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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1311166
審判番号 不服2014-21313  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-22 
確定日 2016-02-12 
事件の表示 特願2011-172796号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月21日出願公開、特開2013- 34642号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年8月8日の出願であって、平成25年10月31日付けで拒絶理由を通知し、平成26年1月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月25日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
平成26年10月22日付けの手続補正書による補正は、補正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものであり、新規事項を追加するものではない。
よって、この出願の請求項1、2に係る発明は、平成26年10月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりであるところ(平成26年1月10日付けの手続補正書の請求項2、3に相当)、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
遊技機の筐体に設けられた主制御回路基板と、前記筐体に設けられ前記主制御回路基板からの信号が入力されるとともに必要な情報を遊技場のホールコンピュータに送信する外部集中端子板と、遊技機の前面扉に設けられ前記主制御回路基板からの信号が入力される副制御回路基板と、前記前面扉に設けられ各種信号を前記主制御回路基板に送信するドア中継基板と、を備えた遊技機において、
前記主制御回路基板と前記副制御回路基板との間、前記主制御回路基板と前記外部集中端子板との間、前記副制御回路基板と前記ドア中継基板との間、前記主制御回路基板と前記ドア中継基板の間、及び前記外部集中端子板と前記ホールコンピュータとの間のいずれもを光ファイバーケーブルで接続し、
前記外部集中端子板は、前記主制御回路基板から出力された光信号を前記外部集中端子板に入力するための光信号入力端子と、前記光信号入力端子を介して入力された光信号を電気信号に変換する光・電気信号変換器と、前記光・電気信号変換器によって変換された電気信号を光信号に変換する電気・光信号変換器と、前記電気・光信号変換器によって変換された光信号を前記外部集中端子板から前記ホールコンピュータに出力するための光信号出力端子とを備えたことを特徴とする遊技機。」

3 刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-164号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されている遊技機によれば、制御回路に接続される電線の本数を減らすことができるものの、制御回路と中継基板との間の距離が長くなると、電線間の容量により通信の伝送速度を低く抑えなければならなくなったり、耐ノイズ性を向上させるために、通信に使用する信号線の電圧を上げたり、電流を多く流すなどの工夫が別途必要となる。
【0010】
また、遊技者が遊技中にパチスロやパチンコの遊技機に対して電波を照射したり放電させたりすることにより、遊技機内において誤動作を誘発させたり、予め細工を加えた遊技機において不正なプログラムを起動させるなどの、不正なゴト行為を行う場合がある。制御回路と中継基板との間を長い電線で接続すると、これらのゴト行為による電磁波を受信して、制御回路が誤動作しやすくなったり、不正なプログラムが起動しやすくなるなどの不具合を生ずる。
【0011】
また、ゴト行為に限らず、遊技者の衣類等に静電気が帯電しており、遊技者が遊技機に触れた瞬間に静電気が遊技機に放電した場合や、遊技者が携行する携帯電話機が発する電磁波により、制御回路及び中継基板との間を接続する電線に電流が流れ、制御回路において誤動作を誘発する可能性もある。したがって、通信によりコマンド及びステータスを伝達する際には、ノイズ等による影響を減少させるために、フレームエラーやタイムアウトエラー、パリティエラー、符号検査エラーなどを監視して対処する必要がある。
・・・
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、基板間の配線を減少させて筐体内における放熱効率を向上させ、電線の断線や接続不良等による故障の発生率を低下させ、遊技機のメンテナンスを容易にし、遊技機の製造コストを抑えるとともに、情報の転送レートを維持しつつ、外来ノイズによる制御回路の誤動作を減少させ、容易に実射試験に対応することが可能な遊技機を提供することを目的としている。」

