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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1311076
審判番号 不服2015-11991  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-24 
確定日 2016-03-01 
事件の表示 特願2010-118066「情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日出願公開、特開2011-248432、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年5月24日の出願であって、平成25年11月28日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月31日付けで手続補正がなされ、同年7月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月6日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月19日付けで平成26年10月6日付け手続補正について補正却下の決定がなされると共に拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

平成27年6月24日付け手続補正は、、請求項の削除を目的とするものであって、特許法第17条の2第3?5項に規定に適合するものと認められる。
したがって、本願の請求項1-5に係る発明は、平成27年6月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
サーバと、製品と、を備えた情報処理システムであって、
前記サーバは、前記製品の流通を管理する流通情報を製品固有の情報に関連して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の流通情報を前記製品の流通に応じて更新する更新手段と、
を備え、
前記製品は、
前記サーバとネットワークを介して通信する通信手段と、
前記通信手段がネットワークに接続されたときに、前記通信手段を介して前記製品固有の情報を送信することで前記サーバから前記流通情報に応じた情報を取得し、取得した情報に応じて自装置の設定を変更する設定変更手段と、
を備え、
前記自装置の設定は、流通先に応じたアプリケーションソフトウェアを起動させるための設定であることを特徴とする情報処理システム。」


第3 原査定の理由の概要

1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

[理由1]
・請求項1?6
・引用文献1?2
・備考:
引用文献1には、「情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び記憶媒体」に関する発明として、ライセンス発行サーバ(本願請求項1の「サーバ」に相当)と情報処理装置(本願請求項1の「製品」に相当)がネットワークで接続されたシステムであって、前記ライセンス発行サーバは、前記情報処理装置からデバイス番号(本願請求項1の「製品固有の情報」に相当)を受信すると、前記情報処理装置の言語・地域に対応するライセンス情報を生成し、前記情報処理装置に当該ライセンス情報を送信し、前記情報処理装置は当該ライセンス情報をもとにソフトウェアをインストール(本願請求項1の「設定変更手段」に相当)する、という発明が開示(段落番号【0023】?【0071】等、図12等)されている。

引用文献1に記載された発明は、流通を管理する流通情報を製品固有の情報に関連して記憶し、流通に応じて更新する、という構成ではないが、そのような構成は、当該技術分野において、周知の技術である(例えば、引用文献2の段落番号【0021】?【0058】等、図5等)。したがって、引用文献1に記載された発明に、上記周知の技術を適用し、本願請求項1?6に係る発明とすることは、当業者にとって、容易である。

よって、本願請求項1?6に係る発明は、引用文献1と周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2005-078166号公報
2.特開2009-075644号公報


第4 当審の判断
1.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-078166号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付加した。)

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置上で言語及び地域を指定する方法として、従来から、ユーザが言語及びフォーマットを決定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000-181595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、ユーザ自身が言語及び地域特性を選択して指定しなければならず、そのために言語及び地域特性についての知識を有することが必要とされる。逆に言えば、言語及び地域特性についての知識を有しないユーザにとっては、従来技術は使い勝手のよいものではなかった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、ユーザに言語選択を求めることなくユーザにとって最適な言語で表現された画面を提供する技術を提供することを目的とする。」(4頁12-39行)

