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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C22C
管理番号 1311386
審判番号 不服2014-10830  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-09 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 特願2009-238412「高周波励磁用無方向性電磁鋼板」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日出願公開、特開2011- 84778〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月15日の出願であって、平成26年3月5日付けで拒絶査定がなされ、同年6月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成27年5月22日付けで当審による拒絶理由通知がなされ、同年6月8日付けで意見書が提出され、同年9月18日付けで当審による審尋がなされ、同年11月19日付けで回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明は、平成26年6月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1、2に係る発明は下記のとおりである(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」ということがある。)。
「【請求項1】
質量%で、
C:0.002%以下、
Si:0.1%以上、4.0%以下、
Al:0.1%以上、4.0%以下、
残部鉄および不可避的不純物元素からなり、式(I)で定義される鉄損劣化率Aが50%以下であり、平均結晶粒径が40μm以下であることを特徴とする自動車駆動用モーターの鉄心に使用される高周波励磁用無方向性電磁鋼板。
A=[W_(1)-W_(0)]/W_(0) ・・・(I)
ここで、W_(1)は応力30MPa?50MPa負荷時の800?3000Hzの高周波域において1.0Tの磁束密度まで励磁したときの鉄損値であり、W_(0)は応力負荷の無いときに1.0Tの磁束密度まで励磁したときの800?3000Hzの高周波域における鉄損値を表す。
【請求項2】
質量%で、
さらにCr:3.0%以下および/またはMn:1.0%以下を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車駆動用モーターの鉄心に使用される高周波励磁用無方向性電磁鋼板。」

第3 引用刊行物の記載事項
当審による平成27年5月22日付け拒絶理由通知において引用された特開2009-185357号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】
Siを0.1?4mass%含有する板厚が0.10?1.0mmの無方向性電磁鋼板であって、鋼板表面に5MPa以上の圧縮応力が付与され、さらに磁気特性が下記の条件を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。

B1≧0.4T
B10≧1.45T
B2/B10≦0.78
ここで、B1、B2およびB10はそれぞれ、磁化力100A/m、200A/mおよび1000A/mにおける磁束密度
・・・
【請求項3】
平均の結晶粒径が20μm以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
・・・」

(1b)「【0001】
本発明は、モータ鉄心の素材として供される無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
【技術分野】
【0002】
従来、モータ鉄心用の無方向性電磁鋼板における主要な開発課題は、主として透磁率の向上と鉄損の低減であった。鉄心素材の透磁率が向上することにより、モータのトルクが向上する。これは、鉄心の磁束密度の増加によって、電機子と磁極の間の吸引力および反発力が増加するからである。このため、無方向性電磁鋼板の開発においては、B50と称される磁化力5000A/mでの磁束密度を高めることを目標に開発が行われてきた。
・・・
【0004】
一方、永久磁石モータの磁極となる永久磁石は、近年、飛躍的な進歩を遂げており、Sm-Co系磁石やNd-Fe-B系の希土類のような、非常に強力な永久磁石が開発されており、高効率モータを中心に使用頻度が高まっている。・・・
【0005】
ところで、近年になって普及の著しいハイブリッド電気自動車の駆動用モータやEPSモータなどは、駆動軸に直結されて使用される場合が多い。このような場合、外力によりモータが「回される」状態となり、前述の永久磁石の磁気力によって鉄心が交番に磁化されて損失が発生する。ハイブリッド電気自動車の駆動用モータにおいて、このような外力による交番の磁束は、モータを発電機として利用することによって制動時のエネルギーとして回生利用されるが、発電時の過度な電力発生は種々の問題を起こすため、永久磁石による鉄心磁束密度の過度な増加は好ましくない。
【0006】
また、EPSモータでは、ハンドルを回して戻す際、永久磁石による磁束変化に起因した損失によって、操舵時の引きずり抵抗(引きずり損失)が増加する。このためEPSモータの鉄心材料としては、ヒステリシス損の低い材料が有利となるが、操舵時のトルク増加を狙って永久磁石をより強いものとするに従い、固定子鉄心の磁束密度が増加し、引きずり抵抗の増加を招く。
【0007】
さらに、上記のような自動車用モータのならず、永久磁石を用いたモータの一般でも、過剰な磁束が永久磁石に起因して生成した場合、無負荷時の損失や軽負荷時の損失がかえって劣化する場合がある。」(なお、下線は当審において付した;以下、同様。)