(1-b)「【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、マスタ通信装置と各入力手段、各出力手段、又は各周辺装置との間に光通信を挿入して情報の伝達を行うことが可能となるので、基板間の配線を減少させて筐体内における放熱効率を向上させ、電線の断線や接続不良等による故障の発生率を低下させ、遊技機のメンテナンスを容易にし、遊技機の製造コストを抑えるとともに、情報の転送レートを維持しつつ、外来ノイズによる主制御回路又は副制御回路の誤動作を減少させることが可能となる。」

(1-c)「【0068】
キャビネット2内部の上方には、主制御回路55を構成する基板(以下、主基板)が設けられている。主制御回路55は、内部当籤役の決定、リール3の回転及び停止、入賞の有無の判定といった、パチスロ1における遊技の主な流れを制御する回路である。
・・・
【0071】
フロントドア9の裏側の上部には、副制御回路56を構成する基板(以下、副基板)が設けられている。副制御回路56は、ランプ24の点消灯、音声の発生、映像の表示等による演出の実行を制御する回路である。副制御回路56の具体的な構成は後述する。
・・・
【0073】
パチスロ1の構造についての説明は以上である。次に、図3を参照して、本実施の形態におけるパチスロ1の、フロントドアブロック(フロントドア9の裏側)及びキャビネットブロック(キャビネット2の内部)に備える回路の構成について説明する。本実施の形態におけるパチスロ1は、主制御回路55、副制御回路56及びこれらと電気的に接続する中継基板、周辺装置を備える。
・・・
【0077】
主制御回路55の主基板は、電力を供給する電源装置54、リール3の回転及び停止制御を行うリールモータ駆動回路39、メダルの払い出し制御を行うメダル払出装置43、ドア中継基板62等の各中継基板と通信により接続されている。また、主制御回路55の主基板は、遊技場のホストコンピュータ等と情報の送受信を行う外部集中端子板63と情報の送受信が可能なように接続されている。
【0078】
更に主制御回路55は、演出を目的として、ランプ24や液晶表示装置5、又は音声発生装置等の制御を実行する副制御回路56に対して、メダルの投入、スタートレバー6の操作、ストップボタン7の操作、内部当籤役、表示役、遊技状態等の各種の情報を送信する。そのために主制御回路55の主基板は、副制御回路56の副基板と通信により接続されている。」

(1-d)「【0088】
そこで本発明では、通信ケーブルとして電線を用いる代わりに光通信用のケーブルを用いることで、所定の通信速度を維持しつつ、照射された電磁波によるノイズの発生を防止して、主制御回路55及び副制御回路56における誤動作を防止している。
【0089】
図3に示すように、主制御回路55に接続されているドア中継基板62には、パチスロ1の操作部に配されている各種スイッチ等の配線が接続されている。ドア中継基板62に接続されているメダルセンサ50は、メダル投入口15に受け入れられたメダルが前述のセレクタ51内を通過したことを検出する。
【0090】
ドア中継基板62に接続されているベットスイッチ13Sは、ベットボタン13が遊技者により操作されたことを検出する。また、スタートスイッチ6Sは、スタートレバー6が遊技者により操作されたことを検出する。
【0091】
また、ストップスイッチ46は、3つのストップボタン7のそれぞれが遊技者により押されたことを検出する。これらのスイッチ等の入力情報は、ドア中継基板62から主制御回路55の主基板に対して伝達される。主制御回路55は、これらの入力情報に基づいて遊技を進行させ、リールモータ駆動回路39、メダル払出装置43等の周辺装置の動作を制御する。」

