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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1311403
審判番号 不服2015-5793  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-30 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 特願2013-219268「表示パネルの製造方法及び表示パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日出願公開、特開2014- 26293〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年9月12日に出願した特願2008-235268号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年10月22日に新たな特許出願としたものであって、平成26年4月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月3日付けで、意見書及び手続補正書が提出され、同年12月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年3月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、同年6月24日付けで、審査官による前置報告がされ、同年11月13日付けで上申書が提出されたものである。

第2 平成27年3月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年3月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲について、下記アを、下記イと補正するものを含む。
ア 本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法であって、
前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方に、未硬化時に流動性を有する第1接着剤を塗布し、この第1接着剤によって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程と、
前記第1接着剤を硬化させることにより、その塗布面に強固に全面接着する流止め部を形成する第1接着剤硬化工程と、
前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤を介して前記表示素子及び前記光学部材を接合させる接合工程と、
前記第2接着剤を硬化させて前記表示素子及び前記光学部材を接着する第2接着剤硬化工程と、
を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
ケースに組み付けた表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法であって、
前記ケースに前記表示素子を組み付ける組付工程と、
前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方における前記ケースと前記表示素子との境界よりも内側に、未硬化時に流動性を有する第1接着剤を塗布し、この第1接着剤によって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程と、
前記第1接着剤を硬化させることにより、その塗布面に強固に全面接着する流止め部を形成する第1接着剤硬化工程と、
前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤を介して前記表示素子に前記光学部材を接合させる接合工程と、
前記第2接着剤を硬化させて前記表示素子及び前記光学部材を接着する第2接着剤硬化工程と、
を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項3】
ケースに組み付けた表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法であって、
前記ケースに前記表示素子を組み付ける組付工程と、
前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方における前記ケースと前記表示素子との境界に沿って、未硬化時に流動性を有する第1接着剤を塗布し、この第1接着剤によって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程と、
前記第1接着剤を硬化させることにより、前記境界を封止する流止め部を形成する第1接着剤硬化工程と、
前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤を介して前記表示素子に前記光学部材を接合させる接合工程と、
前記第2接着剤を硬化させて前記表示素子及び前記光学部材を接着する第2接着剤硬化工程と、
を含み、前記第1接着剤の粘度を前記第2接着剤の粘度よりも高くしたことを特徴とする請求項2記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記流止め部の厚さを、前記第2接着剤の厚さ以下としたことを特徴とする請求項1?3いずれか記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第2接着剤を、互いに光の透過率及び屈折率が等しい同一材料としたことを特徴とする請求項1?4いずれか記載の表示パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1?5いずれか記載の方法により製造したことを特徴とする表示パネル。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲(下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
ケースに組み付けた表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法であって、
前記ケースに前記表示素子を組み付ける組付工程と、
前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方における前記ケースと前記表示素子との境界よりも内側に、未硬化時に流動性を有する第1接着剤を塗布し、この第1接着剤によって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程と、
前記第1接着剤を硬化させることにより、その塗布面に強固に全面接着する流止め部を形成する第1接着剤硬化工程と、
前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤を介して前記表示素子に前記光学部材を接合させる接合工程と、
前記第2接着剤を硬化させて前記表示素子及び前記光学部材を接着する第2接着剤硬化工程と、
を含み、
前記光学部材が遮光部を有するとともに、前記第1接着剤の粘度が前記第2接着剤の粘度よりも高く、少なくとも前記第2接着剤が光硬化性接着剤であり、前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方における前記遮光部に対応する位置に、前記流止め部を形成したことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
ケースに組み付けた表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法であって、
前記ケースに前記表示素子を組み付ける組付工程と、
前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方における前記ケースと前記表示素子との境界に沿って、未硬化時に流動性を有する第1接着剤を塗布し、この第1接着剤によって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程と、
前記第1接着剤を硬化させることにより、前記境界を封止する流止め部を形成する第1接着剤硬化工程と、
前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤を介して前記表示素子に前記光学部材を接合させる接合工程と、
前記第2接着剤を硬化させて前記表示素子及び前記光学部材を接着する第2接着剤硬化工程と、
を含み、
前記第1接着剤は、前記第2接着剤の粘度よりも高く、かつ前記ケースと前記表示素子との隙間から前記ケース内へ流入しない粘度を有するとともに、前記第2接着剤と等しい光の透過率及び屈折率を有し、前記光学部材の全面に透光性をもたせたことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記流止め部の厚さを、前記第2接着剤の厚さ以下としたことを特徴とする請求項1又は2記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記第1及び第2接着剤を、互いに光の透過率及び屈折率が等しい同一材料としたことを特徴とする請求項1記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1?4いずれか記載の方法により製造したことを特徴とする表示パネル。」

2.新規事項の有無及び補正の目的要件
本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項2に係る発明の「光学部材」について「遮光部を有する」点を限定し、「第1接着剤の粘度」と「第2接着剤の粘度」との関係について、「第1接着剤の粘度が第2接着剤の粘度よりも高」い点を限定し、「第2接着剤」が「光硬化性接着剤」である点を限定し、「流止め部」の位置について、「表示素子又は光学部材の少なくとも一方における遮光部に対応する位置」である点を特定するものであって、本願の願書に最初に添付した明細書の【0038】、【0040】、【0047】、【0050】等の記載から、上記補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものと認められる。
そして、本件補正前の該請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であって、本件補正のうち、補正後の請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を、進歩性(特許法第29条第2項)について検討する。

3.本件補正発明の進歩性について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.イ」の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

