊行物1記載の発明であるとはいえないし、刊行物1記載の発明及び刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 (2-2)本願発明と刊行物2記載の発明との対比・判断 本願発明と刊行物2記載の発明とを対比すると、 刊行物2記載の発明における「各ピストンがエンジン全体の中心からみて均等な角度及び位置に配置される」ことは、その機能、構成及び技術的意義から、本願発明における「ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置される」ことに相当し、以下同様に、「4気筒往復動エンジン」は「4気筒レシプロエンジン」に、「クランクケース」は「基台部」に、「互いに連動」は「同期して連動」に、それぞれ相当する。 そして、刊行物2記載の発明における「クランクシャフト」と本願発明における「傘歯車式クランク機構」とは、「傘歯車を駆動するクランク機構」である限りにおいて一致する。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「傘歯車を駆動するクランク機構を備え、ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置される4気筒レシプロエンジンであって、 前記傘歯車を駆動するクランク機構は、 クランクピンとコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に、 基台部は前記傘歯車の外側に配置され、 各傘歯車を同期して連動する機構であり、 各前記ピストンはシリンダ中心から等角等方位置に配列される、 等角等方配置型4気筒レシプロエンジン。」 [相違点1] 傘歯車を駆動するクランク機構に関して、本願発明においては、「傘歯車式クランク機構」において「傘歯車の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッド」を備え、さらに、「コネクティングロッドは前記傘歯車の内側に配置」されるものであるのに対して、刊行物2記載の発明においては、クランクシャフトがそのような構成を有していない点(以下、「相違点1」という。)。 [相違点2] 本願発明においては、傘歯車に関して、「隣設される該傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支」するものであって、「各傘歯車の中心から外側に突出する出力軸によって回転動力を得る」ものであるのに対して、刊行物2記載の発明においては、傘歯車に関して、「各気筒における傘歯車を互いに離間させつつ共通の傘歯車に噛み合わせてクランクケースに軸支し」、「共通の傘歯車に固着された軸を介して動力を得る」ものである点(以下、「相違点2」という。)。 以下、相違点について検討する。 [相違点1について] 本願発明における、「傘歯車式クランク機構」において「傘歯車の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッド」を備え、さらに、「コネクティングロッドは前記傘歯車の内側に配置」される点は、刊行物1、刊行物3の明細書及び図面の全体をみても記載や示唆がなされていないから、刊行物1記載の発明及び刊行物1、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。 [相違点2について] 本願発明における、傘歯車に関して、「隣設される該傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支」するものであって、「各傘歯車の中心から外側に突出する出力軸によって回転動力を得る」点は、刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体をみても記載や示唆がなされていないから、刊行物1記載の発明及び刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。 そうすると、本願発明1は、刊行物2記載の発明であるとはいえないし、刊行物2記載の発明及び刊行物1、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。 したがって、原査定の理由1及び2(特許法第29条第1項第3号、特許法29条第2項)によっては、本願を拒絶することはできない。 [2]理由3について 平成28年1月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲においては、請求項1のみの記載となっており、出願当初の特許請求の範囲の請求項6、7において不明確な記載とされた「出力軸の2分の1回転に減速された1枚の回転ディスクに設けられたカムにより、4気筒全ての吸排気バルブを駆動する」、「出力用傘歯車の出力用傘歯車出力軸」については削除されているので、上記「第3 1.<理由3>」で指摘された不備については解消している。 したがって、原査定の理由3(特許法第36条第6項第2号)によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について [1]当審拒絶理由 本件出願の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.本願発明 本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年4月21日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりのものと認める。 2.刊行物 刊行物1:独国特許出願公開第3342108号明細書 刊行物2:特開昭49-35716号公報 刊行物3:韓国公開特許第10-2007-0058719号公報 (1)刊行物1の記載 図1及び明細書の記載全体からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「傘歯車式クランク機構を備えるレシプロエンジンであって、 傘歯車式クランク機構は、 傘歯車6aの偏心位置に設けたクランクピン6とコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に、 隣接される傘歯車6aの歯部同士が噛み合わないように離間してエンジンブロック1に回転可能に支承し、 エンジンブロック1は傘歯車6aの外側に配置され、 コネクティングロッドは傘歯車6aの内側に配置され、 各傘歯車6aの全ての歯部と噛み合う出力軸を有する歯車4を設け、 出力軸を有する歯車4から突出した出力軸により回転動力を得る、 レシプロエンジン。」 (2)刊行物2又は刊行物3の記載 刊行物2の第2図ないし第4図、及び刊行物3の第3図及び第6図には、「ピストンの配置が、シリンダ中心から等角等方位置に配置される4気筒レシプロエンジン」という発明が記載されている。 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「傘歯車6a」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「傘歯車」に相当し、以下同様に、「クランクピン6」は「クランクピン」に、「歯部同士が噛み合わない」ことは「其々の歯部が噛み合わない」ことに、「離間して」は「離隔距離を有して」に、「エンジンブロック1」は「基台部」に、「回転可能に支承」することは「回転自在に軸支」することに、「出力軸を有する歯車4」は「出力用傘歯車」にそれぞれ相当する。