イ.「【0019】
<装置の説明>
図1は本発明の好適な実施の形態に係る情報処理装置としてのライセンス発行サーバ101を含むシステム構成図である。このネットワークシステムは、ソフトウェアを管理するためのものであり、特にソフトウェアの不正使用を防止するシステムである。また、本システムは、エンドユーザがソフトウェアのライセンス発行を行う際に入力するライセンスアクセス番号に基づいて、画面表示に使用する言語を切り替えるものである。
【0020】
図1中、101は、ライセンス情報発行処理全般を司る情報処理装置としてのライセンス発行サーバ101である。また、102はユーザが管理する情報処理装置としてのユーザシステムである。パーソナルコンピュータや携帯端末やプリンタや複写機など、ネットワークに接続可能でソフトウェアをインストール可能なあらゆる情報処理装置がユーザシステム102となりうる。また、103は販売会社が管理する情報処理装置としての販売会社システムであり、104はソフトウェア開発業者が管理する情報処理装置としてのソフトウェア開発業者システムである。パーソナルコンピュータやワークステーションが販売会社システム103やソフトウェア開発業者システム104となりうる。
【0021】
105はインターネットなどのネットワークであり、ユーザシステム102、販売会社システム103及びソフトウェア開発業者システム104は、ネットワーク105を介してライセンス発行サーバ101と接続される。106はライセンス発行サーバ101に接続され、アプリケーション情報、ライセンスファイル(LF)を含む商品情報、アクター情報、ライセンスアクセス番号(LA♯)情報及びデバイスシリアル番号(DS#)情報を格納するデータベースである。
【0022】
107はライセンス発行サーバ101上の言語処理部であり、言語処理部107には、ブラウザ言語取得モジュール108、言語決定モジュール109が含まれる。110はライセンス発行サーバ101上のライセンスファイル(LF)発行部であり、ライセンスアクセス番号(LA#)入力画面表示モジュール111、ライセンスアクセス番号(LA#)取得モジュール112、販売会社特定モジュール113、デバイスシリアル番号(DS#)入力画面表示モジュール、及びライセンスファイル(LF)発行モジュール115が含まれる。116はライセンス発行サーバ101上の商品登録部であり、商品登録モジュール117が含まれる。118はライセンス発行サーバ101上のライセンスアクセス番号発行部であり、商品選択モジュール119及びライセンスアクセス番号発行モジュール120が含まれる。121はユーザシステム102上の表示部であり、122はユーザシステム102上の入力部である。123は販売会社システム103上の表示部であり、124は販売会社システム103上の入力部である。125はソフトウェア開発業者システム104上の表示部であり、126はソフトウェア開発業者システム104上の入力部である。
【0023】
本システムで管理されるソフトウェアを購入したユーザが、そのソフトウェアを情報処理装置にインストールするためには、常に、ライセンス情報発行サーバ101から発行されたライセンス情報が必要とされる。ライセンス情報発行サーバ101は、ネットワーク105を介した適正なアクセスに対し、ライセンス情報を発行する。ライセンス情報には、ソフトウェアのインストール先の情報処理装置固有の識別情報を埋め込むことができる。その場合、ライセンス情報に埋め込まれた識別情報を有する情報処理装置にしかそのソフトウェアをインストールできない。すなわち、他の装置に対して同じソフトウェアをインストールする際には、異なるライセンス情報が必要となる。これにより、ソフトウェアの無断複製を防止可能となっている。販売会社やソフトウェア開発業者はライセンス情報発行サーバ101から取得したライセンスアクセス番号又はライセンス情報を含めたソフトウェアパッケージを販売することが可能である。本システムで管理されるソフトウェアを購入したユーザは、ライセンス情報発行サーバ101に直接アクセスしてライセンスアクセス番号と引き替えにライセンス情報を取得するか、或いは、販売会社やソフトウェア開発業者がライセンス情報発行サーバ101から取得したライセンス情報を含むソフトウェアを購入するかいずれかの方法を採ることができる。」(7頁14行-8頁19行)

