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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1311181
審判番号 不服2015-2308  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-06 
確定日 2016-02-12 
事件の表示 特願2013- 29324「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月11日出願公開、特開2013-137562〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,平成16年2月9日に出願した特願2004-31518号の一部を平成25年2月18日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
平成25年 3月 1日 上申書、手続補正書の提出
平成25年12月 6日付け 拒絶理由の通知(同年同月10日発送)
平成26年 2月 7日 意見書の提出
平成26年 7月 2日付け 拒絶理由の通知(同年同月8日発送)
平成26年10月31日付け 拒絶査定(同年11月11日送達)
平成27年 2月 6日 審判請求書の提出

第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、各請求項に記載された発明は、いずれも、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2001-350549号公報(公開日:平成13年12月21日、以下、「引用例」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、又は、引用例に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、というものを含むものである。

第3 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成25年3月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「画像を表示する表示部と、
前記表示部の前方を撮影可能に設けられた撮像部と、
前記撮像部にて撮像された撮像画像に基づいて、人が前記表示部を見ているか否かを判別する視認状態判別部と、
前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていると判別された場合には、前記表示部の輝度を第1の輝度に設定し、前記表示部に画像が表示されていない場合において、前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていないと判別されたときは、前記表示部の輝度を前記第1の輝度よりも低い第2の輝度に設定する出力制御部と、
を有することを特徴とする表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

第4 引用例の記載、引用発明
1 引用例の記載
引用例(特開2001-350549号公報)には、次の事項アないしオが図面とともに記載されている(なお、下線は当審が付した。)。

「【0001】
【発明に属する技術分野】本発明は、少なくとも1つの表示画面を利用した情報処理装置に関し、視線検出を用いた表示画面の省電力制御方法に関するものである。」

「【0036】図6に使用者の視線位置の検出フローを示す。通常の処理ではステップS601によってカメラから映像データを取得し、ステップS602にて使用者の顔が映像データにあることを確認し、ステップS603で再取得用のカウンタ値mをクリアし、ステップS604で使用者の瞳の中心が検出できることを確認し、ステップS605で再取得用のカウンタ値nをクリアして視線位置の算出に入る。しかし、ステップS602で使用者の顔が映像データで確認できなければ、ステップS611にて再取得用のカウンタ値mが規定回数を超えていないか確認し、超えていなければステップS601に戻る。そして、規定回数を超えていれば、ステップS612で使用者が表示画面を見ていないものと判定する。また、ステップS604で使用者が瞼を閉じる等して瞳の中心が検出できなければ、ステップS621にて再取得用のカウンタ値nが規定回数を超えていないか確認し、超えていなければステップS601に戻る。そして、規定回数を超えていれば、ステップS612で使用者が表示画面を見ていないものと判定する。このように映像取得11によって取得したデータの内容によっては、上記のように再取得を行う。」

「【0037】つぎに、上記の方法により取得した使用者の視線位置により、省電力制御を行う方法を説明する。」

「【0040】次に図8を使用して表示装置81、82のマルチディスプレイ表示で使用していたとして、表示装置81に対して省電力制御するための方法を説明する。使用者が表示装置81の省電力制御を行いたくない領域A3の範囲を、表示画面83の範囲を基準に上D32と下D34と左D31と右D33の値として、図9のように設定する。これにより使用者の視線位置が領域A3の中にある間は、表示装置81の省電力制御が行われることはない。また、使用者が表示装置81の電源あるいは液晶のバックライト電源を落としてもいい領域A4を、上記の領域A3を基準に上D42と下D44と左D41と右D43の値として、図10のように設定する。これにより使用者の視線位置が領域A3から外れて領域A4に収まっている間は、VGAコントローラ708を制御して表示装置81の輝度を落とす。そして、領域A4からも使用者の視線位置が外れた場合には、VGAコントローラ708を制御して表示装置81の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とす。
【0041】これらの設定を表示装置82に対しても同様におこない、表示装置81の領域A3、領域A4と同じように行ったとして、図11の領域A5、領域A6が設定される。これにより、使用者の視線位置が表示装置82の一点P9にあったとすると、表示装置81は視線が領域A3の範囲内、表示装置82は視線が領域A5の範囲内にあるため、どちらの表示装置も省電力制御は行われない。そして、使用者の視線が表示装置81の一点P10へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A3の範囲内のままなので省電力制御は行われないが、表示装置82は視線が領域A6の範囲内にはあるが領域A5からは外れてしまったため、表示装置82の表示輝度を落とす。そして、使用者の視線が表示装置81の一点P11へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A3の範囲内のままなので省電力制御は行われないままであるが、表示装置82は視線が領域A5の範囲内に戻るため、表示装置82の表示輝度をCMOS?RAM707等に格納されている使用者の設定値に戻す。そして、使用者の視線が表示装置81の左側の外一点P12へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A4の範囲内にはあるが領域A3からは外れてしまったために、表示装置81の表示輝度を落とし、表示装置82は視線が領域A6からも外れるため表示装置82の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とす。そして、使用者の視線が表示装置81の一点P13へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A3の範囲内に戻るため、表示装置81の表示輝度をCMOS?RAM707等に格納されている使用者の設定値に戻し、表示装置82は視線が領域A5からは外れてしまったままであるが領域A6の範囲内に戻るため、表示装置82の電源あるいは液晶のバックライト電源をオンする。」