(2)引用例1?3の記載
ア 引用例1について
原査定の拒絶理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-40144号公報(以下、「引用例1」という。)には、「表示装置」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。以下、同じ。)。
(引1ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。より詳しくは、表示パネルとともに視差バリアパネル、視野角可変パネル、2D/3D可変パネル、タッチパネル等の機能パネルを備える表示装置に関するものである。」
(引1イ)「【0033】
(実施形態1)
実施形態1の表示装置について説明する。本実施形態の表示装置は、接着剤堰き止め構造として壁を有する透過型の液晶表示装置を用いたデュアルビューディスプレイである。
【0034】
図1は、実施形態1の表示装置を示す模式図であり、(a)は、正面模式図であり、(b)は、(a)のX1-Y1線における断面模式図である。なお、本実施形態では、表示装置として液晶表示装置を例にして説明する。しかしながら、本発明の表示装置としては液晶表示装置に特に限定されず、PDP、有機ELディスプレイ、FED等であってもよい。
【0035】
本実施形態の表示装置100は、図1に示すように、表示パネル110と、表示パネル110の表示面側に配置された視差バリアパネル120と、表示パネル110と視差バリアパネル120との間に設けられた接着剤層130と、表示パネル110の後方側に配置された偏光板142と、視差バリアパネル120の表示面側に配置された偏光板141と、表示パネル110の後方側に配置されたバックライトユニット(図示せず)と、これらの構成部材を保持するベゼル(図示せず)とを備える。なお、偏光板141、142の内側(後述する基板111及び視差バリアパネル120側)には、位相差板が配置されてもよい。
【0036】
バックライトユニットの構成としては、光源、反射板、光学シート類等の一般的な構成を有すればよい。また、バックライトユニットは、直下型であってもよいし、エッジライト型であってもよい。更に、表示装置100は、透過型に限定されず、反射型又は半透過型であってもよい。
【0037】
表示パネル110は、一対の基板111及び基板112と、基板111及び基板112に狭持された液晶層113と、基板112の輪郭に沿って配置されたシール材114及び遮光層115とを有する。基板111及び基板112の材質としては、透光性及び加工性に優れたガラス、透光性の樹脂が好適である。
【0038】
基板111及び基板112の液晶層113側には、液晶表示パネルの表示素子の構成要素として、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)、画素電極、バス配線、配向膜、ブラックマトリクス(BM)等が設けられている。すなわち、基板111は、いわゆるTFTアレイ基板であり、一方、基板112は、いわゆるカラーフィルタ基板(CF基板)である。また、基板111は、ドライバを配置するためのドライバ部117を有する。このように、表示パネル110は、画素がマトリクス状に配列されたアクティブマトリクス型の液晶表示パネルである。
【0039】
遮光層115は、光を遮光するための部材であり、基板112の液晶層113側に配置されている。このように、遮光層115は、いわゆる額縁ブラック部である。そして、この遮光層115で囲まれた透光領域が、複数の画素が配列された表示領域150となる。一方、遮光層115よりも外側の遮光領域は、表示外領域160となる。
【0040】
また、遮光層115は、通常、BMと同一の材料を用いて同一のプロセスで形成される。これにより、製造工程を複雑化させることなく、表示領域160と表示外領域170とを区画することができる。」
(引1ウ)「【0042】
したがって、本実施形態において、表示外領域160は、額縁ブラック部からなる遮光層115の代わりに、遮光テープ、ベゼル等を用いて形成されてもよい。なお、遮光テープを用いる場合には、表示パネル110、視差バリアパネル120、バックライトユニット等に遮光テープを貼ればよい。」
(引1エ)「【0046】
視差バリアパネル120は、透過光を左右方向に分離するための機能パネルである。より具体的には、視差バリアパネル120は、基板121と、基板121の表示パネル110側に形成されたストライプ状の視差バリア122とを有する。視差バリア122は、表示パネル110の画素の配列に沿って配置されている。一方、表示パネル110は、視差バリア122に対応して画素が一列毎に右表示用画像と左表示用画像とを表示できるようになっている。これにより、表示装置100は、2つの画像をそれぞれ左右方向に表示することができる。」
(引1オ)「【0055】
そして、視差バリアパネル120は、表示外領域160にフォトスペーサにより形成された壁123を有する。すなわち、本発明において、表示パネル及び/又は機能パネルは、平面視したときに、表示外領域と重複する領域内に接着剤堰き止め構造を有する。また、接着剤堰き止め構造は、通常、表示パネル及び/又は機能パネルの接着剤層側に形成されたものである。このように、視差バリアパネル120が、その輪郭に沿って形成された壁123を有することによって、壁123は、接着剤を堰き止める働きをする。したがって、製造工程において、表示パネル110及び視差バリアパネル120の間から接着剤が外に漏れ出すのを効果的に抑制することができる。なお、フォトスペーサとは、フォトリソグラフィー法等により形成された突起物であり、通常、感光性樹脂を含んで構成される。
【0056】
壁の形態について、まず、壁の配置場所及び断面形状について以下に更に説明する。図3(a)及び(b)は、実施形態1の表示装置における壁の変形形態を示す断面模式図である。図4は、比較形態1の表示装置の断面模式図である。また、図5(a)及び(b)は、実施形態1の表示装置における壁の別の変形形態を示す断面模式図である。
【0057】
本発明において、壁は、表示外領域に形成されればよい。したがって、壁123は、図3(a)に示すように、遮光層115の外側に配置されてもよい。また、壁123は、図3(b)に示すように、複数列配置されてもよい。一方、図4に示すように、壁123が遮光層115の内側の表示領域160に重複するように配置された形態は、壁123周辺における表示品位が著しく低下することから、本発明には含めないものとする。」
(引1カ)「【0063】
以下に、表示装置100の製造方法について説明する。
まず、一般的な方法により、表示パネル110と視差バリアパネル120とを作製する。次に、表示パネル110の基板112をその厚みが0.1mm以下になるようにガラスエッチング等により薄膜化する。
【0064】