ウ.「【0029】
図3?図11を参照して本実施の形態に係るライセンス発行サーバ101の動作を説明する。
【0030】
図3及び図4はライセンス発行サーバ101が提供するライセンスアクセス番号入力画面である。ライセンス情報発行サーバ101は、ユーザシステム102からインターネット105を介したアクセスを受けて、図3または図4に示す画面を表示するための表示用データをユーザシステム102に送信する。
【0031】
図3において、301はライセンスアクセス番号入力画面であり、この画面上にライセンスアクセス番号入力ボックス302と、[Submit]ボタン303が表示される。
【0032】
エンドユーザは、ライセンス発行を行う際に、まずライセンス発行用URLにアクセスする。ライセンス発行サーバ101は、ユーザからアクセスされると、ブラウザ言語取得モジュール108により、ユーザが使用しているブラウザの言語設定を取得し、ブラウザの言語に応じた言語のライセンスアクセス番号入力画面を表示する。
【0033】
図3はブラウザの言語設定が日本語の場合のライセンスアクセス番号入力画面301を示している。図4はブラウザの言語設定が英語の場合のライセンスアクセス番号入力画面401を示している。図3及び図4の画面には、言語が異なる同じ内容の文章が表示されている。
【0034】
エンドユーザは表示されたライセンスアクセス番号入力画面301上のライセンスアクセス番号入力ボックス302に、購入したソフトウェアパッケージに含まれるライセンスアクセス番号を入力し、[Submit]ボタン303を選択して、ライセンス発行処理を開始する。
【0035】
[Submit]ボタン303が選択されると、ライセンス発行サーバ101は入力されたライセンスアクセス番号を取得し、そのライセンスアクセス番号に対応する販売会社、つまり、そのソフトウェアパッケージを販売した販売会社を特定する。次にライセンス発行サーバ101は、特定した販売会社の言語決定ルールに基づいて言語及び地域を決定する。言語決定ルールとは、言語の決定方法であり、販売会社毎に異なるものである。例えば、欧州を統括する販売会社の場合、フランス、イタリア、ドイツ、スペインなどの国からアクセスされ、ブラウザ言語がこれらの言語の場合、表示画面ではそれらの言語を使用し、地域は欧州として、日付表示はDD/MM/YYYY、時間表記はGMTで表示する。販売会社の都合に応じて言語決定のルールを変更できるため、柔軟な運用が可能となる。
【0036】
ユーザが用いているブラウザの設定言語のみを参照するのではなく、ユーザが入力したライセンスアクセス番号によって販売会社が決まり、販売会社が統括する地域・言語が決まるため、統括地域・言語の範囲内で表示言語を決定することができる。例えば、米国の販売会社が販売したライセンスアクセス番号を、フランス語設定のブラウザから入力した場合には、英語による表示画面を表示させる。フランス語画面を表示してフランス語の入力を行われても、米国の販売会社が対応できないからである。このルールは、サーバープログラム中の処理として記述される。後述する図13の処理が販売会社の言語決定ルールを示したものである。
【0037】
続いてライセンス発行サーバ101は、決定した言語に対応するデバイスシリアル番号入力画面を送出し、エンドユーザの表示装置上にデバイスシリアル番号入力画面が表示される。
【0038】
図5及び図6はライセンス発行サーバ101が提供するデバイスシリアル番号(DS#)入力画面である。図5は決定された言語が日本語の場合のデバイスシリアル番号入力画面を示しており、決定された言語が英語の場合は図6の画面が表示される。すなわち、図5及び図6の画面には、言語は異なるが同じ内容の文章が表示されている。
【0039】
図5において、501はデバイスシリアル番号入力画面(図では「ライセンス情報ファイル発行」と記載されている)である。デバイスシリアル番号入力画面501には、商品情報とともにデバイスシリアル番号入力ボックス502と、デバイスシリアル番号入力方法選択ラジオボタン503と、デバイスシリアル番号ファイル名入力ボックス504と、デバイスシリアル番号ファイル指定用参照ボタン505と、ライセンス情報の発行を指示する[次へ]ボタン506と、前の画面に戻る[戻る]ボタン507と、ライセンス情報発行処理自体を中止する[中止する]ボタン508とを表示する。図5ではデバイスシリアル番号が、「デバイス番号」または、省略表記では「DS#」と記載されている。
【0040】
デバイスシリアル番号入力ボックス502は、その商品のライセンス本数から発行済みのライセンス本数を引いた値と、デバイスシリアル番号入力ボックスの最大表示個数の小さい方の数分表示される。
【0041】
ユーザは本画面において、表示されたソフトウェア情報が購入したパッケージに含まれるソフトウェアと相違ないことを確認した後、503にてデバイスシリアル番号指定方法を選択する。上側のラジオボタンを選択した場合は、ソフトウェアを導入する情報処理装置のデバイスシリアル番号(DS#)をデバイスシリアル番号入力ボックス502に入力する。下側のラジオボタンを選択した場合は、デバイスシリアル番号ファイル名入力ボックス504にデバイスシリアル番号ファイルを絶対パスで入力するか又は、デバイスシリアル番号ファイル指定用参照ボタン505を選択し、オペレーティングシステム標準のファイル指定ダイアログボックスを表示して、デバイスシリアル番号ファイルを指定する。いずれかの方法にてデバイスシリアル番号の指定を行った後、[次へ]ボタン506を選択すると、入力されたデバイス番号の装置にソフトウェアを導入(インストール)する際に必要となるライセンス情報が、ライセンス発行サーバ101内の所定の場所に生成される。ライセンス情報の生成が完了すると、ライセンス発行サーバ101は、先に決定された言語に対応するユーザ情報入力画面を表示するための表示用データをユーザシステム102に送信する。
【0042】
図7及び図8はライセンス発行サーバ101が提供するユーザ情報入力画面を示す図である。
【0043】
図7において、701はユーザ情報入力画面であり、この画面上に、会社名入力ボックス702と、所属名入力ボックス703と、郵便番号入力ボックス704と、都道府県選択リスト705と、住所1入力ボックス706と、住所2入力ボックス707と、電話番号入力ボックス708と、担当者氏名入力ボックス709と、連絡先電話番号入力ボックス710と、連絡先E-Mailアドレス入力ボックス711と、[次へ]ボタン712と、[戻る]ボタン713と、Privacy Policyリンク714とを表示する。
【0044】
図7は決定された言語が日本語、地域が日本の場合のお客様情報入力画面を示しており、日本特有の項目として都道府県選択リスト705が表示されている。都道府県選択リスト705は決定した地域が日本以外の場合は表示されない。
【0045】
決定された言語が英語、地域がアメリカの場合は図8の画面が表示される。図8において、801はお客様情報入力画面であり、この画面上に、会社名入力ボックス802と、所属名入力ボックス803と、住所1入力ボックス804と、住所2入力ボックス805
と、州名入力ボックス806と、国名入力ボックス807と、郵便番号入力ボックス808と、電話番号入力ボックス809と、担当者氏名入力ボックス810と、連絡先電話番号入力ボックス811と、連絡先E-Mailアドレス入力ボックス812と、[次へ]ボタン813と、[戻る]ボタン814と、Privacy Policyリンク815とを表示する。
【0046】
住所入力項目は国・地域によって異なるため、ライセンス発行サーバ101は決定した地域に対応した入力項目を含み、決定した言語のお客様情報入力画面を送出する。
【0047】
エンドユーザは、702?711の各項目(図8の場合は、802?812)を入力して[次へ]ボタン712(図8の場合は、[Next]ボタン813)を選択することにより、お客様情報の入力を確定する。お客様情報が確定されると、先に入力したデバイスシリアル番号に対応する情報処理装置に対しソフトウェアを導入(インストール)する際に必要となるライセンス情報が、ライセンス発行サーバ101内の所定の場所に生成される。ライセンス情報の生成が完了すると、図9又は図10に示す画面が表示される。
【0048】
また、エンドユーザが、Privacy Policyリンク714又は815を選択すると、ライセンス発行サーバ101は、決定した言語に対応したPrivacy Policy(個人情報の取り扱いに関する記述)画面(不図示)を送出する。
【0049】
図9及び図10はライセンス発行サーバ101が提供するライセンス情報取得画面である。ライセンス発行サーバ101は、ユーザシステム102からインターネット105を介したアクセスを受けると、図9又は図10に示す画面を表示するための表示用データをユーザシステム103に送信する。
【0050】
図9において、901はライセンス情報取得画面(図では「ライセンス情報ファイル取得」と記載されている)であり、この画面上に、ライセンス情報発行日時905(図では「ライセンス情報ファイル発行日」と記載されている)とともにライセンス情報の取得を指示する[取得]ボタン902と、前の画面に戻る[戻る]ボタン906と、Topメニューに戻るための[Topメニューへ戻る]ボタン907とを表示する。
【0051】
ユーザが本画面において、先に発行されたライセンス情報(ファイル)を取得するために[取得]ボタン902を選択すると、オペレーティングシステム標準のファイル指定ダイアログボックス903が表示される。任意のライセンス情報(ファイル)の保存先とファイル名を入力して保存を指示すると、オペレーティングシステム標準のダウンロード中ダイアログ904が表示されダウンロードが行われる。
【0052】
図9は決定された言語が日本語、地域が日本の場合のライセンス情報取得画面を示しており、ライセンス情報発行日時905の日付表記は、YYYY/MM/DD形式、時間表記は、hh:mm:ss(JST)形式で表示されている。
【0053】
決定された言語が英語、地域がアメリカの場合は図10の画面が表示される。図10において、ライセンス情報発行日時1005の日付表記は、MM/DD/YYYY形式、時間表記は、hh:mm:ss(EST)形式で表示されている。なお、それぞれの画面に表示される時刻は、販売会社の販売地域に対応する現地時間(時差やサマータイムを考慮した時刻)である。また、ここでは日付表記及び時間表記を決定された地域の形式で表示する例を示したが、通貨記号などの通貨表示形式、及び小数点記号・桁区切り記号・負の符号などの数値表示形式についても同様に取り扱うことが可能なのは言うまでもない。」(9頁1行-11頁47行)

