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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1311405
審判番号 不服2015-6916  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-13 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 特願2013-250203「移動端末装置、無線通信方法及び無線通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日出願公開、特開2014- 96805〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年6月21日に出願した特願2010-141020号の一部を,平成25年12月3日に新たな特許出願としたものであって,平成27年1月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 補正却下の決定
[結論]
平成27年4月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
平成27年4月13日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成26年6月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6に記載された

「【請求項6】
移動端末装置と無線基地局装置との無線通信方法であって,
下り共有データチャネル信号に対するACK/NACK情報を複数の基本周波数ブロック間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACK情報を生成する工程と,
前記複数ビットのACK/NACK情報をチャネル符号化する工程と,
チャネル符号化後の信号に対して,DFT(Discrete Fourier Transform)と,ブロック拡散符号を用いたブロック拡散と,を行う工程と,を具備し,
前記複数ビットのACK/NACK情報が,チャネル品質測定用のSRS(Sounding Reference Signal)を送信するためのシンボルが時間多重されているサブフレームで送信される場合に,サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除した短縮型フォーマットを適用し,前記複数ビットのACK/NACK情報が,前記SRSを送信するためのシンボルを含まないサブフレームで送信される場合には,前記シンボル数が削除されない通常フォーマットを適用することを特徴とする無線通信方法。」

という発明(以下,「本願発明」という。)を,

「【請求項6】
複数の基本周波数ブロックが割当てられた移動端末装置と無線基地局装置との無線通信方法であって,
下り共有データチャネル信号に対するACK/NACK情報を複数の基本周波数ブロック間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACK情報を生成する工程と,
前記複数ビットのACK/NACK情報をチャネル符号化する工程と,
チャネル符号化後の信号に対して,DFT(Discrete Fourier Transform)と,移動端末装置毎に割当てられたブロック拡散符号を用いたブロック拡散と,を行う工程と,を具備し,
前記複数ビットのACK/NACK情報が,チャネル品質測定用のSRS(Sounding Reference Signal)を送信するためのシンボルが時間多重されているサブフレームで送信される場合に,サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除すると共に系列長を1減らしたブロック拡散符号を利用する短縮型フォーマットを適用し,前記複数ビットのACK/NACK情報が,前記SRSを送信するためのシンボルを含まないサブフレームで送信される場合には,前記シンボル数及びブロック拡散符号の系列長が削除されない通常フォーマットを適用することを特徴とする無線通信方法。」

という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。


2 補正の適否
(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
上記補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において,
ア 本願発明の「移動端末装置と無線基地局装置との無線通信方法」を,「複数の基本周波数ブロックが割当てられた移動端末装置と無線基地局装置との無線通信方法」に改め,
イ 本願発明の「ブロック拡散符号を用いたブロック拡散」を,「移動端末装置毎に割当てられたブロック拡散符号を用いたブロック拡散」に改め,
ウ 本願発明の「サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除した短縮型フォーマット」を,「サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除すると共に系列長を1減らしたブロック拡散符号を利用する短縮型フォーマット」に改め,
エ 本願発明の「前記シンボル数が削除されない通常フォーマット」を,「前記シンボル数及びブロック拡散符号の系列長が削除されない通常フォーマット」に改めるものである。

そして,上記アの補正は,「移動端末装置」に関して「複数の基本周波数ブロックが割当てられた」との限定を付して,特許請求の範囲を減縮するものである。
上記イの補正は,「ブロック拡散符号」に関して「移動端末装置毎に割当てられた」との限定を付して,特許請求の範囲を減縮するものである。
上記ウの補正は,「サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除した短縮型フォーマット」に関して「系列長を1減らしたブロック拡散符号を利用する」との限定を付して,特許請求の範囲を減縮するものである。
上記エの補正は,「前記シンボル数が削除されない通常フォーマット」に関して「ブロック拡散符号の系列長が削除されない」との限定を付して,特許請求の範囲を減縮するものである。


また,請求項1及び8についての補正についても同様である。


したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。


(2)独立特許要件
請求項6における補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。

ア 補正後の発明
上記「1 本願発明と補正後の発明」にて「補正後の発明」とした,以下のとおりのものと認める。

「【請求項6】
複数の基本周波数ブロックが割当てられた移動端末装置と無線基地局装置との無線通信方法であって,
下り共有データチャネル信号に対するACK/NACK情報を複数の基本周波数ブロック間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACK情報を生成する工程と,
前記複数ビットのACK/NACK情報をチャネル符号化する工程と,
チャネル符号化後の信号に対して,DFT(Discrete Fourier Transform)と,移動端末装置毎に割当てられたブロック拡散符号を用いたブロック拡散と,を行う工程と,を具備し,
前記複数ビットのACK/NACK情報が,チャネル品質測定用のSRS(Sounding Reference Signal)を送信するためのシンボルが時間多重されているサブフレームで送信される場合に,サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除すると共に系列長を1減らしたブロック拡散符号を利用する短縮型フォーマットを適用し,前記複数ビットのACK/NACK情報が,前記SRSを送信するためのシンボルを含まないサブフレームで送信される場合には,前記シンボル数及びブロック拡散符号の系列長が削除されない通常フォーマットを適用することを特徴とする無線通信方法。」


イ 引用発明及び周知技術等
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用された「NTT DOCOMO,Uplink ACK/NACK Transmission Schemes for Carrier Aggregation([当審仮訳]:キャリアアグリゲーションのための上りリンクACK/NACK送信スキーム)[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting #61 R1-103248,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_61/Docs/R1-103248.zip>,2010年5月10日」(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「1.Introduction
At the RAN1#60 meeting, it was agreed that a single UE-specific UL component carrier (CC) would be configured semi-statically to carry the PUCCH ACK/NACK (A/N), scheduling request (SR), and periodic channel state information (CSI) from a UE. Furthermore, according to the agreements at the RAN1#58bis meeting, the following two A/N transmission schemes should be supported in Rel. 10.
・Full A/N transmission: One A/N for each DL CC transport block should be supported.
・Limited A/N transmission: Limited A/N transmission for the DL CC transport blocks should be supported for power limitation.
In order to support full A/N transmission, a PUCCH structure that can convey at least 10 bits is required. This was confirmed at the previous RAN1#60bis meeting. Based on the agreements, this contribution discusses the A/N transmission schemes for the “Full” and “Limited” A/N transmissions that are to be supported in Rel. 10.」
([当審仮訳]:
1.序論
RAN1#60会議において,UEからのPUCCH ACK/NACK(A/N),スケジューリング要求(SR),及び周期的なチャンネル状態情報(CSI)を運ぶために,単一のUE固有のULコンポーネントキャリア(CC)が準静的に構成されることが合意された。さらに,RAN1#58bis会議の合意によれば,次の2つのA/N送信スキームが,Rel.10においてサポートされるべきである。
・全てのA/N送信:それぞれのDL CC転送ブロックのための1つのA/Nがサポートされるべきである。
・制限されたA/N送信:DL CC転送ブロックのための制限されたA/N送信が電力制限のためにサポートされるべきである。
全てのA/N送信をサポートするために,少なくとも10ビットを運ぶことができるPUCCH構造が必要とされる。これは前回のRAN1#60bis会議で承認されている。この合意に基づいて,この寄書は,Rel.10においてサポートされる「全ての」及び「制限された」A/N送信のためのA/N送信スキームを論じる。)

