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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1311121
審判番号 不服2014-13062  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2016-02-10 
事件の表示 特願2012- 4933「無線スイッチングを実行する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月10日出願公開、特開2012- 90336〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)7月2日(パリ条約による優先権主張2002年7月5日、米国)を国際出願日とする国際出願である特願2004-519768号の一部を平成18年1月17日に新たに特許出願した特願2006-9009号の一部を更に平成24年1月13日に新たに特許出願したものであって、平成25年3月6日付けで拒絶理由が通知され、平成25年9月11日付けで意見書、手続補正書が提出されたものの、平成26年2月28日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成26年7月4日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正書が提出され、前置審査において、平成26年9月18日付けで拒絶理由が通知され、平成26年12月18日付けで意見書、手続補正書が提出され、平成27年4月17日付けで上申書が提出されたものである。

第2.平成26年12月18日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]

平成26年12月18日付けの手続補正(以下「本件補正2」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正2
本件補正2は、平成26年7月4日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?9を補正して、補正後の特許請求の範囲の請求項1?9とする補正であり、補正前後の請求項は各々次のとおりである。なお、下線は請求人が付与した。

[補正前]
「【請求項1】
無線ユーザ端末であって、
ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信するように構成された受信器及び制御器であって、前記第1のOFDM信号は、アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送周波数割当情報と、第1の空間的ビームを示す第1のビーム形成情報とを含むことと、
前記第1の搬送周波数割当情報に応答して、前記第1のビーム形成情報により示されたアンテナアレイを介して前記第1の空間的ビームを使用して、前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を送信するように構成された送信器及び前記制御器と
を備えたことを特徴とする無線ユーザ端末。
【請求項2】
前記受信器及び制御器は、前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を受信するように構成され、前記第3のOFDM信号は、ダウンリンクデータを受信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送周波数割当情報と、第2の空間的ビームを示す第2のビーム形成情報とを含み、
前記受信器及び制御器は、前記第2の搬送周波数割当情報および前記第2のビーム形成情報に応答して、前記第2の空間的ビームを使用して、前記第3の搬送波周波数で第4のOFDM信号を受信するように構成され、
前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。
【請求項3】
前記送信器及び前記制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信し、前記受信器及び制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示に応答して、前記無線ユーザ端末へ送信された前記第1の搬送周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。
【請求項4】
無線ユーザ端末により、ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信することであって、前記第1のOFDM信号は、アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送周波数割当情報と、第1の空間的ビームを示す第1のビーム形成情報とを含むこと、及び
前記第1の搬送周波数割当情報に応答して、前記無線ユーザ端末により、前記第1のビーム形成情報により示されたアンテナアレイを介して前記第1の空間的ビームを使用して、前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を送信すること
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記無線ユーザ端末により、前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を受信することであって、前記第3のOFDM信号は、ダウンリンクデータを受信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送周波数割当情報と、第2の空間的ビームを示す第2のビーム形成情報とを含むことと、
前記無線ユーザ端末により、前記第2の搬送周波数割当情報および前記第2のビーム形成情報に応答して、前記第2の空間的ビームを使用して、前記第3の搬送波周波数で第4のOFDM信号を受信することであって、前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なることと
をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記無線ユーザ端末により、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信し、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示に応答して、前記無線ユーザ端末へ送信された前記第1の搬送周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を受信することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
スイッチングアクセスポイント(SAP)であって、
ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を送信するように構成された送信器及び制御器であって、前記第1のOFDM信号は、アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送周波数割当情報と、第1の空間的ビームを示す第1のビーム形成情報とを含むことと、
前記第1の搬送周波数割当情報に応答して、前記第1のビーム形成情報により示されたアンテナアレイを介して前記第1の空間的ビームを使用して、前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を受信するように構成された受信器及び前記制御器と
を備えたことを特徴とするSAP。
【請求項8】
前記送信器及び前記制御器は、前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を送信するように構成され、前記第3のOFDM信号は、ダウンリンクデータを受信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送周波数割当情報と、第2の空間的ビームを示す第2のビーム形成情報とを含み、
前記送信器及び前記制御器は、前記第2の搬送周波数割当情報および前記第2のビーム形成情報に応答して、前記第2の空間的ビームを使用して、前記第3の搬送波周波数で第4のOFDM信号を送信するように構成され、
前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なることを特徴とする請求項7に記載のSAP。
【請求項9】
前記受信器及び前記制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を受信し、前記送信器及び前記制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示に応答して、前記第1の搬送周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を送信するように構成されたことを特徴とする請求項7に記載のSAP。」