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「傘歯車式クランク機構を備えるレシプロエンジンであって、 前記傘歯車式クランク機構は、 傘歯車の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に、 隣設される前記傘歯車の其々の歯部が噛み合わないように離隔距離を有して基台部に回転自在に軸支し、 前記基台部は前記傘歯車の外側に配置され、 前記コネクティングロッドは前記傘歯車の内側に配置され、 前記各傘歯車の全ての歯部と噛み合う出力用傘歯車を設け、 各前記ピストンはシリンダ中心から等角等方位置に配列され、該出力用傘歯車から突出した出力軸により、回転動力を得るレシプロエンジン。」 [相違点] レシプロエンジンに関して、本願発明においては、「ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置される」ものであって、「各ピストンはシリンダ中心から等角等方位置に配列され」ており、かつ、「4気筒」を有する等角等方配置型4気筒レシプロエンジンであるのに対して、引用発明においては、レシプロエンジンのピストンレイアウトや気筒数について不明である点(以下、「相違点」という。)。 上記相違点について検討する。 [相違点について] 上記2.(2)で述べたように、刊行物2及び刊行物3には、ピストンの配置が、シリンダ中心から等角等方位置に配置される4気筒レシプロエンジンという発明が記載されているから、引用発明のレシプロエンジンにおいて、刊行物2及び刊行物3に記載された発明における上記レシプロエンジンのピストンの配置や気筒数を、必要とされるエンジン出力等に応じて採用して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 よって、本願発明は、引用発明及び刊行物2若しくは引用例3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 <拒絶理由を発見しない請求項> 請求項1に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。 [2]当審拒絶理由の判断 1.刊行物の記載事項 刊行物及び刊行物の記載事項並びに引用発明は、上記「[1]2.」に記載したとおりのものである。 2.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「傘歯車6a」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「傘歯車」に相当し、以下同様に、「クランクピン6」は「クランクピン」に、「エンジンブロック1」は「基台部」に、「回転可能に支承」することは「回転自在に軸支」することに、「出力軸を有する歯車4」は「出力用傘歯車」にそれぞれ相当する。 そして、引用発明において、「各傘歯車6aの全ての歯部と噛み合う出力軸を有する歯車4を設け」たものであるから、各傘歯車6aは、同期して連動することは明らかである。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「傘歯車式クランク機構を備えるレシプロエンジンであって、 前記傘歯車式クランク機構は、 傘歯車の偏心位置に設けたクランクピンとコネクティングロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変換すると共に、 前記基台部は前記傘歯車の外側に配置され、 前記コネクティングロッドは前記傘歯車の内側に配置され、 前記各傘歯車を同期して連動する機構である、 等角等方配置型4気筒レシプロエンジン。」 [相違点1] 本願発明においては、「ピストンレイアウトがシリンダ中心から等角等方位置に配置される」ものであって、「各ピストンはシリンダ中心から等角等方位置に配列され」ており、かつ、「4気筒」を有する等角等方配置型4気筒レシプロエンジンであるのに対して、引用発明においては、レシプロエンジンのピストンレイアウトや気筒数について不明である点。 [相違点2] 本願発明においては、「隣設される傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支」するものであって、「各傘歯車の中心から外側に突出する出力軸によって回転動力を得る」のに対して、引用発明においては、「隣接される傘歯車6aの歯部同士が噛み合わないように離間してエンジンブロック1に回転可能に支承し」、「各傘歯車6aの全ての歯部と噛み合う出力軸を有する歯車4を設け」る点。 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 刊行物2及び刊行物3には、ピストンの配置が、シリンダ中心から等角等方位置に配置される4気筒レシプロエンジンという発明が記載されているから、引用発明のレシプロエンジンにおいて、刊行物2及び刊行物3に記載された発明における上記レシプロエンジンのピストンの配置や気筒数を、必要とされるエンジン出力等に応じて採用して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 [相違点2について] 本願発明における、「隣設される傘歯車の歯部を其々噛み合わせて基台部に回転自在に軸支」するものであって、「各傘歯車の中心から外側に突出する出力軸によって回転動力を得る」点は、刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体をみても記載や示唆はなされていないから、引用発明及び刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 以上の検討により、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び刊行物2及び刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たとすることはできないから、本願発明は、引用発明及び刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3.小括 したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び刊行物2、刊行物3の明細書及び図面の全体に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえなくなった。 そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-02-23 |
出願番号 | 特願2014-24955(P2014-24955) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F02B)
P 1 8・ 113- WY (F02B) P 1 8・ 537- WY (F02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 瀬戸 康平、後藤 泰輔 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
松下 聡 槙原 進 |
発明の名称 | 等角等方配置型レシプロエンジン |
代理人 | 上吉原 宏 |