次に、視差バリアパネル120上の、表示外領域160となる領域に壁123と、表示領域150となる領域にカラム125とをフォトスペーサを用いて同一プロセスにて形成する。すなわち、スピンコータ等によりネガ型感光性樹脂、ポジ型感光性樹脂等のフォトスペーサ材料を視差バリアパネル120上に塗布した後、露光及び現像工程を行い、壁123及びカラム125を形成する。なお、壁123及びカラム125は、表示パネル110上に形成されてもよい。また、表示パネル110上に偏光板141が配置される場合には、壁123及びカラム125は、偏光板141上に形成されてもよい。
【0065】
次に、図15で示したように、表示パネル上への接着剤の塗布工程と、視差バリアパネルの加圧工程と、視差バリアパネルのアライメント工程と、光硬化工程とを順次行う。これにより、表示パネル110と視差バリアパネル120との相対位置を高精度に制御した状態で、表示パネル110上に視差バリアパネル120を固定することができる。また、視差バリアパネル120の外周には壁123が形成されていることから、視差バリアパネル120に対する加圧と視差バリアパネル120の自重とに起因する接着剤漏れと、毛細管現象に起因する接着剤漏れとを効果的に抑制することができる。ただし、塗布工程及び加圧工程において、接着剤の塗布量と、視差バリアパネルの加圧圧力及び加圧時間とは、適宜設定されることが好ましく、これにより、パネル間隔を所望の大きさに制御することができる。また、塗布工程において、接着剤は、壁(及びカラム)が形成されていないパネルに塗布されることが好ましい。これは、接着剤の塗布手段としては、スリットコータ、スピンコータ、グラビア印刷、凸版印刷等が考えられるが、接着剤を塗布すべきパネルに壁が配置されていると、接着剤の塗布そのものが難しく、精度の良い厚みで接着剤を塗れないためである。更に、接着剤漏れを充分に抑制する観点から、塗布工程において、接着剤は、表示パネル及び視差バリアパネルの貼り合わせ時において、壁で囲まれた領域内に位置するように塗布されることが好ましい。なお、接着剤の粘度は適宜設定すればよく、例えば25℃において1000?2000mPa・s(=CentiPoise)程度であればよい。その後、一般的な方法によりモジュール組み立て工程を行うことによって、表示装置100を作製することができる。
【0066】
以上説明したように、壁は、接着剤の広がりを抑制する接着剤堰き止め構造として機能する。したがって、本実施形態の表示装置は、表示パネルと機能パネルとの間から接着剤が漏れるのを効果的に抑制することができる。そして、漏れた接着剤の硬化収縮に起因する表示ムラの発生を抑制することができ、その結果として、表示品位を向上することができる。
【0067】
また、本実施形態の表示装置は、基板のドライバ部の端子が接着剤で汚れるのを効果的に抑制することができる。したがって、ドライバと端子との接続不良の発生を抑制することができ、その結果として、信頼性を向上することができる。
【0068】
更に、表示パネルと視差バリアパネルとは、接着剤を用いて略全面で接着されることから、パネル間隔を非常に狭く、かつ表示パネル及び視差バリアパネルの相対位置を高精度に制御することができる。したがって、本実施形態の表示装置は、表示パネルと視差バリアパネルとの位置ずれ及び厚みムラに起因する表示ムラの発生を効果的に抑制することができ、その結果として、優れた表示品位を有するデュアルビューディスプレイを実現することができる。
・・・(略)・・・
【0074】
また、本実施形態において、壁123は、フォトスペーサにより形成されていたが、壁123は、基材、粘着剤等から構成されるテープ状の接着シートであってもよい。この場合、表示パネル110及び/又は視差バリアパネル120の表示外領域に接着シートを貼り付けるだけで、所望の位置に壁124を容易に形成することができる。なお、接着シートは、基材、粘着剤等から構成される粘着シートであってもよい。
【0075】
更に、壁123としては、高粘度の樹脂であってもよい。すなわち、図7(a)に示すように、視差バリアパネル120に壁として高粘度の樹脂126を高精度のディスペンサ180等により塗布してもよい。この場合、高粘度の樹脂126としては、接着剤層と同様の光硬化型の樹脂であることが好ましい。これにより、図7(b)に示すように、接着剤層の光硬化工程において、接着剤層130と高粘度の樹脂126とを同時に硬化することができる。したがって、効率良く壁を形成できるとともに、より効果的に接着剤の漏れを防止することができる。なお、高粘度の樹脂126の粘度としては、10000mPa・s程度であればよい。」
(引1キ)「【0104】
(実施例1)
実施例1のパネルは、図1で示した実施形態1の表示装置と同様の構成を有する。したがって、まず、一般的な構成を有するアクティブマトリクス型の液晶表示パネルと視差バリアパネルとを準備した。基板111、112、121としてはガラス基板を用いた。また、基板111、121の厚みは、0.7mmであり、一方、基板112は、ガラスエッチングにより薄板化され、その厚みを0.05mmとした。
【0105】
次に、両パネルを貼り合わせたときに遮光層と重複するように、視差バリアパネルの外周にフォトスペーサにより壁を形成した。また、視差バリア上の表示パネルの各画素に対応する位置に点状にカラムを形成した。なお、壁及びカラムの厚さは、パネル間隔が略30μmとなるように設定した。
【0106】
次に、図15(a)で示したように、スリットコータにより基板112上に接着剤としてアクリル系の紫外線硬化型の樹脂を塗布した。なお、接着剤は、表示パネルと視差バリアパネルとを貼り合わせたときに、壁で囲まれた略四角形の領域よりも若干小さくなるように塗布した。また、塗布時の接着剤の厚みと25℃における粘性とは、それぞれ100μm及び1500mPa・sであった。
【0107】
次に、図15(b)に示したように、接着剤の厚み(パネル間隔)が略30μmとなるまで視差バリアパネルを加圧した。そして、図15(c)及び(d)に示したように、チャックによりパネル位置を制御した状態で、紫外線照射機(メタルハライドランプ)により光量1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化型の樹脂を硬化した。以上のようにして、視差バリアパネルを表示パネルに固定し、実施例1の試験用パネル(サンプル1)を完成した。
【0108】
(実施例2)
実施例2のパネルは、高粘度の樹脂により形成された壁を有する表示装置であり、図7で示した実施形態1の表示装置と同様の構成を有する。したがって、まず、実施例1と同様のアクティブマトリクス型の液晶表示パネルと視差バリアパネルとを準備した。なお、本実施例において、視差バリアパネルにカラムは形成されていない。
【0109】
次に、図7(a)で示したように、両パネルを貼り合わせたときに遮光層と重複するように、ディスペンサにより視差バリアパネルの外周に高粘度(10000Pa・s)の樹脂を塗布した。なお、高粘度の樹脂は、アクリル系の紫外線硬化型の樹脂であり、その厚みは、略50μmとし、その幅は、略1mmとした。
【0110】
次に、実施例1と同様に、基板112上に接着剤を塗布した後、パネルの張り合わせ、及び、接着剤の硬化を行い、実施例2の試験用パネル(サンプル2)を完成した。」
(引1ク)図1

