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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1311131
審判番号 不服2014-19883  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-02 
確定日 2016-02-10 
事件の表示 特願2012-505017「PCR反応をリアルタイムで監視するための光検出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日国際公開、WO2010/118541、平成24年10月11日国内公表、特表2012-524242〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成22年4月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:平成21年4月15日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日として特許出願されたものであって、平成26年2月4日付けで拒絶理由が通知され、この通知に対して同年5月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同月28日付けで拒絶査定がなされ、同拒絶査定の謄本は同年6月2日に請求人に送達された。
これに対し、同年10月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年10月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成26年10月2日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]

1 本件補正の内容について
本件補正は、平成26年5月9日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載(下記(1)参照。)を、同年10月2日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1に記載(下記(2)参照。)されたとおりに補正することをその一部に含むものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
平成26年5月9日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも2つの異なる試料チャンバ(101-104)中の複数の試料成分を検出する光多重システム(100)であって、
該光多重システムは第1の光学ユニット(106)と第2の光学ユニット(107)とを有しており、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットは空間的に相互に離隔されており、前記第1の光学ユニットは第1の光源(108)および第1の検出器(109)を含み、前記第2の光学ユニットは第2の光源(110)および第2の検出器(111)を含み、
前記光多重システムは、
前記第1の光源および前記第2の光源によってそれぞれ少なくとも1つの試料チャンバを照明し、かつ、前記第1の検出器および前記第2の検出器によってそれぞれ少なくとも1つの試料チャンバからの光を受信するように、少なくとも2つの試料チャンバを各光学ユニットに対応する位置で受け取り、
前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを前記少なくとも2つの試料チャンバに対して相対運動させる(113)ことにより、前記第1の光学ユニットが第2の試料チャンバに位置合わせされ、かつ、前記第2の光学ユニットが第1の試料チャンバに位置合わせされることを可能にする
ように構成されており、
前記相対運動が生じるたびに、各光学ユニットと各試料チャンバとの間の位置合わせによって、各光学ユニットから放出される光子の伝搬経路が各試料チャンバへの光学的なアクセスにマッチングされている、
ことを特徴とする光多重システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
平成26年10月2日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも2つの異なる試料チャンバ(101-104)中の複数の試料成分を検出する光多重システム(100)であって、
該光多重システムは、
第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための第1の光学ユニット(106)と、
第2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための第2の光学ユニット(107)と、
前記少なくとも2つの異なる試料チャンバの第1の試料チャンバと関連する第1のヒータであって、前記第1のヒータは、前記第1の試料チャンバにおいて第1の温度経過を形成する、第1のヒータと、
前記少なくとも2つの異なる試料チャンバの第2の試料チャンバと関連する第2のヒータであって、前記第2のヒータは、前記第2の試料チャンバにおいて第2の温度経過を形成する、第2のヒータと、
PCRプロトコルを受け取る制御ユニットと
を有しており、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットは空間的に相互に離隔されており、前記第1の光学ユニットは第1の光源(108)および第1の検出器(109)を含み、前記第2の光学ユニットは第2の光源(110)および第2の検出器(111)を含み、
前記光多重システムは、
(a)前記第1の光源および前記第2の光源によって、それぞれ、前記少なくとも2つの試料チャンバを同時に照明し、かつ、(b)前記第1の検出器および前記第2の検出器によってそれぞれ前記少なくとも2つの試料チャンバからの光を同時に受信するように、前記少なくとも2つの試料チャンバを、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットに対応する位置で受け取り、ここで、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットは、空間的に相互に離隔された前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットのそれぞれの試料チャンバにおいて、2つの異なる光波長を用いて、第1の光学測定および第2の光学測定を同時に行い、
前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを前記少なくとも2つの試料チャンバに対して相対運動させる(113)ことにより、前記第1の光学ユニットが第2の試料チャンバに位置合わせされ、かつ、前記第2の光学ユニットが第1の試料チャンバに位置合わせされることを可能にする
ように構成されており、
前記相対運動が生じるたびに、各光学ユニットと各試料チャンバとの間の位置合わせによって、各光学ユニットから放出される光子の伝搬経路が各試料チャンバへの光学的なアクセスにマッチングされており、
前記制御ユニットは、前記PCRプロトコルにしたがって、前記第1の試料チャンバおよび前記第2の試料チャンバにおいてリアルタイムPCR反応を生じさせるように、前記第1のヒータおよび前記第2のヒータを制御し、前記制御ユニットは、前記少なくとも2つの試料チャンバに対して、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを相対運動させることにより増幅された目標DNA分子を同時に定量化する、
ことを特徴とする光多重システム。」
(当審注:下線部は補正箇所に対応している。)

2 本件補正の適否について

(1)本件補正の目的について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、「PCRプロトコルを受け取る制御ユニット」であって、「前記PCRプロトコルにしたがって、前記第1の試料チャンバおよび前記第2の試料チャンバにおいてリアルタイムPCR反応を生じさせるように、前記第1のヒータおよび前記第2のヒータを制御し、前記制御ユニットは、前記少なくとも2つの試料チャンバに対して、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを相対運動させることにより増幅された目標DNA分子を同時に定量化する、」「制御器ユニット」を付加することを含むものである。
しかしながら、上記補正事項は、「光多重システム」の構成要素として新たに「制御器ユニット」を付加するものであるから、構成の外的付加に該当し、本件補正前の請求項1の構成の一部を限定的に減縮しているものということはできない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。

また、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

したがって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれにも該当しないものである。

(2)独立特許要件の検討
上記「(1)補正の目的について」において判断したように、上記補正はいわゆる目的外の補正を含むものであり、特許法の規定に違反するものであるが、仮に上記補正が、請求人が審判請求書において主張するように、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。) が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を検討する。