[補正後]
「【請求項1】
無線ユーザ端末であって、
ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信するように構成された受信器及び制御器であって、前記第1のOFDM信号は、アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送周波数割当情報と、第1の空間的ビームを示す第1のビーム形成情報とを含み、前記第1の搬送周波数割当情報と前記第1のビーム形成情報とは永続的ではないことと、
前記第1の搬送周波数割当情報に応答して、前記第1のビーム形成情報により示されたアンテナアレイを介して前記第1の空間的ビームを使用して、前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を送信するように構成された送信器及び前記制御器と
を備えたことを特徴とする無線ユーザ端末。
【請求項2】
前記受信器及び制御器は、前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を受信するように構成され、前記第3のOFDM信号は、ダウンリンクデータを受信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送周波数割当情報と、第2の空間的ビームを示す第2のビーム形成情報とを含み、前記第2の搬送周波数割当情報と前記第2のビーム形成情報とは永続的ではなく、
前記受信器及び制御器は、前記第2の搬送周波数割当情報および前記第2のビーム形成情報に応答して、前記第2の空間的ビームを使用して、前記第3の搬送波周波数で第4のOFDM信号を受信するように構成され、
前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。
【請求項3】
前記送信器及び前記制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信し、前記受信器及び制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示に応答して、前記無線ユーザ端末へ送信された前記第1の搬送周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。
【請求項4】
無線ユーザ端末により、ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信することであって、前記第1のOFDM信号は、アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送周波数割当情報と、第1の空間的ビームを示す第1のビーム形成情報とを含み、前記第1の搬送周波数割当情報と前記第1のビーム形成情報とは永続的ではないこと、及び
前記第1の搬送周波数割当情報に応答して、前記無線ユーザ端末により、前記第1のビーム形成情報により示されたアンテナアレイを介して前記第1の空間的ビームを使用して、前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を送信すること
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記無線ユーザ端末により、前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を受信することであって、前記第3のOFDM信号は、ダウンリンクデータを受信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送周波数割当情報と、第2の空間的ビームを示す第2のビーム形成情報とを含み、前記第2の搬送周波数割当情報と前記第2のビーム形成情報とは永続的ではないことと、
前記無線ユーザ端末により、前記第2の搬送周波数割当情報および前記第2のビーム形成情報に応答して、前記第2の空間的ビームを使用して、前記第3の搬送波周波数で第4のOFDM信号を受信することであって、前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なることと
をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記無線ユーザ端末により、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信し、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示に応答して、前記無線ユーザ端末へ送信された前記第1の搬送周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を受信することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
スイッチングアクセスポイント(SAP)であって、
ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を送信するように構成された送信器及び制御器であって、前記第1のOFDM信号は、アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送周波数割当情報と、第1の空間的ビームを示す第1のビーム形成情報とを含み、前記第1の搬送周波数割当情報と前記第1のビーム形成情報とは永続的ではないことと、
前記第1の搬送周波数割当情報に応答して、前記第1のビーム形成情報により示されたアンテナアレイを介して前記第1の空間的ビームを使用して、前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を受信するように構成された受信器及び前記制御器と
を備えたことを特徴とするSAP。
【請求項8】
前記送信器及び前記制御器は、前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を送信するように構成され、前記第3のOFDM信号は、ダウンリンクデータを受信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送周波数割当情報と、第2の空間的ビームを示す第2のビーム形成情報とを含み、前記第2の搬送周波数割当情報と前記第2のビーム形成情報とは永続的ではなく、
前記送信器及び前記制御器は、前記第2の搬送周波数割当情報および前記第2のビーム形成情報に応答して、前記第2の空間的ビームを使用して、前記第3の搬送波周波数で第4のOFDM信号を送信するように構成され、
前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なることを特徴とする請求項7に記載のSAP。
【請求項9】
前記受信器及び前記制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を受信し、前記送信器及び前記制御器は、前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示に応答して、前記第1の搬送周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を送信するように構成されたことを特徴とする請求項7に記載のSAP。」

2.本件補正2についての検討
本件補正2は、補正前の請求項2の「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」を補正後の請求項2の「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」とする補正を含んでおり、この補正は「第3の搬送波周波数」の前に「前記前記」と重複していたものを「前記」とする誤記の訂正と認められるが、
補正後の請求項2には、依然として、前置審査において、平成26年9月18日付け拒絶理由通知書の理由Aで、新規事項として通知された、「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および(前記)前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」という技術的な事項が残っているものである。
平成26年9月18日付け拒絶理由通知書の理由Aは、以下のとおりである。