エ.「【0054】
図11は、データベース106に格納された情報を示す図である。データベース106には、アプリケーション情報、ライセンス情報を含む商品情報、アクター情報、ライセンスアクセス番号情報及びデバイス番号情報が格納されている。
【0055】
1101はアプリケーション(Application)テーブルであり、本システム上でアプリケーションを一意に識別するアプリケーション登録番号1102、アプリケーションID1103、アプリケーション・バージョン1104、アプリケーション名1105、アクターID1106が格納される。
【0056】
1107は商品(Product)テーブルであり、商品コード1108、アプリケーション登録番号1109、商品名1110、商品タイプ1111、ライセンス台数1112、ライセンス期限1113、カウント情報1114、保守契約情報1115が格納される。本ライセンス発行システムに登録されている商品の情報が本テーブル内の各フィールドに格納されている。アプリケーションと商品は1対多の関係にあるため、同一のアプリケーションに対して複数の商品が存在しうる。
【0057】
1116はアクター(Actor)テーブルであり、アクターを一意に識別するアクターID1117、販売会社又はソフトウェア開発業者の種別を示すアクター種別1118、販売会社又はソフトウェア開発業者の名称を示すアクター名1119が格納される。
【0058】
1120はライセンスアクセス番号(LA#)テーブルであり、ライセンスアクセス番号1121、商品コード1122、登録済みデバイス数1123が格納される。商品とライセンスアクセス番号は1対多の関係にあるため、同一の商品に対して複数のライセンスアクセス番号が存在しうる。
【0059】
1124はデバイス(Device)テーブルであり、デバイスシリアル番号1125、ライセンスアクセス番号1126が格納される。ライセンスアクセス番号とデバイスは1対多の関係にあるため、同一のライセンスアクセス番号に対して複数のデバイスが存在しうる。
【0060】
ライセンスアクセス番号から販売会社を特定する際には、LA#テーブル1120の商品コード1122からProductテーブル1107を特定でき、Productテーブル1107のアプリケーション登録番号1109からApplicationテーブル1101を特定でき、Applicationテーブル1101のアクターID1117からActorテーブル1116を特定できる。販売会社はActorテーブル1116で管理されているため、求まったActorレコードが販売会社を表わしている。」(11頁48行-12頁34行)

