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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B21B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21B |
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管理番号 | 1311312 |
審判番号 | 不服2014-19266 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-09-26 |
確定日 | 2016-02-16 |
事件の表示 | 特願2011-503395「制御冷却のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日国際公開、WO2009/124830、平成23年 5月26日国内公表、特表2011-516274〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2009年3月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2008年4月7日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成24年2月13日付けで手続補正書が提出され、平成25年8月27日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月3日付けで意見書が提出され、平成26年5月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年9月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 2.平成26年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 <結論> 平成26年9月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 <理由> 1.補正の適否 (1)補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のとおりに補正する補正を含むものである。 (補正前) 「【請求項1】 冷却液により熱間圧延板状金属または熱間圧延帯状金属を制御冷却する装置であって、複数の上部冷却ヘッダ(6)と、前記冷却液を前記板または前記帯の上面上のある領域に拘束する少なくとも二つのゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)と、を備える前記装置を動作させる方法において、冷却中に前記ゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)からの流量が、付与される冷却流量に応じて、調節されることを特徴とする、方法。」 (補正後) 「【請求項1】 冷却液により熱間圧延板状金属または熱間圧延帯状金属を制御冷却する装置であって、複数の上部冷却ヘッダ(6)と、前記冷却液を板または帯の上面上の冷却すべき領域に拘束する少なくとも二つのゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)と、を備える前記装置を動作させる方法において、冷却中に前記ゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)からの流量が、付与される冷却流量に応じて、調節されることを特徴とする、方法。」(審決注:下線部が補正箇所である。) 上記補正は、補正前の請求項1に記載された、「ある領域」の「ある」を上記下線部記載のように「冷却すべき」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。 (2)引用刊行物の記載事項および引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本出願の優先日前に頒布された特開平11-197734号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱延鋼板の仕上圧延後の冷却時に上面冷却ゾーンの上流側または下流側に配置された水切りスプレーを噴射する方法において、あらかじめ鋼板幅、上面冷却ゾーンの水量および鋼板速度の各々を1つ以上の段階に分類し、あらかじめ水切りスプレーの噴射強度を複数の噴射強度区分に分類し、鋼板の冷却時には該段階の組み合わせに対応して該噴射強度区分を選択し、水切りスプレーの噴射強度を変化させることによって、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を防止することを特徴とする熱延鋼板の水切りスプレーの噴射方法。 【請求項2】 熱延鋼板の仕上圧延後の冷却時に上面冷却ゾーンの上流側または下流側に配置された水切りスプレーを噴射する方法において、サイドガイドの冷却ゾーンと非冷却ゾーンの境界位置に排水孔を設け、あらかじめ鋼板幅、上面冷却ゾーンの水量および鋼板速度の各々を1つ以上の段階に分類し、あらかじめ水切りスプレーの噴射位置を複数の噴射位置区分に分類し、鋼板の冷却時には該段階の組み合わせに対応して、該噴射位置区分を選択し、水切りスプレーの噴射位置を変化させ、該排水孔に鋼板上の滞留水を誘導排出することによって、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を防止することを特徴とする熱延鋼板の水切りスプレーの噴射方法。 ・・・ 」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は熱延鋼板の仕上圧延後の冷却時に側方から水切りスプレーを噴射して、鋼板上に滞留した冷却水が非冷却ゾーンに流出するのを防止する水切りスプレー噴射方法および噴射装置に関する。」 (なお、下線は、当審において付した。以下、同様。) (ウ)「【0002】 【従来の技術】熱延鋼板の仕上圧延後のホットラン冷却工程ではスプレーノズル、ジェットノズル、ラミナーフローノズルなどの冷却ノズルから鋼板上下面に冷却水を噴射して鋼板を所定の冷却パターンで冷却する。冷却のパターンは長手方向に区分された一群の冷却ノズルのオンオフによって制御される。この一群の冷却ノズルを冷却バンクといい、冷却ラインは上面および下面の複数の冷却バンクによって構成される。上面冷却バンクには、主にラミナーフローノズルと補助的にスプレーノズル、下面冷却バンクにはジェットノズルまたはスプレーノズルが用いられている。 【0003】ホットラン冷却工程では鋼板は上下両面から冷却されるが、下面冷却水は鋼板と衝突後速やかに落下し排出される。上面のラミナーフローノズルから鋼板上に噴射された冷却水は鋼板と衝突後、滞留水となって鋼板の幅方向に流れ、鋼板の端面から落下するとともに、鋼板の上流側と下流側方向にも流出し、所定の冷却開始位置より上流側、または下流側の非冷却ゾーンにも流出する。非冷却ゾーンに流出する滞留水のため鋼板は過冷却となって所定の冷却パターンから外れたり、鋼板の非冷却位置で冷却水が不均一に滞留して冷却むらを生じ、時には平坦不良を招いたりする。以下の説明では、上面冷却水を単に冷却水、上面冷却バンクの冷却対象領域および非冷却対象領域を、単に「冷却ゾーン」および「非冷却ゾーン」という。」 【0004】滞留水が非冷却ゾーンに流出する問題の対策として、例えば下記のような技術が開示されている。 特開昭58-3916号公報には冷却装置の入口または出口に水切りロールを配置し、該水切りロールと併置した水切り用のスプレーノズルによって滞留水が非冷却ゾーンに流入しないようにした技術が開示されている。 【0005】特開平9-141322号公報には、水切りスプレーに空気を混合してスプレー水の運動量を増す方法とともに、滞留水が冷却ラインのサイドガイドに跳ね返され鋼板上に戻らないよう、サイドガイドに排水用の傾斜スリット(排水孔)を設け、確実に滞留水を排水する方法が開示されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】前記特開昭58-3916号公報に開示された技術においては、水切りロールは鋼板の進行に従って昇降する構造を有するが、設備費が大きく、水切りロールが鋼板と接触するため鋼板上面に擦り疵をつける恐れがある。 【0007】前記特開平9-141322号公報に開示された技術においては、滞留水の量が多い場合と少ない場合とで滞留水の排出位置が前後するため、水切りスプレーの正面に配置された排水孔に確実に排出されるとは限らない。排水孔に確実に排水するためには、水切りスプレーの噴射強度(噴射圧×流量)をかなり大きくするか、排水孔を冷却ラインの全長に配置する必要がある。前者の場合エネルギー効率が悪く、水切りスプレー自体の冷却効果によって鋼板が過冷却になる恐れがある。後者のように排水孔を全長に設置すると設備費が大きくなるとともに鋼板の走行に支障がある。本発明の課題は、前記の滞留水が非冷却ゾーンに流出する問題を安価な設備で、確実に解決することにある。」 (エ)「【0020】発明者は以上の知見に基づいて以下(1) ?(6) の発明を完成した。 (1) 熱延鋼板の仕上圧延後の冷却時に上面冷却ゾーンの上流側または下流側に配置された水切りスプレーを噴射する方法において、あらかじめ鋼板幅、上面冷却ゾーンの水量および鋼板速度の各々を1つ以上の段階に分類し、あらかじめ水切りスプレーの噴射強度を複数の噴射強度区分に分類し、鋼板の冷却時には該段階の組み合わせに対応して該噴射強度区分を選択し、水切りスプレーの噴射強度を変化させることによって、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を防止することを特徴とする熱延鋼板の水切りスプレーの噴射方法。 【0021】(2) 熱延鋼板の仕上圧延後の冷却時に上面冷却ゾーンの上流側または下流側に配置された水切りスプレーを噴射する方法において、サイドガイドの冷却ゾーンと非冷却ゾーンの境界位置に排水孔を設け、あらかじめ鋼板幅、上面冷却ゾーンの水量および鋼板速度の各々を1つ以上の段階に分類し、あらかじめ水切りスプレーの噴射位置を複数の噴射位置区分に分類し、鋼板の冷却時には該段階の組み合わせに対応して、該噴射位置区分を選択し、水切りスプレーの噴射位置を変化させ、該排水孔に鋼板上の滞留水を誘導排出することによって、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を防止することを特徴とする熱延鋼板の水切りスプレーの噴射方法。 ・・・」 (オ)「【0056】 【実施例】(実施例1)水切りスプレーの噴射強度を水切りスプレーの本数と噴射圧を切り替えることによって変化させ、滞留水の下流側への流出阻止効果を調査した。 【0057】図7に冷却ラインおよび水切りノズルの配置図を示す。同図において鋼板1は左方より右方に走行する。冷却バンク2a?2cはそれぞれ2つのラミナーフローノズル3で構成されている。同図では冷却バンク2bがオン、2a、2cがオフの状態を示し、冷却バンク2a、2cの領域が非冷却ゾーン11、冷却バンク2bの領域が冷却ゾーン10である。冷却ゾーン10の上流側には水切りノズル4fa?4fcおよび下流側には4ra?4rcがそれぞれ配置されている。