(イ)「2.Full A/N Transmission Scheme
In order to support full A/N transmission, a PUCCH structure that can support the payload size of at least 10 bits is required. This was confirmed at the previous RAN1#60bis meeting. The one remaining issue regarding the maximum payload size is the need for explicit DTX signaling. The benefit of explicit DTX signaling is basically to achieve accurate redundancy version (RV) control for the DL retransmissions when misdetection of the PDCCH for the DL assignments occurs. However, 1-2 additional bits are required in the PUCCH payload according to the number of DL CCs [1]. Therefore, as discussed during the previous RAN1 meeting, more careful study may be needed on this issue considering both the DL and UL performance. Currently, we are investigating the following possibilities.
・Alt. 1: Support explicit DTX signaling (max. 12 bits [1])
・Alt. 2: Support explicit DTX signaling only for the DL CC with one codeword (CW) transmission (max. 10 bits)
・Alt. 3: No explicit DTX signaling (max. 10 bits)
In Alt. 2, three statuses for one CW (DTX, NACK, and ACK) and four statuses for two CWs (NACK/NACK, ACK/NACK, NACK/ACK, and ACK/ACK) are switched while retaining the same number of bits. Among the alternatives, we prefer Alt. 1 if the maximum of 12 bits is allowed. Otherwise, Alt. 2 has a slightly higher preference.
To support the payload size of the maximum 10 (or 12) bits efficiently, the transmission scheme based on the joint coding of multiple A/N bits is preferred as many companies suggested [2]. Whether PUCCH format 2 is reused or a new format such as multi-sequence modulation [3] and block-spreading based format [4],[5] is introduced is FFS.
Proposal 1: Support the PUCCH format for full A/N transmission based on joint coding. Consider explicit DTX signaling at least for the single CW case.」
([当審仮訳]:
2.全てのA/N送信
全てのA/N送信をサポートするために,少なくとも10ビットのペイロードサイズをサポートすることができるPUCCH構造が必要とされる。これは前回のRAN1#60bis会議で承認されている。最大ペイロードサイズに関する1つの残された問題は,明示的なDTXシグナリングの必要性である。明示的なDTXシグナリングの利益は,基本的に,DL割当てのためのPDCCHの誤検出が発生したときのDL再送のための正確な冗長性バージョン(RV)制御を達成することである。しかしながら,DL CC(複数)の数に応じて,PUCCHペイロード内に1-2の追加ビットが必要とされる[1]。ゆえに,前回のRAN1会議の間に議論されたように,この問題について,DL及びULパフォーマンスの両方を考慮して,より慎重な研究が必要とされるかも知れない。現在,我々は次の可能性を調査している。
・代案1:明示的なDTXシグナリングをサポートする(最大12ビット[1])
・代案2:1つのコードワード(CW)送信のDL CCについてのみ明示的なDTXシグナリングをサポートする(最大10ビット)
・代案3:明示的なDTXシグナリングなし(最大10ビット)
代案2において,1つのCWのための3つの状態(DTX,NACK,及びACK)並びに2つのCWのための4つの状態(NACK/NACK,ACK/NACK,NACK/ACK,及びACK/ACK)が,同じ数のビットを使用し続ける間,切り替えられる。もし最大12ビットが許可されるならば,我々は,これらの代案の中で,代案1を好む。他方,代案2は,より少し高い好ましさである。
多くの企業が提案するように,最大10(又は12)ビットのペイロードサイズを効果的にサポートするために,複数のA/Nビットのジョイント符号化に基づく送信スキームが好まれている[2]。PUCCHフォーマット2が再利用されるか,又はマルチシーケンス変調のような新しいフォーマット及びブロック拡散に基づくフォーマット[4],[5]が導入されるかは,今後の検討課題である。
提案1:ジョイント符号化に基づく全てのA/N送信のためののためのPUCCHフォーマットをサポートする。少なくとも単一のCWのケースのために,明示的なDTXシグナリングを考慮する。)


上記(ア),(イ)の記載及び当業者の技術常識を考慮すると,
a 上記(ア)の「UEからのPUCCH ACK/NACK(A/N)・・・を運ぶために」なる記載から,引用例には,UEから無線基地局への無線通信に関する方法,すなわち「UEと無線基地局装置との無線通信方法」に関して記載されていることは明らかである。また,上記(ア)の「それぞれのDL CC転送ブロックのための1つのA/N」なる記載,及び上記(イ)の「DL CC(複数)の数に応じて,PUCCHペイロード内に1-2の追加ビットが必要とされる」なる記載から,UEには,複数のDL CCが割当てられているといえる。
したがって,引用例には,「複数のDL CCが割当てられたUEと無線基地局装置との無線通信方法」が記載されていると認められる。

b 上記(ア)には,UEがPUCCH ACK/NACKを送信することが記載されており,ここで,UEがPUCCH上で送信するACK/NACKが,下り共有データチャネル信号に対するものであることは,当業者における技術常識である。
また,上記(イ)には,複数のACK/NACKビットをジョイント符号化することが記載されており,上記(ア)の「それぞれのDL CC転送ブロックのための1つのA/N」なる記載から,前記複数のACK/NACKビットのそれぞれは,各DL CC転送ブロックのためのものであることは明らかである。さらに,上記(イ)によれば,前記ジョイント符号化は最大10(又は12)ビットのペイロードサイズを効果的にサポートするために行われるものであるから,ジョイント符号化により生成されるACK/NACKビットも複数ビットであることは明らかである。
したがって,引用例には,「下り共有データチャネル信号に対するACK/NACKを複数のDL CC間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACKを生成する工程」が記載されていると認められる。

c 上記(イ)の「ブロック拡散に基づくフォーマット[4],[5]が導入されるかは,今後の検討課題である。」なる記載は,ジョイント符号化されたACK/NACKビットに対してブロック拡散を行うことを示唆するものである。そして,PUCCHで送信される制御情報に対してブロック拡散を行うことが当業者における技術常識であることも鑑みれば,当該記載は,ジョイント符号化されたACK/NACKビットに対してブロック拡散を行うことを想定しているといえる。ここで,上記bで述べたとおり,複数のACK/NACKビットをジョイント符号化して生成されるACK/NACKビットも複数ビットであることは明らかである。また,ブロック拡散をブロック拡散符号を用いて行うことも,当業者における技術常識である。
したがって,引用例には,「複数ビットのACK/NACKビットに対して,ブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う工程」が記載されていると認められる。


以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 複数のDL CCが割当てられたUEと無線基地局装置との無線通信方法であって,
下り共有データチャネル信号に対するACK/NACKを複数のDL CC間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACKを生成する工程と,
複数ビットのACK/NACKビットに対して,ブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う工程と,を具備する無線通信方法。」


[周知技術等]
原査定において参考文献として引用された「Ericsson, ST-Ericsson,PUCCH design for carrier aggregation([当審仮訳]:キャリアアグリゲーションのためのPUCCHデザイン)[online],3GPP TSG-RAN WG1 #60bis R1-101730,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/R1-101730.zip>,2010年4月6日」(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。([当審注]:以下,下線は強調のため当審において付した。)