「A.平成26年7月4日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


1.請求項2記載の「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
請求項5,8も、同様である。
なお、上記の指摘箇所が周知・慣用技術であるということだけでは、当初明細書等の記載から自明な事項とは言えない。(審査基準第III部第I節3.1を参照)」

第1の搬送波周波数、第2の搬送波周波数、および、第3の搬送波周波数について検討する。
請求項2が引用する請求項1には、「ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信する」とあるから、ダウンリンクで通信される第1のOFDM信号は「第1の搬送波周波数」を用いることが明らかである。
また、請求項1には、「アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数」、及び、「前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を送信する」とあるから、アップリンクで通信される第2のOFDM信号は「第2の搬送波周波数」を用いることが明らかである。
また、請求項2には、「ダウンリンクデータを受信するための第3の搬送波周波数」、及び、「前記第3の搬送波周波数で第4のOFDM信号を受信する」とあるから、ダウンリンクで通信される第4のOFDM信号は「第3の搬送波周波数」を用いることが明らかである。
ここで、「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」ものであるから、請求項2に係る無線ユーザ端末は、ダウンリンクで通信される第1のOFDM信号で使用される第1の搬送波周波数と、アップリンクで通信される第2のOFDM信号で使用される第2の搬送波周波数とは異なる搬送波周波数であり、また、アップリンクで通信される第2のOFDM信号で使用される第2の搬送波周波数と、ダウンリンクで通信される第4のOFDM信号で使用される第3の搬送波周波数とは異なる搬送波周波数である。

また、請求人は、平成27年4月17日付け上申書において、理由Aについて、「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」との事項は、新規事項ではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとして、下記のように主張している。

「(3)理由Aについて
段落番号[0011]には「多周波操作が可能」なシステムにおいて、「周波数搬送波f1?f5は、SAPにおいて異なるポートとして扱われ」、ユーザ端末101?105は、周波数搬送波f1?f5にアクセスを有することが記載されています。また、段落番号[0012]には「各ユーザ端末101?105は、周波数搬送波f1?f5が割り当てられ」、「SAP106は、各周波数搬送波f1?f5を受信」することができると記載されています。段落番号[0015]には、多周波数を使用するSAP106は、周波数(周波数ポート)をユーザ端末101?105に割り当てると記載されています。
従って、図1Aに示したように、各ユーザ端末101?105には、異なる搬送周波数f1?f5が割り当てられ、SAP106と各ユーザ端末101?105との間で多周波操作が可能になります。搬送周波数f1?f5は、SAP106において異なるポートとして扱われ、各々のポートには、単一の搬送周波数が割り当てられます。
請求項1に記載されているように、ダウンリンクの第1の搬送波周波数で受信されたOFDM信号により、アップリンクで使用する第2の搬送周波数が示されます。また、請求項2に記載されているように、ダウンリンクの第1の搬送波周波数で受信されたOFDM信号により、ダウンリンクで使用する第3の搬送周波数を示すこともできます。
段落番号[0014]には「2つの端末が同時に同じ搬送波を使用する確率を最小化する」ために、ユーザ端末101?105が、搬送波を変更する疑似ランダム手順を有することが記載されています。段落番号[0006]に記載されているように、従来のシステムでは、同時に2以上の搬送周波数を使用できず、プロトコルの効率が低いという問題がありました。本願発明は、複数の端末が同時に複数の搬送周波数を使用してAPと通信できることを目的としています。
以上のことから、第1の搬送波周波数と、第1の搬送波周波数で受信されたOFDM信号によって示される第2の搬送周波数および第3の搬送波周波数とは、互いに異なるように割り当てられることは、当初明細書の記載から明らかです。従って、平成26年12月18日付け手続補正書によりなされた手続補正は、第17条の2第3項の規定を満たしていると思料いたします。」