水切りノズル4fa?4fcおよび4ra?4rcは、ほぼ同一位置に水切りスプレーを噴射し、1?3本を選択して流量を変化させる。水切りスプレーの噴射圧は高圧・低圧の2段切り替えが可能であるが、切り替え系統は図示していない。 【0058】冷却ラインには両側にサイドガイド7が設置されているが、同図においては水切りノズル設置側のサイドガイドは図示していない。表8に試験に使用した鋼板の仕様、ホットラン冷却の冷却バンクの仕様および水切りノズルの仕様を示す。 【0059】 【表8】 」 (カ)「【図7】 」 (キ)「【0060】前記の条件の下、鋼板幅、冷却ゾーン水量および鋼板速度の組み合わせに対して水切りスプレーの使用本数と噴射圧を変化させた。目視観察により、滞留水が非冷却ゾーンに流出しない条件を求めた。・・・・・下流側では鋼板幅が大きいほど、冷却ゾーン水量が大きいほど、鋼板速度が大きいほど、水切りスプレーの噴射強度(本数とスプレー水圧)を大きくすることが必要であることがわかった。 【0062】上流側では鋼板幅が大きいほど、冷却ゾーン水量が大きいほど、水切りスプレーの噴射強度を大きくすることが必要であるが、鋼板速度が大きいほど、水切りスプレーの噴射強度は小さくしてもよいことがわかった。」 (ク)「【0076】 【発明の効果】本発明によれば、熱延鋼板の冷却工程において、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を効果的に防止できる。冷却ゾーンのサイドガイドの一部に排水孔を設ける場合には、滞留水を効果的に誘導し排出できる。」 (検討事項) 上記記載事項(ウ)によれば、冷却水により熱延鋼板を制御冷却する装置において、鋼板上面冷却水(以下、単に「冷却水」という。)が鋼板上面冷却バンクの冷却対象領域(以下、「冷却ゾーン」という。) において滞留水となり、鋼板の端面から落下するとともに、鋼板の上流側と下流側にも流出し、過冷却等の問題を生じることが記載されている。 そして、同(イ)、(ウ)の【0007】の記載によれば、前記滞留水が非冷却対象領域(以下、「非冷却ゾーン」という。)に流出する問題を安価な設備で、確実に解決することが課題であること、これに対し、同(ア)の【請求項1】、(エ)の【0020】並びに同(オ)-(ク)によれば、上部に3つの冷却バンク(2a?2c)を有する熱延鋼板の制御冷却装置において、2つの水切りノズル(「4fa?4fc」および「4ra?4rc」)を、熱延鋼板の上面上の冷却ゾーン10の上流側と下流側とにそれぞれ配置することにより、滞留水が冷却ゾーン10から、その上流側および下流側の非冷却ゾーン11にそれぞれ流出するのを防止すること、そして、該装置を作動させる方法において、冷却中に冷却ゾーンの水量が大きいほど、水切スプレーの本数を多くし、噴射流量を大きくすることが記載されている。 そうすると、引用刊行物には、 「冷却水により熱延鋼板を制御冷却する装置であって、3つの冷却バンク(2a?2c)と、前記冷却水が前記熱延鋼板の上面上の冷却ゾーン10から、その上流側、下流側の非冷却ゾーン11に流出するのを防止する2つの水切りノズル(「4fa?4fc」および「4ra?4rc」)と、を備える前記装置を動作させる方法において、冷却中に前記水切りノズルからの噴射流量を、冷却ゾーン水量が大きいほど、大きくなるようにする方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことが明らかである。 (ア)本願明細書(【0016】)の記載によれば、本願補正発明に係る「冷却液」は「水」を含んでいるから、引用発明の「冷却水」は、本願補正発明の「冷却液」に相当する。 そして、引用発明における「熱延鋼板」、「3つの冷却バンク(2a?2c)」、「2つの水切りノズル(「4fa?4fc」および「4ra?4rc」)」は、それぞれ、本願補正発明における「熱間圧延板状金属または熱間圧延帯状金属」、「複数の上部冷却ヘッダ(6)」、「少なくとも二つのゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)」に相当する。 また、引用発明における「冷却ゾーン10」とは、上記(検討事項)のとおり、「鋼板上面冷却バンクの冷却対象領域」のことであるから、本願補正発明の「冷却すべき領域」に相当する。 さらに、引用発明における「前記水切りノズルからの噴射流量を、冷却ゾーン水量が大きいほど、大きくなるようにする」ことは、本願補正発明における「前記ゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)からの流量が、付与される冷却流量に応じて、調節される」ことに相当する。 (イ)本願補正発明の「少なくとも二つのゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)」が「冷却液を板または帯の上面上の冷却すべき領域に拘束する」との点において、「拘束」とは、「行動の自由を制限し、または停止すること。」(「広辞苑」第5版)であり、また、本願明細書(【0007】)の「ゾーン分離噴霧の作動原理は、ゾーン分離噴霧の噴流が制御冷却装置9の方向に角度を合わせられているように、かつ冷却水が上流または下流に流動する代わりに板の縁部に移動させられるようにゾーン分離噴霧の噴流が十分な衝撃圧力(impact pressure)を有しており冷却水がそのゾーン分離噴霧を通過するのを防止するように、ゾーン分離噴霧デバイス10、11、12が配置されているということである。」との記載からも、上記「冷却液を板または帯の上面上の冷却すべき領域に拘束する」とは、「冷却液を冷却すべき領域からその上流および下流の非冷却領域に流出しないようにする」ことであると解される。 