(ウ)「2.4.CA PUCCH Transmission Scheme
The Carrier Aggregation PUCCH is based on DFTS-OFDM. Figure 1 shows a block diagram of the proposed transmitter. The multiple ACK/NACK bits are encoded by the (32, O) RM code with circular buffer rate matching [2] into 48 coded bits, where O=n with spatial bundling and O=2n without spatial bundling. The number n denotes the number of configured CCs. The coded bits are scrambled with cell-specific and possible DFTS-OFDM symbol dependent sequences. 24 bits are transmitted within the first slot and the other 24 bits are transmitted within the second slot. The 24 bits are converted into 12 QPSK symbols, DFT precoded, spread across five DFTS-OFDM symbols and transmitted within one resource blocks (bandwidth) and five DFTS-OFDM symbols (time). The spreading sequence oc is UE specific and enables multiplexing of up to five users within the same resource blocks.」
([当審仮訳]:
2.4 CA PUCCH送信スキーム
キャリアアグリゲーションPUCCHはDFTS-OFDMに基づく。図1は提案された送信器を示す。複数のACK/NACKビットは,環状バッファレートマッチングを用いた(32,O)RM符号により48の符号化されたビットに符号化され,ここで,空間バンドリングありではO=nであり,空間バンドリングなしではO=2nである。数字nは,構成されたCC(コンポーネントキャリア)の数を示す。符号化されたビットは,セル固有かつ可能なDFTS-OFDMシンボル依存のシーケンスでスクランブルされる。24ビットは最初のスロットで送信され,他の24ビットは2番目のスロットで送信される。24ビットは12QPSKシンボルに変換され,DFTプリコードされ,5つのDFTS-OFDMシンボルに拡散されて1つのリソースブロック(帯域)及び5つのDFTS-OFDM(時間)で送信される。拡散シーケンスocはUE固有であり,5までのユーザを同じリソースブロックに多重することを可能にする。)

(エ)「




本件の原出願日前に公開された特開2009-89187号公報(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(オ)「【0021】
チャネル符号化部312は,CQIとACK/NACK情報のいずれかをバッファ310から入力し,入力した情報に対してチャネル符号化を行う。また,チャネル符号化部312は,チャネル符号化により得た信号をデータ変調部314に対して出力する。
【0022】
データ変調部314は,チャネル符号化部312から入力した信号に対して所定の変調処理を行って,基地局へ返信すべき情報(CQIのみか,ACK/NACK情報のみのいずれか)を含む系列をブロック毎に生成する。また,データ変調部314は,生成した系列をSC-FDMA信号生成部316に対して出力する。
【0023】
SC-FDMA信号生成部316は,データ変調部314から入力した系列に対して,離散フーリエ変換(DFT),上述の復調・復号部304から入力した上りリソース割り当て情報に基づく周波数領域でのサブキャリアマッピング,高速逆フーリエ変換(IFFT),およびサイクリックプレフィックスの付与等を行って,上りリンクで送信されるSC-FDMA信号を生成する。生成されたSC-FDMA信号は,電力増幅器等(図示せず)を通して,基地局に対して送信される。」


本件の原出願日前に公開された特表2009-522911号公報(以下,「周知例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(カ)「【0051】
図10に示す送信器の構成を説明すると,ダウンリンクデータのACK/NACK1001は,チャネル符号化器1006で反復符号化のような符号化を経た後に,逆多重化器(DEMUX)1016に入力される。逆多重化器1016からの出力経路は,アップリンクデータ1002が存在するか否かを示す信号1004に基づく。特に,DEMUX1016は,アップリンクデータ1002が存在する場合に,出力経路1009に接続される。そうでない場合には,DEMUX1016は,出力経路1008に接続される。
【0052】
アップリンクデータ1002は,アップリンクデータ1002の送信形式を示す制御情報1003がチャネル符号化器1014により符号化された後に,多重化器1015に入力される間に,チャネル符号化器1013により符号化された後に,多重化器1015に入力される。また,符号化されたACK/NACKは,出力経路1009を介して多重化器1015に入力されることができる。アップリンクデータ1002のために割り当てられたリソース(データリソース)のためのパイロット信号1011及び1012の中の1つは,スイッチ1012を介して多重化器1015に入力される。スイッチ1012による選択は,ACK/NACKが存在するか否かを示す信号1005に基づく。特に,スイッチ1012は,ACK/NACKが上記データリソースに送信されない場合に,パイロットパターン#1のパイロット信号1011を選択し,ACK/NACKが上記データリソースに送信される場合に,パイロットパターン#2のパイロット信号1012を選択する。
【0053】
多重化器1015により多重化された情報は,データリソースマッパー1021によりデータリソースにマッピングされた後に送信される。ここで,データリソースマッパー1021は,図2を参照して説明したようなFFT(又はDFT)ブロック,サブキャリアマッパー,及びIFFTブロックを含む。すなわち,アップリンクデータ1002及びACK/NACK1001がすべて存在する場合に,アップリンクデータ1002及びACK/NACK1001は,FFT動作の前に多重化される。他方,アップリンクデータが存在しない場合に,出力経路1008を介して出力される符号化されたACK/NACKは,ACK/NACKリソースマッパー1020によりACK/NACKのために指定されたリソース(ACK/NACKリソース)にマッピングされた後に送信される。」

(ウ)?(カ)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,「ACK/NACK情報をチャネル符号化し,チャネル符号化後の信号に対して,DFTを行う」ことは周知であると認める(以下,「周知技術1」という。)。


本件の原出願日前に公開された特開2009-111780号公報(以下,「周知例4」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(キ)「【0034】
(a)に示される例の場合,単位ブロックを構成する12個のシンボルエレメントが,ユーザAのACK/NACKを表すビット系列を表現する。ACK/NACKを表すビット系列の長さは,DA={dA1,dA2,…,dA12}のように図示の例では12であるが,適切な如何なるなビット系列長で表現されてもよい。DAで示されている単位ブロックは同一内容を表す。図示の4つの単位ブロックには(CA1, CA2, CA3, CA4)の組一式で表現される直交符号系列が乗算される。
【0035】
(b)に示される例の場合,単位ブロックを構成する12個のシンボルエレメントが,ユーザBのACK/NACKを表すビット系列を表現する。DBで示されている単位ブロックは同一内容を表す。図示の4つの単位ブロックには(CB1, CB2, CB3, CB4)の組一式で表現される直交符号系列が乗算される。従って,ユーザAの信号(a)とユーザBの信号(b)は同じ周波数で同時に伝送されたとしても直交性を保ったまま符号多重できる。
【0036】
(c)に示される例の場合,単位ブロックを構成する12個のシンボルエレメントが,ユーザAのCQIを表すビット系列を表現する。CQIを表すビット系列の長さは,DA={dA1,dA2,…,dA12}のように図示の例では12であるが,適切な如何なるビット系列長で表現されてもよい。一般に,CQIは下りリファレンスシンボルの受信品質SINRをいくつかのレベルに量子化することで表現される。受信品質SINRを表現するビット数や量子化レベル数には適切な如何なる数が使用されてもよい。ユーザ装置が基地局装置に報告するCQIは,ユーザ装置で測定されたCQIそのものでもよいし,測定されたCQIのいくつかの上位ビットだけでもよい。DAで示されている単位ブロックは同一内容を表す。図示の4つの単位ブロックには(CA1, CA2, CA3, CA4)の組一式で表現される直交符号系列が乗算される。
【0037】
(d)に示される例の場合,単位ブロックを構成する12個のシンボルエレメントが,ユーザBのCQIを表すビット系列を表現する。DBで示されている単位ブロックは同一内容を表す。図示の4つの単位ブロックには(CB1, CB2, CB3, CB4)の組一式で表現される直交符号系列が乗算される。従って,ユーザAの信号(a)とユーザBの信号(b)は同じ周波数で同時に伝送されたとしても直交性を保ったまま符号多重できる。
【0038】
<CAZAC系列及びブロック拡散符号系列による直交多重法>
図3に関して説明されたカザック符号系列を用いた直交多重法と,図4に関して説明されたブロック拡散符号系列による直交多重法とを組み合わせることも可能である。
【0039】
図5はそのような組み合わせの例を示す。図中の記号は図3及び図4で使用されたものと同じである。制御情報(図5ではACK/NACK)は,単位ブロック全体に乗算される因子の1つ以上で表現される。このようにすると,カザック符号系列による直交性に加えて,ブロック拡散符号による直交性をも発揮でき,ユーザ毎の信号をよりいっそう簡易且つ高品質に分離できるようになる。その結果,伝送される制御情報の高品質化を更に図ることができる。」