オ.「【0062】
図12は、本実施の形態のライセンス発行サーバ101における、エンドユーザによるライセンス発行処理のフローチャートである。
【0063】
まず、ステップS1201にて、エンドユーザがWebブラウザでライセンス発行システムのURLを入力して、ライセンスアクセス番号入力画面の表示を要求する。この要求はリクエスト情報としてライセンス発行サーバ101に送信される。ライセンス発行サーバ101はステップS1202にて、リクエスト情報からエンドユーザが使用しているWebブラウザに設定されている言語情報を取得する。
【0064】
続いて、ライセンス発行サーバ101はステップS1203にてブラウザに設定されている言語に対応するライセンスアクセス番号入力画面301または401を送出する。すると、エンドユーザの表示装置上にライセンスアクセス番号入力画面が表示される。次に
、エンドユーザはステップS1204にて、ライセンスアクセス番号入力画面上のライセンスアクセス番号入力ボックス302に、購入したソフトウェアパッケージに含まれていたライセンスアクセス番号を入力して[Submit]ボタン303または403を選択する。ライセンス発行サーバ101は、ステップS1205にて、入力されたライセンスアクセス番号を取得し、ステップS1206にて、ライセンスアクセス番号を元にそのソフトウェアパッケージを販売した販売会社を特定する。次にライセンス発行サーバ101は、ステップS1207の言語・地域決定処理にて、特定した販売会社の言語・地域決定ルールに基づいて言語及び地域を決定し、ステップS1208にて、決定した言語のライセンス情報発行画面501または601を表示する。
【0065】
エンドユーザがステップS1209にて、インストール先の情報処理装置のデバイス番号を入力して[次へ]ボタン506(又は[Next]ボタン606)を選択すると、ライセンス発行サーバ101はステップS1210にて、先に決定した言語・地域に対応するユーザ情報入力画面701または801を表示する。次にエンドユーザがステップS1211にて、ユーザ情報を入力して[次へ]ボタン712(又は[Next]ボタン813)を選択すると、ライセンス発行サーバ101はステップS1212にてライセンス情報を生成し、ライセンス発行サーバ101内の所定の場所に保存する。続いてステップS1213にて、先に決定した言語・地域に対応したライセンス情報取得画面901または1001を表示する。エンドユーザはステップS1214にて、[取得する]ボタン902(又は[Download a License File]ボタン1002)を選択し、ステップS1215にてエンドユーザの情報処理装置上の保存場所を指定して、ライセンス情報ファイルを保存して、本処理を終了する。」(12頁38行-13頁22行)