(引1ケ)図7


イ 引用例2について
原出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-332615公報(以下、「引用例2」という。)には、「エレクトロルミネッセンス装置およびその製造方法、電子機器」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引2ア)「【0028】
本実施形態の有機EL装置1は、図2に示すように、複数の有機EL素子Aが形成された4枚の素子基板20が縦横2行2列に配列され、これら4枚の素子基板20が別の支持基板21上に固定されている。このように、複数の基板を組み合わせてより大型の基板を形成する手法は「タイリング」と呼ばれ、例えば大型テレビジョン等の用途に用いる有機ELパネルの製造に好適なものである。各素子基板20には、複数の有機EL素子Aがマトリクス状に配置された表示領域が設けられ、本実施形態では素子基板20が2行2列に配列されるため、隣接する2辺(例えば図2の右上の素子基板20では左辺と下辺)が他の素子基板20と接続される辺となる。そして、それ以外の辺(例えば図2の右上の素子基板20では右辺と上辺)に沿ってデータ側駆動回路、走査側駆動回路等の駆動回路や各種配線(ともに図示略)が設けられ、さらに複数の実装接続用端子22が所定のピッチで配置された端子部23が設けられている。この端子部23には、後工程で駆動用IC等の電子部品が搭載された駆動用のフレキシブル基板が接続される。
【0029】
4枚の素子基板20上には所定の間隔をもって封止基板24(封止部材)が設けられ、封止基板24と素子基板20との間隙には接着剤が充填されている。封止基板24は、接着剤とともに有機EL素子Aを封止する封止構造を構成しており、好ましくは耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性などの機能を有するものがよい。具体的には、ガラス基板、最表面にダイアモンドライクカーボン層、珪素酸化物層、酸化チタン層などがコーティングされたプラスチックフィルムなどが好適に用いられる。なお、本実施形態の有機EL装置1においては、トップエミッション型にする場合には封止基板24を光透過性を有するものにする必要があるが、ボトムエミッション型とする場合にはその必要はない。また、封止基板24の大きさは4枚の素子基板全体よりも一回り小さいものであり、各素子基板20上の端子部23が封止基板24の外側に位置している。」
(引2イ)「【0040】
本実施形態の有機EL装置1の製造方法においては、基板周縁部の第1の接着剤31が先に硬化して土手の役目を果たし、その内側に硬化前の流動性を持った状態で存在する第2の接着剤32が外側に向けて流れ出すのを堰き止める。この作用によって、接着剤が封止基板24の外側にはみ出し、例えば実装接続用端子22上を覆うことで実装不良が発生するのを防止することができる。さらに、第1の接着剤31がある程度粘度の高いものであり、塗布量や硬化時間をコントロールすることで第1の接着剤31の厚さ(素子基板表面からの高さ)を制御することができる。これにより、硬化した第1の接着剤自身がギャップ材の役目を果たし、素子基板20と封止基板24とのギャップを保持することができる。また、例えば中央部を含む樹脂全体を一気に硬化させると硬化収縮が生じ、基板が撓んだ状態で固定されてしまうのに対し、本方法では中央部の第2の接着剤32が後から熱によってゆっくり硬化するため、第2の接着剤32の硬化時間の中で素子基板20と封止基板24の撓みや応力が自然と緩和される。その結果、実装不良等がなく、かつ基板の撓み等のない平坦性の高い有機EL装置を実現することができる。」
(引2ウ)「【0054】
[第4の実施の形態]
以下、本発明の第4実施形態の有機EL装置の製造方法を図7を参照して説明する。
本実施形態の有機EL装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、製造方法が異なるのみである。よって、以下では有機EL装置自体の説明は省略し、製造工程の異なる部分のみを説明する。
【0055】
上記の全ての実施形態では、基板周縁部の接着剤を硬化させる時点で既に中央部に接着剤を配置してあった。これに対して、本実施形態の有機EL装置の製造方法は、基板周縁部の接着剤を硬化させる時点では中央部が接着剤が存在しない、空の状態であり、基板周縁部の接着剤が硬化した後で中央部の接着剤を充填するというものである。
【0056】
具体的には、例えば第1の接着剤61として紫外線硬化性エポキシ樹脂を用いることとし、素子基板の周縁部に液状の第1の接着剤61を塗布する。この接着剤61の塗布には、例えば液晶パネルのシール材の描画に用いるようなディスペンサ等の塗布装置を用いることができる。また、この第1の接着剤61については、次工程で紫外線を照射するまでの間に接着剤が大きく流れ出すことのないように、ある程度粘度の高いものを選択することが好ましい。本実施形態の場合、第1の接着剤61の塗布時に、上記実施形態で説明したような連通孔を設けることが必須となる。なお、第1の接着剤61として熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【0057】
次に、図7に示すように、第1の接着剤61を塗布した素子基板20上に封止基板24を重ね合わせた後、紫外線を照射して第1の接着剤61を硬化させる。このとき、トップエミッション型、ボトムエミッション型のいずれかのタイプによって素子基板20及び支持基板21、あるいは封止基板24の少なくともいずれか一方は光透過性を有しているため、光透過性を有する基板の側から紫外線を照射すればよい。次に、例えば液晶パネルの製造工程における液晶の真空注入法と同様の方法、すなわち、減圧雰囲気に保ったチャンバー内で連通孔の部分を液状の第2の接着剤中に浸漬させた後、チャンバー内を大気圧に戻すことによって、素子基板20と封止基板24との空隙に第2の接着剤を注入することができる。第2の接着剤としては紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いても良い。次に、第2の接着剤として紫外線硬化性樹脂を用いた場合には紫外線照射、熱硬化性樹脂を用いた場合には加熱を行うことにより第2の接着剤を硬化させる。その後、連通孔に第1,第2の接着剤のいずれかを再度充填し、硬化させることにより本実施形態の有機EL装置が完成する。
【0058】
本実施形態においては、第1の接着剤61が硬化する時点で第2の接着剤が基板上に存在しないため、接着剤のはみ出しによる実装不良の発生を防止することができる。さらに、硬化した第1の接着剤61がギャップ材の役目を果たし、素子基板20と封止基板24とのギャップを保持することができる。また、第2の接着剤が後から硬化するため、接着剤の硬化時間の中で素子基板20と封止基板24の撓みや応力が自然と緩和される。その他の作用、効果は上記実施形態と同様である。」
(引2エ)図7