本件の原出願日前に公開された国際公開第2009/022566号(以下,「周知例5」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ク)「[0010] ACK/NACKは送信情報量が小さい(基本的には1ビット)ため,更に時間軸上のブロック拡散を施すことが可能であり,これによりユーザ多重数を増加する(非特許文献4参照)。図4は,ブロック拡散の例を示す図である。図では,リファレンス信号にLong Blockが3個,ACK/NACKにLong Blockが4個であるため,リファレンス信号は符号長3,ACK/NACKは符号長4のユーザ固有の直交符号でブロック拡散される。可能多重なユーザ数は,符号長と同一であり,ここでは,符号長の短いリファレンス信号の系列長から最大3となる。従って,サイクリックシフトで多重可能なユーザ数が6であるとすると,この3倍の18ユーザを同一周波数内で多重できる。」


(ウ),(キ),(ク)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,「ACK/NACK情報に対し,移動端末装置毎に割当てられたブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う」ことは周知であると認める(以下,「周知技術2」という。)。


原査定の拒絶の理由に引用された「LG Electronics Inc.,Investigation on problems in case of PUCCH and S-RS simultaneous transmission([当審仮訳]:PUCCHとS-RSの同時送信のケースにおける問題の研究)[online],3GPP TSG RAN WG1 #49bis R1-072887,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_49b/Docs/R1-072887.zip>,2007年6月25日」(以下,「周知例6」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ケ)「3.2 Operating with two types of PUCCH subframe structures (Option 2)
From the perspective of resource utilization, this can be seen as most viable option. This option requires two type of PUCCH subframe structure; Type 1 in figure 3 is a normal PUCCH subframe structure, which is designed to be used for ACK/NACK or CQI when S-RS transmission is not necessarily taken into account. Type 2 in figure 4 is PUCCH type, which is designed specially to take the existence of S-RS into account so that SF of 3 is utilized in the first slot and SF of 4 in the second half slot.
Depending on whether CQI is considered or ACK/NACK is considered in this option, the implication will be different and hence one may come up with different application of two types of PUCCH formats.
In order for type 1 format to be used for ACK/NACK transmission during certain subframe, there should not be any single UE who are to transmit S-RS It is because time domain orthogonality cannot be maintained between two formats in case of ACK/NACK transmission. In other words, two types of PUCCH cannot co-exist in the same time. Therefore, the application of type 1 format for ACK/NACK transmission would face long odds since it can be used only when there is no UE at all who transmits S-RS. As a result, ACK/NACK signals would be transmitted with Type 2 subframe structure most of the time.
(中略)
Depending on which assumption one can make regarding UEs’ knowledge on S-RS transmission timing, additional signaling may or may not be necessary which indicate PUCCH format to be used. If UEs are not necessarily assumed to have information about the S-RS transmission timing of other UEs in the cell except for their own S-RS transmission timing, additional downlink signaling is required to indicate UEs which PUCCH type to use at certain time instance. This is the case when eNB doesn’t distribute/broadcast any system information about S-RS transmission timing to all the UEs in the cell. However, it might not be easy to find out appropriate place over which this indication signal can be conveyed. Different from the former case, one may assume that all the UEs in the cell have the knowledge on S-RS transmission timing in uplink, not only for themselves but also for the other UEs in the cell via downlink information such as broadcasting information. In this case, no downlink signaling is required to indicate the PUCCH format to be used since UE can autonomously select PUCCH format to utilize during certain subframe based on the knowledge of S-RS transmission timing in uplink.」
([当審仮訳]:
3.2 2つのタイプのPUCCHサブフレーム構造を扱う(オプション2)
リソースの活用の観点から,これは最も実行可能なオプションとみられる。このオプションは,2つのタイプのPUCCHサブフレーム構造を必要とする;図3のタイプ1は通常のPUCCHサブフレーム構造であり,これは,S-RS送信がが考慮される必要がないときに,ACK/NACK又はCQIのために利用されるべくデザインされたものである。図4のタイプ2はPUCCHタイプであり,これは,S-RSの存在を考慮するために,特別にデザインされたものであり,ゆえに,3のSF(拡散係数)が最初のスロットに利用され,4のSFが2番目の半分のスロットに利用される。
このオプションにおいてCQI又はACK/NACKが考慮されるか否かに依存して,関係は異なり,ゆえに1つは,2つのタイプのPUCCHフォーマットの異なる適用に直面するかも知れない。
あるサブフレーム中におけるACK/NACK送信にタイプ1フォーマットが使用されるため,S-RSを送信する単一の何らのUEも存在すべきでない。これは,ACK/NACK送信のケースにおいて,2つのフォーマットの間で,時間ドメインの直交性が維持できないためである。言い換えれば,2つのタイプのPUCCHフォーマットは同じタイミングで共存することができない。ゆえに,ACK/NACK送信のためのタイプ1フォーマットの適用は,S-RSを送信するUEがまったく存在しないときにのみそれが使用されるので,まれに起きるだろう。結果として,ACK/NACK信号は,多くの場合,タイプ2サブフレーム構造で送信されるであろう。
(中略)
S-RS送信タイミングに関するUEの知識に関連するどの仮定を用いるかに依存して,使用すべきPUCCHフォーマットを表示する追加のシグナリングが必要かも知れないし,必要ではないかも知れない。もし,UEが,彼ら自身のS-RS送信タイミング以外の,そのセルの他のUEのS-RS送信タイミングに関する情報を保持すると仮定する必要がないのであれば,ある時間間隔においてどのPUCCHタイプを使用するのかをUEに示す,追加の下りシグナリングが必要とされる。これは,eNBがS-RS送信タイミングに関する何らのシステム情報も,そのセルの全てのUEに対して配信/ブロードキャストしないケースである。しかしながら,この表示信号が運ばれることができる適切な場所を見つけるのは簡単ではないかも知れない。前者のケースと異なり,1つは,セルの全てのUEが,ブロードキャスト情報のような下りリンク情報を通じて,自身のみならずたのUEのS-RS送信タイミングの知識を持っていると仮定することができる。このケースでは,UEは,あるサブフレーム中に使用するPUCCHフォーマットを,アップリンクのS-RS送信タイミングの知識に基づいて自動的に選択することができるので,使用すべきPUCCHフォーマットを表示する下りリンクシグナリングは必要ではない。

(コ)「



(サ)「




本件の原出願日前に公開された国際公開第2008/157636号(以下,「周知例7」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(当審注:以下の[当審仮訳]は,周知例7のパテントファミリーである特表2010-530724号公報の記載に基づくものである。)