(1-e)「【0104】
ランプ基板58は、副制御回路56から受信した指令に基づいて、主に図1に示すパチスロ1の前面上部の液晶表示装置5の側方に配されている多数のランプ24の点消灯のパターンを切り替えることができる。副制御回路56は、ランプ24の点消灯に関する演出内容に応じたコマンドをランプ基板58に送信する。ランプ基板58が当該コマンドを受信すると、ランプ基板58では多数配置されているランプ24の点灯及び消灯を個々に制御して、点灯状態の移動、点灯状態の回転、ストロボ状の発光、その他の点消灯のパターンにてそれぞれのランプ24を発光させる。
【0105】
なお、上述のように副制御回路56とランプ基板58との間における情報の伝達に光通信を用いる他、副制御回路56と液晶表示装置5との間、副制御回路56とサウンド基板110との間、副制御回路56と下皿LED基板61との間、副制御回路56と主制御回路55との間、主制御回路55とドア中継基板62との間等の通信にも、光通信を用いることができる。
・・・
【0107】
図4は、主制御回路55(通信では、以下に説明するようにマスタ基板64側に該当する。)と3枚のスレーブ基板65との間の情報伝達経路を、光通信を用いてリング式に接続した実施例を示す図である。図4では、主制御回路55と各入力手段、各出力手段、及び各周辺装置との間における情報伝達経路について示してあるが、副制御回路56とランプ基板58、サウンド基板110及び下皿LED基板61との間における情報伝達経路についても同様なリング式の接続を行うことができる。
【0108】
主制御回路55におけるメインCPU31のバスには、各入力手段、各出力手段、及び各周辺装置との間で各種情報の入出力を行うマスタ通信装置67が接続されている。ここで、主制御回路55及びマスタ通信装置67が配置されている基板を、通信におけるマスタ基板64と呼ぶことにする。
【0109】
マスタ通信装置67が出力したコマンド及びステータスを含む光信号は、第1のスレーブ基板65に配されている第1のスレーブ通信装置68が入力する。図4に示す第1のスレーブ通信装置68は、例えばドア中継基板62(図2及び図3参照。)である。第1のスレーブ通信装置68は、必要に応じて受信したコマンド及びステータスに対応した処理を行うとともに、処理後のステータス及びコマンドを含む光信号を第2のスレーブ基板65に出力する。」

(1-f)「【0127】
従来は、主制御回路55と副制御回路56との間を、一方向の情報伝達のみを許容する通信手段を用いて通信接続していたので、フレームエラー、タイムアウトエラー、符号検査時のエラー等に対処することができず、当該通信の情報伝達経路で拾ったノイズにより誤動作する可能性が高かった。また、従来は、通信の情報伝達経路を電線で構成していたので、不正なゴト行為により照射された電波や放電を情報伝達経路の電線が受信して、主制御回路55又は副制御回路56の動作に影響を与えるという不具合を生じていた。しかし、本発明によれば、主制御回路55と副制御回路56との間の情報伝達経路に光通信を用いることで、不正なゴト行為により照射された電波や放電に対する影響を大幅に減少させることができるとともに、主制御回路55からスレーブ基板65に送信されるコマンド及びステータスに対してはフレームエラーやタイムアウトエラー、符号検査等のチェックを行うことができるので、より信頼性の高い通信を行うことが可能となる。」

(1-g)「【0138】
次に、図5を用いてマスタ通信装置67及びスレーブ通信装置68の構成について説明する。図5は、マスタ通信装置67及びスレーブ通信装置68のブロック図である。なお、図5では説明を容易にするために、1枚のマスタ基板64に対して1枚のスレーブ基板65のみを接続している状態について説明している。
【0139】
図5に示すように、マスタ基板64に配されているマスタ通信装置67には、上位のメインCPU31からコマンド及びステータスを含む発信情報を取得するとともに、スレーブ通信装置68又は治具基板66から受信したコマンド及びステータスを含む応答情報を出力するバスI/Fが配されている。
【0140】
また、バスI/Fには、コマンド及びステータスを含む発信情報を取得して、当該コマンド又はステータスの符号検査情報を付加するCRCチェッカ79(第1の符号検査情報付加手段)と、コマンド若しくはステータス並びに符号検査情報を含む発信情報を電気発信信号に変換して出力する発信信号変換手段72と、応答信号復元手段76とが接続されている。またマスタ通信装置67には、発信信号変換手段72が出力した電気発信信号を光発信信号に変換して出力する光信号出力手段PD1(第1の光信号出力手段)が配されている。
【0141】
他方、スレーブ基板65には、マスタ通信装置67側から出力された光発信信号を入力して電気発信信号に変換して出力する光信号入力手段PD3(第2の光信号入力手段)と、電気発信信号を発信情報に変換して出力する発信信号復元手段74と、発信情報に含まれる符号検査情報を用いてコマンド又はステータスの符号検査を行うCRCチェッカ79(第2の符号検査手段)と、発信情報に含まれるコマンド及びステータスに対応した処理(I/Oの設定、シリアルポートの設定等。)を行うとともに、コマンド及び処理後のステータス(当該スレーブ基板65のアドレス、フレームエラー有無、CRCエラーの有無、I/Oの状態、シリアルポートの状態等。)を含む応答情報を生成する応答情報生成手段75とを備えている。
・・・
【0147】
スレーブ通信装置68から出力された光応答信号は、マスタ通信装置67の光信号入力手段PD3(第1の光信号入力手段)が入力して、電気応答信号に変換して出力する。光信号入力手段PD3が出力した電気応答信号は、応答信号復元手段76が取得する。」