以上総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

〈引用発明〉

「ライセンス情報発行処理全般を司る情報処理装置としてのライセンス発行サーバ101、パーソナルコンピュータや携帯端末やプリンタや複写機など、ネットワークに接続可能でソフトウェアをインストール可能な情報処理装置としてのユーザシステム102と、販売会社が管理する情報処理装置としての販売会社システム103と、ソフトウェア開発業者が管理する情報処理装置としてソフトウェア開発業者システム104からなる、ソフトウェアの不正使用を防止するシステムであって、
ユーザシステム102、販売会社システム103及びソフトウェア開発業者システム104は、インターネットなどネットワーク105を介してライセンス発行サーバ101に接続され、
ライセンス発行サーバ101に、アプリケーション情報、ライセンス情報を含む商品情報、アクター情報、ライセンスアクセス番号情報及びデバイス番号情報を格納するデータベース106に接続され、
ライセンスアクセス番号から販売会社を特定する際には、ライセンスアクセス番号(LA♯)情報でライセンスアクセス番号から商品コード1122を特定し、商品情報で商品コード1122からアプリケーション登録番号1109を特定でし、アプリケーション情報でアプリケーション登録番号1109からのアクターID1117を特定し、アクター情報でアクターID1117から販売会社を特定する、
ソフトウェアを購入したユーザが、そのソフトウェアを情報処理装置にインストールするためには、ライセンス情報発行サーバ101から発行されたライセンス情報が必要とされ、ライセンス情報発行サーバ101は、ネットワーク105を介した適正なアクセスに対し、ライセンス情報を発行するものであって、
ユーザがWebブラウザでライセンス発行システムのURLを入力し、ライセンスアクセス番号入力画面の表示の要求はリクエスト情報としてライセンス発行サーバ101に送信され、
ライセンス発行サーバ101は、リクエスト情報からユーザが使用しているWebブラウザに設定されている言語情報を取得し、ブラウザに設定されている言語に対応するライセンスアクセス番号入力画面を送出し、
ユーザの表示装置上にライセンスアクセス番号入力画面が表示し、
ユーザは、ライセンスアクセス番号入力画面上のライセンスアクセス番号入力ボックス302に、購入したソフトウェアパッケージに含まれていたライセンスアクセス番号を入力して[Submit]ボタンを選択し、
ライセンス発行サーバ101は、入力されたライセンスアクセス番号を取得し、ライセンスアクセス番号を元にそのソフトウェアパッケージを販売した販売会社を特定し、言語・地域決定処理にて、特定した販売会社の言語・地域決定ルールに基づいて言語及び地域を決定し、決定した言語のライセンス情報発行画面を表示し、
ユーザが、ライセンス情報発行画面にインストール先の情報処理装置のデバイス番号を入力して[次へ]ボタン506を選択し、
ライセンス発行サーバ101は、先に決定した言語・地域に対応するユーザ情報入力画面を表示し、
ユーザが、ユーザ情報を入力して[次へ]ボタンを選択し、
ライセンス発行サーバ101は、ライセンス情報を生成し、ライセンス発行サーバ101内の所定の場所に保存し、
先に決定した言語・地域に対応したライセンス情報取得画面を表示し、ユーザは、[取得する]ボタンを選択し、ユーザの情報処理装置上の保存場所を指定して、ライセンス情報ファイルを保存する、
システム。」