(シ)「[0046] Fig. 4A depicts an example sub-frame 400 detailing acknowledgement (ACK) channel multiplexing in the absence of a sounding RS. Sub-frame 400 represents 1.0 ms of time 418 (with a frequency 430 dimension depicted as the y-axis) that can be divided into two 0.5 ms slots similar in channel structure to the slot 200 diagramed in Fig. 2A, with short CP employed and 7 symbols per slot included in a resource block. However, unlike slot 200, in this case, no sounding RS is present in either slot of sub-frame 400. Illustrated in the upper portion of the first 0.5 ms slot are four ACK symbols 402 and three reference signal (RS) symbols 404. RS symbols 404 are a pilot structure generally employed for demodulation of the ACK channel or another associated channel. Typically, ACK 402 and RS 404 symbols are transmitted in the PUCCH regions. Thus, the relationship to the structures depicted in Figs. 2A and 2B can be readily appreciated (e.g., PUCCH 208, 210, 228, 230).
[0047] Generally, resources for PUSCH 422 are allocated on a sub-frame basis and the transmission frequency 420 can be hopped from sub-frame to sub-frame (e.g., from sub-frame 400 to another sub-frame). In contrast, the PUCCH, which can carry ACK and RS information (as well as channel quality indication (CQI), not acknowledgment (NACK), hybrid automatic repeat request (HARQ), uplink scheduling requests ...) can be hopped at slot boundaries to, e.g., provide added reliability. Thus, the boundary between the first 0.5 ms slot and the second 0.5 ms slot can serve as a transmission frequency boundary for hopping in the PUCCH. Accordingly, a particular group of users associated with data from ACK 402 and RS 404 transmitted at an upper portion of the frequency 420 spectrum in the first slot can be hopped to a lower frequency 420 in the second slot as depicted by ACK 406 and RS 408. Likewise, a different group of users associated with ACK 414 and RS 416 in the first slot can be hopped to an upper portion of the spectrum in the second slot to ACK 410 and RS 412. The associated relationships between ACK and RS symbols are depicted with white and black backgrounds, respectively.
[0048] In accordance therewith, the nominal PUCCH structure for short CP allows for 18 ACKs per resource block. These 18 ACKs can be allocated 6 frequency domain code division multiplexing (CDM) cyclic shifts for each of 3 time domain CDM orthogonal covers. For long CP, the nominal PUCCH structure allows for 8 ACKs per resource block to account for 4 frequency domain CDM cyclic shifts for each of 2 time domain CDM orthogonal covers.
[0049] Turning now to Fig. 4B, example sub-frame 430 detailing ACK channel multiplexing when a sounding RS is present and an ACK symbol is replaced is depicted. As with sub-frame 400 of Fig. 4A, frequency 452 is represented in the y-axis dimension, and sub-frame 430 represents 1.0 ms of time 450 that can be divided into two 0.5 ms slots, each with similar channel structure as that described in Fig. 2 A, with 7 symbols per slot as defined for short CP. However, in this case, the second slot does not include a sounding RS like slot 200 depicts. SRS 432 is depicted in the first position in the first 0.5 ms slot, however, it should be reiterated that SRS 432 could exist at other locations in the slot as well as in a different slot of sub-frame 430. Moreover, SRS 432 could exist in a long CP structure as well although for the sake of brevity and to facilitate rapid understanding of the concepts detailed herein, only short CP is employed for illustration.
[0050] Unlike the example nominal sub-frame 400 of Fig. 4A, the first slot in sub-frame 430 includes three ACK symbols 434, 446 rather than four ACK symbols 402, 414, yet the first slot still includes the same number of RS symbols 436, 448 with three. The reason for fewer ACK symbols is due to the existence of SRS 432, which accounts for one of the 7 symbols in a short CP slot. In this case, SRS 432 has replaced one of the four ACK symbols 402, 414 present in sub-frame 400 so that there are only three ACK symbols 434, 446 in the first slot of sub-frame 430. In the second 0.5 ms slot of sub-frame 430, no sounding RS is present so the channel structure has not changed. Accordingly, there are four ACK symbols 438, 442 and three RS symbols 440, 444 just as was the case in the second slot of example sub-frame 400 depicted in Fig. 4A.」
([当審仮訳]:
[0046] 図4Aは,サウンディングRSなしの確認応答(ACK)チャネルの多重化を詳説するサブフレーム400の一例を示している。サブフレーム400は,短CPが用いられ,スロットごとに7つのシンボルが資源ブロックに含まれる図2Aにおいて図示されたスロット200のチャネル構造と同様の2つの0.5msスロットに分割され得る時間418における1.0msを示している(y軸として周波数430次元が示されている)。しかしながら,スロット200と異なり,この場合,サブフレーム400のどちらのスロットにもサウンディングRSが存在していない。第1の0.5msスロットの上方部分には,4つのACKシンボル402および3つの基準信号(RS:reference signal)シンボル404が図示されている。RSシンボル404は,一般的にACKチャネルまたは別の関連するチャネルの復調のために用いられるパイロット構造である。一般的に,ACK402およびRS404シンボルは,PUCCH範囲において送信される。したがって,図2Aおよび図2Bに示される構造の関係は,容易に認識され得る(例えば,PUCCH208,210,228,230)。
[0047] 一般的に,PUSCH422のための資源は,サブフレームごとに割り当てられ,送信周波数420は,サブフレームからサブフレームへホップされ得る(例えば,サブフレーム400から別のサブフレームへ)。対照的に,ACKおよびRS情報(およびチャネル品質情報(CQI:channel quality indication),非確認応答(NACK:not acknowledgment),ハイブリッドオートマチックリピート要求(HARQ:hybrid automatic repeat request),上りリンクスケジューリング要求)を伝え得るPUCCHは,例えばそれ以上の信頼性を提供するために,スロットの境界においてホップされ得る。したがって,第1の0.5msスロットと第2の0.5msスロットとの間の境界は,PUCCHにおけるホッピングのための送信周波数境界になり得る。したがって,第1のスロットにおける周波数420の上方部分の範囲において送信されるACK402およびRS404からのデータに関するユーザの所定のグループは,ACK406およびRS408によって示されるような第2のスロットにおける下方の周波数420にホップされ得る。同様に,第1のスロットにおけるACK414およびRS416に関するユーザの異なるグループは,第2のスロットにおける上方部分の範囲のACK410およびRS412にホップされ得る。ACKおよびRSシンボルの間の関連する関係は,それぞれ白と黒の背景で示される。
[0048] それに加え,短CPの名目上のPUCCH構造は,資源ブロックごとに18のACKを可能としている。これら18のACKは,3つの時間領域CDM直交カバーのそれぞれに対して6つの周波数領域符号分割多重化(CDM:Code Division Multiplexing)サイクリックシフトに割り当てられ得る。長CPの名目上のPUCCH構造は,資源ブロックごとに8つのACKを可能としており,2つの時間領域CDM直交カバーのそれぞれに対して4つの周波数領域符号分割多重化(CDM:Code Division Multiplexing)サイクリックシフトを占める。
[0049] 次に,図4Bに目を向けると,サウンディングRSが存在し,ACKシンボルが入れ替わった場合のACKチャネルの多重化を詳説するサブフレーム430の一例が示されている。図4Aのサブフレーム400のように,周波数452はy軸次元において示され,サブフレーム430は2つの0.5msスロットに分割され得る時間450の1.0msを示している。それぞれは,図2Aにおいて記載されたようなチャネル構造と同様で,短CPで定義されるようなスロットごとの7つのシンボルを含む。しかしながら,この場合,第2のスロットは,スロット200が示すようなサウンディングRSを含まない。SRS432は第1の0.5msスロットにおける第1の部分に示されているが,SRS432がそのスロットの他の位置およびサブフレーム430の異なるスロットに存在し得ることは重ねて強調されるべきである。さらに,ここで詳説される概念の簡潔を目的としておよび早急な理解を容易にするために,短CPのみが例として用いられるが,SRS432は長CP構造にも存在し得る。
[0050] 図4Aの名目上のサブフレーム400の例と異なり,サブフレーム430における第1のスロットは,4つのACKシンボル402,414の代わりに,3つのACKシンボル434,446を含むが,今までどおり,第1のスロットは,同じ数である3つのRSシンボル436,448を含む。ACKシンボルが少ない理由は,短CPスロットにおける7つのシンボルの1つであるSRS432の存在のためである。この場合,SRS432は,サブフレーム400に存在する4つのACKシンボル402,414の1つと入れ替わっており,その結果,サブフレーム430の第1のスロットにおいて3つのACKシンボル434,446のみが存在する。サブフレーム430の第2の0.5msスロットにおいて,サウンディングRSは存在せず,チャネル構造は変わらない。したがって,ちょうど図4Aに示されたサブフレーム400の一例の第2のスロットの場合のように,4つのACKシンボル438,442および3つのRSシンボル440,444が存在する。)