「【0043】
【発明の効果】本発明を用いると、使用者が表示画面を見ているにもかかわらずタイマによって表示画面の電源がオフされてしまうということがなくなり、使用者に不快感を与えない。
【0044】また、タイマによる表示画面の電源オフを行わないよう設定した場合や頻繁に表示画面が省電力状態に移行するのを防止するためにタイマを長時間設定にした場合、使用者が見ていない間に表示装置やシステムの省電力制御を行うため、省電力効果が顕著に現れる。」

2 引用発明
以上の記載をまとめると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。(なお、参考のため括弧内に段落番号を付記した。)
「(【0036】)カメラから映像データを取得し、
使用者の顔が映像データにあることを確認し、
使用者の瞳の中心が検出できることを確認し、視線位置の算出に入り、
(【0037】)取得した使用者の視線位置により、省電力制御を行う、
(【0001】)少なくとも1つの表示画面を利用した情報処理装置であって、
(【0040】)使用者が表示装置81の省電力制御を行いたくない領域A3の範囲を設定し、使用者の視線位置が領域A3の中にある間は、表示装置81の省電力制御が行われることはなく、
使用者が表示装置81の電源あるいは液晶のバックライト電源を落としてもいい領域A4を設定し、使用者の視線位置が領域A3から外れて領域A4に収まっている間は、VGAコントローラ708を制御して表示装置81の輝度を落とし、
そして、領域A4からも使用者の視線位置が外れた場合には、VGAコントローラ708を制御して表示装置81の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とし、
(【0041】)これらの設定を表示装置82に対しても同様におこない、表示装置81の領域A3、領域A4と同じように行ったとして、図11の領域A5、領域A6が設定され、これにより、使用者の視線位置が表示装置82の一点P9にあったとすると、表示装置81は視線が領域A3の範囲内、表示装置82は視線が領域A5の範囲内にあるため、どちらの表示装置も省電力制御は行われず、そして、使用者の視線が表示装置81の一点P10へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A3の範囲内のままなので省電力制御は行われないが、表示装置82は視線が領域A6の範囲内にはあるが領域A5からは外れてしまったため、表示装置82の表示輝度を落とし、そして、使用者の視線が表示装置81の一点P11へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A3の範囲内のままなので省電力制御は行われないままであるが、表示装置82は視線が領域A5の範囲内に戻るため、表示装置82の表示輝度をCMOS?RAM707等に格納されている使用者の設定値に戻し、そして、使用者の視線が表示装置81の左側の外一点P12へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A4の範囲内にはあるが領域A3からは外れてしまったために、表示装置81の表示輝度を落とし、表示装置82は視線が領域A6からも外れるため表示装置82の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とし、そして、使用者の視線が表示装置81の一点P13へ移動したとき、表示装置81は視線が領域A3の範囲内に戻るため、表示装置81の表示輝度をCMOS?RAM707等に格納されている使用者の設定値に戻し、表示装置82は視線が領域A5からは外れてしまったままであるが領域A6の範囲内に戻るため、表示装置82の電源あるいは液晶のバックライト電源をオンし、
(【0043】)使用者が表示画面を見ているにもかかわらずタイマによって表示画面の電源がオフされてしまうということがなく、
(【0044】)使用者が見ていない間に表示装置やシステムの省電力制御を行う、
(【0001】)情報処理装置。」(以下、「引用発明」という。)

第5 対比
1 本願発明と引用発明とを、主たる構成要件ごとに順次対比する。

引用発明の「表示装置」は、画像を表示するものであるから、本願発明の「画像を表示する表示部」に相当する。
引用発明において、「カメラから映像データを取得し、使用者の顔が映像データにあることを確認し」ており、「表示画面を利用した情報処理装置」の使用者は、表示画面を見る位置、つまり表示装置の前方にいることは明らかであるから、使用者の顔の映像データを取得するカメラは、表示装置の前方を撮影可能に設けられているといえる。よって、引用発明の「カメラ」は、本願発明の「前記表示部の前方を撮影可能に設けられた撮像部」に相当する。

