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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1311100 |
審判番号 | 不服2015-13880 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-23 |
確定日 | 2016-03-01 |
事件の表示 | 特願2011-112285「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月10日出願公開、特開2012-243558、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年5月19日の出願であって、平成26年12月17日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月1日付け(発送日:同年6月9日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年7月23日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 平成27年7月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1、2を、 「【請求項1】 一端に接続相手となる端子台にねじ止めされるねじ止め板部を有すると共に他端に電線が接続される電線接続部を有する端子金具と、 前記端子金具及び前記電線を一体成形されたモールド樹脂部からなるコネクタハウジングと、 前記コネクタハウジングに外装されるシールドシェルと、 を備えるコネクタであって、 前記ねじ止め板部の周囲を固定する前記コネクタハウジングの板部固定部の内、前記ねじ止め板部の前記端子台への締結方向に位置する部位にのみ、前記ねじ止め板部の前記締結方向への撓み変位を許容する端子逃げ空間が備えられていることを特徴とするコネクタ。 【請求項2】 前記コネクタハウジングの外周面には、環状の防水部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。」 とする補正(以下、「補正事項」という。)を含んでいる。 2 補正の適否 本件補正の補正事項は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「締結方向のみに位置する部位」を「締結方向に位置する部位にのみ」と補正するものである。本件補正前の「締結方向のみに位置する部位」では、請求項1自体の記載は明りょうであるが、請求項1に記載した発明が技術的に正確に特定されないところ、当該記載の不明りょうさを正してその記載本来の意味内容を明らかにするものと解されるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。 したがって、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項に違反するところはなく、適法な補正である。 第3 本願発明 上記のように、本件補正は、適法な補正であるから、本願の請求項1、2に係る発明は、平成27年7月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、上記「第2」の「1」のとおりのものである(以下、「本願発明1」、「本願発明2」という。)。 第3 刊行物に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2009-211976号公報(以下、「刊行物」という。)には、「コネクタ」に関し、図面(特に、【図9】参照)とともに、次の事項が記載されている。 1 「【0024】 電線付端子12,12,12は、電線18,18,18の端部に端子13,13,13がそれぞれ電気的に接続されており、コネクタハウジング11の端子キャビティ17,17,17にそれぞれ収納されている。端子13は、先端部側に形成されている電気接続部19がコネクタハウジング11の先端部から突出して配置されており、電気接続部19に締結孔20が形成されている。 【0025】 ユニットパッキン14は、例えばゴム等の弾性材料を用いて円環形状に形成されており、コネクタハウジング11の先端部寄りに外嵌されている。 【0026】 シールドシェル15は、導電性金属材料を用いて、大径側筒部21と小径側筒部22とを有する2個の連続する筒形状に形成されており、大径側筒部21の幅方向両端部に、外部固定用のフランジ23,23がそれぞれ形成されている。シールドシェル15は、コネクタハウジング11の外周全体を覆うようにコネクタハウジング11に外装されている。 【0027】 シールドリング16は、シールドシェル15と同様の導電性金属製材料を用いて、シールドシェル15の小径側筒部22の外径寸法よりもわずかに大きい内径寸法を有する筒形状に形成されている。 【0028】 シールドリング16は、コネクタハウジング11に外装されたシールドシェル15の小径側筒部22上に不図示の編組導体が被されてから、その編組導体の外側に装着され、その後に加締められることで、編組導体をシールドシェル15の小径側筒部22に電気的に接続させる。編組導体は、コネクタハウジング11から後方に延出されている電線18の周囲を軸方向に包囲することで、外乱を防止する機能を有する。」 2「【0031】 そして、電線付端子12は、端子13の後端部に有する導体接続部31が中央部端子キャビティ28内に配置され、端子13の先端部に有する電気接続部19が前部端子キャビティ29内に配置されている。端子13は、電気接続部19と導体接続部31との中間位置に係合孔32が形成されている。 【0032】 導体接続部31は、電線18のシース33内に収容されている導体34を加締め固定することで導体34に電気的に接続されている。」 3 「【0038】 ハウジングランス26は、端子13を先にした電線付端子12が、コネクタハウジング11の後部端子キャビティ30側から挿入されると、端子13の中央部において係合孔3 2に係止される。これにより、ハウジングランス26は、端子13を、電線付端子12の軸方向にコネクタハウジング11内の所定の位置に位置決めする。 【0039】 また、ハウジングランス26は、後述する相手側部材(端子台)80にねじ込まれる締結部材としてのボルト81の締結方向と同一の方向に相当する、図2中の上下方向に端子13が変位したとしても、端子13の係合孔32への係止状態を維持する。」 4 「【0049】 図9に示すように、相手側部材80は、モータ等の電装部品に形成されている端子台であって、締結部材としてのナット部材82が固定されている。ナット部材82には、締結部材としてのボルト81がねじ込まれる。 【0050】 このとき、コネクタ10は、その下端面が、相手側部材80の固定面83に対して、ボルト81の締結方向の順方向に距離L1だけ離れた位置において平行移動可能に保持されている。そのため、端子13は、ボルト81の締結方向の反対方向である反ねじ込み方向に距離L2だけ離れている。 