(ス)「[0059] Furthermore, wireless communication apparatus 302 can include spreading coder 314 that can determine a length and a type of a time domain orthogonal spreading code to apply to slots of a sub-frame as a function of SRS presence. Thus, spreading coder 314 can determine a different spreading code to apply to individual slots of a sub-frame based upon whether the slot includes an SRS or not. To provide concrete examples of various cases, Figs 4B and 4Ccan again be referenced.
[0060] Referring back to Fig. 4B, the first slot of the ACK channel includes three ACK symbols, three RS symbols, and the SRS that replaced one of the previously existing ACK symbols. The second slot has no SRS, four ACK symbols and three RS symbols. In one embodiment, spreading coder 314 can apply a 3-point discrete Fourier transform (DFT) spreading code in the slot including the SRS (e.g., the first 0.5 ms slot) for both ACK symbols and RS symbols, wherein the determined length and type are represented by 3-point (e.g., length) DFT (e.g., type). Since, the length and/or type of time domain orthogonal spreading code can differ for slots without an SRS, different spreading codes can apply to the second slot in sub-frame 430. The second slot in this example includes four ACK symbols and three RS symbols. In one embodiment, spreading coder 314 can apply a 4-point orthogonal spreading code for ACK symbols in the second slot, wherein the 4-point orthogonal spreading code can be of type Hadamard or DFT, and can further apply a 3-point DFT spreading code to RS symbols in the second slot.」
([当審仮訳]:
[0059] さらに,無線通信装置302は,サブフレームのスロットに適用される時間領域直交拡散符号のタイプおよび長さをSRSの存在の関数として決定し得る拡散符号器314を含み得る。したがって,拡散符号器314は,スロットがSRSを含むか否かに基づいてサブフレームの個々のスロットに適用される異なる拡散符号を決定し得る。種々の場合の具体例を提供するために,図4Bおよび4Cがまた参照される。
[0060] 図4Bに戻って参照すると,ACKチャネルの第1のスロットは,3つのACKシンボル,3つのRSシンボル,および前に存在したACKシンボルの1つと入れ替わったSRSを含む。第2のスロットは,SRSを有さず,4つのACKシンボルおよび3つのRSシンボルを有する。一実施形態において,拡散符号器314は,ACKシンボルおよびRSシンボルの両方について,SRSを含むスロットにおける3ポイント離散フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)拡散符号(例えば,第1の0.5msスロット)を適用し得る。ここで,決定される長さおよびタイプは,3ポイント(例えば,長さ)DFT(例えば,タイプ)によって示される。時間領域直交拡散符号の長さおよび/またはタイプがSRSなしのスロットとは異なり得るため,異なる拡散符号がサブフレーム430における第2のスロットに適用され得る。この例における第2のスロットは,4つのACKシンボルおよび3つのRSシンボルを含む。一実施形態において,拡散符号器314は,第2のスロットにおけるACKシンボルに対して4ポイント直交拡散符号を適用し得る。ここで,4ポイント直交拡散符号は,ハダマードまたはDFTタイプであり,さらに3ポイントDFT拡散符号を第2のスロットにおけるRSシンボルに適用し得る。)


本件の原出願日前に公開された国際公開第2010/018942号(以下,「周知例8」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(当審注:以下の[当審仮訳]は,周知例8のパテントファミリーである特表2011-530940号公報の記載に基づくものである。)