ア 引用文献について

(ア)引用文献に記載された事項
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である特表2008-537594号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
(下線は当審により引用発明の認定に直接用いた記載に付加した。)

(引-1)「【0007】
広くは、本発明は、リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、本明細書において多重PCRと呼ぶ、における複数目標化学種を検出するための技術に関する。特に、複数の光学モジュールを組み込んだ多重蛍光検出装置を説明する。個々の光学モジュールは、各蛍光染料を別個の波長帯で検出するため最適化できる。換言すれば、光学モジュールは、異なる波長での複数、並列反応を調べるために使用されてよい。例えば、反応は、回転ディスクの単一処理チャンバ(例えば、ウェル)内で生じてよい。更に、各光学モジュールは、装置の検出力を迅速に変更するため取り外し可能であってよい。」

(引-2)「【0011】
その他の実施形態において、個々の異なる波長で蛍光灯(当審注:「蛍光」の誤記であると思われる。)を発する複数の化学種を含む複数の処理チャンバを有するディスクを回転させ、複数の発光蛍光灯光線(当審注:「発光蛍光光線」の誤記であると思われる。)を生成するために、複数の光線を有するディスクを励起し、及び複数の異なる光学モジュールにより蛍光灯光線(当審注:「蛍光光線」の誤記であると思われる。)を捕獲する方法であって、モジュールは、異なる波長のために光学的に構成され、複数の異なるモジュールをハウジング内に収容する。」

(引-3)「【0013】
装置は、リアルタイムPCRを行い、同時に、発生する限りは全ての種類の生物学的反応を分析できる。装置は、各反応の温度を独立して又は選択されたグループとして調節でき、2つのチャンバの間にバルブを含むことにより反応の複数の段階を支援できる。このバルブは、バルブに一挙にエネルギーを発するレーザの使用により反応時に開けられてよい。」

(引-4)「【0016】
図1は、多重蛍光検出装置10の代表的な実施形態を示すブロック図である。示された実施例において、装置10は、4つの光学モジュール16を有し、4つの異なる染料の光学検出のため4つの「チャネル」を有する。特に、装置10は、4つの光学モジュール16を有し、任意の所定時間に回転ディスク13の異なる領域を励起し、染料と異なる波長で発せられた蛍光灯エネルギー(当審注:「蛍光エネルギー」の誤記であると思われる。)を収集する。その結果、モジュール16は、試料22内部で発生する複数、並列反応を調べるため使用されてよい。」

(引-5)「【0018】
単一試料22を説明したが、ディスク13は、試料を保持した複数のチャンバを包含してよい。光学モジュール16は、異なる波長で一部又は全ての異なるチャンバを問審できる。一つの実施形態において、ディスク13は、ディスク13の周辺に96チャンバの空間を含む。96個のチャンバディスクと4個の光学モジュール16の場合、装置10は、384個の異なる化学種からデータを取得できる。」

(引-6)「【0020】
図1に示したように、個々の光学モジュール16は、光ファイババンドル14の一つの脚部に連結されてよい。光ファイババンドル14は、光学モジュール16から感度を失うことなく蛍光信号を収集するための可撓性機構を含む。一般に、光ファイババンドルは、並んで横たえられ、末端部で一緒に固着され、可撓性の保護ジャケットに入れられた複数の光ファイバーを含む。或いは、光ファイババンドル14は、共通の末端部を有するガラス又はプラスチックの少数の別個の大直径多モードファイバーを備えてよい。例えば、4光学モジュール装置の場合、光ファイババンドル14は、個々の1mmのコア直径を有する4つの別個の多モードファイバーを含む。束の共通末端部は、一緒に束縛された4つのファイバーを収容する。この実施例において、検出器18の開口は、8mmであってよく、そしてそれは、4つのファイバーに連結するのに十二分である。
【0021】
この実施例では、光ファイババンドル14は、光学モジュール16を単一検出器18に連結する。光ファイバーは、光学モジュール16により収集された蛍光灯(当審注:「蛍光」の誤記であると思われる。)を搬送し、捕獲した光を有効に検出器18に伝送する。一つの実施形態において、検出器18は、光電子倍増管(当審注:「光電子増倍管」の誤記であると思われる。)である。他の実施形態において、検出器は、単一検出器内に各光ファイバー毎に一つの多重光電子倍増要素(当審注:「多重光電子増倍要素」の誤記であると思われる。)を含んでよい。その他の実施形態において、一以上の半導体検出器が使用されてよい。」

(引-7)「【0026】
図1の実施例において、試料22は、ディスク13のチャンバ内に収容され、制御部23の制御の状態にあって回転プラットフォームに取付けられる。スロットセンサトリガ27は、ディスク回転時データ取得をチャンバ位置と同期させるため、制御部23及びデータ取得装置21により利用される出力信号を出力する。スロットセンサトリガ27は、機械又は光学センサーであってよい。例えば、センサーは、光線をディスク13に伝送するレーザであってよく、制御部23は、ディスク13のスロットを通過した光を検出するセンサーを使用し、チャンバをディスクに位置決めする。他の実施形態において、ディスク13は、スロットに加えて又はスロットの代わりにタブ、突出部又は反射面を含んでよい。スロットセンサトリガ27は、任意の物理的構造体又はメカニズムを使用してよく、それが回転するときディスク13の放射状位置を位置決めする。光学モジュール16は、物理的に回転プラットフォーム25上に実装されてよい。その結果、光学モジュール16は、同時に異なるチャンバと重なり合わされる。」