(1c)「【0013】
本発明は、上記した問題に鑑み、近年の永久磁石モータや小型変圧器における一般的な動作磁束密度である1.4?1.6T付近での透磁率の低下を最小限としつつ、これより低い磁束密度域では透磁率を適度に低下させて磁化曲線の非線形性を低減することによって、永久磁石モータの損失や小型鉄心での波形の歪みの増加を防止可能な、電磁鋼板について提案することを目的とするものである。」

(1d)「【0028】
以下、本発明の無方向性電磁鋼板について、構成要件毎に詳しく説明する。
まず、成分の限定理由から順に説明する。
[Si:0.1?4mass%]
Siは、電気抵抗率を増加させることにより渦電流損を低減し、鉄損の低減に寄与する成分元素である。Si含有量が0.1mass%未満では上記の効果が得られず、一方4mass%を超えて含有させると、圧延性などの加工性を著しく劣化させるため、上記範囲に限定した。」

(1e)「【0047】
最後に、本発明の電磁鋼板の成分としてはSiの他はとくに限定しないが、必要に応じてAl(≦3mass%)、Mn(≦3mass%)、Sb(≦0.5mass%)、Sn(≦1mass%)、P(≦0.5mass%)、Cr(≦10mass%)を添加することが可能である。」

(1f)「【実施例2】
【0055】
Si:3.0mass%、Mn:0.3mass%およびAl:0.3mass%を含有し、残部鉄および不可避的不純物になる珪素鋼スラブを製造し、熱間圧延により2.0mmの熱延板とした後、1000℃×30秒の熱延板焼鈍の後、冷間圧延により板厚0.35mmとし、続いて表3に記載の温度での仕上げ焼鈍を行ってから、鋼板表面に重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂およびエチレングリコールを混合したコーティング液を塗布し、300℃で焼き付けて製品とした。
【0056】
以上の製造工程の仕上げ焼鈍の最終部分において、図4に示した形態にて連続焼鈍中に鋼板をロールに巻き付ける処理を行った。その際、ロール3および4の温度および直径は同じにし、その値を表3に示すように種々に変更した。
【0057】
かくして得られた鋼板から圧延方向に半量、圧延直角方向に半量のエプスタイン試験片を切り出しJISで定める方法により磁気測定を行った。なお、得られた鋼板の曲がり量は500mmあたり0.5mm以下で無視することができる程度であった。従って、板厚方向の応力の分布がほぼ対称であると見做すことができる。
この鋼板について、板の片面から20μmの厚みだけ地鉄を化学研磨により除去したときの曲がり量から、この部分の圧縮応力を求めた。さらに、板厚中心まで地鉄を除去し、試料長500mm当たりの曲がり量を測定した。これらの測定結果を表3に示す。」

(1g)「【0060】
【表3】



第4 引用刊行物記載の発明
引用刊行物には、上記記載事項(1a)-(1c)によれば、ハイブリッド電気自動車駆動用モータの鉄心用の無方向性電磁鋼板が記載されている。
そして、同(1f)、(1g)によれば、該無方向性電磁鋼板の実施例として、Si:3.0mass%、Mn:0.3mass%およびAl:0.3mass%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、その平均結晶粒径が15μm、16μm、17μm、40μm(表3中、記号D、E,G、J、M)のものが記載されている。

よって、引用刊行物には、
「 Si:3.0mass%、Mn:0.3mass%およびAl:0.3mass%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が15μm、16μm、17μm、40μmであるハイブリッド電気自動車駆動用モータの鉄心用無方向性電磁鋼板。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

第5 対比・判断
ハイブリッド電気自動車駆動用モータは、高周波域で駆動するものであることは周知であるから(例えば、下記文献1、同2参照)、引用発明における「ハイブリッド電気自動車駆動用モータの鉄心用 」は、本願発明の「自動車駆動用モーターの鉄心に使用される高周波励磁用」に相当する。
また、引用発明における「平均結晶粒径が15μm、16μm、17μm、40μm」は、本願発明の「平均結晶粒径が40μm以下」に相当し、引用発明における「Si:2.0mass%、Mn:0.5mass%およびAl:0.5mass%」は、本願発明の「質量%で」、「Si:0.1%以上、4.0%以下、Al:0.1%以上、4.0%以下、」、「Mn:1.0%以下」に相当する。