(セ)「[81] Referring to FIG. 7, each of the 1st slot and the 2nd slot includes 7 SC-FDMA symbols. Among the 7 SC-FDMA symbols of each slot, a reference signal (RS) is carried on 3 SC-FDMA symbols, and control information is carried on the remaining 4 SC-FDMA symbols. The RS is carried on 3 contiguous SC-FDMA symbols positioned in a middle portion of each slot. In this case, the position and the number of symbols used for the RS may vary, and thus the position and the number of symbols used for the control information may also vary.
[82] Each of the PUCCH formats 1, 1a, and 1b uses one complex- valued symbol d(0). A BS can detect an SR according to presence/absence of PUCCH transmission from a UE. Therefore, a specific value (e.g., d(0)=1) can be used as the complex-valued symbol d(0) for the PUCCH format 1. The complex-valued symbol d(0) for the PUCCH format Ia is generated if 1-bit HARQ ACK/NACK information is binary phase shift keying (BPSK) modulated. The complex-valued symbol d(0) for the PUCCH format 1b is generated if 2-bit HARQ ACK/NACK information is quadrature phase shift keying (QPSK) modulated.[83] A modulated sequence y(n) is generated based on the complex- valued symbol d(0) for the PUCCH format 1/1a/1b and the cyclically shifted sequence r(n,Ics). The modulated sequence y(n) can be generated by multiplying the complex-valued symbol d(0) by the cyclically shifted sequence r(n,Ics) according to the following equation.
[84] MathFigure 3
[Math.3] (省略)
[85] A CS index Ics of the cyclically shifted sequence r(n,Ics) may differ according to a slot number ns in a radio frame and an SC-FDMA symbol index l in a slot. Therefore, the CS index Ics can be expressed by Ics(ns, l). Herein, a slot number of the 1st slot is set to 0, a slot number of the 2nd slot is set to 1, and the CS index is set to Ics(0,0)=0, Ics(0,1)=1, Ics(0,5)=2, Ics(0,6)=3, Ics(1,0)=4, Ics(1,1)=5, Ics(1,5)=6, and Ics(1,6)=7. However, this is for exemplary purposes only.
[86] To increase UE capacity, the modulated sequence y(n) can be spread by using an orthogonal sequence (OS). Herein, the modulated sequence y(n) is spread by using an OS w(k) having a spreading factor of K=4 with respect to 4 SC-FDMA symbols for carrying control information within one slot.[87] An OS WIos(k) having a spreading factor of K=4 (where Ios is an OS index, 0≦k≦K-1) can use a sequence shown in the following table.
[88] Table 3
[Table 3]
(省略)
[89] Alternatively, the OS WIos(k) having a spreading factor of K=3 (where Ios is an OS index, 0≦k≦K-1) can use a sequence shown in the following table.
[90] Table 4
[Table 4]
(省略)
[91] The OS index Ios may differ according to the slot number ns in the radio frame. Therefore, the OS index Ios can be expressed by Ios(ns).
[92] The modulated sequence y(n) may be scrambled in addition to being spread using the OS. For example, the modulated sequence y(n) may be multiplied by 1 or j according to a specific parameter.
[93] The RS can be generated based on the OS and the cyclically shifted sequence generated from the same base sequence as the control information. The cyclically shifted sequence can be used as the RS by spreading the cyclically shifted sequence with the OS w(k) having a spreading factor of K=3. Therefore, in order for the UE to transmit the control information, in addition to the OS index and the CS index for the control information, the OS index and the cyclically shifted index for the RS are also required.」
([当審仮訳]:
[81] 図7を参照すると,第1のスロットと第2のスロットの各々は,7SC-FDMAシンボルを含む。各スロットの7SC-FDMAシンボルのうち3SC-FDMAシンボルには参照信号(reference signal;以下,RSという)が載せられ,残りの4SC-FDMAシンボルには制御信号が載せられる。RSは,各スロット中間の3個の隣接する(contiguous)SC-FDMAシンボルに載せられる。この時,RSに使われるシンボルの個数及び位置は変わることができ,制御信号に使われるシンボルの個数及び位置もそれによって変更されることができる。
[82] PUCCHフォーマット1,1a及び1bの各々は,一つの複素シンボル(complex-valued symbol)d(0)を使用する。基地局は,SRを端末からのPUCCH送信の存在または不存在だけで分かる。従って,PUCCHフォーマット1のための複素シンボルd(0)として特定値,例えば,d(0)=1を使用することができる。PUCCHフォーマット1aのための複素シンボルd(0)は,1ビットのHARQ ACK/NACK情報がBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調されて生成される。PUCCHフォーマット1bのための複素シンボルd(0)は,2ビットのHARQ ACK/NACK情報がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調されて生成される。
[83] PUCCHフォーマット1/1a/1bのための複素シンボルd(0)と循環シフトされたシーケンスr(n,Ics)に基づいて変調されたシーケンス(modulated sequence)y(n)を生成する。次の数式のように循環シフトされたシーケンスr(n,Ics)に複素シンボルd(0)をかけて変調されたシーケンスy(n)を生成することができる。
[84]
[数3](省略)
[85] 循環シフトされたシーケンスr(n,Ics)の循環シフトインデックスであるIcsは,無線フレーム内のスロット番号(ns)及びスロット内のSC-FDMAシンボルインデックス(l)によって変わることができる。従って,循環シフトインデックスIcsは,Ics(ns,l)で表現されることができる。ここでは,第1のスロットのスロット番号は0に設定し,第2のスロットのスロット番号は1に設定し,Ics(0,0)=0,Ics(0,1)=1,Ics(0,5)=2,Ics(0,6)=3,Ics(1,0)=4,Ics(1,1)=5,Ics(1,5)=6,及びIcs(1,6)=7に設定しているが,これは例示にすぎない。
[86] 端末容量を増加させるために,変調されたシーケンスy(n)は,直交シーケンスを用いて拡散されることができる。ここでは,一つのスロット内の制御信号が載せられる4SC-FDMAシンボルに対し,拡散係数(spreading factor)K=4である直交シーケンスw(k)を介して変調されたシーケンスy(n)を拡散させることを開示している。
[87] 拡散係数K=4である直交シーケンスwIos(k)(Iosは直交シーケンスインデックス,0≦k≦K-1)として次の表のようなシーケンスを使用することができる。
[88]
[表3]
(省略)
[89] または,拡散係数K=3である直交シーケンスwIos(k)(Iosは直交シーケンスインデックス,0≦k≦K-1)として次の表のようなシーケンスを使用することができる。
[90]
[表4]
(省略)
[91] 直交シーケンスインデックスIosは無線フレーム内のスロット番号(ns)によって変わることができる。従って,直交シーケンスインデックスIosは,Ios(ns)で表現されることができる。
[92] また,変調されたシーケンスy(n)は,直交シーケンスを用いた拡散の以外にもスクランブルされることができる。例えば,変調されたシーケンスy(n)に特定パラメータによって1またはjが掛けられる。
[93] RSは,制御信号と同一な基本シーケンスから生成された循環シフトされたシーケンスと直交シーケンスに基づいて生成することができる。循環シフトされたシーケンスを拡散係数K=3である直交シーケンスw(k)を介して拡散させてRSとして使用することができる。従って,端末が制御信号を送信するために,制御信号のための循環シフトインデックスと直交シーケンスインデックスの以外にも,RSのための循環シフトインデックスと直交シーケンスインデックスも必要である。)

(ソ)「[108] If SRS transmission and PUCCH transmission carrying ACK/NACK happen to coincide in a same subframe, the UE may not transmit the SRS. Alternatively, the UE may support simultaneous transmission of the ACK/NACK on a PUCCH and the SRS by using a shortened ACK/NACK format of the ACK/NACK.
[109] FIG. 10 shows an example of transmission for a shortened ACK/NACK format if a normal CP is used. FIG. 11 shows an example of transmission for a shortened ACK/ NACK format if an extended CP is used.
[110] Referring to FIGs. 10 and 11 , 2-bit ACK/NACK information is QPSK modulated to generate one modulated symbol d(0). Alternatively, 1-bit ACK/NACK information may be QPSK modulated to generate one modulated symbol d(0). A last SC-FDMA symbol of a 2nd slot in a subframe is punctured. An SRS may be transmitted in a duration corresponding to the punctured symbol. That is, the punctured symbol corresponds to a location at which the SRS is transmitted. A 1st slot is the same as in FIG. 7 or 8. In the 2nd slot, control information is carried on three SC-FDMA symbols. An orthogonal sequence having a spreading factor of K=3 is used for the three SC-FDMA symbols. That is, the 1st slot is asymmetric to the 2nd slot. Hereinafter, the PUCCH format of FIGs. 7 and 8, which is differentiated from the shortened ACK/NACK format, is referred to as a normal PUCCH format.」
([当審仮訳]:
[108] サウンディング参照信号が送信されるサブフレームとACK/NACK信号が送信されるサブフレームが重なる場合,端末はサウンディング参照信号を送信しない場合もあり,または,端末は,ACK/NACK信号を縮小された(shortened)ACK/NACKフォーマットを使用し,ACK/NACK信号とサウンディング参照信号の同時送信をサポートすることができる。
[109] 図10は,ノーマルCPの場合,縮小されたACK/NACKフォーマット送信の例を示し,図11は,拡張されたCPの場合,縮小されたACK/NACKフォーマット送信の例を示す。
[110] 図10及び図11を参照すると,2ビットのACK/NACK情報がQPSK変調されて一つの変調シンボルd(0)が生成される。または,1ビットのACK/NACK情報がQPSK変調されて一つの変調シンボルd(0)が生成されることもできる。サブフレーム内の第2のスロットの最後のSC-FDMAシンボルが穿孔(puncturing)される。穿孔されたシンボルに該当する区間でサウンディング参照信号が送信されることができる。即ち,穿孔されたシンボルは,サウンディング参照信号が送信される位置(location)に対応される。第1のスロットは,図7または図8と同様である。第2のスロットでは制御信号が3SC-FDMAシンボルに載せられる。前記3SC-FDMAシンボルに対しては拡散係数K=3である直交シーケンスが用いられる。即ち,第1のスロットと第2のスロットは非対称的である。以下,縮小されたACK/NACKフォーマットと区別される図7及び図8のPUCCHフォーマットをノーマルPUCCHフォーマットという。)