(引-8)「【0027】
又、検出装置10は、ディスク13上の試料22の温度を調節するための加熱素子(不図示)を含む。加熱素子は、反射囲壁内に収容される円筒ハロゲン電球を備えてよい。反射チャンバを形成し、電球からディスク13の放射状部分に放射線の焦点を合わせる。一般に、ディスク13の加熱領域は、ディスク13がスピンするとき、環のように見えることになる。この実施形態において、反射囲壁の形状は、精密に焦点を合わせることができる楕円及び球幾何形状の組合せであってよい。他の実施形態において、反射囲壁は、異なる形状であってよく、又は電球は、より大きい領域を幅広く照射してよい。他の実施形態において、反射囲壁は、試料22を収容する単一処理チャンバ等のディスク13の単一領域に電球から放射線の焦点を合わせるように形作られてよい。
【0028】
一部の実施形態において、加熱素子は、空気を加熱し、熱空気を一以上の試料の上に押しあてて、温度を調節する。更に、試料は、直接ディスクにより加熱されてよい。この場合、加熱素子は、プラットフォーム25内に位置決めされ、熱的にディスク13に連結されてよい。加熱素子内部の電気抵抗は、制御部23により制御してディスクの選択された領域を加熱してよい。例えば、領域は、一以上のチャンバ、おそらくディスク全体を包含してよい。回転ディスク13が使用される代表的な加熱素子が、「回転多重蛍光検出装置用加熱素子(HEATING ELEMENT FOR A ROTATING MULTIPLEX)」という表題の米国特許出願第11/174,691号(2005年、7月5日出願)に記載されている。」

(引-9)「【0032】
データ取得装置21は、順を追って又は併行して各染料毎に装置10からデータを収集してよい。一つの実施形態において、データ取得装置21は、光学モジュール16からデータを順に収集し、個々の光学モジュールにスロットセンサトリガ27から測定されたトリガ遅延により空間的なオーバーラップを補正する。」

(引-10)「【0034】
リアルタイムのPCRの場合、蛍光を使用し、3つの一般的な技術の一つで増幅の量を測定する。第1の技術は、二本鎖DNAに結合すると同時にその蛍光が増加する、シブルグリーン(Sybr Green)(オレゴン州、ユーゲン(Eugene)にあるモレキュラープローブス(Molecular Probes))等の染料を使用する。第2の技術は、増幅目標配列に結合されるとその蛍光が変化する蛍光標識プローブを使用する(ハイブリダイゼーションプローブ、ヘアピンプローブ等)。この技術は、二本鎖DNA結合染料の使用と類似しているが、より具体的である、というのはプローブが、目標配列の特定の部分のみに結合することになるからである。第3の技術は、ポリメラーゼ酵素のエキソヌクレアーゼ活性が、PCRの伸長相時プローブからクエンチャー分子を開裂し、蛍光活性にする、加水分解プローブ((カリフォルニア州、フォスター市(Foster City)にあるアプライドバイオシステムズ(Applied BioSystems)のタクマン(Taqman)(商標))の使用である。」