2.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ユーザシステム102」及び「ソフトウェア」は、いずれも製造され販売されるものであり、本願発明の「製品」に相当するといえるので、以下、「製品」が「ユーザシステム102」に相当すると見た場合と、「ソフトウェア」に相当すると見た場合に分けて検討する。

ア.引用発明の「ユーザシステム102」が、本願発明の「製品」に相当すると見た場合
(ア)対比
a.引用発明の「ライセンス発行サーバ101」はサーバであり、本願発明の「サーバ」に相当する。

b.引用発明の「ユーザシステム102」は、「パーソナルコンピュータや携帯端末やプリンタや複写機など」の「情報処理装置」は製品され販売される物であり、本願発明の「製品」に相当する。

c.引用発明の「システム」は、「ライセンス発行サーバ101」と「ユーザシステム102」を備えていることから、本願発明の「サーバと、製品と、を備えた情報処理システム」 に相当する。

d.引用発明の「ユーザシステム102」は、「インターネットなどネットワーク105を介してライセンス発行サーバ101に接続され」るものであるから、当然、何らかの「通信手段」を有しているものと認められる。


よって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「サーバと、製品と、を備えた情報処理システムであって、
前記製品は、
前記サーバとネットワークを介して通信する通信手段と、
を備えた、
情報処理システム。」


(相違点1)本願発明では、「サーバー」は、「前記製品の流通を管理する流通情報を製品固有の情報に関連して記憶する記憶手段」と、「前記記憶手段の流通情報を前記製品の流通に応じて更新する更新手段」を備えており、「製品」が「前記通信手段がネットワークに接続されたときに、前記通信手段を介して前記製品固有の情報を送信することで前記サーバから前記流通情報に応じた情報を取得し、取得した情報に応じて自装置の設定を変更する設定変更手段」を備えているのに対して、引用発明では、「サーバ」はそのような「記憶手段」及び「更新手段」を備えておらず、「製品」も「設定変更手段」は備えていない点。

(相違点2)本願発明は、「前記自装置の設定は、流通先に応じたアプリケーションソフトウェアを起動させるための設定である」という発明特定事項を有するのに対して、引用発明は、それに対応する構成を有していない点。

(イ) 判断
当審は次のとおり判断する。

下のa.?c.に示す理由で、引用発明において上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者といえども容易に推考し得たこととはいえない。