ウ 引用例3について
原査定の拒絶理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-203714号公報(以下、「引用例3」という。)には、「パネル積層構造およびパネル積層方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引3ア)「【0001】
本発明は、表示用のパネルの積層構造と積層方法に関し、より詳細には一方のパネルに二重の土手で形成した枠状の隔壁を設け、隔壁の内側に滴下した接着剤によって他方のパネルを貼り合わせた積層構造および積層方法に関するものである。」
「【0004】
電子ペーパーやフレキシブルFPDの表示原理は種々のものが提案されているが、その一つにコレステリック液晶方式によるものがある。この方式は、青、緑、赤の3色についてそれぞれ2枚の透明プラスチックパネルの間にコレステリック液晶を封じ込んだ表示パネルを3枚重ねて貼り合わせることによりフルカラーを実現している。この貼り合わせにおいて表示領域に気泡が存在した場合、乱反射などでディスプレイとしての表示品質に悪影響を与えることになり、製造工程において多くの注意が払われている。」
(引3イ)「【0011】
本発明のパネル積層構造とパネル積層方法は以下のように構成される。
(1)第1の発明
第1の発明のパネル積層構造は、第1のパネルの表面に二重の土手で形成した枠状の隔壁を設け、その隔壁の内側に滴下した接着剤によって第2のパネルを貼り合わせた、ことを特徴するものである。
【0012】
第1のパネルは例えばフィルムであったり、あるいは2枚のフィルム間に液晶を封止したものなどである。また、第2のパネルも第1のパネルと同様である。
【0013】
上記により、接着剤を隔壁の中に留まる量より僅か多い量とすることにより、第2のパネルの貼り合わせで接着剤は内側の土手を越え、土手を超えた接着剤は第1と第2の土手の間に留まる。これによって、内側の土手内の接着剤がこの土手を越えるときに空気が内側の土手を越えて追い出され、内側の土手の中は気泡のない接着剤のみとなる。」
【0023】
本発明による実施形態を図1から図7を用いて説明する。本実施形態では、背景技術で説明した2枚の表示パネルを積層する例で説明する。
(実施形態その1)
実施形態その1は、隔壁である二重の土手を枠状に形成して二枚の表示パネルを積層した例である。図1は土手の形状を説明するもので、図1において第1のパネル100と第2のパネル200はポリカーボネートのフィルム間に液晶を封止した表示パネルである。第1のパネル100上には図に示すように枠状に描いた二重の土手(内側の土手110と外側の土手120)が形成される。第1のパネル100の内側の土手110で囲まれる中に接着剤300が滴下され、この接着剤300がその上から被せた第2のパネル200を固着する。
【0024】
図1は、形成した土手の形状がよく判るように第2のパネル200が透けて見えるように描いている。土手の中に描かれた点線は表示パネルとしての表示領域400で、内側の土手110はこの表示領域400の直ぐ近くに、外側の土手はパネル積層時に必要な接着強度を得るために最外形部近くに形成している。どちらの土手も表示領域外の領域に形成している。土手幅は150?200μm、高さはその半分程度である。また、土手の間隔は1から1.5mm程度である。
【0025】
第1のパネル100の上側と第2のパネル200の左側はそれぞれはみ出した形で積層しているが、この部分は引き出し用の端子(前述したFPCとACF)の部分で、ここではその部分の図を省略してある。
【0026】
図1の下方の図は、土手の箇所の部分断面図で、第1のパネル100上に形成した土手は第2のパネル200によって押され変形している。これは、接着剤300が硬化によって僅か収縮するため、第2のパネル200を下方に引きつける力が働くことによる。接着剤300は第1と第2の土手間にも入り込んでいるが、張り合わせの工程で第2のパネル200を空気抜きのために下方に押圧したため、内側の土手110を越えて侵入した状態を示している(一旦第2のパネル200を押圧した後に押圧は解除される)。部分断面図で示した箇所は土手間に接着剤300が入った状態を示しているが、接着剤300が入っていない箇所もある。
【0027】
次に、図2と図3を用いてパネル積層のフローを説明する。図2において、まずディスペンサを用いて第1のパネルに土手を二重の枠となるように描画する(S10)。土手となる材料は例えば光硬化型樹脂で、硬化後弾性を有するものである。図2(a)はその状態を示しており、第1のパネル100は作業の基台であるベース10上に真空吸着により吸着された状態で置かれ、数値制御されたディスペンサ500により土手の描画を行う。
【0028】
土手の描画の終了に伴い、可視光により土手の硬化を行う(S20)。硬化後の土手は弾性を有している。
【0029】
続いて、やはりディスペンサを用いて、土手で囲まれた第1のパネル100の中に接着剤300を滴下する。接着剤300の滴下は1から数カ所である(S30)。ここでは接着剤300は可視光硬化型で低粘度のものを用いている。図2(b)は接着剤300が滴下され、自然流動によりある程度の面積に拡がった状態を示している。
【0030】
次に、第2のパネルを接着剤が滴下された第1のパネル100の上方から被せ、押圧して貼り合わせる(S40)。図3(c)は、第2のパネル200を真空吸着したパネル支持台11を上方から被せ、押圧している状態を示している。前述したように押圧により接着剤300の一部は内側の土手を越えて内側と外側の土手の間に侵入する。土手内の空気も接着剤300に押されて土手内から押し出されることになる。また、押圧により土手は弾性を持っているので弾性変形することになる。
【0031】
押圧した後、第2のパネル200に対する押圧を解除する(S50)。押圧の解除により土手の変形は復元する力が働いて第2のパネル200が僅か持ち上げられ、接着剤300を均一の厚さにするよう作用する。
【0032】
第2のパネル200の張り合わせ後、可視光により接着剤300を硬化させる。硬化により接着剤は僅か収縮するが、それに応じて土手は再び弾性変形することになる。
(引3ウ)図1

(引3エ)図2

(引3オ)図3

(3)引用例に記載された事項
ア 引用例1
(ア)【0075】には、「壁123」を「光硬化型の」「高粘度の樹脂」を「視差バリアパネル120」にディスペンサ180によって塗布し、「接着剤層の光硬化工程において、接着剤層130と高粘度の樹脂126とを同時に硬化する」ことが記載されている。
これは、「スピンコータ等によりネガ型感光性樹脂、ポジ型感光性樹脂等のフォトスペーサ材料を視差バリアパネル120上に塗布した後、露光及び現像工程を行い、壁123及びカラム125を形成する」(【0064】)際に、壁123及びカラム125とを同一プロセスで形成することに代えて、「壁123」の形成を、「カラム125」の形成とは別に行うものと解することができる。
そして、上記【0064】の記載を具体化した実施例2(【0108】?【0110】)では、壁を高粘度の樹脂により形成し、「視差バリアパネル」に、「カラム」を形成しないことが記載されていることから、「壁123」の形成を「高粘度の樹脂」によって形成する場合は、「カラム125」を形成しなくてもよいことが理解できる。
(イ)「壁は、表示外領域に形成されればよい」(【0057】)ところ、上記実施例2では、「遮光層と重複するように、ディスペンサにより視差バリアパネルの外周に高粘度(10000Pa・s)の樹脂を塗布し」(【0109】)ていることから、「壁123」は、「遮光層」と重複した位置に形成することが理解できる。
(ウ)「接着剤層」は「光」によって硬化するものであって、「高粘度の樹脂126としては、接着剤層と同様の光硬化型の樹脂であることが好ましい」(【0075】)という記載からみて、「接着剤」は光硬化型の接着剤であることは明らかである。
(エ)「接着剤層」に用いられる「粘度が1000?2000mPa・sの接着剤」は、スリットコータ、スピンコータ、グラビア印刷、凸版印刷等によって塗布されることから、未硬化時に流動性を有するものであることは明らかである。
(オ)「壁123」に用いられる「高粘度の樹脂126」は、ディスペンサによって塗布されていることから、未硬化時に流動性を有するものであることは明らかである。