(引-11)「【0091】
図8は、多重蛍光検出装置10の機能ブロック図である。特に、図8は、装置構成要素と構成要素を通過する光の一般的な経路間の電気的接続を示す。図8の実施例において、装置10は、少なくとも一つのプロセッサ122又はその他の制御ロジック、メモリ124、ディスクモータ126、光源30、励起フィルター34、レンズ38、検出フィルター40、捕集レンズ42、検出器18、スロットセンサトリガ27、通信インターフェース130、加熱素子134、レーザ136、及び電源132を含む。図3に示したように、レンズ38及び捕集レンズ42は、他の構成要素に電気的に接続される必要はない。更に、光源30、フィルター34及び40、レンズ38並びに捕集レンズ42は、一つの光学モジュール16を表す。図8には示してないが、装置10は、前記したような追加の光学モジュール16を包含してよい。その場合、各追加の光学モジュールは、図8に示したものとほぼ同じように配置された構成要素を含んでよい。
【0092】
光は、図8の幾つかの構成要素を通過する特定の経路に追従する。ひとたび光が光源30から発せられると、光は、励起フィルター34に入り、別の波長の光として出ていく。次に、光は、レンズ38を通過し、そこで検出装置10を出て処理チャンバ(不図示)内の試料22を励起する。試料22は、異なる波長で蛍光を発することにより応答する、このとき、この蛍光灯(当審注:「蛍光」の誤記であると思われる。)がレンズ38に入り、検出フィルター40によってフィルターをかけられる。フィルター40は、試料22から所望の蛍光以外の波長のバックグラウンド光を取り除く。残りの光は、捕集レンズ42を通って伝送され、検出器18で検出される前に光ファイババンドル14の脚部に入る。検出器18は、続いて受容した光信号を増幅する。
【0093】
プロセッサ122、メモリ124、及び通信インターフェース130は、制御部23の一部であってよい。プロセッサ122は、ディスクモータ126を制御し、必要に応じてディスク13を回転又はスピンし、蛍光情報を収集又は流体をディスク13を通って移動する。プロセッサ122は、スロットセンサトリガ27から受容したディスク場所情報を使用し、回転時ディスク13(当審注:「回転時、ディスク13」の誤記であると思われる。)上のチャンバの場所を識別し、ディスクから受容した蛍光データの取得を同期する。
【0094】
又、プロセッサ122は、光学モジュール16内の光源30をオン及びオフする時期を制御してよい。実施形態によっては、プロセッサ122は、励起フィルター34及び検出フィルター40を制御する。照光されている試料にもよるが、プロセッサ122は、フィルターを変更し、励起光の異なる波長が試料に到達し、又は蛍光の異なる波長が捕集レンズ42に到達するのを可能にする。実施形態によっては、一方又は両方のフィルターが、特定の光学モジュール16の光源30に対して最適化されてよいが、プロセッサ122によって変更できない。
【0095】
捕集レンズ42は、捕集レンズから検出器18までの光の光学経路を提供する光ファイババンドル14の一つの脚部に連結されてよい。プロセッサ122は、検出器18の操作を制御してよい。検出器18は、絶え間なく全ての光を検出しているが、実施形態によっては他の取得モードを利用してよい。プロセッサ122は、検出器18がデータ収集する時期を決定でき、検出器18の他の構成パラメーターをプログラムに基づいて設定してよい。一つの実施形態において、検出器18は、捕集レンズ42により提供された光から蛍光情報を捕獲する光電子倍増管である。応答して、検出器18は、受容光を表す出力信号128(例えば、アナログ出力信号)を生成する。図8には示していないが、検出器18は、装置10の他の光学モジュール16から同時に光を受容してよい。その場合、出力信号128は、種々の光学モジュール16から検出器18によって受容された光学入力の組合せを電気的に表わす。
【0096】
又、プロセッサ122は、装置10からのデータの流れを制御してよい。検出器18から採取された蛍光、加熱素子134及び関連センサーからの試料の温度、並びにディスク
回転情報等のデータは、分析のためメモリー124に格納されてよい。プロセッサ122は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)、又はその他のデジタルロジック回路のいずれか一つ又はそれより多くを備えてよい。更に、プロセッサ122は、メモリ124等のコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されるファームウェア、ソフトウェア又はその組合せのために操作環境を含む。
【0097】
メモリ124は、種々の情報を格納するための一以上のメモリを含んでよい。例えば、一つのメモリが、特定の構成パラメーター、実行可能な命令を包含し、一つのメモリが、収集されたデータを包含してよい。従って、プロセッサ122は、装置の操作及び較正を制御するためメモリ124内に保存されたデータを使用してよい。メモリ124としては、読み書き可能メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的に消去およびプログラム可能ROM(EEPROM)、フラシュメモリ等が挙げられてよい。
【0098】
プロセッサ122は、更に加熱素子134を制御してよい。メモリ124に包含された命令に基づき、加熱素子134を選択的に駆動し、所望の加熱プロファイルにより一以上のチャンバの温度を制御してよい。一般に、加熱素子は、ディスクがスピンするときディスク13の一つの放射状部分を加熱する。加熱素子134は、ハロゲン電球及びディスク13の特定領域に加熱エネルギーの焦点を合わせるための反射器を備えてよい。他の実施形態では、加熱素子134は、一以上のチャンバを順次加熱してよい。この実施形態では、チャンバが加熱されている間動かないディスク13が必要となる。全ての実施形態において、加熱素子134は、必要に応じて非常に迅速に電源をオン及びオフできる。」

(引-12)「【0101】
又、検出装置10との通信は、高周波(RF)通信又はローカルエリア・ネットワーク(LAN)接続により達成されてよい。更に、結合性は、直接接続、又はハブ若しくはルータ等のネットワークアクセスポイントによって達成されてよい、そしてそれは有線又は無線通信を支援してよい。例えば、検出装置10は、目的データ取得装置21による受信のため特定RF高周波のデータを送信してよい。データ取得装置21は、汎用のコンピュータ、ノートブック・コンピュータ、手持ち式の演算装置、又は特定用途向け装置であってよい。更に、複数データ取得装置は、データを同時に受容してよい。他の実施形態において、データ取得装置21には、一つの統合された検出及び取得システムとして検出装置10が包含されてよい。」

(引-13)「【図1】



(引-14)「【図2】



(引-15)「【図8】



(イ)引用文献に記載された発明について

a 上記摘記事項(引-13)を参酌すると、複数の「光学モジュール(16)」は空間的に相互に隔離されているものと認められる。

b 上記摘記事項(引-1)ないし(引-15)及び上記aに照らすと、引用文献には、
「リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)における複数目標化学種を検出するための多重蛍光検出装置(10)であって、
少なくとも一つのプロセッサ(122)又はその他の制御ロジック、メモリ(124)、回転ディスク(13)、光源(30)、励起フィルター(34)、レンズ(38)、検出フィルター(40)、捕集レンズ(42)、検出器(18)、スロットセンサトリガ(27)、及び加熱素子(134)を含み、光源(30)、フィルター(34)及び(40)、レンズ(38)並びに捕集レンズ(42)は、一つの光学モジュール(16)を表し、
回転ディスク(13)は、個々の異なる波長で蛍光を発する複数の化学種を含む試料を保持した複数のチャンバを包含し、
空間的に相互に隔離された4つの異なる染料の光学検出のための4つの光学モジュール(16)を有し、個々の光学モジュール(16)は、異なる波長で異なるチャンバを問審でき、任意の所定時間に回転ディスク(13)の異なる領域を励起し、染料と異なる波長で発せられた蛍光エネルギーを収集し、光ファイババンドル(14)の一つの脚部に連結し、
光ファイババンドル(14)の光ファイバーは、光学モジュール(16)により収集された蛍光を搬送し、捕獲した光を有効に検出器(18)に伝送し、
検出器(18)は、各光ファイバー毎に一つの多重光電子増倍要素を含んであり、
スロットセンサトリガ(27)は、ディスク回転時、データ取得をチャンバ位置と同期させ、データ取得装置(21)により利用される出力信号を出力し、制御部(23)が回転ディスク(13)の放射状位置を位置決めし、その結果、物理的に回転プラットフォーム上に実装された光学モジュール(16)が、同時に異なるチャンバと重なり合わされ、
加熱素子(134)は、ディスク(13)上の試料(22)の温度を調整するためのものであり、回転ディスク(13)の選択された領域を加熱し、
プロセッサ(122)は、
スロットセンサトリガ(27)から受容したディスク場所情報を使用し、回転ディスク(13)上のチャンバの場所を識別し、ディスクから受容した蛍光データの取得を同期させ、
メモリ(124)に包含された命令に基づき、加熱素子(134)を選択的に駆動して、所望の加熱プロファイルにより一以上のチャンバの温度を制御し、
試料(22)の並行問審を行うため、光学モジュール(16)が同時に起動され、
検出器(18)が、装置(10)の他の光学モジュール(16)から同時に光を受容し、
データ取得装置(21)が、併行して各染料毎に装置(10)からデータを収集し、
各反応の温度を独立して又は選択されたグループとして調整できる、
多重蛍光検出装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 対比・判断