(1-h)段落【0068】、【0071】には、主制御回路55を構成する基板は主基板であり、副制御回路56を構成する基板は副基板であることが記載されている。

(1-i)段落【0073】の記載から、フロントドアブロックは、フロントドアの裏側に設けられているといえるとともに、図3にはフロントドアブロックにドア中継基板62、ベットスイッチ13S、ストップスイッチ46、スタートスイッチ6S(以下、これらを「スイッチ等」という。)が設けられている点が図示されているから、スイッチ等の入力情報を主基板に伝達するドア中継基板62はフロントドア9に設けられていることは明らかである。

(1-j)前記(1-h)の記載を考慮すると、段落【0105】の記載から、主基板と副基板との間、主基板とドア中継基板62との間は、光通信を用いているといえる。そして、図3には、フロントドアブロック及びキャビネットブロックに備える回路の構成について説明する図が示されており、これを見ると、主制御回路55は、それぞれ、副制御回路56及びドア中継基板62に接続されているから、副制御回路56とドア中継基板62は主制御回路55を介して接続されていることになる。そして、副制御回路56を構成する基板は、上記のとおり、副基板であるから、副基板とドア中継基板との間は光通信を用いているといえる。

(1-k)段落【0108】、【0109】、【0140】、【0141】の記載を参酌すると、図4、5には、ドア中継基板62におけるスレーブ通信装置68は、主基板におけるマスタ通信装置67側から出力された光発信信号を電気発信信号に変換して出力する光信号入力手段PD3と、電気発信信号を光発信信号に変換して出力する光信号出力手段PD1とを有する点が図示されている。

よって、以上の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「遊技機のキャビネット2内部の上方に設けられた主基板と、主基板と情報の送受信が可能なように接続され、遊技場のホストコンピュータ等と情報の送受信を行う外部集中端子基板63と、フロントドア9の裏側の上部に設けられ主基板から各種の情報が送信される副基板と、フロントドア9に設けられスイッチ等の入力情報を主基板に伝達するドア中継基板62と、を備えた遊技機において、
主基板と副基板との間、副基板とドア中継基板62との間、主基板とドア中継基板62との間等の通信に光通信を用い、
ドア中継基板62におけるスレーブ通信装置68は、主基板におけるマスタ通信装置67側から出力された光発信信号を電気発信信号に変換して出力する光信号入力手段PD3と、電気発信信号を光発信信号に変換して出力する光信号出力手段PD1とを有する遊技機。」