(カ)そうすると、引用例1には、
「一対の基板111及び基板112と、基板111及び基板112に狭持された液晶層113と、基板112の輪郭に沿って配置されたシール材114及び、基板112の液晶層113側に配置された遮光層115とを有する表示パネル110と、
基板121と、基板121の表示パネル110側に形成されたストライプ状の視差バリア122とを有する、透過光を左右方向に分離するための機能パネルである視差バリアパネル120と、
表示パネル110と視差バリアパネル120との間に設けられた光硬化性の接着剤層130と、
表示パネル110の後方側に配置された偏光板142と、
視差バリアパネル120の表示面側に配置された偏光板141と、
表示パネル110の後方側に配置されたバックライトユニットと、
これらの構成部材を保持するベゼルとを備える表示装置100の製造方法であって、
(a)表示パネル110と視差バリアパネル120とを作製する工程と、
(b)表示パネル110の基板112をその厚みが0.1mm以下になるようにガラスエッチング等により薄膜化する工程と、
(c)表示外領域160となる領域であって、遮光層と重複した位置に、接着剤堰き止め構造としての壁123を、粘度10000mPa・s程度の未硬化時に流動性を有する光硬化型の高粘度の樹脂を視差バリアパネル120にディスペンサ180によって塗布する工程と、
(d)表示パネル及び視差バリアパネルの貼り合わせ時において、未硬化時に流動性を有する粘度が1000?2000mPa・sの光硬化型の接着剤が壁で囲まれた領域内に位置するように塗布される、表示パネル上への接着剤の塗布工程、
視差バリアパネルの加圧工程、
視差バリアパネルのアライメント工程及び、接着剤層130と高粘度の樹脂126とを同時に硬化する光硬化工程を順次行う、表示パネル110上に視差バリアパネル120を固定する工程とを備え、
視差バリアパネル120の外周の壁123によって、視差バリアパネル120に対する加圧と視差バリアパネル120の自重とに起因する接着剤漏れと、毛細管現象に起因する接着剤漏れとを効果的に抑制して、表示パネルと視差バリアパネルとを、接着剤を用いて略全面で接着する表示装置100の製造方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用例2
(ア)引用例2の「基板周縁部の第1の接着剤31が先に硬化して土手の役目を果たし、その内側に硬化前の流動性を持った状態で存在する第2の接着剤32が外側に向けて流れ出すのを堰き止める。この作用によって、接着剤が封止基板24の外側にはみ出し、例えば実装接続用端子22上を覆うことで実装不良が発生するのを防止することができる。」(【0040】)という記載は、「第4の実施の形態」(【0054】?【0058】)にも当てはまることは明らかである。

(イ)そうすると、引用例2の「第4の実施の形態」には、
「複数の有機EL素子Aが形成された4枚の素子基板20が縦横2行2列に配列され、所定の間隔をもって封止基板24(封止部材)が設けられ、封止基板24と素子基板20との間隙には接着剤が充填されている有機EL装置の製造方法であって、
素子基板20の周縁部に液状の紫外線硬化性エポキシ樹脂の第1の接着剤61を塗布し、
第1の接着剤61を塗布した素子基板20上に封止基板24を重ね合わせた後、紫外線を照射して第1の接着剤61を硬化させ、
素子基板20と封止基板24との空隙に第2の接着剤を注入し、第2の接着剤を硬化させる有機EL装置の製造方法において、
基板周縁部の第1の接着剤31が先に硬化して土手の役目を果たし、その内側に硬化前の流動性を持った状態で存在する第2の接着剤32が外側に向けて流れ出すのを堰き止める有機EL装置の製造方法。」が記載されていると認められる。