(ア)本願補正発明と引用発明との対比
以下、本願補正発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「多重蛍光検出装置(10)」は、「個々の異なる波長で蛍光を発する複数の化学種を含む試料を保持した複数のチャンバを包含」した「回転ディスク(13)の異なる領域を励起し、染料と異なる波長で発せられた蛍光エネルギーを収集し、」「検出器(18)」で検出する装置である。
すると、引用発明の「多重蛍光検出装置(10)」は、本願補正発明の「少なくとも2つの異なる試料チャンバ(101-104)中の複数の試料成分を検出する光多重システム(100)」に相当する。

b 引用発明は、「リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)における複数目標化学種を検出するための多重蛍光検出装置(10)」である。
さらに、引用発明の「光学モジュール(16)」は、「回転ディスク(13)の異なる領域を励起し、染料と異なる波長で発せられた蛍光エネルギーを収集し」、「光ファイババンドル(14)の一つの脚部に連結」され、この「光ファイババンドル(14)の光ファイバーは、光学モジュール(16)により収集された蛍光を搬送し、捕獲した光を有効に検出器(18)に伝送」しており、「各光ファイバー毎に一つ」設けられる「多重光電子増倍要素」は、試料を励起して発した蛍光を検出している。
すると、引用発明の「光学モジュール(16)」、「光ファイババンドル(14)の光ファイバー」及び「各光ファイバー毎に一つ」設けられる「多重光電子増倍要素」と、本願補正発明の「第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための第1の光学ユニット(106)」及び「第2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための第2の光学ユニット(107)」とは、「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための光学検出手段」という点で共通する。

c 上記bに照らして、引用発明の「光学モジュール(16)」を構成する「光源(30)」と、本願補正発明の「第1光学ユニット」が含む「第1の光源(108)」及び「第2光学ユニット」が含む「第2の光源(110)」とは、「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための光学検出手段が含む光源」という点で共通する。
同様に、引用発明の「各光ファイバー毎に一つ」設けられる「多重光電子増倍要素」と、本願補正発明の「第1光学ユニット」が含む「第1の検出器(109)」及び「第2光学ユニット」が含む「第2の検出器(111)」とは、「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための光学検出手段が含む検出器」という点で共通する。

d 上記bに照らして、引用発明が「4つの異なる染料の光学検出のための4つの光学モジュール(16)」を有し、各「光学モジュール(16)」に連結される光ファイバー毎に「多重光電子増倍要素」を一つ設けることと、本願補正発明が「第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための第1の光学ユニット(106)」及び「第2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための第2の光学ユニット(107)」を有することとは、「異なるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うために複数の光学検出手段を有する」という点で共通する。

e 引用発明の「所望の加熱プロファイルにより一以上のチャンバの温度を制御」する「加熱素子(134)」と、本願補正発明の「少なくとも2つの異なる試料チャンバの第1の試料チャンバと関連する第1のヒータであって」、「前記第1の試料チャンバにおいて第1の温度経過を形成する、第1のヒータ」及び「少なくとも2つの異なる試料チャンバの第2の試料チャンバと関連する第2のヒータであって」、「前記第2の試料チャンバにおいて第2の温度経過を形成する、第2のヒータ」とは、「試料チャンバと関連するヒータであって、試料チャンバにおいて所定の温度経過を形成する、ヒータ」という点で共通する。

f 引用発明の「多重蛍光検出装置」は、「回転ディスク(13)」が「個々の異なる波長で蛍光を発する複数の化学種を含む試料を保持した複数のチャンバを包含」しており、「4つの異なる染料の光学検出のための4つの光学モジュール(16)を有し、個々の光学モジュール(16)は、異なる波長で異なるチャンバを問審でき」るものであるから、「回転ディスク(13)」の「複数のチャンバ」では、異なるポリメラーゼ連鎖反応が起こっているといえる。
さらに、引用発明は、「加熱素子(134)を選択的に駆動して所望の加熱プロファイルにより」「チャンバの温度を制御」し、「各反応の温度を独立して調整できる」のであるから、異なるポリメラーゼ連鎖反応が生じる複数のチャンバに対して、それぞれ「加熱素子(134)」を設け、各ポリメラーゼ連鎖反応に対応した温度プロファイルで「チャンバ」の温度を制御していることは明らかである。
すると、上記eに照らし、引用発明が、異なるポリメラーゼ連鎖反応が生じる複数の「チャンバ」に対応するように複数の「加熱素子(134)」を有することと、本願補正発明が、「前記少なくとも2つの異なる試料チャンバの第1の試料チャンバと関連する第1のヒータであって、前記第1のヒータは、前記第1の試料チャンバにおいて第1の温度経過を形成する、第1のヒータと、前記少なくとも2つの異なる試料チャンバの第2の試料チャンバと関連する第2のヒータであって、前記第2のヒータは、前記第2の試料チャンバにおいて第2の温度経過を形成する、第2のヒータ」を有することとは、「少なくとも2つの異なる試料チャンバそれぞれに設けられるヒータであって、各ヒータは、対応する試料チャンバにおいて所定の温度経過を形成する複数のヒータ」という点で共通する。