【0051】 図10に示すように、端子13の締結孔20がナット部材82の雌ねじ孔84に同心になるように、コネクタ10が相手側部材80に向けて平行移動されていき、端子13が相手側部材80の固定面83の上方に距離L2(図9参照)だけ離れて配置される。 【0052】 そして、端子13の締結孔20を通じて、ボルト81がナット部材82の雌ねじ孔84にねじ込まれていく。 【0053】 すると、ボルト81のねじ込みに伴い、ボルト81のねじ込み方向と同一の方向に相当する、図10中の下方向の応力が端子13に対して与えられる。 【0054】 しかし、端子13は、ハウジングアーム27によって、図10中の下方向へ変位自在に支持されている。そのため、電気接続部19がコネクタハウジング11に対して下方に移動される。これにより、端子13に無理な応力がかからない。このとき、ハウジングランス26は、係合孔32への係止状態を維持したまま、ハウジングアーム27に協働して端子13を支持し続ける。」 これら上記記載事項及び図示内容(特に、【図9】)を総合して、本願発明1に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「先端部に相手側部材80にねじ込まれる電気接続部19を有すると共に後端部に電線18が接続される導体接続部31を有する端子13と、 端子13及び電線18を収納するコネクタハウジング11と、 コネクタハウジング11に外装されたシールドシェル15と、 を備えるコネクタ10であって、 電気接続部19を固定するコネクタハウジング11のハウジングランス26の内、電気接続部19の相手側部材80にねじ込まれる方向及びその反対方向に電気接続部19の変位を許容するハウジングアーム27を有する空間が備えられているコネクタ10。」 第4 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「先端部」は、その機能、構造からみて、本願発明1の「一端」に相当する。同様に、引用発明の「相手側部材80」、「電気接続部19」、「後端部」、「電線18」、「導体接続部31」、「端子13」、「コネクタハウジング11」、「シールドシェル15」、「コネクタ10」、「相手側部材80にねじ込まれる方向」、「変位」は、本願発明1の「接続相手となる端子台」、「ねじ止め板部」、「他端」、「電線」、「電線接続部」、「端子金具」、「コネクタハウジング」、「シールドシェル」、「コネクタ」、「端子台への締結方向」、「撓み変位」に相当する。 また、引用発明の「端子13及び電線18を収納するコネクタハウジング11」と本願発明1の「端子金具及び電線を一体成形されたモールド樹脂部からなるコネクタハウジング」は、「端子金具及び電線を収納するコネクタハウジング」という限りで共通している。 さらに、引用発明の「電気接続部19を固定するコネクタハウジング11のハウジングランス26の内、電気接続部19の相手側部材80にねじ込まれる方向及びその反対方向に電気接続部19の変位を許容するハウジングアーム27を有する空間」を備えることと本願発明1の「ねじ止め板部の周囲を固定するコネクタハウジングの板部固定部の内、ねじ止め板部の端子台への締結方向に位置する部位にのみ、ねじ止め板部の締結方向への撓み変位を許容する端子逃げ空間」を備えることは、「ねじ止め板部を固定するコネクタハウジングの板部固定部の内、ねじ止め板部の端子台への締結方向に位置する部位に、ねじ止め板部の締結方向への撓み変位を許容する端子逃げ空間」を備えることという限りで共通している。 以上の点からみて、本願発明1と引用発明とは、 [一致点] 「一端に接続相手となる端子台にねじ止めされるねじ止め板部を有すると共に他端に電線が接続される電線接続部を有する端子金具と、 端子金具及び電線を収納するコネクタハウジングと、 コネクタハウジングに外装されるシールドシェルと、 を備えるコネクタであって、 ねじ止め板部を固定するコネクタハウジングの板部固定部の内、ねじ止め板部の端子台への締結方向に位置する部位に、ねじ止め板部の締結方向への撓み変位を許容する端子逃げ空間が備えられているコネクタ。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 [相違点] 相違点1 端子金具及び電線を収納するコネクタハウジングに関して、本願発明1では、端子金具及び電線を一体成形されたモールド樹脂部からなるコネクタハウジングであるのに対して、引用発明では、端子13及び電線18を収納するコネクタハウジング11である点。 相違点2 板部固定部の内、端子逃げ空間が備えられる位置に関して、本願発明1では、ねじ止め板部の端子台への締結方向に位置する部位のみであるのに対して、引用発明では、電気接続部19の相手側部材80にねじ込まれる方向及びその反対方向である点。 第5 判断 上記相違点2について検討する。 刊行物の段落【0041】の「ハウジングアーム27は、端子13の電気接続部19を上下方向から弾性的に押圧している。そのため、端子13を、ボルト81の締結方向と同一の方向に相当する、図3中の上下方向に変位自在に支持する」との記載、段落【0060】の「端子13は、ハウジングアーム27によって、図12中の上方向へ変位自在に支持されている。そのため、電気接続部19がコネクタハウジング11に対して上方に移動される。これにより、ナット部材82とのガタをなくすことができる」との記載及び段落【0066】の「本実施形態のコネクタ10によれば、ハウジングアーム27が、端子13を厚さ方向の両側において押圧支持することで、端子13の倒れやずれを防止して、端子の位置決め精度を向上させることができ、電気的接続に係る信頼性をより一層向上させることができる」との記載に照らせば、引用発明は、電気接続部19の相手側部材80にねじ込まれる方向及びその反対方向の両方向に電気接続部19の変位を許容する空間を備えることを必要とし、これによって所望の効果を奏していると解するのが相当である。 そうすると、刊行物の段落【0067】の「本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜・・・各構成要素の・・・配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない」との記載を考慮したとしても、引用発明において、電気接続部19の相手側部材80にねじ込まれる方向にのみ電気接続部19の変位を許容する空間を備えることは、当業者が容易に想到し得たということができない。 よって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願発明2についても上記の判断は妥当する。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2011-112285(P2011-112285) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
P 1 8・ 574- WY (H01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
小柳 健悟 内田 博之 |
発明の名称 | コネクタ |
代理人 | 特許業務法人栄光特許事務所 |