ウ 引用例3
(ア)「実施形態その1」で用いられた「土手」の描画に用いられた「光硬化型樹脂」は、「ディスペンサ」を用いて描画されることから、「未硬化時に流動性」を有することは明らかである。
(イ)「実施形態その1」で用いられた「土手」で囲まれた中に滴下される「接着剤300」は、「低粘度」(【0029】)であって、「自然流動によりある程度の面積に拡が」(【0030】)るものであるから、未硬化時に流動性を有することは明らかである。
(ウ)「コレステリック液晶を封じ込んだ表示パネルを3枚重ねて貼り合わせることによりフルカラーを実現している。この貼り合わせにおいて表示領域に気泡が存在した場合、乱反射などでディスプレイとしての表示品質に悪影響を与えることになり、製造工程において多くの注意が払われている。」(【0004】)という記載からみて、「実施形態その1」で用いられた「第1のパネル100」及び「第2のパネル200」は、積層されてディスプレイが製造されるものと認められる。
(エ)そうすると、引用例3の「実施形態その1」には、
「ポリカーボネートのフィルム間に液晶を封止した表示パネルである第1のパネルと第2のパネルとを積層するディスプレイの製造方法において、
第1のパネル100上に、未硬化時に流動性を有する硬化型樹脂によって、枠状に描いた二重の土手である内側の土手110と外側の土手120とをディスペンサを用いて描画する工程と、
可視光により土手の硬化を行って、枠状の隔壁を形成する工程と、
未硬化時に流動性を有する可視光硬化型の低粘度の接着剤300を、隔壁の中に留まる量より僅か多い量とすることにより、第2のパネルの貼り合わせで接着剤は内側の土手を越え、土手を超えた接着剤は第1と第2の土手の間に留まるように、第1のパネル100の内側の土手110で囲まれる中に、ディスペンサを用いて滴下する工程と、
第2のパネルを接着剤が滴下された第1のパネル100の上から被せ、押圧して貼り合わせる工程と、
第2のパネル200の張り合わせ後、可視光により接着剤300を硬化させて、第1のパネル100と第2のパネル200とを固着する工程とを有するディスプレイの製造方法。」(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「表示パネル」及び「視差バリアパネル120」は、本件補正発明の「表示素子」及び「光学部材」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明1の「表示パネルと視差バリアパネルとを、接着剤を用いて略全面で接着する表示装置100の製造方法」は、本件補正発明の「表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法」に相当する。
ウ 引用発明1の「未硬化時に流動性を有する粘度が1000?2000mPa・sの光硬化型の接着剤」は、本件補正発明の「光硬化性接着剤」である「未硬化時に流動性を有する第2接着剤」に相当する。
エ 「ベゼル」(bezel)とは、一般に、「斜面溝 《指輪の宝石のはまる所,時計のガラスのはまる溝ぶちなど》」(研究社 新英和中辞典)という意味を有するところ、表示装置における「ベゼル」とは、表示装置の「ふち」、すなわち、ケース体であると解される(必要であれば、特開2007-249260号公報の「ベゼル等のケース体」(【0059】)を参照。)。
そして、引用発明1の「ベゼル」は、「表示パネル110」、「表示パネル110の表示面側に配置された視差バリアパネル120」、「表示パネル110と視差バリアパネル120との間に設けられた接着剤層130」、「表示パネル110の後方側に配置された偏光板142」、「視差バリアパネル120の表示面側に配置された偏光板141」及び「表示パネル110の後方側に配置されたバックライトユニット」という「表示装置100」の構成部材を保持するものであるから、そられの構成部材は、該「ベゼル」に組み付けられているということができる。
そうすると、引用発明1の「ベゼル」は、本件補正発明の「表示素子」が「組み付け」られた「ケース」に相当する。
オ 引用発明1の「視差バリアパネル120の外周の壁123」は、「接着剤堰き止め構造」であって、「視差バリアパネル120に対する加圧と視差バリアパネル120の自重とに起因する接着剤漏れと、毛細管現象に起因する接着剤漏れとを効果的に抑制する」ものであるから、本件補正発明の「流止め部」に相当する。
カ 引用発明1の「(d)表示パネル及び視差バリアパネルの貼り合わせ時において、未硬化時に流動性を有する粘度が1000?2000mPa・sの光硬化型の接着剤が壁で囲まれた領域内に位置するように塗布される、表示パネル上への接着剤の塗布工程」では、「接着剤」が「壁で囲まれた領域内に位置するように塗布され」、しかも、「表示パネルと視差バリアパネルとを、接着剤を用いて略全面で接着する」から、引用発明1の「壁」は、「接着剤」の塗布領域を確定するものであり、「接着剤」は該塗布領域に塗布されるものということができる。
そうすると、引用発明1の「壁で囲まれた領域」は、本件補正発明の「第2接着剤の塗布領域」に相当する。
したがって、引用発明1の「(c)表示外領域160となる領域であって、遮光層と重複した位置に、接着剤堰き止め構造としての壁123を、粘度10000mPa・s程度の未硬化時に流動性を有する光硬化型の高粘度の樹脂を視差バリアパネル120にディスペンサ180によって塗布する工程」は、本件補正発明の「前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方に、未硬化時に流動性を有する第1接着剤を塗布し、この第1接着剤によって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程」と、「表示素子又は光学部材の少なくとも一方に、未硬化時に流動性を有するものを塗布し、これによって第2接着剤の塗布領域を画定する塗布工程」である点で共通する。
キ 引用発明1の「(d)表示パネル及び視差バリアパネルの貼り合わせ時において、未硬化時に流動性を有する粘度が1000?2000mPa・sの光硬化型の接着剤が壁で囲まれた領域内に位置するように塗布される、表示パネル上への接着剤の塗布工程」は、本件補正発明の「前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤の塗布工程」に相当する。
ク 引用発明1では、「視差バリアパネルの加圧工程、視差バリアパネルのアライメント工程及び、接着剤層130と高粘度の樹脂126とを同時に硬化する光硬化工程」を経て、「表示パネル110上に視差バリアパネル120」が「固定」されていることから、引用発明1の「視差バリアパネルの加圧工程、視差バリアパネルのアライメント工程」によって、表示パネル110と視差バリアパネル120とが接着剤を介して接合されるということができ、該「視差バリアパネルの加圧工程、視差バリアパネルのアライメント工程」は、本件補正発明の「第2接着剤を介して表示素子に光学部材を接合させる接合工程」に相当する。
ケ 引用発明1の「接着剤層130と高粘度の樹脂126とを同時に硬化する光硬化工程」によって、本件補正発明の「第2接着剤」に相当する「接着剤層130」が硬化して、「表示パネル110上に視差バリアパネル120」が「固定」されているから、該「光硬化工程」は、本件補正発明の「第2接着剤を硬化させて表示素子及び光学部材を接着する第2接着剤硬化工程」に相当する。
コ 引用発明1の「(c)表示外領域160となる領域であって、遮光層と重複した位置に、接着剤堰き止め構造としての壁123を、粘度10000mPa・s程度の未硬化時に流動性を有する光硬化型の高粘度の樹脂を視差バリアパネル120にディスペンサ180によって塗布する工程」では、「光硬化型の高粘度の樹脂」が「ディスペンサ180」によって塗布されているのであるから、該「光硬化型の高粘度の樹脂」は、「接着層」の「接着剤」「よりも粘度は高く」、未硬化時に流動性を有していることは明らかである。
そして、該「光硬化型の高粘度の樹脂」は、本件補正発明の「流止め部」に相当する「壁123」を形成するものであるから、該塗布する工程は、本件補正発明の「表示素子又は光学部材の少なくとも一方におけるケースと前記表示素子との境界よりも内側に、未硬化時に流動性を有する第1接着剤を塗布し、この第1接着剤によって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程と、前記第1接着剤を硬化させることにより、その塗布面に強固に全面接着する流止め部を形成する第1接着剤硬化工程」と、「未硬化時に流動性を有している」ものを塗布して、硬化させて、「流止め部を形成する工程」である点で共通する。
サ 引用発明1の「遮光層」と本件補正発明の「遮光部」とは、「遮光部材」である点で共通し、その位置が、「遮光部材」に対応している点で共通する。

シ そうすると、本件補正発明と引用発明1とは、
「ケースに組み付けた表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法であって、
表示素子又は光学部材の少なくとも一方に、未硬化時に流動性を有するものを塗布し、これによって第2接着剤の塗布領域を画定する塗布工程と、
上記未硬化時に流動性を有するものを硬化させて流止め部を形成する工程と、
前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤を介して前記表示素子に前記光学部材を接合させる接合工程と、
前記第2接着剤を硬化させて前記表示素子及び前記光学部材を接着する第2接着剤硬化工程と、
を含み、
遮光部材を有し、
前記未硬化時に流動性を有するものの粘度が前記第2接着剤の粘度よりも高く、少なくとも前記第2接着剤が光硬化性接着剤であり、前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方における前記遮光部材に対応する位置に、前記流止め部を形成した表示パネルの製造方法。」点で一致し、次の相違点1?3で相違する。
(相違点1)
本件補正発明は、「ケースに表示素子を組み付ける組付工程」を有しているのに、引用発明1は、「ベゼル」に「表示装置100」の構成部材を組み付ける工程は規定していない点。
(相違点2)
「表示素子又は光学部材の少なくとも一方に、未硬化時に流動性を有するものを塗布し、これによって第2接着剤の塗布領域を画定する塗布工程」及び「上記未硬化時に流動性を有するものから形成される流止め部を形成する工程」について、
a 「未硬化時に流動性を有するもの」について、本件補正発明は、「接着剤」であって、引用発明1は、「高粘度の樹脂」であり、「上記未硬化時に流動性を有するものを硬化させて流止め部を形成する工程」において、本件補正発明では、「その塗布面に強固に全面接着する」のに対し、引用発明1は、強固に全面接着するかどうかは不明な点。
b 「未硬化時に流動性を有するもの」を塗布する場所が、本件補正発明は、「表示素子又は光学部材の少なくとも一方におけるケースと前記表示素子との境界よりも内側」であるのに対し、引用発明1の「高粘度の樹脂」の塗布の場所は、「ベゼル」と「表示パネル」との境界よりも内側かどうかは不明な点。
(相違点3)
遮光部材について、本件補正発明は、「光学部材」に遮光部を有するのに対し、引用発明1は、本件補正発明の「表示素子」に相当する「表示パネル」に「遮光層」を有している点。