g 引用発明の「メモリ(124)に包含された命令に基づき、加熱素子(134)を選択的に駆動して、所望の加熱プロファイルにより一以上のチャンバの温度を制御」する「プロセッサ(122)」は、本願補正発明の「PCRプロトコルを受け取る制御ユニット」に相当する。

h 引用発明が、「試料(22)の並行問審を行うため、光学モジュール(16)が同時に起動され、検出器(18)が、装置(10)の他の光学モジュール(16)から同時に光を受容」することと、本願補正発明が「(a)前記第1の光源および前記第2の光源によって、それぞれ、前記少なくとも2つの試料チャンバを同時に照明し、かつ、(b)前記第1の検出器および前記第2の検出器によってそれぞれ前記少なくとも2つの試料チャンバからの光を同時に受信する」こととは、「(a)複数の光学検出手段の光源によって、それぞれ、複数の試料チャンバを同時に照明し、かつ、(b)複数の光学検出手段の検出器によってそれぞれ前記複数の試料チャンバからの光を同時に受信する」という点で共通する。

i 引用発明の「4つの光学モジュール(16)」が空間的に相互に隔離されていることと、本願補正発明の「前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニット」が「空間的に相互に離隔されて」いることは、「複数の光学検出手段が空間的に相互に隔離されている」という点で共通する。

j 上記iに照らして、引用発明が、「空間的に相互に隔離され」、「異なる波長で異なるチャンバを問審する」「4つの光学モジュール(16)」を有し、「制御部(23)が回転ディスク(13)の放射状位置を位置決めし、その結果、光学モジュール(16)が、同時に異なるチャンバと重なり合わされ」、「試料(22)の並行問審を行うため」、「光学モジュール(16)が同時に起動され」、「検出器(18)が、装置(10)の他の光学モジュール(16)から同時に光を受容し」、「データ取得装置(21)が、併行して各染料毎に装置(10)からデータを収集」することと、本願補正発明の「前記少なくとも2つの試料チャンバを、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットに対応する位置で受け取り、ここで、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットは、空間的に相互に離隔された前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットのそれぞれの試料チャンバにおいて、2つの異なる光波長を用いて、第1の光学測定および第2の光学測定を同時に行」うこととは、「少なくとも2つの試料チャンバを、各光学検出手段に対応する位置で受け取り、ここで、各光学検出手段は、空間的に相互に離隔された各光学検出手段のそれぞれの試料チャンバにおいて、異なる光波長を用いて、複数の光学測定を同時に行う」点で共通する。

k 引用発明が「制御部(23)が回転ディスク(13)の放射状位置を位置決めし、その結果、物理的に回転プラットフォーム上に実装された光学モジュール(16)が、同時に異なるチャンバと重なり合わされ」、「試料(22)の並行問審を行うため、光学モジュール(16)が同時に起動され」、「検出器(18)が、装置(10)の他の光学モジュール(16)から同時に光を受容」することと、本願補正発明が「前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを前記少なくとも2つの試料チャンバに対して相対運動させる(113)ことにより、前記第1の光学ユニットが第2の試料チャンバに位置合わせされ、かつ、前記第2の光学ユニットが第1の試料チャンバに位置合わせされることを可能にするように構成されており、前記相対運動が生じるたびに、各光学ユニットと各試料チャンバとの間の位置合わせによって、各光学ユニットから放出される光子の伝搬経路が各試料チャンバへの光学的なアクセスにマッチングされて」いることとは、「複数の光学検出手段を少なくとも2つの試料チャンバに対して相対運動させることにより、各光学検出手段が、それぞれ対応する試料チャンバに位置合わせされることを可能にするように構成されており、前記相対運動が生じるたびに、各光学検出手段と各試料チャンバとの間の位置合わせによって、各光学検出手段から放出される光子の伝搬経路が各試料チャンバへの光学的なアクセスにマッチングされて」いるという点で共通する。

l 引用発明は、「リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)における複数目標化学種を検出するための多重蛍光検出装置(10)」であるから、「蛍光データの取得」とは、「増幅された目標DNA分子のデータの取得」を意味していることは明らかである。そうすると、上記fに照らして、引用発明の「プロセッサ(122)」が「メモリ(124)に包含された命令に基づき、加熱素子(134)を選択的に駆動して、所望の加熱プロファイルにより一以上のチャンバの温度を制御し」、「回転ディスク(13)上のチャンバの場所を識別し」、「同時に異なるチャンバと重なり合わされ」た「光学モジュール(16)」による「蛍光データの取得を同期させ」ることと、本願補正発明の「前記制御ユニットは、前記PCRプロトコルにしたがって、前記第1の試料チャンバおよび前記第2の試料チャンバにおいてリアルタイムPCR反応を生じさせるように、前記第1のヒータおよび前記第2のヒータを制御し、前記制御ユニットは、前記少なくとも2つの試料チャンバに対して、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを相対運動させることにより増幅された目標DNA分子を同時に定量化する」こととは、「制御ユニットは、PCRプロトコルにしたがって、複数の試料チャンバにおいてリアルタイムPCR反応を生じさせるように、複数のヒータを制御し、前記制御ユニットは、少なくとも2つの試料チャンバに対して、複数の光学検出手段を相対運動させることにより増幅された目標DNA分子のデータを同時に取得する」という点で共通する。