したがって、その他の点について判断するまでもなく、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

a.引用発明を開示する刊行物1には、引用発明において上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することについての記載も、それを示唆する記載もない。

b.原査定の拒絶理由で引用された特開2009-75644号公報(以下、「刊行物2」という。)の特許請求の範囲、段落【0001】?【0005】、【0044】?【0070】、図6、7には、不正流通を防止するために、サーバが、製品単位で、製品の製造、流通、販売、稼働、保守、修理、廃棄、リサイクルまでのライフサイクルにおいて発生する情報を保持し、ライフサイクルにおいて発生する情報が発生する毎にサーバの情報を更新し、予め導出した条件に該当した際には、サーバが製品の停止命令を送信することが記載されているが、刊行物2は、予め導出した条件に該当した際に、停止命令を送信するのであり、「流通情報に応じた情報を取得し、取得した情報に応じて自装置の設定を変更する」ものではなく、仮に引用発明におけるユーザシステムに上記刊行物2に記載される技術を採用したとしても、上記相違点1に係る本願発明の構成は導出されない。

したがって、上記刊行物2に記載される技術の存在をもっては、引用発明において上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったとはいえない。

c.ほかの引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったとはいえる根拠は見当たらない。


イ.引用発明の「ソフトウェア」が、本願発明の「製品」に相当すると見た場合
(ア)対比
a.引用発明の「ライセンス発行サーバ101」はサーバであり、本願発明の「サーバ」に相当する。

b.引用発明の「ソフトウェア」は、「販売会社」が製造し販売するものであり、本願発明の「製品」に相当する。

c.引用発明の「システム」は、「ライセンス発行サーバ101」と、「ユーザシステム102」にインストールされた「ソフトウェア」を備えていることから、本願発明の「サーバと、製品と、を備えた情報処理システム」 に相当する。

d.引用発明の「ライセンスアクセス番号」は、「ソフトウェア」毎に固有なものであり、本願発明の「製品固有の情報」に相当する。
また、引用発明の「販売会社」は、「販売」の「地域」を決定するための情報であり製品の流通を管理する情報といえ、本願発明の「流通情報」に相当する。

e.引用発明の「ライセンス発行サーバ101」に接続される「データベース106」には、「ソフトウェア」の「ライセンスアクセス番号」と「販売会社」の関連が記憶されることから、引用発明の「データベース106」は、本願発明の「記憶手段」に相当する。
また、引用発明においても、「データベース」の「販売会社」の情報は、「ソフトウエア」の販売時に更新記憶されるものと認められ、引用発明においても「更新手段」を有しているものと認められる。

(一致点)

「サーバと、製品と、を備えた情報処理システムであって、
前記サーバは、前記製品の流通を管理する流通情報を製品固有の情報に関連して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の流通情報を前記製品の流通に応じて更新する更新手段と、
を備えた、
情報処理システム。」

(相違点1)本願発明では、「製品」は、「前記サーバとネットワークを介して通信する通信手段」と、「前記通信手段がネットワークに接続されたときに、前記通信手段を介して前記製品固有の情報を送信することで前記サーバから前記流通情報に応じた情報を取得し、取得した情報に応じて自装置の設定を変更する設定変更手段」を備えているのに対して、引用発明では、「ソフトウェア」はそのような「通信手段」及び「設定変更手段」を備えていない点。

(相違点2)本願発明は、「前記自装置の設定は、流通先に応じたアプリケーションソフトウェアを起動させるための設定である」という発明特定事項を有するのに対して、引用発明は、それに対応する構成を有していない点。

(イ)判断
引用発明において上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者といえども容易に推考し得たこととはいえない。
なぜならば、引用発明の「製品」はソフトウェアであるから、それを「通信手段」や「設定変更手段」を有するものとできないことは明らかであるし、引用発明は、「ソフトウェアの不正使用を防止するシステム」であるから、その「製品(ソフトウェア)」を、「通信手段や設定変更手段を有する製品」に変更することができないことも明らかであるからである。

したがって、その他の点について判断するまでもなく、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


本願請求項2-5に係る発明は、本願の請求項1に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-5に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-02-17 
出願番号 特願2010-118066(P2010-118066)
審決分類 P 1 8・ 571- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田上 隆一  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 千葉 輝久
山澤 宏
発明の名称 情報処理システム  
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所  

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