(5)判断
相違点1?3について検討する。
(相違点1について)
引用発明1において、「ベゼル」に「表示装置100」の構成部材を組み付ける工程を備えることは、明らかであって、それらの構成部材である「表示パネル」や「視差バリアパネル」をどの時点で組み付けるかは、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
したがって、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点2について)
a 引用発明1の、接着剤を堰き止める「壁123」のような部材を、光硬化型の接着剤を硬化させて形成することは、引用例2の「第1の接着剤61」として開示されているように周知であり、一方、接着剤は、その塗布面に強固に全面接着することは明らかであるところ、引用発明1においては、「壁123」は「視差バリアパネル」に強固に接着することが望ましいことは当業者が容易に理解できることから、引用発明1の「高粘度の樹脂」に代えて、接着剤を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
b 引用発明1の「高粘度の樹脂」の塗布する場所は、「表示パネル」や「視差バリアパネル」の表示領域によって、当業者が適宜決定する事項にすぎないことから、該樹脂を塗布する場所を、「ベゼル」と「表示パネル」との境界よりも内側とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点3について)
「遮光層」は、遮光が必要な箇所に適宜設けるものであって、光学部材である「視差バリアパネル」に「遮光層」を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

4.本件補正発明についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年3月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年7月3日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2 1.ア」の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例3の記載は、前記「第2 3.(2)ウ」に摘示したとおりであり、引用発明3は、前記「第2 3.(3)ウ」に記載したとおりである。

3.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明3とを対比する。
ア 【0004】の「コレステリック液晶を封じ込んだ表示パネルを3枚重ねて貼り合わせることによりフルカラーを実現している。」という記載からみて、引用発明3の「第1のパネル」及び「第2のパネル」は、液晶を有し、積層されてディスプレイを構成するものであるから、本願発明の「表示素子」と「光学部材」に相当するものであるといえる。
イ 引用発明3の「ディスプレイ」及び「未硬化時に流動性を有する可視光硬化型の低粘度の接着剤300」は、本願発明の「表示パネル」及び「未硬化時に流動性を有する第2接着剤」に、それぞれ相当する。
ウ 引用発明3の「接着剤300」の「第1のパネル」への滴下は、「第1と第2の土手」の間に留まるようにされていることから、「第1と第2の土手」によって形成された「枠状の隔壁」は、本願発明の「第2接着剤の塗布領域を画定する」構成に相当し、しかも、「流止め部」に相当する。
エ 引用発明3の「第2のパネルを接着剤が滴下された第1のパネル100の上から被せ、押圧して貼り合わせる工程」における「貼り合わせる」ことは、本願発明の「接合」することに相当するから、該工程は、本願発明の「第2接着剤を介して表示素子及び光学部材を接合させる接合工程」に相当する。
オ 引用発明3の「第2のパネル200の張り合わせ後、可視光により接着剤300を硬化させて、第1のパネル100と第2のパネル200とを固着する工程」における「固着する」ことは、本願発明の「接着する」ことに相当するから、該工程は、本願発明の「第2接着剤を硬化させて表示素子及び光学部材を接着する第2接着剤硬化工程」に相当する。
カ 引用発明3の「枠状の隔壁」を形成する「未硬化時に流動性を有する硬化型樹脂」は、本願発明の「未硬化時に流動性を有する第1接着剤」と「未硬化時に流動性を有するもの」である点で共通し、引用発明3の「可視光により土手の硬化を行って、枠状の隔壁を形成する工程」は、本願発明の「第11接着剤を硬化させることにより、その塗布面に強固に全面接着する流止め部を形成する第1接着剤硬化工程」と、「未硬化時に流動性を有するものを硬化させることにより、流止め部を形成する硬化工程」である点で共通する。

キ そうすると、本願発明と引用発明3とは、
「表示素子に光学部材を接着した表示パネルの製造方法であって、
前記表示素子又は前記光学部材の少なくとも一方に、未硬化時に流動性を有するものを塗布し、これによって第2接着剤の塗布領域を画定する第1接着剤塗布工程と、
前記未硬化時に流動性を有するものを硬化させることにより、流止め部を形成する硬化工程と、
前記塗布領域に、未硬化時に流動性を有する前記第2接着剤を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤を介して前記表示素子及び前記光学部材を接合させる接合工程と、
前記第2接着剤を硬化させて前記表示素子及び前記光学部材を接着する第2接着剤硬化工程と、
を含む表示パネルの製造方法。」である点で一致し、次の相違点4で相違する。

(相違点4)
「未硬化時に流動性を有するもの」について、本願発明は、「接着剤」であって、引用発明3は、「硬化型樹脂」であり、「上記未硬化時に流動性を有するものを硬化させて流止め部を形成する硬化工程」において、本願発明では、「その塗布面に強固に全面接着する」のに対し、引用発明3の「硬化型樹脂」は、その塗布面に強固に全面接着するかどうかは不明な点。

(2)判断
相違点4について検討する。
引用発明3の、接着剤を留める「隔壁」のような部材を、光硬化型の接着剤を硬化させて形成することは、引用例2の「第1の接着剤61」として開示されているように周知であり、一方、接着剤は、その塗布面に強固に全面接着することは明らかであるところ、引用発明3の「隔壁」は「第1パネル」又は「第2パネル」に強固に接着することが望ましいことは当業者が容易に理解できることから、引用発明3の「硬化型樹脂」に代えて、接着剤を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明3及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明3及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-14 
結審通知日 2015-12-15 
審決日 2016-01-06 
出願番号 特願2013-219268(P2013-219268)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 請園 信博  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
川端 修
発明の名称 表示パネルの製造方法及び表示パネル  
代理人 特許業務法人 津国  

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