・文献1:特開2004-60026号公報
「【0002】
【従来の技術】
・・・、自動車分野では、エンジンとモータを併用したハイブリッド電気自動車(HEV )、電動モータのみで駆動する電気自動車(EV)および燃料電池車(FCEV)などの開発も進められている。これらの回転機の駆動周波数は年々増加傾向にあり、基本周波数で数百?数kHz、加えて高調波成分が重畳するため1kHz ?10kHz近くの周波数域での鉄損特性がモータ効率化のために重要になってきている。」

・文献2:特開2008-231504号公報
「【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車用モータは、小型化、高効率化の観点から、400Hz?2kHzの高周波域で駆動するよう設計されている。・・・」

そうすると、両者は、「質量%で、Si:3.0%以下、Al:0.3%、Mn:0.3%を含み、残部鉄および不可避的不純物元素からなり、平均結晶粒径が40μm以下であることを特徴とする自動車駆動用モーターの鉄心に使用される高周波励磁用無方向性電磁鋼板。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、「C:0.002%以下」であるのに対し、引用発明では、その特定がない点。

(相違点2)
本願発明では、「式(I)で定義される鉄損劣化率Aが50%以下」、
「A=[W_(1)-W_(0)]/W_(0) ・・・(I)
ここで、W_(1)は応力30MPa?50MPa負荷時の800?3000Hzの高周波域において1.0Tの磁束密度まで励磁したときの鉄損値であり、W_(0)は応力負荷の無いときに1.0Tの磁束密度まで励磁したときの800?3000Hzの高周波域における鉄損値を表す。」であるのに対し、引用発明では、それが明らかでない点。

上記相違点について検討する。
・(相違点1)について
引用発明は、「Si:3.0mass%、Mn:0.3mass%およびAl:0.3mass%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな」るものであり、文言上、Cは含んでいないか、含んでいても不可避的不純物に相当するものである。
これに関し、上記記載事項(1d)、(1e)によれば、Si、Mn、Alは、いずれも添加成分であるが、Cは添加成分として記載されておらず、また、通常、鉄損低下が求められる無方向性電磁鋼板においては、Cの含有量を可及的に抑えることは周知であり(例えば、下記文献3、4参照)、文献4には、Cの含有量の下限が、0質量%を含む旨記載されている。
そうすると、引用発明においても、Cの含有量が0.002質量%以下、さらには0質量%である場合を含んでいると解される。
よって、この点において両者は相違しない。

・文献3:特開2008-189976号公報
「【請求項1】
質量%で、
C:0.002%以下、
Si:0.1%以上、4.0%以下、
Al:0.1%以上、4.0%以下、
Mn:0.1%未満、かつ、
Si+Al:2.0%以上、6.0%以下、
を含有し、残部Feおよび不可避不純物元素からなり、板厚中心層における板面と平行な{111}面のX線ランダム強度比が2.5以上、10.0以下である圧縮応力による鉄損劣化の小さい無方向性電磁鋼板。」
「【0015】
Cは鉄損を増加させる有害な元素であり、磁気時効の原因ともなるので、0.002%以下とする。」

・文献4:特開2008-285721号公報
「【請求項1】
質量%で、C:0.01%以下、Si:0.1%以上7.0%以下、Al:0.01%以上3.0%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、N:0.005%以下、S:0.005%以下、O:0.005%以上0.02%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、直径2μm以上25μm以下のアルミナまたはシリカの1種以上からなる酸化物を、100個/mm3以上100000個/mm3以下含有することを特徴とする、打ち抜き加工性と鉄損に優れた無方向性電磁鋼板。」
「【0044】
・・・
[C]:Cは、磁気特性に有害となるばかりか、Cの析出による磁気時効が著しくなるので、上限を0.01質量%とした。下限は0質量%を含む。」
・(相違点2)について
本願明細書の記載(【0015】、【表2】)によれば、平均結晶粒径を100μm以下にすることにより、式(I)で定義される鉄損劣化率を50%にできる旨記載されていることから、該粒径範囲の粒径を有する引用発明においても、同様の鉄損劣化率を有するものと認められる。
よって、この点においても両者は相違しない。

したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明である。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願請求項2に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-14 
結審通知日 2015-12-15 
審決日 2016-01-04 
出願番号 特願2009-238412(P2009-238412)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市川 篤伊藤 真明  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 河野 一夫
鈴木 正紀
発明の名称 高周波励磁用無方向性電磁鋼板  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 永坂 友康  
代理人 福地 律生  
代理人 ▲徳▼永 英男  
代理人 亀松 宏  
代理人 青木 篤  
代理人 中村 朝幸  

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