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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
管理番号 1311168
審判番号 不服2014-21972  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-29 
確定日 2016-02-12 
事件の表示 特願2012- 25607「積層インダクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月19日出願公開、特開2013-162100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成24年2月8日に出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成25年12月13日(起案日)
意見書 :平成26年 2月13日
手続補正 :平成26年 2月13日
拒絶理由通知 :平成26年 4月17日(起案日)
意見書 :平成26年 6月18日
手続補正 :平成26年 6月18日
拒絶査定 :平成26年 7月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成26年10月29日
手続補正 :平成26年10月29日
理由補充 :平成26年12月15日
拒絶理由通知(当審) :平成27年 8月27日(起案日)

なお、平成27年8月27日付け拒絶理由通知に対しては、指定した期間内に請求人から応答がなかった。

2.本願発明

本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成26年10月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
複数の絶縁体層からなる積層体と、前記積層体の内部にスパイラル状に形成されたコイル導体とを備え、前記コイル導体はそれぞれの絶縁体層上に形成された導体パターンと絶縁体層を貫通し複数の導体パターンを電気的に接続するビアホール導体とを有し、
一部の絶縁体層に形成された導体パターンは略矩形状の4つの頂点を含み一辺の一部を欠くC字状パターンであり、他の一部の絶縁体層に形成された導体パターンは前記略矩形状における前記C字状パターンにて欠けた一辺の一部に相当するI字状パターンであり、
前記C字状パターンが形成された絶縁体層と前記I字状パターンが形成された絶縁体層とが積層体の少なくとも一部において隣接していて、
前記積層体の外側に形成された外部電極をさらに有し、前記コイル導体は外部電極と電気的に接続される引出部及び引出部以外のコイル本体のみからなり、コイル本体における導体パターンは前記C字状パターンと前記I字状パターンとの組合せのみからなる、
積層インダクタ。」

3.引用例

当審の拒絶理由通知に引用した特開平11-273950号公報(平成11年10月8日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気絶縁層と導体パターンとが交互に積層され、各導体パターンの端部が順次接続されることで積層方向に重畳したコイルパターンが形成されて、それが電気絶縁体内に埋設された状態となっており、チップ外表面に内部コイルパターンの両端に接続された外部電極が設けられている構造の積層チップコイル部品に関するものである。更に詳しく述べると本発明は、ほぼ1ターン分に相当する主導体パターン、もしくは複数ターン分に相当するスパイラル状の主導体パターンを、それらとは異なる短い接続用導体パターンで接続することでコイルパターンを形成した構造の積層チップコイル部品に関するものである。」

(2)「【0020】
【実施例】図1は本発明に係る積層チップコイル部品の製造工程の説明図であり、図2はその内部構造図、図3はそのコイルパターン形成方法の詳細説明図である。本発明は、図2に示されているように、基本的には、直方体状の電気絶縁体22の内部にコイルパターン24が埋設された状態となっていて、その両側に外部電極26が形成され、コイルパターン24の両端部がそれぞれ外部電極22に電気的に接続されている積層チップコイル部品である。ここでコイルパターン24は、ほぼ1ターン分に相当するが始端と終端とが僅かなギャップをもって開いている同一形状の主導体パターンが、複数個、積層方向で電気絶縁層を介して同じ向きに同じ位置で配置され、1つの主導体パターンの終端部分と隣合う別の主導体パターンの始端部分とを短い接続用導体パターンで接続した構造である。」

(3)「【0021】このような積層チップコイル部品は、セラミックス層と導体パターンとを交互にスクリーン印刷することでコイルパターンを埋設した積層体を形成し、最下層と最上層の導体パターンは縁部を外面まで延設して外部電極に接続されるようにし、前記積層体を焼成して外面に外部電極を形成することで製造する。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(a)引用例には、「積層チップコイル部品」が記載されている(摘示事項(1))。

(b)「積層チップコイル部品」は、直方体状の電気絶縁体22の内部にコイルパターン24が埋設された状態となっていて、その両側に外部電極26が形成され、コイルパターン24の両端部がそれぞれ外部電極22に電気的に接続されている。ここでコイルパターン24は、ほぼ1ターン分に相当するが始端と終端とが僅かなギャップをもって開いている同一形状の主導体パターンが、複数個、積層方向で電気絶縁層を介して同じ向きに同じ位置で配置され、1つの主導体パターンの終端部分と隣合う別の主導体パターンの始端部分とを短い接続用導体パターンで接続した構造である(摘示事項(2))。

(c)コイルパターン24は、スパイラル状に形成されている(図2)。

(d)主導体パターンは略矩形状の4つの頂点を含み一辺の一部を欠くC字状パターンであり、接続用導体パターンは前記略矩形状における前記C字状パターンにて欠けた一辺の一部に相当するI字状パターンである(図1、3)。

(e)セラミックス層と導体パターンとを交互にスクリーン印刷することでコイルパターンを埋設した積層体を形成し、最下層と最上層の導体パターンは縁部を外面まで延設して外部電極に接続されている(摘示事項(3))。