4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)刊行物1発明の「遊技機のキャビネット2内部の上方に設けられた主基板」は、前記(1-c)によれば主制御回路を構成するから、本願発明の「遊技機の筐体に設けられた主制御回路基板」に相当し、以下同様に、「フロントドア9の裏側の上部に設けられ主基板から各種の情報が送信される副基板」は、前記(1-c)によれば副制御回路を構成するから、「遊技機の前面扉に設けられ主制御回路基板からの信号が入力される副制御回路基板」に、「フロントドア9に設けられスイッチ等の入力情報を主基板に伝達するドア中継基板62」は「前面扉に設けられ各種信号を前記主制御回路基板に送信するドア中継基板」に、それぞれ、相当する。
また、刊行物1発明の「外部集中端子基板63」と本願発明の「外部集中端子板」は、いずれも、主制御回路基板(主基板)、及びホールコンピュータに接続されるものであるから、刊行物1発明の「主基板と情報の送受信が可能なように接続され、遊技場のホストコンピュータ等と情報の送受信を行う外部集中端子基板63」は、本願発明の「筐体に設けられ主制御回路基板からの信号が入力されるとともに必要な情報を遊技場のホールコンピュータに送信する外部集中端子板」に相当する。

(2)刊行物1発明において、基板との間に「光通信を用いる」ことは、光ファイバーで接続することを意味することは技術常識であるから、刊行物1発明の「主基板と副基板との間、副基板とドア中継基板62との間、主基板とドア中継基板62との間等の通信に光通信を用い」る点、と本願発明の「主制御回路基板と副制御回路基板との間、主制御回路基板と外部集中端子板との間、副制御回路基板とドア中継基板との間、主制御回路基板とドア中継基板の間、及び外部集中端子板とホールコンピュータとの間のいずれもを光ファイバーケーブルで接続」する点は、「主制御回路基板と副制御回路基板との間、副制御回路基板とドア中継基板との間、主制御回路基板とドア中継基板の間を光ファイバーケーブルで接続」する点で共通する。
なお、本願発明の「副制御回路基板とドア中継基板との間」を直接光ファイバーで接続することは、明細書又は図面には記載されていないが、主制御回路55を介して間接的に接続されていることは明らかであるので、光ファイバーで接続すると解釈した。前記(1-j)で述べたとおり、刊行物1発明も同様である

(3)刊行物1発明の「光発信信号」、「電気発信信号」は、それぞれ、本願発明の「光信号」、「電気信号」に相当するから、刊行物1発明の「光発信信号を電気発信信号に変換して出力する光信号入力手段PD3」は、本願発明の「光信号入力端子を介して入力された光信号を電気信号に変換する光・電気信号変換器」に相当する。
また、刊行物1発明の「ドア中継基板62」は制御信号を中継するものであるから、ドア中継基板62におけるスレーブ通信装置68において、光信号出力手段PD1で変換する「電気発信信号」は光信号入力手段PD3で光発信信号から変換された電気発信信号を含むことは自明な事項である。
よって、刊行物1発明の「ドア中継基板62におけるスレーブ通信装置68は、主基板におけるマスタ通信装置67側から出力された光発信信号を電気発信信号に変換して出力する光信号入力手段PD3と、電気発信信号を光発信信号に変換して出力する光信号出力手段PD1とを有する」点と、本願発明の「外部集中端子板は、主制御回路基板から出力された光信号を外部集中端子板に入力するための光信号入力端子と、光信号入力端子を介して入力された光信号を電気信号に変換する光・電気信号変換器と、光・電気信号変換器によって変換された電気信号を光信号に変換する電気・光信号変換器と、電気・光信号変換器によって変換された光信号を外部集中端子板からホールコンピュータに出力するための光信号出力端子とを備えた」点とは、主制御回路基板に接続された電子部品は、「光信号入力端子を介して入力された光信号を電気信号に変換する光・電気信号変換器と、光・電気信号変換器によって変換された電気信号を光信号に変換する電気・光信号変換器とを備えた」点で共通する。