m してみると、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、次の各相違点で相違している。

《一致点》
「少なくとも2つの異なる試料チャンバ中の複数の試料成分を検出する光多重システムであって、
該光多重システムは、
異なるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための複数の光学検出手段と、
少なくとも2つの異なる試料チャンバそれぞれに設けられるヒータであって、各ヒータは、対応する試料チャンバにおいて所定の温度経過を形成する複数のヒータと、
PCRプロトコルを受け取る制御ユニットと
を有しており、複数の光学検出手段は空間的に相互に隔離されており、前記複数の光学検出手段はそれぞれ光源および検出器を含み、
前記光多重システムは、
(a)複数の光学検出手段の光源によって、それぞれ、複数の試料チャンバを同時に照明し、かつ、(b)複数の光学検出手段の検出器によってそれぞれ前記複数の試料チャンバからの光を同時に受信するように、少なくとも2つの試料チャンバを、各光学検出手段に対応する位置で受け取り、ここで、各光学検出手段は、空間的に相互に離隔された各光学検出手段のそれぞれの試料チャンバにおいて、異なる光波長を用いて、複数の光学測定を同時に行い、
複数の光学検出手段を少なくとも2つの試料チャンバに対して相対運動させることにより、各光学検出手段が、それぞれ対応する試料チャンバに位置合わせされることを可能にするように構成されており、
前記相対運動が生じるたびに、各光学検出手段と各試料チャンバとの間の位置合わせによって、各光学検出手段から放出される光子の伝搬経路が各試料チャンバへの光学的なアクセスにマッチングされており、
前記制御ユニットは、PCRプロトコルにしたがって、複数の試料チャンバにおいてリアルタイムPCR反応を生じさせるように、複数のヒータを制御し、前記制御ユニットは、少なくとも2つの試料チャンバに対して、複数の光学検出手段を相対運動させることにより増幅された目標DNA分子のデータを同時に取得する、
光多重システム。」
である点。

《相違点1》
異なるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うための光学検出手段として、本願補正発明が「光学ユニット」を2つ備えているのに対して、「光学モジュール(16)」及び光学モジュール毎に設けられる「多重光電子増倍要素」を4組備える点。

《相違点2》
本願補正発明が、「第1の光学ユニット(106)」に「第1の検出器(109)」、「第2の光学ユニット(107)」に「第2の検出器(111)」を含むのに対して、引用発明の「光学モジュール(16)」は検出器を含んでおらず、光ファイバーで「検出器(18)」の「多重光電子増倍要素」と連結されている点。

《相違点3》
本願補正発明が、「増幅された目標DNA分子を定量化」しているのに対して、引用発明は、増幅された目標DNA分子の定量化を行っているか不明である点。

(イ)当審の判断

a 相違点についての検討

(a)相違点1について
「光多重システム」を構成するにあたり、光学検出手段を幾つ設けるかは、検出を行うポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の数によって決定される事項である。
したがって、引用発明において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出手段の数を2つとすることは、装置設計上の要請に基づき、当業者が適宜なし得ることであるといえる。

(b)相違点2について
「蛍光分析装置」の技術分野において、1つの光学モジュール内に、励起用光源と蛍光検出器を設けることは、例えば、本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において周知例として引用された刊行物である特表2007-504477号公報(以下、「周知例1」という。)や本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2008-544254号公報(以下、「周知例2」という。)にそれぞれ開示されているように周知の装置構成技術である。
したがって、引用発明において、「光ファイバー」と「多重光電子増倍要素」を連結する複雑な構造に代えて、励起用光源と蛍光検出器を1つの光学モジュールに設けて一体化する上記周知技術を採用し、「多重光電子増倍要素」を「光学モジュール(16)」に含ませることは、設計的事項であるというべきである。

(c)相違点3について
上記摘記事項(引-10)には、リアルタイムPCR測定において、目標DNA分子の増幅の量を測定することが記載されている。そして、「リアルタイムPCR測定装置」の技術分野において、異なる波長を用いて複数のDNA分子を同時に定量化することは、例えば、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2007-222160号公報(以下、「周知例3」という。特に、公報【0012】段参照。)及び本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2004-504036号公報(以下、「周知例4」という。特に、公報【0094】段参照。)にそれぞれ開示されているとおり周知技術である。
すると、引用文献の記載事項及び上記周知技術に基づき、異なる波長で同時に問審可能なリアルタイムPCR測定手段である引用発明を、複数のDNA分子を同時に定量化するために使用することは、当業者によって容易に想起されることである。

b 本願補正発明の奏する作用・効果についての検討
本願補正発明によってもたらされる作用・効果は、引用文献の記載事項並びに上記周知技術から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正却下の決定のまとめ
以上のとおり、上記2(1)に説示したように、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
また、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、上記2(2)で検討したように、本願補正発明は、同法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるということはできないから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成26年10月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成26年5月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、請求項1に係る発明は以下のとおりのものである(以下、同請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

「【請求項1】
少なくとも2つの異なる試料チャンバ(101-104)中の複数の試料成分を検出する光多重システム(100)であって、
該光多重システムは第1の光学ユニット(106)と第2の光学ユニット(107)とを有しており、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットは空間的に相互に離隔されており、前記第1の光学ユニットは第1の光源(108)および第1の検出器(109)を含み、前記第2の光学ユニットは第2の光源(110)および第2の検出器(111)を含み、
前記光多重システムは、
前記第1の光源および前記第2の光源によってそれぞれ少なくとも1つの試料チャンバを照明し、かつ、前記第1の検出器および前記第2の検出器によってそれぞれ少なくとも1つの試料チャンバからの光を受信するように、少なくとも2つの試料チャンバを各光学ユニットに対応する位置で受け取り、
前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを前記少なくとも2つの試料チャンバに対して相対運動させる(113)ことにより、前記第1の光学ユニットが第2の試料チャンバに位置合わせされ、かつ、前記第2の光学ユニットが第1の試料チャンバに位置合わせされることを可能にする
ように構成されており、
前記相対運動が生じるたびに、各光学ユニットと各試料チャンバとの間の位置合わせによって、各光学ユニットから放出される光子の伝搬経路が各試料チャンバへの光学的なアクセスにマッチングされている、
ことを特徴とする光多重システム。」