以下、平成27年4月17日付け上申書の上記主張点も含めて検討する。
確かに、【0012】段落には、「各ユーザ端末101?105は、周波数搬送波f1?f5が割り当てられ、SAP106は、各周波数搬送波f1?f5を受信し、送信することができる。」とあり、【0015】段落には、「SAP106は、周波数(周波数ポート)をユーザ端末101?105に割り当てる周波数割当装置120を有する。多周波受信器118は、割り当てられた周波数ポートを使用してユーザ端末101?105より送信されたデータを受信する。」とあり、【0006】段落には、「複数のポートが、単一の搬送周波数に各々割り当てられる。」とあるから、本願明細書には、「各ユーザ端末101?105には、異なる搬送周波数f1?f5が割り当てられ」ており、「搬送周波数f1?f5は、SAP106において異なるポートとして扱われ、各々のポートには、単一の搬送周波数が割り当てられ」ているという請求人の主張は首肯できる。
また、請求人が主張するように、【0014】段落には「2つの端末が同時に同じ搬送波を使用する確率を最小化する」ために、ユーザ端末101?105が、搬送波を変更する疑似ランダム手順を有することが記載されている。
これに対し、請求項2に係る無線ユーザ端末は、ダウンリンクで通信される第1のOFDM信号で使用される第1の搬送波周波数と、アップリンクで通信される第2のOFDM信号で使用される第2の搬送波周波数とは異なる搬送波周波数であり、また、アップリンクで通信される第2のOFDM信号で使用される第2の搬送波周波数と、ダウンリンクで通信される第3のOFDM信号で使用される第3の搬送波周波数とは異なる搬送波周波数であり、これは、ある一つのユーザ端末内で、ダウンリンクとアップリンクで使用する搬送波周波数が異なるというものであるが、本願明細書には、異なるユーザ端末間では、それぞれ異なる搬送波周波数を用いることは、記載されているものの、一つのユーザ端末内で、ダウンリンクとアップリンクで使用する搬送波周波数を異ならせることは記載されていない。
したがって、「第1の搬送波周波数と、第1の搬送波周波数で受信されたOFDM信号によって示される第2の搬送周波数および第3の搬送波周波数とは、互いに異なるように割り当てられることは、当初明細書の記載から明らか」だとする、請求人の主張は当を得ていない。
また、【0016】段落には、「ユーザ端末101?105は、周波数割当を受信し、端末に割り当てられた周波数で送信されたデータを復元する多周波受信器114を有する。周波数制御器108は、受信した割り当てられた周波数を用いて、ユーザ端末101?105の送信および受信周波数を制御する。多周波送信器110は、割り当てられた周波数でデータを送信する。」とあるから、本願明細書には、個々のユーザ端末に対して、周波数を割り当て、割り当てたれた周波数を用いて、ユーザ端末は送信および受信周波数を制御することは記載されているが、ダウンリンクとアップリンクとで異なる周波数を割り当てることは記載されていない。また、当初明細書等の他のいずれの箇所にも、ダウンリンクとアップリンクとで異なる周波数を割り当てることは記載されていない。
したがって、当初明細書等には、「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」という事項は記載されていないといわざるを得ない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものということはできないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3.特許請求の範囲

1.本件補正1
平成26年12月18日付け手続補正は、「第2.平成26年12月18日付け手続補正についての補正却下の決定」に述べたとおり却下されたため、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成26年7月4日付けの手続補正(以下「本件補正1」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1?9であり、「第2.平成26年12月18日付け手続補正についての補正却下の決定」の「1.本件補正2」で[補正前]として記載したとおりのものである。

2.平成26年9月18日付け拒絶理由
平成26年9月18日付け拒絶理由通知書の理由Aは、本件補正1により、請求項2に追加された「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」という事項は、新規事項であるというもので、「第2.平成26年12月18日付け手続補正についての補正却下の決定」の「2.本件補正2についての検討」で記載したとおりのものである。

3.当審の判断
本件補正1により、請求項2に追加された「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」という事項は、本件補正2による補正後の請求項2の「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」という事項と比べて、「第3の搬送波周波数」の前に「前記前記」とあるか「前記」とあるかの違いのみであり、技術的な事項に実質的な差はないから、「第2.平成26年12月18日付け手続補正についての補正却下の決定」の「2.本件補正2についての検討」で検討したのと同様の理由により、当初明細書等には、「前記第1の搬送波周波数、前記第2の搬送周波数および前記前記第3の搬送波周波数は互いに異なる」という事項は記載されていない。そして、当初明細書等の全ての記載を総合しても、上記の事項が導かれるとはいえない。

第4.むすび
以上のとおり、平成26年7月4日付けの手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものということはできず、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていないから、その余の点を検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-28 
出願番号 特願2012-4933(P2012-4933)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (H04W)
P 1 8・ 561- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 達朗伊東 和重  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 吉田 隆之
▲広▼島 明芳
発明の名称 無線スイッチングを実行する方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  

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