(4)したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「遊技機の筐体に設けられた主制御回路基板と、前記筐体に設けられ前記主制御回路基板からの信号が入力されるとともに必要な情報を遊技場のホールコンピュータに送信する外部集中端子板と、遊技機の前面扉に設けられ前記主制御回路基板からの信号が入力される副制御回路基板と、前記前面扉に設けられ各種信号を前記主制御回路基板に送信するドア中継基板と、を備えた遊技機において、
前記主制御回路基板と前記副制御回路基板との間、前記副制御回路基板と前記ドア中継基板との間、前記主制御回路基板と前記ドア中継基板の間を光ファイバーケーブルで接続し、
前記主制御回路基板に接続された電子部品は、前記光信号入力端子を介して入力された光信号を電気信号に変換する光・電気信号変換器と、前記光・電気信号変換器によって変換された電気信号を光信号に変換する電気・光信号変換器とを備えた遊技機。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は「主制御回路基板と副制御回路基板との間、主制御回路基板と外部集中端子板との間、副制御回路基板とドア中継基板との間、主制御回路基板とドア中継基板の間、及び外部集中端子板とホールコンピュータとの間のいずれもを光ファイバーケーブルで接続」するのに対して、刊行物1発明は、主制御回路基板と副制御回路基板との間、副制御回路基板とドア中継基板との間、主制御回路基板とドア中継基板の間を光ファイバーケーブルで接続しているが、主制御回路基板と外部集中端子板との間、外部集中端子板とホールコンピュータとの間を光ファイバーケーブルで接続する点について明示されていない点。

[相違点2]
本願発明は、外部集中端子板に関して、「主制御回路基板から出力された光信号を外部集中端子板に入力するための光信号入力端子と、光信号入力端子を介して入力された光信号を電気信号に変換する光・電気信号変換器と、光・電気信号変換器によって変換された電気信号を光信号に変換する電気・光信号変換器と、電気・光信号変換器によって変換された光信号を外部集中端子板からホールコンピュータに出力するための光信号出力端子とを備え」るのに対し、刊行物1発明は、ドア中継基板には、光・電気信号変換器及び電気・光信号変換器を有するものの、外部集中端子板については、そのように特定されていない点。

5 当審の判断
(1)上記相違点1について検討する。
刊行物1の段落【0010】、【0127】には、課題として、従来は、通信の伝達経路を電線で構成していたので、不正なゴト行為等により発生する電波を情報伝達経路の電線が受信して制御回路に誤動作を発生させることが記載されている。
そして、刊行物1発明は、「主基板と情報の送受信が可能なように接続されるとともに遊技場のホストコンピュータ等と情報の送受信を行う外部集中端子基板63」を備えており、これらの情報の送受信は通常は電線を用いて行うものであるから、主基板と外部集中端子基板63との間、及び遊技場のホストコンピュータ等と外部集中端子基板63との間の情報伝達経路においても同様の課題を内在しているといえる。
また、刊行物1発明は「主基板と副基板との間、副基板とドア中継基板62との間、主基板とドア中継基板62との間等の通信に光通信を用い」たものであり、「等」と記載されていることからも「主基板と副基板との間、副基板とドア中継基板62との間、主基板とドア中継基板62との間」以外の基板間である主基板と外部集中端子板63との間等においても光ファイバーケーブルで接続することを示唆しているといえる。

一方、遊技機の技術分野において、外部集中端子板とホールコンピュータとの間を光ファイバーケーブルで接続する点は、本願出願前において周知の技術であるから(例えば、特開2009-285418号公報の請求項4、段落【0035】、特開2009-17956号公報の段落【0030】、【0031】参照。)。
よって、刊行物1発明に上記周知の技術を適用し、外部集中端子板とホールコンピュータとの間を光ファイバーで接続することは当業者が適宜なし得ることである。