引用発明において、「カメラから映像データを取得し、使用者の顔が映像データにあることを確認し、使用者の瞳の中心が検出できることを確認し、視線位置の算出に入り、取得した使用者の視線位置により、省電力制御を行う」ことから、引用発明は、カメラから映像データを取得し使用者の視線位置の算出をするものである。
そして、引用発明は、「使用者が表示装置81の省電力制御を行いたくない領域A3の範囲を設定し、使用者の視線位置が領域A3の中にある間は、表示装置81の省電力制御が行われることはなく、使用者が表示装置81の電源あるいは液晶のバックライト電源を落としてもいい領域A4を設定し、使用者の視線位置が領域A3から外れて領域A4に収まっている間は、VGAコントローラ708を制御して表示装置81の輝度を落とし、そして、領域A4からも使用者の視線位置が外れた場合には、VGAコントローラ708を制御して表示装置81の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とし」ており、「使用者が表示画面を見ているにもかかわらずタイマによって表示画面の電源がオフされてしまうということがなく、使用者が見ていない間に表示装置やシステムの省電力制御を行う」ものであるから、引用発明は、使用者の視線位置が表示装置81の省電力制御を行いたくない領域A3の中にあるか(つまり、使用者が表示画面を見ている状態か)、使用者の視線位置が領域A3から外れているか(つまり、表示画面を見ていない状態か)を判別しているものである。
よって、カメラから映像データを取得し使用者の視線位置の算出をし、使用者の視線位置が表示画面を見ている状態か否か判別している引用発明は、本願発明の「前記撮像部にて撮像された撮像画像に基づいて、人が前記表示部を見ているか否かを判別する視認状態判別部」に相当するものを有しているといえる。

引用発明は、使用者の視線位置が、「領域A3の中」、「領域A3から外れて領域A4に収まっている間」、「領域A4からも」「外れた場合」によって、つまり表示画面を見ている状態、視線位置が表示装置の周辺にあって表示画面を見ていない状態、視線位置が表示装置周辺にもなく表示画面を見ていない状態に応じて、それぞれ「表示装置の省電力制御が行われない」、「表示装置の輝度を落とす」、「表示装置の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とす」という制御をVGAコントローラが行っているものである。
ここで、本願発明の、使用者の視線位置が「領域A3の中」、つまり表示画面を見ている状態において、「表示装置の省電力制御が行われない」制御をすることは、本願発明の「前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていると判別された場合には、前記表示部の輝度を第1の輝度に設定し」ていることに相当しているといえる。

「表示装置81」と同様の設定を行う「表示装置82」に着目すると、「使用者の視線が表示装置81の左側の外一点P12へ移動したとき、・・・表示装置82は視線が領域A6からも外れるため表示装置82の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とし、そして、使用者の視線が表示装置81の一点P13へ移動したとき、・・・表示装置82は視線が領域A5からは外れてしまったままであるが領域A6の範囲内に戻るため、表示装置82の電源あるいは液晶のバックライト電源をオンする」が、ここで、電源がオンの状態では、「表示装置82は視線が領域A6の範囲内にはあるが領域A5からは外れてしまったため、表示装置82の表示輝度を落と」す制御をすることになる。
してみると、引用発明は、視線が領域A6からも外れ、表示装置82の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とした状態から、視線が領域A5からは外れてしまったままであるが領域A6の範囲内に戻ると、表示装置82の表示輝度を落とした状態にしている、つまり、表示装置off状態から、視線位置が表示装置の周辺にあって表示画面を見ていない状態になると、表示輝度を落とした制御をするものである。
そして、「省電力制御が行われない」状態と「表示輝度を落とした」状態とでは、「表示輝度を落とした」状態の方が、輝度が低いことは明らかであるから、引用発明の、表示装置off状態から、視線位置が表示装置の周辺にあって表示画面を見ていない状態になると、表示輝度を落とした制御をすることは、本願発明の「前記表示部に画像が表示されていない場合において、前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていないと判別されたときは、前記表示部の輝度を前記第1の輝度よりも低い第2の輝度に設定」をしていることに相当しているといえる。
以上のことから、引用発明の、使用者の視線位置に応じて、それぞれ「表示装置の省電力制御が行われない」、「表示装置の輝度を落とす」、「表示装置の電源あるいは液晶のバックライト電源を落とす」という制御をする「VGAコントローラ」は、本願発明の「前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていると判別された場合には、前記表示部の輝度を第1の輝度に設定し、前記表示部に画像が表示されていない場合において、前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていないと判別されたときは、前記表示部の輝度を前記第1の輝度よりも低い第2の輝度に設定する出力制御部」に相当する。

第6 判断
以上の相当関係から、本願発明と引用発明とは、
「画像を表示する表示部と、
前記表示部の前方を撮影可能に設けられた撮像部と、
前記撮像部にて撮像された撮像画像に基づいて、人が前記表示部を見ているか否かを判別する視認状態判別部と、
前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていると判別された場合には、前記表示部の輝度を第1の輝度に設定し、前記表示部に画像が表示されていない場合において、前記視認状態判別部により人が前記表示部を見ていないと判別されたときは、前記表示部の輝度を前記第1の輝度よりも低い第2の輝度に設定する出力制御部と、
を有することを特徴とする表示装置。」
で一致する。
一方で、本願発明と引用発明とに相違点はない。
よって、本願発明は、本件出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明(引用発明)である。
又は、本願発明と引用発明とに相違点があるとしても、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

第7 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、又は、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-01 
結審通知日 2015-12-08 
審決日 2015-12-22 
出願番号 特願2013-29324(P2013-29324)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福永 健司中村 直行  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 関根 洋之
森 竜介
発明の名称 表示装置  

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