(ケ)?(ソ)の記載及び図面はいずれも,ACKないしNACKを伝送するPUCCHサブフレーム構造として,SRSを含まないスロットではACKないしNACKの伝送に割り当てられるシンボル数を4とするとともに拡散係数すなわち系列長が4である時間領域直交拡散符号すなわち直交シーケンスを利用するフォーマットを適用し,SRSを含むスロットではACKないしNACKの伝送に割り当てられるシンボル数を1つ減らして3とし,その1つをSRSに割当てるとともに拡散係数すなわち系列長が3である時間領域直交拡散符号すなわち直交シーケンスを利用するフォーマットを適用することを開示している。
したがって,(ケ)?(ソ)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,「ACK/NACK情報が,SRSを送信するためのシンボルが時間多重されているサブフレームで送信される場合に,サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除すると共に系列長を1減らした時間領域直交拡散符号を利用するフォーマットを適用し,前記複数ビットのACK/NACK情報が,前記SRSを送信するためのシンボルを含まないサブフレームで送信される場合には,前記シンボル数及び時間領域直交拡散符号の系列長が削除されないフォーマットを適用する」ことは周知であると認める(以下,「周知技術3」という。)。


ウ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,

(ア)補正後の発明の「基本周波数ブロック」に関し,本願明細書の【0007】によれば,当該用語は,コンポーネントキャリア(CC)の意味で使用されている。また,補正後の発明は,「基本周波数ブロック」(すなわち「CC」)が,下り(DL)のものであるとの限定はないけれども,引用発明の「DL CC」を含んでいることは明らかである。
さらに,引用発明の「UE」が「移動端末装置」と同義であることは明らかである。
したがって,引用発明の「複数のDL CCが割当てられたUEと無線基地局装置との無線通信方法」は,補正後の発明の「複数の基本周波数ブロックが割当てられた移動端末装置と無線基地局装置との無線通信方法」に含まれる。

(イ)引用発明の「ACK/NACK」は,「ACK/NACK情報」と同義であることは明らかである。
したがって,引用発明の「下り共有データチャネル信号に対するACK/NACKを複数のDL CC間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACKを生成する工程」は,補正後の発明の「下り共有データチャネル信号に対するACK/NACK情報を複数の基本周波数ブロック間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACK情報を生成する工程」に含まれる。

(ウ)補正後の発明の「チャネル符号化後の信号」は,複数ビットのACK/NACK情報をチャネル符号化することにより生成されるものであるから,補正後の発明の「チャネル符号化後の信号」と,引用発明の「複数ビットのACK/NACKビット」とは,チャネル符号化後のものであるか否かは別として,「複数ビットのACK/NACK情報」で共通する。
したがって,補正後の発明の「チャネル符号化後の信号に対して,DFT(Discrete Fourier Transform)と,移動端末装置毎に割当てられたブロック拡散符号を用いたブロック拡散と,を行う工程」と,引用発明の「複数ビットのACK/NACKビットに対して,ブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う工程」とは,「複数ビットのACK/NACKビット」がチャネル符号化後のものであるか否かは別として,「複数ビットのACK/NACKビットに対して,ブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う工程」の点で共通する。


以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「 複数の基本周波数ブロックが割当てられた移動端末装置と無線基地局装置との無線通信方法であって,
下り共有データチャネル信号に対するACK/NACK情報を複数の基本周波数ブロック間でジョイント符号化して複数ビットのACK/NACK情報を生成する工程と,
複数ビットのACK/NACKビットに対して,ブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う工程,を具備する無線通信方法。」

(相違点1)
補正後の発明は,更に「前記複数ビットのACK/NACK情報をチャネル符号化する工程」を具備しており,それにともない,一致点の「複数ビットのACK/NACKビットに対して,ブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う工程」において,「チャネル符号化後の信号」に対して,「DFT(Discrete Fourier Transform)」と,「移動端末装置毎に割当てられた」ブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行うのに対し,引用発明では,「前記複数ビットのACK/NACK情報をチャネル符号化する」こと,並びに「チャネル符号化後の信号」に対して,「DFT(Discrete Fourier Transform)」を行うこと,及びブロック拡散符号が「移動端末装置毎に割当てられた」ものであることがいずれも明らかではない点。

(相違点2)
補正後の発明は,「前記複数ビットのACK/NACK情報が,チャネル品質測定用のSRS(Sounding Reference Signal)を送信するためのシンボルが時間多重されているサブフレームで送信される場合に,サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除すると共に系列長を1減らしたブロック拡散符号を利用する短縮型フォーマットを適用し,前記複数ビットのACK/NACK情報が,前記SRSを送信するためのシンボルを含まないサブフレームで送信される場合には,前記シンボル数及びブロック拡散符号の系列長が削除されない通常フォーマットを適用する」構成を有するのに対し,引用発明では,当該構成が明らかではない点。


以下,上記各相違点について検討する。

(相違点1について)
上記「イ 引用発明及び周知技術等」の項で認定したとおり,「ACK/NACK情報をチャネル符号化し,チャネル符号化後の信号に対して,DFTを行う」こと(周知技術1),及び「ACK/NACK情報に対し,移動端末装置毎に割当てられたブロック拡散符号を用いたブロック拡散を行う」こと(周知技術2)は,いずれも周知の事項であるから,上記一致点の「前記複数ビットのACK/NACK情報」をチャネル符号化し,チャネル符号化後の信号に対して,ブロック拡散に加えてDFTを行うこと,及び上記一致点のブロック拡散符号を「移動端末装置毎に割当てられた」ものとすること,すなわち,引用発明において,「前記複数ビットのACK/NACK情報をチャネル符号化する工程と,チャネル符号化後の信号に対して,DFT(Discrete Fourier Transform)と,移動端末装置毎に割当てられたブロック拡散符号を用いたブロック拡散と,を行う工程」とを具備するよう構成することは,当業者が適宜なし得たことである。

(相違点2について)
補正後の発明におけるブロック拡散は,本願明細書の【0030】によれば,直交する拡散符号(直交符号)を時間方向に適用する直交多重法であるから,補正後の発明のブロック拡散符号は,周知技術3の時間領域直交拡散符号を含んでいる。そして,引用発明は,Rel.10すなわちLTE-Advancedに関するものであって,上りリンクにてSRSを送信することが当然に予想されるところ,上記「イ 引用発明及び周知技術等」の項で認定したとおり,「ACK/NACK情報が,SRSを送信するためのシンボルが時間多重されているサブフレームで送信される場合に,サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除すると共に系列長を1減らした時間領域直交拡散符号を利用するフォーマットを適用し,前記複数ビットのACK/NACK情報が,前記SRSを送信するためのシンボルを含まないサブフレームで送信される場合には,前記シンボル数及び時間領域直交拡散符号の系列長が削除されないフォーマットを適用する」こと(周知技術3)は,周知の事項である。
また,SRSが,チャネル品質測定用の参照信号であることは,当業者における技術常識であり,周知技術3の「サブフレーム内のACK/NACK情報用のシンボルの1つを削除すると共に系列長を1減らした時間領域直交拡散符号を利用するフォーマット」及び「前記シンボル数及び時間領域直交拡散符号の系列長が削除されないフォーマット」を,それぞれ「短縮型フォーマット」及び「通常フォーマット」と称することは任意である。
そうすると,相違点2は,格別困難なことではなく,当業者が適宜なし得たことである。


そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び周知技術等に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり,補正後の発明は,引用発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3 結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年4月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。


2 引用発明及び周知技術等
引用発明及び周知技術等は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明及び周知技術等」の項で認定したとおりである。


3 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び周知技術等に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。


4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。


よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-16 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2013-250203(P2013-250203)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 篤男藤江 大望  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 萩原 義則
▲高▼橋 真之
発明の名称 移動端末装置、無線通信方法及び無線通信システム  
代理人 天田 昌行  
代理人 青木 宏義  
代理人 守屋 芳隆  

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