そして、刊行物1発明に内在する上記課題及び示唆を踏まえ、上記周知の技術も考慮すれば、刊行物1発明において主制御回路基板と副制御回路基板との間、副制御回路基板とドア中継基板との間、主制御回路基板とドア中継基板の間に加え、主制御回路基板と外部集中端子板との間、外部集中端子板とホールコンピュータとの間のいずれもを光ファイバーで接続するように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(2)上記相違点2について検討する。
外部集中端子板とホールコンピュータとの間を光ファイバーケーブルで接続する点が、本願出願前において周知の技術であることは、上記(1)で検討したとおりであり、このことを前提に更に検討する。
刊行物1発明は、ドア中継基板62におけるスレーブ通信装置68が、主基板におけるマスタ通信装置67側から出力された光発信信号を電気発信信号に変換して出力する光信号入力手段PD3と、電気発信信号を光発信信号に変換して出力する光信号出力手段PD1とを有するものである。
ここで、光ファイバーケーブルで接続された電子部品において、電子部品を電気的に動作するためには、光信号と電気信号とを相互に変換する必要があることは明らかである。また、光通信で接続された制御基板等の電子部品に光信号入力端子及び光信号出力端子を設けることは自明な事項である。
よって、刊行物1発明の外部集中基板に上記周知の技術を適用する際に、外部集中基板に上記スレーブ通信装置68が有している光信号入力端子、光・電気信号変換器、電気・光信号変換器、光信号出力端子を備えるように構成し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(3)請求人は、審判請求書において、「本願請求項1の発明に係る遊技機は、その請求項1に記載のとおりのものであるが、特に、「前記外部集中端子板は、前記主制御回路基板から出力された光信号を前記外部集中端子板に入力するための光信号入力端子と、前記光信号入力端子を介して入力された光信号を電気信号に変換する光・電気信号変換器と、前記光・電気信号変換器によって変換された電気信号を光信号に変換する電気・光信号変換器と、前記電気・光信号変換器によって変換された光信号を前記外部集中端子板から前記ホールコンピュータに出力するための光信号出力端子とを備えた」ことを特徴とする。
本願請求項1の発明は、この特徴とする構成により、当初明細書記載の顕著な作用効果を奏するとともに([0017]?[0019]、[0070]?[0072])、電気信号処理を行う既存の外部集中端子板に光・電気信号変換器を付設するだけで、既存の外部集中端子板を有効活用することができるという顕著な作用効果を奏するものである。
すなわち、通常の遊技機に備え付けられる外部集中端子板は一般に遊技機内部とホールコンピュータとの間で電気信号の送受信処理を行うものであるが、本願請求項1の発明では、既存の外部集中端子板に単に光・電気信号変換器を追加するだけで、光通信を行うことが可能となり、これによりコストの削減、既存の機器の有効活用を図ることができる。」(審判請求書第5頁第27行?第6頁15行参照)と主張する。
確かに、その点においては審判請求人の指摘のとおりである。
しかしながら、上記5(2)で検討したとおり、刊行物1発明は、ドア中継基板62におけるスレーブ通信装置68が、主基板におけるマスタ通信装置67側から出力された光発信信号を電気発信信号に変換して出力する光信号入力手段PD3と、電気発信信号を光発信信号に変換して出力する光信号出力手段PD1とを有するものであり、刊行物1発明の外部集中基板に、外部集中基板に上記スレーブ通信装置68が有している光信号入力端子、光・電気信号変換器、電気・光信号変換器、光信号出力端子を備えるように構成することは当業者が容易になし得たことである。
そして、既存の外部集中端子板に光・電気信号変換器を付設するだけで、既存の外部集中端子板を有効活用することができるという効果については、既存の電子部品に光・電気信号変換器を付設するか、光・電気信号変換機能付きの電子部品とするかは、当業者が遊技機を製造する際に適宜選択できるものであるから、格別なものとはいえない。

よって、請求人の主張は採用できない。

(4)本願発明が奏する効果について
上記相違点1、2によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1発明、及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明において検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-07 
結審通知日 2015-12-08 
審決日 2015-12-21 
出願番号 特願2011-172796(P2011-172796)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 海  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 遠藤 孝徳
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿股 俊雄  
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