2 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項、周知例1及び周知例2に開示された周知技術に関しては、上記第2の2(2)ア及び上記第2の2(2)イ(イ)a(b)においてそれぞれ示したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比
本願発明は、上記第2の2(2)で検討した本願補正発明において、「第1の光学ユニット(106)」について「第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うため」という発明特定事項、「第2の光学ユニット(107)」について「第2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物の検出を行うため」という発明特定事項、「光多重システム」が「少なくとも2つの異なる試料チャンバの第1の試料チャンバと関連する第1のヒータであって、前記第1のヒータは、前記第1の試料チャンバにおいて第1の温度経過を形成する、第1のヒータ」と、「少なくとも2つの異なる試料チャンバの第2の試料チャンバと関連する第2のヒータであって、前記第2のヒータは、前記第2の試料チャンバにおいて第2の温度経過を形成する、第2のヒータ」と、「PCRプロトコルを受け取る制御ユニット」を有するという発明特定事項、第1の光源および第2の光源による試料チャンバの照明について、「少なくとも2つの試料チャンバを同時に照明」するという発明特定事項、第1の検出器および第2の検出器による試料チャンバからの光の受信について、「少なくとも2つの試料チャンバからの光を同時に受信する」という発明特定事項、少なくとも2つの試料チャンバの受け取りを、「前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットに対応する位置」で行うという発明特定事項、光多重システムが「前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットは、空間的に相互に離隔された前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットのそれぞれの試料チャンバにおいて、2つの異なる光波長を用いて、第1の光学測定および第2の光学測定を同時に行」うという発明特定事項、及び、「制御ユニット」が「前記PCRプロトコルにしたがって、前記第1の試料チャンバおよび前記第2の試料チャンバにおいてリアルタイムPCR反応を生じさせるように、前記第1のヒータおよび前記第2のヒータを制御し、前記制御ユニットは、前記少なくとも2つの試料チャンバに対して、前記第1の光学ユニットおよび前記第2の光学ユニットを相対運動させることにより増幅された目標DNA分子を同時に定量化する」という発明特定事項が無いものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、次の各相違点で相違している。

《一致点》
「少なくとも2つの異なる試料チャンバ中の複数の試料成分を検出する光多重システムであって、
該光多重システムは、
複数の光学検出手段を有しており、複数の光学検出手段は空間的に相互に隔離されており、前記複数の光学検出手段はそれぞれ光源および検出器を含み、
前記光多重システムは、
複数の光学検出手段の光源によって、それぞれ少なくとも1つの試料チャンバを照明し、かつ、複数の光学検出手段の検出器によってそれぞれ少なくとも1つの試料チャンバからの光を受信するように、少なくとも2つの試料チャンバを、各光学検出手段に対応する位置で受け取り、
複数の光学検出手段を少なくとも2つの試料チャンバに対して相対運動させることにより、各光学検出手段が、それぞれ対応する試料チャンバに位置合わせされることを可能にするように構成されており、
前記相対運動が生じるたびに、各光学検出手段と各試料チャンバとの間の位置合わせによって、各光学検出手段から放出される光子の伝搬経路が各試料チャンバへの光学的なアクセスにマッチングされている、
光多重システム。」
である点。

《相違点1》
光学検出手段として、本願補正発明が「光学ユニット」を2つ備えているのに対して、「光学モジュール(16)」及び光学モジュール毎に設けられる「多重光電子増倍要素」を4組備える点。

《相違点2》
本願補正発明が、「第1の光学ユニット(106)」に「第1の検出器(109)」、「第2の光学ユニット(107)」に「第2の検出器(111)」を含むのに対して、引用発明の「光学モジュール(16)」は検出器を含んでおらず、光ファイバーで「検出器(18)」の「多重光電子増倍要素」と連結されている点。

4 当審の判断

(1)相違点についての検討

ア 相違点1について
上記第2の2(2)イ(イ)a(a)において説示したように、引用発明において、光学検出手段の数を2つとすることは、装置の具体化に伴う設計的事項にすぎない。

イ 相違点2について
上記第2の2(2)イ(イ)a(b)において説示したように、「蛍光分析装置」の技術分野において、1つの光学モジュール内に、励起用光源と蛍光検出器を設けることは、周知例1や周知例2にそれぞれ開示されているように周知なのであるから、引用発明において、「光ファイバー」と「多重光電子増倍要素」を連結する複雑な構造に代えて、上記周知技術を採用し、「多重光電子増倍要素」を「光学モジュール(16)」に含む構成とすることは、設計変更の域を出ない。

(2)本願発明の奏する作用・効果についての検討
本願発明によってもたらされる作用・効果は、引用文献の記載事項並びに上記周知技術から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものではない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された上記引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2ないし22に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-31 
結審通知日 2015-09-07 
審決日 2015-09-30 
出願番号 特願2012-505017(P2012-505017)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦南 宏輔  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 平田 佳規
藤田 年彦
発明の名称 PCR反応をリアルタイムで監視するための光検出システム  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
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