(f)主導体パターンと接続用導体パターンとは、セラミックスパターンが印刷されていない部分で直接接続されている(図1、3)。

以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「積層チップコイル部品であって、
直方体状の電気絶縁体22の内部にスパイラル状に形成されたコイルパターン24が埋設された状態となっていて、その両側に外部電極26が形成され、コイルパターン24の両端部がそれぞれ外部電極22に電気的に接続されており、
コイルパターン24は、ほぼ1ターン分に相当するが始端と終端とが僅かなギャップをもって開いている同一形状の主導体パターンが、複数個、積層方向で電気絶縁層を介して同じ向きに同じ位置で配置され、1つの主導体パターンの終端部分と隣合う別の主導体パターンの始端部分とを短い接続用導体パターンで接続した構造であり、
主導体パターンは略矩形状の4つの頂点を含み一辺の一部を欠くC字状パターンであり、接続用導体パターンは前記略矩形状における前記C字状パターンにて欠けた一辺の一部に相当するI字状パターンであり、
セラミックス層と導体パターンとを交互にスクリーン印刷することでコイルパターンを埋設した積層体が形成され、最下層と最上層の導体パターンは縁部を外面まで延設して外部電極に接続されており、
主導体パターンと接続用導体パターンとは、セラミックスパターンが印刷されていない部分で直接接続されている積層チップコイル部品。」

4.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)積層インダクタ
引用発明の「積層チップコイル部品」は、「積層インダクタ」といえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「積層インダクタ」である点で一致する。

(2)積層体とコイル導体
引用発明は、直方体状の電気絶縁体22の内部にスパイラル状に形成されたコイルパターン24が埋設された状態となっていて、セラミックス層と導体パターンとを交互にスクリーン印刷することでコイルパターンを埋設した積層体が形成されている。
したがって、本願発明と引用発明とは、「複数の絶縁体層からなる積層体と、前記積層体の内部にスパイラル状に形成されたコイル導体とを備え」る点で一致する。

(3)導体パターンとビアホール導体
引用発明は、セラミックス層と導体パターンとを交互にスクリーン印刷することでコイルパターンを埋設した積層体が形成されている。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記コイル導体はそれぞれの絶縁体層上に形成された導体パターン」を有する点で一致する。
もっとも、本願発明は、「前記コイル導体は絶縁体層を貫通し複数の導体パターンを電気的に接続するビアホール導体」を有するのに対し、引用発明は、「主導体パターンと接続用導体パターンとは、セラミックスパターンが印刷されていない部分で直接接続されている」点で相違する。

(4)C字状パターンとI字状パターン
本願発明と引用発明とは、「一部の絶縁体層に形成された導体パターンは略矩形状の4つの頂点を含み一辺の一部を欠くC字状パターンであり、他の一部の絶縁体層に形成された導体パターンは前記略矩形状における前記C字状パターンにて欠けた一辺の一部に相当するI字状パターンであ」る点で一致する。

(5)絶縁体層の隣接
本願発明と引用発明とは、「前記C字状パターンが形成された絶縁体層と前記I字状パターンが形成された絶縁体層とが積層体の少なくとも一部において隣接してい」る点で一致する。

(6)外部電極
引用発明は、直方体状の電気絶縁体22の両側に外部電極26が形成されている。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記積層体の外側に形成された外部電極をさらに有」する点で一致する。

(7)コイル導体の詳細
引用発明の最下層と最上層の導体パターンは縁部を外面まで延設して外部電極に接続されている。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記コイル導体は外部電極と電気的に接続される引出部及び引出部以外のコイル本体のみからなり、コイル本体における導体パターンは前記C字状パターンと前記I字状パターンとの組合せのみからなる」点で一致する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>

「複数の絶縁体層からなる積層体と、前記積層体の内部にスパイラル状に形成されたコイル導体とを備え、前記コイル導体はそれぞれの絶縁体層上に形成された導体パターンを有し、
一部の絶縁体層に形成された導体パターンは略矩形状の4つの頂点を含み一辺の一部を欠くC字状パターンであり、他の一部の絶縁体層に形成された導体パターンは前記略矩形状における前記C字状パターンにて欠けた一辺の一部に相当するI字状パターンであり、
前記C字状パターンが形成された絶縁体層と前記I字状パターンが形成された絶縁体層とが積層体の少なくとも一部において隣接していて、
前記積層体の外側に形成された外部電極をさらに有し、前記コイル導体は外部電極と電気的に接続される引出部及び引出部以外のコイル本体のみからなり、コイル本体における導体パターンは前記C字状パターンと前記I字状パターンとの組合せのみからなる、
積層インダクタ。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

本願発明は、「前記コイル導体は絶縁体層を貫通し複数の導体パターンを電気的に接続するビアホール導体」を有するのに対し、引用発明は、「主導体パターンと接続用導体パターンとは、セラミックスパターンが印刷されていない部分で直接接続されている」点。

5.判断

そこで、上記相違点について検討する。

積層チップインダクタにおいて、それぞれの電気絶縁層に形成された導体パターンを、ビアホール導体で電気的に接続しコイルを形成することは周知である(例えば、特開平4-118910号公報の「スルーホール」、特開平10-256071号公報の「スルホール」、特開平11-162737号公報の「ビアホール」参照)。
よって、引用発明において、主導体パターンと接続用導体パターンとが、セラミックスパターンが印刷されていない部分で直接接続されている構成に代えて、主導体パターンと接続用導体パターンとをビアホールで電気的に接続して、コイルパターンを形成する構成を採用することは、当業者であれば容易に想到し得る。

6.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-01 
結審通知日 2015-12-02 
審決日 2015-12-15 
出願番号 特願2012-25607(P2012-25607)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 克五貫 昭一  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
発明の名称 積層インダクタ  
代理人 栗原 弘幸  

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