そうすると、引用発明の「冷却水が前記熱延鋼板の上面上の冷却ゾーン10から、その上流側、下流側の非冷却ゾーン11に流出するのを防止する」は、本願補正発明の「冷却液を板または帯の上面上の冷却すべき領域に拘束する」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明は、実質的に相違せず、また、仮に、相違点があるとしても、その点は微差であり、当業者が適宜なし得る事項である。 よって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明であるか、あるいは引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、審判請求人は、審判請求書(平成26年11月5日付け手続補正書の「4.本願発明と引用発明との対比」における第4段落)において、 「引用文献1請求項1に記載の「非冷却ゾーンへの滞留水の流出を防止すること」に関して、引用文献1〔0021〕段落には、 「熱延鋼板の仕上圧延後の冷却時に上面冷却ゾーンの上流側または下流側に配置された水切りスプレーを噴射する方法において、サイドガイドの冷却ゾーンと非冷却ゾーンの境界位置に排水孔を設け、あらかじめ鋼板幅、上面冷却ゾーンの水量および鋼板速度の各々を1つ以上の段階に分類し、あらかじめ水切りスプレーの噴射位置を複数の噴射位置区分に分類し、鋼板の冷却時には該段階の組み合わせに対応して、該噴射位置区分を選択し、水切りスプレーの噴射位置を変化させ、該排水孔に鋼板上の滞留水を誘導排出することによって、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を防止することを特徴とする熱延鋼板の水切りスプレーの噴射方法。」 と記載されている。 この記載は、引用文献1の請求項1に記載の「水切りスプレーによって、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を防止すること」が、サイドガイドの冷却ゾーンと非冷却ゾーンの境界位置に設けられた排水孔に冷却水を誘導排出することを示すものである。 引用文献1の請求項1が意味する、排水孔に冷却水を誘導排出することは、審査官殿ご指摘のような冷却液の拘束を開示・示唆するものではない。引用文献1の請求項1は、引用文献1記載の発明では、排水孔に冷却水を積極的に誘導排出していることを示すものである。」と主張する。 しかしながら、上記引用文献1(「引用刊行物」)の〔0021〕の記載は、「(2)・・・」として記載されており、これは、請求項2あるいは実施例2(図8)に対応する排水孔を設けた場合についての記述であって、請求項1および[0020]の「(1)・・・」、さらに、これに対応する実施例1(図7)に、排水孔を設けないものが記載されることは上記のとおり明らかであるし、〔0076〕にも、「【発明の効果】本発明によれば、熱延鋼板の冷却工程において、非冷却ゾーンへの滞留水の流出を効果的に防止できる。冷却ゾーンのサイドガイドの一部に排水孔を設ける場合には、滞留水を効果的に誘導し排出できる。」と記載されている。 よって、上記主張は採用できない。 [4]むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成24年2月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1は以下のとおりである。 「【請求項1】 冷却液により熱間圧延板状金属または熱間圧延帯状金属を制御冷却する装置であって、複数の上部冷却ヘッダ(6)と、前記冷却液を前記板または前記帯の上面上のある領域に拘束する少なくとも二つのゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)と、を備える前記装置を動作させる方法において、冷却中に前記ゾーン分離噴霧デバイス(10、11、12)からの流量が、付与される冷却流量に応じて、調節されることを特徴とする、方法。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における、「冷却すべき領域」との限定を外して、「ある領域」としたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらにその発明特定事項の一部を限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、引用刊行物に記載された発明とされるのであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物に記載された発明であるか、あるいは引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは同条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-09-03 |
結審通知日 | 2015-09-07 |
審決日 | 2015-10-07 |
出願番号 | 特願2011-503395(P2011-503395) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B21B)
P 1 8・ 121- Z (B21B) P 1 8・ 113- Z (B21B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂本 薫昭 |
特許庁審判長 |
木村 孔一 |
特許庁審判官 |
宮澤 尚之 鈴木 正紀 |
発明の名称 | 制御冷却のための方法および装置 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 実広 信哉 |